半導体発光素子
【課題】発光効率を向上できる半導体発光素子を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、[0001]方向の側に向かって順に積層されたn形半導体層10、第1障壁層32a、第1井戸層31a、Al含有層40及び中間層50を備えた窒化物半導体の半導体発光素子が提供される。Al含有層は、第1井戸層に接し、第1障壁層のバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有し、n形半導体層の格子定数よりも小さい格子定数を有し、Alx1Ga1−x1−y1Iny1N(0<x1<1、0≦y1<1)の組成を有する。中間層は、Al含有層に接し、第1井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する。中間層のn形半導体層の側の部分におけるバンドギャップエネルギーは、中間層のp形半導体層の側の部分におけるバンドギャップエネルギーよりも小さい。
【解決手段】実施形態によれば、[0001]方向の側に向かって順に積層されたn形半導体層10、第1障壁層32a、第1井戸層31a、Al含有層40及び中間層50を備えた窒化物半導体の半導体発光素子が提供される。Al含有層は、第1井戸層に接し、第1障壁層のバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有し、n形半導体層の格子定数よりも小さい格子定数を有し、Alx1Ga1−x1−y1Iny1N(0<x1<1、0≦y1<1)の組成を有する。中間層は、Al含有層に接し、第1井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する。中間層のn形半導体層の側の部分におけるバンドギャップエネルギーは、中間層のp形半導体層の側の部分におけるバンドギャップエネルギーよりも小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
LD(Laser Diode)やLED(Light Emitting Diode)などの半導体発光素子において発光効率の向上が求められている。
【0003】
例えば、発光効率の向上のために、活性層における電子のオーバーフローを抑制する種々の構成が提案されている。しかしながら、発光効率向上のためには改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−245165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、発光効率を向上できる半導体発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によれば、n形半導体層と、p形半導体層と、第1井戸層と、第1障壁層と、Al含有層と、中間層と、を備えた半導体発光素子が提供される。前記n形半導体層は、窒化物半導体を含む。前記p形半導体層は、前記n形半導体層の[0001]方向の側に設けられ、窒化物半導体を含む。前記第1井戸層は、前記n形半導体層と前記p形半導体層との間に設けられ、前記n形半導体層のバンドギャップエネルギーよりも小さく前記p形半導体層のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有し、窒化物半導体を含む。前記第1障壁層は、前記第1井戸層と前記n形半導体層との間に設けられ、前記第1井戸層に接し、前記第1井戸層の前記バンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有し、窒化物半導体を含む。前記Al含有層は、前記第1井戸層と前記p形半導体層との間に設けられ、前記第1井戸層に接し、前記第1障壁層の前記バンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有し、前記n形半導体層の格子定数よりも小さい格子定数を有し、前記Al含有層の組成は、Alx1Ga1−x1−y1Iny1N(0<x1<1、0≦y1<1)である。前記中間層は、前記Al含有層と前記p形半導体層との間に設けられ、前記Al含有層に接し、前記第1井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有し、窒化物半導体を含む。前記中間層の前記n形半導体層の側の第1部分におけるバンドギャップエネルギーは、前記中間層の前記p形半導体層の側の第2部分におけるバンドギャップエネルギーよりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図2】図2(a)及び図2(b)は、実施形態に係る半導体発光素子を示す模式図である。
【図3】図3(a)〜図3(d)は、半導体発光素子におけるバンドギャップエネルギーを示す模式図である。
【図4】図4(a)〜図4(c)は、実施形態に係る半導体発光素子の構成及び特性を示す模式図である。
【図5】図5(a)〜図5(c)は、第1参考例の半導体発光素子の構成及び特性を示す模式図である。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、第2参考例の半導体発光素子の構成及び特性を示す模式図である。
【図7】図7(a)〜図7(c)は、第3参考例の半導体発光素子の構成及び特性を示す模式図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は、半導体発光素子の特性を示すグラフ図である。
【図9】図9(a)及び図9(b)は、半導体発光素子の特性を示すグラフ図である。
【図10】図10は、半導体発光素子の特性を示すグラフ図である。
【図11】図11(a)〜図11(c)は、第4参考例の半導体発光素子を示す模式図である。
【図12】図12(a)〜図12(c)は、第5参考例の半導体発光素子を示す模式図である。
【図13】第4及び第5参考例の半導体発光素子の特性を示すグラフ図である。
【図14】半導体発光素子の特性を示すグラフ図である。
【図15】図15(a)〜図15(d)は、実施形態に係る半導体発光素子を示す模式図である。
【図16】図16(a)〜図16(d)は、実施形態に係る半導体発光素子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
図1は、実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図1に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110は、n形半導体層10と、p形半導体層20と、第1井戸層31aと、第1障壁層32aと、Al含有層40と、中間層50と、を備える。
【0010】
n形半導体層10は、窒化物半導体を含む。
p形半導体層20は、n形半導体層10の[0001]方向の側に設けられる。p形半導体層20は、窒化物半導体を含む。
【0011】
第1井戸層31aは、n形半導体層10とp形半導体層20との間に設けられる。第1井戸層31aは、n形半導体層10のバンドギャップエネルギーよりも小さくp形半導体層20のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する。第1井戸層31aは、窒化物半導体を含む。
【0012】
第1障壁層32aは、第1井戸層31aとn形半導体層10との間に設けられ、第1井戸層31aに接する。第1障壁層32aは、第1井戸層31aのバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する。第1井戸層31aは、窒化物半導体を含む。
【0013】
Al含有層40は、第1井戸層31aとp形半導体層20との間に設けられ、第1井戸層31aに接する。Al含有層40は、第1障壁層32aのバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する。Al含有層40は、n形半導体層10の格子定数よりも小さい格子定数を有する。Al含有層40の組成は、Alx1Ga1−x1−y1Iny1N(0<x1<1、0≦y1<1)である。
Al含有層40には、例えば、Alx1Ga1−xN(0.001≦x1<0.3)が用いられる。
【0014】
中間層50は、Al含有層40とp形半導体層20との間に設けられ、Al含有層40に接する。中間層50は、第1井戸層31aのバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する。中間層50は、窒化物半導体を含む。
【0015】
中間層50のn形半導体層10の側の部分におけるバンドギャップエネルギーは、中間層50のp形半導体層20の側の部分におけるバンドギャップエネルギーよりも小さい。
【0016】
中間層50のバンドギャップエネルギーは、p形半導体層20のバンドギャップエネルギー以下である。すなわち、中間層50のp形半導体層10の側の部分におけるバンドギャップエネルギーは、p形半導体層20のバンドギャップエネルギー以下である。
【0017】
中間層50には、例えばアンドープのInGaNが用いられる。中間層50のなかで、Al含有層40の側の部分のIn組成比を、p形半導体層20の側の部分よりも高く設定することで、中間層50のn形半導体層10の側の部分におけるバンドギャップエネルギーが、中間層50のp形半導体層20の側の部分におけるバンドギャップエネルギーよりも小さく設定される。
例えば、中間層50におけるバンドギャップエネルギーは、n形半導体層10の側からp形半導体層20の側に進むに従って増大する。
【0018】
本実施形態においては、半導体発光素子110は、第2井戸層31bと、第2障壁層32bと、第3井戸層31cと、第3障壁層32cと、をさらに備えている。
【0019】
第2井戸層31bは、第1障壁層32aとn形半導体層10との間に設けられ、第1障壁層32aに接する。第2井戸層31bは、第1障壁層32aのバンドギャップエネルギーよりも小さく、Al含有層40のバンドギャップエネルギーよりも小さく、中間層50のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する。第2井戸層31bは、窒化物半導体を含む。
【0020】
第2障壁層32bは、第2井戸層31bとn形半導体層10との間に設けられ、第2井戸層31bに接する。第2障壁層32bは、第2井戸層31bのバンドギャップエネルギーよりも大きく、Al含有層40のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する。第2障壁層32bは、窒化物半導体を含む。
【0021】
第3井戸層31cは、第2障壁層32bとn形半導体層10との間に設けられ、第2障壁層32bに接する。第3井戸層31cは、第2障壁層32bのバンドギャップエネルギーよりも小さく、Al含有層40のバンドギャップエネルギーよりも小さく、中間層50のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する。第3井戸層31bは、窒化物半導体を含む。
【0022】
第3障壁層32cは、第3井戸層31cとn形半導体層10との間に設けられ、第3井戸層31cに接する。第3障壁層32cは、第3井戸層31bのバンドギャップエネルギーよりも大きく、Al含有層40のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する。第3障壁層32cは、窒化物半導体を含む。
【0023】
本具体例では、3つの井戸層31が設けられた多重量子井戸構造が採用されている。ただし、実施形態はこれに限らず、多重量子井戸構造における井戸層31の数は任意である。実施形態において、井戸層31が1つの単一量子井戸構造が採用されても良い。
【0024】
複数の井戸層31が設けられる場合、井戸層31の数を井戸層数N(Nは2以上の整数)とする。1番目の井戸層31は、複数の井戸層31のうちで最もp形半導体層20に近い側に配置されるものとする。N番目の井戸層31は、複数の井戸層31のうちで最もn形半導体層10に近い側に配置されるものとする。第1井戸層31a〜第N井戸層を総称して、井戸層31という。複数の井戸層31のうちのそれぞれが、第1井戸層31a、第2井戸層31b及び第3井戸層31cなどに対応する。
【0025】
複数の井戸層31のそれぞれのn形半導体層10の側に、障壁層32が設けられる。すなわち、第N井戸層のn形半導体層10の側に、第N障壁層が設けられる。第1障壁層32a〜第N障壁層を総称して、障壁層32という。複数の障壁層32のそれぞれが、第1障壁層32a、第2障壁層32b及び第3障壁層32cなどに対応する。
【0026】
第N井戸層は、第(N−1)障壁層とn形半導体層10との間に設けられ、第(N−1)障壁層に接する。第N井戸層は、第(N−1)障壁層のバンドギャップエネルギーよりも小さく、Al含有層40のバンドギャップエネルギーよりも小さく、中間層50のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する。第N井戸層は、窒化物半導体を含む。
【0027】
第N障壁層は、第N井戸層とn形半導体層10との間に設けられ、第N井戸層に接する。第N障壁層は、第N井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きく、Al含有層40のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する。第N障壁層は、窒化物半導体を含む。
【0028】
なお、Al含有層40は、第N障壁層のバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する。中間層50は、第N井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する。
【0029】
井戸層31(第1井戸層31aなど)には、例えば、InwGa1−wN(0<w≦1)が用いられる。井戸層31におけるIn組成比(井戸層In組成比w)は、例えば0.01以上0.5以下とされる。井戸層In組成比wは、例えば0.07とされる。井戸層31には、例えば、In0.07Ga0.93Nが用いられる。
【0030】
障壁層32(第1障壁層32aなど)には、例えば、Alb2Inb1Ga1−b1−b2N(0≦b1<1、0≦b2<1、0≦b1+b2≦1)が用いられる。障壁層32におけるIn組成比(障壁層In組成比b1)は、例えば0.005以上で、井戸層IN組成比w以下とされる。障壁層In組成比b1は、例えば0.01とされる。障壁層Al組成比b2は、例えば0とされる。障壁層32には、例えば、In0.01Ga0.99Nが用いられる。
【0031】
これにより、障壁層32のバンドギャップエネルギーは、井戸層31のバンドギャップエネルギーよりも大きくなる。
但し、実施形態はこれに限らず、井戸層31及び障壁層32の組成は、井戸層31のバンドギャップエネルギーが障壁層32バンドギャップエネルギーよりも小さいという関係が満たされていれば、任意である。
【0032】
井戸層31の厚さは、例えば1ナノメートル(nm)以上、10nm以下とされる。井戸層31の厚さが1nm未満の場合には、井戸層31におけるキャリアの閉じ込め効果が小さくなり高い発光効率が得られない。井戸層31の厚さが10nmを超えると結晶の劣化が著しくなる。井戸層31の厚さは、例えば3nmとされる。
【0033】
