説明

半導体発光素子およびその製造方法、半導体発光素子の製造システム

【課題】設計したドーピング濃度および深さ方向分布の製造ばらつき(生産揺らぎ)を抑えて、発光出力を向上させかつ安定化させる。
【解決手段】p型電極11とn型電極12の形成後に、静電容量測定手段が、p型電極11とn型電極12間の静電容量を測定する静電容量測定工程と、不純物濃度分布演算手段が、測定した静電容量から不純物濃度分布を演算する不純物濃度分布演算工程(図示せず)と、第1不純物濃度分布制御手段が、演算した不純物濃度分布が最も低い値を特徴量として、次のロットまたは基板における発光層の形成時に、MOCVD手段を制御して最大の発光出力が得られるように制御する第1不純物濃度分布制御工程(図示せず)とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑、青および紫外領域の窒化物系化合物半導体発光素子などの半導体発光素子およびその製造方法、この半導体発光素子の製造方法に用いる半導体発光素子の製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の従来の窒化物半導体発光素子において、緑、青および紫外領域の半導体発光素子として、窒化物系化合物半導体発光素子が汎用されているが、発光強度以外の窒化物系化合物半導体発光素子の諸特性は尚改善の余地がある。特に、静電耐圧については、ガリウム・ヒ素系の半導体発光素子やインジウム・リン系の半導体発光素子に比較して格段に低く、大幅な静電耐圧の向上が期待されている。
【0003】
ここで、従来の窒化物半導体発光素子の発光出力の改善のために、活性層(発光層)のドーピングに関して各種の構造提案が以下の引用文献1、2に記載されている。
【0004】
特許文献1には、活性層がノンドープInGaN量子井戸層と、n型不純物がドープされたGaN障壁層とが順次積層されてなることが記載されており、また、このn型不純物がドープされたGaN障壁層が上記InGaN量子井戸層と接する界面に拡散防止膜を具備していることが記載されており、この拡散防止膜はGaN障壁層よりも低濃度のn型不純物を含んでいることが記載されている。
【0005】
図5は、特許文献1に開示されている従来の半導体発光ダイオードを示した側断面図である。
【0006】
図5に示すように、従来のGaN系半導体発光ダイオード100は、サファイア基板101上に、n型GaNから成る第1窒化物半導体層102、多重量子井戸構造の活性層103、およびp型AlGaNまたはp型GaNから成る第2窒化物半導体層104が設けられている。メサエッチングされた第1窒化物半導体層102の上面にはn型電極106aが形成され、第2窒化物半導体層104の上面には透明電極層105が形成され、その上にp型電極106bが形成されている。
【0007】
多重量子井戸構造から成る活性層103は4個のアンドープGaN量子障壁層103aと5個のn型不純物がドープされたInGaN量子井戸層103bが交互に積層されたもので示している。しかし、量子障壁層103aおよび量子井戸層103bは、物質やその数に限りはしない。例えば、窒化物半導体素子において、量子障壁層103aは Alx1Iny1Ga1−x1−y1N(x+y=1、0≦x≦1、0≦y≦1)から適切に選択して使用することができ、量子井戸層103aは量子障壁層103bより小さいエネルギーバンドギャップを有する物質として、Alx2Iny2Ga1−x2−y2N(x+y=1、0≦x≦1、0≦y≦1)から適切に選択して使用することができる。
【0008】
一方、特許文献2には、活性層がn型不純物を含んでいることが記載されており、活性層におけるn型不純物濃度がn層側の方がp層側よりも高いことが記載されている。
【0009】
図6は、特許文献2に開示されている従来の窒化物半導体発光素子を示した側断面図である。
【0010】
図6において、従来の窒化物半導体発光素子200は、基板201上に、バッファ層202、アンドープのGaN層203、SiドープのGaNよりなるn型コンタクト層204、n型第1の多層膜層205、n型第2の多層膜層206、InGaN/GaNよりなる多重量子井戸構造の活性層207、p型多層膜層208、MgドープGaNよりなるp型コンタクト層209がこの順に積層されている。n型多層膜層206およびp型多層膜層208を構成するそれぞれの窒化物半導体の組成および/または層数がn型とp型で異なる。
【0011】
多重量子井戸構造の活性層207は、井戸層と障壁層とを順次交互に積層した多層膜構造の多重量子井戸構造である。多重量子井戸構造の最小積層構造は、1つの障壁層とこの障壁層の両側に設けられた2つの井戸層とからなる3層構造または、1つの井戸層とその両側に設けられた2つの障壁層とからなる3層構造が考えられる。多重量子井戸構造において、両側の2つの最外層は、それぞれ井戸層または障壁層により構成される。また、一方の最外層が井戸層で他方の最外層が障壁層となるように構成されていてもよい。また、多重量子井戸構造は、p層側が障壁層で終わっても井戸層で終わってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−109425号公報
【特許文献2】特開2005−057308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記従来のいずれの構成においても、半導体発光素子の発光出力向上は可能であるが、n型ドーピング濃度に関係する駆動電圧と静電耐圧は一般的にトレードオフの関係となり、最適なドーピング濃度および深さ方向の分布の最適解を見極めるのは困難である。さらに、生産工場において、連続的に半導体発光素子を製造する中で、活性層の成長温度やガス組成などが連続的にドリフトし、成長する結晶品質も変化し、設計したドーピング濃度および深さ方向濃度分布が常に最適であるかどうかは判断することができない。要するに、設計したドーピング濃度および深さ方向濃度分布が、活性層の成長温度やガス組成の変化などによって大きくばらついてしまう。
【0014】
このため、製造工場においては、製造された半導体発光素子の発光出力が製品製造日時で揺らぐことが頻繁にあり、特に、窒化物半導体を用いたLEDでは顕著である。
【0015】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、設計したドーピング濃度および深さ方向分布の製造ばらつき(生産揺らぎ)を抑えて、発光出力を向上させかつ安定化させることができる半導体発光素子の製造方法および、これにより製造された半導体発光素子、この半導体発光素子の製造方法に用いる半導体発光素子の製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の半導体発光素子の製造方法は、単結晶性基板上にMOCVD手段により多重量子井戸構造の発光層を形成し、該発光層に電流を供給するためのp型電極とn型電極を形成する半導体発光素子の製造方法において、該p型電極と該n型電極の形成後に、静電容量測定手段が、該p型電極と該n型電極間の静電容量を測定する静電容量測定工程と、不純物濃度分布演算手段が、測定した静電容量から該発光層の不純物濃度分布を演算する不純物濃度分布演算工程と、第1不純物濃度分布制御手段が、演算した不純物濃度分布の不純物濃度が最も低い値を特徴量として、次の該発光層の形成時に最大の発光出力が得られるように制御する第1不純物濃度分布制御工程とを有するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0017】
