説明

半導体発光素子およびその製造方法

【課題】 光取出し側の電極部である上側電極部と、この電極部と対になる電極部である中間電極部とを適切な位置関係で配設することにより、大電流印加時の発光効率を維持させた半導体発光素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 支持基板の上面側に、中間電極部を含む中間層、第2導電型半導体層、活性層、第1導電型半導体層および上側電極部を順次具え、支持基板の下面側に下側電極層を具える半導体発光素子であって、前記中間電極部を互いの中間電極部間の間隔が50μm以上100μm以下の均等に分散した島状または等間隔の縞状、格子状かつ上面から見た中間電極部の第2導電型半導体層に対する面積率が3〜9%となるように配置することにより、大電流での使用時でも発光効率の高い半導体発光素子を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子およびその製造方法に関し、特に、大電流での発光効率(発光効率=光出力/投入電力)を向上させ、大電流印加で高出力が得られる半導体発光素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDの(半導体発光素子)の用途の多様化と共に、照明用途や高感度センサーなどLEDの高出力化のニーズが増えてきている。一般的にLEDは、ある電流領域までは印加する電流に応じて出力が上がることから、高出力が必要な用途においては、大電流での使用が前提となっているものも多く、大電流でも高い発光効率を維持することが望まれている。
【0003】
一般に、LEDは、例えばn型半導体層、活性層およびp型半導体層を含む半導体積層体を一対の電極で挟んで構成される。このようなLEDに電圧を印加すると、活性層において光が発生し、この光は全方位に等方的に向かうこととなる。このような光のうち、光取り出し側の電極部に向かった光は、この電極部に吸収および/または反射され、LEDの外部に放出されず、光取出し効率に影響を与えることが知られている。
【0004】
このような問題を解決するため、特許文献1には、光取出し側の電極部に対して、InGaP材料からなる中間エネルギーギャップ層を適正に配置することにより、この電極部の直下位置以外の活性層にも発光領域を広げ、これにより、光取出し効率を向上させる技術が開示されている。
【0005】
特許文献1の構造では、活性層で発生した光のうち、GaAs基板の方向に向かった光は、GaAs基板で吸収され出力に寄与しない。半導体層積層の成長に用いた基板での光の吸収をなくす方法として、例えば特許文献2などに記載されているような、ウエハ接合技術が開示されている。ウエハ接合技術は、半導体積層成長済みの基板を、直接、あるいは中間層を介して他の基板と接合する技術である。これを用いて、例えば反射金属層を介して他の基板と接合した後に、成長基板を除去すれば、基板で吸収されていた光を反射金属層により反射させ、取り出し効率を向上させることができる。
【0006】
さらに、特許文献3では、半導体積層に一部開口のある透光性絶縁膜を介して金属反射膜を配置することで、反射膜の反射率を高く維持する技術が開示されている。絶縁膜の開口部にはコンタクト部が形成され、それにより半導体積層への通電が行われる。
【0007】
加えて、特許文献4のように光取り出し側の上部電極の直下以外の部分にコンタクト部を形成することで、発生した光の取り出し効率の向上を図る技術が開示されている。従来は、活性層の発光領域が、光取出し側の電極部の直下位置から離れた位置にあるほど、光取出し側の電極部による光の遮蔽の影響は少ないとされ、光取出し側の電極部の直下位置と、この電極部と対になる電極部との間の距離を大きくすることにより、LEDの光取出し効率を向上させるのが一般的であった。
【0008】
【特許文献1】特許第2766311号公報
【特許文献2】特開昭61−59886号公報
【特許文献3】特開2007−221029号公報
【特許文献4】特開2009−076490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明者らの鋭意研究の結果、出力が向上するとされた先の特許文献4に記載の構造のLEDでは、電流が活性層の特定の箇所に集中し、印加電流の増加に伴う発光効率の低下率が大きいことが分かった。
