説明

半導体発光装置の製造方法および半導体製造装置

【課題】実施形態は、透明電極と半導体層との間のコンタクト抵抗を低減できる生産性の高い半導体発光装置の製造方法および半導体製造装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る半導体発光装置の製造方法は、被処理ウェーハとターゲットとの間に磁界を介在させるスパッタ法を用いて透明電極を形成する。そして、前記磁界を遮蔽した状態で、前記透明電極に含まれる第1の透明導電膜を前記被処理ウェーハの表面に形成する工程と、前記被処理ウェーハと前記ターゲットとの間に前記磁界を介在させ、前記透明電極に含まれる第2の導電膜を前記第1の透明導電膜の上に形成する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光装置の製造方法および半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光装置は、低消費電力で高輝度の光源が求められる照明器具や表示装置などの分野で広く用いられている。このため、例えば、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)は、半導体層の表面に設けた透明電極を介して内部の発光を取り出すことにより輝度を向上させる。
【0003】
透明電極には、例えば、酸化インジウムと酸化スズとを混合したITO(Indium Tin Oxide)膜が用いられる。そして、ITOなど透明導電膜の代表的な成膜方法として、蒸着法もしくはスパッタ法が知られている。近年は、LED用ウェーハの大口径化に対応するため、さらには、生産性を向上させるために、スパッタ法を用いた成膜が主流となっている。
【0004】
しかしながら、スパッタ法は、半導体層の表面にダメージを与え、成膜された透明導電膜と、半導体層と、の間のコンタクト抵抗を高くすることがある。これにより、半導体発光装置の発光効率が低下し、輝度が下がる不具合を生じる。そこで、透明電極と半導体層との間のコンタクト抵抗を低減できる生産性の高い半導体発光装置の製造方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−35935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実施形態は、透明電極と半導体層との間のコンタクト抵抗を低減できる生産性の高い半導体発光装置の製造方法および半導体製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る半導体発光装置の製造方法は、被処理ウェーハとターゲットとの間に磁界を介在させるスパッタ法を用いて透明電極を形成し、前記磁界を遮蔽した状態で、前記透明電極に含まれる第1の透明導電膜を前記被処理ウェーハの表面に形成する工程と、前記被処理ウェーハと前記ターゲットとの間に前記磁界を介在させ、前記透明電極に含まれる第2の導電膜を前記第1の透明導電膜の上に形成する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る半導体製造装置を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態に係る半導体製造装置による成膜過程を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態に係る半導体発光装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る半導体発光装置の製造過程を模式的に示す断面図である。
【図5】図4に続く製造過程を模式的に示す断面図である。
【図6】第1の実施形態の変形例に係る半導体製造装置を示す模式図である。
【図7】第1の実施形態の別の変形例に係る半導体製造装置を示す模式図である。
【図8】第2の実施形態に係る半導体製造装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、図面中の同一部分には同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について適宜説明する。
【0010】
[第1の実施形態]
図1に、第1の実施形態に係る半導体製造装置100を示す。半導体製造装置100は、例えば、透明導電膜であるITO膜を形成するスパッタ装置であり、被処理ウェーハ20の上に透明電極を形成する。