また、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造方法における第1不純物濃度分布制御工程は、前記発光層の井戸層と障壁層のうちの少なくとも該障壁層における不純物濃度分布を制御する。
【0018】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造方法における第1不純物濃度分布制御工程は、一導電型不純物濃度分布が最も低い値を特徴量として5×1016〜9×1016cm−3の範囲になるように前記不純物濃度分布を制御する。
【0019】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造方法における第1不純物濃度分布制御工程は、一導電型不純物濃度分布が最も低い値を特徴量として7×1016cm−3になるように前記不純物濃度分布を制御する。
【0020】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造方法における第1不純物濃度分布制御工程は、前記発光層の井戸層と障壁層のうちの少なくとも障壁層の成長時にSiHガスおよび/またはSiH(CHガスの流量を制御することにより前記不純物濃度分布の最低値を制御する。
【0021】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造方法における第1不純物濃度分布制御工程は、前記発光層の井戸層と障壁層のうちの少なくとも障壁層の成長時にSiHガスおよび/またはSiH(CHガスの導入時間を制御することにより前記不純物濃度分布の最低値を制御する。
【0022】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造方法における静電容量測定工程で測定される静電容量は、少なくとも1種類の直流電圧と交流電圧を前記p型電極と前記n型電極間に重畳印加させて測定された値である。
【0023】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造方法における静電容量測定工程で測定した静電容量は、少なくとも1種類のパルス電圧と交流電圧を前記p型電極と前記n型電極間に重畳印加させて測定された値である。
【0024】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造方法における交流電圧の周波数は100kHz〜10MHzである。
【0025】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造方法における交流電圧の振幅は5mV〜30mVである。
【0026】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造方法における直流電圧は、前記p電極を正とした0.8V〜2.8Vの範囲である。
【0027】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造方法における不純物濃度分布はn型不純物濃度分布であって不純物はSiである。
【0028】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造方法における単結晶性基板上に、前記MOCVD法により前記多重量子井戸構造の発光層の前記n電極側に、InGa1−x N (0<x<0.3)から成る第1の層とGaNから成る第2の層を交互に積層した多重層を形成し、該発光層として、少なくともInを含むInGa1−yN ( 0 <y< 0.3)から成る井戸層とInAlGa1−y−zN(0≦y<0.1,0≦z<0.2)から成る障壁層とを形成する。
【0029】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造方法における発光層の少なくとも障壁層に、一導電型不純物濃度が5×1016cm−3 〜5×1018cm−3の範囲で添加されている。
【0030】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造方法において、発光出力および駆動電圧検査手段が発光出力と駆動電圧を測定して検査する発光出力および駆動電圧検査工程と、測定した該発光出力と該駆動電圧のうちの少なくともいずれかが所定範囲を脱した場合に、次の発光層の形成時に、第2不純物濃度分布制御手段が、測定した該発光出力と該駆動電圧に応じて、該駆動電圧の上昇を最小限にしつつ最大の発光出力が得られるように前記MOCVD手段を制御して前記発光層の不純物濃度分布を制御する第2不純物濃度分布制御工程とを更に有する。
【0031】
本発明の半導体発光素子は、本発明の上記半導体発光素子の製造方法により製造された半導体発光素子であって、前記発光層の井戸層と障壁層のうちの少なくとも該障壁層における一導電型不純物濃度分布の最も低い値が5×1016〜9×1016cm−3の範囲内にあり、そのことにより上記目的が達成される。
【0032】
また、好ましくは、本発明の半導体発光素子における一導電型不純物濃度分布の最も低い値が7×1016cm−3の誤差範囲内である。
【0033】
本発明の半導体発光素子の製造システムは、単結晶性基板上にMOCVD手段により多重量子井戸構造の発光層を形成し、該発光層に電流を供給するためのp型電極とn型電極を形成する半導体発光素子の製造システムにおいて、該p型電極と該n型電極の形成後に、該p型電極と該n型電極間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、測定した静電容量から該発光層の不純物濃度分布を演算する不純物濃度分布演算手段と、演算した不純物濃度分布の不純物濃度が最も低い値を特徴量として、次の該発光層の形成時に、該MOCVD手段を制御して最大の発光出力が得られるように制御する第1不純物濃度分布制御手段とを有するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0034】
また、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造システムにおける第1不純物濃度分布制御手段は、前記発光層の井戸層と障壁層のうちの少なくとも障壁層における不純物濃度分布を制御する。
【0035】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造システムにおける第1不純物濃度分布制御手段は、一導電型不純物濃度分布が最も低い値を特徴量として5×1016〜9×1016cm−3の範囲になるように制御する。
【0036】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造システムにおける第1不純物濃度分布制御手段は、一導電型不純物濃度分布が最も低い値を特徴量として7×1016cm−3になるように制御する。
【0037】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造システムにおける第1不純物濃度分布制御手段は、前記発光層の井戸層と障壁層のうちの少なくとも障壁層の成長時にSiHガスおよび/またはSiH(CHガスの流量を制御することにより前記不純物濃度分布の最低値を制御する。
【0038】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造システムにおける第1不純物濃度分布制御手段は、前記発光層の井戸層と障壁層のうちの少なくとも障壁層の成長時にSiHガスおよび/またはSiH(CHガスの導入時間を制御することにより前記不純物濃度分布の最低値を制御する。
【0039】
