説明

半導体発光素子

【課題】光出力の高い半導体発光素子を提供する。
【解決手段】半導体発光素子10では、半導体積層体15は、第1導電型の第1半導体層12と、半導体発光層13と、第2導電型の第2半導体層14がこの順に積層されている。半導体積層体15は、第2半導体層14および半導体発光層13を貫通して第1半導体層12に到る複数の柱状のトレンチ16を有している。複数の柱状のトレンチ16は、周期的に配列されている。半導体発光層13から放射される光に対して透光性を有する絶縁膜20が、トレンチ16内に埋め込まれている。第1電極18は、第1半導体層12に電気的に接続されている。第2電極19は、第2半導体層14の上面を覆っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体発光素子では、半導体発光層上に半導体発光層と略同じサイズの上部電極を設けて、上部電極直下の半導体発光層で生じた光を側面から取り出すように構成されているものがある。
【0003】
この半導体発光素子では、半導体発光層のサイズが大きくなると、電極直下の半導体発光層の中央部で生じた光は半導体発光層の側面に到達するまでの伝播距離が長くなる。その結果、自己吸収が無視できなくなり、側面から取り出される光量が低下する。
【0004】
そのため、半導体発光層のサイズが制限されるので、高い光出力が得られないという問題がある。複数の半導体発光層をマトリックス状に配置すれば、全体として高い光出力を得ることができる。
【0005】
然しながら、隣り合う半導体発光層同士の干渉による光出力の低下を避けるために、隣接する半導体発光層間の距離を確保する必要がある。その結果、チップサイズが増大するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−288624号公報
【特許文献2】特開平11−97737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光出力の高い半導体発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの実施形態によれば、半導体発光素子では、半導体積層体は、第1導電型の第1半導体層と、半導体発光層と、第2導電型の第2半導体層がこの順に積層されている。前記半導体積層体は、前記第2半導体層および前記半導体発光層を貫通して前記第1半導体層に到る複数の柱状のトレンチを有している。前記複数の柱状のトレンチは、周期的に配列されている。前記半導体発光層から放射される光に対して透光性を有する絶縁膜は、前記トレンチ内に埋め込まれている。第1電極は、前記第1半導体層に電気的に接続されている。第2電極は、前記第2半導体層の上面を覆っている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1に係る半導体発光素子を示す図。
【図2】実施例1に係る半導体発光素子の要部を示す斜視図。
【図3】実施例1に係る半導体発光素子の要部を示す断面図。
【図4】実施例1に係る半導体発光素子の側面から出射された光の伝播経路を示す図。
【図5】実施例1に係る半導体発光素子の製造工程を順に示す断面図。
【図6】実施例1に係る半導体発光素子の製造工程を順に示す断面図。
【図7】実施例1に係る半導体発光素子の製造工程を順に示す断面図。
【図8】実施例1に係る別の半導体発光素子を示す図。
【図9】実施例1に係る別の半導体発光素子を示す図。
【図10】実施例1に係る別の半導体発光素子の製造工程の要部を順に示す断面図。
【図11】実施例1に係る別の半導体発光素子の要部を示す斜視図。
【図12】実施例1に係る半導体発光素子の要部を示す断面図。
【図13】実施例2に係る半導体発光素子の要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
本実施例に係る半導体発光素子について図1乃至図3を用いて説明する。図1は本実施例の半導体発光素子を示す図で、図1(a)はその平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線に沿って切断し矢印方向に眺めた断面図、図2は要部を示す斜視図、図3は要部を拡大して示す断面図である。
【0012】
本実施例の半導体発光素子は、窒化物半導体を用いた青色LED(Light Emitting Diode)である。