障壁層32の厚さは、例えば3nm以上とされる。障壁層32の厚さが3nm未満の場合には、井戸層31へのキャリアの閉じ込め効果が小さくなり高い発光効率が得られない。障壁層32の厚さは、例えば10nmとされる。
【0034】
井戸層31(第1井戸層31aなど)から放出される光の波長は、330nm以上580nm以下とされる。このような光を放出するように、井戸層31に用いられる材料の条件が適切に設定される。
【0035】
ここで、図1に表したように、n形半導体層10からp形半導体層20に向かう方向を+Z軸方向とする。p形半導体層20は、n形半導体層10の+Z軸方向の側に配置される。
【0036】
n形半導体層10の+Z軸方向の側の面は、例えば、(0001)面であり、その(0001)面の側に、第1障壁層32aが設けられ、第1障壁層32aの+Z軸方向の側に第1井戸層31aが設けられ、第1井戸層31aの+Z軸方向の側にAl含有層40が設けられ、Al含有層40の+Z軸方向の側に中間層50が設けられ、中間層50の+Z軸方向の側にp形半導体層20が設けられる。
【0037】
ただし、n形半導体層10の+Z軸方向の側の面は、厳密な(0001)面でなくても良く、厳密な(0001)面から一定のオフセット角で傾斜した面でも良い。このオフセット角度は、例えば0度以上3度以下とされる。p形半導体層20がn形半導体層10の[0001]方向の側に設けられる状態は、このようにn形半導体層10の+Z軸方向の面が、(0001)面から傾斜している場合を含む。
【0038】
図1に例示したように、n形半導体層10の結晶が、例えばc面サファイア基板である基板5の主面上に設けられたバッファ層6の上に成長される。そして、n形半導体層10の上に、第1障壁層32a、第1井戸層31a2、Al含有層40、中間層50及びp形半導体層20の結晶が順次成長される。半導体発光素子110においては、基板5及びバッファ層6が設けられているが、上記の結晶の成長の後に、基板5及びバッファ層6は除去されても良い。
【0039】
本具体例では、n形半導体層10は、基板5の側に設けられたn側コンタクト層11と、第1障壁層32aの側に設けられたn側クラッド層12と、を有する。n側コンタクト層11の一部が露出しており、n側コンタクト層11に電気的に接触してn側電極70が設けられている。
【0040】
p形半導体層20は、中間層50の側に設けられたp側クラッド層21と、p側クラッド層21の中間層50とは反対の側に設けられたp側コンタクト層22と、を有する。p側コンタクト層22に電気的に接触してp側電極80が設けられている。
【0041】
このように半導体発光素子110は、積層構造体10sを含む。積層構造体10sは、n形半導体層10と、p形半導体層20と、n形半導体層10とp形半導体層20との間に設けられた発光部(第1障壁層32a、第1井戸層31a、Al含有層40及び中間層50)と、を含む。積層構造体10sは、p形半導体層20の側の第1主面10aと、n形半導体層10の側の第2主面10bと、を有している。
【0042】
本具体例においては、p形半導体層20及び発光部が選択的に除去されて、積層構造体10sの第1主面10aにn形半導体層10の一部10p(n側コンタクト層11の一部)が露出している。この露出したn形半導体層10の一部10pの上に、n側電極70が設けられている。
ただし、実施形態はこれに限らず、例えば、n形半導体層10の第2主面10bの側にn側電極70が設けられても良い。
【0043】
n側コンタクト層11には、例えば、Siが高い濃度でドープされたGaNなどが用いられる。n側クラッド層12におけるSi濃度は、n側コンタクト層11よりも低い。n側クラッド層12には、SiがドープされたGaN、または、SiがドープされたAlGaNなどが用いられる。
【0044】
p側コンタクト層22には、例えば、Mgが高い濃度でドープされたGaNなどが用いられる。p側クラッド層21におけるMg濃度は、p側コンタクト層22よりも低い。p側クラッド層21には、MgがドープされたGaN、または、MgがドープされたAlGaNなどが用いられる。
【0045】
n側クラッド層12及びp側クラッド層21は、井戸層31から放出される光に対して導波機能を有するように設計できる。すなわち、半導体発光素子110は、レーザダイオード(LD)とすることができる。また、半導体発光素子110はLEDでも良い。
以下では、半導体発光素子110がLDである場合として説明する。
【0046】
図2(a)及び図2(b)は、実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
すなわち、図2(a)は、半導体発光素子110の構成を例示する模式的断面図であり、図2(b)は、半導体発光素子110におけるIn組成比を例示するグラフ図である。図2(b)の横軸は+Z軸方向における位置であり、縦軸はIn組成比CInである。
【0047】
図2(a)及び図2(b)に表したように、障壁層32(第1〜第3障壁層32a〜32c)においてはIn組成比(障壁層In組成比b1)は、0.01である。井戸層31(第1〜第3井戸層31a〜31c)においてはIn組成比(井戸層In組成比w)は、0.07である。
本具体例では、Al含有層40には、Al0.05Ga0.95Nが用いられている。すなわち、Al含有層40におけるIn組成比は、実質的に0である。
【0048】
中間層50には、InGaNが用いられており、中間層50のn形半導体層10の側の部分(第1部分55)におけるIn組成比は0.03であり、中間層50のp形半導体層20の側の部分(第2部分56)におけるIn組成比は、0.01である。
このように、中間層50の第1部分55におけるIn組成比は、0よりも大きく、井戸層31(第1井戸層31aなど)におけるIn組成比よりも小さい。
【0049】
そして、本具体例では、中間層50におけるIn組成比は、n形半導体層10の側の部分(第1部分55)からp形半導体層20の側の部分(第2部分56)に向かうに従って連続的に減少している。このように、中間層50におけるIn組成比が傾斜している。
【0050】
なお、後述するように、中間層50におけるIn組成比の変化の状態は任意である。中間層50におけるIn組成比は、Al含有層40からp形半導体層20に向かう方向に沿って(+Z軸方向に進むに従って)、直線的にまたは曲線的に連続して減少しても良く、また、段階的に減少しても良い。
【0051】
このように、中間層50において、n形半導体層10の側の第1部分55のIn組成比をp形半導体層20の側の第2部分56のIn組成比よりも高く設定することで、第1部分56におけるバンドギャップエネルギーを、第2部分56におけるバンドギャップエネルギーよりも小さく設定される。
【0052】
図2(a)に表したように、本具体例では、中間層50とp形半導体層20との間にp側障壁層32pが設けられている。p側障壁層32pには、InGaNが用いられており、p側障壁層32pにおけるIn組成比は0.01に設定されている。すなわち、p側障壁層32pには、第1〜第3障壁層32a〜32cに用いられる材料と同じ材料が用いられている。
【0053】
図3(a)〜図3(d)は、半導体発光素子におけるバンドギャップエネルギーを例示する模式図である。
すなわち、図3(a)は、本実施形態に係る半導体発光素子110に対応し、図3(b)〜図3(d)は、第1〜第3参考例の半導体発光素子119a〜119cに対応する。これらの図の横軸は、+Z軸方向における位置を表し、縦軸は、バンドギャップエネルギーEbを表す。これらの図には、伝導帯Bcのエネルギーと、価電子帯Bvのエネルギーと、が模式的に表されている。
【0054】
図3(a)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110において、第1井戸層31a〜第3井戸層31cのバンドギャップエネルギーは、第1障壁層32a〜第3障壁層32cのバンドギャップエネルギーよりも小さい。
【0055】
井戸層31のうちで最もp形半導体層20に近い第1井戸層31aに接するAl含有層40のバンドギャップエネルギーは第1〜第3障壁層32a〜32cのバンドギャップエネルギーよりも大きく設定されている。
【0056】
中間層50のn形半導体層10の側の第1部分55におけるバンドギャップエネルギーは、中間層50のp形半導体層20の側の第2部分56におけるバンドギャップエネルギーよりも小さい。
【0057】
p側障壁層32pのバンドギャップエネルギーは、第1〜第3障壁層32a〜32cのバンドギャップエネルギーと同じである。
【0058】
本具体例においては、中間層50におけるバンドギャップエネルギーは、+Z軸方向に沿って直線的に連続的に増大している。
【0059】
ただし、既に説明したように、中間層50におけるIn組成比の変化の状態は任意であり、中間層50におけるバンドギャップエネルギーは、+Z軸方向に沿って曲線的に連続的に増大しても良い。中間層50におけるバンドギャップエネルギーは、+Z軸方向に沿って段階的に増大しても良い。
【0060】
中間層50の第1部分55(n形半導体層10の側の部分)におけるバンドギャップエネルギーは、第1〜第3障壁層32a〜32cのバンドギャップエネルギーよりも小さい。さらに、第1部分55におけるバンドギャップエネルギーは、p形半導体層20のバンドギャップエネルギー(図3(a)では省略している)よりも小さい。
【0061】
中間層50の第2部分56(p形半導体層20の側)におけるバンドギャップエネルギーは、p形半導体層20のバンドギャップエネルギー(図3(a)では省略している)以下である。
【0062】
図3(b)に表したように、第1参考例の半導体発光素子119aにおいては、Al含有層40及び中間層50が設けられていない。すなわち、第1井戸層31aに接してp側障壁層32pが設けられている。
【0063】
図3(c)に表したように、第2参考例の半導体発光素子119bにおいては、第1井戸層31aのp形半導体層20の側の面に接して中間障壁層32qが設けられ、中間障壁層32qのp形半導体層20の側の面に接して逆傾斜層59rが設けられている。逆傾斜層59rのn形半導体層10の側の部分におけるバンドギャップエネルギーは、逆傾斜層59rのp形半導体層20の側の部分におけるバンドギャップエネルギーよりも大きい。すなわち、逆傾斜層59rのバンドギャップエネルギーの傾斜の向きは、半導体発光素子110の中間層50におけるバンドギャップエネルギーの傾斜の向きと逆である。そして、逆傾斜層59rのp形半導体層20の側に、p側障壁層32pが設けられている。
【0064】
図3(d)に表したように、第3参考例の半導体発光素子119cにおいては、第1井戸層31aのp形半導体層20の側の面に接して中間障壁層32qが設けられている。中間障壁層32qのp形半導体層20の側の面に接して、Al含有層40が設けられている。Al含有層40のp形半導体層20の側の面に接して、中間層50が設けられている。さらに、中間層50のp形半導体層20の側の面に接して、p側障壁層32pが設けられている。すなわち、第3参考例の半導体発光素子119cの構成は、本実施形態に係る半導体発光素子110において、Al含有層40と第1井戸層31aとの間に、中間障壁層32qが設けられている構成に相当する。
【0065】
このような構成を有する半導体発光素子110及び119a〜119cの特性をシミュレーションした結果について説明する。
図4(a)〜図4(c)は、実施形態に係る半導体発光素子の構成及び特性を例示する模式図である。
図4(a)は、半導体発光素子110の構成を例示する模式的断面図である。図4(b)は、バンドギャップエネルギーのシミュレーション結果を例示する模式図である。図4(c)は、電子の波動関数WF1及びホールの波動関数WF2のシミュレーション結果を例示する模式図である。ホールの波動関数WF2においては、ライトホールの波動関数とヘビーホールの波動関数とがシミュレーションされたが、両者の特性はほぼ一致したため、シミュレーション結果は1つの線で表示されている。図4(b)及び図4(c)における横軸は、+Z軸方向に沿った位置Zdを示している。
【0066】
図4(a)に表したように、本シミュレーションでは、第3障壁層32cの厚さは40nmとされ、第1障壁層32a及び第2障壁層32bの厚さは10nmとされた。第1〜第3井戸層31a〜31cの厚さは、3nmとされた。Al含有層40の厚さは3nmとされた。中間層50の厚さは20nmとされた。p側障壁層32pの厚さは17nmとされた。
【0067】
第1〜第3井戸層31a〜31cは、In0.07Ga0.93Nとされた。第1〜第3障壁層32a〜32c及びp側障壁層32pはIn0.01Ga0.99Nとされた。Al含有層40は、Al0.05Ga0.95Nとされた。中間層50は、InGaNとされ、n形半導体層10の側の部分(第1部分55)がIn0.03Ga0.97Nとされ、p形半導体層20の側の部分(第2部分56)がIn0.01Ga0.99Nとされた。中間層50におけるIn組成比は、直線的に変化するものとした。
【0068】
図4(b)に表したように、シミュレーション結果においては、第1井戸層31aとAl含有層40との間の界面の近傍に、電子及びホールに対する高い障壁が形成されている。
【0069】
図4(c)に表したように、p形半導体層20の側の電子の波動関数WF1においては、裾部分201が小さい。電子は、第1井戸層31aとAl含有層40との間の界面において効率良く閉じ込められている。すなわち、半導体発光素子110においては、第1井戸層31aにおける電子がより局在的である。
【0070】
ホールの波動関数WF2には、4つのピークが現れている。すなわち、第1〜第3井戸層31a〜31cにそれぞれ対応する3つのピークと、Al含有層40と中間層50との界面の近傍部分に対応する4つ目のピークと、が現れている。この4つ目のピークの出現は、ホールがAl含有層40と中間層50との界面近傍に効率良く注入されていることに対応する。すなわち、半導体発光素子110においては、MQW(第1〜第3井戸層31a〜31cを含む多重量子井戸構造:Multiple Quantum Wells)へのホールの注入効率が高い。
【0071】
図5(a)〜図5(c)は、第1参考例の半導体発光素子の構成及び特性を例示する模式図である。
図5(a)に表したように、半導体発光素子119aにおいては、Al含有層40及び中間層50が設けられず、p側障壁層32pの厚さが40nmとされた。p側障壁層32pの材料は半導体発光素子110と同じに設定された。第1〜第3井戸層31a〜31c、並びに、第1〜第3障壁層32a〜32cの厚さ及び材料は半導体発光素子110と同じに設定された。
【0072】
図5(b)に表したように、シミュレーション結果においては、第1井戸層31aに対する障壁はp側障壁層32p側でエネルギーがより低い。
【0073】
図5(c)に表したように、p形半導体層20の側の電子の波動関数WF1においては、裾部分209aが大きい。すなわち、半導体発光素子119aにおいては、第1井戸層31aの電子は第1井戸層31a内に十分に閉じ込められていない。
【0074】
図6(a)〜図6(c)は、第2参考例の半導体発光素子の構成及び特性を例示する模式図である。
図6(a)に表したように、半導体発光素子119bにおいては、中間障壁層32qの厚さは3nmとされ、逆傾斜層59rの厚さは20nmとされ、p側障壁層32pの厚さは17nmとされた。なお、逆傾斜層59rと中間障壁層32qとを1つの層と見なすこともできる。その場合には、その1つの層の第1井戸層31aの側の厚さが3nmの部分においてバンドギャップエネルギーが一定で、その残りの厚さが20nmの部分でバンドギャップエネルギーが+Z軸方向に沿って減少すると見なされる。
