説明

半導体発光装置用パッケージ及び発光装置

【課題】温度衝撃に強く、樹脂成形体からリードフレームや封止材が剥離しにくいパッケージであって、かつ、物理的衝撃に強く、割れや欠けが生じないパッケージを提供すること。
【解決手段】(A)樹脂と(B)フィラーとを含有する樹脂成形体を少なくとも備える半導体発光装置用パッケージであって、前記樹脂成形体は、対面角α=136°の正四角錐ダイヤモンドで作られたピラミッド形をしている圧子を材料表面に0.3kgfの力で15秒間押しつけることで痕跡を付けて実施されるビッカース硬度測定試験において、ビッカース硬度の逆数の1000倍で表される傷つき指数が1.0以下であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、特に発光ダイオード等の半導体発光素子を備えた半導体発光装置に用いられるパッケージ、及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子を備える半導体発光装置は図1に示す様に半導体発光素子1、樹脂成形体2、ボンディングワイヤー3、封止材4、リードフレーム5等から構成され、パッケージは主にリードフレーム5などの導電性金属配線及び絶縁性の樹脂成形体2からなる。
【0003】
従来、樹脂成形体に用いる絶縁性材料はポリアミド等の熱可塑性樹脂に白色顔料を配合したものが一般的に用いられてきた(例えば特許文献1参照)。発光に指向性が求められる半導体発光装置は、半導体発光素子より目的とする向きへ発せられた光だけでなく、それ以外の光を樹脂成形体やリードフレームなどの金属配線、及び反射材等で目的の向きに反射させ、発光効率を上げている。ポリアミドなどの熱可塑性樹脂が透光性であるために、樹脂成形体で反射させる際は樹脂に白色顔料を配合することで、樹脂と白色顔料の屈折率の差を利用し半導体発光素子からの光を反射し半導体発光装置としての発光効率を上げている。
【0004】
上記特許文献1では、白色顔料を使用した場合であっても、白色顔料の種類によってはその反射効率が十分でなく吸収や透過する光線も出てしまうため、結果として半導体発光素子からの光を目的の向きに集中できずに半導体発光装置としての効率が下がってしまう場合があった。
【0005】
また、ポリアミドを用いたパッケージは、ポリアミドが熱可塑性樹脂であり、環境問題より融点の高い鉛フリー半田が積極的に使用されリフロー温度が高くなる傾向にある現状ではその熱により軟化してしまうため耐熱性に問題がある。また、ポリアミドは紫外線、熱により、光劣化、熱劣化が起こるため、近年実用化が進んでいる青色〜近紫外線半導体発光素子のようなエネルギーの高い波長領域まで発光域を持つ発光素子を用いた場合、光による劣化が特に問題となる。また、より明るい発光素子が求められている現状においては、半導体発光素子から発せられる光束の大きな光、発熱により、熱劣化、光劣化の問題がより顕在化する。
【0006】
一方、耐熱性が求められる場合は焼結されたアルミナを配合したセラミックが絶縁材料として用いられる(例えば特許文献2参照)。セラミックを用いたパッケージは耐熱性が良いが、製造に際し成形後に高温での焼結工程が必要である。焼結工程では電気代などのコスト面での問題や、焼結により成形体の大きさ、形状が変化するために不良品が出やすく量産性に問題があった。
【0007】
これに対して近年、樹脂にポリオルガノシロキサンを用い、白色顔料として酸化チタンを用いたシリコーン樹脂組成物を成形したケースも提案されている(例えば特許文献3参照)。樹脂にポリオルガノシロキサンを用いる事により、ポリアミドを用いたものと比べ耐熱性の向上が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−283498号公報
【特許文献2】特開2004−288937号公報
【特許文献3】特開2009−155415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
半導体発光装置では半導体発光素子からの発熱があり、特に明るい発光素子が求められる場合にはその発熱も大きくなる。そのため、半導体発光素子からの発熱により半導体発光装置のパッケージを構成する樹脂成形体が膨張することで、樹脂成形体からリードフレームや封止材が剥がれやすくなるという新たな問題が生じた。この現象は、特にシリコーン樹脂を用いた場合に顕著である。
また、上記のような熱膨張に対して、膨張率を低くするために硬い樹脂成形体を用いると樹脂成形体がもろくなり、加工する際に屑が生じることがあったり、実装する際に割れや欠けが生じることがあった。本発明はこのような課題を解決し、樹脂成形体からリードフレームや封止材が剥離しにくいパッケージ、さらには、温度衝撃に強く、物理的衝撃に強く、割れや欠けが生じにくいパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、パッケージに用いる樹脂成形体を特定の傷つき指数を有する樹脂成形体とすることで、上記課題を解決できることを見出した。
【0011】
即ち本発明は以下のとおりである。
(A)樹脂と(B)フィラーを含有する樹脂成形体を少なくとも備える半導体発光装置用パッケージであって、
前記樹脂成形体は、対面角α=136°の正四角錐ダイヤモンドで作られたピラミッド形をしている圧子を材料表面に0.3kgfの力で15秒間押しつけることで痕跡を付けて実施されるビッカース硬度測定試験において、ビッカース硬度の逆数の1000倍で表される傷つき指数(μm2/gf)が1.0以下であることを特徴とする半導体発光装置用パッケージ。
【0012】
また、前記樹脂成型体は、前記樹脂成形体の断面観察において、樹脂成形体断面100μm2あたりに含まれる粒径0.2μm以上50μm以下の前記(B)フィラーの個数が100個以上350個以下であることが好ましい。
