説明

半導体発光装置ウェーハおよび半導体発光装置の製造方法

【課題】色度のばらつきを抑制することができる半導体発光装置および半導体発光装置の製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明の実施態様によれば、複数の半導体発光装置が一括形成された半導体発光装置ウェーハであって、発光部と、波長変換部と、を備えた半導体発光装置ウェーハが提供される。前記発光部は、第1の主面と、前記第1の主面とは反対側の第2の主面と、を有する。前記波長変換部は、前記第1の主面側に設けられ、蛍光体を含有する。前記波長変換部の厚さは、前記発光部から出射する光の前記ウェーハの面内における波長及び強度の少なくともいずれかの分布に基づいて変化してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光装置ウェーハおよび半導体発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子と、蛍光体などの波長変換作用を有する部材と、を組み合わせた半導体発光装置がある。例えば、窒化ガリウム(GaN)などのIII族窒化物半導体を用い、高輝度の青色光を発光する半導体発光素子がある。そして、青色光を発光する半導体発光素子と、波長変換可能な蛍光体を含む波長変換部と、を組み合わせることで白色光を出射させることができる。このような白色光を出射する半導体発光装置の波長変換部は、青色光を発光する半導体発光素子が複数形成されたウェーハ上に波長変換可能な蛍光体を含む樹脂を単に塗布または滴下し、これを硬化させることにより形成することができる。
ところが、半導体発光装置に設けられた発光部から出射する光の波長がばらついたり、蛍光体を含む樹脂の厚さがばらついた場合には、半導体発光装置の色度が変動するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−303154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、色度のばらつきを抑制することができる半導体発光装置ウェーハおよび半導体発光装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施態様によれば、複数の半導体発光装置が一括形成された半導体発光装置ウェーハであって、発光部と、波長変換部と、を備えた半導体発光装置ウェーハが提供される。前記発光部は、第1の主面と、前記第1の主面とは反対側の第2の主面と、を有する。前記波長変換部は、前記第1の主面側に設けられ、蛍光体を含有する。前記波長変換部の厚さは、前記発光部から出射する光の前記ウェーハの面内における波長及び強度の少なくともいずれかの分布に基づいて変化してなる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の実施の形態にかかる半導体発光装置ウェーハを表す模式図である。
【図2】本実施形態にかかる半導体発光装置を表す断面模式図である。
【図3】発光部から出射した光のウェーハ面内における波長分布の一例を例示する平面模式図である。
【図4】発光部から出射する光の波長と、半導体発光装置から放出される光の色度(Cy)と、の関係の一例を表すグラフ図である。
【図5】波長変換部の厚み寸法と、半導体発光装置から放出される光の色度(Cy)と、の関係の一例を表すグラフ図である。
【図6】比較例にかかる半導体発光装置の製造方法により形成された波長変換部の厚み寸法と、ウェーハ面内の径方向位置と、の関係の一例を表すグラフ図である。
【図7】本発明の実施の形態にかかる半導体発光装置の製造方法を表すフローチャート図である。
【図8】本実施形態にかかる半導体発光装置の製造方法を表す断面模式図である。
【図9】本実施形態にかかる半導体発光装置の製造方法を表す断面模式図である。
【図10】本実施形態にかかる半導体発光装置の製造方法を表す断面模式図である。
【図11】本発明の他の実施の形態にかかる半導体発光装置の製造方法を表すフローチャート図である。
【図12】本実施形態にかかる半導体発光装置の製造方法を表す断面模式図である。
【図13】本実施形態にかかる半導体発光装置の製造方法により形成された波長変換部の厚み寸法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる半導体発光装置ウェーハを表す模式図である。
また、図2は、本実施形態にかかる半導体発光装置を表す断面模式図である。
また、図3は、発光部から出射した光のウェーハ面内における波長分布の一例を例示する平面模式図である。
【0008】
なお、図1(a)は、複数の半導体発光装置が一括形成された半導体発光装置ウェーハを表す平面模式図である。図1(b)は、半導体発光装置ウェーハの一部を拡大して表した拡大模式図である。図1(c)は、半導体発光装置ウェーハのうちの2つの半導体発光装置を表す断面模式図であり、図1(b)に表した矢視Aの方向にみたときの2つの半導体発光装置を表す断面模式図である。
【0009】
本実施形態にかかる半導体発光装置1の製造方法では、図1(a)〜図1(c)に表したように、複数の半導体発光装置1が半導体発光装置ウェーハ(以下、単に「ウェーハ」と省略することもある)10上に一括形成すなわち一体的に形成された後、各半導体発光装置1が個片化される。これにより、半導体発光装置1の生産性を向上できる。また、パッケージに半導体発光素子をマウントした従来の半導体発光装置と比較して、飛躍的な小型化や、薄型化、軽量化が可能となる。なお、ウェーハ10上に一括形成される複数の半導体発光装置1の個数は、図1(a)に表した半導体発光装置1の個数に限定されるわけではない。
【0010】
図2に表したように、本実施形態にかかる半導体発光装置1は、発光部20と、波長変換部40と、第1の電極部50と、第1の導電部60と、第1の接続部材70と、第2の電極部80と、第2の導電部90と、第2の接続部材110と、絶縁部120と、封止部130と、第1の配線部140と、第2の配線部150と、接合部160と、絶縁部170と、を備える。
【0011】
発光部20は、第1の半導体層21と、第2の半導体層22と、活性層23と、を有する。また、発光部20は、第1の主面25と、第1の主面25とは反対側の第2の主面27と、を有する。
【0012】