さらに、好ましくは、本発明の半導体発光素子の製造システムにおける半導体発光素子の発光出力と駆動電圧を測定して検査する発光出力および駆動電圧検査手段と、測定した該発光出力と該駆動電圧のうちの少なくともいずれかが所定範囲を脱した場合に、次の発光層の形成時に、測定した該発光出力と該駆動電圧に応じて、該駆動電圧の上昇を最小限にしつつ最大の発光出力が得られるように前記MOCVD手段を制御して前記発光層の不純物濃度分布を制御する第2不純物濃度分布制御手段とを更に有する。
【0040】
上記構成により、以下、本発明の作用を説明する。
【0041】
設計したドーピング濃度および深さ方向分布の生産揺らぎをどのように検出してそれをどのように抑えるのかについて説明する。
【0042】
本発明においては、単結晶性基板上にMOCVD手段により多重量子井戸構造の発光層を形成し、発光層に電流を供給するためのp型電極とn型電極を形成する半導体発光素子の製造方法において、p型電極とn型電極の形成後に、静電容量測定手段が、p型電極とn型電極間の静電容量を測定する静電容量測定工程と、不純物濃度分布演算手段が、測定した静電容量から不純物濃度分布を演算する不純物濃度分布演算工程と、第1不純物濃度分布制御手段が、演算した不純物濃度分布の不純物濃度が最も低い値を特徴量として、次の該発光層の形成時に、MOCVD手段を制御して最大の発光出力が得られるように制御する第1不純物濃度分布制御工程とを有する。
【0043】
このように、測定した静電容量から演算した不純物濃度分布の不純物濃度が最も低い値を特徴量として最大の発光出力が得られるように制御するので、設計したドーピング濃度および深さ方向分布の製造ばらつき(生産揺らぎ)を抑えて、発光出力を向上させかつ安定化させることが可能となる。
【発明の効果】
【0044】
以上により、本発明によれば、測定した静電容量から演算した不純物濃度分布の不純物濃度が最も低い値を特徴量として最大の発光出力が得られるように制御するため、設計したドーピング濃度および深さ方向分布の製造ばらつき(生産揺らぎ)を抑えて、発光出力を向上させかつ安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態1における窒化物半導体発光素子の要部構成例を示す縦断面図である。
【図2】図1のC−V法による静電容量測定結果を空乏層幅x(μm)とキャリア密度(cm−3)の特性曲線として示す代表的図である。
【図3】図2のA〜Dの測定結果の最小キャリア濃度Nとそのときの窒化物半導体発光素子1の発光出力および駆動電圧との関係を示す図である。
【図4】図1の窒化物半導体発光素子1の製造方法における各製造工程を示す流れ図である。
【図5】特許文献1に開示されている従来の半導体発光ダイオードを示した側断面図である。
【図6】特許文献2に開示されている従来の窒化物半導体発光素子を示した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に、本発明の半導体発光素子およびその製造方法、半導体発光素子の製造システムを窒化物半導体発光素子およびその製造方法、窒化物半導体発光素子の製造システムの実施形態1に適用した場合について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0047】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1における窒化物半導体発光素子の要部構成例を示す縦断面図である。
【0048】
図1において、本実施形態1の窒化物半導体発光素子1は、表面に三角形の凹凸が形成された厚さ約300μmの基板として例えばサファイヤ基板2の上に、窒化アルミニウム(AlN)から成る膜厚約15nmのバッファ層3が成膜され、その上にノンドープのGaNから成る膜厚約500nmのノンドープGaN層4が成膜されている。これらのサファイヤ基板2、バッファ層3およびノンドープGaN層4が、単結晶性基板を構成している。
【0049】
さらに、本実施形態1の窒化物半導体発光素子1において、この単結晶性基板上にシリコン(Si)を1×1018/cmドープしたGaNからなる膜厚約5μmのn型コンタクト層5(高キャリヤ濃度n層)が形成されている。このn型コンタクト層5上に多重層6が形成され、この多重層6上には多重量子井戸構造の発光層7が形成されている。
【0050】
この多重層6は、InGa1−xN(0<x<0.3)からなる第1の層とGaNからなる第2の層とを交互に複数積層されている。この多重層6は、ここでは例えば、膜厚2.5nmのIn0.02Ga0.98Nからなる第1の層と、膜厚3nmのGaNからなる第2の層とを5ペア積層している。この多重層6のうちの第1の層に、一導電型不純物としてSiがその濃度として、1×1016cm−3〜5×1018cm−3(さらに好ましくは、5×1016cm−3〜5×1017cm−3)の範囲で添加されている。
【0051】
多重量子井戸構造の発光層7の井戸層は少なくともInを含むInGa1−yN(0≦y<0.3)からなっている。このように、多重量子井戸構造の発光層7は、ここでは例えば、膜厚3nmのIn0.2Ga0.8Nから成る井戸層と、膜厚5nmのGaNから成る障壁層とを6ペア積層している。
【0052】
さらに、本実施形態1の窒化物半導体発光素子1において、この発光層7上に、Mgを2×1019/cmドープした膜厚25nmのp型Al0.15Ga0.85Nからなるp型層である電子ブロック層8が形成され、この電子ブロック層8上に、Mgを8×1019(cm−3)ドープした膜厚100nmのp型GaNからなるp型コンタクト層9が形成されている。このp型コンタクト層9上には、金属蒸着による透光性薄膜電極10(ITO)が形成され、透光性薄膜電極10の一部上にp電極11が形成され、一方、n型コンタクト層5の端部上にはn電極12が形成されている。最上部には、SiO膜よりなる保護膜13が形成されている。透光性薄膜電極10は、p型コンタクト層9に直接接合する膜厚約1.5nmのニッケル(Ni)よりなる第1層と、このニッケル膜に接合する膜厚約6nmの金(Au)よりなる第2層とで構成されている。
【0053】
要するに、本実施形態1の窒化物半導体発光素子1は、サファイヤ基板2上にバッファ層3およびノンドープGaN層4をこの順に形成して単結晶性基板が構成され、この単結晶性基板上のn型コンタクト層5とp型コンタクト層9間に、2層の繰り返しの多重層6、2層の繰り返しの多重量子井戸構造の発光層7および電子ブロック層8がこの順に形成され、p型コンタクト層9上にオーミック接触の透光性薄膜電極10を介してp電極11が形成され、n型コンタクト層5の一部上にn電極12が形成され、最上部に耐湿用の保護膜13が形成されている。
【0054】
発光層7を構成する多重量子井戸構造は、少なくともインジウム(In)を含むIII族窒化物系化合物半導体InGa1−xN(0<x<0.3)からなる井戸層を含むものである。発光層7の構成は、例えばドープされた、またはアンドープのInGa1−yN(0<y<0.3)からなる井戸層と、この井戸層よりもバンドギャップの大きい任意の組成のIII族窒化物系化合物半導体GaN,InGa1−yN(0<y<0.1)または、InAlGa1−y−zN(0<y<0.1,0<z<0.2)から成る障壁層が挙げられる。好ましい例としてはアンドープのInGa1−yN(0<y<0.1)からなる障壁層が挙げられる。
【0055】
発光層7のn電極12側に設けられる多重層6は、発光層7を形成する少なくともインジウム(In)を含むIII族窒化物系化合物半導体InGa1−xN(0<x<0.3)から成る井戸層のインジウム(In)の組成xよりも小さいインジウム(In)の組成wのInGa1−wN(0<w<0.3)から成る層とGaNから成る層により形成される。このとき、多重層6を形成するInGa1−wN(0<w<0.3)から成る層のインジウム(In)の組成wは、0.02以上0.07以下、より好ましくは、0.03以上0.05以下が好ましい。