【0013】
また、前記樹脂成形体は、前記(A)樹脂としてポリオルガノシロキサンを含み、さらに(C)硬化触媒を含むことが好ましい。
【0014】
また、前記(B)フィラーは、アルミナを含むことが好ましく、前記(B)フィラーは、表面処理されていることが好ましい。
【0015】
また、前記樹脂成形体中に含まれる前記(A)樹脂(以下、「ベース樹脂」と称することがある。)と前記(B)フィラーの重量比が15〜60:85〜40であることが好ましい。
【0016】
また、前記樹脂成形体は、0.3mm厚において、波長460nmの光の反射率が60%以上であることが好ましく、波長400nmの光の反射率が50%以上であることが好ましい。
【0017】
また、前記樹脂成形体は、更に脂環式の炭化水素基を有する化合物を含むことが好ましく、前記樹脂成形体は、成形加工前の操作温度として一貫して45℃以下であり、かつ300℃以下の温度における成形加工により製造することが好ましい。
【0018】
本発明の別の態様は、半導体発光素子、上記記載のパッケージ、および封止材を少なくとも備える半導体発光装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、樹脂成形体からリードフレームや封止材が剥離しにくいパッケージを得ることができる。好ましい態様では、温度衝撃に強く、かつ、物理的衝撃に強く、割れや欠けが生じにくいパッケージを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の半導体発光装置の一態様を表す概念図である。
【図2】本発明の半導体発光装置の一態様を表す概念図である。
【図3】本発明のパッケージを構成する樹脂成形体の断面をSEMで観察した図である(図面代用写真)。
【図4】本発明のパッケージを用いた半導体発光装置の点灯耐久試験を行った結果を示すグラフである。
【図5】本発明のパッケージの封止材、リードフレームとの接着性評価結果を示す図である(図面代用写真)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<1.樹脂成形体>
本発明のパッケージは、(A)樹脂と(B)フィラーとを含有する樹脂成形体を少なくとも備える。樹脂成形体は、傷つき指数(単位はμm2/gf)が1.0以下であることを特徴とする。本発明の樹脂成形体は、このような構成を有することで温度衝撃に強い樹脂となり、半導体発光装置のパッケージ用樹脂として用いた場合には、樹脂成形体からリードフレームや封止材が剥離しない、熱信頼性の高いパッケージとなるという新たな知見を発明者は得た。
これまで、半導体発光素子からの発熱により、樹脂成形体が膨張することで樹脂成形体とリードフレームや封止材が剥離するという問題は報告されていない。本発明は、樹脂成形体を特定の傷つき指数の範囲とすることで、半導体発光装置を長期間使用しても樹脂成形体とリードフレームなどの金属配線の剥離の問題を防ぐことができるという、新規な課題を解決するものである。
【0022】
加えて、従来のシリコーン樹脂とは異なり、物理的衝撃にも強く、半導体発光装置に実装する際に、割れや欠けを生じにくくすることができる。従来パッケージに用いる樹脂については、割れや欠けを防止するために、単純に樹脂成形体の硬度を上げることが行われてきた。本発明のパッケージが備える樹脂成形体は、硬度の如何に関わらず上記優れた性質を有する樹脂成形体である。
【0023】
<1−1.樹脂成形体の傷つき指数>
本発明のパッケージが備える樹脂成形体は、対面角α=136°の正四角錐ダイヤモンドで作られたピラミッド形をしている圧子を材料表面に0.3kgfの力で15秒間押しつけることで痕跡を付けて実施されるビッカース硬度測定試験において、ビッカース硬度(単位はkgf/mm2)の逆数の1000倍(この値を以下「傷つき指数」と定義する。単位はμm2/gf。)が1.0以下である。
【0024】
ビッカース硬度とは、以下の方法と計算式により算出されるものである。
材料表面に0.3kgfの力で15秒間押しつけることで痕跡を付け、荷重を除いたあとに残ったへこみの対角線の長さd(mm)から表面積S(mm2)を算出する。ただし、材料が白色である為、共焦点顕微鏡を用いて痕跡の観察を行う。試験荷重F(kgf)
を算出した表面積S(mm2)で割った値がビッカース硬さ(HV)である。
HV(kgf/mm2)=F/S
=2F[sin(α/2)]/d2
=1.8544(F/d2
F:荷重(kgf) d:痕跡幅(mm)
【0025】
測定する樹脂成形体は、後述する樹脂組成物を、例えば、1mm厚に成形し、熱エネルギーや光エネルギーを与え硬化させたものであり、本発明においては、硬化前の樹脂組成物を10kg/cm2の圧力下、150℃で3分間の条件で硬化させ、さらに200℃で10分間後硬化させた後の樹脂成形体を測定する。本発明において硬化とは、流動性を示す状態から流動性を示さない状態に状態変化することをいい、例えば、対象物を水平より45度傾けた状態で30分間静置しても全く流動性を有しない場合、硬化したとする。
【0026】
本発明の樹脂成形体は、傷つき指数(μm2/gf)が1.0以下であるが、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.2以下であることにより温度衝撃に強く、半導体発光装置としての長期使用においても樹脂成形体からリードフレームや封止材が剥離しない、信頼性の高いパッケージとなる。加えて、傷つき指数が上記範囲にあると、物理的衝撃にも強く、パッケージを半導体発光装置に実装する際に、割れや欠けを生じにくいという効果も奏する。
【0027】