【0013】
図1に示すように、本実施例の半導体発光素子10では、基板11上にN型(第1導電型)の第1半導体層12、半導体発光層13およびP型(第2導電型)の第2半導体層14が順に積層された半導体積層体15が設けられている。
【0014】
半導体積層体15は、第2半導体層14および半導体発光層13を貫通して第1半導体層12に到る複数の柱状のトレンチ16を有している。トレンチ16は、例えば円柱状である。
【0015】
複数のトレンチ16は、周期的、例えば格子状に配列されている。具体的には、複数のトレンチ16は基板11の一辺と平行なX方向にピッチP1で配列され、X方向に直交するY方向にピッチP2で配列されている。ピッチP1とピッチP2は、略等しく設定されている。
【0016】
トレンチ16の内径φ(サイズ)は、隣接するトレンチ16間の距離Dより大きく設定されている(φ>D)。ピッチP1、内径φ、距離Dは、P1=φ+Dの関係にある。
【0017】
距離Dは、半導体発光層13から放出される光の波長の1/2より大きくすることが必要である。
【0018】
半導体積層体15は、角部に第2半導体層14および半導体発光層13の一部が除去されて、第1半導体層12を露出する切り欠き部17を有している。
【0019】
切り欠き部17に露出した第1半導体層12上に、第1電極18(N側電極)が設けられている。第1電極18はボンディングパッドを含んでいる。第1電極18は、例えばN型GaNとオーミックコンタクトが可能なチタン(Ti)/白金(Pt)/金(Au)の積層膜である。
【0020】
第2半導体層14の略全面を覆うように第2電極19(P側電極)が設けられている。第2半導体層14の第1電極18と対向する角部にボンディングパッド19aが設けられている。第2電極19は、例えばP型GaNとオーミックコンタクトが可能な金(Au)またはアルミニウム(Al)である。
【0021】
トレンチ16を埋めるように、半導体発光層13から放射される光に対して透光性を有する絶縁膜20が設けられている。絶縁膜20は、トレンチ16の側面に露出している半導体発光層13および第2半導体層14に接触し、上面は凹状である。
【0022】
絶縁膜20は、例えばスピンコータなどで塗布できるSiO系のSOG(Spin On Glass)膜である。
【0023】
図2(a)および図2(b)は、半導体発光素子10の半導体積層体15を示す斜視図である。図2(a)は、第2半導体層14、半導体発光層13を貫通して第1半導体層12に到る複数のトレンチ16が、半導体積層体15に周期的に設けられている様子を示している。図2(b)は、複数のトレンチ16内に絶縁膜20が埋め込まれている様子を示している。
【0024】
図3は半導体発光素子10の半導体積層体15の詳細構造を示す断面図である。図3に示すように、第1半導体層12は、例えば厚さが約3μmのGaN層21と、GaN層21上に設けられ、例えば厚さが約2μmN型GaNクラッド層22を含んでいる。GaN層21は、半導体発光層13を基板11、例えばサファイアにエピタキシャル成長させるための下地単結晶層である。
【0025】
半導体発光層13は、例えば厚さが5nmのGaN障壁層と厚さが2.5nmのInGaN井戸層とが交互に積層され、最上層がInGaN井戸層である多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造体である。
【0026】
InGaN井戸層(InGa1−xN層、0<x<1)のIn組成比xは、半導体積層体15から取り出された光のピーク波長が、例えば約450nmになるように0.1程度に設定されている。
【0027】
第2半導体層14は、例えば厚さが約100nmのP型GaNクラッド層24と、P型GaNクラッド層24上に設けられ、例えば厚さが約10nmのP型GaNコンタクト層25を含んでいる。
【0028】
絶縁膜20の屈折率n2は、半導体積層体15の実効屈折率n1より小さい。上述したように半導体積層体15のほとんどがGaNなので、半導体積層体15の実効屈折率n1はGaNの屈折率で代表できる。
【0029】
波長450nmの光に対するGaNの屈折率n1は、約2.47である。絶縁膜20(シリコン酸化膜)の屈折率n2は約1.46である(n1>n2)。
【0030】
