説明

半導体発光装置の製造方法

【課題】蛍光体含有樹脂をコンプレッション成形する場合において、樹脂材料内部における蛍光体粒子の密度分布の偏りを解消することにより、製品間における発光色のばらつきや発光面内における発光色のむら(色温度差)を防止することができる半導体発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板10の素子搭載面に複数の発光素子20を搭載する。基板上における複数の発光素子の配列に対応して配列された複数のキャビティを基準面に有する金型に蛍光体粒子を含む蛍光体含有樹脂30を供給する。発光素子の各々がキャビティの各々に収容され且つ素子搭載面と基準面とが蛍光体含有樹脂を間に挟んで密着するように金型を基板に押し付けて蛍光体含有樹脂を圧縮成形する。基板は、素子搭載面上であって蛍光体含有樹脂の供給領域に対応する領域の外側に複数の発光素子の配列方向に沿って伸長する突起部12を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)等の発光素子を含む半導体発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の発光素子を含む半導体発光装置として、基板上に搭載されたLEDチップをレンズ形状に成形された封止樹脂で封止したものが知られている(例えば特許文献1)。封止樹脂の成形方式としてコンプレッション成形(圧縮成形)やトランスファー成形が知られている。
【0003】
コンプレッション成形では、例えば以下のような手順で樹脂成形が行われる。はじめに、所定の温度に加熱した金型のキャビティに離型性を向上させるためのリリースフィルムを貼り付ける。続いて、金型のキャビティに液状の樹脂材料を塗布する。次に、金型に対向するようにLEDチップが搭載された基板を配置する。次に、基板および金型の周辺を密封空間として、この密閉空間を減圧して樹脂材料に含まれる気泡を除去する(脱泡)。次に所定の成形圧力にて金型を基板に押し付けて、一定時間保持して樹脂材料を仮硬化する。次に、基板に接合された樹脂材料をリリースフィルムとともに金型から剥離する。その後、更なる熱処理によって樹脂材料を本硬化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−101066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したようなコンプレッション成形法によれば、金型に複数のキャビティを設けておくことにより、1回の処理で多数のLEDチップの封止が可能となり生産性が向上する。また、基板上に複数のLEDチップを搭載したLEDモジュールの製造も容易となる。
【0006】
ところで、所望の発光色を得るために、LEDチップから発せられる光の波長を長波長側に変換する蛍光体粒子を含有した樹脂でLEDチップを封止することが行われている。しかしながら、蛍光体含有樹脂をコンプレッション成形すると、以下のような問題が生じる。すなわち、基板上に搭載された複数のLEDチップの各々を封止する蛍光体含有樹脂をコンプレッション成形で成形すると、蛍光体含有樹脂内において蛍光体粒子の密度分布に偏りが生じる。より具体的には、完成した発光装置の発光面の外縁部近傍(すなわち蛍光体含有樹脂の端部)における蛍光体粒子の密度が他の部分よりも高くなる。蛍光体粒子の密度分布の偏りは、単一のLEDチップを搭載した製品においては製品間における発光色のばらつきの原因となり、複数のLEDチップを搭載したモジュール製品においては発光面内における発光色のむら(色温度ばらつき)の原因となる。このような理由から蛍光体含有樹脂のコンプレッション成形は、殆ど実用化されていないのが現状である。