本発明の目的は、光取出し側の電極部である上側電極部と、第2導電型層と支持基板との間のコンタクト部である中間電極部とを、適切な配置、形状で配設することにより、大電流印加時の発光効率を向上させ、大電流印加で高出力が得られる半導体発光素子およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため鋭意研究した結果、コンタクト部である中間電極部を、上側電極部に合わせて配置させるのではなく、第2導電型層に対して均等に分散させ、さらに中間電極部の第2導電型半導体層に対する面積率を3〜9%にすることにより大電流印加でも高出力が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明による半導体発光素子の構成は、支持基板の上面側に、中間層、第2導電型半導体層、活性層、第1導電型半導体層および上側電極部を順次具える半導体発光素子であって、その中間層は前記第2導電型半導体層と支持基板とを電気的に接続する中間電極部を有し、中間電極部は均等に分散した島状または等間隔の縞状、格子状に配置されており、かつ上面から見た中間電極部の第2導電型半導体層に対する面積率が3〜9%であることを特徴とする。
【0012】
この半導体発光素子において、支持基板と中間層との間に、反射層としての金属層をさらに具えることが好ましい。
また、中間電極部は島状に点在し、互いの間隔が50μm以上100μm以下であり、1つの電極の大きさが10〜20μmの多角形あるいは円形であることが好ましい。
または、中間電極部は、間隔が50μm以上100μm以下であり線幅5〜10μmの縞形状または格子形状であることが好ましい。
【0013】
また、本半導体発光素子の製造方法は、成長基板の上方に、第1導電型半導体層、活性層および第2導電型半導体層を順次形成する工程と、該第2導電型半導体層上に中間電極部を含む中間層を形成する工程と、中間層の上方に、支持基板を接合する工程と、成長基板を除去して第1導電型半導体層を露出する工程と、露出した第1導電型半導体層上に、上側電極部を形成する工程とを具え、中間電極部は、第2導電型半導体層と支持基板とを電気的に接続し、均等に分散した島状または等間隔の縞状、格子状であり、かつ上面から見た中間電極部の第2導電型半導体層に対する面積率が3〜9%であるであることを特徴とする。
【0014】
この製造方法において、中間層上に、反射層としての金属層を形成する工程をさらに具えることが好ましい。また、金属層上および支持基板上に接合層を形成する工程をさらに具えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明で得られる半導体発光素子では、上面電極直下に中間電極部が存在する場合でも、中間電極部の総面積が小さいことで高い出力が得られ、さらに印加電流を上昇させていった際に、従来のものに比べて発光効率の低下率が低く、たとえば100mA以上のような大電流での使用時には従来品よりも発光効率の高い発光素子が得られる。
つまり、低電流では電流の流れやすい場所を電極の影のできない場所に導いてやることで効率が上がるが、大電流では電力集中の原因となり、かえって発熱により効率や信頼性が低下する。大電流に対しては、電流が面として行き渡るように、本発明の形状で均等な分散状態であることが、もっとも効率がよく信頼性が高い発光素子が得られる。
【0016】
また、本発明によると、上側電極部に対する中間電極部のずれが許容されるため上側電極部との両面アライメントが不要となり、製造工程の簡略化および上側電極部やチップサイズの違いによる多品種化が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に従う半導体発光素子を示す模式図である。
【図2】本発明に従う半導体発光素子の製造工程を示す模式図である。
【図3】実施例と比較例の中間電極部を示す平面図である。
【図4】中間電極部の面積率に対する発光出力を示すグラフである。
【図5】比較例の中間電極部を示す平面図である。
【図6】順方向電流に対する発光出力および発光効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の半導体発光素子の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1(a)および図1(b)は、本発明に従う半導体発光素子のダイシング前の断面構造およびダイシング後の所定のチップの平面図をそれぞれ模式的に示したものである。
【0019】
図1(a)に示すように、本発明の半導体発光素子1は、支持基板2の上面側に、中間電極部3aを含む中間層3、第2導電型半導体層4、活性層5、第1導電型半導体層6および上側電極部7を順次具え、中間層3は、縞状、格子状または島状に点在する少なくとも1つの中間電極部3aを有する。図では支持基板2の下面側に下側電極層8を具えるが、支持基板2の種類によっては無くても良い。
【0020】
