説明

半導体発光素子アレイ及び車両用灯具

【課題】 発光輝度分布の発生を抑制する。
【解決手段】 第1の方向に長い基板上に複数の半導体発光素子が形成された半導体発光素子アレイは、前記複数の半導体発光素子のそれぞれが、前記基板上に形成された電極層と、前記電極層上に形成され、前記電極層に電気的に接続されたp型半導体層と、前記p型半導体層上に形成された活性層と、前記活性層上に形成されたn型半導体層とを有する半導体発光層と、前記半導体発光層の一辺に沿って、該一辺と平行に形成された第1配線層と、前記第1配線層から前記半導体発光層にかけて延在し、前記半導体発光層の表面において、前記n型半導体層と電気的に接続される複数の第2配線層と、前記半導体発光層の上方に形成される蛍光体層とを有し、前記半導体発光層の平面形状が、前記第1の方向に平行な底辺と、該底辺に垂直な線に対して傾斜する部分を含む少なくとも1つの辺を有し、前記半導体発光層の前記第1の方向の幅が前記底辺から離れるに従い減少する形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子アレイ及び半導体発光素アレイを用いた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のヘッドランプや照明に用いるためのLED素子には大出力が求められているが、単純に素子面積を大きくするだけだと駆動電流が大きくなってしまうということや、均一に電流を流すことが難しくなってしまうことから、複数のLED素子に分割し、直列接続したLEDアレイとすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
車両のヘッドランプ等のアプリケーションでは、横長形状のLED素子が求められているが、LED素子の分割数を多くすると、素子間の非発光部の占める割合が増加し好ましくない。そこで、LED素子の分割数を少なくするために、各LED素子の形状は横長になってしまう。
【0004】
図7(A)は、従来のLEDアレイ200を示す概略平面図であり、図7(B)は、図7(A)に示すLEDアレイ200の簡略化した断面図である。
【0005】
従来LEDアレイ200としては、絶縁性支持基板の上に、4つの窒化物半導体発光素子(LED素子)201を基板上に配置し直列接続したものが一般的である。GaN系白色LED素子を例にとると、サファイア基板上にLED構造を形成後、支持基板を貼りあわせ、サファイア基板を剥離し、電極を形成することが行われる。
【0006】
個々のLED素子201は、n型GaN層221、活性層222、p型GaN層223からなるGaN系発光部202と、発光部202の裏面に形成されたp側電極212と、発光部202の右側短辺に一定間隔を置いて平行に配置される引き出し電極(第1配線層)211及び発光部202の表面に発光部202の長辺と平行に配置され、n型GaN層221と引き出し電極211とを接続する引き出し電極(第2配線層)208とを有している。左右に隣接するLED素子201は、右側素子のp側電極212上に左側素子の引き出し電極211が形成されることにより、左側素子のn型GaN層221と右側素子のp型GaN層223が接続されている。
【0007】
蛍光体層231は、基板230上に実装された複数の発光素子201を封止する。例えば、発光素子201が青色LED素子であるとき、蛍光体として黄色蛍光体を組み合わせることにより、白色発光させるLEDアレイ200を作成することができる。この場合、透光性樹脂に予め黄色蛍光体を含有させ、蛍光体を含有させた透光性樹脂(蛍光体含有樹脂)で発光素子202を封止する。
【0008】
なお、図7(A)の発光部202に施したハッチングは発光輝度分布を表し、ハッチングの密度が高くなるに従い輝度が高くなることを表している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−156331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図7(C)及び(D)は、図7(A)に示すLEDアレイ200の直線ef間における輝度分布を概略的に表す図である。図7(C)は、LEDアレイ200が蛍光体層231を備えない場合の、青色発光素子としての直線ef間における輝度分布を表し、図7(D)は、LEDアレイ200が蛍光体層231を備えた場合の、白色発光素子としての直線ef間における輝度分布を表す。
【0011】
