説明

半導体発光素子

【課題】半導体基板上に、必要に応じて緩衝層を形成し、n型又はp型の下側半導体層と、発光層と、p型又はn型の上側半導体層とを積層してなる半導体層を持つ半導体発光素子において、特定の波長に対して高い発光効率を有する半導体発光素子を提供することにある。
【解決手段】半導体基板10上に、直接又は必要に応じて緩衝層20を介して、半導体層30を形成してなる半導体発光素子であって、通常の半導体発光素子には形成される反射層を必要とせず、波長200〜350nmに対する反射率が60%以上である物性を有し、前記半導体基板10が反射層としての機能を兼ねることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、発光ダイオード(LED)等の半導体発光素子であって、特に、200〜350nmの波長の光に対して、反射層を形成することなく使用することができる半導体発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化物半導体等を使用した半導体素子は、可視光領域から紫外光領域の短波長帯における発光デバイス等の用途で、盛んに研究および技術開発が行われている。なお、現在、実用化されている紫外LEDの中心波長は、約365nmであり、さらに短波長(特に、200〜300nm)を対象とした紫外LEDは、未だ実用化されていない。例えば、殺菌灯は、水銀ランプの250nmの紫外光を利用しているが、水銀フリーの窒化物半導体への置き換えの要望がある。
【0003】
従来、前記半導体発光素子に用いられる基板としては、サファイア基板が一般的であった。しかし、サファイア基板は、熱伝導率が低く、半導体発光素子の放熱性が悪化するため、LED自身の自己発熱を効率よく逃がすことが出来ず、熱による発光効率の低下を引き起こすという問題があった。また、サファイアは絶縁体であり、基板側から電気を流すことができないため、電気的な回路として複雑となり、電流効率低下による発光効率の低下、サファイア基板上に形成した半導体層が露出するようにエッチングしなければならず、製造工程が複雑になるという問題や、基板が硬いため、チップ化の際に、ダイシングを行うことができず、生産性の低いスクライブを行わなければならないという問題があった。
【0004】
また、サファイア基板とは別の半導体発光素子に用いられる基板としては、導電性のGaN基板や、SiC基板が挙げられる。これらの基板は導電性があり、基板側から電流を流すことができるため、電流経路の抵抗値が下がり、動作電圧を低くすることができる効果や、サファイアに比べて放熱性が高く、熱による発光効率の低下が少ないという効果がある。しかし、GaN及びSiCは、非常に高価であるため、発光素子の作製コストが高くなるという問題がある。また、前記GaN基板及びSiC基板は、前記サファイア基板に比べて、バンドギャップが小さく、例えばGaN基板では365nm以下の波長の光を吸収し、SiC基板では375nm以下の光を吸収してしまうため、短波長の紫外LEDに対しては光の取り出し効率が低下するという問題を生ずる。
【0005】
さらに、上記の基板とは別の半導体発光素子に用いられる基板としては、Si基板が挙げられる。そして、Si基板を用いた半導体発光素子としては、例えば特許文献1に開示されているように、pn接合を有する窒化ガリウム系化合物半導体層と、前記半導体層のp側もしくはn側に位置するSi基板と、前記半導体層とSi基板との間に位置する反射層とを具えた半導体発光素子が挙げられる。さらに、特許文献2に開示されているように、Si基板上に、III属窒化物層から構成されたpn接合型のダブルへテロ接合構造の発光部を具え、前記Si基板と発光部との間に、リン化ホウ素結晶層と窒化リン化ガリウム結晶層とを交互に積層した多層積層構造の反射層を形成した半導体発光素子が挙げられる。特許文献1及び特許文献2の半導体発光素子は、いずれもSiからなる基板を用いており、Siはコストが安く大口径のウェーハから所望の面積の素子を作製することができるとともに、結晶性及び放熱性に優れ、さらに、ダイシングも容易であるため生産効率が高いという効果を奏する。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の半導体発光素子は、いずれも、Si基板のバンドギャップが約1.1eVであるため、可視光に対しての吸収率が高く、前記Si基板と前記半導体層(前記発光部)との間に反射層を設ける層構造を必須としていた。さらに、前記反射層を形成する場合、製造工程が複雑になるため、製造コストが高騰するという問題や、素子抵抗が大きくなることにより発光効率が低下する恐れがあった。
また、多層積層構造を用いた反射層については特許文献1によれば500〜650nmの可視光の範囲では反射率が100%に近いものの短波長側では反射率が落ちている。短波長の光に対しての反射層については非特許文献1に示すように360nm以下の波長で60〜80%の反射率が得られているが、上記の問題がある。いずれにしても、光の反射に対しては、多層積層構造または金属による反射層を設けることが前提としてあり、付随する問題を解決することに主眼が置かれていた。さらには、反射層を設ける場合、基板は平坦であることが必要であり、指向性の向上は発光素子以外の例えばランプ装置の構造に委ねられていた。