また、図1(b)に示すように、これら上側電極部7と中間電極部3aとを第2導電型半導体層4と平行な仮想面上に投影したとき、上側電極部7と中間電極部3aとの形状は相互に関係なく、上側電極部7は中央に電極パッドを有して前記電極パッドから延伸する補助電極を素子全体に渡してあり、中間電極部3aは第2導電型半導体層4に対して均等となるように配置されている。
第1導電型半導体層6の厚さと導電性が十分に大きい場合は、上側電極部7の補助電極は必須では無く、中央の電極パッドがあるだけでもよい。
【0021】
このように、第2導電型半導体層4と支持基板2とを電気的に接続する中間電極部3aが、上側電極部7の形状と無関係に第2導電型半導体層4に対して均等配置されていることで、電流の集中を最小限に留めることができ、大電流印加時の発熱による発光効率の低下を最小限に抑えることができる。ここで、均等配置とは互いの中間電極部の間隔が実質的に等しいことを言い、中間電極部間の平均間隔に対し5%以下のずれまでは許容するものとする。
【0022】
前記中間電極部3aの間隔は、50μm以上100μm以下が好ましい。中間電極部3aの間隔を50μm未満とすると、反射率が他の絶縁層3bの部分よりも小さくなる中間電極部3aの面積が大きくなり、基板側への発光を反射させる効果が十分に得られない。一方、中間電極部3aの間隔を100μm超えとすると、電気抵抗の距離成分が増加してしまい、低順方向電圧を実現することができない。また、中間電極部は島状に点在し、1つの電極の大きさが10〜20μmの多角形あるいは円形であることが好ましい。電極の大きさとは、最大の対角線あるいは直径の大きさを意味する。または、中間電極部は、線幅5〜10μmの縞形状または格子形状であることが好ましい。いづれの場合でも均等配置が実現できる。
【0023】
前記中間電極部3aの第2導電型半導体層4に対する面積率は、3%以上9%以下が好ましい。3%未満では順方向電圧が増加し、9%より大きいと基板側への発光を反射させる効果が十分に得られずに、出力が小さくなるためである。
【0024】
第2導電型半導体層4、活性層5、第1導電型半導体層6を構成する材料としては、例えばAlGaAs系材料およびAlGaInP系材料が挙げられ、支持基板2の材料はこれらの材料に応じて適宜選択することができる。これらの層4,5,6および支持基板2の厚さは、それぞれ1〜10μm,10〜500nm(総厚),1〜10μmおよび100〜400μmとすることができる。なお、第1導電型半導体層6をp型層とした場合には第2導電型半導体層4をn型層とし、その逆も同様である。
本発明において、第2導電型半導体層4がp型半導体層であり、第1導電型半導体層6がn型半導体層であることがより好ましい。第1導電型半導体層6に比べて第2導電型半導体層4の電気抵抗が高く電気が広がりにくい場合に、本発明の中間電極部3aを均等に配置することで電力集中を抑える効果が発揮されやすいからである。
【0025】
上側電極部7は、例えばAuGe系合金材料からなるオーミックコンタクト層(50〜500nm)およびTi材料上にAu材料を積層したワイヤボンディング用のパッド層(1〜3μm)を有する構造とすることができ、下側電極層8の材料は、支持基板2の材料に応じて適宜選択することができ、支持基板2が下側電極層8を兼ねてもよい。
【0026】
中間電極部3aの材料は、例えばAuZn系合金材料とすることができ、中間層3の中間電極部3a以外の部分は、例えばSiOまたはSi材料からなる絶縁材料で形成することができる。ウエハ接合時に表面の凹凸が少ないことが望ましいため、中間層3の厚さは、絶縁材料層と同等の厚さであることが好ましく、50〜500nmとするのが好ましい。これは、厚さが50nm未満では、絶縁不十分になるおそれがあり、また、500nmを超えても本願の効果は得られるが、500nmを超えて厚くすると絶縁材料による光の影響が無視できなくなることがあり、また、厚くすることによる効果も期待できず不経済となることが考えられるためである。
【0027】
また、支持基板2と中間層3との間に、反射層としての金属層9をさらに設けるのが好ましい。活性層5で発生した光のうち、支持基板2側に向かった光を上側電極部7側から効率的に取り出すためである。金属層9は、例えばAu、Al、Cuまたははんだ材料等の接合用金属材料とすることができ、赤〜赤外の波長の光を発光層で発生させる場合には、同波長範囲において高い光の反射率を有するAu材料が好ましく、その厚さは100〜1000nmの厚さとするのが好ましい。100nm未満の場合には、光の反射率が劣る場合があり、1000nmを超える厚さとしても本願の効果は得られるが、光の反射率を高くする効果が期待できず不経済となることによる。
【0028】
次に、本発明の半導体発光素子の製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図2(a)〜図2(h)は、本発明に従う半導体発光素子の製造工程を模式的に示したものである。
