説明

半導体発光装置用シリコーン樹脂組成物

【課題】本発明は、成形や成形品の取扱いが容易な硬化性シリコーン樹脂組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】(A)硬化性ポリオルガノシロキサン、(B)白色顔料、(C)硬化触媒及び(D)シリコーンオイルを含有する組成物において、前記(B)白色顔料を、前記(A)硬化性ポリオルガノシロキサン100重量部に対して20重量部以上含有させ、かつ前記(D)シリコーンオイルを、前記(A)硬化性ポリオルガノシロキサン100重量部に対して0.1重量部以上3重量部以下含有させて、硬化性シリコーン樹脂組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード等の発光素子を備えた半導体発光装置用の樹脂成形体の原材料となる、硬化性シリコーン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子を搭載してなる半導体発光装置は図1に示すように半導体発光素子1、樹脂成形体2、ボンディングワイヤ3、封止材4、リードフレーム5等から構成される。なお、リードフレーム等の導電性金属配線及び絶縁性の樹脂成形体からなる構成をパッケージと称する。
【0003】
従来、樹脂成形体に用いる絶縁性材料として、ポリアミド等の熱可塑性樹脂に白色顔料を配合したものが一般的に用いられてきた(例えば特許文献1参照)。該特許文献1で用いられるポリアミド樹脂は、その熱可塑性のため、融点の高い鉛フリー半田による高いリフロー温度では樹脂が軟化し、パッケージの耐熱性が不足することがある。更に、ポリアミド樹脂は紫外線や熱により劣化するため、近年実用化が進んでいる青色〜近紫外線半導体発光素子のようなエネルギーの高い波長領域まで発光域を持つ発光素子を用いた場合、光による劣化が特に問題となる。また、より明るい発光素子が求められている現状においては、半導体発光素子から発せられる強度の大きい光やそれに伴う発熱により、熱劣化及び光劣化の問題がより顕著となる。
【0004】
一方、耐熱性が求められる場合は焼結されたアルミナを配合したセラミックが絶縁材料として用いられる(例えば特許文献2参照)。セラミックを用いたパッケージは耐熱性が良いが、製造に際し成形後に高温での焼結工程が必要である。焼結工程では電気代などのコスト面での問題や、焼結により成形体の大きさ、形状が変化するために不良品が出やすく量産性に問題があった。
【0005】
これに対して近年、樹脂にポリオルガノシロキサンを用い、白色顔料として酸化チタンを用いたシリコーン樹脂組成物を成形したパッケージも提案されている(例えば特許文献3参照)。樹脂にポリオルガノシロキサンを用いることにより、ポリアミド樹脂を用いた場合に比べ耐熱性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−283498号公報
【特許文献2】特開2004−288937号公報
【特許文献3】特開2009−155415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般にシリコーン樹脂は柔軟性が高い。そのため、上記特許文献3のようにポリオルガノシロキサンを用いた樹脂組成物をパッケージの成形に用いた場合、破断しやすく、金型中へ砕片が残留してしまって成形不良を生じたり、金型からの脱離に手間取ったり、成形品の取扱いが難しかったりする問題が存在する。
本発明はこの課題を解決するものであり、成形や成形品の取扱いが容易な硬化性シリコーン樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、硬化性ポリオルガノシロキサン、白色顔料及び硬化触媒を含有する組成物において、特定量のシリコーンオイルを添加すると、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化後の硬度が向上し、上記の課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)(A)硬化性ポリオルガノシロキサン、(B)白色顔料、(C)硬化触媒、及び(D)シリコーンオイルを含有する組成物において、
前記(B)白色顔料の含有量が、前記(A)硬化性ポリオルガノシロキサン100重量部に対して、20重量部以上であり、かつ
前記(D)シリコーンオイルの含有量が、前記(A)硬化性ポリオルガノシロキサン100重量部に対して、0.1重量部以上3重量部以下であることを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物。
(2)前記(D)シリコーンオイルの25℃における動粘度が100(mm2/s)以上50000(mm2/s)以下であることを特徴とする(1)に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
(3)前記(D)シリコーンオイルが両末端をトリオルガノシリル基で封鎖されたポリ(ジオルガノシロキサン)であることを特徴とする(1)または(2)に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
(4)前記(A)硬化性ポリオルガノシロキサンが、2官能ケイ素基を有するポリオルガノシロキサン、分子内に2個以上のビニル基を有するポリオルガノシロキサン、及び分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリオルガノシロキサンである(1)〜(3)のいずれかに記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
(5)前記(B)白色顔料が、以下の特性(a)及び(b)を有することを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
(a)一次粒子のアスペクト比が1.2以上4.0以下
(b)一次粒子径が0.1μm以上2.0μm以下
(6)前記(B)白色顔料の二次粒子の中心粒径が0.2μm以上5μm以下であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
(7)前記(B)白色顔料がアルミナであることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の硬化性シリコーン樹脂組成物を成形してなる半導体発光装置用樹脂成形体。
(9)液状射出成形法により成形されたことを特徴とする(8)に記載の樹脂成形体。
(10)(8)または(9)に記載の樹脂成形体を有する半導体発光装置。
(11)(1)〜(7)のいずれかに記載の硬化性シリコーン樹脂組成物を調製する工程、及び前記調製された硬化性シリコーン樹脂組成物を射出成形により成形する工程を含む、半導体発光装置用樹脂成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成形や成形品の取扱いが容易な硬化性シリコーン樹脂組成物を提供することができ、半導体発光装置用樹脂成形体の原材料に好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】半導体発光装置の一態様の構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
<1.硬化性シリコーン樹脂組成物>
本発明において、硬化性シリコーン樹脂組成物は、(A)硬化性ポリオルガノシロキサン、(B)白色顔料、(C)硬化触媒、及び(D)シリコーンオイルを含有する。以下、各含有成分について説明する。
【0013】
<1−1.(A)硬化性ポリオルガノシロキサン>
本発明において硬化性ポリオルガノシロキサンとは、ケイ素原子が酸素を介して他のケイ素原子と結合した部分を持つ構造に有機基が付加している高分子物質を指す。ここで硬化性ポリオルガノシロキサンは、常温常圧下において液体であることが好ましい。これは、半導体発光装置用樹脂成形体を成形する際に、組成物の扱いが容易となるからである。また、常温常圧下において固体の硬化性ポリオルガノシロキサンは、一般的に硬化物としての硬度は比較的高いが、破壊に要するエネルギーが小さく靭性が低いものや、耐光性、耐熱性が不十分で光や熱により変色しやすいものが多い傾向にあるからである。
なお、上記常温とは20℃±15℃(5〜35℃)の範囲の温度をいい、上記常圧とは大気圧に等しい圧力をいい、ほぼ一気圧である。また、液体とは流動性の有る状態をいう。
【0014】
上記硬化性ポリオルガノシロキサンは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば以下に示す一般組成式(1)で表される化合物や、その混合物が挙げられる。
(R123SiO1/2M(R45SiO2/2D(R6SiO3/2T(SiO4/2Q ・・・(1)
ここで、上記式(1)中、R1からR6は独立して、有機官能基、水酸基、水素原子から選択される。またM、D、T及びQは0以上1未満であり、M+D+T+Q=1を満足する数である。