【特許文献1】特開2005−311072号公報
【特許文献2】特開2002−198562号公報
【非特許文献1】Japanese Journal of Applied Physics vol.46, No.32, 2007, pp.L767-L769
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、所定の物性をもつ半導体基板上に、必要に応じて緩衝層を形成し、反射層を設けることなく、半導体層を形成してなる半導体発光素子において、発光効率が高く、光の取り出し方向の指向性の強い半導体発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)半導体基板上に、直接又は必要に応じて緩衝層を介して、n型又はp型の下側半導体層と、発光層と、p型又はn型の上側半導体層とを積層してなる半導体層を持つ半導体発光素子において、
前記発光素子のピーク波長は200〜350nmであり、前記半導体基板は、前記発光素子のピーク波長における反射率が60%以上である物性を有し、反射層としての機能を兼ねることを特徴とする半導体発光素子。
【0009】
(2)前記半導体基板は、Si又はGaAsからなることを特徴とする上記(1)記載の半導体発光素子。
【0010】
(3)前記半導体基板の表面又は前記緩衝層がある場合の緩衝層の表面は、発光層からの光を上方へ直接反射する形状を有することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の半導体発光素子。
【0011】
(4)前記半導体基板の表面は、前記上側半導体層の発光面サイズに対応して凹状をなすことを特徴とする上記(3)記載の半導体発光素子。
【0012】
(5)前記半導体基板の表面は、前記半導体層を取り囲む傾斜面を有することを特徴とする上記(3)記載の半導体発光素子。
【0013】
(6)前記緩衝層は、AlNからなることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1項記載の半導体発光素子。
【0014】
(7)前記半導体基板と前記半導体層との間に、金属からなる接合層をさらに形成することを特徴とする上記(6)記載の半導体発光素子。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、半導体基板が高い反射率を発揮する200〜350nmの波長の光を対象とすることで、前記反射層を形成することなく、高い発光効率と指向性を有する半導体発光素子を提供することが可能となり、さらに、従来の半導体発光素子に比べて、複雑な製造工程を必要とせず、低コストで作製できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に従う半導体発光素子1の断面を模式的に示した図である。
【0017】
本発明による半導体発光素子1は、図1に示すように、半導体基板10上に、直接又は必要に応じて緩衝層20を介して、n型又はp型の下側半導体層40と、発光層50と、p型又はn型の上側半導体層60とを積層してなる半導体層30を形成した半導体発光素子である。
【0018】
そして、本発明による半導体発光素子1は、通常の半導体発光素子には形成される反射層を必要とせず、波長200〜350nmに対する反射率が60%以上である物性を有し、前記半導体基板10が反射層としての機能を兼ねることを主な特徴とし、かかる構成を採用することによって、複雑な構造の前記反射層の積層工程を省略できるため、製造が容易であり、しかも、発光効率の高い発光素子を提供することができる。
【0019】
本発明の半導体基板10は、通常の半導体発光素子の基板としての機能に加え、反射層としての機能を兼ねるべく、波長200〜350nmに対する反射率が60%以上である物性を有する。前記半導体基板10に用いられる半導体としては、上記物性を具えていれば特に限定はされないが、例えば、Si、GaAs等が用いられる。ここで、反射率を60%以上としたのは、半導体発光素子に組み込んで用いた場合、製品として使用するために要求される発光効率を実現するために必要な反射率であり、60%未満では、例えば非特許文献1にある積層構造を用いた反射層と比較して反射効果が小さく、基板で直接反射することの優位性が得られないためである。
【0020】
また、前記半導体基板10は、Si又はGaAsからなることが好ましい。これらの材料を用いれば、所定の波長を有する光に対して、反射率60%以上の物性を有することができるからである。ここで、図2は、半導体発光素子の基板に用いられる各半導体材料(Si、GaAs、SiC、サファイア)について、光の波長(nm)に対する反射率(%)を示したものである。なお、前記反射率は、紫外可視分光光度計を用いてAl反射鏡による反射を基準(100%)とした相対値として算出し、光の入射角は5°とした。図2から、Siについては、波長200〜350nmの光に対して60%以上の反射率を有しており、GaAsについては、波長200〜265nmの光に対して60%以上の反射率を有していることがわかる。一方、SiC及びサファイアについては、どの波長の光に対しても反射率は60%未満となることがわかる。