本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、蛍光体含有樹脂をコンプレッション成形する場合において、樹脂材料内部における蛍光体粒子の密度分布の偏りを解消することにより、製品間における発光色のばらつきや発光面内における発光色のむら(色温度差)を防止することができる半導体発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体発光装置の製造方法は、基板の素子搭載面に複数の発光素子を搭載する工程と、前記基板上における前記複数の発光素子の配列に対応して配列された複数のキャビティを基準面に有する金型に蛍光体粒子を含む蛍光体含有樹脂を供給する工程と、前記発光素子の各々が前記キャビティの各々に収容され且つ前記素子搭載面と前記基準面とが前記蛍光体含有樹脂を間に挟んで密着するように前記金型を前記基板に押し付けて前記蛍光体含有樹脂を圧縮成形する工程と、を含み、前記基板は、前記素子搭載面上であって前記蛍光体含有樹脂の供給領域に対応する領域の外側に前記複数の発光素子の配列方向に沿って伸長する突起部を有し、前記圧縮成形する工程において、前記突起部は、前記基準面との間に間隙を有して前記基準面と対向していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る半導体発光装置の製造方法によれば、基板上に設けられた突起部12は、金型上の塗布領域から金型端部に向かう蛍光体粒子の移動を制限する障壁として機能する故、蛍光体粒子の滞留が生じやすい金型端部への蛍光体粒子の供給量を抑制することができ、蛍光体粒子の密度分布の偏りが解消される。従って、基板上に複数の発光素子を搭載した半導体発光装置において、発光面内における発光色のむら(色温度差)を低減することが可能となる。また、基板を発光素子毎に分割して製造される発光装置においては、発光装置間の発光色のばらつきを防止することが可能となり、歩留りが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】コンプレッション成形時における成形装置の内部の状態を示す部分的な断面図である。
【図2】図2(a)は本発明の実施例に係る基板の構成を示す平面図、図2(b)は図2(a)における2b−2b線に沿った断面図である。
【図3】図3(a)は本発明の実施例に係るLEDチップがマウントされた基板を示す平面図、図3(b)は図3(a)における3b−3b線に沿った断面図である。
【図4】図4(a)は金型上における蛍光体含有樹脂の塗布領域を示す平面図、図4(b)は図4(a)における4b−4b線に沿った断面図である。
【図5】図5(a)〜図5(c)は、本発明の実施例に係る成形装置の内部構成を示す断面図である。
【図6】図6(a)は本発明の実施例に係る半導体発光装置の構成を示す平面図、図6(b)は図6(a)における6b−6b線に沿った断面図である。
【図7】図7(a)は本発明の他の実施例に係る基板の構成を示す平面図、図7(b)は図7(a)における7b−7b線に沿った断面図である。図7(c)は、本発明の実施例に係る成形装置の内部構成を示す断面図である。
【図8】図8(a)は本発明の他の実施例に係る基板の構成を示す平面図、図8(b)は図7(a)における7b−7b線に沿った断面図である。
【図9】図9(a)は本発明の他の実施例に係る基板の構成を示す平面図、図9(b)は図9(a)における9b−9b線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
はじめに、蛍光体含有樹脂をコンプレッション成形した場合に蛍光体粒子の密度分布に偏りが生じる推定メカニズムについて図1を参照しつつ説明する。図1は、コンプレッション成形時における成形装置の内部の状態を示す部分的な断面図である。
【0011】
成形装置は、真空吸着機構などによって基板10を保持する基板保持部110と、複数のキャビティ122を有する金型120と、ばね機構などにより上方に向けて付勢力が付与され且つ金型120の側面上を摺動し得る摺動部130とを含んでいる。LEDチップ20が搭載された基板10は、基板保持部110の基板保持面に保持されている。キャビティ122内に供給された蛍光体含有樹脂30は、基板10と金型120との間に挟まれた状態で加熱および加圧され、所定の成形時間が経過するまでこの状態が維持される。このとき、基板10の素子搭載面aと金型120の基準面b(キャビティ122の周囲に延在する平坦な面)との間には、微小な隙間100が形成される。