説明

半導体発光素子

【課題】高輝度化に適した半導体発光素子を提供する。
【解決手段】発光ダイオード50は、基板1と、基板1上に結晶成長によって形成された半導体積層構造2と、半導体積層構造2の表面に形成された透明電極膜3とを含む。半導体積層構造2は、p型クラッド層15に対して活性層10とは反対側に配置されたp型GaPウインドウ層17と、p型GaPウインドウ層17におけるp型クラッド層15とは反対側に形成されたp型コンタクト層18とを含む。p型コンタクト層18は、炭素がドープされたGaPからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光ダイオード等の半導体発光素子に関し、特に、InGaAlP系の半導体発光体素子に関する。
本明細書および特許請求の範囲において、「InGaAlP系の半導体」とは、InGaAl1−x−yP(0≦x≦1,0≦y≦1,0<(x+y)≦1)からなる半導体をいう。したがって、InGaP,InAlP,InGaAlP,GaP,GaAlPも、「InGaAlP系の半導体」に含まれる。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードにおいて、高輝度を得るためには、チップ面内に均一に電流が注入されるように、電流分散特性を良くする必要がある。そこで、p型クラッド層とp側電極との間に、電流を分散させるためのウインドウ層が設けられている。このウインドウ層は厚いほど電流を分散させることができるが、ウインドウ層を厚く形成すると、ウインドウ層を構成する結晶に欠陥が発生しやすくなる。
【0003】
そこで、p側電極におけるp型クラッド層側に、ITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極膜を設けることにより、従来のウインドウ層を薄くした発光ダイオードが提案されている。
しかしながら、ITO透明電極膜を用いた発光ダイオードでは、半導体層と透明電極膜との間の接触抵抗が大きくなるため、順方向動作電圧が高くなるという問題がある。
【0004】
この問題を解消するために、透明電極膜と半導体層との間に、炭素がドープされたGaAsまたは炭素がドープされたAlGaAsからなるp型コンタクト層を設けることにより、透明電極膜と半導体層との間の接触抵抗を低下させたものが提案されている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−307810号公報
【特許文献2】特開2001−223384号公報
【特許文献3】特開2007−96168号公報
【特許文献4】特開2005−277374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
炭素がドープされたGaAsまたは炭素がドープされたAlGaAsからなるp型コンタクト層が設けられた従来の発光ダイオードでは、コンタクト層の材料であるGaAsまたはAlGaAsは、光を吸収する性質を有しているため、発光を阻害するという問題がある。
この発明の目的は、高輝度化に適した半導体発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の半導体発光素子は、InAlGaP系半導体からなるp型クラッド層およびn型クラッド層と、前記p型クラッド層およびn型クラッド層に挟まれ、InAlGaP系半導体からなる活性層と、前記p型クラッド層に対して前記活性層とは反対側に配置され、GaPからなるp型ウインドウ層と、前記p型ウインドウ層における前記p型クラッド層とは反対側の表面に形成されたp型コンタクト層と、前記p型コンタクト層における前記p型ウインドウ層とは反対側の表面に形成され、ITOからなる透明電極膜とを備えている。前記p型コンタクト層は、炭素がドープされたGaPからなる。
【0008】
この発明の構成では、p型コンタクト層は、炭素がドープされたGaPからなる。このため、透明電極膜とp型ウインドウ層との間の接触抵抗を低減させることができる。これにより、高輝度化に適した半導体発光素子を実現することができる。
この発明におけるp型コンタクト層と、GaAsに炭素をドープすることにより得られる従来のp型コンタクト層と比較すると、GaAsは光を吸収する性質を有しているのに対してGaPは透明性が高いため、この発明におけるp型コンタクト層の方がより光を透過でき、発光輝度を高めることができる。これにより、高輝度化により適した半導体発光素子を実現することができる。