傷つき指数が小さいという事象は、一般的に傷つかない(物理的な衝撃に対して変形しない)ほど非常に硬いもの(例としてダイヤモンドが挙げられる)か、もしくは弾性が高く、傷はつくがすぐに元に戻る(物理的な衝撃に対して一時的に変形するが、元の形状に戻る)ものの二種類の材料系を示す。いずれの場合にも成形体として使用した場合に、その形状が崩れ難く、容器として、また骨材としての利用に非常に適した材料となる。この観点から、本発明においては特に傷つき指数としては1.0以下である必要がある。傷つき指数が1.0を越えるものは、容器(特に壁厚みの薄いデザインの場合)として使用した場合に、十分な硬度もしくは弾性力を有さないために、ロボットによるつまみ時や、機械的なベルトコンベアー輸送時等に容器が変形し、ひいては容器内の内容物が変形したり、精密な半導体素子等を実装している場合には、半導体発光素子をパッケージに固定している金ワイヤーなどを破損したりすることがある。
【0028】
傷つき指数が1以下である本発明の半導体発光装置用パッケージでは、物理的な衝撃に対して一時的に変形するが、元の形状に戻るという性質を有することから、半導体発光装置用パッケージとして採用した際に、例えば、以下のような複数の効果が期待できる。
【0029】
チップ実装後のパッケージの選別プロセスにおいて、多くの場合、パッケージの性能規格合否を自動的に評価して選別され、選別直後に合否に応じた収納籠に該パッケージが高速投入され、この際にパッケージに対して強い物理的な衝撃を与えられることがあり、パッケージの割れや欠けが問題となっていた。これに対し、本発明の傷つき指数が小さいパッケージでは、物理的な衝撃を受けても元の形状に戻ることができるので不良数を抑制し、生産性悪化を改善することができる。
また、金ワイヤーをボンディングする際、通常は超音波(と必要に応じて熱)を印加するが、その超音波でパッケージに極微小なクラックが入ってしまうことが多かった。これに対し、本発明の傷つき指数が小さいパッケージ(好ましくは充分な弾性力を有するパッケージ)では、その強度および/または柔らかさ(弾性)があるが故に強い超音波の下でも破壊されることなく、超音波をある程度逃がしつつ熱に換えることが出来、溶融させた部分の金をより安定な構造に落ち着かせて、長期間に渡って使用する際の断線問題を大きく改善させることが出来る。
【0030】
パッケージに封止材を、ディスペンサー(塗布装置)を用いて塗布する工程においては、細いノズルの先がパッケージ内に近づいて液が塗布され、塗布後にノズルが上昇して待機状態に戻り、次のパッケージに近づくという工程が繰り返される。この工程において、塗布量を安定化するためにノズルの先をパッケージ表面に接触させた状態で塗布すること、もしくは、塗布後に一度接触させることが望まれるが、パッケージの強度や変形の観点から現実的にはノズルの先をパッケージ表面に接触させて塗布することはできなかった。しかしながら、本発明の傷つき指数が小さいパッケージでは、ノズルがパッケージ表面に比較的強く接触しても、傷、欠け、へこみ、変形等が生じたり、塗布される封止材の容量が変化したりすることなく塗布することが出来る。
【0031】
さらに、傷つき指数が1以下のパッケージは、充分な弾性力を有する。充分な弾性力を有することから、以下に例示する効果が期待される。
傷つき指数が1以下のパッケージは、取り扱い時に、衝撃を伴う外力を受けてもその応力を緩和できる他、変形してもすぐに元に戻る(即ち、物理的衝撃に強い)という利点がある。また、微小な割れ等に伴う粉立ちが少なく、搬送装置のメンテナンス頻度を減らすことができる。
【0032】
傷つき指数が1以下のパッケージは、接着性が良好であることに加えて、パッケージに応力緩和能が内在するために、金属電極部位や封止層との界面での剥離を大きく抑制することができる。特に点灯消灯を繰り返す半導体発光装置においては、温度の上下に伴って各部材が膨張や収縮を繰り返すが、その際の応力による剥離ひいては割れも抑制することができ、半導体発光装置としての耐久性を向上させることができる。
【0033】
半田接合時、各部材間での線膨張係数の相違から、例えば接合後の金属電極とパッケージ(樹脂成形体部)との間に隙間が生じ易く、ごく狭い隙間であっても発光効率が低下するなどの問題があった。これに対し、本発明のパッケージでは応力を緩和でき、かつ伸縮性が良好であるため、半田接合時に隙間が生じにくく、点灯時に温度が上昇しても蛍光体を含有する封止材が漏れにくく、結果として温度衝撃に強く、耐久性が向上するという効果が得られる。
近年、LEDモジュールとしての組立品そのものにも、局面への適用を見越した柔軟性や可とう性が益々求められている。本発明の半導体発光装置に用いる材料を樹脂成形体や、それ以外の部位に使用すると、一旦平面もしくは直線状の形状で製造したモジュールを使用時に曲げても、破壊に伴う不良が起こりにくいという効果が得られる。
【0034】
上記傷つき指数は、後述する架橋剤、及び触媒制御剤の種類や含有量を調整したり、樹脂成形体に含有させるフィラーの量を調整したり、フィラーの表面処理をすることで、上記範囲に制御することができる。また、極めて硬い材料、すなわち傷つき指数を極めて小さくするためには、後述する脂環式の炭化水素基を有する化合物を含むことで達成することができるが、その種類や含有量を調整することによっても傷つき指数の調整が可能である。
より具体的は、三方向以上に結合を伸ばす架橋点同士を長い直線状分子でつないだ高分子を用いることによって材料に弾力性を持たせる方法や、樹脂にフィラーを多く充填して硬くしたり、逆に少なく充填して柔らかくしたり、高分子側鎖に嵩高い官能基を導入して硬さを調節する方法等を例示することができる。
【0035】