図7(C)に示すように、蛍光体層231がない青色発光の状態では、従来、輝度分布が素子面内において一様でフラットなものとなっている。しかし、このようなフラットな輝度分布を持つ青色発光素子に蛍光体層231を形成して白色化すると、素子面内において縦方向(図中H方向)の中心部の輝度(最大輝度)が端部の輝度(基準輝度)に比べて約1.2〜1.67倍になり、図7(D)に示すような縦方向の中心部が明るく、端部に行くに従い徐々に暗くなるという輝度分布(ランバーシアン配光)が形成されてしまう。このようなLEDアレイ200を用いてヘッドランプ等を構成すると、照射像に大きな輝度ムラが生じる。
【0012】
本発明の目的は、発光輝度分布の形成を抑制した半導体発光素子アレイを提供することである。
【0013】
また、本発明の他の目的は、照射像の輝度ムラを抑制した車両用灯具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一観点によれば、第1の方向に長い基板上に複数の半導体発光素子が形成された半導体発光素子アレイは、前記複数の半導体発光素子のそれぞれが、前記基板上に形成された電極層と、前記電極層上に形成され、前記電極層に電気的に接続されたp型半導体層と、前記p型半導体層上に形成された活性層と、前記活性層上に形成されたn型半導体層とを有する半導体発光層と、前記半導体発光層の一辺に沿って、該一辺と平行に形成された第1配線層と、前記第1配線層から前記半導体発光層にかけて延在し、前記半導体発光層の表面において、前記n型半導体層と電気的に接続される複数の第2配線層と、前記半導体発光層の上方に形成される蛍光体層とを有し、前記半導体発光層の平面形状が、前記第1の方向に平行な底辺と、該底辺に垂直な線に対して傾斜する部分を含む少なくとも1つの辺を有し、前記半導体発光層の前記第1の方向の幅が前記底辺から離れるに従い減少する形状である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発光輝度分布の形成を抑制した半導体発光素子アレイを提供することができる。
【0016】
また、本発明によれば、照射像の輝度ムラを抑制した車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例によるLEDアレイ100及びLED素子101の概略平面図、回路図及び断面図である。
【図2】本発明の実施例によるLEDアレイ100の発光輝度分布を概略的に表す図である。
【図3】本発明の実施例によるLEDアレイ100を組み込んだ車両用灯具(ヘッドランプ)50の構成を表す概念図である。
【図4】本発明の実施例によるLEDアレイ100の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図5】本発明の実施例によるLEDアレイ100の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図6】本発明の実施例によるLEDアレイ100の他の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図7】従来例によるLEDアレイ400の概略平面図、断面図及び発光輝度分布を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1(A)は、本発明の実施例によるLEDアレイ100の概略平面図であり、図1(B)は、LEDアレイ100の等価回路図である。図1(C)は、図1(A)の直線ab間のLEDアレイ100の簡略化した断面図である。なお、図1(A)中発光部2に施したハッチングは発光輝度分布を表し、ハッチングの密度が高くなるに従い輝度が高くなることを表している。
【0019】
本発明の実施例によるLEDアレイ100は、絶縁層7が形成された図中W方向に長い支持基板30上に、該W方向に沿って8つの窒化物半導体発光素子(LED素子)101(101a及び101b)を配置し、直列接続したものである。
【0020】
車両のヘッドランプや照明に用いるためのLED素子には大出力が求められているが、単純に素子面積を大きくするだけだと駆動電流が大きくなってしまうということや、均一に電流を流すことが難しくなってしまうことから、本実施例では、複数のLED素子101をアレイ化し、LEDアレイ100としている。またそれぞれのLED素子101に同じ電流値を流すには、直列接続が好ましい。
【0021】
また、車両のヘッドランプに用いる場合には、地表面近傍を照明することが要求され、LEDアレイ100は横方向に長い(図中W方向に長い)形状であることが好ましい。LEDアレイ100の寸法は、例えば、幅5mm以上、高さ1mm以下に設定される。