【0009】
また、この発明では、p型コンタクト層におけるp型ウインドウ層とは反対側に形成されたITO透明電極膜を備えているので、p型ウインドウ層の膜厚を薄くすることが可能となる。
前記半導体発光素子は、具体的には、前記p型コンタクト層における前記炭素の濃度が1.5×1019cm−3以上であることが好ましい。炭素濃度が1.5×1019cm−3より少ないとp型コンタクト層の抵抗が大きくなり、透明電極膜とp型ウインドウ層との間の接触抵抗を十分に低減させることができないからである。
【0010】
前記半導体発光素子は、具体的には、前記p型コンタクト層における前記炭素の濃度が1.5×1019cm−3以上5.0×1019cm−3以下であることが好ましい。炭素濃度が5.0×1019cm−3より多いと、p型コンタクト層におけるGaP結晶が劣化するからである。
この発明の一実施形態では、前記p型コンタクト層の厚さが、300nm以上800nm以下である。
【0011】
前記半導体発光素子は、具体的には、前記p型コンタクト層における前記透明電極膜側の表面に凹凸が形成されていることが好ましい。この構成では、p型コンタクト層と透明電極膜との境界面において、光が全反射されるのを抑制することができる。これにより、発光効率を高めることができる。
前記p型コンタクト層表面の凹凸の高低差が、200nm以上600nm以下であることが好ましい。この理由は、凹凸の高低差が200nmより小さいと、P型コンタクト層と透明電極膜との境界面において、光の全反射を十分に抑制できないからである。一方、凹凸の高低差が600nmより大きいと、P型コンタクト層上に透明電極膜を成膜しにくくなるからである。
【0012】
前記p型クラッド層と前記p型ウインドウ層との間に、前記p型クラッド層よりも価電子帯バンドの位置が低く、かつ前記p型ウインドウ層よりも価電子帯バンドの位置が高いp型中間バンドギャップ層が介装されていてもよい。この構成では、p型クラッド層とp型ウインドウ層との価電子帯バンドの不連続がp型中間バンドギャップ層によって緩和されるので、半導体発光素子に順方向電圧が印加されたときに、p型クラッド層とp型ウインドウ層との間の抵抗が増大するのを抑制することができる。これにより、低抵抗化が図れる。
【0013】
p型クラッド層がInAlGaP系半導体から構成され、p型ウインドウ層がGaPから構成されているため、前記p型中間バンドギャップ層は、InAlGaP系半導体から構成されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、この発明の一実施形態に係る発光ダイオードの構成を説明するための断面図である。
【図2】前記発光ダイオードの活性層の構成を説明するための図解的な断面図である。
【図3】P型コンタクト層における透明電極膜側の表面が粗面化されていることを示す図解的な断面図である。
【図4】各サンプルa〜gに対する順方向電圧Vf[mV]の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る発光ダイオードの構成を説明するための断面図である。
この発光ダイオード50は、基板1と、基板1上に結晶成長によって形成された半導体積層構造2と、半導体積層構造2の表面に形成された透明電極膜3と、基板1の裏面に接触するように形成されたn側電極4と、透明電極膜3の表面に接触するように形成されたp側電極5を備えている。
【0016】
基板1は、この実施形態では、GaAs単結晶基板(たとえば170μm厚)で構成されている。半導体積層構造2を形成する各層は、基板1に対してエピタキシャル成長されている。エピタキシャル成長とは、下地層からの格子の連続性を保った状態での結晶成長をいう。
半導体積層構造2は、活性層10と、n型半導体層11と、p型半導体層12とを備えている。n型半導体層11は活性層10に対して基板1側に配置されており、p型半導体層12は活性層10に対して透明電極膜3側に配置されている。こうして、ダブルヘテロ接合が形成されている。活性層10には、n型半導体層11から電子が注入され、p型半導体層12から正孔が注入される。これらが活性層10で再結合することにより、光が発生するようになっている。
【0017】