【0056】
発光層7のn電極12側に設けられる多重層6のInGa1−wN(0<w<0.3)からなる層の膜厚は、0.5nm以上6nm以下であることが好ましく、0.5nm以上4nm以下であることがより好ましい。以下に発光特性を記すが、InGa1−wN(0<w<1)からなる層の膜厚が6nmを越えると、駆動電圧Vfが大幅に上昇することが判明している。0.5nm未満になると、その膜厚の調整が困難となるので、避けるべきである。一方、多重層6のGaNから成る層は、少なくとも10〜40nmの範囲では素子特性に大きな変化を生じないことが判明している。多重層6のInGa1−wN(0<w<0.3)からなる層の厚さの発光層の井戸層の厚さに対する比は、0.1以上2以下とすることが望ましい。より望ましくは、発光層7の井戸層の厚さ以下に多重層6のInGa1−wN(0<w<0.3)からなる層の厚さを調節する。一方、多重層6のGaNからなる層の厚さの発光層7の障壁層の厚さに対する比は、0.5以上4以下であることが望ましい。より望ましくは、発光層7の障壁層の厚さ以上に多重層6のGaNから成る層の厚さを調節することが望ましい。
【0057】
発光層7のn電極12側に設けられる多重層6のInGa1−wN(0<w<0.3)からなる層の数は1以上30以下とすることが望ましく、より好ましくは、3以上20以下とするとよい。
【0058】
III族窒化物系化合物半導体発光素子などの窒化物半導体発光素子1は、上記の発明の主たる構成に係る限定の他は、任意の構成を取ることができる。また、窒化物半導体発光素子1は発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)、フォトカプラ、その他の任意の発光素子としてよい。特に、本発明に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子などの窒化物半導体発光素子1の製造方法としては任意の製造方法を用いることができる。
【0059】
具体的には、結晶成長させる基板としては、サファイヤ、スピネル、Si、SiC、Z nO、MgOまたは、III族窒化物系化合物単結晶などを用いることができる。III 族窒化物系化合物半導体層を結晶成長させる方法としては、分子線気相成長法(MBE)、有機金属気相成長法(MOCVD)、ハライド気相成長法(HDVPE)、液相成長法等が有効である。
【0060】
電極形成層などのIII族窒化物半導体層は、少なくともAlGayIn1−x− yN(0≦x≦0.3,0.7≦y≦1,0≦x+y≦1)にて表される2元系、3元系または4元系の半導体から成るIII族窒化物系化合物半導体で形成することができる。
【0061】
ここで、本実施形態1の窒化物半導体発光素子1の特徴構成として、発光層7が、InGa1−xN(0<x<0.3)からなる第1の層とGaNからなる第2の層とを交互に積層し、この発光層7のうちの少なくとも障壁層に、一導電型不純物としてのSiが濃度5×1016cm−3〜5×1018cm−3(さらに好ましくは、5×1016cm−3〜5×1017cm−3)の範囲で添加されている。
【0062】
この本実施形態1の窒化物半導体発光素子1の特徴構成について、以下に更に詳細に説明する。
【0063】
図2は、図1のC−V法による静電容量測定結果を空乏層幅x(μm)とキャリア密度(cm−3)の特性曲線として示す代表的図である。
【0064】
図2に示すように、例えばA〜Dの波形は、空乏層幅x(μm)に対するキャリア密度(cm−3)の特性曲線であって、ロット単位の静電容量測定結果である。n型不純物濃度の測定方法は静電容量測定により行う。具体的には、直流電圧Vdcと交流電圧Vacを重畳させ、重畳した直流電圧Vdcと交流電圧Vacを窒化物半導体発光素子1のp型電極11とn型電極12間に印加し、その複素インピーダンスの測定結果から、静電容量分を測定するものである。一般的に、C−V(Capacitance - Voltage)法と呼ばれているものである。発光層の任意の深さの濃度をC−V法にて算出する方法は以下の通りである。
C−V法での直流電圧Vdcは3〜2Vの直流電圧範囲を0.02V刻み、2〜0Vの直流電圧範囲を0.1V刻み、0から−10Vの直流電圧範囲3を0.2V刻み、−10Vから−20Vの直流電圧範囲を1V刻みで4分割で刻みを変えて印加した。これと同時に重畳させる1MHzの周波数の交流電圧の振幅Vdcは、上記分割した各直流電圧範囲でそれぞれ、0.01V、0.05V、0.1V、0.5Vとした。本実施形態1では、直流電圧範囲は4分割としたが、分割しないかまたはその他の分割数でも問題ないが、窒化物半導体を用いた発光素子では2〜4分割とするのが好ましい。また、各直流電圧範囲の直流電圧刻み幅の半分を交流電圧振幅Vacとするのが好ましい。これは、C−V法にて静電容量を測定するときの瞬時電圧が、全ての電圧範囲で切れ目ない設定とすることにより、窒化物半導体発光素子1の全領域のn型不純物濃度を測定できるためである。その後、設定した直流電圧Vdcと測定した静電容量Cを下記手法で空乏層xとキャリア密度Nに変換する。
【0065】
窒化物半導体発光素子1のn側電極12とp側電極11との間に交流電圧と直流電圧を重畳して印加し空乏層容量Cを測定すると、つまり、窒化物半導体発光素子1のC−V特性を調べると、下記式1から空乏層の厚みxが算出される。
【0066】
ここで、空乏層の厚みxとは、窒化物半導体発光素子1の電子ブロック層8(p型半導体)と多重量子井戸構造の発光層7(およそn型半導体)を境界とし、主にn型半導体層に形成させる空乏層であり、空乏層幅xは多重量子井戸構造の発光層7の電子ブロック層8からみた深さと同義である。
【0067】
x=εε/C・・・式1
式1において、xは空乏層の厚み(cm)であり、εは真空の誘電率(8.9×10−14(F/cm))である。εは窒化物半導体材料の比誘電率(単位は無次元)であり、本実施形態1では、GaNの比誘電率で近似できる。Cは測定された空乏層容量(F/cm)である。
【0068】
また、窒化物半導体発光素子1に印加される電圧の大きさが変わると、空乏層の厚み(空乏層の厚みx)が変わり、空乏層容量が変わる。ここで、空乏層の底面(基板3側に位置する空乏層の面)におけるキャリア濃度Nは、下記式2で表わされる。そのため、窒化物半導体発光素子1に印加される電圧Vの大きさを変えて空乏層容量Cを測定すると、下記式2から空乏層の底面におけるキャリア濃度Nが算出される。
【0069】
N=C/{qεε(ΔC/ΔVdc)}・・・式2
式2において、Nは空乏層の底面におけるキャリア濃度(1/cm)であり、qは点電荷量(C)であり、ΔCは窒化物半導体発光素子1に印加される電圧Vの大きさを変えたときの空乏層容量の変化量であり、ΔVdcは窒化物半導体発光素子1に印加される直流電圧Vdcの変化量である。式2におけるC、ε、およびεはいずれも式1と同様である。以上より、窒化物半導体発光素子1に印加される電圧Vの大きさを変えて空乏層容量Cを測定すれば、空乏層の厚みxと空乏層の底面におけるキャリア濃度Nとの関係が分かる。即ち、発光層7のキャリア濃度≒n型不純物濃度=Siドーピング濃度の深さ分布を印加する直流電圧Vdcを任意に可変することにより、測定可能である。
【0070】