複数の発光部20がウェーハ10上に一括形成される場合には、形成過程において例えば、活性層23の組成や厚み寸法などにばらつきが生ずる場合がある。活性層23の組成や厚み寸法などにばらつきが生ずると、発光部20から出射する光の波長や強度などの発光特性が変動する。そのため、図3に表したように、発光部20から出射する光の波長や強度がウェーハ10の面内においてばらつく場合がある。
【0013】
図3に表した平面模式図では、ウェーハ10上に一括形成された複数の発光部20から出射された光の波長が等高線で表されている。図3に表した波長λd1、λd2、λd3、λd4の関係は、例えば次の式(1)に表した如くである。

λd1<λd2<λd3<λd4 ・・・(1)

このように、発光部20から出射する光の波長がウェーハ10の面内において分布を有すると、波長変換部40に含まれる蛍光体の割合が一定であっても、ウェーハ10の面内において半導体発光装置1から放出される白色光の色度にばらつきが生ずる。そのため、ウェーハ10の面内における良品としての半導体発光装置1の取れ高(良品の個数あるいは歩留まり)を向上させることが困難となる場合がある。
【0014】
また、ウェーハ10上に一括形成された複数の発光部20から出射される光の波長や強度が一定であっても、あるいは波長変換部40に含まれる蛍光体の割合が一定であっても、波長変換部40の厚み寸法にばらつきが生ずると、ウェーハ10の面内において半導体発光装置1から放出される白色光の色度にばらつきが生ずる。そのため、ウェーハ10の面内における良品としての半導体発光装置1の取れ高を向上させることが困難となる場合がある。なお、発光部20から出射する光の波長と色度との関係、および波長変換部40の厚さと色度との関係については、後に詳述する。
【0015】
これに対して、本実施形態にかかる半導体発光装置1の製造方法では、製造過程において例えば波長変換部40(蛍光体が混合された樹脂など)に押し当てる図示しない印刷版と、図示しない基板または発光部20の第1の主面25もしくは第2の主面27と、の間の距離を調整することにより、波長変換部40の厚さを調整する。そのため、波長変換部40の厚み寸法のばらつきを抑制することができる。これにより、ウェーハ10の面内における白色光の色度のばらつきを抑制することができる。また、ウェーハ10の面内における良品としての半導体発光装置1の取れ高を向上させることができる。
【0016】
また、本実施形態にかかる半導体発光装置1の製造方法では、ウェーハ10上に一括形成される複数の半導体発光装置1の波長変換部40の厚さを、発光部20から出射する光の波長や強度などに基づいてそれぞれ調整する。例えば、図3に表した波長分布に基づいて、ウェーハ10上に一括形成される複数の半導体発光装置1の波長変換部40の厚さをそれぞれ調整する。これにより、ウェーハ10の面内における白色光の色度のばらつきを抑制することができる。また、ウェーハ10の面内における良品としての半導体発光装置1の取れ高を向上させることができる。すなわち、本実施形態によれば、図1(c)に表したように、ウェーハ10上に一括形成された複数の半導体発光装置1の波長変換部40の厚さは、発光部20から出射する光の波長などに基づいて互いに異なる場合がある。本実施形態にかかる半導体発光装置1の製造方法については、後に詳述する。
【0017】
次に、本実施形態にかかる半導体発光装置1について、図2を参照しつつさらに説明する。
前述したように、発光部20は、第1の半導体層21と、第2の半導体層22と、活性層23と、を有する。また、発光部20は、第1の主面25と、第1の主面25とは反対側の第2の主面27と、を有する。
【0018】
第1の半導体層21は、例えばn形の窒化物半導体などにより形成されている。第2の半導体層22は、例えばp形の窒化物半導体などにより形成されている。窒化物半導体としては、例えば、GaN(窒化ガリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)、InGaN(窒化インジウムガリウム)などが挙げられる。
【0019】
活性層23は、第1の半導体層21と第2の半導体層22との間に設けられている。
活性層23は、例えば、正孔および電子が再結合して光を発生する井戸層と、井戸層よりも大きなバンドギャップを有する障壁層(クラッド層)と、を含む量子井戸構造などを有するものとしてもよい。この場合、活性層23は、単一量子井戸(SQW;Single Quantum Well)構造を有してもよいし、多重量子井戸(MQW;Multiple Quantum Well)構造を有してもよい。また、活性層23は、複数の単一量子井戸構造が積層された構造を有してもよい。
【0020】
単一量子井戸構造としては、例えば、GaN(窒化ガリウム)を有する障壁層と、InGaN(窒化インジウムガリウム)を有する井戸層と、GaN(窒化ガリウム)を有する障壁層と、がこの順で積層された構造などが挙げられる。
多重量子井戸構造としては、例えば、GaN(窒化ガリウム)を有する障壁層と、InGaN(窒化インジウムガリウム)を有する井戸層と、GaN(窒化ガリウム)を有する障壁層と、InGaN(窒化インジウムガリウム)を有する井戸層と、GaN(窒化ガリウム)を有する障壁層と、がこの順で積層された構造などが挙げられる。
この場合、第1の半導体層21が障壁層として機能してもよい。
なお、活性層23は、量子井戸構造を有するものに限定されるわけではなく、発光可能な構造を適宜有することができる。
また、第1の半導体層21、第2の半導体層22、活性層23の材料は、窒化物半導体には限定されず、その他、各種の半導体材料を用いることができる。
【0021】
発光部20は、例えば、ピークの発光波長が約380nm〜530nm程度の発光ダイオードなどである。また、発光部20は、例えば、発光波長の帯域が約350nm〜600nm程度の発光ダイオードなどであってもよい。あるいは、発光部20の発光波長は、600nmよりも長くてもよい。
【0022】
波長変換部40は、発光部20の第1の主面25の側に設けられている。波長変換部40は、例えば、波長変換可能な蛍光体と、蛍光体と混合された媒体と、を有する。媒体としては、樹脂などの有機材料や、ガラスなどの無機材料を用いることができる。蛍光体は、例えば粒子状である。
【0023】