【0075】
逆傾斜層59rはInGaNとされ、逆傾斜層59rのn形半導体層10の側の部分におけるIn組成比は、逆傾斜層59rのp形半導体層20の側の部分におけるIn組成比よりも低く設定された。中間障壁層32q及びp側障壁層32pの組成は、第1〜第3障壁層32a〜32cと同様とされた。
なお、第1〜第3井戸層31a〜31c、並びに、第1〜第3障壁層32a〜32cの厚さ及び材料は半導体発光素子110と同じに設定された。
【0076】
このように、半導体発光素子119bの構成は、半導体発光素子110におけるAl含有層40の代わりに、他の障壁層32と同じ組成の中間障壁層32qが配置され、中間層50の代わりに、In組成比の傾きが逆の逆傾斜層59rが配置された構成に相当する。
【0077】
図6(b)に表したように、第1井戸層31aと中間障壁層32qとの間の界面における障壁は小さい。このように、半導体発光素子119bにおいては、第1井戸層31aのp形半導体層20の側に、中間障壁層32q、逆傾斜層59r及びp側障壁層32pが設けられているが、電子に対する閉じ込め効果は半導体発光素子119aと同等または小さいと考えられる。
【0078】
図6(c)に表したように、半導体発光素子119bにおいても、p形半導体層20の側の電子の波動関数WF1の裾部分209bが大きい。すなわち、第1井戸層31aの電子は第1井戸層31a内に十分に閉じ込められていない。
【0079】
ホールの波動関数WF2には、4つのピークが現れている。p形半導体層20の側のホールの波動関数WF2は、逆傾斜層59rの厚さ方向のほぼ中央部分に位置しており、第1井戸層31aから遠い位置にホールが存在している。このため、半導体発光素子119bにおいては、MQWへのホールの注入効率は低いと考えられる。
【0080】
図7(a)〜図7(c)は、第3参考例の半導体発光素子の構成及び特性を例示する模式図である。
図7(a)に表したように、半導体発光素子119cにおいては、中間障壁層32qの厚さが15nmとされ、p側障壁層32pの厚さは12nmとされた。p側障壁層32pの材料は、第1〜第3障壁層32a〜32cと同じとされた。中間障壁層32qの材料は、In0.011Ga0.989Nとされた。
第1〜第3井戸層31a〜31c、第1〜第3障壁層32a〜32c、Al含有層40及び中間層50の厚さ及び材料は半導体発光素子110と同じに設定された。
【0081】
図7(b)に表したように、半導体発光素子119cにおいては、Al含有層40に基づく障壁は第1井戸層31aから遠い位置に存在している。これは、Al含有層40と第1井戸層31aとの間に中間障壁層32qが設けられているためである。半導体発光素子119cにおいては、電子に対する閉じ込め効果が半導体発光素子119aと同等または小さいと考えられる。
【0082】
図7(c)に表したように、半導体発光素子119cにおいても、p形半導体層20の側の電子の波動関数WF1の裾部分209bが大きい。すなわち、第1井戸層31aの電子は第1井戸層31a内に十分に閉じ込められていない。
【0083】
ホールの波動関数WF2には、4つのピークが現れている。p形半導体層20の側のホールの波動関数WF2は、Al含有層40と中間層50との界面の近傍に位置しており、第1井戸層31aからは遠い位置にホールが存在している。このため、半導体発光素子119cにおいては、MQWへのホールの注入効率は低いと考えられる。
【0084】
図8(a)及び図8(b)は、半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、これらの図は、半導体発光素子110、及び、半導体発光素子119a〜119cの特性を表すグラフ図である。これらの図の横軸は、電流密度Jcである。図8(a)の縦軸は内部量子効率IQEである。図8(a)においては、電流密度が小さい領域の特性は省略されている。図8(b)の縦軸は利得Gnである。
【0085】
図8(a)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、第1〜第3参考例の半導体発光素子119a〜119cに比べて高い内部量子効率IQEが得られる。
【0086】
図8(b)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、第1〜第3参考例の半導体発光素子119a〜119cに比べて高い利得Gnが得られる。
【0087】
図9(a)及び図9(b)は、半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、これらの図は、半導体発光素子110、及び、半導体発光素子119a〜119cのキャリア濃度(ホールの濃度及び電子の濃度)の特性を表すグラフ図である。これらの図の横軸は、電流密度Jcである。図9(a)の縦軸はホールの濃度Chである。図9(b)の縦軸は電子の濃度Ceである。
【0088】
図9(a)及び図9(b)に表したように、第1、第2及び第3参考例の半導体発光素子119a、119b及び119cにおいては、電子の濃度Ceに比べてホールの濃度Chがかなり高い。
【0089】
本実施形態に係る半導体発光素子110においては、ホールの濃度Chは、ほぼ電子の濃度Ceと一致する。このように、半導体発光素子110においては、キャリア濃度のバランスが良い。
【0090】
以上のように、半導体発光素子110においては、第1、第2及び第3参考例の半導体発光素子119a、119b、119cよりも、ホールの濃度Chと電子の濃度Ceのバランスを向上でき、このことが、発光効率が高いことの要因の1つであると考えられる。
【0091】
図10は、半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
同図は、半導体発光素子110、及び、半導体発光素子119a〜119cの動作電圧を示すグラフ図であり、横軸は電流密度Jcであり、縦軸は動作電圧Vfである。
図10に表したように、半導体発光素子110及び半導体発光素子119a〜119cにおいて、動作電圧Vfはほぼ一定である。
【0092】
このように、半導体発光素子110は、第1〜第3参考例の半導体発光素子119a〜119cと同等の動作電圧Vfを有しつつ、半導体発光素子119a〜119cよりも高い内部量子効率IQE及び利得Gnを実現できる。
【0093】
本実施形態に係る半導体発光素子110においては、中間層50のバンドギャップエネルギーの傾斜(増減)の向きを適切に設定することで高い発光効率を実現している。
以下、バンドギャップエネルギーの傾斜の向きが発光効率に与える影響がより明確になる場合として、Al含有層40を設けない構成において、バンドギャップエネルギーの傾斜を変えた場合の特性についてシミュレーションした結果について説明する。
【0094】
図11(a)〜図11(c)は、第4参考例の半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
図11(a)は、第4参考例の半導体発光素子119dの構成を例示する模式的断面図であり、図11(b)は、バンドギャップエネルギーを例示する模式図であり、図11(c)は、In組成比を示す模式図である。
図11(a)に表したように、半導体発光素子119dにおいては、Al含有層40が設けられず、第1井戸層31aのp形半導体層20の側の面に接して中間層50が設けられている。図11(c)に表したように、中間層50におけるIn組成比は、+Z軸方向に向かって減少し、図11(b)に表したように、中間層50におけるバンドギャップエネルギーは、+Z軸方向に向かって増大する。
【0095】
図12(a)〜図12(c)は、第5参考例の半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
図12(a)に表したように、第5比較例の半導体発光素子119eにおいては、Al含有層40が設けられず、第1井戸層31aのp形半導体層20の側の面に接して逆傾斜層59rが設けられている。図12(c)に表したように、逆傾斜層59rにおけるIn組成比は、+Z軸方向に向かって増大し、図12(b)に表したように、逆傾斜層59rにおけるバンドギャップエネルギーは、+Z軸方向に向かって減少する。
【0096】
図13は、第4及び第5参考例の半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
同図の横軸は電流密度Jcであり、縦軸は、第1井戸層31aにおける内部量子効率IQE1である。なお、既に説明した図8(a)における内部量子効率IQEは、第1〜第3井戸層31a〜31cを含めた総合的な内部量子効率に対応しているのに対し、図13における内部量子効率IQE1は、第1井戸層31aのみの内部量子効率である。
【0097】
図13に表したように、バンドギャップエネルギーの傾斜の向きが互いに逆転する半導体発光素子119d及び119eにおいては、内部量子効率IQEが互いに異なる。
【0098】
このように、バンドギャップエネルギーの傾斜の向きは、発光効率に影響を与える。このため、高い発光効率を得るためには、バンドギャップエネルギーの傾斜の向きを適切に設定する必要がある。
【0099】
図4に関して説明したように、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、第1井戸層31aのp形半導体層20の側の面に接してAl含有層40を設け、Al含有層40のp形半導体層20の側の面に接して+Z軸方向に沿ってバンドギャップエネルギーが増大する中間層50を設けることで、第1井戸層31aとAl含有層40との間の界面の近傍に、電子に対してより高い障壁が形成される。そして、p形半導体層20の電子の波動関数WF1の裾部分201が縮小され、第1井戸層31aからの電子のオーバーフローが効率良く抑制される。そして、Al含有層40と中間層50との界面の近傍部分、すなわち、第1井戸層31aの近接部分に、ホールの波動関数WF2が形成され、ホールが第1井戸層31aの近傍部分に効率良く閉じ込められる。これにより、MQWへのホールの注入効率を向上できる。
【0100】
この構成によると、第1井戸層31aにおける電子のオーバーフローを抑制し、MQWへのホールの注入効率を向上できるため、半導体発光素子110において複数の井戸層31が設けられる場合に、複数の井戸層31における発光効率を向上できる。
【0101】
本実施形態に係る半導体発光素子110においては、Al含有層40及び中間層50におけるバンドギャップエネルギーと、Al含有層40の格子定数と、を適切に設定することで、ピエゾ電界の影響を有効に働かせ、電子のオーバーフローの抑制とホールの注入効率の向上と、を実現している。
【0102】
例えば、n形半導体層10にGaNが用いられる場合、井戸層31及び障壁層32に例えばInGaNが用いられると、InGaNの格子定数がGaNよりも大きいため、井戸層31及び障壁層32には、圧縮応力が発生する。
【0103】
そして、Al含有層40としてAlGaNを用いると、AlGaNの格子定数は、GaNよりも小さいため、Al含有層40には、引張応力が発生する。
【0104】
一般に、井戸層31の格子定数はn形半導体層10の格子定数よりも大きく設定されるので、Al含有層40の格子定数がn形半導体層10の格子定数よりも小さく設定されると、結果として、Al含有層40の格子定数は井戸層31(第1井戸層31aなど)の格子定数よりも小さく設定される。
【0105】
これにより、互いに隣接する第1井戸層31aとAl含有層40とで、互いに異なる方向の応力が発生する。すなわち、第1井戸層31aにおいて圧縮応力が発生し、Al含有層40において引張応力が発生する。
【0106】
このため、第1井戸層31aとAl含有層40との間の界面において、ピエゾ効果によって発生する電界の向きが互いに逆方向になる。この電界は、電子を第1井戸層31aに閉じ込める方向に作用し、結果として電子の第1井戸層31aからのオーバーフローが効果的に抑制される。そして、ホールを第1井戸層31aの近傍に存在させ、MQWへのホールの注入効率を向上できる。
【0107】
本実施形態に係る半導体発光素子110においては、n形半導体層10の[0001]の方向(+Z軸方向)に沿って、n形半導体層10、第1障壁層32a、第1井戸層31、Al含有層40、中間層50及びp形半導体層20をこの順番で配置し、Al含有層40における格子定数をn形半導体層10よりも小さく設定し、すなわち、第1井戸層31aよりも小さく設定することで、上記の効果が得られる。
【0108】
そして、中間層50のバンドギャップエネルギーを+Z軸方向に沿って増大させることで、電子及びホールに対して適切なエネルギー障壁を形成することができ、電子のオーバーフローを抑制しつつ、ホールの注入効率を向上できる。
【0109】
III族窒化物半導体を用いた半導体発光素子においては、活性層にホールを注入するために高いバイアスが印加される。これによって電子が活性層からオーバーフローを起こし、p形半導体層20の無効電流が増大し、発光効率を低下させることがある。本実施形態によれば、電子のオーバーフローが抑制でき、ホールの注入効率を向上でき、発光効率が向上できる。
【0110】
なお、電子のオーバーフローを防止するための障壁層を、活性層のp形半導体層の側またはp形半導体層内に設ける種々の構成が提案されているが、本実施形態の構成は知られていない。
【0111】
例えば、活性層のn形半導体層の側にn側中間層を配置し、活性層のp形半導体層の側にp側中間層を配置し、そのn側中間層及びp側中間層のAl組成及びIn組成を厚み方向に沿って変化させる構成も知られているが、半導体層の結晶方位の方向と、Al組成及びIn組成の傾斜の向きと、の関係についての適切な条件については知られていない。
【0112】
例えば、第2参考例の半導体発光素子119bの逆傾斜層59rにおけるIn組成比の傾斜の向きは、本実施形態に係る半導体発光素子110の中間層50におけるIn組成比の傾斜の向きとは、逆である。そして、図8(a)及び図8(b)に例示したように、第2参考例の半導体発光素子119bの特性は、本実施形態に係る半導体発光素子110の特性よりも低い。
【0113】
このように、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、中間層50におけるバンドギャップエネルギーの傾斜(すなわちIn組成比の傾斜)をn形半導体層10の[0001]方向と関連付けて適切に定めることにより、高い発光効率を得ている。
【0114】
図13に関して既に説明したように、組成が傾斜している組成傾斜層におけるIn組成比の傾斜の向きと、例えば第1井戸層31aへのキャリア注入効率と、には関係がある。このため、In組成比の傾斜の向きが不適切であると、発光効率を十分に向上できない。
【0115】
従って、半導体発光素子110においては、中間層50におけるバンドギャップエネルギーの傾斜の向き(すなわち、中間層50におけるIn組成比の傾斜の向き)は、n形半導体層10の結晶方位の方向と関連付けて定められる。
【0116】
図14は、半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