【0021】
さらに、前記Siからなる半導体基板10は、任意のドーパントが選択され、発光素子の形状、電気伝導の大きさによって、種々の選択を行うことができる。例えば、垂直型LEDとして用いられる場合には、導電率の大きいn型Si基板を使用することができる。
【0022】
また、本発明の半導体発光素子1は、図1に示すように、必要に応じて、前記半導体基板10上に、緩衝層20を形成することができる。緩衝層20は、前記半導体層30への応力を低減させ、転位を抑制する効果がある。その組成については特に限定はされず、AlNや、GaN、AlGaN等を用いることができるが、バンドギャップが大きく(6.2eV)、前記半導体基板10への入射光及び前記基板10からの反射光を吸収せずに透過させることができる点で、前記緩衝層20は、AlNからなることが好ましい。
【0023】
本発明の半導体層30は、前記半導体基板10又は緩衝層20の上に形成される層であり、内部にpn接合と呼ばれる構造を有しており、電極70、80から半導体層30に電圧を加えた際に電子の持つエネルギーを直接、光エネルギーに変換することで発光することが可能となる。前記半導体層30に用いられる材料としては、例えば、GaN、AlGaN、InGaN又はInAlGaN等が挙げられる。
【0024】
さらにまた、本発明による半導体発光素子1は、前記半導体基板の表面又は前記緩衝層がある場合の緩衝層の表面が、発光層からの光を上方(矢印Aの方向)へ直接反射する形状を有することが好ましい。上記形状を有すれば、さらに効果的に、上方向へ反射した光を取り出すことができるからである。
【0025】
ここで、図3(a)、(b)は、本発明に従う別の実施形態の半導体発光素子1の断面を、模式的に示したものであるが、前記半導体基板11の表面11aは、図3(a)、(b)に示すように、前記上側半導体層60の発光面サイズに対応して凹状(穴状)をなすことが好ましい。この形状にすれば、効率的に光を集めて上方向Aに反射することができるからである。前記半導体基板11は、入手が容易で、フォトリソグラフとエッチング等による表面加工の技術が発達している点からも、Si又はGaAsであることが好ましい。さらに、前記半導体基板11の反射率を向上させるため、基板表面に10〜100umのサイズの凹凸(穴や突起、隆起)を有することも可能である。また、フォトニック結晶を有しても良い。前記半導体基板11が反射材としての機能を持ち、基板の反射率を少なくとも利用する構成であれば、基板に処理を加えることや、たとえば基板上の一部に反射率向上のための層や結晶を加えることも含まれる。
【0026】
さらにまた、Siからなる前記半導体基板11の上に、AlNからなる緩衝層20を形成する場合には、(111)面のSi基板を用い、前記上側半導体層60の発光面サイズに対応して凹状(穴状)に加工する際の斜面11a−1を(100)面とすることがより好ましい。この構成により、AlN層は成長初期に斜面11a−1の(100)から横方向に成長し、横方向成長を用いたELO法により、転位の少ない結晶を得ることができるからである。
【0027】
また、図4(a)、(b)は、本発明に従う別の実施形態の半導体発光素子1の断面を、模式的に示したものであるが、前記半導体基板12の表面12aは、図4(a)、(b)に示すように、前記半導体層を取り囲む傾斜面12a−1を有することが好ましい。効率的に光を集めて上方向Aに反射することができる上に、通常の反射層では反射することができなかった横方向Bの光についても、前記傾斜面12a−1で上方向Aに反射することができるため、上方向Aへの集光効率をさらに向上させることが可能となるからである。また、半導体基板12がSi又はGaAsであれば、同種の半導体を使用した回路基板等との組み合わせも容易である。
【0028】
なお、前記半導体層30は、一旦、サファイア等の成長用基板上に形成させた後、前記成長用基板を取り除き、実際の半導体基板10上に接合させることも可能である。また、図5(a)、(b)は、本発明に従う別の実施形態の半導体発光素子1の断面を、模式的に示したものであるが、上記のように、一旦別の基板で半導体層30成長させた後に、Si、GaAsなどの基板の上に接合することができる。その際には、前記半導体層30と前記半導体基板10との間には、金属からなる接合層100を設けることが好ましい。また、このとき前記半導体基板10と前記下側半導体層40がオーミックコンタクトを取れる金属を接合層100として使用することが好ましい。ただし、これらの接合層100が、前記半導体基板10と半導体層30との接合面の全面に及ぶときは、前記接合層100での光の吸収により前記半導体基板10からの反射が減少してしまうので、前記接合層100の面積は、前記接合面の面積に対して0.2〜0.8の範囲であることが好ましい。
【0029】
なお、上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明に従う半導体材料を試作し、性能を評価したので、以下で説明する。
(実施例1)