図2に示すように、測定結果Aでは発光層7の表面からの深さ0.06μm付近でn型キャリア濃度(シリコン濃度)が最低になっている。また、測定結果Eでは発光層7の表面からの深さ0.01μm付近でn型キャリア濃度が最低になっている。このようにして、発光層7の表面からの所望の深さに応じたドーピング濃度(深さ方向不純物濃度分布またはキャリア濃度)を検出することができる。同じ条件で活性層を膜成長させても、膜成長温度やガス組成の変化などによって測定結果A〜Eのような製造ばらつき(生産揺らぎ)が生じる。
【0071】
MOCVDでSiをドーピングして膜成長させるが、活性層の成長温度やガス組成も変化することから、測定結果Aは、MOCVDでSiを供給するシランガスの供給が少ない場合に生じ、また、MOCVDでSiを供給するシランガスの供給は所定値で一定であっても、膜成長温度が高く早く膜成長してSi密度が低い場合にも生じる。また逆に、測定結果Eは、MOCVDでSiを供給するシランガスの供給が多い場合に生じ、また、MOCVDでSiを供給するシランガスの供給は所定値で一定であっても、膜成長温度が低く遅く膜成長してSi密度が高い場合にも生じる。このように、C−V法による発光層7の表面からの所望の深さに応じたドーピング濃度(深さ方向分布)を検出することにより発光層7の生産仕上がりを容易に検出することができる。
【0072】
図3は、図2のA〜Dの測定結果の最小キャリア濃度Nとそのときの窒化物半導体発光素子1の発光出力および駆動電圧との関係を示す図である。なお、黒四角は最小キャリア濃度Nに対する発光出力の関係を示し、白四角は最小キャリア濃度Nに対する駆動電圧の関係を示している。
【0073】
図3に示すように、発光出力はフォトダイオードにより測定した。本実施形態1の測定結果では、キャリア濃度が5×1016〜9×1016(cm−3)のとき最大の発光出力であり、キャリア濃度がその値よりも小さいかまたは大きいときには発光出力が低下する。一方、駆動電圧はキャリア濃度が小さいときは低く、キャリア濃度が高いときは高くなる傾向が見られた。即ち、7×1016(cm−3)付近になるようにSiがドーピングされていれば、駆動電圧の上昇を最小限にしつつ、最大の発光出力を得ることができる。
【0074】
図3では、測定結果B、CのようにN型キャリア濃度が7×1016(cm−3)で発光出力が最大となりその前後で発光出力は低下する。一方、白四角に示すように、最小キャリア濃度Nに対する駆動電圧の関係は、右下がりの特性線図になっている。p電極11とn電極12間に一定の定格電流を流して測定した駆動電圧が低いほど省エネとなる。したがって、活性層の成長温度やガス組成などが連続的にドリフトして、測定結果Aや測定結果D、Eになると、発光出力が下がることになる。
【0075】
これに対して、C−V法による発光層7の表面からの所望の深さに応じたドーピング濃度(深さ方向分布)を検出し、測定結果B、Cになるように、活性層の成長温度やガス組成などを連続的に制御することにより、測定結果Aや測定結果D、Eのようになって発光出力が下がることを防止することができる。
【0076】
以下に、上記構成の窒化物半導体発光素子1の製造方法について説明する。
【0077】
図4は、図1の窒化物半導体発光素子1の製造方法における各製造工程を示す流れ図である。
【0078】
図4に示すように、本実施形態1の窒化物半導体発光素子1の製造方法は、ステップS1で基板受け入れ手段がサファイヤ基板2を所定位置に受け入れるサファイヤ基板2の基板受け入れ工程と、ステップS2で、サファイヤ表面凹凸加工手段がサファイヤ基板2の表面に三角形の凹凸を形成するサファイヤ表面凹凸加工工程と、ステップS3でMOCVD法により、MOCVD手段が、サファイヤ基板2の表面凹凸加工面上に、バッファ層3、ノンドープGaN層4、n型コンタクト層5、多重層6、多重量子井戸構造の発光層7、電子ブロック層8およびp型コンタクト層9をこの順に順次形成するMOCVD工程と、ステップS4で、透明性電極形成手段が、p型コンタクト層9上に透光性薄膜電極10を形成する透明性電極形成工程と、ステップS5で、n電極およびp電極形成手段が、基板端部をn型コンタクト層5の途中までエッチング除去してn型コンタクト層5の端部を露出させ、n型コンタクト層5の端部表面上にn電極12を形成すると共に、透光性薄膜電極10の一部表面上にp電極11を形成するn電極およびp電極形成工程と、ステップS6で、保護層形成手段が、透光性薄膜電極10、p電極11、n電極12およびn型コンタクト層5の露出表面、さらにエッチング除去側面に耐湿度用などに保護層13を形成する保護層形成工程と、ステップS7で、電極開口手段がp電極11およびn電極12上の保護層13をそれぞれ開口する電極開口部工程と、ステップS8で静電容量測定手段がn電極12とP電極11間の静電容量を測定する静電容量測定工程と、ステップ8で不純物濃度分布演算手段が、測定した静電容量から不純物濃度分布を演算する不純物濃度分布演算工程と、ステップ8で第1不純物濃度分布制御手段が、演算した不純物濃度分布の最低値が所定範囲を脱した場合に、演算した不純物濃度分布が最も低い値を特徴量として基準値と比較して、次の発光層の形成時に、最大の発光出力が得られるようにMOCVD手段を制御して不純物濃度分布の最低値を制御する第1不純物濃度分布制御工程と、ステップ9で発光出力および駆動電圧検査手段が発光出力と駆動電圧を検査する発光出力および駆動電圧検査工程と、測定した発光出力と駆動電圧が所定範囲を脱した場合に、次の発光層の形成時に、第2不純物濃度分布制御手段が、測定した発光出力と駆動電圧に応じて、駆動電圧の上昇を最小限にしつつ最大の発光出力が得られるようにMOCVD手段を制御して不純物濃度分布を制御する第2不純物濃度分布制御工程とを有している。
【0079】
本実施形態1の窒化物半導体発光素子1の製造システムは、サファイヤ基板2を所定位置に受け入れるサファイヤ基板2の基板受け入れ手段と、サファイヤ基板2の表面に三角形の凹凸を形成するサファイヤ表面凹凸加工手段と、MOCVD法により、サファイヤ基板2の表面凹凸加工面上に、バッファ層3、ノンドープGaN層4、n型コンタクト層5、多重層6、多重量子井戸構造の発光層7、電子ブロック層8およびp型コンタクト層9をこの順に順次形成するMOCVD手段と、p型コンタクト層9上に透光性薄膜電極10を形成する透明性電極形成手段と、基板端部をn型コンタクト層5の途中までエッチング除去してn型コンタクト層5の端部を露出させ、n型コンタクト層5の端部表面上にn電極12を形成すると共に、透光性薄膜電極10の一部表面上にp電極11を形成するn電極およびp電極形成手段と、透光性薄膜電極10、p電極11、n電極12およびn型コンタクト層5の露出表面、さらにエッチング除去側面に耐湿度用などに保護層13を形成する保護層形成手段と、p電極11およびn電極12上の保護層13をそれぞれ開口する電極開口手段と、n電極12とP電極11間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、測定した静電容量から不純物濃度分布を演算する不純物濃度分布演算手段と、演算した不純物濃度分布が最も低い値を特徴量として基準値と比較して、次の発光層の形成時に、最大の発光出力が得られるようにMOCVD手段を制御して不純物濃度分布の最低値を制御する第1不純物濃度分布制御手段と、発光出力と駆動電圧を測定して良否検査する発光出力および駆動電圧検査手段と、測定した発光出力と駆動電圧が所定範囲を脱した場合に、次の発光層の形成時に、測定した発光出力と駆動電圧に応じて、駆動電圧の上昇を最小限にしつつ最大の発光出力が得られるようにMOCVD手段を制御して不純物濃度分布を制御する第2不純物濃度分布制御手段とを有している。
【0080】