上述した半導体発光素子10は、半導体発光層13上に略同じサイズの第2電極19を設けて、第2電極19直下の半導体発光層13で生じた光をトレンチ16の側面から自己吸収なしに取り出すとともに、トレンチ16内に埋め込まれた絶縁膜20により、取り出された光が屈折率差の少ない方向に伝播するように構成されている。
【0031】
屈折率差の少ない方向とは、半導体発光層13から絶縁膜20に向かう方向、絶縁膜20から大気に向かう方向のことである。
【0032】
更に、トレンチ16を周期的に配列して、全体として高い光出力が得られるように構成されている。その際、隣り合う半導体発光層13により光が遮蔽されるなどの干渉により光出力が低下するのを避けるために、隣り合う半導体発光層13同士の実効距離が確保されるように構成されている。
【0033】
実効距離とは、トレンチ16の内径φと絶縁膜20の屈折率n2の比(φ/n2)のことである。
【0034】
図4はトレンチ16の側面から取り出された光が伝播する様子を示す図である。図4に示すように、半導体発光層13と絶縁膜20の界面での全反射角度(約54°)が大きくなるので、全反射されずに絶縁膜20中に取り出される光のうち、第2電極19側に向かう光30が増加し、絶縁膜20と大気の界面で全反射されずに大気中に取り出される確率が増大する。
【0035】
一方、絶縁膜20がない場合は、半導体発光層13と絶縁膜20の界面での全反射半角度(約24°)が小さいので、全反射されずに絶縁膜20中に取り出される光のうち、半導体発光層13側に向かう光が主になり、半導体発光層13で遮蔽される確率が高い。
【0036】
次に、半導体発光素子10の製造方法について説明する。図5乃至図7は半導体発光素子10の製造工程を順に示す断面図である。
【0037】
図5(a)に示すように、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により、基板11に第1半導体層12、半導体発光層13、第2半導体層14を順にエピタキシャル成長させて半導体積層体15を形成する。半導体積層体15の形成方法は周知であるが、以下簡単に説明する。
【0038】
基板11(C面サファイア基板)に前処理として、例えば有機洗浄、酸洗浄を施した後、MOCVD装置の反応室内に収納する。次に、例えば窒素(N)ガスと水素(H)ガスの常圧混合ガス雰囲気中で、高周波加熱により、基板11の温度を、例えば1100℃まで昇温する。これにより、基板11の表面が気相エッチングされ、表面に形成されている自然酸化膜が除去される。
【0039】
次に、NガスとHガスの混合ガスをキャリアガスとし、プロセスガスとして、例えばアンモニア(NH)ガスと、トリメチルガリウム(TMG:Tri-Methyl Gallium)ガスを供給し、厚さ3μmのGaN層21を形成する。
【0040】
次に、N型ドーパントとして、例えばシラン(SiH)ガスを供給し、同様にして厚さ2μmのN型GaNクラッド層22を形成する。
【0041】
次に、NHガスは供給し続けながらTMGガスおよびSiHガスの供給を停止し、基板11の温度を1100℃より低い温度、例えば800℃まで降温し、800℃で保持する。
【0042】
次に、Nガスをキャリアガスとし、プロセスガスとして、例えばNHガスおよびTMGガスを供給し、厚さ5nmのGaN障壁層を形成し、この中にトリメチルインジウム(TMI:Tri-Methyl Indium)ガスを供給することにより、厚さ2.5nm、In組成比が0.1のInGaN井戸層を形成する。
【0043】
次に、TMIガスの供給を断続することにより、GaN障壁層とInGaN井戸層の形成を、例えば7回繰返す。これにより、半導体発光層13が得られる。
【0044】
次に、TMGガス、NHガスは供給し続けながらTMIガスの供給を停止し、アンドープで厚さ5nmのGaNキャップ層を形成する。
【0045】
次に、NHガスは供給し続けながらTMGガスの供給を停止し、Nガス雰囲気中で、基板11の温度を800℃より高い温度、例えば1030℃まで昇温し、1030℃で保持する。
【0046】
次に、NガスとHガスの混合ガスをキャリアガスとし、プロセスガスとしてNHガス、TMGガス、P型ドーパントとしてビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)ガスを供給し、Mg濃度が1E20cm−3、厚さが100nm程度のP型GaNクラッド層24を形成する。