実施例1は、図1に示すように、直径2インチで結晶面が(111)、基板厚300μmのSiからなる半導体基板10を用意し、MOCVD法を用い、前記Si基板10上に、膜厚1000nmの緩衝層20であるAlN層20を形成し、該AlN層20上に、下側半導体層40として、SiがドープされたAlGaNである、n型コンタクト層(図示せず)及びn型クラッド層(図示せず)を、順次積層させてなる、膜厚2μmのn型窒化物半導体層を形成し、該n型窒化物半導体層40上に、発光層50として、量子井戸構造を有する、膜厚100nmのInAlGaN層50を形成し、該InAlGaN層50の上に、上側半導体層60として、MgがドープされたAlGaNからなる、p型ブロック層(図示せず)及びp型クラッド層(図示せず)を順次形成し、その上に、MgがドープされたGaNからなるp型コンタクト層(図示せず)を形成してなる、膜厚1μmのp型窒化物半導体層60を形成した。その後、エッチングにより前記n型コンタクト層を露出させ、その上にN電極70を設けた後、pコンタクト層上にP電極80を設けることにより、サンプルとなる半導体発光素子を作製した。なお、発光波長は280nmとなるように調整した。
【0031】
(実施例2)
実施例2は、図3(a)に示すように、直径2インチで結晶面が(111)、基板厚300μmのSiからなる半導体基板10を、エッチングで加工することにより、表面が前記上側半導体層40の発光面サイズに対応して凹状をなすSi基板11を得た。なお、該Si基板11の傾斜面は(100)である。その後、実施例1と同様の方法により、AlN層20、n型窒化物半導体層40、InAlGaN層50、及びp型窒化物半導体層60を順次形成し、電極70、80を設けることにより、サンプルとなる半導体発光素子を作製した。なお、発光波長は280nmとなるように調整した。
【0032】
(実施例3)
実施例3は、図3(b)に示すように、Si基板11とn型コンタクト層(図示せず)とが電気的に接続されるように、迂回電極90を形成し、また、Si基板11の裏面にN電極70を形成したこと以外は、実施例2と同様の方法により、サンプルとなる半導体発光素子を作製した。なお、発光波長は280nmとなるように調整した。
【0033】
(実施例4)
実施例4は、図4(a)に示すように、直径2インチで結晶面が(111)、基板厚300μmのSiからなる半導体基板12を、エッチングで加工することにより、半導体層30を取り囲む傾斜面12aを有するSi基板12を得た。なお、前記傾斜面は(100)である。その後、実施例1と同様の方法により、AlN層20、n型窒化物半導体層40、InAlGaN層50、及びp型窒化物半導体層60を順次形成し、電極70、80を設けることにより、サンプルとなる半導体発光素子を作製した。なお、発光波長は280nmとなるように調整した。
【0034】
(実施例5)
実施例5は、図4(b)に示すように、Si基板12とn型コンタクト層(図示せず)とが電気的に接続されるように、迂回電極90を形成し、また、Si基板12の裏面にN電極70を形成したこと以外は、実施例4と同様の方法により、サンプルとなる半導体発光素子を作製した。なお、発光波長は280nmとなるように調整した。
【0035】
(実施例6)
実施例6は、図5(a)に示すように、直径2インチのサファイア基板(図示せず)上に、実施例1と同様の方法により、AlN層20、n型窒化物半導体層40、InAlGaN層50、及びp型窒化物半導体層60を順次形成し、p型窒化物半導体層60のp型コンタクト層(図示せず)上に、Cu合金からなる支持基板(図示せず)を接着用ワックスで貼り付けた後、前記サファイア基板をリフトオフすることにより、n型窒化物半導体層40のnコンタクト層(図示せず)を露出させた。その後、n型コンタクト層(図示せず)の上に、AuSnからなる接合層100を部分的に形成して、Si基板10(直径2インチ、結晶面 (111)、膜厚300μm)と接合させた後、接着用ワックスを溶解させて前記成長用基板を除去し、Si基板10の裏面にN電極70を設け、pコンタクト層上にP電極80を設けることにより、サンプルとなる半導体発光素子を作製した。部分的にAuSnからなる接合層100を形成することでAuSnのない部分に照射された光を基板で反射して取り出すことが出来る。本実施例では接合層100の面積が接合面全体の面積の40%となるようにドット状の接合層100を形成した。なお、発光波長は280nmとなるように調整した。
【0036】
(実施例7)
実施例7は、図5(b)に示すように、エッチングにより、Si基板13の形状が複数の凹部(凹部のサイズ:30μmΦ)を有するように加工されていること以外は、実施例6と同様の方法によりサンプルとなる半導体発光素子を作製した。なお、発光波長は280nmとなるように調整した。
【0037】
(比較例1)
比較例1は、直径2インチで結晶面が(0001)、膜厚300μmのサファイア基板を半導体基板10として用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、サンプルとなる半導体発光素子を作製した。なお、発光波長は280nmとなるように調整した。
【0038】
(比較例2)
比較例2は、前記緩衝層20の上に、窒化物多層膜からなる反射層(図示せず)を形成したこと以外は、比較例1と同様の方法によりサンプルとなる半導体発光素子を作製した。なお、発光波長は280nmとなるように調整した。
【0039】