隙間100は、コンプレッション成形において特有であり、蛍光体含有樹脂30は、隙間100を通じて金型120の全面に広がる。金型120の全面に広がった蛍光体含有樹脂30は、加熱によって流動し、蛍光体粒子32は隙間100内を移動する。隙間100の端部は摺動部材130によって塞がれており、樹脂の流れが停止または遅くなっている。このため、隙間100の端部に到来した蛍光体粒子は、移動速度が低下または停止し、隙間100の端部に滞留する。隙間100に充填された蛍光体含有樹脂30は、完成品において薄膜の層として残るので、蛍光体含有樹脂30の端部に蛍光体粒子の密度が高い領域が生じる。ゆえに、発光面内における発光色のむら(色温度ばらつき)が生じる結果となる。
【実施例1】
【0012】
以下に、本発明の実施例1に係る半導体発光装置の製造方法について図2〜図5を参照しつつ説明する。
【0013】
はじめに、LEDチップを搭載するための基板10を用意する。図2(a)は、基板10の構成を示す平面図、図2(b)は図2(a)における2b−2b線に沿った断面図である。基板10は、例えば、厚さ0.7mm、150mm×60mmのガラスエポキシ基板である。尚、基板10は、セラミック基板(基材:Al23、AlNなど)、メタルコア基板(基材:Cu、Alなど)であってもよい。基板10の素子搭載面aには例えばCu箔の上にAu/Ni/Cuめっきを施して構成される複数のダイパッド11およびボンディングパッド(図示せず)が形成されている。本実施例において、ダイパッド11は、4行×7列のグリッド状形に配列されるが、これに限定されるものではない。また、基板10の素子搭載面a上には、ダイパッド11の配列に沿って形成された突起部12が設けられている。突起部12は、基板10の最も外側に配置されたダイパッド(最外周ダイパッド)の各々と、これらに隣接する内周側のダイパッドの各々との間を伸長する環状パターンを有している。すなわち、突起部12は、基板10上において最外周ダイパッドよりも内側に配置されたダイパッドの各々を囲んでいる。突起部12の素子搭載面aからの高さは、例えば50μm、幅は100μm程度である。
【0014】
突起部12は、例えば以下のような方法で形成することができる。すなわち、突起部12は、例えば基板10の素子搭載面aに環状パターンとなるようにCuめっき処理を施すことにより形成することができる。また、突起部12は、基板10の素子搭載面aにエポキシ樹脂などからなるレジスト材を環状パターンとなるように印刷することにより形成することができる。また、突起部12は、基板10の素子搭載面aにシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの比較的粘度の高い白色樹脂をディスペンス法により環状パターンとなるように塗布した後、これを硬化させることにより形成することができる。また、突起部12は、基板10の素子搭載面aに環状パターンに成形されたセラミック部材またはプラスチック部材を接合することにより形成することができる。
【0015】
突起部12は、後述の蛍光体含有樹脂の供給工程において金型上に塗布される蛍光体含有樹脂の塗布領域に対応する領域(蛍光体含有樹脂のコンプレッション成形時において、基板10が金型上に塗布された蛍光体含有樹脂と最初に接触する領域)の外側に形成される。本実施例においては、蛍光体含有樹脂の供給領域に対応する領域を囲む形状・位置で突起部12を形成した。コンプレッション成形装置において基板10と金型120とを対向配置したときに、突起部12は、金型120の基準面b(キャビティ122の外側)と対向するような配置に形成される。
【0016】