【0047】
次に、Cp2Mgガスの供給を増やして、Mg濃度が1E21cm−3、厚さ10nm程度のP型GaNコンタクト層25を形成する。
【0048】
次に、NHガスは供給し続けながらTMGガスの供給を停止し、キャリアガスのみ引き続き供給し、基板11を自然降温する。NHガスの供給は、基板11の温度が500℃に達するまで継続する。これにより、基板11に半導体積層体15が形成される。
【0049】
次に、図5(b)に示すように、例えばスパッタリング法により、半導体積層体15上に厚さが約200nmのAu膜40を形成する。
【0050】
次に、図5(c)に示すように、フォトリソグラフィ法により、Au膜40上にトレンチ16に対応する開口41aおよび図示されない切り欠き部17に対応する開口を有するレジスト膜41を形成する。
【0051】
次に、図6(a)に示すように、レジスト膜41をマスクとし、例えばよう素系の薬液を用いてAu膜40をウェットエッチングする。これにより、図1に示す第2電極19が形成される。
【0052】
次に、図6(b)に示すように、レジスト膜41および第2電極19をマスクとして、例えば塩素系ガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)法により、第2半導体層14、半導体発光層13を、第1半導体層12が露出するまで異方性エッチングする。これにより、トレンチ16および図示されない切り欠き部17が形成される。
【0053】
次に、図6(c)に示すように、レジスト膜41を、例えばアッシャーを用いて除去した後、図示されない切り欠き部17に第1電極18を形成し、図示されないボンディングパッド19aを形成する。
【0054】
次に、図7(a)に示すように、例えばスピンコート法により、基板11上に無機SiO系被膜形成用の塗布液42を滴下し、基板11の回転数を調整することにより、トレンチ16内の塗布液42bを残置し、それ以外の塗布液42aを除去する。
【0055】
次に、図7(b)に示すように、基板11を、例えばホットプレート43で加熱し、塗布液42aをキュアする。加熱により、塗布液42b中の溶剤が蒸発し、塗布液42bが収縮して固化する。これにより、トレンチ16の内面に露出している半導体発光層13および第2半導体層14の側面に接触し、上面が凹状の絶縁膜20が得られる。
【0056】
以上説明したように、本実施例の半導体発光素子10では、半導体積層体15に周期的に配列されたトレンチ16が設けられ、半導体発光層13上に略同じサイズの第2電極19が設けられ、トレンチ16内に埋め込まれた絶縁膜20が設けられている。
【0057】
その結果、第2電極19直下の半導体発光層13で生じた光をトレンチ16の側面から自己吸収なしに取り出すとともに、トレンチ16の側面から取り出された光を屈折率差の少ない方向に伝播させることができる。従って、光出力の高い半導体発光素子が得られる。
【0058】
ここでは、トレンチ16の側面から光を取り出す場合について説明したが、第2半導体層14の上面からも光を取り出すことができる。
【0059】
図8は第2半導体層14の上面からも光が取り出せる半導体発光素子を示す図で、図8(a)はその平面図、図8(b)は図8(a)のB−B線に沿って切断し矢印方向に眺めた断面図である。
【0060】
図8に示すように、半導体発光素子50では、第2半導体層14の上面および絶縁膜20の上面に、半導体発光層13から放出される光に対して透光性を有する透明導電膜51が設けられている。
【0061】
透明導電膜51は、例えば厚さが100乃至200nmのITO(Indium Tin Oxide)膜である。透明導電膜51は、トレンチ16の側面に露出した第2半導体層14に接触しているが、半導体発光層13には接触しないように設ける。半導体発光層13が、透明導電膜51により短絡するのを防止するためである。
【0062】
ITO膜は、例えばスパッタリング法により形成する。ITO膜とP型GaNコンタクト層25のオーミックコンタクトをとるために、熱処理を施す。熱処理は、例えば窒素中、もしくは窒素と酸素の混合雰囲気中で、温度400乃至750℃程度、時間1乃至20分程度が適当である。
【0063】
半導体発光層13側から第2半導体層14側に向かう光52は透明導電膜51を透過し、外部に取り出される。これにより、光出力が増加する利点が得られる。透明導電膜51(ITO膜)の屈折率n3は約2.0なので、第2半導体層14と透明導電膜51の界面での全反射は第2半導体層14と大気の界面での全反射より抑制される。