要するに、本実施形態1の窒化物半導体発光素子1の製造方法の特徴構成は、p型電極11とn型電極12の形成後に、静電容量測定手段が、p型電極11とn型電極12間の静電容量を測定する静電容量測定工程と、不純物濃度分布演算手段が、測定した静電容量から不純物濃度分布を演算する不純物濃度分布演算工程と、第1不純物濃度分布制御手段が、演算した不純物濃度分布が最も低い値を特徴量として基準値と比較して、次のロットまたは基板における発光層の形成時に、MOCVD手段を制御して最大の発光出力が得られるように不純物濃度分布の最低値を制御する第1不純物濃度分布制御工程とを有している。また、窒化物半導体発光素子1の製造方法の特徴構成は、発光出力および駆動電圧検査手段が発光出力と駆動電圧を測定して検査する発光出力および駆動電圧検査工程と、測定した発光出力と駆動電圧が所定範囲(良否範囲)を脱した場合に、次のロットまたは基板における発光層の形成時に、第2不純物濃度分布制御手段が、測定した該発光出力と該駆動電圧に応じて、駆動電圧の上昇を最小限にしつつ最大の発光出力が得られるようにMOCVD手段を制御して不純物濃度分布を制御する第2不純物濃度分布制御工程とを更に有している。
【0081】
これに対して、窒化物半導体発光素子1の製造システムの特徴構成は、p型電極11とn型電極12の形成後に、p型電極11とn型電極12間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、測定した静電容量から不純物濃度分布を演算する不純物濃度分布演算手段と、演算した不純物濃度分布が最も低い値を特徴量として基準値と比較して、次のロットまたは基板における発光層の形成時に、MOCVD手段を制御して最大の発光出力が得られるように不純物濃度分布の最低値を制御する第1不純物濃度分布制御手段とを有する。また、窒化物半導体発光素子1の製造システムは、窒化物半導体発光素子1の発光出力と駆動電圧を測定して検査する発光出力および駆動電圧検査手段と、測定した発光出力と駆動電圧が所定範囲(良否範囲)を脱した場合に、次のロットまたは基板における発光層の形成時に、測定した発光出力と駆動電圧に応じて、駆動電圧の上昇を最小限にしつつ最大の発光出力が得られるようにMOCVD手段を制御して不純物濃度分布を制御する第2不純物濃度分布制御手段とを更に有している。この不純物濃度分布はn型不純物濃度分布であって不純物はSiである。n型不純物としてはシリコン(Si)の他にセレンやテルルなどもある。
【0082】
このステップS8の静電容量測定工程で得た静電容量から演算した基板やロット特有の不純物濃度分布をステップS3のMOCVD工程の発光層7の形成時にフィードバックし、ステップS3のMOCVD工程で、発光層7の形成時に、このフィードバックされた静電容量値から計算された深さ方向に応じた不純物濃度分布をパラメータとした特性曲線(図2)において、深さ方向の不純物濃度分布における不純物濃度の極小値が存在する範囲内で発光出力値が最大になるように、発光層7にSiドーピングする量を制御する。要するに、MOCVD工程で次の発光層7を形成するときに、測定された静電容量値から計算された不純物濃度分布をフィードバックし、発光層7に対してシリコン(Si)のドープ量を適正なSi濃度に可変する。
【0083】
要するに、ステップS8の静電容量測定工程で静電容量を得、静電容量から図2の不純物濃度分布特性を演算し、不純物濃度が最も低い値を特徴量として、不純物濃度が5×1016〜9×1016(cm−3)の範囲、より好ましくは測定結果B,Cのように不純物濃度が7×1016(cm−3)になるようにステップS3のMOCVD工程での供給ガス流量を制御することにより、発光層7に対してシリコン(Si)のドープ量を適正なSi濃度に可変する。
【0084】
例えば不純物濃度が最も低い値を特徴量として不純物濃度が2×1017を検出した場合に、ステップS3のMOCVD工程での供給ガス流量を、不純物濃度が5×1016〜9×1016(cm−3)の範囲になるように抑えて供給する。また逆に、例えば不純物濃度が最も低い値を特徴量として不純物濃度が2×1016を検出した場合に、ステップS3のMOCVD工程での供給ガス流量を、不純物濃度が5×1016〜9×1016(cm−3)の範囲に収まるように増加させて供給する。
【0085】
つまり、本実施形態1の窒化物半導体発光素子1の製造方法は、窒化物半導体発光素子構造を有機金属化学気相成長法によりサファイア基板2上に形成する第1の工程と、p電極11およびn電極12を形成する第2の工程と、逆方向電気特性として逆方向電流値を測定する第3の工程とを有する窒化物半導体発光素子1の製造工程において、n導電型不純物のSi濃度を第3の工程で測定される窒化物半導体発光素子1の静電容量値から計算される深さ方向に応じた不純物濃度分布を用いて、その測定結果の不純物濃度分布における不純物濃度の最小値を選択し、この選択した不純物濃度に基づいて、発光出力を低下させない最大のSi濃度に、第1の工程のn導電型不純物のSi濃度を制御する。
【0086】
この場合、n導電型不純物のSi濃度の制御は、SiHガス流量または/およびSiH(CHガス流量および導入時間の少なくともいずれかを制御することにより行う。発光出力低下の原因となる過剰なSiドーピングを抑制しつつ、Si濃度の低下による抵抗上昇による駆動電圧上昇を抑えるn型不純物濃度に有機金属化学気相成長装置(MOCVD手段)のガス流量およびガス導入時間の間欠制御によりn導電型不純物の平均濃度を制御することにより、駆動電圧上昇を最小限に抑えつつ、発光出力の維持、向上を図るものである。
【0087】
静電容量測定工程で測定される静電容量は、少なくとも1種類の直流電圧と交流電圧をp型電極11とn型電極12間に重畳印加させて測定された値であるかまたは、少なくとも1種類のパルス電圧と交流電圧をp型電極11とn型電極12間に重畳印加させて測定された値である。交流電圧の周波数は100kHz〜10MHzである。静電容量を測定する場合、周波数が高いほどインピーダンスが大きく見えて静電容量が正確に測定できるので、その周波数を100kHz以上とし、ここでは、その周波数を1MHzで静電容量を測定している。電子とホールの再結合速度の関係から、その周波数が10MHzを超えると、逆に静電容量が正確に測定できなくなる。交流電圧の振幅は、隣の情報が重なったり途切れたりしない程度の振幅範囲とし、実験的には5mV〜30mVである。直流電圧は、p電極11を正とした順方向バイアスの0.8V〜2.8Vの範囲である。青色系の発光をする窒化物半導体発光素子1では、実験的に2.5V程度から光り始める。その光り始める前の段階の空乏層が伸びている状態での静電容量を測ることが重要なので、p電極11を正とした0.8V〜2.8Vの範囲の直流電圧で静電容量を測定するのが好ましい。
【0088】
以上により、本実施形態1によれば、単結晶性基板上に多重量子井戸構造の発光層7を有する窒化物半導体発光素子1において、発光層7のn電極12側に、InGa1−xN (0<x<0.3)からなる第1の層と、GaNからなる第2の層とを交互に複数積層した多重層6を有し、多重量子井戸構造の発光層7の井戸層は少なくともInを含むInGa1−yN(0≦y<0.3)からなり、発光層7の少なくとも障壁層に、n導電型不純物がその濃度として5×1016cm−3〜5×1018cm−3の範囲で添加されて、発光層7の静電容量値の測定結果から計算される発光層7の不純物濃度分布の最小値を制御するようにn導電型不純物のSiを添加することにより、駆動電圧を上昇させることなく、発光出力をより向上させることができる。このように、測定した静電容量から演算した不純物濃度分布の不純物濃度が最も低い値を特徴量として最大の発光出力が得られるようにフィードバック制御するため、設計したドーピング濃度およびその深さ方向分布の製造ばらつき(生産揺らぎ)を抑えて、発光出力を向上させかつ安定化させることができる。