【0022】
個々のLED素子101は、支持基板30の上記W方向に沿った辺に平行な底辺を有する三角形状であり、n型GaN層21、活性層22、p型GaN層23からなるGaN系発光部(デバイス構造層)2と、発光部2の裏面に形成され該発光部の上下いずれかの前記三角形状の頂点から露出するp側電極12と、p側電極が露出する頂点とは逆側の前記三角形状の底辺と一定間隔を置いて平行に配置される引き出し電極(第1配線層)11及び発光部2の表面上にLEDアレイ100の短辺に平行に配置され、n型GaN層21と引き出し電極11とを接続する引き出し電極(第2配線層)8とを有している。
【0023】
蛍光体層31は、基板30上に実装された複数の発光素子101を封止する。例えば、発光素子101が青色LED素子であるとき、蛍光体として黄色蛍光体を組み合わせることにより、白色発光させるLEDアレイ100を作成することができる。この場合、透光性樹脂に予め黄色蛍光体を含有させ、蛍光体を含有させた透光性樹脂(蛍光体含有樹脂)で発光素子102を封止する。
【0024】
個々のLED素子101は、それぞれ左右に隣接するLED素子101と直列に接続されており、LED素子101aの引き出し電極11は、左側に位置するLED素子101bのp側電極12と電気的に接続され、LED素子101aのp側電極12は右側に位置するLED素子101bの引き出し電極11と電気的に接続されている。LEDアレイ100の端部に位置するLED素子101aのp側電極12及びLED素子101bの引き出し電極11はそれぞれ給電パッド13に接続されている。
【0025】
LED素子101aは、LEDアレイ100の上長辺側に該長辺に平行に給電側である引き出し電極11が配置され、そこからn型GaN層21上にかけて引き出し電極8がLEDアレイ100の短辺に平行に配置されるため、図中上から下にかけて徐々に注入電流が減少する。発光部2の平面形状が三角形状であるため、下方向に進むにつれ、発光部のW方向の幅が減少し、発光部2の三角形状の頂点付近では、輝度が低下する。そのため、上側が明るく、下側が暗くなる発光輝度分布を有する。
【0026】
LED素子101bは、LED素子101aとは逆に、LEDアレイ100の下長辺側に該長辺に平行に給電側である引き出し電極11が配置され、そこからn型GaN層21上にかけて引き出し電極8がLEDアレイ100の短辺に平行に配置されるため、図中下から上にかけて徐々に注入電流が減少する。発光部2の平面形状が三角形状であるため、上方向に進むにつれ、発光部のW方向の幅が減少し、発光部2の三角形状の頂点付近では、輝度が低下する。そのため、下側が明るく、上側が暗くなる発光輝度分布を有する。
【0027】
すなわち、LED素子101aの発光面には、引き出し電極11側にピーク(最大輝度部)を持ち、図中下方向(H方向)に引き出し電極11から離れるに従い徐々に減少する輝度分布が形成される。LED素子101bの発光面にもLED素子101aと同様の輝度分布が形成されるが、LED素子101bでは引き出し電極11が下側の長辺に沿って形成されるため、LED素子101aの発光面とは逆に、下側長辺にピークを持ち、上方向にかけて徐々に減少する輝度分布が形成される。
【0028】
なお、LED素子101aとLED素子101bは、p側電極12、引き出し電極11、引き出し電極8の配置等の電極パターンが異なり、その他の構造は同一であり、LED素子101aの電極パターンを上下に反転(180度回転)したものがLED素子101bである。
【0029】
本実施例では、発光部2の一方の長辺(図1(A)では下側の長辺)側に引き出し電極(第1配線層)11を配置し、当該一方の長辺から他方の長辺近傍に向かって延在する引き出し電極(第2配線層)8を有するLED素子101aと、他方の長辺(図1(A)では上側の長辺)側に引き出し電極(第1配線層)11を配置し、当該他方の長辺から上記一方の長辺近傍に向かって延在する引き出し電極(第2配線層)8を有するLED素子101bとをLEDアレイ100の長辺方向に交互に配列する。
【0030】
図2(A)は、本発明の実施例によるLEDアレイ100において、蛍光体層31が形成されていない場合の青色発光輝度分布を表平面図である。図2(B)は、図2(A)の直線cd間における蛍光体層31が形成されていない場合のLEDアレイ100の発光輝度分布を概略的に表す図である。なお、図2(A)に施したハッチングは発光輝度分布を表し、ハッチングの密度が高くなるに従い輝度が高くなることを表している。