同図は、実施形態に係る半導体発光素子において、中間層50の厚さを変えたときの特性をシミュレーションした結果を示している。このとき、図4に例示したように、中間層50及びp側障壁層32pの合計の厚さは37nmで一定とした。すなわち、Al含有層40、中間層50及びp側障壁層32pの合計の厚さは40nmで一定である。
【0117】
中間層50の厚さが5nm(p側障壁層32pの厚さは32nm)の条件を半導体発光素子111aとする。中間層50の厚さが10nm(p側障壁層32pの厚さは27nm)の条件を半導体発光素子111bとする。中間層50の厚さが37nm(p側障壁層32pの厚さは0nm)の条件を半導体発光素子111cとする。なお、中間層50の厚さが20nm(p側障壁層32pの厚さは17nm)の条件が半導体発光素子110に相当する。
【0118】
半導体発光素子110、111a〜111cにおいて、それぞれの中間層50における両端のIn組成比は0.03と0.01とで、In組成比が+Z軸方向に沿って直線的に変化するものとした。すなわち、中間層50の厚みに応じて、In組成比の変化の傾きが変化する。
【0119】
図14には、第6参考例の半導体発光素子119fの特性も合わせて示されている。半導体発光素子119fにおいては、第1井戸層31aに接してAl含有層40が設けられているが、中間層50が設けられていない(中間層50の厚さが0nmに相当)。そして、Al含有層40に接して、厚さが37nmのp側障壁層32pが設けられている。
【0120】
図14の横軸は動作電圧Vfであり、縦軸は、p側電極80における電子電流密度Jepである。電子電流密度Jepは、電子のオーバーフローの程度に相当し、電子電流密度Jepが小さいと電子のオーバーフローが小さい。
【0121】
図14に表したように、中間層50を設けない半導体発光素子119fにおいては、電子電流密度Jepが著しく大きく、電子のオーバーフローが大きい。
【0122】
一方、半導体発光素子110、111a〜111cにおいては、電子電流密度Jepが小さく、電子のオーバーフローが抑制される。
【0123】
中間層50の厚さは、5nm以上であることが望ましい。これにより、電子のオーバーフローが抑制できる。中間層50の厚さは、10nnm以上であることがさらに望ましい。これにより、電子のオーバーフローがさらに抑制でき、電子のオーバーフローが実質的に発生しない状態が実現できる。
【0124】
中間層50の厚さは、100nm以下であることが望ましい。中間層50の厚さが100nmを超えると、例えば駆動電圧Vfが上昇し、所望の仕様が得られない。
【0125】
中間層50にはAlが実質的に含まれないことが望ましい。特に、中間層50の第1井戸層31aの側の第1部分55がAlを含まないことで、第1部分55におけるバンドギャップエネルギーを十分小さくでき、中間層50とAl傾斜層40との間の界面におけるバンドギャップエネルギーの差異が明確になる。また、第1部分55がAlを含まないことで、第1部分55におけるバンドギャップエネルギーを十分小さくでき、中間層50内におけるバンドギャップエネルギーの傾斜を明確に形成し易くなる。
【0126】
上記のように、Al含有層40には、例えば、AlGaInNが用いられる。
Al含有層40におけるAl組成比(Al含有層Al組成比x1)は、0.001以上0.3以下とされる。Al含有層Al組成比x1が、0.001未満の場合には、Al含有層40のバンドギャップエネルギーが障壁層32のバンドギャップエネルギーよりも十分に大きくならず、上記の効率向上の効果が得られ難い。Al含有層Al組成比x1が0.3よりも大きくなると、ホールへの障壁も増しMQWへのホールの注入効率の阻害要因になり得る。また、結晶性が劣化する場合があり、結果として効率が低下する。Al含有層40にはInが含まれる必要はなく、In組成比は0でも良い。
【0127】
Al含有層40の厚さは、1nm以上50m以下とされる。Al含有層40の厚さが1nm未満の場合は、上記の効率向上の効果が得られ難い。Al含有層40の厚さが50nmを超えると、高抵抗化し動作電圧が高くなる。また、結晶性が劣化する場合があり、結果として効率が低下する。
【0128】
上記においては、中間層50におけるバンドギャップエネルギー、すなわち、In組成比は、直線的に変化するものとしたが、実施形態はこれに限らない。中間層50におけるバンドギャップエネルギー及びIn組成比は、例えば、曲線的に変化しても良い。
【0129】
図15(a)〜図15(d)は、実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
すなわち、図15(a)及び図15(b)は、実施形態に係る別の半導体発光素子112aにおけるバンドギャップエネルギーとIn組成比をそれぞれ例示している。図15(c)及び図15(d)は、実施形態に係る別の半導体発光素子112bにおけるバンドギャップエネルギーとIn組成比をそれぞれ例示している。
【0130】
図15(a)及び図15(b)に表したように、半導体発光素子112aにおいては、中間層50におけるバンドギャップエネルギー及びIn組成比は4段階で、段階的に変化している。
図15(c)及び図15(d)に表したように、半導体発光素子112bにおいては、中間層50におけるバンドギャップエネルギー及びIn組成比は3段階で、段階的に変化している。
【0131】
このように、中間層50におけるバンドギャップエネルギー及びIn組成比は、段階的に変化しても良い。なお、各段どうしにおけるバンドギャップエネルギー及びIn組成比の差は均等でなくても良く、バンドギャップエネルギー及びIn組成比の変化の仕方は任意である。
【0132】
このように、中間層50は、複数のサブ層どうしでバンドギャップエネルギー及びIn組成比は互いに異なる複数のサブ層を含むことができる。複数のサブ層の数は任意である。
【0133】
Al含有層40は、積層構造を有していても良い。
図16(a)〜図16(d)は、実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
図16(a)は、実施形態に係る別の半導体発光素子113aの構成を例示する模式的断面図であり、図16(b)は、半導体発光素子113aのバンドギャップエネルギーを例示している。図16(c)は、実施形態に係る別の半導体発光素子113bの構成を例示する模式的断面図であり、図16(d)は、半導体発光素子113bのバンドギャップエネルギーを例示している。
【0134】
図16(a)〜図16(d)に表したように、半導体発光素子113a及び半導体発光素子113bにおいては、Al含有層40は、第1層41と、第2層42と、を有している。第1層41は、第1井戸層31aに接している。第2層42は、第1層41と中間層50との間において第1層41に接する。第2層42は、第1層41のバンドギャップエネルギーとは異なるバンドギャップエネルギーを有する。
【0135】
すなわち、半導体発光素子113aにおいては、第2層42のバンドギャップエネルギーは、第1層41のバンドギャップエネルギーよりも大きい。半導体発光素子113bにおいては、第2層42のバンドギャップエネルギーは、第1層41のバンドギャップエネルギーよりも小さい。
【0136】
このように、Al含有層40が、互いに異なるバンドギャップエネルギーを有する複数の層の積層構造を有していても、上記と同様の効果が発揮され、すなわち、電子のオーバーフローを抑制し、ホールの注入効率が向上できる。
【0137】
なお、例えば、第1層41におけるAl組成比と、第2層42におけるAl組成比と、が異なることによって、第1層41におけるバンドギャップエネルギーが第2層42におけるバンドギャップエネルギーとは異なる。
【0138】
第1層41と第2層42とでAl組成比を変えることで、第1層41と第2層42とで格子定数が変わる。格子定数が大きい結晶(井戸層、及び、中間層50のp形半導体層20の側の第2部分56)と、格子定数が小さい結晶(Al含有層40)と、を接して成長する場合に、その界面において欠陥や転位が発生し易くなる。このとき、Al含有40に第1層41及び第2層42を設けることで、格子定数が大きい結晶と格子定数が小さい結晶との中間の格子定数を有する層を設けることができ、欠陥や転位の発生を抑制すことができ、発光効率をより向上できる。
【0139】
図4に例示したように、本実施形態に係る半導体発光素子110において、電子のオーバーフローが抑制されホールの注入効率が向上される効果は、複数の井戸層31のうちでp形半導体層20に一番近い第1井戸層31aの状態(障壁、電子の波動関数WF1及びホールの波動関数WF2の状態)が、Al含有層40及び中間層50を設けることで適切に制御されることに基づいている。換言すれば、Al含有層40及び中間層50によって、複数の井戸層31のうちでp形半導体層20に一番近い第1井戸層31aの状態は大きく影響を受けるが、他の井戸層31(例えば第2井戸層31b及び第3井戸層31cなど)は大きな影響を受けていない。従って、Al含有層40及び中間層50を設けることで得られる電子のオーバーフローの抑制及びホールの注入効率の向上の効果は、井戸層31が1つの構成(単一量子井戸構造)においても発揮される。
【0140】
以上のように、実施形態によれば、発光効率を向上できる半導体発光素子が提供できる。
【0141】
なお、本明細書において「窒化物半導体」とは、BxInyAlzGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電型などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0142】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体発光素子に含まれるn形半導体層、p形半導体層、井戸層、障壁層、Al含有層、中間層及び電極などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0143】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体発光素子を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体発光素子も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0144】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0146】
5…基板、 6…バッファ層、 10…n形半導体層、 10a…第1主面、 10b…第2主面、 10p…一部、 10s…積層構造体、 11…n側コンタクト層、 12…n側クラッド層、 20…p形半導体層、 21…p側クラッド層、 22…p側コンタクト層、 31…井戸層、 31a…第1井戸層、 31b…第2井戸層、 31c…第3井戸層、 32…障壁層、 32a…第1障壁層、 32b…第2障壁層、 32c…第3障壁層、 32p…p側障壁層、 33a…第1井戸層、 33b…第2井戸層、 33c…第3井戸層、 34a…第1障壁層、 34b…第2障壁層、 34c…第3障壁層、 34p…p側障壁層、 34q…中間障壁層、 40…Al含有層、 41…第1層、 42…第2層、 50…中間層、 55…第1部分、 56…第2部分、 59r…逆傾斜層、 70…n側電極、 80…p側電極、 110、111a〜111c、112a、112b、113a、113b、119a〜119f…半導体発光素子、 201、209a、209b…裾部分、 Bc…伝導帯、 Bv…価電子帯、 CIn…In組成比、 Ce…電子の濃度、 Ch…ホールの濃度、 Eb…バンドギャップエネルギー、 Gn…利得、 IQE、IQE1…内部量子効率、 Jc…電流密度、 Jep…電子電流密度、 Vf…動作電圧、 WF1…電子の波動関数、 EF2…ホールの波動関数、 Zd…位置
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
LD(Laser Diode)やLED(Light Emitting Diode)などの半導体発光素子において発光効率の向上が求められている。
【0003】
例えば、発光効率の向上のために、活性層における電子のオーバーフローを抑制する種々の構成が提案されている。しかしながら、発光効率向上のためには改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−245165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、発光効率を向上できる半導体発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によれば、n形半導体層と、p形半導体層と、第1井戸層と、第1障壁層と、Al含有層と、中間層と、を備えた半導体発光素子が提供される。前記n形半導体層は、窒化物半導体を含む。前記p形半導体層は、前記n形半導体層の[0001]方向の側に設けられ、窒化物半導体を含む。前記第1井戸層は、前記n形半導体層と前記p形半導体層との間に設けられ、前記n形半導体層のバンドギャップエネルギーよりも小さく前記p形半導体層のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有し、窒化物半導体を含む。前記第1障壁層は、前記第1井戸層と前記n形半導体層との間に設けられ、前記第1井戸層に接し、前記第1井戸層の前記バンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有し、窒化物半導体を含む。前記Al含有層は、前記第1井戸層と前記p形半導体層との間に設けられ、前記第1井戸層に接し、前記第1障壁層の前記バンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有し、前記n形半導体層の格子定数よりも小さい格子定数を有し、前記Al含有層の組成は、Alx1Ga1−x1−y1Iny1N(0<x1<1、0≦y1<1)である。前記中間層は、前記Al含有層と前記p形半導体層との間に設けられ、前記Al含有層に接し、前記第1井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有し、窒化物半導体を含む。前記中間層の前記n形半導体層の側の第1部分におけるバンドギャップエネルギーは、前記中間層の前記p形半導体層の側の第2部分におけるバンドギャップエネルギーよりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図2】図2(a)及び図2(b)は、実施形態に係る半導体発光素子を示す模式図である。
【図3】図3(a)〜図3(d)は、半導体発光素子におけるバンドギャップエネルギーを示す模式図である。
【図4】図4(a)〜図4(c)は、実施形態に係る半導体発光素子の構成及び特性を示す模式図である。
【図5】図5(a)〜図5(c)は、第1参考例の半導体発光素子の構成及び特性を示す模式図である。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、第2参考例の半導体発光素子の構成及び特性を示す模式図である。
【図7】図7(a)〜図7(c)は、第3参考例の半導体発光素子の構成及び特性を示す模式図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は、半導体発光素子の特性を示すグラフ図である。
【図9】図9(a)及び図9(b)は、半導体発光素子の特性を示すグラフ図である。