【0089】
なお、本実施形態1では、発光層7の少なくとも障壁層に、n導電型不純物がその濃度として5×1016cm−3〜5×1018cm−3の範囲で添加されて、発光層7の不純物濃度の最小値を用いて制御すること、その一例として、静電容量測定工程の測定結果から計算された発光層の不純物濃度特性曲線に基づいて、その最小値を発光出力が最大となるSi濃度で制御する。発光層7の少なくとも障壁層にn導電型不純物のSiを添加する場合について説明したが、これに限らず、静電容量測定工程での測定結果から計算される不純物濃度分布の最小値が、発光強度が最大となる前後の所定範囲のSi濃度で、発光層7の少なくとも障壁層にn導電型不純物のSiを添加してもよい。要するに、発光層7の少なくとも障壁層に、n導電型不純物がその濃度として5×1016cm−3〜5×1018cm−3の範囲で添加されていればよい。
【0090】
この場合、本実施形態1では、発光層7の少なくとも障壁層のSi濃度を制御したが、これに限らず、発光層7の少なくとも障壁層および第2の層のそれぞれのSi濃度を制御してもよい。要するに、発光層7の少なくとも障壁層の平均Si濃度を制御すればよい。また、発光層7の第1層形成時に、間欠的にSiHあるいはSiH(CHガスを導入し、第1層全体平均としてのSi濃度を制御してもよいことは言うまでもない。この場合、制御するパラメータはガス流量ではなく、ガス導入する時間になる。
【0091】
なお、本実施形態1では、所定項目の逆方向電気特性としての逆方向電流値をパラメータとして、発光層7の交流電圧および直流電圧の重畳させ、得られるインピーダンスの虚数部より得られる静電容量測定から計算される不純物濃度分と発光出力および駆動電圧の関係を示す特性曲線を予め求めておき、静電容量測定工程で求めた不純物濃度分布の最小値をパラメータとする特性曲線に基づいて、発光層7の少なくとも障壁層のSi濃度を制御する方法について説明し、静電容量測定手法は上記逆方向電流値に限らず、パスル電圧を印加したときの過渡電流を測定し、その時定数をから計算される静電容量値であってもよいことは言うまでもない。
【0092】
なお、本実施形態1では、MOCVD装置起動毎(またはロット毎または基板毎)に、ステップS8の静電容量測定工程で静電容量を得、静電容量から図2の不純物濃度分布を演算し、次のMOCVD工程において、不純物濃度が最も低い値を特徴量として基準値と比較して、不純物濃度分布の最小値が5×1016〜9×1016(cm−3)の範囲内にあるようにステップS3のMOCVD工程での供給ガス流量およびガス導入時間のうちの少なくともいずれかを制御する場合について説明したが、これに限らず、予めサンプルとして窒化物半導体発光素子1を製造しておき、この製造した窒化物半導体発光素子1に対してステップS8の静電容量測定工程で静電容量を得、この測定した静電容量から図2の深さに応じた不純物濃度分布特性を演算し、不純物濃度分布特性の最小値を特性値とし、その特性値のときの実際のMOCVD工程での供給ガス流量およびガス導入時間のうちの少なくともいずれかと、その特性値をターゲット範囲内(基準範囲内)にするのにどの程度、不純物のドーピング量を増やすのかまたは減らすのかを予めテーブル化しておき、演算した不純物濃度分布特性の最小値に対応してそのテーブルの供給ガス流量およびガス導入時間のうちの少なくともいずれかを参照して不純物濃度が5×1016〜9×1016(cm−3)の範囲内(ターゲット範囲内)になるようにステップS3のMOCVD工程での供給ガス流量およびガス導入時間のうちの少なくともいずれかを制御するようにしてもよい。
【0093】
なお、本実施形態1では、演算した不純物濃度分布が最も低い値を特徴量として基準値と比較して不純物濃度分布の最低値を制御しており、ここでは特に説明しなかったが、演算した不純物濃度分布が最も低いところでホールと電子が結合して最も発光する。その不純物濃度が最も低い値に基づいて不純物濃度分布の最も低い不純物濃度を所定値範囲(基準値)に入るように制御が為されている。
【0094】
なお、本実施形態1では、特に説明しなかったが、第1不純物濃度分布制御工程において、演算した不純物濃度分布が最も低い値を特徴量とし、その特徴量に応じて、発光層7の井戸層と障壁層のうちの少なくとも障壁層の膜成長時にSiHガスおよび/またはSiH(CHガスの流量および/またはガス導入時間を制御する。井戸層にSiを追加ドーピングするよりも障壁層にSiを追加ドーピングする方がより発光出力が上がる。
【0095】
なお、本実施形態1では、特に説明しなかったが、上記窒化物半導体発光素子1の製造方法により製造された窒化物半導体発光素子1であって、発光層7の井戸層と障壁層のうちの少なくとも障壁層における一導電型(ここではn型)不純物濃度分布の最も低い値を特徴量としてその特徴量が5×1016〜9×1016cm−3の範囲にある。好ましくは、一導電型(ここではn型)不純物濃度分布の最も低い値を特徴量としてその特徴量が7×1016cm−3の誤差範囲内にある。
【0096】
なお、本実施形態1では、本発明の半導体発光素子およびその製造方法、半導体発光素子の製造システムを窒化物半導体発光素子およびその製造方法、窒化物半導体発光素子の製造システムの実施形態1に適用した場合について説明したが、緑、青および紫外領域の窒化物系化合物半導体発光素子の他に、ガリウム・ヒ素系の半導体発光素子やインジウム・リン系の半導体発光素子などの半導体発光素子に本発明を適用することも可能である。
【0097】
以上のように、本発明の好ましい実施形態1を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態1に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態1の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、緑、青および紫外領域の窒化物系化合物半導体発光素子などの窒化物半導体発光素子およびその製造方法の分野において、発光層のn電極側に、InGa1−xN(0<x<0.3)からなる第1の層とGaNからなる第2の層とを交互に積層した多重層の少なくとも第1の層に、不純物濃度が5×1016cm−3〜5×1018cm−3の範囲になるように発光層7に不純物を添加して、発光層7の不純物濃度分布の最小値をパラメータとする特性曲線を用いて、発光層7の不純物濃度を制御するため、駆動電圧を悪化させることなく発光出力を維持、向上させることができる。
【符号の説明】
【0099】
1 窒化物半導体発光素子
2 サファイヤ基板
3 バッファ層
4 ノンドープGaN層
5 n型コンタクト層
6 多重層
7 多重量子井戸構造の発光層
8 電子ブロック層
9 p型コンタクト層
10 透光性薄膜電極
12 n電極
11 p電極
13 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶性基板上にMOCVD手段により多重量子井戸構造の発光層を形成し、該発光層に電流を供給するためのp型電極とn型電極を形成する半導体発光素子の製造方法において、