【0011】
図1に示す半導体製造装置100は、成長室である真空チャンバ30の内部にウェーハホルダ21と、ウェーハホルダ21に対向したカソード電極23を備える。被処理ウェーハ20は、ウェーハホルダ21の上に載置される。被処理ウェーハ20は、ウェーハホルダ21に電気的に接続された状態で載置されても良いし、ウェーハホルダ21に対して浮遊電位となる状態で載置されてもよい。
【0012】
カソード電極23のウェーハホルダ21の側には、ITOターゲット25が取り付けられる。さらに、カソード電極23のウェーハホルダ21とは反対の側に、永久磁石27が配置される。同図に示すように、永久磁石27は、真空チャンバ30の外側に配置しても良い。ウェーハホルダ21は、例えば、アース電位に接地され、カソード電極23に対してアノード電極として機能する。
【0013】
さらに、半導体製造装置100は、カソード電極23にDCバイアスを供給する電源33と、カソード電極23と永久磁石27との間に挿入される磁気シールド板29と、を備える。磁気シールド板29は、磁界制御部31によりカソード電極23と永久磁石27との間に挿入され、また、その間から引き出される。そして、磁界制御部31および電源33を制御する成膜制御部35を備える。
【0014】
半導体製造装置100は、図1(a)に示すように、カソード電極23と永久磁石27との間に、磁気シールド板29を挿入してITO膜を形成する第1の動作モードと、図1(b)に示すように、カソード電極23と永久磁石27との間から磁気シールド板29を引き出してITO膜を形成する第2の動作モードと、を有する。これらの動作モードは、成膜制御部35により制御される。
【0015】
図1(a)に示す第1の動作モードでは、磁気シールド板29がカソード電極23と永久磁石27との間に挿入され、永久磁石27の磁界が遮蔽された状態で、ITO膜の成膜が行われる。すなわち、カソード電極23と、アース電位と、の間に印加されるDCバイアスにより、ウェーハ20とITOターゲット25の間にグロー放電が生じプラズマPが形成される。そして、プラズマP中でイオン化された不活性原子、例えば、アルゴン(Ar)イオンによりITOターゲットがスパッタされ、ウェーハ20の表面に第1の透明導電膜であるITO膜13aが形成される。
【0016】
ここで、遮蔽とは、ウェーハ20とITOターゲット25との間に介在する磁界の強度を0(ゼロ)にすること、あるいは、磁気シールド板29により磁界強度を低下させることを意味する。
【0017】
続いて、図1(b)に示す第2の動作モードにおいて、ITO膜13aの上に第2の透明導電膜であるITO膜13bを形成する。これにより、ITO膜13aとITO膜13bとを含む透明電極13が形成される。
【0018】
第2の動作モードでは、カソード電極23と永久磁石27との間から磁気シールド板29が引き出され、ITOターゲット25とウェーハ20との間に永久磁石27の磁界Bが介在する状態とする。そして、ターゲット25とウェーハ20との間に高密度のプラズマPを形成し、ITOターゲット25のスパッタ速度を速くする。これにより、ITO膜13bの堆積速度を向上させる。さらに、永久磁石27の磁界Bの強度を変えることによりプラズマPの分布を変化させ、ITO膜13bの膜厚分布を均一化することができる。
【0019】
上記の通り、半導体製造装置100では、永久磁石27の磁界Bの介在しない状態、もしくは、磁界強度が低下した状態において、第1の透明導電膜であるITO13aを形成する。永久磁石27の磁界Bの介在しない状態、もしくは、磁界強度が低下した状態において、ITOターゲット25のスパッタリングに寄与するプラズマPは低密度であり、p形GaN層9に与えるダメージが軽減される。すなわち、低密度プラズマPによりスパッタされるITO粒子のエネルギーは、高密度のプラズマPによりスパッタされるITO粒子のエネルギーよりも低い。したがって、スパッタされたITO粒子の衝突によりp形GaN層9に与えられるダメージを低減することができる。これにより、ITO膜13aとp形GaN層9との間のコンタクト抵抗を低減することが可能となる。
【0020】