波長変換部40は、例えば、440nm以上470nm以下(青色)、500nm以上555nm以下(緑色)、560nm以上580nm以下(黄色)、600nm以上670nm以下(赤色)にピークの発光波長を持つ蛍光体の少なくとも1つ以上を含む。あるいは、波長変換部40は、例えば、発光波長の帯域が380nm〜720nmの蛍光体を含む。
【0024】
蛍光体は、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、燐(P)、ホウ素(B)、イットリウム(Y)、アルカリ土類元素、硫化物元素、希土類元素、窒化物元素よりなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む。
【0025】
赤色の蛍光を発する蛍光体の材料としては、例えば以下が挙げられる。ただし、実施形態に用いられる赤色の蛍光を発する蛍光体は、これらに限定されるわけではない。
S:Eu、
S:Eu+顔料、
:Eu、
Zn(PO:Mn、
(Zn,Cd)S:Ag+In
(Y,Gd,Eu)BO
(Y,Gd,Eu)
YVO:Eu、
LaS:Eu,Sm、
LaSi:Eu2+
α−sialon:Eu2+
CaAlSiN:Eu2+
CaSiN:Eu2+
CaSiN:Ce2+
Si:Eu2+
CaAlSiN:Eu2+
(SrCa)AlSiN:EuX+
Sr(SiAl(ON):EuX+
緑色の蛍光を発する蛍光体の材料としては、例えば以下が挙げられる。ただし、実施形態に用いられる緑色の蛍光を発する蛍光体は、これらに限定されるわけではない。
ZnS:Cu,Al、
ZnS:Cu,Al+顔料、
(Zn,Cd)S:Cu,Al、
ZnS:Cu,Au,Al,+顔料、
Al12:Tb、
(Al,Ga)12:Tb、
SiO:Tb、
ZnSiO:Mn、
(Zn,Cd)S:Cu、
ZnS:Cu、
ZnSiO:Mn、
ZnS:Cu+ZnSiO:Mn、
GdS:Tb、
(Zn,Cd)S:Ag、
ZnS:Cu,Al、
S:Tb、
ZnS:Cu,Al+In
(Zn,Cd)S:Ag+In
(Zn,Mn)SiO
BaAl1219:Mn、
(Ba,Sr,Mg)O・aAl:Mn、
LaPO:Ce,Tb、
ZnSiO:Mn、
ZnS:Cu、
3(Ba,Mg,Eu,Mn)O・8Al
La・0.2SiO・0.9P:Ce,Tb、
CeMgAl1119:Tb、
CaSc:Ce、
(BrSr)SiO:Eu、
α−sialon:Yb2+
β−sialon:Eu2+
(SrBa)YSi:Eu2+
(CaSr)Si:Eu2+
Sr(SiAl)(ON):Ce
青色の蛍光を発する蛍光体の材料としては、例えば以下が挙げられる。ただし、実施形態に用いられる青色の蛍光を発する蛍光体は、これらに限定されるわけではない。
ZnS:Ag、
ZnS:Ag+顔料、
ZnS:Ag,Al、
ZnS:Ag,Cu,Ga,Cl、
ZnS:Ag+In
ZnS:Zn+In
(Ba,Eu)MgAl1017
(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO)6Cl:Eu、
Sr10(PO)6Cl:Eu、
(Ba,Sr,Eu)(Mg,Mn)Al1017
10(Sr,Ca,Ba,Eu)・6PO・Cl
BaMgAl1625:Eu
黄色の蛍光を発する蛍光体の材料としては、例えば以下が挙げられる。ただし、実施形態に用いられる黄色の蛍光を発する蛍光体は、これらに限定されるわげではない。
Li(Eu,Sm)W
(Y,Gd),(Al,Ga)12:Ce3+
LiSrSiO:Eu2+
(Sr(Ca,Ba))SiO:Eu2+
SrSiON2.7:Eu2+
黄緑色の蛍光を発する蛍光体の材料としては、例えば以下が挙げられる。ただし、実施形態に用いられる黄緑色の蛍光を発する蛍光体は、これに限定されるわけではない。
SrSiON2.7:Eu2+
蛍光体の混合比率を少なくすると色調が青色に近づき(色温度10000K付近)、蛍光体の混合比率を多くすると色調が黄色に近づく(色温度6500K〜2800K)。なお、混合する蛍光体は1種類である必要はなく、複数種類の蛍光体が混合されるようにしてもよい。例えば、赤色の蛍光を発する蛍光体と、緑色の蛍光を発する蛍光体と、青色の蛍光を発する蛍光体と、黄色の蛍光を発する蛍光体と、黄緑色の蛍光を発する蛍光体と、が混合されるようにしてもよい。また、青味がかった白色光、黄味がかった白色光などのように色味を変えるために複数種類の蛍光体の混合割合を変えるようにすることもできる。
【0026】
蛍光体が混合される樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、環状ポリオレフィン(COP)、脂環式アクリル(OZ)、アリルジグリコールカーボネート(ADC)、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂とエポキシ樹脂とのハイブリット樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。蛍光体が混合される樹脂の屈折率は、蛍光体の屈折率以下であることがより好ましい。また、発光部20から出射する光に対する樹脂の透過率は、90%以上であることがより好ましい。
【0027】
発光部20から出射する光が、波長の短い紫外から青色の光であり輝度が高い場合には、波長変換部40を形成する樹脂が劣化するおそれがある。そのため、波長変換部40を形成する樹脂は、青色光などによる劣化が生じにくい性質を有することがより好ましい。青色光などによる劣化が生じにくい樹脂としては、例えば、屈折率が1.5程度のメチルフェニルシリコーン、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーンとエポキシ樹脂とのハイブリット樹脂などが挙げられる。ただし、蛍光体が混合される樹脂としては、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。またさらに、樹脂のかわりに糖類のような有機物や、ガラスなどの無機物を用いてもよい。
【0028】
第1の電極部50は、接合部51と、導電部53と、を有する。導電部53は、接合部51および接合部160を介して第1の半導体層21に電気的に接続されている。接合部51は、例えば、Ni(ニッケル)/Au(金)の二重層などを有する。この場合、例えば、Ni(ニッケル)層の厚み寸法は、約1μm程度であり、Au(金)層の厚み寸法は、約1μm程度である。導電部53は、例えば、Cu(銅)などにより形成されている。なお、接合部51および導電部53の材料や厚み寸法は、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0029】