さらに具体的には、ベースとなる樹脂として例えばヒドロシリル化によって硬化するポリオルガノシロキサンを使用することが好ましい。この場合、樹脂成形体の、後述するフィラーをのぞくベース樹脂中におけるビニル基の量とヒドロシリル基の量をともに10mmol/g以下の範囲のものを使用することが好ましい。つまり、ヒドロシリル化を起こす反応点(架橋点)の個数を制御された範囲にすることが重要である。
ベース樹脂に含まれるビニル基の量としては、好ましくは0.1〜5mmol/g、より好ましくは0.1〜2.5mmol/g、さらに好ましくは0.1〜2mmol/gである。ベース樹脂に含まれるヒドロシリル基の量としては、好ましくは5mmol/g以下であり、より好ましくは0.1〜5mmol/g、さらに好ましくは0.2〜2mmol/gである。
ベース樹脂中におけるビニル基の量とヒドロシリル基の量が上記範囲であることに加えて、ポリオルガノシロキサンと、後に規定するフィラーの比を、好ましくは15〜60:85〜40、より好ましくは15〜40:85〜60、さらに好ましくは30〜40:70〜60とすることが好ましい。
これらの組合せによって、傷つき指数を1以下にすることが可能となる。
【0036】
さらに傷つき指数の値を小さくしたい場合には、一般には材料を極めて硬いものとするよりはむしろ材料の弾性を上げる手法をとることが簡便であり、その目的から、上述したように樹脂中の架橋点を分散させて、さらに、その架橋点同士を長めの直線状分子鎖で繋ぐ構造をとらせることが好ましい。具体的には通常、平均分子量として500以上、200,000以下、好ましくは700以上、100,000以下、更に好ましくは1000以上で20,000以下のもので両末端のみにビニル基を有するポリオルガノシロキサンと、分子中にランダムにヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンとを付加重合させて得られるシリコーンを使用する方法が有効である。
また、後述の液状射出成型により成形する樹脂は、通常、熱硬化性のものであり、熱可塑性の樹脂とは異なり、高温や強い超音波の下でも弾性を有する樹脂となる傾向にある。例えば、ヒドロシリル化の反応にて加熱硬化するシリコーンがその一例であり、室温下では特に弾性を有し、傷つき指数が小さくなる傾向にある。
【0037】
<1−2.反射率>
本発明のパッケージを構成する樹脂成形体は、可視光について高反射率を維持することができることが好ましい。0.3mm厚において波長460nmの光の反射率が60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
また、0.3mm厚において波長400nmの光の反射率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
樹脂成形体の反射率は、樹脂の種類や白色顔料の種類、白色顔料の粒径や含有量などにより制御することができる。
【0038】
<1−3.屈折率>
本発明のパッケージを構成する樹脂成形体は、フィラーを含まない、即ちベース樹脂のみを硬化させた成形体の屈折率として1.41〜1.54であることが好ましい。ベース樹脂成形体の屈折率がこのような範囲の場合には、封止材に用いる樹脂との兼ね合いにより、樹脂成形体と封止材の界面における光の反射ロスを抑えることができる。
樹脂成形体の屈折率は、樹脂の種類や樹脂に含まれる官能基、フィラーの種類や含有量により制御することができる。具体的には官能基としてはフェニル基を含有させることで屈折率を上げることが出来、フッ素を含有させることで低減させることが出来る。ちなみに、フェニル基を有しないジメチル系のポリオルガノシロキサン(屈折率1.40〜1.41)に、Siの個数(mol数)に対しフェニル基の含有数として0.8個(mol)程度添加することで屈折率がおよそ1.53〜1.54に到達することが知られている。
また、フィラーとしてアルミナ(屈折率:1.7)、酸化亜鉛(屈折率:2.0)、ジルコニア(屈折率:2.4)、チタニア(屈折率:2.7)等の粒子を加えることによって屈折率を高めることも可能である。
【0039】
<1−4.硬度>
本発明のパッケージを構成する樹脂成形体は、そのShoreA硬度が、好ましくは50以上、より好ましくは70以上である。また、本発明のパッケージを構成する樹脂成形体は、そのShoreD硬度が、好ましくは10〜95、より好ましくは30〜80である。
硬度が上記範囲であると、通常、必要な強度とともに同時に弾性を有させることが可能となり、外力に対して破壊されにくい材料とすることができる。
【0040】
<2−1.ベース樹脂>
本発明のパッケージを構成する樹脂成形体は、硬化させた場合の傷つき指数が上記範囲であれば、そのベース樹脂は熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても良く、その種類は特段限定されない。熱可塑性樹脂としては、芳香族ナイロン系樹脂、ポリフタルアミド樹脂(PPA)、サルホン系樹脂、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、ポリケトン樹脂(PK)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ABS樹脂、PBT樹脂などが使用できる。また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂などが使用できる。このうち、耐熱性などの観点からシリコーン系樹脂を用いることが好ましい。
【0041】
本発明の樹脂成形体においてベース樹脂としてシリコーン樹脂を用いる場合、ポリオルガノシロキサンが用いられる。
上記ポリオルガノシロキサンとは、ケイ素原子が酸素を介して他のケイ素原子と結合した部分を持つ構造に有機基が付加している高分子物質を指す。通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば以下に示す一般組成式(1)で表される化合物や、その混合物が挙げられる。