【図10】図10は、半導体発光素子の特性を示すグラフ図である。
【図11】図11(a)〜図11(c)は、第4参考例の半導体発光素子を示す模式図である。
【図12】図12(a)〜図12(c)は、第5参考例の半導体発光素子を示す模式図である。
【図13】第4及び第5参考例の半導体発光素子の特性を示すグラフ図である。
【図14】半導体発光素子の特性を示すグラフ図である。
【図15】図15(a)〜図15(d)は、実施形態に係る半導体発光素子を示す模式図である。
【図16】図16(a)〜図16(d)は、実施形態に係る半導体発光素子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
図1は、実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図1に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110は、n形半導体層10と、p形半導体層20と、第1井戸層31aと、第1障壁層32aと、Al含有層40と、中間層50と、を備える。
【0010】
n形半導体層10は、窒化物半導体を含む。
p形半導体層20は、n形半導体層10の[0001]方向の側に設けられる。p形半導体層20は、窒化物半導体を含む。
【0011】
第1井戸層31aは、n形半導体層10とp形半導体層20との間に設けられる。第1井戸層31aは、n形半導体層10のバンドギャップエネルギーよりも小さくp形半導体層20のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する。第1井戸層31aは、窒化物半導体を含む。
【0012】
第1障壁層32aは、第1井戸層31aとn形半導体層10との間に設けられ、第1井戸層31aに接する。第1障壁層32aは、第1井戸層31aのバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する。第1井戸層31aは、窒化物半導体を含む。
【0013】
Al含有層40は、第1井戸層31aとp形半導体層20との間に設けられ、第1井戸層31aに接する。Al含有層40は、第1障壁層32aのバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する。Al含有層40は、n形半導体層10の格子定数よりも小さい格子定数を有する。Al含有層40の組成は、Alx1Ga1−x1−y1Iny1N(0<x1<1、0≦y1<1)である。
Al含有層40には、例えば、Alx1Ga1−xN(0.001≦x1<0.3)が用いられる。
【0014】
中間層50は、Al含有層40とp形半導体層20との間に設けられ、Al含有層40に接する。中間層50は、第1井戸層31aのバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する。中間層50は、窒化物半導体を含む。
【0015】
中間層50のn形半導体層10の側の部分におけるバンドギャップエネルギーは、中間層50のp形半導体層20の側の部分におけるバンドギャップエネルギーよりも小さい。
【0016】
中間層50のバンドギャップエネルギーは、p形半導体層20のバンドギャップエネルギー以下である。すなわち、中間層50のp形半導体層10の側の部分におけるバンドギャップエネルギーは、p形半導体層20のバンドギャップエネルギー以下である。
【0017】
中間層50には、例えばアンドープのInGaNが用いられる。中間層50のなかで、Al含有層40の側の部分のIn組成比を、p形半導体層20の側の部分よりも高く設定することで、中間層50のn形半導体層10の側の部分におけるバンドギャップエネルギーが、中間層50のp形半導体層20の側の部分におけるバンドギャップエネルギーよりも小さく設定される。
例えば、中間層50におけるバンドギャップエネルギーは、n形半導体層10の側からp形半導体層20の側に進むに従って増大する。
【0018】
本実施形態においては、半導体発光素子110は、第2井戸層31bと、第2障壁層32bと、第3井戸層31cと、第3障壁層32cと、をさらに備えている。
【0019】
第2井戸層31bは、第1障壁層32aとn形半導体層10との間に設けられ、第1障壁層32aに接する。第2井戸層31bは、第1障壁層32aのバンドギャップエネルギーよりも小さく、Al含有層40のバンドギャップエネルギーよりも小さく、中間層50のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する。第2井戸層31bは、窒化物半導体を含む。
【0020】
第2障壁層32bは、第2井戸層31bとn形半導体層10との間に設けられ、第2井戸層31bに接する。第2障壁層32bは、第2井戸層31bのバンドギャップエネルギーよりも大きく、Al含有層40のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する。第2障壁層32bは、窒化物半導体を含む。
【0021】
第3井戸層31cは、第2障壁層32bとn形半導体層10との間に設けられ、第2障壁層32bに接する。第3井戸層31cは、第2障壁層32bのバンドギャップエネルギーよりも小さく、Al含有層40のバンドギャップエネルギーよりも小さく、中間層50のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する。第3井戸層31bは、窒化物半導体を含む。
【0022】
第3障壁層32cは、第3井戸層31cとn形半導体層10との間に設けられ、第3井戸層31cに接する。第3障壁層32cは、第3井戸層31bのバンドギャップエネルギーよりも大きく、Al含有層40のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する。第3障壁層32cは、窒化物半導体を含む。
【0023】
本具体例では、3つの井戸層31が設けられた多重量子井戸構造が採用されている。ただし、実施形態はこれに限らず、多重量子井戸構造における井戸層31の数は任意である。実施形態において、井戸層31が1つの単一量子井戸構造が採用されても良い。
【0024】
複数の井戸層31が設けられる場合、井戸層31の数を井戸層数N(Nは2以上の整数)とする。1番目の井戸層31は、複数の井戸層31のうちで最もp形半導体層20に近い側に配置されるものとする。N番目の井戸層31は、複数の井戸層31のうちで最もn形半導体層10に近い側に配置されるものとする。第1井戸層31a〜第N井戸層を総称して、井戸層31という。複数の井戸層31のうちのそれぞれが、第1井戸層31a、第2井戸層31b及び第3井戸層31cなどに対応する。
【0025】
複数の井戸層31のそれぞれのn形半導体層10の側に、障壁層32が設けられる。すなわち、第N井戸層のn形半導体層10の側に、第N障壁層が設けられる。第1障壁層32a〜第N障壁層を総称して、障壁層32という。複数の障壁層32のそれぞれが、第1障壁層32a、第2障壁層32b及び第3障壁層32cなどに対応する。
【0026】
第N井戸層は、第(N−1)障壁層とn形半導体層10との間に設けられ、第(N−1)障壁層に接する。第N井戸層は、第(N−1)障壁層のバンドギャップエネルギーよりも小さく、Al含有層40のバンドギャップエネルギーよりも小さく、中間層50のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する。第N井戸層は、窒化物半導体を含む。
【0027】
第N障壁層は、第N井戸層とn形半導体層10との間に設けられ、第N井戸層に接する。第N障壁層は、第N井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きく、Al含有層40のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する。第N障壁層は、窒化物半導体を含む。
【0028】
なお、Al含有層40は、第N障壁層のバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する。中間層50は、第N井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する。
【0029】
井戸層31(第1井戸層31aなど)には、例えば、InwGa1−wN(0<w≦1)が用いられる。井戸層31におけるIn組成比(井戸層In組成比w)は、例えば0.01以上0.5以下とされる。井戸層In組成比wは、例えば0.07とされる。井戸層31には、例えば、In0.07Ga0.93Nが用いられる。
【0030】
障壁層32(第1障壁層32aなど)には、例えば、Alb2Inb1Ga1−b1−b2N(0≦b1<1、0≦b2<1、0≦b1+b2≦1)が用いられる。障壁層32におけるIn組成比(障壁層In組成比b1)は、例えば0.005以上で、井戸層IN組成比w以下とされる。障壁層In組成比b1は、例えば0.01とされる。障壁層Al組成比b2は、例えば0とされる。障壁層32には、例えば、In0.01Ga0.99Nが用いられる。
【0031】
これにより、障壁層32のバンドギャップエネルギーは、井戸層31のバンドギャップエネルギーよりも大きくなる。
但し、実施形態はこれに限らず、井戸層31及び障壁層32の組成は、井戸層31のバンドギャップエネルギーが障壁層32バンドギャップエネルギーよりも小さいという関係が満たされていれば、任意である。
【0032】
井戸層31の厚さは、例えば1ナノメートル(nm)以上、10nm以下とされる。井戸層31の厚さが1nm未満の場合には、井戸層31におけるキャリアの閉じ込め効果が小さくなり高い発光効率が得られない。井戸層31の厚さが10nmを超えると結晶の劣化が著しくなる。井戸層31の厚さは、例えば3nmとされる。
【0033】
障壁層32の厚さは、例えば3nm以上とされる。障壁層32の厚さが3nm未満の場合には、井戸層31へのキャリアの閉じ込め効果が小さくなり高い発光効率が得られない。障壁層32の厚さは、例えば10nmとされる。
【0034】
井戸層31(第1井戸層31aなど)から放出される光の波長は、330nm以上580nm以下とされる。このような光を放出するように、井戸層31に用いられる材料の条件が適切に設定される。
【0035】
ここで、図1に表したように、n形半導体層10からp形半導体層20に向かう方向を+Z軸方向とする。p形半導体層20は、n形半導体層10の+Z軸方向の側に配置される。
【0036】
n形半導体層10の+Z軸方向の側の面は、例えば、(0001)面であり、その(0001)面の側に、第1障壁層32aが設けられ、第1障壁層32aの+Z軸方向の側に第1井戸層31aが設けられ、第1井戸層31aの+Z軸方向の側にAl含有層40が設けられ、Al含有層40の+Z軸方向の側に中間層50が設けられ、中間層50の+Z軸方向の側にp形半導体層20が設けられる。
【0037】
ただし、n形半導体層10の+Z軸方向の側の面は、厳密な(0001)面でなくても良く、厳密な(0001)面から一定のオフセット角で傾斜した面でも良い。このオフセット角度は、例えば0度以上3度以下とされる。p形半導体層20がn形半導体層10の[0001]方向の側に設けられる状態は、このようにn形半導体層10の+Z軸方向の面が、(0001)面から傾斜している場合を含む。
【0038】
図1に例示したように、n形半導体層10の結晶が、例えばc面サファイア基板である基板5の主面上に設けられたバッファ層6の上に成長される。そして、n形半導体層10の上に、第1障壁層32a、第1井戸層31a2、Al含有層40、中間層50及びp形半導体層20の結晶が順次成長される。半導体発光素子110においては、基板5及びバッファ層6が設けられているが、上記の結晶の成長の後に、基板5及びバッファ層6は除去されても良い。
【0039】
本具体例では、n形半導体層10は、基板5の側に設けられたn側コンタクト層11と、第1障壁層32aの側に設けられたn側クラッド層12と、を有する。n側コンタクト層11の一部が露出しており、n側コンタクト層11に電気的に接触してn側電極70が設けられている。
【0040】
p形半導体層20は、中間層50の側に設けられたp側クラッド層21と、p側クラッド層21の中間層50とは反対の側に設けられたp側コンタクト層22と、を有する。p側コンタクト層22に電気的に接触してp側電極80が設けられている。
【0041】
このように半導体発光素子110は、積層構造体10sを含む。積層構造体10sは、n形半導体層10と、p形半導体層20と、n形半導体層10とp形半導体層20との間に設けられた発光部(第1障壁層32a、第1井戸層31a、Al含有層40及び中間層50)と、を含む。積層構造体10sは、p形半導体層20の側の第1主面10aと、n形半導体層10の側の第2主面10bと、を有している。
【0042】
本具体例においては、p形半導体層20及び発光部が選択的に除去されて、積層構造体10sの第1主面10aにn形半導体層10の一部10p(n側コンタクト層11の一部)が露出している。この露出したn形半導体層10の一部10pの上に、n側電極70が設けられている。
ただし、実施形態はこれに限らず、例えば、n形半導体層10の第2主面10bの側にn側電極70が設けられても良い。
【0043】
n側コンタクト層11には、例えば、Siが高い濃度でドープされたGaNなどが用いられる。n側クラッド層12におけるSi濃度は、n側コンタクト層11よりも低い。n側クラッド層12には、SiがドープされたGaN、または、SiがドープされたAlGaNなどが用いられる。
【0044】
p側コンタクト層22には、例えば、Mgが高い濃度でドープされたGaNなどが用いられる。p側クラッド層21におけるMg濃度は、p側コンタクト層22よりも低い。p側クラッド層21には、MgがドープされたGaN、または、MgがドープされたAlGaNなどが用いられる。
【0045】
n側クラッド層12及びp側クラッド層21は、井戸層31から放出される光に対して導波機能を有するように設計できる。すなわち、半導体発光素子110は、レーザダイオード(LD)とすることができる。また、半導体発光素子110はLEDでも良い。
以下では、半導体発光素子110がLDである場合として説明する。
【0046】
図2(a)及び図2(b)は、実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
すなわち、図2(a)は、半導体発光素子110の構成を例示する模式的断面図であり、図2(b)は、半導体発光素子110におけるIn組成比を例示するグラフ図である。図2(b)の横軸は+Z軸方向における位置であり、縦軸はIn組成比CInである。
【0047】
図2(a)及び図2(b)に表したように、障壁層32(第1〜第3障壁層32a〜32c)においてはIn組成比(障壁層In組成比b1)は、0.01である。井戸層31(第1〜第3井戸層31a〜31c)においてはIn組成比(井戸層In組成比w)は、0.07である。
本具体例では、Al含有層40には、Al0.05Ga0.95Nが用いられている。すなわち、Al含有層40におけるIn組成比は、実質的に0である。
【0048】
中間層50には、InGaNが用いられており、中間層50のn形半導体層10の側の部分(第1部分55)におけるIn組成比は0.03であり、中間層50のp形半導体層20の側の部分(第2部分56)におけるIn組成比は、0.01である。