上記実施例及び比較例で作製した各半導体材料について評価を行った。評価方法を以下に示す。
【0040】
(評価方法)
(1)軸上強度
発光効率は、上記実施例及び比較例で作製した半導体発光素子に、20mAの電流を流し、分光光度計を用いてチップ上面側の軸上強度を計測することにより行い、以下の基準に従って評価した。チップと分光光度計の距離は50cm、立体角は1×10-6ステラジアンで測定を行った。比較例1を基準(100)とした評価結果を表1に示す。
◎:130超え
○:100超え、130以下
×:100以下
【0041】
(2)配光性
配光性は、実施例1及び実施例5で作製した半導体発光素子に、20mAの電流を流して分光光度計を用いて測定した。チップと分光光度計の距離は50cm、立体角は1×10-6ステラジアンで測定を行った。チップを180度回転しながら測定を行い、配光特性を測定した。評価結果を図6に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1の結果から、実施例1〜7のサンプルは、比較例1のサンプルと比較して、発光特性に優れており、反射層を有する比較例2と比べても遜色ない結果であることがわかった。また図6に実施例1と実施例5の半導体発光素子についての配光分布を示す。この結果から、本発明の半導体基板を適正形状に加工することで、光の取り出し方向である上面方向の光を強くすることができ、軸上強度を高め、光の指向性を高めることができることがわかった。このことは実施例にて基板に加工を行った実施例2〜5および7が、加工していない実施例1、6に比べて軸上強度が向上していることからも明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、半導体基板が高い反射率を発揮する200〜350nmの波長の光を対象とすることで、前記反射層を形成することなく、高い発光効率と指向性を有する半導体発光素子を提供することが可能となり、さらに、従来の半導体発光素子に比べて、複雑な製造工程を必要とせず、低コストで作製できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の別の形態の半導体発光素子の断面図である。
【図2】半導体発光素子の基板に用いられる各半導体材料(Si、GaAs、SiC、サファイア)について、光の波長(nm)に対する反射率(%)を示したグラフである。
【図3】本発明の別の形態の半導体発光素子の断面図である。
【図4】本発明の別の形態の半導体発光素子の断面図である。
【図5】本発明の別の形態の半導体発光素子の断面図である。
【図6】実施例1と実施例5の半導体発光素子についての配光分布を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 半導体発光素子
10、11、12、13 Si基板
20 緩衝層
30 半導体層
40 下側半導体層
50 発光層
60 上側半導体層
70 N電極
80 P電極
90 迂回電極
100 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に、直接又は必要に応じて緩衝層を介して、n型又はp型の下側半導体層と、発光層と、p型又はn型の上側半導体層とを積層してなる半導体層を持つ半導体発光素子において、
前記発光素子のピーク波長は200〜350nmであり、前記半導体基板は、前記発光素子のピーク波長における反射率が60%以上である物性を有し、反射層としての機能を兼ねることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記半導体基板は、Si又はGaAsからなることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記半導体基板の表面又は前記緩衝層がある場合の緩衝層の表面は、発光層からの光を上方へ直接反射する形状を有することを特徴とする請求項1又は2記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記半導体基板の表面は、前記上側半導体層の発光面サイズに対応して凹状をなすことを特徴とする請求項3記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記半導体基板の表面は、前記半導体層を取り囲む傾斜面を有することを特徴とする請求項3記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記緩衝層は、AlNからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記半導体基板と前記半導体層との間に、金属からなる接合層をさらに形成することを特徴とする請求項6記載の半導体発光素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−164272(P2009−164272A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340686(P2007−340686)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【Fターム(参考)】