n型半導体層11は、基板1側から順に、n型多層膜光反射層13(たとえば約1000nm厚)およびn型In0.5Al0.5Pクラッド層14(たとえば500nm厚)を積層して構成されている。一方、p型半導体層12は、活性層10上に、p型In0.5Al0.5Pクラッド層15(たとえば500nm厚)、p型In0.5Ga0.25Al0.25P中間バンドギャップ層16(たとえば70nm厚)、p型GaPウインドウ層17(たとえば2000nm厚)およびp型GaPコンタクト層18(たとえば500nm厚)を積層して構成されている。
【0018】
n型多層膜光反射層13は、活性層10から基板1側に向かって放出された光を反射させ、その光を透明電極膜3の露出面から外部に出射させるために設けられた層である。n型多層膜光反射層13は、ブラッグ反射鏡(DBR:Distributed Bragg Reflector)であり、n型AlAs層(たとえば40nm厚)とn型Al0.3Ga0.7As層(たとえば40nm厚)とがそれぞれ10層ずつ交互に積層されてなる。n型AlAs層は、AlAsにn型ドーパントとしてのSiをドープすることによって、n型半導体層とされている。また、n型Al0.3Ga0.7As層は、Al0.3Ga0.7Asにn型ドーパントとしてのSiをドープすることによって、n型半導体層とされている。
【0019】
なお、n型多層膜光反射層13は、n型In0.5Al0.5P層とn型GaAs層とが交互に積層されたものであってもよい。
n型クラッド層14と、p型クラッド層15とは、活性層10にキャリア(電子および正孔)を閉じ込めるキャリア閉じ込め効果を生じるものである。n型In0.5Al0.5Pクラッド層14は、In0.5Al0.5Pにn型ドーパントとしてのSiをドープすることによって、n型半導体層とされている。
【0020】
n型クラッド層14は、n型多層膜光反射層13上に形成され、Siの濃度が高い第1のn型In0.5Al0.5Pクラッド層14a(たとえば250nm厚)と、第1のn型In0.5Al0.5Pクラッド層14a上に形成され、Siの濃度が低い第2のn型In0.5Al0.5Pクラッド層14bとから構成されている。第1のn型In0.5Al0.5Pクラッド層14aにおけるSiの濃度は、たとえば5.0×1017cm−3であり、第2のn型In0.5Al0.5Pクラッド層14bにおけるSiの濃度は、たとえば2.0×1017cm−3である。なお、n型クラッド層14にドープされるn型ドーパントは、Seであってもよい。
【0021】
一方、p型In0.5Al0.5Pクラッド層15は、In0.5Al0.5Pにp型ドーパントとしてのMgをドープすることによって、p型半導体層とされている。p型クラッド層15は、活性層10上に形成され、Mgの濃度が低い第1のp型In0.5Al0.5Pクラッド層15a(たとえば250nm厚)と、第1のp型In0.5Al0.5Pクラッド層15a上に形成され、Mgの濃度が高い第2のp型In0.5Al0.5Pクラッド層15bとから構成されている。第1のp型In0.5Al0.5Pクラッド層15aにおけるMgの濃度は、たとえば2.0×1017cm−3であり、第2のp型In0.5Al0.5Pクラッド層15bにおけるMgの濃度は、たとえば5.0×1017cm−3である。なお、p型クラッド層15にドープされるp型ドーパントは、Znであってもよい。
【0022】
n型クラッド層14およびp型クラッド層15における活性層10に近い部分14b,15aのドーピング濃度が低くされている理由は、次の通りである。つまり、発光ダイオード50に電流を流したときに、クラッド層14,15層内のドーパント(不純物)が活性層10に拡散して活性層10で光が発生しにくくなるのを、抑制するためである。
p型In0.5Ga0.25Al0.25P中間バンドギャップ層16は、p型クラッド層15とp型ウインドウ層17との価電子帯バンドの不連続を緩和することにより、発光ダイオード50に順方向電圧が印加されたときに、p型クラッド層15とp型ウインドウ層17との間の抵抗が増大するのを抑制するために設けられた層である。このため、p型中間バンドギャップ層16としては、光を透過する材料であって、p型クラッド層15よりも価電子帯バンドの位置が低く、かつp型ウインドウ層17よりも価電子帯バンドの位置が高いものが用いられている。p型In0.5Ga0.25Al0.25P中間バンドギャップ層16は、In0.5Ga0.25Al0.25Pにp型ドーパントとしてのMgをドープ(ドーピング濃度は、たとえば2.0×1018cm−3)することによって、p型半導体層とされている。p型中間バンドギャップ層16にドープされるp型ドーパントは、Znであってもよい。