第1の導電部60は、封止部130の凹部131の底面と、封止部130の端面と、の間を貫通するようにして設けられている。第1の導電部60は、例えば、円柱状を呈し、Cu(銅)などの金属材料などにより形成されている。また、第1の導電部60の一方の端部は、導電部53と電気的に接続されている。これにより、第1の電極部50を介して、第1の導電部60と、第1の半導体層21と、が電気的に接続されている。なお、第1の導電部60の形状および材料などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0030】
第1の接続部材70は、封止部130から露出する第1の導電部60の端面を覆うようにして設けられている。第1の接続部材70は、例えばいわゆるはんだバンプなどである。第1の接続部材70がはんだバンプである場合には、第1の接続部材70の形状は、例えば半球形などを有し、第1の接続部材70の材料は、例えば表面実装に使用されるはんだ材料などである。この場合、表面実装に使用されるはんだ材料としては、例えば、Sn−3.0Ag−0.5Cuはんだ、Sn−0.8Cuはんだ、Sn−3.5Agはんだなどが挙げられる。
【0031】
なお、第1の接続部材70の形状および材料などは、例示をしたものに限定されるわけではなく、半導体発光装置1を実装する方法などに応じて適宜変更することができる。例えば、第1の接続部材70の形状は、例えば薄膜状などを有し、例えばNi(ニッケル)/Au(金)の二重層などを有する。また、第1の接続部材70は、必ずしも必要ではなく、半導体発光装置1を実装する方法などに応じて適宜設けることができる。
【0032】
第2の電極部80は、接合部81と、導電部83と、を有する。導電部83は、接合部81を介して第2の半導体層22に電気的に接続されている。接合部81および導電部83の形状や構造や材料などは、前述した接合部51および導電部53の形状や構造や材料などとそれぞれ同様である。
【0033】
第2の導電部90は、封止部130の凹部131の底面と、封止部130の端面と、の間を貫通するようにして設けられている。また、第2の導電部90の一方の端部は、導電部83と電気的に接続されている。これにより、第2の電極部80を介して、第2の導電部90と、第2の半導体層22と、が電気的に接続されている。第2の導電部90の形状や構造や材料などは、前述した第1の導電部60の形状や構造や材料などと同様である。
【0034】
第2の接続部材110は、封止部130から露出する第2の導電部90の端面を覆うようにして設けられている。第2の接続部材110の形状や構造や材料などは、前述した第1の接続部材70の形状や構造や材料などと同様である。なお、第2の接続部材110は、第1の接続部材70と同様に、必ずしも必要ではなく、半導体発光装置1を実装する方法などに応じて適宜設けるようにすればよい。
【0035】
絶縁部120は、封止部130に設けられた凹部131を埋め込むようにして設けられている。絶縁部120は、絶縁材料から形成されている。例えば、絶縁部120は、SiOなどの無機材料や、樹脂などから形成されている。この場合、発光部20から出射する光が、波長の短い紫外から青色の光であり輝度が高い場合には、絶縁部120を形成する樹脂が劣化するおそれがある。そのため、絶縁部120が樹脂から形成される場合には、絶縁部120を形成する樹脂は、青色光などによる劣化が生じにくい性質を有することかより好ましい。青色光などによる劣化が生じにくい樹脂としては、例えば、屈折率が1.5程度のメチルフェニルシリコーン、ジメチルシリコーンなどが挙げられる。
【0036】
封止部130は、第2の主面27側に設けられ、第1の導電部60の端部および第2の導電部90の端部を露出させつつ第1の導電部60および第2の導電部90を封止する。封止部130は、例えば熱硬化性樹脂などから形成される。封止部130は、発光部20と、第1の電極部50と、第2の電極部80と、を封止する役割を有している。なお、封止部130と絶縁部120とは、一体的に形成されていてもよい。
【0037】
第1の配線部140は、接合部141と、導電部143と、を有する。導電部143は、接合部141を介して第1の半導体層21に電気的に接続されている。接合部141および導電部143の形状や構造や材料などは、前述した接合部51および導電部53の形状や構造や材料などとそれぞれ同様である。第1の配線部140は、必ずしも必要ではなく、必要に応じて適宜設けるようにすることができる。
【0038】
第2の配線部150は、接合部151と、導電部153と、を有する。導電部153は、接合部151を介して第1の半導体層21に電気的に接続されている。接合部151および導電部153の形状や構造や材料などは、前述した接合部51および導電部53の形状や構造や材料などとそれぞれ同様とすることができる。第2の配線部150は、第1の配線部140と同様に、必ずしも必要ではなく、必要に応じて適宜設けるようにすることができる。
【0039】
接合部160は、第1の電極部50と、第1の半導体層21と、の間に設けられている。接合部160は、例えば、Cu(銅)などにより形成されている。なお、接合部160は、必ずしも必要ではなく、必要に応じて適宜設けるようにすることができる。
【0040】
絶縁部170は、活性層23および第2の半導体層22の側面を覆うようにして設けられている。絶縁部170は、絶縁材料から形成されている。絶縁部170の材質は、例えば、絶縁部120の材料と同じである。また、絶縁部170と絶縁部120とは、一体的に形成されていてもよい。
【0041】
図4は、発光部から出射する光の波長と、半導体発光装置から放出される光の色度(Cy)と、の関係の一例を表すグラフ図である。
ここでは、発光部20が青色光を放出し、波長変換部40には、青色光を吸収して緑色光を放出する蛍光体と、青色光を吸収して赤色光を放出する蛍光体と、が分散されている場合を例示した。すなわち、半導体発光装置からは赤色光と緑色光と青色光とが混合した白色光が放出される。図4の縦軸は、この白色光の色度(Cy)を表す。
【0042】