【0031】
図1(A)に示すようにLED素子101を配列することにより、発光部2の頂点付近の非常に輝度が低い領域は両側に隣接する他のLED素子101の輝度が高い底辺近傍領域にはさまれることとなる。頂点付近は、輝度が非常に低くなっているものの、W方向の幅が非常に狭くなっているので、両側に隣接するLED素子101の底辺近傍の発光が拡散等することにより、LEDアレイ100全体としては、当該部分の輝度は低下しない。これに対して、H方向の中心部では、隣接するLED素子101のいずれも底辺近傍に比較して低い輝度を有しているので、図2(A)に示すように、蛍光体層31がない状態の青色発光LEDアレイ100全体としては、W方向の中心部近傍領域では、底辺近傍領域に比較して低い輝度分を有することとなる。
【0032】
図2(B)に示すように、本発明の実施例では、W方向の中心部近傍領域の輝度(基準輝度)が、底辺近傍領域(最大輝度)の約0.6〜0.83倍(本実施例では、0.67倍とする)になるように設定される。すなわち、図7(D)に示したような、蛍光体層によるランバーシアン配光(中心部が明るく周囲に行くほどなだらかに暗くなる輝度分布)とは、逆のM型の輝度分布を意図的に形成する。
【0033】
蛍光体層31を形成すると、図7(D)に示したように、W方向の中心部近傍領域における輝度が、端部近傍領域における輝度に比較して約1.2〜1.67倍(本実施例では、1.5倍程度とする)になってしまうので、本実施例のように、蛍光体層31がない状態の青色発光において、W方向の中心部近傍領域の輝度(基準輝度)が、底辺近傍領域(最大輝度)の約0.67倍程度になるように、あえて発光輝度分布をつけることにより、図2(C)に示すように、蛍光体層31が形成されて白色発光となった場合における発光輝度分布を平坦化することが可能となる。
【0034】
なお、本明細書において、三角形状とは、完全な三角形に限らず、設計及び製造上の誤差を含むのはもちろん、それぞれの角が丸められたものや面取りされたものなど、三角形に近似する形状を含む。また、三角形は、図に示すような正三角形に限らず、二等辺三角形や、直角三角形等でもよい。要するに、底辺がLEDアレイ100の長手方向の辺に平行に配置され、頂点が長手方向の他の辺側に配置される三角形状であれば良い。
【0035】
なお、本実施例では、引き出し電極11をLED素子101の長辺に沿って配置するため、短辺に沿って配置する従来技術に比べて、LED素子101間の間隔を狭くすることができる。したがって、LED素子101間領域の輝度低下をさらに抑制することができる。
【0036】
図3は、本発明の実施例によるLEDアレイ100を組み込んだ車両用灯具(ヘッドランプ)50の構成を表す概念図である。
【0037】
ヘッドランプ50は、LEDアレイ100からなる光源と、複数の小反射領域に区画されたマルチリフレクタである反射面103、シェード104及び照射レンズ105を含む照射光学系51とを含んで構成される。
【0038】
光源(LEDアレイ)100は、照射方向(発光面)が上向きとなるように配置され、反射面103は、第1焦点が光源102近傍に設定され、第2焦点がシェード104の上端縁近傍に設定された回転楕円形の反射面であり、光源102からの光が入射するように、光源102の側方から前方にかけての範囲を覆うように配置されている。
【0039】
反射面103は、光源100の光源像106を車両前方に照射し、車両前端部に正対した仮想鉛直スクリーン(照射面)107上に、光源像106が照射されるように構成されている。
【0040】
シェード104は、反射面103からの反射光の一部を遮光してヘッドランプに適したカットオフラインを形成するための遮光部材であり、上端縁を照射レンズ105の焦点近傍に位置させた状態で照射レンズ105と光源102の間に配置されている。
【0041】
照射レンズ105は、車両前方側に配置され、反射面103からの反射光を照射面107上に照射する。
【0042】
図4及び図5を参照して、本発明の実施例によるLEDアレイ100の製造方法を説明する。図4及び図5は、図1の直線ab間の概略断面図であるので、図中1つの窒化物半導体発光素子(LED素子)101aのみが表されているが、実際には、複数のLED素子101a及び101bが交互に配列されて同一基板上に同時に形成される。なお、以下の製造方法は、あくまでも一例であり、これに限られるものではない。
【0043】