【0023】
p型GaPウインドウ層17は、電流を分散させるために設けられた層である。p型GaPウインドウ層17は、GaPにp型ドーパントとしてのMgをドープ(ドーピング濃度は、たとえば7×1018cm−3)することによって、p型半導体層とされている。p型ウインドウ層17にドープされるp型ドーパントは、Znであってもよい。
p型GaPコンタクト層18は、透明電極膜3とp型ウインドウ層17との間の接触抵抗を低減させるために設けられた低抵抗層である。p型GaPコンタクト層18は、GaPにp型ドーパントとしてのC(炭素)を高濃度にドープすることによって、p型半導体層とされている。
【0024】
p型GaPコンタクト層18におけるC(炭素)の濃度は、1.5×1019cm−3以上5.0×1019cm−3以下が好ましい。この理由は、Cの濃度が1.5×1019cm−3より少ないとp型GaPコンタクト層18の抵抗が大きくなり、透明電極膜3とp型ウインドウ層17との間の接触抵抗を十分に低減させることができないからである。一方、Cの濃度が5.0×1019cm−3より多いと、p型GaPコンタクト層18におけるGaP結晶が劣化するからである。
【0025】
この実施形態では、p型GaPコンタクト層18におけるCの濃度は、2.0×1019cm−3以上2.5×1019cm−3以下である。
p型GaPコンタクト層18の膜厚は、300nm以上800nm以下であることが好ましい。
p型GaPコンタクト層18と、GaAsにCをドープすることにより得られるp型GaAsコンタクト層とを比較すると、GaAsは光を吸収する性質を有しているのに対してGaPは透明性が高いため、p型GaPコンタクト層18の方がより光を透過でき、発光輝度を高めることができる。これにより、高輝度化に適した発光ダイオードを実現することができる。
【0026】
活性層10は、多重量子井戸(MQW:multiple-quantum well)構造を有しており、電子と正孔とが再結合することにより光が発生し、その発生した光を増幅させるための層である。活性層10の膜厚は、たとえば約1000nmである。
活性層10は、この実施形態では、図2に示すように、アンドープのIn0.5Ga0.5P層からなる量子井戸(well)層(たとえば4nm厚)101と、アンドープのIn0.5(Ga0.15Al0.850.5P層からなる障壁(barrier)層(たとえば4nm厚)102とを交互に複数周期繰り返し積層して構成された多重量子井戸構造を有している。量子井戸層101の層数は、たとえば100であり、障壁層102の層数は、たとえば99である。
【0027】
透明電極膜3は、電流を効率良く分散し、p型ウインドウ層17を薄くするために設けられた電極である。透明電極膜3は、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)からなる。透明電極膜3の膜厚は、たとえば300nmである。
n側電極4は、たとえば、第1のAu層(たとえば50nm厚)と、AuGe/Ni層(たとえば165nm厚)と、第2のAu層(たとえば165nm厚)からなる三層構造の合金からなり、その第1のAu層側が基板1側に配されるように、基板1にオーミック接合されている。なお、n側電極4は、Au/AuGe/Ni/Auを基板1の裏面に成膜した後に、シンタリング(焼成)が行われることにより、基板1の材料(GaAs)を含めて合金化される。
【0028】
p側電極5は、透明電極膜3の表面の中央部に形成されている。p側電極5は、たとえばCr(たとえば30nm厚)/Au(たとえば2000nm厚)合金からなり、そのCr側が透明電極膜3に配されるように、透明電極膜3にオーミック接合されている。
図3に示すように、P型コンタクト層18における透明電極膜3側の表面は粗面化されており、当該表面に凹凸が形成されている。このように、P型コンタクト層18における透明電極膜3側の表面には凹凸が形成されているため、その上に形成される透明電極膜3におけるP型コンタクト層18と反対側の表面にも、緩やかな凹凸が形成されている。
【0029】