主なポリオルガノシロキサンを構成する単位は、1官能型[R3SiO0.5](トリオルガノシルヘミオキサン)、2官能型[R2SiO](ジオルガノシロキサン)、3官能型[RSiO1.5](オルガノシルセスキオキサン)、4官能型[SiO2](シリケート)であり、これら4種の単位の構成比率を変えることにより、ポリオルガノシロキサンの性状の違いが出てくるので、所望の特性が得られるように適宜選択し、ポリオルガノシロキサンの合成を行う。
本発明において(A)硬化性ポリオルガノシロキサンは、樹脂においてソフトセグメントとして機能し、樹脂成形体にシリコーンとしてのゴム弾性、高い耐熱性・耐光性を付与できる点から上記2官能型の構成単位を有することが好ましい。この場合、2官能型の構成比率が5割以上であることが好ましく、7割以上であることがより好ましい。
2官能ケイ素基を有するポリオルガノシロキサンとして、具体的には以下のものが挙げられる。
上記構成単位が1〜3官能型のポリオルガノシロキサンは、オルガノクロロシラン(一般式RnSiCl4-n(n=1〜3))と呼ばれる一連の有機ケイ素化合物をもとにして合成することができる。例えば、メチルクロロシランは塩化メチルとケイ素SiとをCu触媒下高温で直接反応させて合成することができ、また、ビニル基などの有機基を持つシラン類は、一般の有機合成化学の手法によって合成することができる。
単離されたオルガノクロロシランを、単独で、あるいは任意の割合で混合し、水により加水分解を行うとシラノールが生成し、このシラノールが脱水縮合するとシリコーンの基本骨格であるポリオルガノシロキサンが合成される。
【0015】
硬化性ポリオルガノシロキサンは、硬化触媒の存在下で、熱エネルギーや光エネルギー等を与えることにより硬化させる事ができる。ここで硬化とは、流動性を示す状態から、流動性を示さない状態に変化することをいい、例えば、対象物を水平より45度傾けた状態で30分間静置しても流動性がある状態を未硬化状態といい、全く流動性がない状態を
硬化状態として判断することができる。
但し、後述する白色顔料を高濃度に添加した場合、チキソトロピー性の発現により対象物を水平より45度傾けた状態で流動性が無くとも硬化していないケースが考えられる。この場合においては、対象物が塑性変形せず、硬度をデュロメータタイプAにて測定し、硬度測定値が5以上であれば、硬化状態であると判断する。
硬化性ポリオルガノシロキサンは、硬化のメカニズムにより分類すると、通常、付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのポリオルガノシロキサンを挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型ポリオルガノシロキサン)、及び縮合硬化タイプ(縮合型ポリオルガノシロキサン)が好適である。中でも、副生成物の発生が無く、また、反応が可逆性でないヒドロシリル化(付加重合)によって硬化するポリオルガノシロキサンのタイプがより好適である。これは、成形加工時に副生成物が発生すると、成形容器内の圧を上昇させたり、硬化性シリコーン樹脂組成物中に泡として残存したりする傾向にあるからである。
以下、付加型ポリオルガノシロキサン、及び縮合型ポリオルガノシロキサンについて説明する。
【0016】
<1−1−1.付加型ポリオルガノシロキサン>
付加型ポリオルガノシロキサンとは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシラン等の(C1)アルケニル基を有する珪素含有化合物と、例えばヒドロシラン等の(C2)ヒドロシリル基を有する珪素化合物とを総ヒドロシリル基量が0.5倍以上、2.0倍以下となる量比で混合し、(C3)Pt触媒などの付加縮合触媒の存在下反応させて得られるSi−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。
【0017】
(C1)アルケニル基を有する珪素含有化合物としては、下記一般式(2)
nSiO〔(4-n)/2〕・・・(2)
で表わされる、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。
ただし、式(2)中、Rは同一または異種の置換または非置換の1価炭化水素基、アルコキシ基、または水酸基で、nは1≦n<2を満たす正の数である。
上記(C1)アルケニル基を有する珪素含有化合物においてアルケニル基とは、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基などの炭素数2〜8のアルケニル基であることが好ましい。Rが炭化水素基である場合は、メチル基、エチル基などのアルキル基、ビニル基、フェニル基等の炭素数1〜20の1価炭化水素基から選択される。好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基である。
【0018】
それぞれは異なっても良いが、耐UV性が要求される場合には、上記式中Rのうちの65%程度がメチル基であることが好ましく(つまり、Siの個数(mol数)に対してメチル基以外の官能基の含有数として0.35個(mol)以下であることが好ましい。)、上記式中Rのうちの80%以上がメチル基であることがより好ましい。Rは炭素数1〜8のアルコキシ基や水酸基であってもよいが、アルコキシ基や水酸基の含有率は、(C1)アルケニル基を有する珪素含有化合物の10重量%以下であることが好ましい。また、nは1≦n<2を満たす正の数であるが、この値が2以上であると硬化性シリコーン樹脂組成物とリードフレーム等の導電体との接着に十分な強度が得られなくなり、1未満であるとこのポリオルガノシロキサンの合成が困難になる。
【0019】
上記(C1)アルケニル基を有する珪素含有化合物としては、例えばビニルシラン、ビニル基含有ポリオルガノシロキサンを挙げることができ、これらを1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。上記の中でも分子内に2個以上のビニル基を有するビニル基含有ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0020】
分子内に2個以上のビニル基を有するポリオルガノシロキサンとして具体的には以下のものが挙げられる。
両末端ビニルポリジメチルシロキサン
DMS−V00、DMS−V03、DMS−V05、DMS−V21、DMS−V22、DMS−V25、DMS−V31、DMS−V33、DMS−V35、DMS−V41、DMS−V42、DMS−V46、DMS−V52(いずれもGelest社製)
両末端ビニルジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマー
PDV−0325、PDV−0331、PDV−0341、PDV−0346、PDV−0525、PDV−0541、PDV−1625、PDV−1631、PDV−1635、PDV−1641、PDV−2331、PDV−2335(いずれもGelest社製)
両末端ビニルフェニルメチルシロキサン
PMV−9925(Gelest社製)
トリメチルシリル基封鎖ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー
VDT−123、VDT−127、VDT−131、VDT−153、VDT−431、VDT−731、VDT−954(いずれもGelest社製)
ビニルT−構造ポリマー
VTT−106、MTV−124(いずれもGelest社製)
【0021】
また、(C2)ヒドロシリル基を有する珪素含有化合物としては、例えばヒドロシラン、ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンを挙げることができ、これらを1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。上記の中でも分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0022】
分子内に2個以上のヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサンとして具体的には以下のものが挙げられる。
両末端ヒドロシリルポリジメチルシロキサン
DMS−H03、DMS−H11、DMS−H21、DMS−H25、DMS−H31、DMS−H41(いずれもGelest社製)
両末端トリメチルシリル封鎖メチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーHMS−013、HMS−031、HMS−064、HMS−071、HMS−082、HMS−151、HMS−301、HMS−501(いずれもGelest社製)
【0023】