次に、印刷またはディスペンスなど方法によりダイパッド11の各々にダイアタッチ材を形成した後、LEDチップ20を各ダイパッド11上にマウントする。ダイアタッチ材は、例えば白色のシリコーン系接着材を用いることができる。その後、例えば150℃、4時間の熱処理によってダイアタッチ材を硬化させる。本実施例においては、LEDチップ20は、ダイパッド11の配列に対応して4行×7列の形態で基板10上に配列されるが、これに限定されるものではない。LEDチップ20は例えば、厚さ0.12mm、0.5mm×0.3mmのGaN系半導体膜を含む青色LEDであり、チップ表面にn電極およびp電極を有する。尚、LEDチップのサイズや半導体膜の材料は適宜変更することが可能である。次に、ワイヤボンディングを行って、各LEDチップ20のn電極およびp電極と基板10上に形成されたボンディングパッドとをボンディングワイヤ22を介して電気的に接続する。図3(a)は、複数のLEDチップ20が搭載された基板10の平面図、図3(b)は図3(a)における3b−3b線に沿った断面図である。
【0017】
基板10上に搭載された2以上のLEDチップ20は、基板10上に形成された配線(図示せず)によって互いに直列または並列に接続されていてもよい。例えば、一列に並ぶ7つのLEDチップが互いに直列に接続されていてもよい。また、LEDチップ20の各々は基板10上において互いに電気的に分離されていてもよい。またLEDチップ20はフリップチップタイプのものであってもよい。この場合、各LEDチップはボンディングワイヤに代えて基板10上に形成された導体配線によって電気的に接続される。
【0018】
次に、液状の光透過性シリコーン樹脂と蛍光体粒子32とを混合した蛍光体含有樹脂30を用意する。蛍光体は、例えばYAG系蛍光体(黄色発光蛍光体:Y3Al5O12:Ce3+)を用いることができる。混合する蛍光体粒子の濃度は、発光色に応じて設定する。本実施例においては、発光色の色温度を5000K狙いとし、蛍光体粒子32の濃度を11.5重量%とした。また、本実施例において、平均粒径10.7μm±1.2μmの蛍光体粒子を使用した。蛍光体粒子の平均粒径が小さすぎると、所望の発光色を得るために樹脂に混合すべき蛍光体粒子の数が増大する。すると、蛍光体含有樹脂を通過する光の蛍光体粒子による吸収量が増大し、発光効率が低下する。従って、蛍光体粒子の平均粒径は例えば発光波長の約10倍である5μm以上であることが好ましい。また、光透過性樹脂としてエポキシ樹脂、ハイブリッド樹脂(エポキシ樹脂とシリコーン樹脂を混合したもの)、ウレタン樹脂を使用することも可能である。また、加熱した金型に樹脂を塗布した直後から樹脂が硬化してしまうことを防止するために、硬化抑制材を樹脂に混合することとしてもよい。蛍光体粒子は、上記したものの他、緑色発光蛍光体(Y3(Al,Ga)5O12:Ce3+)または赤色発光蛍光体(CaAlSiN3:Eu)などを用いることが可能である。
【0019】
次に、成形装置に付随する金型120を所定の成形温度(例えば115℃)に加熱する。金型120は、基板10上に配列されたLEDチップ20の配列形態に対応する4行×7列の形態で配列された半球状のキャビティ122を有する。キャビティ122の形状を半球状とすることにより、成形後の蛍光体含有樹脂30を配光制御用のレンズとして機能させることが可能となる。次に金型120の表面に各キャビティ122の表面形状に沿ってテフロンなどからなるリリースフィルムを貼り付ける。次に、金型120の表面に所定量の蛍光体含有樹脂30を塗布(供給)する。図4(a)は、蛍光体含有樹脂30が塗布された金型120の平面図、図4(b)は、図4(a)における4b−4b線に沿った断面図である。蛍光体含有樹脂30は、例えば金型120の表面中央の1箇所に塗布することとしてもよい(一点塗布)。
【0020】
次に、図5(a)に示すように、成形装置に付随する基板保持部110にLEDチップ20をマウントした基板10をセットして、成形装置の昇降機構(図示せず)によって基板10と金型120とが対向した状態でこれらを近接させる。このとき、基板10および金型120周囲が密閉空間となるように、成形装置は構成されている。続いて、真空ポンプにより上記密閉空間を減圧し、蛍光体含有樹脂30内に含まれる気泡を除去する(脱泡)。
【0021】