さらに、永久磁石27の磁界Bを介在させた状態、もしくは、磁界強度を高めた状態で、所謂マグネトロンスパッタ法による成膜を行う。これにより、第2の透明導電膜であるITO膜13bを形成する時間を短縮し生産性を向上させることができる。ITO膜13bを形成する際には、ウェーハ20の表面がITO膜13aにより覆われており、ITO粒子の衝突によるダメージを抑制することができる。さらに、永久磁石27を好適に配置し、その磁界強度を制御することにより、ITO膜の膜厚分布の均一化が可能となる。
【0021】
また、p形GaN層9の表面に形成されたITO膜13aには、永久磁石27の磁場がウェーハ20の表面の半導体層に与えるダメージを軽減する効果もある。
【0022】
次に、図2を参照して、半導体製造装置100による成膜過程を説明する。図2は、半導体製造装置の成膜シーケンスを示すフローチャートである。
【0023】
まず、被処理ウェーハをウェーハホルダ21に載置する(S01)。続いて、成長室(真空チャンバ30)の内部を減圧し、不活性ガスの雰囲気に置換する(S02)。不活性ガスとして、例えば、アルゴン(Ar)を用いる。さらに、ITO膜を成膜する場合には、酸素を添加する。ITOの場合、酸素の添加量によりシート抵抗を制御することができる。
【0024】
次に、成長室の圧力を所定の値に安定させた後、電源33からDCバイアスを供給し、ウェーハホルダ21とカソード電極23との間にグロー放電を生じさせる(S03)。これにより、ITOターゲット25と被処理ウェーハ20との間にプラズマPが誘起され、ITOターゲット25がスパッタされる。この間、永久磁石27とカソード電極23との間には、磁気シールド板29が挿入され、永久磁石27の磁界Bが遮蔽される。
【0025】
次に、磁気シールド板29を永久磁石27とカソード電極23との間から引き出し、ITOターゲット25と被処理ウェーハ20との間に磁界Bを介在させる(S04)。そして、ITOターゲット25と被処理ウェーハ20との間に磁界Bを介在させた状態で、所定時間のスパッタリングを行った後、電源33からのDCバイアスの供給を遮断し、ITO膜の形成を停止する(S05)。
【0026】
処理されたウェーハ20が最後のウェーハであれば、ITOの成膜工程を完了し(S06)、残りのウェーハ20があれば、永久磁石27とカソード電極23との間に磁気シールド板29を挿入して磁界Bを遮蔽し(S07)、次のウェーハ20をホルダに載置する。
【0027】
このような成膜シーケンスは、成膜制御部35により制御される。例えば、ロードロック方式のスパッタ装置であれば、ステップS01〜S07の工程を自動で制御する。また、ステップS03〜S05を成膜制御部35により制御しても良い。
【0028】
次に、半導体製造装置100を用いて製造される半導体発光装置10について説明する。図3は、第1の実施形態に係る半導体発光装置10の構造を模式的に示す断面図である。半導体発光装置10は、例えば、窒化物半導体を材料とするLEDであり透明電極13を備える。
【0029】
図3に示すように、半導体発光装置10は、例えば、サファイア基板3の上に順に設けられた、n形GaN層5、発光層7およびp形GaN層9を備える。窒化物半導体層であるp形GaN層9の表面には、透明電極13が設けられる。
【0030】
発光層7は、例えば、InGaNからなる井戸層と、GaNからなる障壁層と、で構成される複数の量子井戸を含み、青色の光を発光する。
【0031】
透明電極13は、例えば、ITO膜であり、半導体製造装置100を用いて形成される。透明電極13には、ITOの他に、例えば、ZnO、SnOなどの透明導電膜を用いることができる。ここで、透明とは、例えば、可視光を透過することを意味し、光を100%透過する場合だけでなく、一部が吸収されても良い。
【0032】
透明電極13の上には、p電極15が設けられる。一方、p形GaN層9の表面からn形GaN層5に至る深さにメサエッチングされた部分には、n形GaN層5に接したn電極17が設けられる。
【0033】
半導体発光装置10は、p電極15とn電極17との間に駆動電流を流すことにより、発光層7から発光を放射する。透明電極13を設けることにより、p電極15から供給される駆動電流をp形GaN層9の全体に広げることが可能となり、発光層7を均一に発光させる。そして、発光層7が放射する発光は、透明電極13を透過して外部に放出される。これにより、半導体層の内部から光を効率的に取り出すことが可能となり、半導体発光装置10の輝度を向上させる。
【0034】