まず図4(A)に示すように、サファイアからなる透明基板1を準備し、有機金属化学気相成長(MOCVD)法を用いて窒化物系半導体からなるデバイス構造層(GaN系発光部)2を形成する。具体的には、例えば、サファイア基板1をMOCVD装置に投入後、サーマルクリーニングを行い、GaNバッファ層20を成長した後に、Si等をドープした膜厚5μm程度のn型GaN層21、InGaN量子井戸層を含む多重量子井戸発光層(活性層)22、Mg等をドープした膜厚0.5μm程度のp型GaN層23を含むGaN系発光部2を順次成長させる。なお、本願図4及び図5に示す断面図は、説明の便宜上、縮尺を変更している。透明基板1は、GaNのエピタキシャル成長が可能な格子定数を有する単結晶基板であり、後でレーザーリフトオフによる基板剥離を可能にするよう、GaNの吸収端波長である362nmの光に対して透明なものから選択される。サファイア以外に、スピネル、SiC、ZnO等を用いても良い。
【0044】
次に図4(B)に示すように、デバイス構造層2表面(p型GaN層23表面)に、電子ビーム蒸着法により膜厚200nmのAg層を形成し、フォトリソグラフィによってパターニングされたp電極層(第1電極層)3を形成する。その後、p電極層3の周辺のデバイス構造層2上(p型GaN層23上)に、スパッタ法を用いてp電極層3と同じ膜厚のSiOからなるエッチングストップ層4を形成する。エッチングストップ層4は、図5(B)を参照して後述するエッチング工程においてエッチストッパーとして機能する。
【0045】
次に、p電極層3及びエッチングストップ層4を含む領域に、スパッタ法を用いて膜厚300nmのTiWからなる拡散防止層5を形成する。拡散防止層5はp電極層3に用いた材質の拡散を防止するためのもので、p電極層3にAgを含む場合には、Ti、W、Pt、Pd、Mo、Ru、Ir及びこれらの合金を拡散防止層5として用いることができる。続けて、拡散防止層5上に、スパッタ法等によりSiOからなる絶縁層7aを形成し、その上に、電子ビーム蒸着法を用いて膜厚200nmのAuからなる第1接着層6を形成する。
【0046】
なお、p電極層3と拡散防止層5からなるp側電極12の平面形状は、図1(A)に示すように、デバイス構造層2の頂点側からデバイス構造層2外側に一部が突出するように形成される。この突出した領域において、隣接するLED素子101の引き出し電極11と電気的に接続される。
【0047】
次に、図4(C)に示すように、レジストマスク及び塩素ガスを用いたドライエッチング法を用いることにより、デバイス構造層2を複数の平面形状が三角形状の素子に分割する。分割されたデバイス構造層2の側面は、上方に向かって断面積が減少する形状となる。このとき、各素子間の間隔g(図1(C))は、150μm以下、好ましくは30μm程度に設定する。
【0048】
次に、図4(D)に示すように、Siからなる支持基板10を用意し、その上に抵抗加熱蒸着法を用いて膜厚1μmのAuSn(Sn:20wt%)からなる第2接着層9を形成する。支持基板10は熱膨張係数がサファイア(7.5×10−6/K)やGaN(5.6×10−6/K)に近く、熱伝導率が高い材料が好ましい。例えば、Si、AlN、Mo、W、CuW等を用いることができる。第1接着層6の材質と第2接着層9の材質は、融着接合が可能な、Au−Sn、Au−In、Pd−In、Cu−In、Cu−Sn、Ag−Sn、Ag−In、Ni−Sn等を含む金属や、拡散接合が可能なAuを含む金属を用いることができる。
【0049】
次に、図4(E)に示すように、第1接着層6と第2接着層9を接触させ、圧力3MPaで加圧した状態で300℃に加熱して10分間保持した後、室温まで冷却することにより融着接合を行う。
【0050】
その後、UVエキシマレーザの光をサファイア基板1の裏面側から照射し、バッファ層20を加熱分解することで、図4(F)に示すように、レーザーリフトオフによるサファイア基板1の剥離を行う。なお、基板1の剥離あるいは除去は、エッチング等の別の手法を用いてもよい。
【0051】
次に、図5(A)に示すように、デバイス構造層2の端部が露出するようにフォトレジストPRを形成する。その後、塩素ガスを用いたドライエッチング法により、フォトレジストPRから露出したデバイス構造層2の端部をエッチングストップ層4が露出するまでエッチングする。これにより図5(B)に示すように、デバイス構造層2の側壁は、支持基板10を下にした場合に上方に向かって断面積が減少するテーパ状となる。
【0052】