次に、図5(b)に示すように、成形装置の加圧機構(図示せず)によって金型120を上方に押し下げ、金型120を基板10に押し付ける。図5(c)は、図5(b)において破線で囲まれた領域の拡大図である。基板10に搭載されたLEDチップ20の各々は、各キャビティ122内に収容される。蛍光体含有樹脂30は、基板10との接触によって変形し、基板10の素子搭載面aと金型120の基準面b(各キャビティ122の周囲に延在する平坦な面)の間に形成された隙間100内に充填される。すなわち、蛍光体含有樹脂30は、隙間100を通ってキャビティ122の各々に供給され、基板10の素子搭載面上に広がる。換言すれば、基板10の素子搭載面aと金型120の基準面bとの間に隙間100の幅Lに対応する厚さの蛍光体含有樹脂の層(以下において薄膜部30aと称する)が形成される。尚、基準面bは、金型120の表面にリリースフィルムを貼り付けて成形を行う場合においては、実質的には、金型上に配置されたリリースフィルムの上面となる。
【0022】
基板10と金型120との間に形成される隙間100は、蛍光体含有樹脂30が塗布領域から金型120および基板10上に広がる際の流動経路となる。基板10上に形成された突起部12は、蛍光体含有樹脂30の流動経路である隙間100内に迫り出すように配置される。すなわち突起部12は、基準面bとの間に間隙を形成するように金型120の基準面bに対向配置される。これにより、突起部12の形成位置において蛍光体含有樹脂30の流動経路の幅が狭くなる。本実施例において、隙間100の幅Lは100μm程度に設定され、突起部12の素子搭載面aからの高さtは50μm程度に設定される。従って、突起部12の形成位置における蛍光体含有樹脂30の流動経路の幅は他の領域の約50%となる。突起部12は、金型中央の塗布領域から隙間100を通って金型端部に向かう蛍光体粒子32の移動を制限する障壁として機能する。これにより、蛍光体粒子の滞留が生じる金型120の端部(隙間100の端部)への蛍光体粒子32の供給量を抑制することができる。従って、蛍光体含有樹脂のコンプレッション成形時における蛍光体粒子32の密度分布の偏りが解消され、蛍光体含有樹脂30内において蛍光体粒子32を均一に分散させることが可能となる。尚、突起部12が蛍光体粒子の移動を抑制する障壁として有効に機能するためには、突起部12の高さtが、蛍光体粒子32の平均粒径よりも大きいことが好ましい。突起部12の高さtを変更することにより、隙間100内を流動する蛍光体粒子の端部への供給量を制御することが可能である。尚、突起部12と基準面bとの間の間隙の幅(L−t)は、蛍光体粒子32の平均粒径よりも大きくなるように突起部12の高さを設定する。隙間100の幅L(すなわち、薄膜部30aの厚さ)は、例えば蛍光体含有樹脂30の塗布量(供給量)によって制御することが可能である。すなわち、蛍光体含有樹脂30の塗布量をより多くすることにより基板10と金型120との間に介在する蛍光体含有樹脂30の体積が増加するため、隙間100の幅Lを大きくすることができる。蛍光体含有樹脂30の塗布量は0.01g単位で制御することが可能である。尚、隙間100の幅Lは、コンプレッション成形の機構上の制限から例えば50μm以上に設定され、材料コストの観点から例えば200μm以下とすることが好ましい。
【0023】
成形装置は、基板10と金型120との間に蛍光体含有樹脂の薄膜部30aを挟んだ状態で、蛍光体含有樹脂30に熱と圧力を加える。本コンプレッション成形工程において、成形温度は例えば115℃、成形圧力は例えば30kgf/cm2、成形時間は例えば300秒、真空保持時間は例えば7.0秒に設定される。
【0024】
蛍光体含有樹脂30のコンプレッション成形が完了した後、加熱および圧力印加を停止させ、成形装置の昇降機構によって基板保持部110を上昇させ、仮硬化した蛍光体含有樹脂30をリリースフィルムとともに金型120から剥離する。その後、蛍光体含有樹脂30が接合された基板10を例えば150℃の恒温槽に搬入し、4時間の熱処理を行って、蛍光体含有樹脂30を本硬化させる。その後、必要に応じて基板10を任意の構成単位毎に分割する。例えば、発光装置は、単一のLEDチップにより構成されていてもよく、ライン状またはグリッド状に並ぶ2以上のLEDチップにより構成されていてもよい。
【0025】