次に、図4および図5を参照して、半導体発光装置の製造過程を説明する。図4(a)〜図5(b)は、各工程におけるウェーハの部分断面を示す模式図である。
【0035】
まず、図4(a)に示すように、サファイア基板3の上に、n形GaN層5と、発光層7と、p形GaN層9と、を順に成長する。各層の成長には、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いることができる。サファイア基板3とn形GaN層5との間には、例えば、図示しないバッファ層を低温成長にて形成しても良い。
【0036】
次に、図4(b)に示すように、p形GaN層9の表面に透明電極13を形成する。例えば、半導体製造装置100を用いて、厚さ約400nmのITO膜を形成する。ITO膜の厚さは、そのシート抵抗の値と、発光層7から放射される発光に対する吸収率を勘案して設定する。
【0037】
透明電極13は、第1の透明導電膜であるITO膜13aと、第2の透明導電膜13bとを含む。前述したように、ITO膜13aは、ITOターゲット25とウェーハ20との間に磁界Bを介在させない状態、もしくは、磁界強度を低下させた状態で、p形GaN層9の上に形成される。ITO膜13aは、例えば、10nm〜50nmの厚さに形成する。
【0038】
続いて、ITOターゲット25とウェーハ20との間に磁界Bを介在させた状態、もしくは、磁界強度を高めた状態で、ITO膜13aの上にITO膜13bを形成する。ITO膜13bの厚さは、例えば、350〜400nmとする。このように、ITO膜13bは、磁界Bを介在させることにより膜厚が均一化され、ITO膜13bをITO膜13aよりも厚く形成することにより、透明電極13の膜厚分布の均一性を向上させることができる。また、ITO膜13bの形成時に永久磁石27の磁界Bを介在させることにより、透明電極13の成膜時間を短縮し生産性を向上させることもできる。
【0039】
次に、図5(a)に示すように、ウェーハ20の表面をn形GaN層5に至る深さにメサエッチして発光領域を画する。エッチングには、例えば、RIE法を用いることができる。続いて、図5(b)に示すように、透明電極13の上にp電極15を形成し、n形GaN層5の表面5aにn電極17を形成する。そして、ウェーハ20を個別のチップに切り出し、半導体発光装置10を完成する。
【0040】
上記の通り、第1の実施形態に係る半導体発光装置10の製造方法では、半導体製造装置100を用いて第1の透明導電膜であるITO13aと、第2の透明導電膜であるITO13bと、をp形GaN層9の表面に形成する。これにより、p形GaN層9のダメージを軽減した透明電極13を形成することができる。
【0041】
図6は、第1の実施形態の変形例に係る半導体製造装置200を模式的に示す。半導体製造装置200は、所謂インターバック方式のスパッタ装置であり、ウェーハホルダ41に複数の被処理ウェーハ20を載置してITOターゲット25の下を通過させ、その間にウェーハ20の表面にITO膜を形成する。
【0042】
例えば、図6(a)に示すように、カソード電極23と永久磁石27との間に磁気シールド板29を挿入し磁界を遮蔽した状態で、ウェーハホルダ41を移動しITOターゲット25の下を通過させる。そして、カソード電極23とウェーハホルダ41との間でグロー放電を生じさせ、ウェーハ20の表面に第1の透明導電膜であるITO膜13aを形成する。
【0043】
続いて、図6(b)に示すように、磁気シールド板29をカソード電極23と永久磁石27との間から取り出し、ITOターゲット25の下方に磁界Bを介在させた状態で、ウェーハホルダ41を逆方向に移動しITOターゲット25の下を通過させる。これにより、ウェーハ20の表面に形成されたITO膜13aの上に、さらに第2の透明導電膜であるITO膜13bを形成する。
【0044】
半導体製造装置200では、カソード電極23およびITOターゲット25を、図6の奥行き方向に長い形状に設けることができる。これにより、大口径ウェーハに、均一な厚さのITO膜を形成することができる。
【0045】
図7は、第1の実施形態の別の変形例に係る半導体製造装置300を模式的に示す。半導体製造装置300では、回転可能に設けられたウェーハホルダ43の上に、複数の被処理ウェーハ20が載置される。
【0046】