次に、図5(C)に示すように、上述した工程で形成した素子の上面全体に、スパッタ法等によりSiOからなる保護膜(絶縁膜)7bを形成し、その後、デバイス構造層2上に形成された保護膜7bの一部を緩衝フッ酸を用いてエッチングして、透明基板1の剥離によって露出したデバイス構造層2の表面(n型GaN層21の表面)の一部を露出させる。
【0053】
次に、図5(D)に示すように、電子ビーム蒸着法により、膜厚10nmのTi層、膜厚300nmのAl層、膜厚2μmのAu層をこの順序で積層し、リフトオフによってパターニングすることにより、デバイス構造層2の底辺に近接した位置に、当該底辺に平行な、例えば、幅40μm程度の引き出し電極(第1配線層)11と、これと電気的に接続された、LEDアレイ100の短辺に平行な、例えば、幅10μm程度の引き出し電極(第2配線層)8を同時に形成する。なお、引き出し電極11の線幅は20μm以上200μm以下であることが好ましい。また、引き出し電極8の線幅は20μm以下3μm以上であることが好ましい。また、引き出し電極11の線幅は、引き出し電極8の線幅よりも広いことが望ましい。なお、引き出し電極8はLEDアレイ100の短辺に平行で長辺に垂直に形成されるが、例えば、斜辺に平行にするなど、長辺に平行でなければ必ずしも短辺に平行でなくても良い。
【0054】
引き出し電極11は、隣接した素子ではお互いに異なる長辺に近接して形成される。引き出し電極8は、上述の工程で露出されたデバイス構造層2の表面(n型GaN層21の表面)の一部と電気的に接続されている。n側(n型GaN層21)に接続する引き出し電極11及び引き出し電極8は、n型GaN層21の表面上に形成されるので、輝度を損なわないように、図1に示すような引き出し電極11を基部とし、引き出し電極8を櫛の歯とする櫛歯形の平面形状となっている。
【0055】
引き出し電極11を形成する位置は、デバイス構造層2から発せられる光の取り出しを妨げないようにするために、デバイス構造層2以外の領域が望ましい。しかしデバイス構造層2から離れすぎると、引き出し電極8での配線抵抗が大きくなるため、デバイス構造層2の長辺と引き出し電極11の間隔は50μm以内であることがより望ましい。引き出し電極11は隣接した素子のp電極層3と電気的に接続され、複数の素子が直列に接続された発光素子アレイ100が形成される。なお、一枚の基板から複数のLEDアレイ100を製造する場合は、スクライブ後ブレイキングして素子分離を行う。
【0056】
続いて、図5(D)に示すように、蛍光体層(蛍光体含有樹脂層)31で、基板30上に実装された複数のLED素子101を封止する。LED素子101を蛍光体層31により封止した後に、高温で樹脂硬化させることにより、LEDアレイ100を完成させることができる。
【0057】
蛍光体層31の厚さは、例えば、20〜200μmに設定され、好ましくは、50〜100μm程度である。また、蛍光体含有樹脂は、透光性樹脂材料に対して求める色温度になるように蛍光体を測量し、攪拌によって混合することによって作製する。透光性樹脂材料としては、シリコーン、エポキシ及びシリコーンとエポキシが混合されたハイブリッドタイプの樹脂を用いることが好ましい。黄色蛍光体としては、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体を用いることが好ましい。なお、蛍光体含有樹脂には、この他、拡散材や増粘材等を混合することも可能である。LED素子101を封止する手法としては、印刷、ディスペンスなどが考えられるが、寸法精度の観点より印刷による封止が好ましい。なお、蛍光体層31の材料や厚さ等の製造条件を変化させても、中心部の輝度が周辺部に比較して1、5倍程度となることに変わりはない。
【0058】
なお、デバイス構造層2は、図6に示すように長辺の一辺のみが下方に向かって外側に広がる斜面となるように加工されていても良い。この場合、図5(A)に示すフォトレジスト形成工程において、デバイス構造層の長辺の一辺にのみ露出されるようにフォトレジストを形成し、図5(B)に示すエッチング工程では、該デバイス構造層2の長辺の一辺のみを塩素ガスを用いたドライエッチング法を用いることにより、長辺の一辺のみが下方に向かって外側に広がる斜面となる形状に加工する。また、引き出し電極8は、長辺の一辺に形成された斜面に沿って形成される。なお、このとき隣接するLED素子101では、上下に異なる側の長辺が下方に向かって外側に広がる斜面に加工されているようにする。
【0059】