【0064】
なお、透明導電膜51が絶縁膜20上にも設けられているのは、製造工程によるものである。絶縁膜20上に透明導電膜51を設ける必要は特にない。
【0065】
半導体積層体15が絶縁性の基板11に設けられている場合について説明したが、半導体積層体15を導電性基板に設けることも可能である。
【0066】
図9は導電性基板に半導体積層体15が設けられた半導体発光素子を示す図で、図9(a)はその平面図、図9(b)は図9(a)のC−C線に沿って切断し矢印方向に眺めた断面図である。
【0067】
図9に示すように、半導体発光素子60では、導電性基板61に半導体積層体15が、接合層(図示せず)を挟んで設けられている。導電性基板61と半導体積層体15の第2半導体層14が対向している。
【0068】
半導体積層体15の第1半導体層12上に目の字状の第1電極62が設けられている。第1半導体層12の角部にボンディングパッド62aが設けられている。導電性基板61の第1電極62と反対側の面に第2電極63が設けられている。
【0069】
半導体積層体15は、半導体積層体15を貫通して導電性基板61に到る複数の円柱状のトレンチ64有している。複数のトレンチ64は、第1電極62およびボンディングパッド62aを除く領域に格子状に配列されている。
【0070】
トレンチ64を埋めるように、半導体発光層13から放射される光に対して透光性を有する絶縁膜20が設けられている。
【0071】
導電性基板61は、例えばシリコン基板である。シリコンはサファイアより放熱性に優れているので、半導体発光素子60は大電流で駆動される半導体発光素子として適している。
【0072】
次に、半導体発光素子60の製造方法について説明する。図10は半導体発光素子60の製造工程の要部を順に示す断面図である。
【0073】
図10(a)に示すように、図5(a)および図5(b)と同様にして、基板11上に半導体積層体15を形成し、半導体積層体15上に金膜40を形成する。導電性基板61に、金錫膜71を形成する。
【0074】
基板11を上下反転して金膜40と金錫合金膜71を対向させ、基板11と導電性基板61を重ね合わせた後、加熱・加圧して基板11と導電性基板61を接合する。金膜40と金錫合金膜71は融合して接合層(図示せず)になる。
【0075】
次に、図10(b)に示すように、レーザリフトオフ法により、基板11と半導体積層体15を分離する。レーザリフトオフ法とは、高出力のレーザ光を照射することにより物質内部を部分的に加熱分解し、分解した部分を境に分離する手法である。
【0076】
具体的には、基板11を通過しN型GaNクラッド層12で吸収されるレーザを照射し、N型GaNクラッド層12を解離させて、基板11とN型GaNクラッド層12を分離する。
【0077】
例えばNd−YAGレーザの第4高調波(266nm)を基板11側から照射する。この光に対してサファイアは透明なので、照射された光は基板11を透過してN型GaNクラッド層12で有効に吸収される。
【0078】
基板11との界面近傍のN型GaNクラッド層12には多くの結晶欠陥が存在するために、吸収された光はほとんど全てが熱に変換され、2GaN=2Ga+N(g)↑なる反応が生じ、GaNはGaとNガスに解離する。
【0079】
レーザは、連続光(CW)でも、パルス光(PW)でもよいが、尖頭出力の高いパルス光であることが望ましい。尖頭出力の高いパルスレーザとしては、ピコ秒からフェムト秒オーダの超短パルス光が出力可能なQスイッチレーザ、モードロックレーザなどが適している。
【0080】
次に、図10(c)に示すように、半導体積層体15の第1半導体層12上に目の字状の第1電極62を形成した後、トレンチ64に対応した開口を有するレジスト膜72を形成する。レジスト膜72をマスクとして、RIE法により半導体積層体15を異方性エッチングして、トレンチ64を形成する。
【0081】
次に、レジスト膜72を除去した後、導電性基板61に第2電極63を形成する。これにより、図9に示す半導体発光素子60が得られる。
【0082】
第2電極19直下の半導体発光層13で生じた光をトレンチ16の側面から取り出す場合について説明したが、ピラーの側面から取り出すこともできる。
【0083】