図6(a)は、以上の各工程を経て作製された本発明の実施例に係る半導体発光装置1の構成を示す平面図、図6(b)は図6(a)における6b−6b線に沿った断面図である。半導体発光装置1において、基板10上に搭載された複数のLEDチップ20の各々が半球状に成形された蛍光体含有樹脂30によって封止されている。蛍光体含有樹脂30は、配光制御用のレンズとして機能する。コンプレッション成形時において基板10の素子搭載面aと金型120の基準面bとの間の隙間100に蛍光体含有樹脂が充填されることによって形成された蛍光体含有樹脂の薄膜部30aが基板10上を覆っている。突起部120は、基板10上において最も外側のLEDチップの各々と、これらに隣接するLEDチップ間の中央を通って伸長する環状パターンを有し且つ薄膜部30aに埋設される。突起部12の形成位置において蛍光体粒子の密度が若干高くなる場合があるが、突起部120を互いに隣接するLEDチップ間の中央に配置することにより、発光面内における発光色の均一性に対する影響を最小限にすることができる。
【0026】
このように、本実施例に係る半導体発光素子の製造方法によれば、基板10上に設けられた突起部12は、金型中央の塗布領域から隙間100を通って金型端部に向かう蛍光体粒子32の移動を制限する障壁として機能する故、蛍光体粒子の滞留が生じやすい金型端部(隙間100の端部)への蛍光体粒子32の供給量を抑制することができる。従って、コンプレッション成形時において蛍光体粒子32の密度分散の均一化を図ることが可能となる。これにより、基板10上に複数のLEDチップを搭載した半導体発光装置1において、発光面内における発光色のむら(色温度差)を低減することが可能となる。また、基板10をLEDチップ毎に分割して製造される発光装置においては、発光装置間の発光色のばらつきを防止することが可能となり、歩留りが向上する。
【実施例2】
【0027】
図7(a)は、突起部のパターンが改変された本発明の実施例2に係る基板10aの構成を示す平面図、図7(b)は図7(a)における7b−7b線に沿った断面図である。尚、図7(a)において、金型上の蛍光体含有樹脂の塗布領域に対応する領域Aが破線で示されている。
【0028】
基板10aの素子搭載面aにはグリッド状に配列された複数のダイパッド11が形成されている。基板10aの素子搭載面a上には、ダイパッド11の配列に沿って形成された突起部が設けられている。突起部は、領域Aを囲む環状パターンを有する第1の部分12aと、第1の部分12aの外側に配置され且つ環状パターンを有する第2の部分12bとにより構成される。すなわち、第1の部分12aおよび第2の部分12bは、いずれも基板10a上の領域Aの外側に設けられている。第2の部分12bは、基板10aの最も外側に配置されたダイパッド(最外周ダイパッド)の各々とこれらに隣接するダイパッドの各々との間を伸長している。このように、本実施例に係る基板10a上の突起部は、互いに不連続である第1の部分12aおよび第2の部分12bからなる2重の環状パターンを有する。領域Aは、蛍光体含有樹脂のコンプレッション成形時において、基板10aが金型上に塗布された蛍光体含有樹脂と最初に接触する領域である。第1の部分12aおよび第2の部分12bはいずれも互いに隣接するダイパッド11の間の中央を通って伸長している。突起部の第1の部分12aの素子搭載面aからの高さは、第2の部分12bのそれよりも高くなっている。
【0029】
基板10aを用いた半導体発光装置の製造方法は、上記した実施例1と同様である。図7(c)は、蛍光体含有樹脂30の圧縮成形時の状態を示す断面図である。基板10aと金型120との間に形成される隙間100は、蛍光体含有樹脂30が塗布領域から金型120および基板10a上を広がる際の流動経路となる。基板10a上に形成された突起部の第1の部分12aと第2の部分12bは、蛍光体含有樹脂30の流動経路である隙間100内に迫り出すように配置される。すなわち突起部の第1の部分12aと第2の部分12bは、金型120の基準面bと対向するように配置される。
【0030】