(R123SiO1/2M(R45SiO2/2D(R6SiO3/2T(SiO4/2Q
・・・(1)
ここで、上記式(1)中、R1からR6は独立して、有機官能基、水酸基、水素原子から選択される。またM、D、TおよびQは0から1未満であり、M+D+T+Q=1を満足する数である。
【0042】
ポリオルガノシロキサンは、常温常圧下において液体であっても、常温常圧下で固体であってもよいが、より望ましくは液体である。上記常温とは20℃±15℃(5〜35℃)の範囲の温度をいい、常圧とは大気圧に等しい圧力をいい、ほぼ1気圧である。
【0043】
ポリオルガノシロキサンは、硬化のメカニズムにより分類すると、通常、付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのポリオルガノシロキサンを挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型ポリオルガノシロキサン)、及び縮合硬化タイプ(縮合型ポリオルガノシロキサン)が好適である。中でも、成形加工時に副生成物(成形容器内の圧を上昇させたり、硬化材料中に泡として残存したりするため好ましくない)の発生が無く、また反応が可逆性でないヒドロシリル化(付加重合)によって硬化するポリオルガノシロキサンのタイプがより好適である。
【0044】
上記付加型ポリオルガノシロキサンとは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシラン等の(C1)アルケニル基を有する珪素含有化合物と、例えばヒドロシラン等の(C2)ヒドロシリル基を含有する珪素化合物とを総ヒドロシリル基量が0.5倍以上、2.0倍以下となる量比で混合し、(C3)Pt触媒などの付加縮合触媒の存在下反応させて得られるSi−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。
【0045】
(C1)アルケニル基を有する珪素含有化合物としては、下記一般式(2)
nSiO[(4-n)/2] ・・・(2)
で示される、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。
但し、上記式(2)中、Rは同一又は異種の置換又は非置換の1価炭化水素基、アルコキシ基、又は水酸基で、nは1≦n<2を満たす正の数である。
上記(C1)アルケニル基を有するケイ素含有化合物においてアルケニル基とは、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基などの炭素数2〜8のアルケニル基であることが好ましい。Rが炭化水素基である場合はメチル基、エチル基などのアルキル基、ビニル基、フェニル基等の炭素数1〜20の1価の炭化水素基から選択される。好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基である。
耐UV性が要求される場合には上記式中Rのうちの65%程度はメチル基であることが好ましい。つまり、Siの個数(mol数)に対してメチル基以外の官能基の含有数として0.5個(mol)程度であることが好ましい。より好ましくは80%以上がメチル基である。Rが炭素数1〜8のアルコキシ基や水酸基であってもよいが、アルコキシ基や水酸基の含有率は(C1)アルケニル基を有する珪素含有化合物の重量の10%以下であることが好ましい。またnは1≦n<2を満たす正数であるが、この値が2以上であるとパッケージ用材料とリードフレーム等の導電体との接着に十分な強度が得られなくなり、1未満であると合成上このオルガノポリシロキサンの合成が困難になる。
【0046】
上記(C1)アルケニル基を有する珪素含有化合物としては、例えばビニルシラン、ビニル基含有ポリオルガノシロキサンを挙げることができ、これらを1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。上記の中でも分子内に2個以上のビニル基を有するビニル基含有ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0047】
分子内に2個以上のビニル基を有するビニル基含有ポリオルガノシロキサンとして具体的には以下のものが挙げられる。
両末端ビニルポリジメチルシロキサン
DMS−V00、DMS−V03、DMS−V05、DMS−V21、DMS−V22、DMS−V25、DMS−V31、DMS−V33、DMS−V35、DMS−V41、DMS−V42、DMS−V46、DMS−V52(いずれもGelest社製)
両末端ビニルジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマー
PDV−0325、PDV−0331、PDV−0341、PDV−0346、PDV−0525、PDV−0541、PDV−1625、PDV−1631、PDV−1635、PDV−1641、PDV−2331、PDV−2335(いずれもGelest社製)
両末端ビニルフェニルメチルシロキサン
PMV−9925(Gelest社製)
トリメチルシリル基封鎖ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー
VDT−123、VDT−127、VDT−131、VDT−153、VDT−431、VDT−731、VDT−954(いずれもGelest社製)
ビニルT−構造ポリマー
VTT−106、MTV−124(いずれもGelest社製)
【0048】