【0029】
本発明の半導体発光素子1の製造方法は、図2(a)に示すように、成長基板10の上方に、第1導電型半導体層6、活性層5および第2導電型半導体層4を順次形成する。これら層6,5,4は例えばMOCVD法を用いてエピタキシャル成長により形成することができる。成長基板10は、例えばGaAs基板とすることができ、その厚さは、特に限定されないが、200〜400μmとすることができる。
【0030】
次に、図2(b)および図2(c)に示すように、第2導電型半導体層4上に中間電極部3aを含む中間層3を形成する。中間電極部3aは、例えばスパッタリング法、電子ビーム蒸着法または抵抗加熱蒸着法により第2導電型半導体層4上に蒸着した後、図2(b)に示すように、所定の形状にエッチングする。その後、所定の熱処理を施すことにより第2導電型半導体層4との間のコンタクト抵抗を下げることができる。次いで、中間電極部3aおよび第2導電型半導体層4上に、例えばスパッタリング法またはプラズマCVD法により絶縁膜を成膜し、例えばウェットエッチングまたはドライエッチングにより中間電極部3aよりも上方の絶縁膜を除去して図2(c)に示すような中間層3を形成する。
【0031】
次に、図2(d)および図2(e)に示すように、中間層3の上方に支持基板2を接合する。このとき、予め中間層3上に反射層としての金属層9を形成しておくのが好ましい。金属層9は、例えばAu、Al、Cuまたははんだ材料等の接合用金属材料を蒸着することにより形成することができ、特に、低温での接合が可能であり、また酸化や腐食が少ないため、Au材料で形成するのがより好ましい。また、この金属層9上に、例えばPt材料からなる拡散防止層(50〜200nm)および例えばAu材料からなる接合層(1〜2μm)を形成してもよい。これに対し、支持基板2上に、予め接合層を形成しておくことが好ましい。例えばAuGe系合金材料からなるオーミックコンタクト層(50〜500nm)、例えばTi材料からなる密着層(50〜200nm)および例えばAu材料からなる接合層(1〜2μm)を形成しておくのが好ましい。また、支持基板2の接合は、例えば250〜400℃の範囲の温度で15〜120分間加熱圧着することによるのが好ましい。これらの金属層を介して接合することで、低温での基板接合が可能になり、半導体層の特性や構造を劣化させることなく接合することができる。支持基板2は接合以外に、めっき等により形成しても良い。
【0032】
その後、図2(f)に示すように、成長基板10を除去して第1導電型半導体層6を露出する。成長基板10の除去は、例えば研磨またはウェットエッチングにより行うことができ、エッチング液は、成長基板10の材料に応じて適宜選択することができる。
【0033】
露出した第1導電型半導体層6上には、図2(g)に示すように、上側電極部7を形成する。この上側電極部7は、例えばオーミックコンタクト層上にパッド層を蒸着し、フォトリソグラフィ後にウェットエッチングを施すことにより、図1(b)に示すように、上側電極部7と中間電極部3aとを第2導電型半導体層4と平行な仮想面上に投影したとき、上側電極部7と中間電極部3aとの形状は相互に関係なく、上側電極部7は中央に電極パッドを有して前記電極パッドから延伸する補助電極を素子全体に渡してあり、中間電極部3aは第2導電型半導体層4に対して均等となるように配置されている。
【0034】
その後、所定の熱処理を施すことにより、第1導電型半導体層6との間のコンタクト抵抗を下げることができる。
【0035】
また、支持基板2の下面側に下側電極層8を蒸着して形成し、図2(h)に示されるようにダイシングが行われる。下側電極層8の形成は無くてもよい。
【0036】
本発明に従う半導体発光素子は、上述したような方法を用いて製造することができる。
【0037】
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0038】
次に、本発明の発光素子を試作し、性能を評価したので、以下で説明する。
実施例は、図1に示す断面構造を有し、GaAs材料からなる成長基板(厚さ:280μm)上に、MOCVD法を用いてAl0.4Ga0.6As材料からなるn型半導体層(厚さ:5μm,ドーパント:Te,濃度:5×1017/cm)、InGaAs/AlGaAs多重量子井戸構造の活性層(厚さ:8nm/5nm,3組,総厚:約50nm)およびAlGaAs材料からなるp型半導体層(厚さ:2μm,ドーパント:C,濃度:1×1018/cm)を1回のエピタキシャル成長で順次形成し、抵抗加熱蒸着法によりAuZn合金(Zn含有率:5質量%)からなる中間電極部材料を蒸着して、所定のフォトリソグラフィ後のエッチングにより中間電極部(厚さ:100nm)を形成した後、中間電極部とp型半導体層とのオーミックコンタクトをとるために、420℃の熱処理を施した。