これにより、突起部の第1の部分12aと第2の部分12bの形成位置において蛍光体含有樹脂30の流動経路の幅が狭くなる。基板10aの内側に配置される突起部の第1の部分12aの高さが比較的高い故、蛍光体含有樹脂30の塗布領域から第1の部分12aの環状パターンの外側に向かう蛍光体粒子32の量が制限され、第1の部分12aの環状パターンの内側と外側で蛍光体粒子の密度が概ね均一となる。更に、比較的高さの低い突起部の第2の部分12bによって滞留が生じやすい金型端部への蛍光体粒子32の供給が抑制される。このように、基板10aに蛍光体含有樹脂の塗布領域に対応する領域Aを囲む2重の環状パターンを有する突起部を設けることにより、蛍光体含有樹脂のコンプレッション成形時において、蛍光体粒子の移動を2段階で制御することができるので、樹脂内における蛍光体粒子の密度分布の均一性をより高めることが可能となる。尚、本実施例においては、突起部の第1の部分12aの高さが第2の部分12bの高さよりも高い場合を示したが、蛍光体粒子の均一分散が達成される限り、第2の部分の高さが第1の部分12aの高さよりも高くてもよいし、これらの高さは同一であってもよい。また、2重の環状パターンの配置は、基板の大きさ、ダイパッドの数や配置に応じて適宜変更することが可能である。
【実施例3】
【0031】
図8(a)は、突起部のパターンが改変された本発明の実施例3に係る基板10bの構成を示す平面図である。図8(b)は、蛍光体含有樹脂30が塗布された金型120の平面図である。本実施例において、蛍光体含有樹脂30は、金型120の表面中央部を挟む2箇所に塗布される(多点塗布)。尚、図8(a)において、金型上の蛍光体含有樹脂の塗布領域に対応する領域Aおよび領域Bが破線で示されている。
【0032】
基板10bの素子搭載面aにはグリッド状に配列された複数のダイパッド11が形成されている。基板10bの素子搭載面a上には、ダイパッド11の配列に沿って形成された突起部が設けられている。突起部は、図8(b)に示す金型上の2つの塗布領域に対応する領域Aおよび領域Bをそれぞれ囲むように形成された互いに不連続な第1の部分12cと第2の部分12dとを有する。すなわち、第1の部分12cおよび第2の部分12dは、それぞれ、領域Aおよび領域Bの外側に設けられる。領域Aおよび領域Bは、蛍光体含有樹脂のコンプレッション成形工程において、基板10bが金型120上に塗布された蛍光体含有樹脂30と最初に接触する領域である。第1の部分12aおよび第2の部分12bはいずれも互いに隣接するダイパッドの間の中央を通って伸長している。基板10bを使用した半導体発光装置の製造方法は、上記した実施例1の場合と同様である。
【0033】
このように、金型120上における蛍光体含有樹脂30の複数の塗布領域に対応したパターンの突起部を基板上に設けることにより、各塗布領域から金型の全面に広がる蛍光体粒子の移動を制限することが可能となる故、上記した実施例1および2の場合と同様、樹脂内における蛍光体粒子の密度分布を均一とすることができ、発光面内における発光色のむらを解消することが可能となる。
【実施例4】
【0034】
図9(a)は、突起部のパターンが改変された本発明の実施例4に係る基板10cの構成を示す平面図である。図9(b)は、蛍光体含有樹脂30が塗布された金型120の平面図である。本実施例において、蛍光体含有樹脂30は、金型120のキャビティ122の配列に沿ってライン状に塗布される。尚、図9(a)において、金型上の蛍光体含有樹脂の塗布領域に対応する領域Aが破線で示されている。
【0035】
基板10cの素子搭載面aにはグリッド状に配列された複数のダイパッド11が形成されている。基板10cの素子搭載面a上には、ダイパッド11の配列に沿って形成された突起部が設けられている。突起部は、領域Aの長手方向に沿って伸長し且つ領域Aを間に挟むように互いに平行となるように配置された直線状パターンを有する第1の部分12eおよび第2の部分12fにより構成される。領域Aは、蛍光体含有樹脂のコンプレッション成形工程において、基板10cが金型120上に塗布された蛍光体含有樹脂30と最初に接触する領域である。突起部の第1の部分12eおよび第2の部分12fは、互いに隣接するダイパッドの間の中央を通って伸長している。基板10cを使用した半導体発光装置の製造方法は、上記した実施例1の場合と同様である。