本発明における上記(C1)アルケニル基を有する珪素化合物及び(C2)ヒドロシリル基を有する珪素化合物の使用量は、(C1)アルケニル基を有する珪素化合物1mol(アルケニル基のモル数)に対して、(C2)ヒドロシリル基を有する珪素化合物(ヒドロシリル基のモル数)が通常0.5mol以上であり、好ましくは0.7mol以上、より好ましくは0.8mol以上であり、また、通常2.0mol以下、好ましくは1.8mol以下、より好ましくは1.5mol以下である。アルケニル基に対するヒドロシリル基のモル数をコントロールすることにより硬化後の未反応末端基の残存量を低減し、点灯使用時の着色や剥離等の経時変化が少ない硬化物を得ることができる。
また、ヒドロシリル化を起こす反応点(架橋点)の含有量は、アルケニル基及びヒドロシリル基ともに白色顔料を含まない樹脂自体中において0.1mmol/g以上、20mmol/g以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.2mmol/g以上、10mmol/g以下である。
【0024】
また、白色顔料添加前の樹脂の粘度としては、取扱いのし易さから、通常100,000cp以下、好ましくは20,000cp以下、さらに好ましくは10,000cp以下
である。下限は特には制限されないが、揮発度(沸点)との関係上一般的には15cp以上である。
【0025】
さらに、樹脂のポリスチレンを標準物質として測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィーでの平均分子量測定値として、樹脂の重量平均分子量は500以上、100,000以下であることが好ましい。より好ましくは700以上50,000以下である。さらに、揮発成分を少なくする(他部材との接着性を維持するため)目的から1,000以上、また、成形前の組成物の取扱いのし易さから25,000以下であることがより好ましい。最も好ましくは20,000以下である。
【0026】
<1−1−2.縮合型ポリオルガノシロキサン>
縮合型ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。具体的には、下記一般式(3)及び/若しくは(4)で表わされる化合物、並びに/またはそのオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
【0027】
m+n1m-n ・・・(3)
式(3)中、Mは、ケイ素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を表わし、mは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、nは、X基の数を表わす1以上の整数を表わす。但し、m≧nである。
【0028】
(Ms+t1s-t-1u2 ・・・(4)
【0029】
式(4)中、Mは、ケイ素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を表わし、Y2は、u価の有機基を表わし、sは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、tは、1以上、s−1以下の整数を表わし、uは、2以上の整数を表わす。
【0030】
縮合型ポリオルガノシロキサンは公知のものを使用することができ、例えば、特開2006−77234号公報、特開2006−291018号公報、特開2006−316264号公報、特開2006−336010号公報、特開2006−348284号公報、及び国際公開2006/090804号パンフレットに記載の半導体発光デバイス用部材が好適である。
【0031】
<1−1−2−1.特に好ましい縮合型ポリオルガノシロキサン>
縮合型ポリオルガノシロキサンの中で、特に好ましいものについて、以下に説明する。
ポリオルガノシロキサンは、一般に半導体発光装置に用いた場合、半導体発光素子や半導体発光素子を配置する基板や、樹脂成形体等との接着性が弱いことがあるが、これらと密着性が高いポリオルガノシロキサンとするため、特に、以下の[1]及び[2]のうち1つ以上の特徴を有する縮合型ポリオルガノシロキサンが好ましい。
[1]ケイ素含有率が20重量%以上である。
[2]測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/または(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
【0032】
(a)ピークトップの位置がジメチルシリコーンゴムのジメチルシロキシケイ素を基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がジメチルシリコーンゴムのジメチルシロキシケイ素を基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
【0033】
本発明においては、上記の特徴[1]及び[2]のうち、特徴[1]を有する縮合型ポリオルガノシロキサンが好ましい。さらに好ましくは、上記の特徴[1]及び[2]を有する縮合型ポリオルガノシロキサンが好ましい。
なお、縮合型ポリオルガノシロキサンにおいては、縮合反応の進行に伴い脱離成分が発生するが、成形加工方法により、該成分の成形加工性への影響が大きくない場合に用いることができる。その場合には、特に縮合型ポリオルガノシロキサン中のシラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。
【0034】
<1−1−3.(A)硬化性ポリオルガノシロキサンの含有量>
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物中における(A)硬化性ポリオルガノシロキサンの含有量は、硬化性シリコーン樹脂組成物として通常用いることができる範囲であれば限定されないが、通常組成物全体の15重量%以上、50重量%以下であり、好ましくは20重量%以上、40重量%以下であり、より好ましくは25重量%以上、35重量%以下である。なお、後述する組成物に含有されるその他の成分の硬化速度制御剤がポリオルガノシロキサンである場合は、上記(A)の含有量に含まれるものとする。
【0035】
<1−2.(B)白色顔料>
本発明において白色顔料は、樹脂の硬化を阻害しない公知の顔料を適宜選択する事ができる。白色顔料としては無機及び/または有機の材料を用いる事ができる。ここで白色とは、無色であり透明ではない事をいう。すなわち可視光領域に特異な吸収波長を持たない物質により入射光を乱反射させる事ができる色をいう。
【0036】
白色顔料として用いることができる無機粒子としては、アルミナ(以下、「アルミナ微粉」、または「酸化アルミニウム」と称する場合がある。)、酸化珪素、酸化チタン(チタニア)、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属塩;窒化硼素、アルミナホワイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、硼酸アルミニウム、クレー、タルク、カオリン、雲母、合成雲母などが挙げられる。
また、白色顔料として用いることができる有機微粒子としては、弗素樹脂粒子、グアナミン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子等の樹脂粒子などを挙げることができるが、いずれもこれらに限定されるものではない。中でも白色度が高く少量でも光反射効果が高く変質しにくい点からは、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛などが特に好ましい。また、組成物硬化時の熱伝導率向上の点からは、アルミナ、窒化硼素などが特に好ましい。また、近紫外線の光反射効果が高く、近紫外線による変質が小さい観点からも、アルミナは特に好ましい。
これらは、単独もしくは2種以上混合して用いる事ができる。
酸化チタンを用いる場合は、光触媒性、分散性、白色性等の問題が出ない程度に含有する事ができる。
【0037】
酸化チタンとしては具体的には富士チタン工業社製のTAシリーズ、TRシリーズ、石原産業(株)製のTTOシリーズ、MCシリーズ、CR−ELシリーズ、PTシリーズ、STシリーズ、FTLシリーズ等が挙げられ、アルミナとしては具体的には日本軽金属社製A30シリーズ、ANシリーズ、A40シリーズ、MMシリーズ、LSシリーズ、AHPシリーズ、アドマテックス社製「Admafine Alumina」AO−5タイプ、AO−8タイプ、日本バイコウスキー社製CRシリーズ、大明化学工業社製タイミクロン、Aldrich社製10μm2径アルミナ粉末、昭和電工社製A−42シリーズ、A−43シリーズ、A−50シリーズ、ASシリーズ、AL−43シリーズ、AL−47シリーズ、AL−160SGシリーズ、A−170シリーズ、AL−170シリーズ、住友化学社製AMシリーズ、ALシリーズ、AMSシリーズ、AESシリーズ、AKPシリーズ
、AAシリーズ等が挙げられ、ジルコニアとしては具体的には第一希元素化学工業社製UEP−100等が挙げられ、酸化亜鉛としては具体的にはハクスイテック社製酸化亜鉛2種等が挙げられる。
【0038】