このように、中間層50の第1部分55におけるIn組成比は、0よりも大きく、井戸層31(第1井戸層31aなど)におけるIn組成比よりも小さい。
【0049】
そして、本具体例では、中間層50におけるIn組成比は、n形半導体層10の側の部分(第1部分55)からp形半導体層20の側の部分(第2部分56)に向かうに従って連続的に減少している。このように、中間層50におけるIn組成比が傾斜している。
【0050】
なお、後述するように、中間層50におけるIn組成比の変化の状態は任意である。中間層50におけるIn組成比は、Al含有層40からp形半導体層20に向かう方向に沿って(+Z軸方向に進むに従って)、直線的にまたは曲線的に連続して減少しても良く、また、段階的に減少しても良い。
【0051】
このように、中間層50において、n形半導体層10の側の第1部分55のIn組成比をp形半導体層20の側の第2部分56のIn組成比よりも高く設定することで、第1部分56におけるバンドギャップエネルギーを、第2部分56におけるバンドギャップエネルギーよりも小さく設定される。
【0052】
図2(a)に表したように、本具体例では、中間層50とp形半導体層20との間にp側障壁層32pが設けられている。p側障壁層32pには、InGaNが用いられており、p側障壁層32pにおけるIn組成比は0.01に設定されている。すなわち、p側障壁層32pには、第1〜第3障壁層32a〜32cに用いられる材料と同じ材料が用いられている。
【0053】
図3(a)〜図3(d)は、半導体発光素子におけるバンドギャップエネルギーを例示する模式図である。
すなわち、図3(a)は、本実施形態に係る半導体発光素子110に対応し、図3(b)〜図3(d)は、第1〜第3参考例の半導体発光素子119a〜119cに対応する。これらの図の横軸は、+Z軸方向における位置を表し、縦軸は、バンドギャップエネルギーEbを表す。これらの図には、伝導帯Bcのエネルギーと、価電子帯Bvのエネルギーと、が模式的に表されている。
【0054】
図3(a)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110において、第1井戸層31a〜第3井戸層31cのバンドギャップエネルギーは、第1障壁層32a〜第3障壁層32cのバンドギャップエネルギーよりも小さい。
【0055】
井戸層31のうちで最もp形半導体層20に近い第1井戸層31aに接するAl含有層40のバンドギャップエネルギーは第1〜第3障壁層32a〜32cのバンドギャップエネルギーよりも大きく設定されている。
【0056】
中間層50のn形半導体層10の側の第1部分55におけるバンドギャップエネルギーは、中間層50のp形半導体層20の側の第2部分56におけるバンドギャップエネルギーよりも小さい。
【0057】
p側障壁層32pのバンドギャップエネルギーは、第1〜第3障壁層32a〜32cのバンドギャップエネルギーと同じである。
【0058】
本具体例においては、中間層50におけるバンドギャップエネルギーは、+Z軸方向に沿って直線的に連続的に増大している。
【0059】
ただし、既に説明したように、中間層50におけるIn組成比の変化の状態は任意であり、中間層50におけるバンドギャップエネルギーは、+Z軸方向に沿って曲線的に連続的に増大しても良い。中間層50におけるバンドギャップエネルギーは、+Z軸方向に沿って段階的に増大しても良い。
【0060】
中間層50の第1部分55(n形半導体層10の側の部分)におけるバンドギャップエネルギーは、第1〜第3障壁層32a〜32cのバンドギャップエネルギーよりも小さい。さらに、第1部分55におけるバンドギャップエネルギーは、p形半導体層20のバンドギャップエネルギー(図3(a)では省略している)よりも小さい。
【0061】
中間層50の第2部分56(p形半導体層20の側)におけるバンドギャップエネルギーは、p形半導体層20のバンドギャップエネルギー(図3(a)では省略している)以下である。
【0062】
図3(b)に表したように、第1参考例の半導体発光素子119aにおいては、Al含有層40及び中間層50が設けられていない。すなわち、第1井戸層31aに接してp側障壁層32pが設けられている。
【0063】
図3(c)に表したように、第2参考例の半導体発光素子119bにおいては、第1井戸層31aのp形半導体層20の側の面に接して中間障壁層32qが設けられ、中間障壁層32qのp形半導体層20の側の面に接して逆傾斜層59rが設けられている。逆傾斜層59rのn形半導体層10の側の部分におけるバンドギャップエネルギーは、逆傾斜層59rのp形半導体層20の側の部分におけるバンドギャップエネルギーよりも大きい。すなわち、逆傾斜層59rのバンドギャップエネルギーの傾斜の向きは、半導体発光素子110の中間層50におけるバンドギャップエネルギーの傾斜の向きと逆である。そして、逆傾斜層59rのp形半導体層20の側に、p側障壁層32pが設けられている。
【0064】
図3(d)に表したように、第3参考例の半導体発光素子119cにおいては、第1井戸層31aのp形半導体層20の側の面に接して中間障壁層32qが設けられている。中間障壁層32qのp形半導体層20の側の面に接して、Al含有層40が設けられている。Al含有層40のp形半導体層20の側の面に接して、中間層50が設けられている。さらに、中間層50のp形半導体層20の側の面に接して、p側障壁層32pが設けられている。すなわち、第3参考例の半導体発光素子119cの構成は、本実施形態に係る半導体発光素子110において、Al含有層40と第1井戸層31aとの間に、中間障壁層32qが設けられている構成に相当する。
【0065】
このような構成を有する半導体発光素子110及び119a〜119cの特性をシミュレーションした結果について説明する。
図4(a)〜図4(c)は、実施形態に係る半導体発光素子の構成及び特性を例示する模式図である。
図4(a)は、半導体発光素子110の構成を例示する模式的断面図である。図4(b)は、バンドギャップエネルギーのシミュレーション結果を例示する模式図である。図4(c)は、電子の波動関数WF1及びホールの波動関数WF2のシミュレーション結果を例示する模式図である。ホールの波動関数WF2においては、ライトホールの波動関数とヘビーホールの波動関数とがシミュレーションされたが、両者の特性はほぼ一致したため、シミュレーション結果は1つの線で表示されている。図4(b)及び図4(c)における横軸は、+Z軸方向に沿った位置Zdを示している。
【0066】
図4(a)に表したように、本シミュレーションでは、第3障壁層32cの厚さは40nmとされ、第1障壁層32a及び第2障壁層32bの厚さは10nmとされた。第1〜第3井戸層31a〜31cの厚さは、3nmとされた。Al含有層40の厚さは3nmとされた。中間層50の厚さは20nmとされた。p側障壁層32pの厚さは17nmとされた。
【0067】
第1〜第3井戸層31a〜31cは、In0.07Ga0.93Nとされた。第1〜第3障壁層32a〜32c及びp側障壁層32pはIn0.01Ga0.99Nとされた。Al含有層40は、Al0.05Ga0.95Nとされた。中間層50は、InGaNとされ、n形半導体層10の側の部分(第1部分55)がIn0.03Ga0.97Nとされ、p形半導体層20の側の部分(第2部分56)がIn0.01Ga0.99Nとされた。中間層50におけるIn組成比は、直線的に変化するものとした。
【0068】
図4(b)に表したように、シミュレーション結果においては、第1井戸層31aとAl含有層40との間の界面の近傍に、電子及びホールに対する高い障壁が形成されている。
【0069】
図4(c)に表したように、p形半導体層20の側の電子の波動関数WF1においては、裾部分201が小さい。電子は、第1井戸層31aとAl含有層40との間の界面において効率良く閉じ込められている。すなわち、半導体発光素子110においては、第1井戸層31aにおける電子がより局在的である。
【0070】
ホールの波動関数WF2には、4つのピークが現れている。すなわち、第1〜第3井戸層31a〜31cにそれぞれ対応する3つのピークと、Al含有層40と中間層50との界面の近傍部分に対応する4つ目のピークと、が現れている。この4つ目のピークの出現は、ホールがAl含有層40と中間層50との界面近傍に効率良く注入されていることに対応する。すなわち、半導体発光素子110においては、MQW(第1〜第3井戸層31a〜31cを含む多重量子井戸構造:Multiple Quantum Wells)へのホールの注入効率が高い。
【0071】
図5(a)〜図5(c)は、第1参考例の半導体発光素子の構成及び特性を例示する模式図である。
図5(a)に表したように、半導体発光素子119aにおいては、Al含有層40及び中間層50が設けられず、p側障壁層32pの厚さが40nmとされた。p側障壁層32pの材料は半導体発光素子110と同じに設定された。第1〜第3井戸層31a〜31c、並びに、第1〜第3障壁層32a〜32cの厚さ及び材料は半導体発光素子110と同じに設定された。
【0072】
図5(b)に表したように、シミュレーション結果においては、第1井戸層31aに対する障壁はp側障壁層32p側でエネルギーがより低い。
【0073】
図5(c)に表したように、p形半導体層20の側の電子の波動関数WF1においては、裾部分209aが大きい。すなわち、半導体発光素子119aにおいては、第1井戸層31aの電子は第1井戸層31a内に十分に閉じ込められていない。
【0074】
図6(a)〜図6(c)は、第2参考例の半導体発光素子の構成及び特性を例示する模式図である。
図6(a)に表したように、半導体発光素子119bにおいては、中間障壁層32qの厚さは3nmとされ、逆傾斜層59rの厚さは20nmとされ、p側障壁層32pの厚さは17nmとされた。なお、逆傾斜層59rと中間障壁層32qとを1つの層と見なすこともできる。その場合には、その1つの層の第1井戸層31aの側の厚さが3nmの部分においてバンドギャップエネルギーが一定で、その残りの厚さが20nmの部分でバンドギャップエネルギーが+Z軸方向に沿って減少すると見なされる。
【0075】
逆傾斜層59rはInGaNとされ、逆傾斜層59rのn形半導体層10の側の部分におけるIn組成比は、逆傾斜層59rのp形半導体層20の側の部分におけるIn組成比よりも低く設定された。中間障壁層32q及びp側障壁層32pの組成は、第1〜第3障壁層32a〜32cと同様とされた。
なお、第1〜第3井戸層31a〜31c、並びに、第1〜第3障壁層32a〜32cの厚さ及び材料は半導体発光素子110と同じに設定された。
【0076】
このように、半導体発光素子119bの構成は、半導体発光素子110におけるAl含有層40の代わりに、他の障壁層32と同じ組成の中間障壁層32qが配置され、中間層50の代わりに、In組成比の傾きが逆の逆傾斜層59rが配置された構成に相当する。
【0077】
図6(b)に表したように、第1井戸層31aと中間障壁層32qとの間の界面における障壁は小さい。このように、半導体発光素子119bにおいては、第1井戸層31aのp形半導体層20の側に、中間障壁層32q、逆傾斜層59r及びp側障壁層32pが設けられているが、電子に対する閉じ込め効果は半導体発光素子119aと同等または小さいと考えられる。
【0078】
図6(c)に表したように、半導体発光素子119bにおいても、p形半導体層20の側の電子の波動関数WF1の裾部分209bが大きい。すなわち、第1井戸層31aの電子は第1井戸層31a内に十分に閉じ込められていない。
【0079】
ホールの波動関数WF2には、4つのピークが現れている。p形半導体層20の側のホールの波動関数WF2は、逆傾斜層59rの厚さ方向のほぼ中央部分に位置しており、第1井戸層31aから遠い位置にホールが存在している。このため、半導体発光素子119bにおいては、MQWへのホールの注入効率は低いと考えられる。
【0080】
図7(a)〜図7(c)は、第3参考例の半導体発光素子の構成及び特性を例示する模式図である。
図7(a)に表したように、半導体発光素子119cにおいては、中間障壁層32qの厚さが15nmとされ、p側障壁層32pの厚さは12nmとされた。p側障壁層32pの材料は、第1〜第3障壁層32a〜32cと同じとされた。中間障壁層32qの材料は、In0.011Ga0.989Nとされた。
第1〜第3井戸層31a〜31c、第1〜第3障壁層32a〜32c、Al含有層40及び中間層50の厚さ及び材料は半導体発光素子110と同じに設定された。
【0081】
図7(b)に表したように、半導体発光素子119cにおいては、Al含有層40に基づく障壁は第1井戸層31aから遠い位置に存在している。これは、Al含有層40と第1井戸層31aとの間に中間障壁層32qが設けられているためである。半導体発光素子119cにおいては、電子に対する閉じ込め効果が半導体発光素子119aと同等または小さいと考えられる。
【0082】
図7(c)に表したように、半導体発光素子119cにおいても、p形半導体層20の側の電子の波動関数WF1の裾部分209bが大きい。すなわち、第1井戸層31aの電子は第1井戸層31a内に十分に閉じ込められていない。
【0083】
ホールの波動関数WF2には、4つのピークが現れている。p形半導体層20の側のホールの波動関数WF2は、Al含有層40と中間層50との界面の近傍に位置しており、第1井戸層31aからは遠い位置にホールが存在している。このため、半導体発光素子119cにおいては、MQWへのホールの注入効率は低いと考えられる。
【0084】
図8(a)及び図8(b)は、半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、これらの図は、半導体発光素子110、及び、半導体発光素子119a〜119cの特性を表すグラフ図である。これらの図の横軸は、電流密度Jcである。図8(a)の縦軸は内部量子効率IQEである。図8(a)においては、電流密度が小さい領域の特性は省略されている。図8(b)の縦軸は利得Gnである。
【0085】
図8(a)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、第1〜第3参考例の半導体発光素子119a〜119cに比べて高い内部量子効率IQEが得られる。
【0086】
図8(b)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、第1〜第3参考例の半導体発光素子119a〜119cに比べて高い利得Gnが得られる。
【0087】
図9(a)及び図9(b)は、半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、これらの図は、半導体発光素子110、及び、半導体発光素子119a〜119cのキャリア濃度(ホールの濃度及び電子の濃度)の特性を表すグラフ図である。これらの図の横軸は、電流密度Jcである。図9(a)の縦軸はホールの濃度Chである。図9(b)の縦軸は電子の濃度Ceである。
【0088】
図9(a)及び図9(b)に表したように、第1、第2及び第3参考例の半導体発光素子119a、119b及び119cにおいては、電子の濃度Ceに比べてホールの濃度Chがかなり高い。
【0089】
本実施形態に係る半導体発光素子110においては、ホールの濃度Chは、ほぼ電子の濃度Ceと一致する。このように、半導体発光素子110においては、キャリア濃度のバランスが良い。
【0090】