発光部20は、例えば、エピタキシャル成長法などを用いて形成される。図1〜図3に関して前述したように、複数の発光部20がウェーハ10上に一括形成される場合には、形成過程において例えば、活性層23の組成や厚み寸法にばらつきが生ずる場合がある。活性層23の組成や厚み寸法にばらつきが生ずると、発光部20から出射する光の波長や強度などの発光特性が変動する。この場合、波長変換部40に含まれる蛍光体の量が一定であると、半導体発光装置から放出される赤色光と緑色光と青色光のバランスが変化してしまう。すなわち、図4に表したように、発光部20から出射する光の波長や強度の変化に応じて、白色光の色度が変化してしまう。
【0043】
図4に例示したような実験結果によれば、発光部20から出射する光の波長λdの変化Δλdが約1.0nm(ナノメートル)程度である場合には、半導体発光装置1から放出される白色光の色度Cyの変化ΔCyは、約0.015程度である。本発明者の得た知見によれば、白色光の色度Cyの変化ΔCyが0.015よりも大きくなると、ヒトの視覚によって色度ずれ(色むら)として認識されるおそれがある。
【0044】
これに対して、本実施形態にかかる半導体発光装置1の製造方法によれば、例えば活性層23の組成や厚み寸法にばらつきが生ずることで発光部20から出射する光の波長や強度がウェーハ10の面内においてばらついても、波長変換部40の厚さは、発光部20から出射する光の波長や強度に基づいて調整される。つまり、ウェーハ10上に一括形成される複数の半導体発光装置1の波長変換部40の厚さは、発光部20から出射する光のウェーハ10の面内における波長分布に基づいて調整される。これにより、ウェーハ10の面内における白色光の色度のばらつきを抑制し、ウェーハ10の面内における色度ずれを抑制することができる。また、ウェーハ10の面内における良品としての半導体発光装置1の取れ高を向上させることができる。
【0045】
図5は、波長変換部の厚み寸法と、半導体発光装置から放出される光の色度(Cy)と、の関係の一例を表すグラフ図である。
また、図6は、比較例にかかる半導体発光装置の製造方法により形成された波長変換部の厚み寸法と、ウェーハ面内の径方向位置と、の関係の一例を表すグラフ図である。
波長変換部40に分散された蛍光体は、図4に関して前述した如くである。つまり、図5の縦軸は、白色光の色度(Cy)を表す。
【0046】
図5に表したように、ウェーハ10上に一括形成された複数の発光部20から出射される光の波長や強度が一定であっても、あるいは波長変換部40に含まれる蛍光体の割合が一定であっても、波長変換部40の厚み寸法が変化すると、白色光の色度が変化する。図5に例示したような実験結果によれば、波長変換部40の厚み寸法の変化が約15μm(マイクロメートル)程度である場合には、半導体発光装置1から放出される白色光の色度Cyの変化ΔCyは、約0.015程度である。そのため、ウェーハ10上に一括形成された複数の発光部20から出射される光の波長や強度が一定であっても、あるいは波長変換部40に含まれる蛍光体の割合が一定であっても、波長変換部40の厚み寸法にばらつきが生ずると、ウェーハ10の面内において白色光の色度にばらつきが生ずる。
【0047】
図6に表したように、比較例にかかる半導体発光装置の製造方法により形成された波長変換部の厚み寸法は、ウェーハの面内において約±20μm程度のばらつきを有する。そのため、比較例にかかる半導体発光装置の製造方法により一括形成された半導体発光装置から放出される白色光の色度Cyの変化ΔCyは、0.015よりも大きい。これによれば、ヒトの視覚によって色度ずれとして認識されるおそれがある。
【0048】
これに対して、本実施形態にかかる半導体発光装置1の製造方法によれば、波長変換部40の厚さは、製造過程において例えば波長変換部40に押し当てる図示しない印刷版と、図示しない基板または発光部20の第1の主面25もしくは第2の主面27と、の間の距離を調整することにより調整される。そのため、波長変換部40の厚み寸法のばらつきを調整することができる。これにより、ウェーハ10の面内における白色光の色度のばらつきを抑制し、ウェーハ10の面内における色度ずれを抑制することができる。また、ウェーハ10の面内における良品としての半導体発光装置1の取れ高を向上させることができる。
【0049】
次に、本発明の実施の形態にかかる半導体発光装置の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
まず、製造過程において波長変換部40(蛍光体が混合された樹脂)に押し当てる印刷版と、基板または発光部20の第1の主面25もしくは第2の主面27と、の間の距離を調整することにより、波長変換部40の厚さを調整する製造方法について説明する。
図7は、本発明の実施の形態にかかる半導体発光装置の製造方法を表すフローチャート図である。
また、図8〜図10は、本実施形態にかかる半導体発光装置の製造方法を表す断面模式図である。
【0050】
まず、図8(a)に表したように、サファイアなどにより形成された基板210上に所定の形状の第1の半導体層21と、活性層23と、第2の半導体層22と、をこの順で積層させる(ステップS101)。この場合、気相成長法などを用いてこれらの積層を行うことができる。気相成長法としては、例えば、有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、ハイドライド気相成長(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法、分子線エピタキシャル成長(MBE;Molecular Beam Epitaxy)法などが挙げられる。
そして、複数の半導体発光装置のそれぞれに含まれる発光部に対応して、第1の半導体層21、活性層23、第2の半導体層22を適宜パターニングする。パターニングは、リソグラフィ技術やエッチング技術などを用いて実行できる。
このようにして、複数の発光部20(図2参照)がウェーハ上に一括形成される。
【0051】
次に、図8(b)に表したように、絶縁部170と、接合部160と、絶縁部120と、を形成する(ステップS103)。この場合、真空蒸着法やスパッタリング法などの各種の物理的気相成長(PVD:Physical Vapor Deposition)法、各種の化学的気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法などと、リソグラフィ技術やエッチング技術などと、を組み合わせることで絶縁部170と、接合部160と、絶縁部120と、を形成することができる。