図11は第2電極直下の半導体発光層で生じた光をピラーの側面から取り出す半導体発光素子の要部を示す斜視図である。
【0084】
図11(a)は第1半導体層12から立設した複数のピラー80が周期的に設けられている様子を示している。ピラー80は、半導体発光層13および第2半導体層14が積層されている。
【0085】
図11(b)は、第1半導体層12上に、絶縁膜20が複数のピラー80を取り囲んで設けられている様子を示している。第2電極として、透明導電膜をピラー80の上面および絶縁膜20上に設けるとよい。
【0086】
絶縁膜20の上面が凹状である場合について説明したが、形状は特に限定されない。図12は、絶縁膜20の上面の別の形状を示す図である。図12(a)は上面が凸状の絶縁膜82を示している。図12(b)は上面が平坦な絶縁膜83を示している。絶縁膜の上面の形状は、半導体発光素子の用途、特徴などに合わせて使い分ければよい。
【0087】
絶縁膜20をスピンコートにより形成する場合について説明したが、スパッタリング法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法などでも形成することも可能である。
【実施例2】
【0088】
本発明の実施例2に係る半導体発光素子について、図13を用いて説明する。図13は本実施例の半導体発光素子の要部を示す断面図である。本実施例において、上記実施例1と同一の構成部分には同一符号を付してその部分の説明は省略し、異なる部分について説明する。本実施例が実施例1と異なる点は、絶縁膜が屈折率分布を有することにある。
【0089】
即ち、図13に示すように、本実施例の絶縁膜90は屈折率の異なる複数の絶縁膜90a、90b、90c、90dの積層体である。絶縁膜90a、90b、90c、90dはそれぞれ屈折率n2a、n2b、n2c、n2dを有している。
【0090】
屈折率n2a、n2b、n2c、n2dは、第1半導体層12側から第2半導体層14側に向かって段階的に小さくなっており、GaNの屈折率n1および大気の屈折率n0と、n1>n2a>n2b>n2c>d>n0の関係にある。
【0091】
絶縁膜90の屈折率を段階的に小さくすることで、半導体発光層13から取り出された光の全反射条件が緩和され、より多くの光を外部に取り出すことが可能である。
【0092】
次に、絶縁膜90の形成方法について説明する。塗布液をキュアする温度によって、絶縁膜の屈折率が変化する。キュアする温度が高いほど、高い屈折率を有する絶縁膜が得られる。
【0093】
これから、段階的に低い温度でキュアした絶縁膜を積層することにより、段階的に屈折率が小さくなる絶縁膜90を形成することができる。
【0094】
具体的には、図7(a)および図7(b)に示すように、トレンチ16内に塗布液42を塗布した後、第1の温度でキュアして絶縁膜90aを形成する。塗布液42を絶縁膜90a上に塗布した後、第1の温度より低い第2の温度でキュアして絶縁膜90bを形成する。
【0095】
同様に、塗布液42を絶縁膜90b上に塗布した後、第2の温度より低い第3の温度でキュアして絶縁膜90cを形成する。塗布液42を絶縁膜90c上に塗布した後、第3の温度より低い第4の温度でキュアして絶縁膜90dを形成する。
【0096】
以上説明したように、本実施例では、トレンチ16内に第1半導体層12側から第2半導体層14側に向かって屈折率が段階的に小さくなる絶縁膜90が設けられている。
【0097】
半導体発光層13から取り出された光の全反射条件が緩和され、より多くの光を外部に取り出すことできる利点がある。
【0098】
ここでは、同種の塗布材を用い、キュア温度を下げながら塗布とキュアを繰り返すことにより、屈折率が段階的に小さくなる絶縁膜90を形成する場合について説明したが、絶縁膜90は屈折率が異なる異種の絶縁膜を積層させて形成することもきる。
【0099】
異種の絶縁膜としては、例えばSiN(屈折率約2.0)、フッ素化ポリイミド(屈折率約1.6)、燐ドープシリケート系SOG(屈折率約1.48)、メチルシロキサン系SOG(屈折率約1.38)などがある。絶縁膜の形成方法は、塗布法に限らずスパッタリング法、CVD法などを併用することができる。
【0100】
屈折率の階段数は多い方が、屈折率変化が緩くなるので望ましい。然し、絶縁膜の形成に多くの工程と長い時間を要するので、適当な段数に留めるのがよい。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0102】