また、(C2)ヒドロシリル基を含有する珪素化合物としては、例えばヒドロシラン、ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンを挙げることができ、これらを1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。上記の中でも分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0049】
分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサンとして具体的には以下のものが挙げられる。
両末端ヒドロシリルポリジメチルシロキサン
DMS−H03、DMS−H11、DMS−H21、DMS−H25、DMS−H31、DMS−H41(いずれもGelest社製)
両末端トリメチルシリル封鎖メチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーHMS−013、HMS−031、HMS−064、HMS−071、HMS−082、HMS−151、HMS−301、HMS−501(いずれもGelest社製)
【0050】
本発明における上記(C1)アルケニル基を有する珪素含有化合物および(C2)ヒドロシリル基を含有する珪素化合物の使用量比は、アルケニル基1molに対してヒドロシリル基が通常0.5mol以上であり、好ましくは0.7mol以上、より好ましくは0.8mol以上である。また通常2.0mol以下であり、好ましくは1.8mol以下、より好ましくは1.5mol以下である。このような割合で反応させることにより、硬化後の未反応末端基の残存量を低減し、点灯使用時の着色や剥離等の経時変化が少ない硬化物を得ることができる。
【0051】
また、フィラー添加前のベース樹脂の粘度としては、取り扱いの容易さから、常温で100,000cp以下が好ましい。より好ましくは20,000cp以下である。さらに好ましくは10,000cp以下で、特に好ましくは4,000以下である。下限は特には制限されないが、揮発度(沸点)との関係上一般的には15cp以上である。
【0052】
さらに、ベース樹脂のポリスチレンを標準物質として測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィーでの平均分子量測定値として、樹脂の平均分子量は500以上、100,000以下であることが好ましい。より好ましくは700以上50,000以下である。さらに、揮発成分を少なくする(他部材との接着性を維持するため)目的から1000以上、また、成形前の材料の取扱いのし易さから20,000以下であることがより好ましい。
【0053】
上記縮合型ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。具体的には、下記一般式(3)及び/又は(4)で表わされる化合物、及び/又はそのオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
【0054】
m+n1m-n ・・・(3)
式(3)中、Mはケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表し、Xは加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を表し、mはMの価数を表す1以上の整数を表し、nはX基の数を表わす1以上の整数を表す。但し、m≧nである。
【0055】
(MS+t1s-t-1u2 ・・・(4)
式(4)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表し、Xは加水分解性基を表し、Y1は1価の有機基を表し、Y2はu価の有機基を表し、sはMの価数を表す1以上の整数を表し、tは1以上s−1以下の整数を表し、uは2以上の整数を表す。
【0056】
縮合型ポリオルガノシロキサンは公知のものを使用することができ、例えば、特開2006−77234号公報、特開2006−291018号公報、特開2006−316264号公報、特開2006−336010号公報、特開2006−348284号公報、および国際公開2006/090804号パンフレットに記載の半導体発光デバイス用部
材が好適である。
【0057】
縮合型ポリオルガノシロキサンの中で、好ましい材料について、以下に説明する。
ポリオルガノシロキサンは、一般に半導体発光装置に用いた場合、半導体発光素子や半導体素子を配置する基板、金属配線等との接着性が弱いことがあるが、これらと密着性が高いポリオルガノシロキサンとするため、特に、以下の[1]および[2]のうち1つ以上の特徴を有する縮合型ポリオルガノシロキサンも好ましい。
[1]ケイ素含有率が20重量%以上である。
[2]測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
(a)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
【0058】
本発明においては、上記の特徴[1]乃至[2]に加えて、以下の特徴[3]も有するポリオルガノシロキサンであってもよい。
[3]フェニル基を有する。
フェニル基を有するポリオルガノシロキサンを用いた樹脂成形体とすることで材料の強度がアップする他、屈折率が上昇するため封止材に用いる樹脂との兼ね合いにより、樹脂成形体と封止材の界面における光の反射ロスを抑えることができる。特に上記(1)で表されるポリオルガノシロキサン1分子中に含まれるSiの個数(mol数)に対しフェニル基の含有数が平均0.8個(mol)以下である場合には、樹脂成形体の屈折率と白色フィラーの屈折率との差を大きくとって、なおかつ封止樹脂との屈折率差を小さくすることが出来、樹脂成形体と封止材の界面における光の反射ロスをより抑えることが出来るために更に好ましい。具体的な白色フィラーを含まない樹脂材料の屈折率としては1.41〜1.54の範囲が好ましい。