【0052】
次に、図8(c)に表したように、第1の電極部50と、第2の電極部80と、第1の配線部140と、第2の配線部150と、を形成する(ステップS105)。次に、図8(d)に表したように、封止部130を形成する(ステップS107)。第1の電極部50と、第2の電極部80と、第1の配線部140と、第2の配線部150と、封止部130と、の形成方法としては、例えばステップS103に関して前述した形成方法などが挙げられる。
【0053】
次に、図9(a)に表したように、第1の導電部60と、第2の導電部90と、を形成する(ステップS109)。この場合、ステップS103に関して前述した形成方法の他、メッキ法などと、リソグラフィ技術やエッチング技術などと、を組み合わせることで第1の導電部60と、第2の導電部90と、を形成してもよい。
【0054】
次に、図9(b)に表したように、第1の導電部60の端面に第1の接続部材70を形成し、第2の導電部90の端面に第2の接続部材110を形成する(ステップS111)。第1の接続部材70と、第2の接続部材110と、の形成方法としては、ステップS109に関して前述した形成方法などが挙げられる。
【0055】
次に、図9(c)に表したように、このようにして形成された積層体5を基板210から剥離する(ステップS113)。この場合、レーザリフトオフ法などを用いて積層体5を基板210から剥離することができる。
【0056】
ここで、本実施形態によれば、発光部20(第1の半導体層21、活性層23、第2の半導体層22)は、樹脂からなる封止部130と、金属からなる導電部60、90と、に支持された状態で、基板210から剥離される。こうすることにより、発光部20に負荷される応力を抑制しつつ、基板210から剥離することができる。
【0057】
すなわち、発光部20を支持するために、例えばシリコンウェーハなどの硬質な支持体を用いると、残留応力が負荷されて、除去後の半導体層が割れたり、クラックが入る、という問題がある。
【0058】
これに対して、本実施形態によれば、樹脂からなる封止部130と金属からなる導電部60、90とを含む柔軟な支持体により発光部20を支持することにより、発光部20に負荷される応力を低減できる。すなわち、樹脂の封止部130および金属のメッキ層からなる導電部60、90は柔軟であり、かつ金属はほぼ常温でメッキされているため発光部20との間に生じる残留応力は比較的小さい。
【0059】
従来、発光部20のような半導体層をサファイア基板から分離する手法としては、例えばシリコン基板をAu-Snはんだを用いて300℃以上の高温でウェーハに接着した後、レーザを照射して分離するという手段が用いられていた。しかし、この従来手法では、熱膨張率の異なるサファイア基板とシリコン基板とがいずれも剛体であって、かつ高温で接着されているため、両基板の間に大きな残留応力が残っていた。その結果として、レーザを照射して分離を開始すると残留応力が分離部から局部的に解放されるため、薄くて脆い半導体層(例えば、発光部20)にクラックが入ってしまうという問題があった。
【0060】
それに対して、本実施形態おいては、残留応力が小さく、かつ柔軟な支持体(封止部130、導電部60、90)に発光部20が支持された状態で基板210から分離されるため、発光部20のクラック等の不具合が発生せず、高い歩留まりで製造することが可能となる。
【0061】
このような独特の作用効果は、基板210をレーザ照射以外の方法により除去した場合にも同様に得られる。例えば、基板210を研磨やエッチングなどの方法により除去する場合にも、数インチあるいはそれ以上の大きさを有するウェーハの全体にわたって、均一かつ同時に基板210が除去あるいは剥離する、ということは現実的には殆どありえない。
【0062】
つまり、研磨により基板210を除去する場合も、エッチングにより基板210を除去する場合も、数インチあるいはそれ以上のサイズのウェーハの一部のみにおいて、先に基板210が無くなるあるいは剥離する、という状態が生じる。
【0063】
このような状態においては、上述したように、残留応力が分離部から局所的に解放されるため、薄くて脆い発光部20がクラックしてしまう、という問題が生じる。
【0064】
これに対して、本実施形態によれば、封止部130と導電部60、90からなる柔軟な支持体で発光部20を支持することにより、残留応力を低減できる。その結果として、研磨やエッチングなどの方法で基板210を除去した場合も、割れやクラックを抑制しつつ、基板を除去することが可能となる。
【0065】
またさらに、本実施形態によれば、ウェーハ上に一括形成した複数の発光部20は互いに分離されている。こうすることにより、それぞれの発光部20にかかる応力を分散でき、クラックや割れをより効果的に抑制できる。つまり、仮に、これら複数の発光部20が互いに連続して形成されているとすると、基板210を剥離する際の応力や歪みが分散されず、発光部20の連続体にクラックや割れが生じやすい。これに対して、本実施形態によれば、複数の発光部20は互いに分離されているので、応力や歪みが分散され、またこれら発光部20のあいだに形成されている封止部130が応力や歪みを吸収するので、それぞれの発光部20にかかる応力や歪みが低減され、クラックや割れが生ずることを効果的に抑制できる。
【0066】
このようにして、基板210を剥離したら、次に、蛍光体41と、波長変換部40を形成する樹脂43と、を混合する(ステップS115)。続いて、図10(a)に表したように、蛍光体41が所定の割合で混合された樹脂43を発光部20の第1の主面25の側に塗布する(ステップS117)。この場合、スキージ法、スクリーン法やスピンコート法などの印刷および塗布方法などを用いて蛍光体41が混合された樹脂43を塗布することができる。なお、図10(a)は、剥離した積層体5を反転させた状態を表している。
【0067】
次に、図10(b)に表したように、発光部20の第1の主面25の側に塗布された樹脂43(蛍光体41を含む)に平板(印刷版)201を押し当てる(ステップS119)。平板201は、金属、石英、または透明樹脂により形成されている。透明樹脂は、少なくとも波長が405nm以下のUVを透過可能な樹脂である。そして、発光部20の第1の主面25と、平板201と、の間の距離を調整することにより、蛍光体41が混合された樹脂43の厚さを目的とする厚さに調整する(ステップS121)。あるいは、例えば積層体5を載置する基板220と、平板201と、の間の距離を調整することにより、蛍光体41が混合された樹脂43の厚さを目的とする厚さに調整する(ステップS121)。あるいは、第1の主面25および基板220とは異なる主面や基板と、平板201と、の間の距離を調整することにより、蛍光体41が混合された樹脂43の厚さを目的とする厚さに調整してもよい。