P型コンタクト層18の表面に凹凸が形成されている理由について説明する。この発光ダイオード50は、透明電極膜3が設けられているため、活性層10から透明電極膜3側の外部に光が取り出されるまでに、屈折率が異なる層が少なくとも2つ存在する。屈折率が異なる2つの層は、具体的には、ウインドウ層17およびコンタクト層18から構成されるp型GaP層と、透明電極膜3から構成されるITO膜である。
【0030】
この実施形態では、p型コンタクト層18における透明電極膜3側の表面に凹凸が形成されているので、p型コンタクト層18と透明電極膜3との境界面において、光が全反射されるのを抑制することができる。また、透明電極膜3におけるp型コンタクト層18と反対側の表面にも緩やかな凹凸が形成されるため、透明電極膜3と外気との境界面においても、光が全反射されるのを抑制することができる。これにより、発光効率を高めることができる。
【0031】
P型コンタクト層18における透明電極膜3側の表面に形成される凹凸の高低差は、200nm以上600nm以下であることが好ましい。この理由は、凹凸の高低差が200nmより小さいと、P型コンタクト層18と透明電極膜3との境界面において、光の全反射を十分に抑制できないからである。一方、凹凸の高低差が600nmより大きいと、P型コンタクト層18上に透明電極膜3を成膜しにくくなるからである。
【0032】
このような構成によって、n側電極4およびp側電極5を電源に接続し、n型半導体層11およびp型半導体層12から電子および正孔を活性層10に注入することによって、この活性層10内での電子および正孔の再結合を生じさせ、光を発生させることができる。この光は、透明電極膜3の表面から外部に取り出されることになる。
前述した発光ダイオード50の製造方法について簡単に説明する。まず、GaAs基板1上に、有機金属化学気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)によって、n型多層膜光反射層13、第1のn型In0.5Al0.5Pクラッド層14a、第2のn型In0.5Al0.5Pクラッド層14b、活性層10、第1のp型In0.5Al0.5Pクラッド層15a、第2のp型In0.5Al0.5Pクラッド層15b、p型In0.5Ga0.25Al0.25P中間バンドギャップ層16、p型GaPウインドウ層17およびp型GaPコンタクト層18を順に成長させる。
【0033】
なお、n型多層膜光反射層13は、n型AlAs層とn型Al0.3Ga0.7As層とを交互に複数周期繰り返し成長させることによって形成される。また、活性層10は、In0.5Ga0.5P層からなる量子井戸層101と、In0.5(Ga0.15Al0.850.5P層からなる障壁層102とを交互に複数周期繰り返し成長させることによって形成される。
【0034】
次に、p型GaPコンタクト層18の表面を粗面化することにより、p型GaPコンタクト層18の表面に凹凸を形成する。具体的には、硝酸系エッチャントを用いたウエットエッチングまたは塩素系ガスによるドライエッチングによって、p型GaPコンタクト層18の表面を粗面化する。
この後、p型GaPコンタクト層18上に、透明電極膜3(ITO膜)を形成する。この際、p型GaPコンタクト層18表面の凹凸部に空洞が生じないように、成膜速度を遅くすることが好ましい。
【0035】
そして、透明電極膜3にオーミック接触するp型電極5が形成される。また、GaAs基板1にオーミック接触するn型電極4が形成される。
次に、p型GaPコンタクト層18におけるCの濃度と、発光ダイオードの順方向電圧Vf[mA]との関係について説明する。p型GaPコンタクト層18におけるCの濃度(C.C.(キャリアコンセントレーション))が異なる複数の実験サンプルを用いて実験を行った。
【0036】
実験サンプルとして、次のa〜gの7種類のサンプルを用意した。
a:コンタクト層18におけるCの濃度が6.78×1018cm−3である発光ダイオード
b:コンタクト層18におけるCの濃度が1.12×1019cm−3である発光ダイオード
c:コンタクト層18におけるCの濃度が1.51×1019cm−3である発光ダイオード
d:コンタクト層18におけるCの濃度が1.76×1019cm−3である発光ダイオード
e:コンタクト層18におけるCの濃度が1.94×1019cm−3である発光ダイオード
f:コンタクト層18におけるCの濃度が2.11×1019cm−3である発光ダイオード