【0036】
このように、金型120上における蛍光体含有樹脂30の塗布形状に対応したパターンの突起部を基板上に設けることにより、塗布領域から金型の全面に広がる蛍光体粒子の移動を制限することが可能となる故、上記した実施例1乃至3の場合と同様、樹脂内における蛍光体粒子の密度分布を均一とすることができ、発光面内における発光色のむらを解消することが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
10、10a、10b、10c 基板
12、12a、12b、12c、12d、12e、12f 突起部
20 LEDチップ
30 蛍光体含有樹脂
32 蛍光体粒子
100 隙間
120 金型
122 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の素子搭載面に複数の発光素子を搭載する工程と、
前記基板上における前記複数の発光素子の配列に対応して配列された複数のキャビティを基準面に有する金型に蛍光体粒子を含む蛍光体含有樹脂を供給する工程と、
前記発光素子の各々が前記キャビティの各々に収容され且つ前記素子搭載面と前記基準面とが前記蛍光体含有樹脂を間に挟んで密着するように前記金型を前記基板に押し付けて前記蛍光体含有樹脂を圧縮成形する工程と、を含み、
前記基板は、前記素子搭載面上であって前記蛍光体含有樹脂の供給領域に対応する領域の外側に前記複数の発光素子の配列方向に沿って伸長する突起部を有し、
前記圧縮成形する工程において、前記突起部は、前記基準面との間に間隙を有して前記基準面と対向していることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記突起部は、互いに隣接する発光素子間の中央を通って伸長していることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記突起部の前記素子搭載面からの高さは、前記蛍光体粒子の平均粒径よりも大であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項4】
前記突起部は、前記蛍光体含有樹脂の供給領域に対応する領域を囲む環状をなしていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項5】
前記発光素子は前記素子搭載面上に格子状に配列され、前記突起部は最も外側に配置される発光素子の各々と、これらに隣接する発光素子の各々との間を伸長していることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記突起部は、前記蛍光体含有樹脂の供給領域に対応する領域を囲む環状をなす第1の部分と、前記第1の部分の外周を囲む環状をなす第2の部分を有し、前記第1の部分の前記素子搭載面からの高さは、前記第2の部分の前記素子搭載面からの高さよりも大きいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項7】
前記蛍光体含有樹脂は前記金型の複数の領域に供給され、
前記突起部は、前記蛍光体含有樹脂の供給領域の各々に対応する領域を囲む複数の環状をなす部分からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項8】
前記蛍光体含有樹脂は前記金型上において塗布形状がライン状となるように供給され、
前記突起部は、前記蛍光体含有樹脂の供給領域に対応する領域を挟むように平行に配置された一対の直線状パターンを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−33808(P2013−33808A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168399(P2011−168399)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】