次に、プラズマCVD法により、中間電極部およびp型半導体層上にSi材料を成膜し、BHFエッチング液を用いたウェットエッチングにより、中間電極部よりも上方のSi材料を除去して中間層を形成した。
中間層上には、反射層として、電子ビーム蒸着法により、Au材料からなる金属層(厚さ:500nm)を形成し、この金属層上に、Pt材料からなる拡散防止層(厚さ:100nm)およびAu材料からなる接合層(厚さ:1μm)を形成した。また、接合用にGaAs材料からなる支持基板(厚さ:280μm,ドーパント:Si,濃度:2×1018/cm)を用意し、この上には、予めAuGe系合金(Ge含有率:12質量%)材料からなるオーミックコンタクト層(厚さ:200nm)、Ti材料からなる密着層(厚さ:100nm)およびAu材料からなる接合層(厚さ1μm)を形成しておいた。これら中間層の接合層と支持基板の接合層とを、350度で30分間加熱圧着し、支持基板の接合を行った。このようにして得られた構造物に対し、室温のアンモニア水:過酸化水素水:水=1:12:18(体積比)の液中において2時間揺動させることによりウェットエッチングを行い、成長基板の除去を行った。
次に、露出したn型半導体層上に、低温加熱蒸着法により、AuGe系合金(Ge含有率:12質量%)材料からなるオーミックコンタクト層(厚さ:200nm)およびTi材料上にAu材料を積層してパッド層(Ti厚さ:100nm、Au厚さ:2μm)を蒸着し、フォトリソグラフィ後にウェットエッチングを施すことにより、図1(b)に示す上部電極を形成した。また支持基板裏面に、同様にAuGe系合金(Ge含有率:12質量%)材料からなるオーミックコンタクト層(厚さ:200nm)を形成した。その後、380℃の熱処理を施した。
最後に、リン酸および過酸化水素水の混合液を用いてエッチングによりメサを形成し、ダイサーを用いてダイシングすることにより、320μm角の正方形チップを作製した。
【0039】
ダイシング後のp型半導体層の面積(本実施例においてはチップサイズに等しく320×320μm)に対する中間電極部の面積の割合が変化するように中間電極部の直径や間隔を変えて、図3(a)〜図3(g)に示すような実施例および比較例のサンプルを作製した。図3(a)で示す比較例1の中間電極部は直径20μmの円を128μm間隔で均等に配置し、面積率は2.8%であった。図3(b)で示す実施例1の中間電極部は直径20μmの円を85μm間隔で均等に配置し、面積率は4.9%であった。図3(c)で示す実施例2の中間電極部は直径20μmの円を64μm間隔で均等に配置し、面積率は7.7%であった。図3(d)で示す比較例1の中間電極部は直径20μmの円を51μm間隔で均等に配置し、面積率は11%であった。図3(e)で示す比較例2の中間電極部は直径30μmの円を64μm間隔で均等に配置し、面積率は17.3%であった。図3(f)で示す比較例3の中間電極部は直径30μmの円を51μm間隔で均等に配置し、面積率は24.9%であった。図3(g)で示す比較例4の中間電極部は直径40μmの円を51μm間隔で均等に配置し、面積率は44.2%であった。また、図には示さないが、比較例5の中間電極部は全面であり、面積率は100%であった。
【0040】
このようにして作製したチップをTO−18ステムに銀ペーストを用いてマウントし、ワイヤボンディング後に積分球に設置し、電流20mAとなるように通電したときの順方向電圧Vf(V)および発光出力Po(mW)を測定した。これらの結果を表1に示す。なお、光出力は全光束分光測定システム(Labshere社製SLMS−1021−S)を用いて測定した。
【0041】
【表1】

【0042】
表1の結果から中間電極部の面積率が小さいほど発光出力が大きくなることがわかる。また、比較例1では順方向電圧が急激に上昇することから、面積率は3%以上であることが好ましいことが分かる。実施例1、2および比較例2〜4では順方向電圧が変わらない。この範囲を縦軸に発光出力、横軸に中間電極部のp型半導体層に対する面積率としてプロットした図を図4に示す。比較例2〜比較例4の発光出力と、実施例1、2の発光出力との間に変局点が存在し、実施例1、2の点の直線と、比較例2〜4の点の直線との交点から、9%以下であれば順方向電圧の増加を伴うことなく高い発光出力を得られることが分かる。以上の結果より、面積率は3%以上、9%以下であることが好ましい。
【0043】