以上のように、半導体発光素子110においては、第1、第2及び第3参考例の半導体発光素子119a、119b、119cよりも、ホールの濃度Chと電子の濃度Ceのバランスを向上でき、このことが、発光効率が高いことの要因の1つであると考えられる。
【0091】
図10は、半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
同図は、半導体発光素子110、及び、半導体発光素子119a〜119cの動作電圧を示すグラフ図であり、横軸は電流密度Jcであり、縦軸は動作電圧Vfである。
図10に表したように、半導体発光素子110及び半導体発光素子119a〜119cにおいて、動作電圧Vfはほぼ一定である。
【0092】
このように、半導体発光素子110は、第1〜第3参考例の半導体発光素子119a〜119cと同等の動作電圧Vfを有しつつ、半導体発光素子119a〜119cよりも高い内部量子効率IQE及び利得Gnを実現できる。
【0093】
本実施形態に係る半導体発光素子110においては、中間層50のバンドギャップエネルギーの傾斜(増減)の向きを適切に設定することで高い発光効率を実現している。
以下、バンドギャップエネルギーの傾斜の向きが発光効率に与える影響がより明確になる場合として、Al含有層40を設けない構成において、バンドギャップエネルギーの傾斜を変えた場合の特性についてシミュレーションした結果について説明する。
【0094】
図11(a)〜図11(c)は、第4参考例の半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
図11(a)は、第4参考例の半導体発光素子119dの構成を例示する模式的断面図であり、図11(b)は、バンドギャップエネルギーを例示する模式図であり、図11(c)は、In組成比を示す模式図である。
図11(a)に表したように、半導体発光素子119dにおいては、Al含有層40が設けられず、第1井戸層31aのp形半導体層20の側の面に接して中間層50が設けられている。図11(c)に表したように、中間層50におけるIn組成比は、+Z軸方向に向かって減少し、図11(b)に表したように、中間層50におけるバンドギャップエネルギーは、+Z軸方向に向かって増大する。
【0095】
図12(a)〜図12(c)は、第5参考例の半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
図12(a)に表したように、第5比較例の半導体発光素子119eにおいては、Al含有層40が設けられず、第1井戸層31aのp形半導体層20の側の面に接して逆傾斜層59rが設けられている。図12(c)に表したように、逆傾斜層59rにおけるIn組成比は、+Z軸方向に向かって増大し、図12(b)に表したように、逆傾斜層59rにおけるバンドギャップエネルギーは、+Z軸方向に向かって減少する。
【0096】
図13は、第4及び第5参考例の半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
同図の横軸は電流密度Jcであり、縦軸は、第1井戸層31aにおける内部量子効率IQE1である。なお、既に説明した図8(a)における内部量子効率IQEは、第1〜第3井戸層31a〜31cを含めた総合的な内部量子効率に対応しているのに対し、図13における内部量子効率IQE1は、第1井戸層31aのみの内部量子効率である。
【0097】
図13に表したように、バンドギャップエネルギーの傾斜の向きが互いに逆転する半導体発光素子119d及び119eにおいては、内部量子効率IQEが互いに異なる。
【0098】
このように、バンドギャップエネルギーの傾斜の向きは、発光効率に影響を与える。このため、高い発光効率を得るためには、バンドギャップエネルギーの傾斜の向きを適切に設定する必要がある。
【0099】
図4に関して説明したように、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、第1井戸層31aのp形半導体層20の側の面に接してAl含有層40を設け、Al含有層40のp形半導体層20の側の面に接して+Z軸方向に沿ってバンドギャップエネルギーが増大する中間層50を設けることで、第1井戸層31aとAl含有層40との間の界面の近傍に、電子に対してより高い障壁が形成される。そして、p形半導体層20の電子の波動関数WF1の裾部分201が縮小され、第1井戸層31aからの電子のオーバーフローが効率良く抑制される。そして、Al含有層40と中間層50との界面の近傍部分、すなわち、第1井戸層31aの近接部分に、ホールの波動関数WF2が形成され、ホールが第1井戸層31aの近傍部分に効率良く閉じ込められる。これにより、MQWへのホールの注入効率を向上できる。
【0100】
この構成によると、第1井戸層31aにおける電子のオーバーフローを抑制し、MQWへのホールの注入効率を向上できるため、半導体発光素子110において複数の井戸層31が設けられる場合に、複数の井戸層31における発光効率を向上できる。
【0101】
本実施形態に係る半導体発光素子110においては、Al含有層40及び中間層50におけるバンドギャップエネルギーと、Al含有層40の格子定数と、を適切に設定することで、ピエゾ電界の影響を有効に働かせ、電子のオーバーフローの抑制とホールの注入効率の向上と、を実現している。
【0102】
例えば、n形半導体層10にGaNが用いられる場合、井戸層31及び障壁層32に例えばInGaNが用いられると、InGaNの格子定数がGaNよりも大きいため、井戸層31及び障壁層32には、圧縮応力が発生する。
【0103】
そして、Al含有層40としてAlGaNを用いると、AlGaNの格子定数は、GaNよりも小さいため、Al含有層40には、引張応力が発生する。
【0104】
一般に、井戸層31の格子定数はn形半導体層10の格子定数よりも大きく設定されるので、Al含有層40の格子定数がn形半導体層10の格子定数よりも小さく設定されると、結果として、Al含有層40の格子定数は井戸層31(第1井戸層31aなど)の格子定数よりも小さく設定される。
【0105】
これにより、互いに隣接する第1井戸層31aとAl含有層40とで、互いに異なる方向の応力が発生する。すなわち、第1井戸層31aにおいて圧縮応力が発生し、Al含有層40において引張応力が発生する。
【0106】
このため、第1井戸層31aとAl含有層40との間の界面において、ピエゾ効果によって発生する電界の向きが互いに逆方向になる。この電界は、電子を第1井戸層31aに閉じ込める方向に作用し、結果として電子の第1井戸層31aからのオーバーフローが効果的に抑制される。そして、ホールを第1井戸層31aの近傍に存在させ、MQWへのホールの注入効率を向上できる。
【0107】
本実施形態に係る半導体発光素子110においては、n形半導体層10の[0001]の方向(+Z軸方向)に沿って、n形半導体層10、第1障壁層32a、第1井戸層31、Al含有層40、中間層50及びp形半導体層20をこの順番で配置し、Al含有層40における格子定数をn形半導体層10よりも小さく設定し、すなわち、第1井戸層31aよりも小さく設定することで、上記の効果が得られる。
【0108】
そして、中間層50のバンドギャップエネルギーを+Z軸方向に沿って増大させることで、電子及びホールに対して適切なエネルギー障壁を形成することができ、電子のオーバーフローを抑制しつつ、ホールの注入効率を向上できる。
【0109】
III族窒化物半導体を用いた半導体発光素子においては、活性層にホールを注入するために高いバイアスが印加される。これによって電子が活性層からオーバーフローを起こし、p形半導体層20の無効電流が増大し、発光効率を低下させることがある。本実施形態によれば、電子のオーバーフローが抑制でき、ホールの注入効率を向上でき、発光効率が向上できる。
【0110】
なお、電子のオーバーフローを防止するための障壁層を、活性層のp形半導体層の側またはp形半導体層内に設ける種々の構成が提案されているが、本実施形態の構成は知られていない。
【0111】
例えば、活性層のn形半導体層の側にn側中間層を配置し、活性層のp形半導体層の側にp側中間層を配置し、そのn側中間層及びp側中間層のAl組成及びIn組成を厚み方向に沿って変化させる構成も知られているが、半導体層の結晶方位の方向と、Al組成及びIn組成の傾斜の向きと、の関係についての適切な条件については知られていない。
【0112】
例えば、第2参考例の半導体発光素子119bの逆傾斜層59rにおけるIn組成比の傾斜の向きは、本実施形態に係る半導体発光素子110の中間層50におけるIn組成比の傾斜の向きとは、逆である。そして、図8(a)及び図8(b)に例示したように、第2参考例の半導体発光素子119bの特性は、本実施形態に係る半導体発光素子110の特性よりも低い。
【0113】
このように、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、中間層50におけるバンドギャップエネルギーの傾斜(すなわちIn組成比の傾斜)をn形半導体層10の[0001]方向と関連付けて適切に定めることにより、高い発光効率を得ている。
【0114】
図13に関して既に説明したように、組成が傾斜している組成傾斜層におけるIn組成比の傾斜の向きと、例えば第1井戸層31aへのキャリア注入効率と、には関係がある。このため、In組成比の傾斜の向きが不適切であると、発光効率を十分に向上できない。
【0115】
従って、半導体発光素子110においては、中間層50におけるバンドギャップエネルギーの傾斜の向き(すなわち、中間層50におけるIn組成比の傾斜の向き)は、n形半導体層10の結晶方位の方向と関連付けて定められる。
【0116】
図14は、半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
同図は、実施形態に係る半導体発光素子において、中間層50の厚さを変えたときの特性をシミュレーションした結果を示している。このとき、図4に例示したように、中間層50及びp側障壁層32pの合計の厚さは37nmで一定とした。すなわち、Al含有層40、中間層50及びp側障壁層32pの合計の厚さは40nmで一定である。
【0117】
中間層50の厚さが5nm(p側障壁層32pの厚さは32nm)の条件を半導体発光素子111aとする。中間層50の厚さが10nm(p側障壁層32pの厚さは27nm)の条件を半導体発光素子111bとする。中間層50の厚さが37nm(p側障壁層32pの厚さは0nm)の条件を半導体発光素子111cとする。なお、中間層50の厚さが20nm(p側障壁層32pの厚さは17nm)の条件が半導体発光素子110に相当する。
【0118】
半導体発光素子110、111a〜111cにおいて、それぞれの中間層50における両端のIn組成比は0.03と0.01とで、In組成比が+Z軸方向に沿って直線的に変化するものとした。すなわち、中間層50の厚みに応じて、In組成比の変化の傾きが変化する。
【0119】
図14には、第6参考例の半導体発光素子119fの特性も合わせて示されている。半導体発光素子119fにおいては、第1井戸層31aに接してAl含有層40が設けられているが、中間層50が設けられていない(中間層50の厚さが0nmに相当)。そして、Al含有層40に接して、厚さが37nmのp側障壁層32pが設けられている。
【0120】
図14の横軸は動作電圧Vfであり、縦軸は、p側電極80における電子電流密度Jepである。電子電流密度Jepは、電子のオーバーフローの程度に相当し、電子電流密度Jepが小さいと電子のオーバーフローが小さい。
【0121】
図14に表したように、中間層50を設けない半導体発光素子119fにおいては、電子電流密度Jepが著しく大きく、電子のオーバーフローが大きい。
【0122】
一方、半導体発光素子110、111a〜111cにおいては、電子電流密度Jepが小さく、電子のオーバーフローが抑制される。
【0123】
中間層50の厚さは、5nm以上であることが望ましい。これにより、電子のオーバーフローが抑制できる。中間層50の厚さは、10nnm以上であることがさらに望ましい。これにより、電子のオーバーフローがさらに抑制でき、電子のオーバーフローが実質的に発生しない状態が実現できる。
【0124】
中間層50の厚さは、100nm以下であることが望ましい。中間層50の厚さが100nmを超えると、例えば駆動電圧Vfが上昇し、所望の仕様が得られない。
【0125】
中間層50にはAlが実質的に含まれないことが望ましい。特に、中間層50の第1井戸層31aの側の第1部分55がAlを含まないことで、第1部分55におけるバンドギャップエネルギーを十分小さくでき、中間層50とAl傾斜層40との間の界面におけるバンドギャップエネルギーの差異が明確になる。また、第1部分55がAlを含まないことで、第1部分55におけるバンドギャップエネルギーを十分小さくでき、中間層50内におけるバンドギャップエネルギーの傾斜を明確に形成し易くなる。
【0126】
上記のように、Al含有層40には、例えば、AlGaInNが用いられる。
Al含有層40におけるAl組成比(Al含有層Al組成比x1)は、0.001以上0.3以下とされる。Al含有層Al組成比x1が、0.001未満の場合には、Al含有層40のバンドギャップエネルギーが障壁層32のバンドギャップエネルギーよりも十分に大きくならず、上記の効率向上の効果が得られ難い。Al含有層Al組成比x1が0.3よりも大きくなると、ホールへの障壁も増しMQWへのホールの注入効率の阻害要因になり得る。また、結晶性が劣化する場合があり、結果として効率が低下する。Al含有層40にはInが含まれる必要はなく、In組成比は0でも良い。
【0127】
Al含有層40の厚さは、1nm以上50m以下とされる。Al含有層40の厚さが1nm未満の場合は、上記の効率向上の効果が得られ難い。Al含有層40の厚さが50nmを超えると、高抵抗化し動作電圧が高くなる。また、結晶性が劣化する場合があり、結果として効率が低下する。
【0128】
上記においては、中間層50におけるバンドギャップエネルギー、すなわち、In組成比は、直線的に変化するものとしたが、実施形態はこれに限らない。中間層50におけるバンドギャップエネルギー及びIn組成比は、例えば、曲線的に変化しても良い。
【0129】
図15(a)〜図15(d)は、実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
すなわち、図15(a)及び図15(b)は、実施形態に係る別の半導体発光素子112aにおけるバンドギャップエネルギーとIn組成比をそれぞれ例示している。図15(c)及び図15(d)は、実施形態に係る別の半導体発光素子112bにおけるバンドギャップエネルギーとIn組成比をそれぞれ例示している。
【0130】
図15(a)及び図15(b)に表したように、半導体発光素子112aにおいては、中間層50におけるバンドギャップエネルギー及びIn組成比は4段階で、段階的に変化している。
図15(c)及び図15(d)に表したように、半導体発光素子112bにおいては、中間層50におけるバンドギャップエネルギー及びIn組成比は3段階で、段階的に変化している。
【0131】
このように、中間層50におけるバンドギャップエネルギー及びIn組成比は、段階的に変化しても良い。なお、各段どうしにおけるバンドギャップエネルギー及びIn組成比の差は均等でなくても良く、バンドギャップエネルギー及びIn組成比の変化の仕方は任意である。
【0132】
このように、中間層50は、複数のサブ層どうしでバンドギャップエネルギー及びIn組成比は互いに異なる複数のサブ層を含むことができる。複数のサブ層の数は任意である。