図7(a)に示すように、ウェーハホルダ43が回転することにより、ウェーハ20は、回転軸45を中心に公転する。そして、ITOターゲット25の下を通過するウェーハ20の表面にITO膜が形成される。例えば、カソード電極23と永久磁石27との間に磁気シールド板29を挿入し磁界を遮蔽した状態で、ウェーハホルダ43とカソード電極23との間にグロー放電を生じさせる。これにより、ウェーハ20の表面に第1の透明導電膜であるITO膜13aを形成する。
【0047】
続いて、図7(b)に示すように、カソード電極23と永久磁石27との間から磁気シールド板29を取り出し、ITOターゲット25の下方に磁界Bを介在させた状態で、ウェーハホルダ43を回転させる。これにより、ITO膜13aの上に、さらに第2の透明導電膜であるITO膜13bを形成する。
【0048】
半導体製造装置300は、複数のウェーハ20を同一バッチで処理する。例えば、図3に示す半導体製造装置100と同じITOターゲット25のサイズ、および、同じ電源33を有し、バッチ処理が可能な半導体製造装置を実現する。
【0049】
上記の実施形態では、透明導電膜としてITO膜を例に説明したが、これに限られる訳ではなく、ターゲットの種類を変えることにより、ZnO膜、SnO膜などの透明導電膜を用いることも可能である。
【0050】
また、図1、図6、図7に例示した半導体製造装置では、磁気シールド板29を回転させることによりカソード電極23と永久磁石27との間に挿入し、また、取り出す構成を示したが、他の構成も可能であることは言うまでもない。
【0051】
[第2の実施形態]
図8は、第2の実施形態に係る半導体製造装置400を模式的に示す。半導体製造装置400は、図4に示す永久磁石27に代えて電磁石55が配置され、磁気シールド板29が設けられない点で、半導体製造装置100と相違する。電磁石55には磁界制御部57が接続され、励磁コイル55aに電流Iを流すことにより磁界Bを発生させる。
【0052】
図8(a)に示すように、まず、励磁コイル55aへの電流Iを遮断した状態で、
カソード電極23にDCバイアスを供給し、被処理ウェーハ20とITOターゲット25との間にグロー放電を生じさせる。そして、プラズマPを励起してITOターゲットをスパッタし、ウェーハ20の表面に第1の透明導電膜であるITO膜13aを形成する。
【0053】
続いて、励磁コイル55aに電流Iを供給し、磁界BをITOターゲット25とウェーハ20との間に介在させる。これにより、プラズマPは、より高密度のプラズマPに変化する。そして、プラズマPによりスパッタされたITO粒子がITO膜13aの上に堆積し、第2の透明導電膜であるITO膜13bが形成される。
【0054】
半導体製造装置400では、励磁コイル55aに流す電流Iの大きさを変化させることにより、磁界Bの強度を変えることができる。上記の実施形態では、励磁コイル55aに流れる電流を遮断する例について説明したが、例えば、図8(a)に示す第1の動作モードにおいて、ウェーハ20の表面にダメージを与えない程度に磁界強度を弱めても良い。そして、図8(b)に示す第2の動作モードにおいて、電流IMを増やし、プラズマP1を高密度のプラズマP2に変化させ、スパッタ速度を速くする。同時に、ウェーハ20の表面に形成されるITO膜13bの膜厚分布を均一にするように、電流IMの値を設定することができる。
【0055】
すなわち、励磁コイル55aに流す電流IMを制御することにより、ウェーハ20のダメージを低減し、さらに、ITO膜の堆積速度と膜厚分布とを好適に調整することにより生産性の向上を図ることができる。
【0056】
以上、第1および第2の実施形態に係る半導体発光装置の製造方法では、磁界を介在させない、もしくは、磁界を弱めたスパッタ法により第1の透明導電膜を形成し、続いて、第1の透明導電膜の上に、磁界を介在させる、もしくは、磁界強度を高めたスパッタ法を用いて第2の透明導電膜を形成する。これにより、下地となるウェーハの表面にダメージを生じさせないで、第1および第2の透明導電膜を含む透明電極を形成することができる。その結果、ウェーハ表面における半導体層と透明電極との間のコンタクト抵抗を低減し、駆動電圧の低い高輝度の半導体発光装置を実現することができる。さらに、磁界を介在させることにより、成膜速度を高め、さらに膜厚分布を均一化することにより、半導体発光装置の生産性を向上させることができる。
【0057】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0058】