g:コンタクト層18におけるCの濃度が2.84×1019cm−3である発光ダイオード
各サンプルa〜gに対する順方向電圧Vf[mV](各サンプルa〜gに20mAの順方向電流Ifを印加したときの順方向電圧)の測定結果を表1および図4に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1および図4から、コンタクト層18におけるCの濃度が高くなるにしたがって順方向電圧Vfが低下していき、コンタクト層18におけるCの濃度が1.50×1019cm−3以上となると順方向電圧Vfがほぼ一定となることがわかる。つまり、コンタクト層18におけるCの濃度を1.50×1019cm−3以上にすると、順方向電圧Vfを低く抑えることができることが分かる。
【0039】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することができる。たとえば、活性層10、n型クラッド層14、p型クラッド層15およびp型中間バンドギャップ層16は、InAlGaP系半導体から構成されていればよく、前記実施形態のものに限られない。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 基板
2 半導体積層構造
3 透明電極膜
4 n側電極
5 p側電極
10 活性層
11 n型半導体層
12 p型半導体層
13 n型多層膜光反射層
14 n型In0.5Al0.5Pクラッド層
15 p型In0.5Al0.5Pクラッド層
16 p型In0.5Ga0.25Al0.25P中間バンドギャップ層
17 p型GaPウインドウ層
18 p型GaPコンタクト層
50 発光ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
InAlGaP系半導体からなるp型クラッド層およびn型クラッド層と、
前記p型クラッド層およびn型クラッド層に挟まれ、InAlGaP系半導体からなる活性層と、
前記p型クラッド層に対して前記活性層とは反対側に配置され、GaPからなるp型ウインドウ層と、
前記p型ウインドウ層における前記p型クラッド層とは反対側の表面に形成されたp型コンタクト層と、
前記p型コンタクト層における前記p型ウインドウ層とは反対側の表面に形成され、ITOからなる透明電極膜とを備え、
前記p型コンタクト層は、炭素がドープされたGaPからなる、半導体発光素子。
【請求項2】
前記p型コンタクト層における前記炭素の濃度が1.5×1019cm−3以上である、請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記p型コンタクト層における前記炭素の濃度が1.5×1019cm−3以上5.0×1019cm−3以下である、請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記p型コンタクト層の厚さが、300nm以上800nm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記p型コンタクト層における前記透明電極膜側の表面に凹凸が形成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記p型コンタクト層表面の凹凸の高低差が、200nm以上600nm以下である請求項5に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記p型クラッド層と前記p型ウインドウ層との間に、前記p型クラッド層よりも価電子帯バンドの位置が低く、かつ前記p型ウインドウ層よりも価電子帯バンドの位置が高いp型中間バンドギャップ層が介装されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記p型中間バンドギャップ層が、InAlGaP系半導体からなる、請求項7に記載の半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−58622(P2013−58622A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196263(P2011−196263)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】