以上、本発明の実施例によれば、発光部2の平面形状を底辺が長方形のLEDアレイ100の一方の長辺に沿って平行に形成され、頂点が他方の長辺側に配置されるような形状(例えば、三角形状)にすることにより、蛍光体層31を形成して白色化する前の青色LED素子101を複数有する長方形のLEDアレイ100の輝度分布を、縦方向(短辺方向)の中心部を基準輝度とした場合に、長方形のLEDアレイ100の長辺に近い側に、基準輝度の1.2〜1.67倍の輝度を有する最大輝度領域が形成されるようにする。このようにすることにより、蛍光体層31を形成して白色化した場合に、面内にフラットな白色輝度分布を得ることが可能となる。
【0060】
また、引き出し電極11をLED素子101の長辺に沿って配置するため、LED素子101間の間隔gを狭くして、LED素子101間の輝度低下を抑制することができる。
【0061】
また、発光面の斜辺は、直線に限らず曲線で構成されていても良い。また、直線と曲線の組み合わせでも良く、異なる傾斜角の直線の組み合わせでも良い。少なくとも、LEDアレイの長辺に対して傾斜を有する部分を有する辺であれば良い。すなわち、発光部2の平面形状は三角形状や三角形に近似する形状に限らず、ホームベース形状のような五角形や一つの頂点を鋭角とした四角形、台形など、LEDアレイ100の長辺に平行な底辺と、該底辺に垂直な線に対して傾斜する部分を含む少なくとも1つの辺を有する形状であって、底辺から離れるに従い発光部2の横方向の幅が徐々に減少する形状であればよい。
【0062】
以上、実施例、及び変形例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。
【符号の説明】
【0063】
1…サファイア基板、2…デバイス構造層(GaN系発光部)、3…p電極層(第1電極層)、4…エッチングストップ層、5…拡散防止層、6…第1接着層、7…絶縁膜、8…引き出し電極(第2n電極層)、9…第2接着層、10…シリコン(Si)支持基板、11…引き出し電極(第1n電極層)、12…電極層、20…バッファ層、21…n型GaN層、22…活性層、23…p型GaN層、31…蛍光体層(波長変換層)、50…ヘッドランプ、51…投射光学系、100…LEDアレイ、101…窒化物半導体発光素子(LED素子)、103…反射面、104…シェード、105…照射レンズ、106…光源像、107…照射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に長い基板上に複数の半導体発光素子が形成された半導体発光素子アレイであって、
前記複数の半導体発光素子のそれぞれが、
前記基板上に形成された電極層と、
前記電極層上に形成され、前記電極層に電気的に接続されたp型半導体層と、前記p型半導体層上に形成された活性層と、前記活性層上に形成されたn型半導体層とを有する半導体発光層と、
前記半導体発光層の一辺に沿って、該一辺と平行に形成された第1配線層と、
前記第1配線層から前記半導体発光層にかけて延在し、前記半導体発光層の表面において、前記n型半導体層と電気的に接続される複数の第2配線層と、
前記半導体発光層の上方に形成される蛍光体層とを有し、
前記半導体発光層の平面形状が、前記第1の方向に平行な底辺と、該底辺に垂直な線に対して傾斜する部分を含む少なくとも1つの辺を有し、前記半導体発光層の前記第1の方向の幅が前記底辺から離れるに従い減少する形状である半導体発光素子アレイ。
【請求項2】
前記形状は三角形である請求項1記載の半導体発光素子アレイ。
【請求項3】
隣接する半導体発光素子間においては、前記第1配線層が交互に上下に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体発光素子アレイ。
【請求項4】
前記第1配線層は、一方に隣接する半導体発光素子の前記電極層と電気的に接続され、前記複数の半導体発光素子が直列に接続された請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体発光素子アレイ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体発光素子アレイと、
前記半導体発光素子アレイの照射像が照射面において重なるように照射する光学系と
を有する車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−62279(P2013−62279A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197999(P2011−197999)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】