【0068】
次に、蛍光体41を含む樹脂43に紫外線(UV:Ultraviolet)を照射することにより、あるいは蛍光体41を含む樹脂43に熱を加えることにより、蛍光体41を含む樹脂43を硬化させ波長変換部40を形成する(ステップS123)。紫外線を照射して硬化させる場合には、樹脂43は、例えば紫外線硬化性樹脂である。一方、熱を加えて硬化させる場合には、樹脂43は、例えば熱硬化性樹脂である。
【0069】
次に、図10(c)に表したように、一括形成された複数の半導体発光装置1から平板201を剥離する。
次に、図10(d)に表したように、各半導体発光装置1を個片化する(ステップS125)。すなわち、本実施形態にかかる半導体発光装置1の製造方法は、複数の半導体発光装置1を一体的に形成(一括形成)する工程と、一体的に形成(一括形成)された複数の半導体発光装置1を個片化する工程と、を有する。この場合、ブレードダイシング法などを用いて各半導体発光装置1を個片化することができる。
【0070】
本実施形態にかかる半導体発光装置1の製造方法によれば、例えば第1の主面25や基板220などと、平板201と、の間の距離を調整することにより、蛍光体41が混合された樹脂43の厚さを目的とする厚さに調整する。そして、蛍光体41が混合された樹脂43を硬化させることにより、目的とする厚さに調整された波長変換部40が形成される。そのため、波長変換部40の厚み寸法のばらつきを抑制することができる。これにより、ウェーハ10の面内における白色光の色度のばらつきを抑制し、ウェーハ10の面内における色度ずれを抑制することができる。
【0071】
図11は、本発明の他の実施の形態にかかる半導体発光装置の製造方法を表すフローチャート図である。
また、図12は、本実施形態にかかる半導体発光装置の製造方法を表す断面模式図である。
【0072】
本実施形態にかかる半導体発光装置の製造方法は、ウェーハ10上に一括形成される複数の半導体発光装置1の波長変換部40の厚さを、発光部20から出射する光の波長や強度に基づいてそれぞれ調整する製造方法である。本実施形態では、ウェーハ10上に一括形成される複数の半導体発光装置1の波長変換部40の厚さを、発光部20から出射する光のウェーハ10の面内における波長分布に基づいて調整する場合を例に挙げて説明する。
【0073】
まず、図11に表したステップS201〜S213の製造過程は、図7に関して前述したステップS101〜と113の製造過程と同様である。
次に、発光部20から出射する光のウェーハ10の面内における波長分布を測定する(ステップS215)。この場合、例えば、フォトルミネッセンス法(Photoluminescence Spectroscopy)によりPL(Photoluminescence)発光の波長を測定する。あるいは、例えば、ウェーハ10上に一括形成された複数の発光部20に通電し、発光部20から出射する光の波長を測定する。このようにして測定された波長をウェーハ10の面内においてマッピングすると、例えば図3に例示したような波長分布が得られる。なお、図11には、波長分布を測定する場合を例示したが、本発明はこれには限定されない。波長分布のかわりに、発光強度の分布を測定してもよい。
【0074】
次に、発光部20から出射する光のウェーハ10の面内における波長分布の測定結果に基づいて、製造過程において波長変換部40(蛍光体が混合された樹脂)に押し当てる凹凸版(印刷版)203を作成する(ステップS217)。凹凸版203は、金属、石英、または透明樹脂により形成されている。透明樹脂は、少なくとも波長が405nm以下のUVを透過可能な樹脂である。例えば、発光部20から出射する光のウェーハ10の面内における波長分布の測定結果(マッピングデータなど)に基づいて、レーザ加工などにより凹凸版203を作成する。
【0075】
一例としては、ウェーハ10の面内における波長分布のマッピングデータに基づいてレーザ加工装置の印加電圧を調整し、凹凸版203の加工深さを調整する。これにより、ウェーハ10の面内における波長分布のマッピングデータに基づいて凹凸版203の高さが調整される。そして、波長変換部40への凹凸版203の押し当て量が調整される。
【0076】
次に、図12(a)に表したように、蛍光体41と、波長変換部40を形成する樹脂43と、を混合させ(ステップS219)、蛍光体41が所定の割合で混合された樹脂43を発光部20の第1の主面25の側に塗布する(ステップS221)。ステップS219およびS221の製造過程は、図7に関して前述したステップS115およびS117の製造過程と同様である。
【0077】
次に、図12(b)に表したように、発光部20の第1の主面25の側に塗布された樹脂43(蛍光体41を含む)にステップS217において作成した凹凸版203を押し当てる(ステップS223)。そして、発光部20の第1の主面25と、凹凸版203と、の間の距離を調整することにより、蛍光体41が混合された樹脂43の厚さを目的とする厚さに調整する(ステップS225)。あるいは、例えば積層体5を載置する基板220と、凹凸版203と、の間の距離を調整することにより、蛍光体41が混合された樹脂43の厚さを目的とする厚さに調整する(ステップS225)。あるいは、第1の主面25および基板220とは異なる主面や基板と、凹凸版203と、の間の距離を調整することにより、蛍光体41が混合された樹脂43の厚さを目的とする厚さに調整してもよい。
【0078】
次に、蛍光体41を含む樹脂43に紫外線(UV:Ultraviolet)を照射することにより、あるいは蛍光体41を含む樹脂43に熱を加えることにより、蛍光体41を含む樹脂43を硬化させ波長変換部40を形成する(ステップS227)。ステップS227の製造過程は、図7に関して前述したステップS123の製造過程と同様である。
【0079】
次に、図12(c)に表したように、一括形成された複数の半導体発光装置1から凹凸版203を剥離する。