【0059】
また、上記の特徴を有するポリオルガノシロキサンの中でも、反応の進行に伴い脱離する成分の無い付加型ポリオルガノシロキサンが、閉じた金型内での硬化を想定した場合の成形加工性、硬化物の耐熱性(重量変化が少ないこと)等の観点からは好ましい。成形加工方法により、縮合反応の進行に伴い発生する成分の成形加工性への影響が大きくない場合には縮合型ポリオルガノシロキサンも用いることができ、その場合には、特にシラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下である縮合型ポリオルガノシロキサンが好ましい。より好ましくは、シラノール含有率として3重量%以下である。
【0060】
<2−2.フィラー>
本発明においてフィラーは、樹脂の硬化に対して阻害のない公知の無機又は有機フィラーを適宜選択する事が出来る。
本発明においては、上記フィラーは、上記樹脂成形体の断面観察において、樹脂成形体断面100μm2あたりに含まれる粒径0.2μm以上50μm以下のフィラーの個数が100個以上350個以下であることが好ましい。
【0061】
半導体発光装置のパッケージに用いられる樹脂成形体は、強度を保つため等の理由から、ベース樹脂にフィラーを配合して製造することが一般的である。このような樹脂成形体をパッケージ用に加工すると、従来の樹脂では加工した際に生じる破断面にフィラーが露出し易かった。そして、フィラーが露出した樹脂を長期間使用すると、樹脂が半導体発光素子からの発熱により変形し、フィラーと樹脂との間に隙間が出来るため、汚染物質を吸
着しやすくなる。その結果、発光装置の輝度が低下することを本発明者らは見出した。このような問題は従来知られていなかった。
そして本発明者らは、樹脂成形体の破断面に存在するフィラーの数を制御することで、上記フィラーの露出により生じる輝度の低下を防止することに想到した。
【0062】
上記樹脂成形体に含まれるフィラーのうち、50μm以上のフィラーについては、存在していたとしても、その大きさと表面積の小ささ故に本発明の樹脂成形体の物性改善効果に及ぼす影響が殆ど無い。また、0.2μm以下の大きさになると、以下に説明する電子顕微鏡での観察が難しく、また、フィラーの径が小さすぎて、その存在が本発明の効果に及ぼす影響が殆どなくなるため、0.2μm以上50μm以下のフィラーの数を規定することとした。
【0063】
本発明では、樹脂成形体の断面観察において、樹脂成形体断面100μm2あたりに含まれるフィラーの個数が350個以上である場合には、露出したフィラーの量が多く、長期間の使用により発光装置の輝度が低下してしまうほか、材料としても脆いものとなる。そのため、このような樹脂成形体をパッケージとして用いた場合には、長期信頼性を有する発光装置とならない傾向にある。
一方、フィラーの個数が100個以下である場合にはフィラーの含有量が少なすぎるため、このような樹脂成形体を用いたパッケージは反射材としての機能を十分に有しておらず、結果として輝度の低下を生じる傾向にある。
より一層の長期信頼性を有する観点から、樹脂成形体の断面観察において、樹脂成形体断面100μm2あたりに含まれるフィラーの個数が120〜300個であることがより好ましく、150〜280個であることが更に好ましい。
【0064】
上記樹脂成形体中に含まれる白色顔料の測定方法について、以下説明する。
断面観察の具体的方法としては、SEM、ESCA、TEM、SEM−EDXなどの手法が好適に用いられる。
【0065】
中でも0.2μm以上径の粒子をある面積に亘って観察するという意図から、SEMもしくはESCAが好適に用いられる。
さらにその中でも測定の簡便性から、SEM観察が好ましい。
【0066】
樹脂成形体の断面のSEM観察には以下の手法に基づいて観察を行なった。
1)はさみでサンプルを小さく切り出す。
2)2液混合型エポキシで包埋固定する。
3)ライカマイクロシステムズ(株)製のウルトラミクロトームUC6とFC6を用いて、設定温度−120℃で、ダイヤモンドナイフで切削する
4)切削面を自作装置でイオンエッチング処理を行う。
5)フィルジェン(株)製のオスミウムプラズマコーターで導電処理を行う。
6)HITACHI製のSEM S800で観察を行う。
7)0.2μm径以上50μm径以下の粒子を100μm2中にいくつあるかカウントする。
【0067】
また、本発明者らは、上記樹脂成形体断面中のフィラーの個数は、樹脂成形体とフィラーとの接着性により制御できるという知見も得た。すなわち、樹脂成形体とフィラーの接着性が良い場合には、樹脂成形体の破断面のフィラーが樹脂成形体の被膜に覆われており、露出しにくい傾向にあることを見出した。
本発明の樹脂成形体において、樹脂成形体の断面100μm2あたりに含まれるフィラーの個数は、ベース樹脂に含まれる吸着性官能基量の大小、フィラー表面の活性の高低を調節する表面処理、粘度調節剤の含有により、制御することができる。例えば、ベース樹
脂及びフィラー表面にお互いが共有結合、水素結合もしくは配位結合などの化学結合を出来るような官能基を予め導入しておくことが一般的な制御手法として挙げられる。
【0068】
本発明に用いることができる無機フィラーとしては、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化珪素、酸化チタン(チタニア)、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属塩;窒化硼素、アルミナホワイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、硼酸アルミニウム、クレー、タルク、カオリン、雲母、合成雲母などが挙げられる。