なお、本願明細書において、「窒化物半導体」とは、BInAlGa1−x−y−zN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦x+y+z≦1)のIII−V族化合物半導体を含み、さらに、V族元素としては、N(窒素)に加えてリン(P)や砒素(As)などを含有する混晶も含むものとする。またさらに、導電型などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0059】
3・・・サファイア基板、 5・・・n形GaN層、 7・・・発光層、 9・・・p形GaN層、 10・・・半導体発光装置、 13・・・透明電極、 13a・・・ITO膜(第1の透明導電膜)、 13b・・・ITO膜(第2の透明導電膜)、 15・・・p電極、 17・・・n電極、 20・・・被処理ウェーハ、 21、41、43・・・ウェーハホルダ、 23・・・カソード電極、 25・・・ITOターゲット、 27・・・永久磁石、 29・・・磁気シールド板、 30・・・真空チャンバ、 31、57・・・磁界制御部、 33・・・電源、 35・・・成膜制御部、 45・・・回転軸、 55・・・電磁石、 55a・・・励磁コイル、 100〜400・・・半導体製造装置、 B・・・磁界、 P、P・・・プラズマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理ウェーハとターゲットとの間に磁界を介在させるスパッタ法を用いて透明電極を形成する半導体発光装置の製造方法であって、
前記磁界を遮蔽した状態で、前記透明電極に含まれる第1の透明導電膜を前記被処理ウェーハの表面に形成する工程と、
前記被処理ウェーハと前記ターゲットとの間に前記磁界を介在させ、前記透明電極に含まれる第2の導電膜を前記第1の透明導電膜の上に形成する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
【請求項2】
被処理ウェーハとターゲットとの間に磁界を介在させるスパッタ法を用いて透明電極を形成する半導体発光装置の製造方法であって、
前記磁界を発生させる電磁石への電流を遮断、もしくは、低下させた状態で、前記透明電極に含まれる第1の透明導電膜を前記被処理ウェーハの表面に形成する工程と、
前記電磁石に電流を供給し前記被処理ウェーハと前記ターゲットとの間に前記磁界を介在させ、もしくは、その磁界強度を高めた状態で前記透明電極に含まれる第2の透明導電膜を前記第1の透明導電膜の上に形成する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2の透明導電膜の膜厚が、前記第1の透明導電膜の膜厚よりも厚いことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記被処理ウェーハは、その表面に窒化物半導体層を含み、
前記第1の透明導電膜は、前記窒化物半導体層の表面に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項5】
被処理ウェーハの表面に透明電極を形成する半導体製造装置であって、
前記被処理ウェーハを載置するウェーハホルダと、
前記ウェーハホルダに対向した電極と、
前記電極の前記ウェーハホルダ側に設けられたターゲットと、
前記電極の前記ウェーハホルダとは反対の側に配置された磁石と、
前記磁石の磁界を制御する磁界制御部と、
前記磁界制御部を制御し、前記透明電極に含まれる第1の透明導電膜および第2の透明導電膜を形成する成膜制御部と、
を備え、
前記成膜制御部は、前記磁界制御部により前記磁石の磁界を遮蔽した状態で前記ターゲットをスパッタし、前記被処理ウェーハの表面に第1の透明導電膜を形成し、前記磁界制御部により前記ターゲットと前記被処理ウェーハとの間に前記磁石の磁界を介在させた状態で前記ターゲットをスパッタし、前記第1の透明導電膜の上に第2の透明導電膜を形成することを特徴とする半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−233217(P2012−233217A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101028(P2011−101028)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】