本発明は、以下の付記に記載されているような構成が考えられる。
(付記1) 前記トレンチまたは前記ピラーは、円柱状または多角柱状である請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子。
【0103】
(付記2) 前記トレンチまたは前記ピラーは、格子状に配列されている請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子。
【0104】
(付記3) 前記第1半導体層はN型GaNクラッド層を含み、前記第2半導体層はP型GaNクラッド層およびP型GaNコンタクト層を含む請求項1または請求項2に記載半導体発光素子。
【0105】
(付記4) 前記半導体発光層は、Inx1Gay1Al(1−x1−y1)N井戸層(0<x1<1、0<y1≦1)と、Inx2Gay2Al(1−x2−y2)N障壁層(0≦x2<x1<1、0<y1<y2≦1)が交互に積層された多重量子井戸である請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子。
【符号の説明】
【0106】
10、50、60 半導体発光素子
11 基板
12 第1半導体層
13 半導体発光層
14 第2半導体層
15 半導体積層体
16、64 トレンチ
17 切り欠き部
18、62 第1電極
19、63 第2電極
19a、62a ボンディングパッド
20、82、83、90 絶縁膜
21 GaN層
22 N型GaNクラッド層
24 P型GaNクラッド層
25 P型GaNコンタクト層
30、52 光
40 Au膜
41、72 レジスト膜
41a 開口
42 塗布液
43 ホットプレート
51 透明導電膜
61 導電性基板
71 金錫合金膜
80 ピラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1半導体層と、半導体発光層と、第2導電型の第2半導体層がこの順に積層され、前記第2半導体層および前記半導体発光層を貫通して前記第1半導体層に到り周期的に配列された複数の柱状のトレンチを有する半導体積層体と、
前記トレンチ内に埋め込まれ、前記半導体発光層から放出される光に対して透光性を有する絶縁膜と、
前記第1半導体層に電気的に接続された第1電極と、
前記第2半導体層の上面を覆う第2電極と、
を具備することを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層から周期的に立設し、半導体発光層と第2導電型の第2半導体層が積層された複数のピラーと、
前記第1半導体層上に前記複数のピラーを取り囲むように設けられ、前記半導体発光層から放射される光に対して透光性を有する絶縁膜と、
前記第1半導体層に電気的に接続された第1電極と、
前記第2半導体層の上面を覆う第2電極と、
を具備する半導体発光素子。
【請求項3】
前記トレンチまたは前記ピラーのサイズは隣接する前記トレンチまたは前記ピラー間の距離より大きく、前記距離は前記半導体発光層から放出される光の波長の1/2より大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記絶縁膜の屈折率は、前記半導体積層体の実効屈折率より小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記絶縁膜は、屈折率の異なる複数の絶縁膜の積層体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記絶縁膜は、上面が凸状または凹状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記第2電極が、前記半導体発光層から放射される光に対して透光性を有する透明導電膜であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−110349(P2013−110349A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256059(P2011−256059)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】