本発明において白色顔料は近紫外線の光反射効果が高く、近紫外線による変質が小さい点でアルミナであることが好ましい。アルミナは、紫外線の吸収能が低いことから、特に、紫外〜近紫外発光の発光素子と共に用いる場合に好適に用いることができる。
酸化チタンは屈折率が高く、ポリオルガノシロキサンとの屈折率差が大きいため少ない添加量でも高反射となりやすいことから、アルミナと酸化チタンを併用してもよい。例えば、アルミナに対する酸化チタンの重量比(アルミナ:酸化チタン)が、50:50〜95:5となる割合で混合することができる。アルミナに酸化チタンを少量添加することで、アルミナを単独で使用した場合よりも420nm以上の波長の光の反射率が高くなる場合があり、さらに、組成物中の白色顔料の割合が小さい場合や、樹脂成形体の厚みが小さい場合にも反射率が下がりにくい傾向がある。チタニアの併用により組成物中の白色顔料の割合を小さくできるため、組成物の組成の自由度が上がり、白色顔料以外の成分の充填量を上げることができる。また、薄い樹脂成形体の反射率が高いことは、樹脂成形体の形状の自由度が上がる点で非常に有利である。また、厚みを大きくできない薄い樹脂成形体や細かい構造の樹脂成形体でもその反射率が高いことで、半導体発光装置の明るさを増す効果が期待できる。
【0039】
なお、白色顔料をシランカップリング剤などで表面処理を行なってもよい。シランカップリング剤で表面処理した白色顔料を用いると、硬化性シリコーン樹脂組成物全体の硬度を向上させることができる。
【0040】
<1−2−1.(B)白色顔料の好ましい形状>
本発明における(B)白色顔料の一次粒子のアスペクト比は1.2以上4.0以下であることを特徴としている。
上記(B)白色顔料のアスペクト比は、1.25以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.4以上であることが更に好ましい。一方、上限は、3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.2以下であることが更に好ましく、2.0以下であることが特に好ましく、1.8以下であることが最も好ましい。
アスペクト比が上記範囲である場合には、散乱により高反射率を発現しやすく、特に近紫外領域の短波長の光の反射が大きい。これにより、かかる樹脂成形体を用いた半導体発光装置において、LED出力を向上させることができる。
また、アスペクト比が上記範囲である白色顔料を使用することは、金型の磨耗が少ないなど、成形性の観点からも好ましい。アスペクト比が上記範囲よりも大きい場合、顔料粒子の角部との接触により金型の磨耗が激しくなることがあり、逆に、アスペクト比が小さい白色顔料を使用する場合にも組成物中の顔料の充填密度を上げられるため金型と顔料との接触頻度が上がり、金型が磨耗しやすい傾向になる。特にアスペクト比が4.0よりも大きい場合には、高反射になりにくく、また、成形時に配管、スクリュー、金型等の磨耗が発生しやすく、磨耗による不純物の混入により成形した樹脂成形体の反射率低下や、絶縁破壊が起こりやすい傾向にある。
さらに、アスペクト比が上記範囲である白色顔料を使用すると、組成物の粘度の調整が容易となり、成形に適した粘度に調整することで、成形サイクルを短縮することができたり、バリを抑えることができたり、成形性に優れた組成物となる。
【0041】
アスペクト比は、粒子等の形状を定量的に表現する簡便な方法として一般に用いられており、本発明ではSEMなどの電子顕微鏡観察により計測した粒子の長軸長さ(最大長径)を短軸長さ(長径に垂直方向で最も長い部分の長さ)で除して求めるものとする。軸長
さにばらつきがある場合は、複数点(例えば10点)をSEMで計測し、その平均値から算出することができる。あるいは、30点、100点を計測しても同様の算出結果を得ることができる。
【0042】
アスペクト比は、粒子の形状が繊維状や棒状か、あるいは球状かの指標となり、粒子が繊維状の場合はアスペクト比が大きくなり、粒子が球状の場合は、1.0となる。
本発明では、アスペクト比が上記範囲であることにより、(B)白色顔料の好ましい形状からは、球状、真球状に形成されたものが除かれる。また、極端に細長い形状のものも、かえって反射率を低下させてしまうため、本発明に係る(B)白色顔料からは除かれる。アスペクト比が上記範囲である場合、白色顔料が金型の隙間に詰まりやすく、バリが発生しにくいが、球状では金型の隙間を素通りしバリが発生しやすい傾向がある。
本発明では、アスペクト比が上記範囲に含まれる粒子が(B)白色顔料全体の60体積%以上、より好ましくは70体積%以上、特に好ましくは80体積%以上を占めることが好ましく、必ずしも全ての(B)白色顔料が上記アスペクト比の範囲を満たさなければいけないわけではないことは当業者が当然に理解できる事項である。
【0043】
アスペクト比を上記範囲とするためには、白色顔料の表面処理をしたり、研磨したりする等の一般的な方法を採ってもよい。また、白色顔料を破砕(粉砕)して微細化することや、白色顔料を焼成により生成することによっても、達成できる。
【0044】
また、本発明における(B)白色顔料の一次粒子径は、0.1μm以上2μm以下であることが好ましい。下限値については好ましくは0.15μm以上、より好ましくは0.2μm以上、特に好ましくは0.25μm以上であり、上限値については好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.8μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。
一次粒子径が上記範囲である場合には、後方散乱傾向と散乱光強度を兼ね備えることで組成物が高反射率を発現しやすく、特に近紫外領域等の短波長の光に対する反射が大きくなり、好ましい。白色顔料は、一次粒子径が小さすぎると散乱光強度が小さいため反射率は小さくなる傾向にあり、一次粒子径が大きすぎると散乱光強度は大きくなるが、前方散乱傾向になるため反射率は小さくなる傾向にある。
また、一次粒子径が上記範囲である場合には、成形に適した粘度への調整が容易である、金型の磨耗が少ないなど、成形性の観点からも好ましい。一次粒子径が上記範囲よりも大きい場合、顔料粒子との接触による金型への衝撃が大きく金型の磨耗が激しくなる傾向があり、一次粒子径が上記範囲よりも小さい白色顔料を使用する場合には、組成物が高粘度になりやすく、白色顔料の充填量を上げられないため、高反射等の組成物特性と成形性との両立が難しくなる傾向にある。
特に、液状射出成形に好適に使用できる組成物とするためには組成物にある程度以上のチキソトロピー性を持たせることが必要である。一次粒子径が0.1μm以上2.0μm以下の白色顔料を組成物中に添加するとチキソトロピー性付与効果が大きく、バリやショートが少なく成形しやすい組成物とするために、粘度とチキソトロピー性を容易に調整することができる。
なお、樹脂組成物中の白色顔料の充填率を上げる等の目的で、一次粒子径が2μmよりも大きい白色顔料を併用することもできる。
【0045】
本発明における一次粒子とは粉体を構成している粒子のうち、他と明確に分離できる最小単位の個体をいい、一次粒子径はSEMなどの電子顕微鏡観察により計測した一次粒子の粒子径をいう。一方、一次粒子が凝集してできる凝集粒子を二次粒子といい、二次粒子の中心粒径は粉体を適当な分散媒(例えばアルミナの場合は水)に分散させて粒度分析計等で測定した粒径を言う。一次粒子径にばらつきがある場合は、数点(例えば10点)をSEM観察し、その平均値を粒子径としてもとめることができる。また、測定の際、個々の粒子径が球状でない場合はもっとも長い、すなわち長軸の長さを粒子径とする。
【0046】
白色顔料のアスペクト比と一次粒子径は、成形後(硬化後)であっても測定することができる。SEMなどの電子顕微鏡によって成形品の断面を観察し、断面に露出した白色顔料の一次粒子径とアスペクト比を計測すればよい。
本発明ではSEMなどの電子顕微鏡観察により計測した粒子の長軸長さ(最大長径)を短軸長さ(長径に垂直方向で最も長い部分の長さ)で除して求めるものとする。軸長さにばらつきがある場合は、複数点(例えば10点)をSEMで計測し、その平均値から算出することができる。あるいは、30点、100点を計測しても同様の算出結果を得ることができる。
【0047】
一方、上記白色顔料は、二次粒子の中心粒径(以下、「二次粒径」と称する場合がある。)が、0.2μm以上であるものが好ましく、0.3μm以上であるものがより好ましい。上限は10μm以下であるものが好ましく、5μm以下であるものがより好ましく、2μm以下であるものが更に好ましい。
二次粒径が上記範囲である場合には、成形性の観点で好ましい組成物が得られ易い。また、成形に適した粘度への調整が容易で、金型の磨耗が少ない。加えて、白色顔料が金型の隙間を通過しにくいためバリが発生しにくく、かつ、金型のゲートに詰まりにくいため成形時のトラブルが起こりにくい。二次粒径が上記範囲よりも大きい場合には、白色顔料の沈降により組成物が不均一となる傾向にあり、金型の磨耗やゲートの詰まりにより成形性が損なわれたり、組成物の反射の均一性が損なわれたりすることがある。