【0133】
Al含有層40は、積層構造を有していても良い。
図16(a)〜図16(d)は、実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
図16(a)は、実施形態に係る別の半導体発光素子113aの構成を例示する模式的断面図であり、図16(b)は、半導体発光素子113aのバンドギャップエネルギーを例示している。図16(c)は、実施形態に係る別の半導体発光素子113bの構成を例示する模式的断面図であり、図16(d)は、半導体発光素子113bのバンドギャップエネルギーを例示している。
【0134】
図16(a)〜図16(d)に表したように、半導体発光素子113a及び半導体発光素子113bにおいては、Al含有層40は、第1層41と、第2層42と、を有している。第1層41は、第1井戸層31aに接している。第2層42は、第1層41と中間層50との間において第1層41に接する。第2層42は、第1層41のバンドギャップエネルギーとは異なるバンドギャップエネルギーを有する。
【0135】
すなわち、半導体発光素子113aにおいては、第2層42のバンドギャップエネルギーは、第1層41のバンドギャップエネルギーよりも大きい。半導体発光素子113bにおいては、第2層42のバンドギャップエネルギーは、第1層41のバンドギャップエネルギーよりも小さい。
【0136】
このように、Al含有層40が、互いに異なるバンドギャップエネルギーを有する複数の層の積層構造を有していても、上記と同様の効果が発揮され、すなわち、電子のオーバーフローを抑制し、ホールの注入効率が向上できる。
【0137】
なお、例えば、第1層41におけるAl組成比と、第2層42におけるAl組成比と、が異なることによって、第1層41におけるバンドギャップエネルギーが第2層42におけるバンドギャップエネルギーとは異なる。
【0138】
第1層41と第2層42とでAl組成比を変えることで、第1層41と第2層42とで格子定数が変わる。格子定数が大きい結晶(井戸層、及び、中間層50のp形半導体層20の側の第2部分56)と、格子定数が小さい結晶(Al含有層40)と、を接して成長する場合に、その界面において欠陥や転位が発生し易くなる。このとき、Al含有40に第1層41及び第2層42を設けることで、格子定数が大きい結晶と格子定数が小さい結晶との中間の格子定数を有する層を設けることができ、欠陥や転位の発生を抑制すことができ、発光効率をより向上できる。
【0139】
図4に例示したように、本実施形態に係る半導体発光素子110において、電子のオーバーフローが抑制されホールの注入効率が向上される効果は、複数の井戸層31のうちでp形半導体層20に一番近い第1井戸層31aの状態(障壁、電子の波動関数WF1及びホールの波動関数WF2の状態)が、Al含有層40及び中間層50を設けることで適切に制御されることに基づいている。換言すれば、Al含有層40及び中間層50によって、複数の井戸層31のうちでp形半導体層20に一番近い第1井戸層31aの状態は大きく影響を受けるが、他の井戸層31(例えば第2井戸層31b及び第3井戸層31cなど)は大きな影響を受けていない。従って、Al含有層40及び中間層50を設けることで得られる電子のオーバーフローの抑制及びホールの注入効率の向上の効果は、井戸層31が1つの構成(単一量子井戸構造)においても発揮される。
【0140】
以上のように、実施形態によれば、発光効率を向上できる半導体発光素子が提供できる。
【0141】
なお、本明細書において「窒化物半導体」とは、BxInyAlzGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電型などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0142】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体発光素子に含まれるn形半導体層、p形半導体層、井戸層、障壁層、Al含有層、中間層及び電極などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0143】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体発光素子を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体発光素子も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0144】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0146】
5…基板、 6…バッファ層、 10…n形半導体層、 10a…第1主面、 10b…第2主面、 10p…一部、 10s…積層構造体、 11…n側コンタクト層、 12…n側クラッド層、 20…p形半導体層、 21…p側クラッド層、 22…p側コンタクト層、 31…井戸層、 31a…第1井戸層、 31b…第2井戸層、 31c…第3井戸層、 32…障壁層、 32a…第1障壁層、 32b…第2障壁層、 32c…第3障壁層、 32p…p側障壁層、 33a…第1井戸層、 33b…第2井戸層、 33c…第3井戸層、 34a…第1障壁層、 34b…第2障壁層、 34c…第3障壁層、 34p…p側障壁層、 34q…中間障壁層、 40…Al含有層、 41…第1層、 42…第2層、 50…中間層、 55…第1部分、 56…第2部分、 59r…逆傾斜層、 70…n側電極、 80…p側電極、 110、111a〜111c、112a、112b、113a、113b、119a〜119f…半導体発光素子、 201、209a、209b…裾部分、 Bc…伝導帯、 Bv…価電子帯、 CIn…In組成比、 Ce…電子の濃度、 Ch…ホールの濃度、 Eb…バンドギャップエネルギー、 Gn…利得、 IQE、IQE1…内部量子効率、 Jc…電流密度、 Jep…電子電流密度、 Vf…動作電圧、 WF1…電子の波動関数、 EF2…ホールの波動関数、 Zd…位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体を含むn形半導体層と、
前記n形半導体層の[0001]方向の側に設けられ、窒化物半導体を含むp形半導体層と、
前記n形半導体層と前記p形半導体層との間に設けられ、前記n形半導体層のバンドギャップエネルギーよりも小さく前記p形半導体層のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有し、窒化物半導体を含む第1井戸層と、
前記第1井戸層と前記n形半導体層との間に設けられ、前記第1井戸層に接し、前記第1井戸層の前記バンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有し、窒化物半導体を含む第1障壁層と、
前記第1井戸層と前記p形半導体層との間に設けられ、前記第1井戸層に接し、前記第1障壁層の前記バンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有し、前記n形半導体層の格子定数よりも小さい格子定数を有し、組成がAlx1Ga1−x1−y1Iny1N(0<x1<1、0≦y1<1)のAl含有層と、
前記Al含有層と前記p形半導体層との間に設けられ、前記Al含有層に接し、前記第1井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有し、窒化物半導体を含む中間層と、
を備え、
前記中間層の前記n形半導体層の側の第1部分におけるバンドギャップエネルギーは、前記中間層の前記p形半導体層の側の第2部分におけるバンドギャップエネルギーよりも小さいことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記中間層のバンドギャップエネルギーは、前記p形半導体層のバンドギャップエネルギー以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記中間層の前記バンドギャップエネルギーは、前記Al含有層から前記p形半導体層に向かう方向に沿って連続的または段階的に増大することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記中間層におけるIn組成比は、前記Al含有層から前記p形半導体層に向かう方向に沿って連続的または段階的に減少することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記中間層の厚さは、5ナノメートル以上100ナノメートル以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記Al含有層におけるAl組成比は、0.001以上0.03以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記Al含有層の厚さは、1ナノメートル以上50ナノメートル以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記Al含有層は、
前記第1井戸層に接する第1層と、
前記第1層と前記中間層との間において前記第1層に接し、前記第1層のバンドギャップエネルギーとは異なるバンドギャップエネルギーを有する第2層と、
を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記井戸層から放出される光の波長は、330ナノメートル以上580ナノメートル以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項10】
前記第1障壁層と前記n形半導体層との間に設けられ、前記第1障壁層に接し、前記第1障壁層の前記バンドギャップエネルギーよりも小さく、前記Al含有層の前記バンドギャップエネルギーよりも小さく、前記中間層のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有し、窒化物半導体を含む第2井戸層と、
前記第2井戸層と前記n形半導体層との間に設けられ、前記第2井戸層に接し、前記第2井戸層の前記バンドギャップエネルギーよりも大きく、前記Al含有層の前記バンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有し、窒化物半導体を含む第2障壁層と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項1】
窒化物半導体を含むn形半導体層と、
前記n形半導体層の[0001]方向の側に設けられ、窒化物半導体を含むp形半導体層と、
前記n形半導体層と前記p形半導体層との間に設けられ、前記n形半導体層のバンドギャップエネルギーよりも小さく前記p形半導体層のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有し、窒化物半導体を含む第1井戸層と、
前記第1井戸層と前記n形半導体層との間に設けられ、前記第1井戸層に接し、前記第1井戸層の前記バンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有し、窒化物半導体を含む第1障壁層と、
前記第1井戸層と前記p形半導体層との間に設けられ、前記第1井戸層に接し、前記第1障壁層の前記バンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有し、前記n形半導体層の格子定数よりも小さい格子定数を有し、組成がAlx1Ga1−x1−y1Iny1N(0<x1<1、0≦y1<1)のAl含有層と、
前記Al含有層と前記p形半導体層との間に設けられ、前記Al含有層に接し、前記第1井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有し、窒化物半導体を含む中間層と、
を備え、
前記中間層の前記n形半導体層の側の第1部分におけるバンドギャップエネルギーは、前記中間層の前記p形半導体層の側の第2部分におけるバンドギャップエネルギーよりも小さいことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記中間層のバンドギャップエネルギーは、前記p形半導体層のバンドギャップエネルギー以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記中間層の前記バンドギャップエネルギーは、前記Al含有層から前記p形半導体層に向かう方向に沿って連続的または段階的に増大することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記中間層におけるIn組成比は、前記Al含有層から前記p形半導体層に向かう方向に沿って連続的または段階的に減少することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記中間層の厚さは、5ナノメートル以上100ナノメートル以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記Al含有層におけるAl組成比は、0.001以上0.03以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記Al含有層の厚さは、1ナノメートル以上50ナノメートル以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記Al含有層は、
前記第1井戸層に接する第1層と、
前記第1層と前記中間層との間において前記第1層に接し、前記第1層のバンドギャップエネルギーとは異なるバンドギャップエネルギーを有する第2層と、
を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記井戸層から放出される光の波長は、330ナノメートル以上580ナノメートル以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項10】
前記第1障壁層と前記n形半導体層との間に設けられ、前記第1障壁層に接し、前記第1障壁層の前記バンドギャップエネルギーよりも小さく、前記Al含有層の前記バンドギャップエネルギーよりも小さく、前記中間層のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有し、窒化物半導体を含む第2井戸層と、
前記第2井戸層と前記n形半導体層との間に設けられ、前記第2井戸層に接し、前記第2井戸層の前記バンドギャップエネルギーよりも大きく、前記Al含有層の前記バンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有し、窒化物半導体を含む第2障壁層と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−19068(P2012−19068A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155591(P2010−155591)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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