次に、図12(d)に表したように、各半導体発光装置1を個片化する(ステップS229)。ステップS229の製造過程は、図7に関して前述したステップS125の製造過程と同様である。
【0080】
本実施形態にかかる半導体発光装置1の製造方法によれば、発光部20から出射する光のウェーハ10の面内における波長分布に基づいて凹凸版203を作成し、蛍光体41が混合された樹脂43に凹凸版203を押し当てる。そして、蛍光体41が混合された樹脂43を硬化させる。これにより、ウェーハ10上に一括形成される複数の半導体発光装置1の波長変換部40の厚さは、発光部20から出射する光の波長に基づいてそれぞれ調整される。これにより、ウェーハ10の面内における白色光の色度のばらつきを抑制し、ウェーハ10の面内における色度ずれを抑制することができる。
【0081】
例えば、ウェーハ10の面内において発光部20から出射する光の波長がより短い部分では、図4に表したように、白色光の色度(Cy)がより大きい。そこで、レーザ加工装置の印加電圧を調整することで、ウェーハ10の面内において発光部20から出射する光の波長がより短い部分の樹脂43(蛍光体41を含む)に押し当てる凹凸版203の部分の加工深さをより浅くする。そうすると、ウェーハ10の面内において発光部20から出射する光の波長がより短い部分に塗布された樹脂43(蛍光体41を含む)への凹凸版203の押し当て量がより多くなる。そのため、ウェーハ10の面内において発光部20から出射する光の波長がより短い部分の波長変換部40の厚さは、より薄くなる。図5に表したように、波長変換部40の厚さがより薄くなると、白色光の色度(Cy)はより小さくなる。これにより、発光部20から出射する光の波長がウェーハ10の面内においてばらついても、ウェーハ10の面内における白色光の色度のばらつきを抑制することができる。
【0082】
図13は、本実施形態にかかる半導体発光装置の製造方法により形成された波長変換部の厚み寸法を説明するための模式図である。
なお、図13(a)は、本実施形態にかかる半導体発光装置の製造方法により形成された波長変換部の厚み寸法の一例を表すグラフ図である。図13(b)は、ウェーハ10の面内における測定ポイントを表す平面模式図である。
【0083】
図13(a)に表したように、本実施形態にかかる半導体発光装置1の製造方法により形成された波長変換部40の厚み寸法のばらつきは、ウェーハ10の面内の測定ポイントP1〜P5において約±2μm程度に抑えられている。図5に例示した実験結果によれば、波長変換部40の厚み寸法のばらつきが約±2μm程度である場合には、白色光の色度Cyの変化ΔCyは、約0.005程度である。本発明者の得た知見によれば、白色光の色度Cyの変化ΔCyが約0.005程度である場合には、ヒトの視覚によって色度ずれとしてはほとんど認識されず、発光部20の個体差(光の波長や強度などの発光特性のばらつき)を抑制することができる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1 半導体発光装置、 5 積層体、 10 ウェーハ、 20 発光部、 21 第1の半導体層、 22 第2の半導体層、 23 活性層、 25 第1の主面、 27 第2の主面、 40 波長変換部、 41 蛍光体、 43 樹脂、 50 第1の電極部、 51 接合部、 53 導電部、 60 第1の導電部、 70 第1の接続部材、 80 第2の電極部、 81 接合部、 83 導電部、 90 第2の導電部、 110 第2の接続部材、 120 絶縁部、 130 封止部、 131 凹部、 140 第1の配線部、 141 接合部、 143 導電部、 150 第2の配線部、 151 接合部、 153 導電部、 160 接合部、 170 絶縁部、 201 平板、 203 凹凸版、 210、220 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体発光装置が一括形成された半導体発光装置ウェーハであって、
第1の主面と、前記第1の主面とは反対側の第2の主面と、を有する発光部と、
前記第1の主面側に設けられ、蛍光体を含有する波長変換部と、
を備え、
前記波長変換部の厚さは、前記複数の半導体発光装置のそれぞれの発光部から出射する光の前記ウェーハの面内における波長及び強度の少なくともいずれかの分布に基づいて変化してなることを特徴とする半導体発光装置ウェーハ。
【請求項2】
複数の半導体発光装置をウェーハ上に一括形成する半導体発光装置の製造方法であって、
第1の主面と、前記第1の主面の反対面を形成する第2の主面と、を有する複数の発光部をウェーハ上に形成し、
蛍光体が混合された媒体を前記第1の主面側に塗布した後、前記媒体に押し当てる印刷版と、前記第1の主面と、の間の距離を調整することで前記媒体の厚さを調整し、前記媒体を硬化させることで前記調整された厚さの波長変換部を形成することを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記印刷版は、平板であることを特徴とする請求項2記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記印刷版は、前記複数の発光部のそれぞれから出射する光の前記ウェーハの面内における波長分布に基づいて作成された凹凸版であることを特徴とする請求項2記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記印刷版は、金属、石英、または透明樹脂で形成され、
前記透明樹脂は、少なくとも波長が405ナノメートル以下の紫外線を透過可能な樹脂であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項6】
ブレードダイシング法を用いることにより、前記一括形成された複数の半導体発光装置をさらに個片化させることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載の半導体発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−195425(P2012−195425A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57938(P2011−57938)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】