なお、樹脂組成物中の白色顔料の充填率を上げる等の目的で、二次粒径が10μmよりも大きい白色顔料を併用することもできる。なお、中心粒径とは積算%の体積基準粒度分布曲線が50%の横軸と交差するポイントの粒子径を言い、一般的に50%粒子径(D50)、メディアン径と呼ばれるものを指す。
【0048】
また、本発明における(B)白色顔料の一次粒子径xと二次粒子の中心粒径yの比y/xは、通常1以上、好ましくは1より大きく、特に好ましくは1.2以上であり、また、通常10以下、好ましくは5以下である。
ここで、一次粒子径xと二次粒子の中心粒径yの比y/xが上記範囲であることにより、(B)白色顔料の好ましい形状からは、球状、真球状に形成されたもの(即ち、一次粒子がほとんど凝集しておらず、一次粒子径と二次粒子の中心粒径がほぼ等しいもの)が除かれる。
一次粒子径xと二次粒子の中心粒径yの比y/xが上記範囲である場合には、散乱により高反射率を発現しやすく、特に近紫外領域の短波長の光の反射が大きい。これにより、かかる樹脂成形体を用いた半導体発光装置において、LED出力を向上させることができる。また、成形に適した組成物粘度への調整も容易である。
【0049】
<1−2−2.(B)白色顔料の添加量>
本発明において硬化性シリコーン樹脂組成物中の(B)白色顔料の含有量は、(A)硬化性ポリオルガノシロキサン100重量部に対し20重量部以上であり、この範囲で、使用する顔料の粒径や種類、硬化性ポリオルガノシロキサンと顔料の屈折率差により適宜選択される。好ましくは(A)硬化性ポリオルガノシロキサン100重量部に対し50重量部以上、更に好ましくは100重量部以上であり、通常900重量部以下、好ましくは600重量部以下、更に好ましくは400重量部以下である。
上記範囲内であると反射率、成形性等が良好である。上記下限未満である場合には光線が透過してしまい半導体発光装置の反射効率が低下したり、成形品が軟らかくなり取り扱いが難しくなる傾向にあり、上限よりも大きい場合には組成物の流動性が悪化することにより成形性が低下したり、成形品が脆くなり取り扱いが難しくなる傾向にある。
本発明において硬化性シリコーン樹脂組成物中における(B)白色顔料の含有量は、硬化性シリコーン樹脂組成物として通常用いることができる範囲であれば限定されないが、
通常組成物全体の30重量%以上、85重量%以下であり、好ましくは40重量%以上80重量%以下であり、より好ましくは45重量%以上、70重量%以下である。液状射出成形に好適に使用できる組成物とするためには組成物にある程度以上のチキソトロピー性を持たせることが必要である。一次粒子径が0.1μm以上2.0μm以下の白色顔料を組成物中に配合すると著しい増粘が起こり、チキソトロピー性付与効果が大きいが、そのような形状の白色顔料を組成物全体の30重量%以上含有させることで、バリやショートが少なく成形しやすい組成物にすることができ、さらに、粘度とチキソトロピー性を調整することが容易となる。
【0050】
<1−3.(C)硬化触媒>
本発明における(C)硬化触媒とは、(A)硬化性ポリオルガノシロキサンを硬化させる触媒である。硬化性ポリオルガノシロキサンは触媒により重合反応が早まり硬化する。この触媒は硬化性ポリオルガノシロキサンの硬化機構により付加重合用触媒、縮合重合用触媒がある。
【0051】
付加重合用触媒としては、(C1)成分中のアルケニル基と(C2)成分中のヒドロシリル基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒であり、この付加重合触媒の例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。なお、この(C3)付加重合触媒の配合量は触媒量とすることができるが、通常、白金族金属として(C1)及び(C2)成分の合計重量に対して通常1ppm以上、好ましくは2ppm以上であり、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。これにより触媒活性を高いものとすることができる。
【0052】
縮合重合用触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、有機酸などの酸、アンモニア、アミン類などのアルカリ、金属キレート化合物などを用いることができ、好適なものとしてTi、Ta、Zr、Al、Hf、Zn、Sn、Ptのいずれか1以上を含む金属キレート化合物を用いることができる。なかでも、金属キレート化合物は、Ti、Al、Zn、Zrのいずれか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものがさらに好ましく用いられる。
これらの触媒は硬化性シリコーン樹脂組成物として配合した際の安定性、被膜の硬度、無黄変性、硬化性などを考慮して選択される。
【0053】
縮合重合用触媒の配合量は、上記式(3)及び/または(4)で表される成分の合計重量に対して通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、一方上限は通常10重量%以下、好ましくは6重量%以下である。
添加量が上記範囲であると硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性、保存安定性が良好であり、加えて成形した樹脂成形体の品質が良好である。添加量が上限値を超えると組成物の保存安定性に問題が生じる場合があり、下限値未満では硬化時間が長くなり樹脂成形体の生産性が低下し、未硬化成分により樹脂成形体の品質が低下する傾向にある。
【0054】
<1−4.(D)シリコーンオイル>
本発明における(D)シリコーンオイルとは、常温常圧下において液体である、通常には下記一般式(5)で表される直鎖状シリコーンである。ここで、上記常温とは20℃±15℃(5〜35℃)の範囲の温度をいい、上記常圧とは大気圧に等しい圧力をいい、ほぼ一気圧である。また、液体とは流動性の有る状態をいう。
【化1】

上記式(5)中、Rは、それぞれ独立してアルケニル基および/またはSiH基等のヒドロシリル化付加反応に関与する官能性基を含有しない有機官能基、または水酸基を表し、それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。xは10〜2000の整数を表す。Rは、好ましくはそれぞれ独立に一価炭化水素基または水酸基を表し、より好ましくはアルキル基やアリル基を表し、更に好ましくはメチル基、エチル基、フェニル基を表す。すなわち、本発明において好ましいシリコーンオイルは、両末端をトリオルガノシリル基で封鎖されたポリジオルガノシロキサンであり、ポリジアルキルシロキサン、ポリジアリルシロキサン、ポリアルキルアリルシロキサンまたはこれらの共重合体がより好ましく、ポリジメチルシロキサンまたはポリメチルフェニルシロキサンが更に好ましい。本発明におけるシリコーンオイルがアリル基を有する場合、R全体におけるアリル基の割合は5割以下であることが好ましく、4割以下であることがより好ましい。
ポリジメチルシロキサンとしては、SH200(東レ・ダウコーニング社製)、KF−96、KF−96H、KF−965、KF−968(信越シリコーン社製)、TSF451(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、AK、AKF、AKC(旭化成ワッカーシリコーン社製)が市販品として入手できる。また、ポリメチルフェニルシロキサンとしては、SH510、SH550、SH710(東レ・ダウコーニング社製)、KF−50、KF−53、KF−54(信越シリコーン社製)、TSF431、TSF433、TSF4300(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)、AR(旭化成ワッカーシリコーン)が市販品として入手できる。
【0055】
<1−4−1.(D)シリコーンオイルの含有量>
本発明において、(D)シリコーンオイルは、硬化性シリコーン樹脂組成物中、(A)硬化性ポリオルガノシロキサン100重量部に対して0.1重量部以上、好ましくは0.15重量部以上、また、3重量部以下、好ましくは1重量部以下含有する。
シリコーンオイルを上記範囲で添加することにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化後の硬度が非添加時に比べて向上し、成形不良を防ぐことができたり、成形品の取扱いが容易になったりする。含有量が0.1重量部より小さいと、十分な硬度が得られず、成形時に破断して成形不良を生じ得る。また、含有量が3重量部より大きいと、効果が頭打ちになる上、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化が阻害され得る。
ここで、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化後の硬度は、例えばショアAまたはD硬度は、デュロメータを用いて測定することができる。