該p型電極と該n型電極の形成後に、静電容量測定手段が、該p型電極と該n型電極間の静電容量を測定する静電容量測定工程と、不純物濃度分布演算手段が、測定した静電容量から該発光層の不純物濃度分布を演算する不純物濃度分布演算工程と、第1不純物濃度分布制御手段が、演算した不純物濃度分布の不純物濃度が最も低い値を特徴量として、次の該発光層の形成時に最大の発光出力が得られるように制御する第1不純物濃度分布制御工程とを有する半導体発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1不純物濃度分布制御工程は、前記発光層の井戸層と障壁層のうちの少なくとも該障壁層における不純物濃度分布を制御する請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記第1不純物濃度分布制御工程は、一導電型不純物濃度分布が最も低い値を特徴量として5×1016〜9×1016cm−3の範囲になるように制御する請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1不純物濃度分布制御工程は、一導電型不純物濃度分布が最も低い値を特徴量として7×1016cm−3になるように制御する請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1不純物濃度分布制御工程は、前記発光層の井戸層と障壁層のうちの少なくとも障壁層の成長時にSiHガスおよび/またはSiH(CHガスの流量を制御することにより前記不純物濃度分布の最低値を制御する請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1不純物濃度分布制御工程は、前記発光層の井戸層と障壁層のうちの少なくとも障壁層の成長時にSiHガスおよび/またはSiH(CHガスの導入時間を制御することにより前記不純物濃度分布の最低値を制御する請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記静電容量測定工程で測定される静電容量は、少なくとも1種類の直流電圧と交流電圧を前記p型電極と前記n型電極間に重畳印加させて測定された値である請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記静電容量測定工程で測定した静電容量は、少なくとも1種類のパルス電圧と交流電圧を前記p型電極と前記n型電極間に重畳印加させて測定された値である請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記交流電圧の周波数は100kHz〜10MHzである請求項7または8に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記交流電圧の振幅は5mV〜30mVである請求項7または8に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記直流電圧は、前記p電極を正とした0.8V〜2.8Vの範囲である請求項7に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記不純物濃度分布はn型不純物濃度分布であって不純物はSiである請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記単結晶性基板上に、前記MOCVD法により前記多重量子井戸構造の発光層の前記n電極側に、InGa1−x N (0<x<0.3)から成る第1の層とGaNから成る第2の層を交互に積層した多重層を形成し、該発光層として、少なくともInを含むInGa1−yN ( 0 <y< 0.3)から成る井戸層とInAlGa1−y−zN(0≦y<0.1,0≦z<0.2)から成る障壁層とを形成する請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記発光層の少なくとも障壁層に、一導電型不純物濃度が5×1016cm−3 〜5×1018cm−3の範囲で添加されている請求項13に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項15】
発光出力および駆動電圧検査手段が発光出力と駆動電圧を測定して検査する発光出力および駆動電圧検査工程と、測定した該発光出力と該駆動電圧のうちの少なくともいずれかが所定範囲を脱した場合に、次の発光層の形成時に、第2不純物濃度分布制御手段が、測定した該発光出力と該駆動電圧に応じて、該駆動電圧の上昇を最小限にしつつ最大の発光出力が得られるように前記MOCVD手段を制御して前記発光層の不純物濃度分布を制御する第2不純物濃度分布制御工程とを更に有する請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法により製造された半導体発光素子であって、
前記発光層の井戸層と障壁層のうちの少なくとも該障壁層における一導電型不純物濃度分布の最も低い値が5×1016〜9×1016cm−3の範囲内にある半導体発光素子。
【請求項17】
前記一導電型不純物濃度分布の最も低い値が7×1016cm−3の誤差範囲内である請求項16に記載の半導体発光素子。
【請求項18】
単結晶性基板上にMOCVD手段により多重量子井戸構造の発光層を形成し、該発光層に電流を供給するためのp型電極とn型電極を形成する半導体発光素子の製造システムにおいて、
該p型電極と該n型電極の形成後に、該p型電極と該n型電極間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、測定した静電容量から該発光層の不純物濃度分布を演算する不純物濃度分布演算手段と、演算した不純物濃度分布の不純物濃度が最も低い値を特徴量として、次の該発光層の形成時に最大の発光出力が得られるように制御する第1不純物濃度分布制御手段とを有する半導体発光素子の製造システム。
【請求項19】
前記第1不純物濃度分布制御手段は、前記発光層の井戸層と障壁層のうちの少なくとも障壁層における不純物濃度分布を制御する請求項18に記載の半導体発光素子の製造システム。
【請求項20】
前記第1不純物濃度分布制御手段は、一導電型不純物濃度分布が最も低い値を特徴量として5×1016〜9×1016cm−3の範囲になるように制御する請求項18に記載の半導体発光素子の製造システム。
【請求項21】
前記第1不純物濃度分布制御手段は、一導電型不純物濃度分布が最も低い値を特徴量として7×1016cm−3になるように制御する請求項18に記載の半導体発光素子の製造システム。
【請求項22】
前記第1不純物濃度分布制御手段は、前記発光層の井戸層と障壁層のうちの少なくとも障壁層の成長時にSiHガスおよび/またはSiH(CHガスの流量を制御することにより前記不純物濃度分布の最低値を制御する請求項18に記載の半導体発光素子の製造システム。
【請求項23】
前記第1不純物濃度分布制御手段は、前記発光層の井戸層と障壁層のうちの少なくとも障壁層の成長時にSiHガスおよび/またはSiH(CHガスの導入時間を制御することにより前記不純物濃度分布の最低値を制御する請求項18に記載の半導体発光素子の製造システム。
【請求項24】
半導体発光素子の発光出力と駆動電圧を測定して検査する発光出力および駆動電圧検査手段と、測定した該発光出力と該駆動電圧のうちの少なくともいずれかが所定範囲を脱した場合に、次の発光層の形成時に、測定した該発光出力と該駆動電圧に応じて、該駆動電圧の上昇を最小限にしつつ最大の発光出力が得られるように前記MOCVD手段を制御して前記発光層の不純物濃度分布を制御する第2不純物濃度分布制御手段とを更に有する請求項18に記載の半導体発光素子の製造システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−115372(P2013−115372A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262698(P2011−262698)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】