次に、大電流における発光効率特性の違いについて、実施例1、比較例1、2および図5に示す比較例7の、電流に対する発光出力(Po)と順方向電圧(Vf)および単位電力あたりの発光出力から計算される発光効率(η)を測定した。これらの結果を表2および図6(a)、(b)に示す。比較例7は実施例1と中間電極部の直径と面積率が同じであるが、配置パターンを上部電極の直下に中間電極部を設けないように、上部電極の形状に合わせて配置したものである。
【0044】
【表2】

【0045】
表2および図6の結果から、中間電極部の面積率の小さい比較例1および、上部電極直下に中間電極部を配置しない比較例7では、50mA未満の低電流領域では本発明の実施例1に比べて発光効率が大きいものの、50mAでは同程度となり、その後、本発明の実施例が最も発光効率が高くなることが分かる。また、中間電極部の大きい比較例2は150mA以上では比較例1に比べて発光効率が大きくなるものの、実施例1には及ばない。
つまり、本発明によると、50mA以上、さらには100mA以上の大電流印加時に、高発光効率の発光素子を得ることができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、p型半導体層と前記支持基板とを電気的に接続する中間電極部を有し、前記中間電極部を本発明の範囲で均等に分散して配置することにより、大電流での使用時でも発光効率の高い半導体発光素子を提供することができる。
【0047】
本発明の半導体発光素子の製造方法によれば、p型半導体層と前記支持基板とを電気的に接続する中間電極部を有し、前記中間電極部を本発明の範囲で均等に分散して配置することにより、大電流での使用時でも発光効率の高い半導体発光素子を製造することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 半導体発光素子
2 支持基板
3 中間層
3a 中間電極部
4 第2導電型半導体
5 活性層
6 第1導電型半導体
7 上側電極部
8 下側電極層
9 金属層
10 成長基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板の上面側に、中間層、第2導電型半導体層、活性層、第1導電型半導体層および上側電極部を順次具える半導体発光素子であって、前記中間層は前記第2導電型半導体層と前記支持基板とを電気的に接続する中間電極部を有し、前記中間電極部は均等に分散した島状または等間隔の縞状、格子状に配置されており、かつ上面から見た前記中間電極部の前記第2導電型半導体層に対する面積率が3〜9%であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記支持基板と前記中間層との間に、反射層としての金属層をさらに具える請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記中間電極部は島状に点在し、互いの間隔が50μm以上100μm以下であり、1つの電極の大きさが10〜20μmの多角形あるいは円形である請求項1から3に記載の半導体発光素子
【請求項4】
前記中間電極部は、間隔が50μm以上100μm以下であり線幅5〜10μmの縞形状または格子形状である請求項1から3に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
成長基板の上方に、第1導電型半導体層、活性層および第2導電型半導体層を順次形成する工程と、該第2導電型半導体層上に中間電極部を含む中間層を形成する工程と、該中間層の上方に、支持基板を接合する工程と、前記成長基板を除去して前記第1導電型半導体層を露出する工程と、該露出した前記第1導電型半導体層上に、上側電極部を形成する工程とを具え、前記中間電極部は、前記第2導電型半導体層と前記支持基板とを電気的に接続し、均等に分散した島状または等間隔の縞状、格子状であり、かつ上面から見た前記中間電極部の前記第2導電型半導体層に対する面積率が3〜9%であることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記中間層上に、反射層としての金属層を形成する工程をさらに具える請求項5に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記金属層上および前記支持基板上に接合層を形成する工程をさらに具え、接合層間で接合を行う請求項6に記載の半導体発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−129724(P2011−129724A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287038(P2009−287038)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【Fターム(参考)】