【0056】
<1−4−1.(D)シリコーンオイルの動粘度>
本発明において、(D)シリコーンオイルは、25℃における動粘度が100mm2/s以上50000mm2/s以下であることが好ましく、より好ましくは300mm2/s以上50000mm2/s以下である。
添加するシリコーンオイルの動粘度が上記範囲にあることにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化後の硬度が非添加時に比べて向上し、成形不良を防ぐことができたり、成形品の取扱いが容易になったりする。25℃における動粘度が100mm2/sより小さいと、硬化後に十分な硬度が得られず、成形時に破断して成形不良を生じ得る。また、50000mm2/sより大きいと、効果が頭打ちになる上、硬化前の硬化性シリコーン樹
脂組成物の取扱いが困難になったり、硬化が阻害され得る。
シリコーンオイルの動粘度は、例えば、回転粘度計を用いて測定した粘度(mPa・s)を比重で除することにより得ることができる。
【0057】
<1−5.その他の成分>
本発明の硬化性シリコーン樹脂中には、上記(A)硬化性ポリオルガノシロキサン、(B)白色顔料、(C)硬化触媒、(D)シリコーンオイルの他に、本発明の要旨を損なわない限り、必要に応じて他の成分を1種または2種以上を任意の比率及び組み合わせで含有させることができる。
【0058】
他の成分としては、例えば、硬化速度制御剤を含有させることができる。ここで硬化速度制御剤とは、硬化性シリコーン樹脂組成物を成形する際に、その成形効率を向上させるために硬化速度を制御するためのものであり、硬化遅延剤または硬化促進剤が挙げられる。
【0059】
硬化遅延剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、これらを併用してもかまわない。
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、ジメチルマレート等のマレイン酸エステル類等が例示される。脂肪族不飽和結合を含有する化合物の中でも、三重結合を有する化合物が好ましい。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示される。
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
硬化遅延剤の添加量は種々設定できるが、使用する(C)硬化触媒1molに対する好ましい添加量の下限は10-1mol以上、より好ましくは1mol以上であり、好ましい添加量の上限は103mol以下、より好ましくは50mol以下である。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
また、硬化遅延剤として、硬化遅延成分(触媒制御成分)を含むポリオルガノシロキサンを、(A)硬化性ポリオルガノシロキサンの一部として配合してもよい。
【0060】
硬化促進剤としては、熱硬化性樹脂を硬化させるものであれば特に制限はなく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられ、中でも高い反応促進性を示す点でイミダゾール類を用いるのが好ましい。
上記イミダゾール類としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられ、商品名としては、2E4MZ
、2PZ−CN、2PZ−CNS(四国化成工業株式会社)等がある。硬化促進剤の添加量は、(A)硬化性ポリオルガノシロキサンと(C)硬化触媒の合計100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下の範囲で添加することが好ましい。
【0061】
硬化速度制御剤の種類や配合量を上記のように設定とすることにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の成形が容易となる。例えば、金型への充填率が高くなったり、射出成形による成形時に金型からの漏れがなく、バリが発生しにくくなったりするメリットが得られる。
【0062】
また、他の成分として例えば、硬化性シリコーン樹脂組成物の流動性コントロールや白色顔料の沈降抑制の目的で、固体粒子を流動性調整剤として含有させることができる。流動性調整剤としては、含有させることで硬化性シリコーン樹脂組成物の粘度が高くなる常温から成形温度付近で固体の粒子であれば特に限定されないが、発光素子からの光や蛍光体により波長変換された光を吸収する性質が無いか非常に小さく、樹脂成形体の反射率を極端に低下させないもので、光や熱による変色、変質が小さく耐久性が高いものが好ましい。具体的には、シリカ微粒子、石英ビーズ、ガラスビーズ、ガラス繊維などの無機物繊維、窒化ホウ素、窒化アルミ等が挙げられる。また、例えば、繊維状アルミナのように、以下の特性(a)及び(b)のいずれか、もしくは両方を満たさない白色顔料を前述の白色顔料とは別に含有させることができる。
(a)一次粒子のアスペクト比が1.2以上4.0以下であること
(b)一次粒子径が0.1μm以上2.0μm以下であること
中でもチキソトロピー性付与効果が大きいシリカ微粒子は、組成物の粘度やチキソトロピー性をコントロールしやすく、好適に使用できる。石英ビーズ、ガラスビーズ、ガラス繊維などは、流動性調整剤としての効果のみならず、組成物の熱硬化後の強度、靭性を高める効果や組成物の線膨張係数を下げる効果も期待できるため好ましく、シリカ微粒子と併用するか単独で使用してもよい。
本発明に使用するシリカ微粒子は、特に限定されるものではないが、BET法による比表面積が、通常50m2/g以上、好ましくは80m2/g以上、さらに好ましくは100m2/g以上である。また、通常300m2/g以下、好ましくは200m2/g以下である。比表面積が小さすぎるとシリカ微粒子の添加効果が認められず、大きすぎると樹脂中への分散処理が困難になる。シリカ微粒子は、例えば親水性のシリカ微粒子の表面に存在するシラノール基と表面改質剤を反応させることにより表面を疎水化したものを使用してもよい。
【0063】
上記表面改質剤としては、アルキルシラン類の化合物が挙げられ、具体例としてジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、オクチルシランなどが挙げられる。
シリカ微粒子としては、例えばフュームドシリカを挙げることができる。フュームドシリカは、H2とO2との混合ガスを燃焼させた1100〜1400℃の炎でSiCl4ガスを酸化、加水分解させることにより作製される。フュームドシリカの一次粒子は、平均粒径が5〜50nm程度の非晶質の二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする球状の超微粒子であり、この一次粒子がそれぞれ凝集し、粒径が数百nmである二次粒子を形成する。フュームドシリカは、超微粒子であるとともに、急冷によって作製されるため、表面の構造が化学的に活性な状態となっている。
具体的には、例えば日本アエロジル株式会社製「アエロジル」(登録商標)が挙げられ、親水性アエロジル(登録商標)の例としては、「90」、「130」、「150」、「200」、「300」、疎水性アエロジル(登録商標)の例としては、「R8200」、「R972」、「R972V」、「R972CF」、「R974」、「R202」、「R805」、「R812」、「R812S」、「RY200」、「RY200S」「RX200」が挙げられる。
【0064】
また、組成物の熱硬化後の強度、靭性を高める目的で、ガラス繊維などの無機物繊維を含有させてもよく、また、熱伝導性を高めたるため、熱伝導率の高い窒化ホウ素、窒化アルミ、繊維状アルミナ等を前述の白色顔料とは別に含有させることができる。その他、硬化物の線膨張係数を下げる目的で、石英ビーズ、ガラスビーズ等を含有させることができる。
これらの添加する場合の含有量は、少なすぎると目的の効果か得られず、多すぎると硬化性シリコーン樹脂組成物の粘度が上がり、加工性に影響するので、十分な効果が発現し、組成物の加工性を損なわない範囲で適宜選択できる。通常、ポリオルガノシロキサン100重量部に対し500重量部以下、好ましくは200重量部以下である。
【0065】
これらの他に、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物中には、イオンマイグレーション(エレクトロケミカルマイグレーション)防止剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、カップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤などを本発明の目的及び効果を損なわない範囲において含有させることができる。
なお、カップリング剤としては例えばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0066】
<2.半導体発光装置用樹脂成形体>
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、半導体発光装置用樹脂成形体に用いることができる。
ここで、半導体発光装置用樹脂成形体とは、硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させた成形体であり、リードフレームなどの導電性金属配線と共に成形することにより半導体発光装置用パッケージとなる。また、半導体発光装置とは、上記半導体発光装置用樹脂成形体に半導体発光素子を含む発光装置である。半導体発光装置の一態様の構成を概略的に示す断面図を図1に示す。
【0067】
<2−1.半導体発光装置用樹脂成形体の成形方法>
本発明の半導体発光装置用樹脂成形体の成形方法として圧縮成形法、トランスファー成形法、及び射出成形法を例示する事ができる。これらのうち、好ましい成形方法としては、無駄な硬化物が発生せず二次加工が不要である(すなわちバリが発生しにくい)点から、樹脂成形体の成形工程の自動化、成形サイクルの短縮化、成形品のコスト削減が可能になる等大きなメリットがある、射出成形法、特に液状射出成形法(LIM成形)が挙げられる。LIM成形とトランスファー成形とを比較すると、LIM成形は、成形形状の自由
度が高く、成形機及び金型が比較的安価であるというメリットがある。
【0068】
射出成形法では射出成形機を用いて行う事ができる。シリンダー設定温度は樹脂組成物に応じて適宜選択すればよいが、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、さらに好ましくは、60℃以下である。金型温度は80℃以上、300℃以下。好ましくは100℃以上、250℃以下、さらに好ましくは、120℃以上、200℃以下である。射出時間は組成物によって変わるが、通常数秒あるいは1秒以下である。成形時間は樹脂組成物のゲル化速度や硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、通常3秒以上、600秒以下、好ましくは5秒以上、200秒以下、さらに好ましくは10秒以上、60秒以下である。
【0069】
液状射出成形(LIM成形)で樹脂を成形する際には、冷えた樹脂を熱い金型に送り込み化学反応を伴い粘度を上げていくため、通常は粘度上昇不十分なまま金型に到達する。すなわち、温度条件に対する粘度上昇に遅れが生じるため、樹脂の粘度の制御に加えて金型間やリードフレームと金型との隙間の精度が高いことも要求される。樹脂が金型に到達する際の粘度上昇が不十分な場合には、樹脂が金型の隙間やリードフレームと金型との隙間から漏れ出ることがあり、バリが発生しやすい。通常は10μm以下、好ましくは5μm以下、更に好ましくは3μm以下の金型隙間精度が要求される。金型に入る前にリードフレームを予熱することも、リードに沿ったバリの発生を抑えるのに効果がある。
また、樹脂の成形の際、金型を真空雰囲気下に置くことで、狭い空間への組成物の浸透が促進され、成形品内にエアボイドの発生を防ぐことができる。
液状射出成形(LIM成形)における硬化時間については、硬化度をグラフで表した際に、グラフの形がS字に立ち上がると良い。初期の硬化の立ち上がりが早すぎると金型への未充填が発生する場合がある。バリの発生を抑え、かつ金型への未充填を防止するには、組成物の硬化速度のコントロールと粘度調整が非常に重要である。金型に樹脂組成物が充填された後は、成形サイクルを短縮でき、硬化収縮により離型性が上がるので、硬化は早いほど良い。
硬化終了までの時間は通常60秒以内、好ましくは30秒以内、さらに好ましくは10秒以内である。必要に応じてポストキュアを行ってもよい。硬化速度は白金触媒種の選択、触媒量、硬化速度制御剤の使用、ポリオルガノシロキサンの架橋度のほか、金型温度、充填速度、射出圧力等の成形条件によっても調節できる。
【0070】
圧縮成形法ではコンプレッション成形機を用いて行う事ができる。成形温度は樹脂組成物に応じて適宜選択すればよいが、通常80℃以上、300℃以下、好ましくは100℃以上、250℃以下、さらに好ましくは、120℃以上、200℃以下である。成形時間は樹脂組成物の硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、通常3秒以上、1200秒以下、好ましくは5秒以上、900秒以下、さらに好ましくは10秒以上、600秒以下である。
【0071】
トランスファー成形法ではトランスファー成形機を用いて行う事ができる。成形温度は樹脂組成物に応じて適宜選択すればよいが、通常80℃以上、300℃以下、好ましくは100℃以上、250℃以下、さらに好ましくは、120℃以上、200℃以下である。成形時間は樹脂組成物のゲル化速度や硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、通常3秒以上、1200秒以下、好ましくは5秒以上、900秒以下、さらに好ましくは10秒以上、600秒以下である。
【0072】
いずれの成形法でも必要に応じて後硬化を行ってもよく、これにより樹脂成形体またはパッケージにおいて樹脂の硬化が進行し、より安定化する傾向にあり好ましい。
後硬化温度は100℃以上、300℃以下、好ましくは150℃以上、250℃以下、さらに好ましくは、170℃以上、230℃以下である。後硬化時間は通常3分間以上、24時間以下、好ましくは5分以上、10時間以下、さらに好ましくは10分間以上、5
時間以下である。
【0073】
<3.半導体発光装置パッケージ及び半導体発光装置>
本発明の半導体発光装置用樹脂成形体は、通常半導体発光素子を搭載して半導体発光装置として用いられる。半導体発光装置は、例えば図1に示す様に、半導体発光素子1、樹脂成形体2、ボンディングワイヤ3、封止材4、リードフレーム5等から構成される。この場合、リードフレーム5等の導電性材料と絶縁性の樹脂成形体からなるものを、パッケージと称する。
【0074】
半導体発光素子1は、近紫外領域の波長を有する光を発する近紫外半導体発光素子、紫領域の波長の光を発する紫半導体発光素子、青領域の波長の光を発する青色半導体発光素子などを用いることが可能であり、350nm以上520nm以下の波長を有する光を発する。図1においては半導体発光素子が1つのみ搭載されているが、複数個の半導体発光素子を線状に、あるいは平面状に配置することも可能である。半導体発光素子1を平面状に配置することで、面照明とすることができ、このような実施形態はより出力を強くしたい場合に好適である。
【0075】
パッケージを構成する樹脂成形体2は、リードフレーム5と共に成形される。パッケージの形状は特段限定されず平面型でもカップ型でもよい。樹脂成形体2は、そのすべてが本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物からなるものであってもよく、その一部が本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物からなるものであってもよく、制限されない。
【0076】
リードフレーム5は導電性の金属からなり、半導体発光装置外から電源を供給し、半導体発光素子1に通電する役割を果たす。
ボンディングワイヤ3は、半導体発光素子1をパッケージに固定する役割を有する。また、半導体発光素子1が電極となるリードフレームと接触していない場合には、導電性のボンディングワイヤ3が半導体発光素子1への電源供給の役割を担う。ボンディングワイヤ3は、リードフレーム5に圧着し、熱及び超音波の振動を与えることで接着させる。
パッケージを構成する樹脂成形体2は、半導体発光素子1が搭載され、蛍光体を混合した封止材4により封止されている。封止材4は、バインダー樹脂に蛍光体を混合した混合物であり、蛍光体は半導体発光素子1からの励起光を変換し、励起光と波長の異なる蛍光を発する。本実施形態においては、封止材が蛍光体層の役割を兼ねている。封止材4に含まれる蛍光体は、半導体発光素子1の励起光の波長に応じ、適宜選択される。白色光を発する半導体発光装置(白色LED)において、青色光を発する半導体発光素子を励起光源とする場合には、緑色及び赤色の蛍光体を蛍光体層に含ませることで白色光を生成することができる。紫色光を発する半導体発光素子の場合には、青色及び黄色の蛍光体を蛍光体層に含ませること、または青色、緑色及び赤色の蛍光体を蛍光体層に含ませることで白色光を生成することができる。
封止材4に含まれるバインダー樹脂は、通常封止材に用いられることが知られている透光性の樹脂を適宜選択すればよい。具体的にはエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられ、シリコーン樹脂を用いることが好ましい。
【0077】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物を用いて成形された半導体発光装置用樹脂成形体またはパッケージは、好ましいものとして以下の特徴を有する。
<3−1.半導体発光装置パッケージの反射率>
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物を用いて成形された半導体発光装置用樹脂成形体またはパッケージは、可視光について高反射率を維持することができることが好ましく、さらに紫色よりも短い波長の近紫外光及び紫外光についても高反射率を維持することができることが好ましい。具体的には、460nmの光の反射率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。また、波長400nmの光の反射率が6
0%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、波長360nmの光の反射率が60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
ここで、樹脂成形体等の反射率は、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物を熱硬化させて、厚さ0.4mmに成形した成形体を測定した場合の反射率をいう。前記熱硬化は、例えば、10kg/cm2の圧力下、180℃で4分間、硬化させることにより行うことができる。
樹脂成形体等の反射率は、樹脂の種類(例えば、樹脂の屈折率を変えることにより反射率を制御することができる。)や白色顔料の種類、白色顔料の粒径や含有量などにより制御することができる。
【0078】
<3−2.半導体発光装置パッケージの厚み>
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物を用いて形成された半導体発光装置パッケージは、通常、チップ装着面と前記チップ装着面と反対側に底面を有する。この場合、前記チップ装着面と底面の間の距離、すなわち半導体発光装置パッケージの厚みは、通常100μm以上、好ましくは200μm以上である。また、通常3000μm以下であり好ましくは2000μm以下である。厚みが薄すぎると底面に光が透過して反射率が低下する、パッケージの強度が不十分で取扱い上変形する、などの問題が生じるおそれがあり、厚すぎるとパッケージ自体も厚く嵩高くなるため、半導体発光装置の適用用途が限られる。
【実施例】
【0079】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0080】
[硬化性シリコーン樹脂組成物の調製、及び試験片の作製]
(C)硬化触媒を含有する(A)硬化性ポリオルガノシロキサンとして、フェニル基非含有シリコーンa(ビニル基:0.3mmol/g含有、白金触媒:8ppm含有、3700cp)、(A)硬化性ポリオルガノシロキサンとして、フェニル基非含有シリコーンb(ビニル基:0.1mmol/g含有、ヒドロシリル基:4.6mmol/g含有、600cp)、硬化速度制御剤として硬化遅延成分(触媒制御成分)を含有する(A)硬化性ポリオルガノシロキサンとして、フェニル基非含有シリコーンc(ビニル基:0.2mmol/g含有、ヒドロシリル基:0.1mmol/g含有、アルキニル基:0.2mmol/g含有、500cp)、(B)白色顔料としてアルミナ粉体(中心粒子径:1.2μm、平均アスペクト比:1.48)、(D)シリコーンオイルとしてポリジメチルシロキサンL(350mm2/s)又はポリジメチルシロキサンH(3000mm2/s)、及び流動性調整剤として表面処理(トリメチルシリル処理)済みフュームドシリカを表1に示す重量比で配合し、攪拌混合して、白色の硬化性シリコーン樹脂組成物を得た。これを熱プレス機にて150℃、10kg/cm2、硬化時間180秒の条件で硬化させ、直径13mm、厚み6mmの円形の試験片(テストピース)を得た。
【0081】
【表1】

【0082】
[試験片の硬度の測定]
上記で作製した試験片について、デュロメータにてショア硬度を測定した。また、試験片を更に200℃10分間加熱して後硬化したものについても、デュロメータにてショア硬度を測定した。
結果を表2に示す。シリコーンオイルを添加した実施例1〜4の試験片では比較例1の試験片よりもショア硬度が概ね高い値となった。即ちシリコーンオイルの添加により、硬く、強い(脆性が小さい)シリコーン樹脂組成物が得られた。
ショアA硬度もショアD硬度もその値が高い方が好ましく、ショアA硬度やショアD硬度が高いと、成形や、成形品の取扱いが容易となるという効果が得られる。
【0083】
【表2】

【0084】
[白色顔料の一次粒子径、及び一次粒子のアスペクト比の測定]
実施例で用いた(B)白色顔料(アルミナ粉体)のSEM観察により一次粒子径を計測したところ、0.3μmであった。また、長軸長さ(最大長径:一次粒子径として採用)と短軸長さ(長径に垂直方向で最も長い部分の長さ)も計測し、長軸長さ(最大長径)を短軸長さ(長径に垂直方向で最も長い部分の長さ)で除した値をアスペクト比とした。実施例で用いたアルミナ粉体のアスペクト比は1.48であった。
【0085】
[白色顔料の二次粒子の中心粒径D50の測定]
実施例で用いた(B)白色顔料(アルミナ粉体)について、二次粒子の中心粒径D50を測定した。10〜20mgのアルミナ粉体に0.2%のポリリン酸ナトリウム水溶液10gを加え、超音波振動でアルミナを分散させた分散液を用いて、日機装株式会社製 マイ
クロトラックMT3000IIにて測定した。なお、中心粒径D50は、積算%の体積基準粒度分布曲線が50%の横軸と交差するポイントの粒子径を言う。実施例で用いたアルミナ粉体の中心粒径D50は、1.2μmであった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、成形や成形品の取扱いが容易な硬化性シリコーン樹脂組成物を提供することができ、半導体発光装置用樹脂成形体の原材料に好適となるため、産業上非常に有用である。
【符号の説明】
【0087】
1 半導体発光素子
2 樹脂成形体
3 ボンディングワイヤ
4 封止材
5 リードフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硬化性ポリオルガノシロキサン、(B)白色顔料、(C)硬化触媒、及び(D)シリコーンオイルを含有する組成物において、
前記(B)白色顔料の含有量が、前記(A)硬化性ポリオルガノシロキサン100重量部に対して、20重量部以上であり、かつ
前記(D)シリコーンオイルの含有量が、前記(A)硬化性ポリオルガノシロキサン100重量部に対して、0.1重量部以上3重量部以下であることを特徴とする硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)シリコーンオイルの25℃における動粘度が100(mm2/s)以上50000(mm2/s)以下であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)シリコーンオイルが両末端をトリオルガノシリル基で封鎖されたポリ(ジオルガノシロキサン)であることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)硬化性ポリオルガノシロキサンが、2官能ケイ素基を有するポリオルガノシロキサン、分子内に2個以上のビニル基を有するポリオルガノシロキサン、及び分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリオルガノシロキサンである請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)白色顔料が、以下の特性(a)及び(b)を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
(a)一次粒子のアスペクト比が1.2以上4.0以下
(b)一次粒子径が0.1μm以上2.0μm以下
【請求項6】
前記(B)白色顔料の二次粒子の中心粒径が0.2μm以上5μm以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)白色顔料がアルミナであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物を成形してなる半導体発光装置用樹脂成形体。
【請求項9】
液状射出成形法により成形されたことを特徴とする請求項8に記載の樹脂成形体。
【請求項10】
請求項8または9に記載の樹脂成形体を有する半導体発光装置。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物を調製する工程、及び前記調製された硬化性シリコーン樹脂組成物を射出成形により成形する工程を含む、半導体発光装置用樹脂成形体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−1824(P2013−1824A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135017(P2011−135017)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】