また、有機フィラーとしては、弗素樹脂粒子、グアナミン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子等の樹脂粒子などを挙げることができるが、いずれもこれらに限定されるものではない。
【0069】
このうち、反射材として高い機能を発揮する観点からは、白色を呈する白色顔料が好ましい。特に可視光の吸収が弱く、屈折率が高いことが好ましく、具体的にはチタニア、アルミナなどが特に好ましい。発光素子の発光波長が410nm以下である場合には、紫外乃至近紫外域の光吸収が少ない観点からアルミナ、酸化ジルコニウムなどが好ましい。また、熱伝導率の観点からは、アルミナ、窒化硼素が好ましい。フィラーは単独もしくは2種以上混合して用いる事が出来る。
【0070】
上記アルミナは、アルミニウムの酸化物をいい、結晶形態は問わないが、化学的に安定、融点が高い、機械的強度が大きい、硬度が高い、電気絶縁抵抗が大きい等の特性を持つα−アルミナが好適に使用できる。
また、アルミナ中にアルミニウム、酸素以外の元素を不純物として含む場合には可視光領域に吸収を持つために着色するため、好ましくない。好ましくは、クロム、鉄、チタンの含有量がそれぞれ0.02%以下、好ましくは0.01%以下のものを使用できる。また、材料の熱伝導率は高い方が好ましく、熱伝導率を高くするためには、純度98%以上、好ましくは純度99%以上のアルミナを用いることが好ましく、特に低ソーダアルミナが好ましい。
【0071】
チタニアとしては具体的には富士チタン工業社製のTA−100、TA−200、TA−300、TA−500、TR−840等が挙げられ、アルミナとしては具体的には日本軽金属社製A30シリーズ、ANシリーズ、A40シリーズ、MMシリーズ、LSシリーズ、AHPシリーズ、アドマテックス社製「Admafine Alumina」AO−5タイプ、AO−8タイプ、日本バイコウスキー社製CRシリーズ、大明化学工業社製タイミクロン、Aldrich社製10μm2径アルミナ粉末、昭和電工社製A−42シリーズ、A−43シリーズ、A−50シリーズ、ASシリーズ、AL−43シリーズ、AL−47シリーズ、AL−160SGシリーズ、A−170シリーズ、AL−170シリーズ、住友化学社製AMシリーズ、ALシリーズ、AMSシリーズ、AESシリーズ、AKPシリーズ、AAシリーズ等が挙げられ、ジルコニアとしては具体的には第一希元素化学工業社製UEP−100等が挙げられ、酸化亜鉛としては具体的にはハクスイテック社製酸化亜鉛2種等が挙げられる。
【0072】
上記フィラーは、アスペクト比が1.0〜4.0であることが好ましく、1.0〜3.0であることがより好ましい。アスペクト比が上記範囲である場合には、散乱により高反射率を発現しやすく、特に近紫外領域の短波長の光の反射が大きい。
【0073】
また、上記フィラーとして白色顔料を用いる場合に、1次粒子径が0.1μm以上2μm以下であることが好ましい。下限値については好ましくは0.15μm以上、更に好ましくは0.2μm以上であり、上限値については好ましくは1μm以下、更に好ましくは
0.8μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。
1次粒子径が小さすぎると白色顔料は、散乱光強度が小さいため反射率は低くなる傾向があり、1次粒子径が大きすぎると白色顔料は、散乱強度は大きくなるが、前方散乱傾向になるため反射率は小さくなる傾向にある。なお、樹脂組成物中の白色顔料の充填率を上げる等の目的で、1次粒子径が2μmよりも大きい白色顔料を併用することもできる。
【0074】
一方、上記白色顔料は、2次粒子のメディアン径(D50)が、0.2μm以上50μm以下であるものが好ましく、0.2μm以上5μm以下であるものがより好ましい。なお、樹脂組成物中の白色顔料の充填率を上げる等の目的で、2次粒子径が50μmよりも大きい白色顔料を併用することもできる。
【0075】
本発明における1次粒子とは粉体を構成している粒子のうち、他と明確に区別できる最小単位をいい、1次粒子径はSEMなどの電子顕微鏡観察により計測した1次粒子の粒子径をいう。一方、1次粒子が凝集してできる凝集粒子を2次粒子といい、2次粒子径はSEMなどの電子顕微鏡観察以外にも、粉体を適当な分散媒(例えばアルミナの場合は水)に分散させて粒度分析計等で測定した粒径を言う。本明細書中において述べる粒径もしくは粒子径は特に記載しない場合において2次粒子径のことをさす。この粒子径はばらつきがある場合は、数点(例えば10点)をSEM観察し、その平均値を粒子径としてもとめることができる。また、測定の際、個々の粒子径が球状でない場合はもっとも長い、即ち長軸の長さを粒子径とする。
【0076】
上記フィラーは、ベース樹脂との接着性を上げるため、表面処理することが好ましい。表面処理としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤で処理することが挙げられる。
このようなカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いることが好ましい。
【0077】
なお、表面処理に用いるカップリング剤の表面処理方法については、通常の処理方法によって実施されればよく、その方法は特に限定されるものではない。例えばシランカップリング剤を適当な溶媒中に溶解し、この溶液中にフィラーを浸し、溶媒を留去および加熱乾燥する方法などが挙げられる。
【0078】
また、樹脂成形体におけるフィラーの含有量は、ベース樹脂とフィラーの重量比が15〜60:85〜40であることが、上記樹脂成形体の傷つき指数を好適な範囲に制御しやすくなり、その結果温度衝撃に強く、樹脂成形体からリードフレームや封止材が剥離しにくく、かつ物理的衝撃に強く割れや欠けが生じない樹脂成形体を得やすくなる。上記範囲は30〜40:70〜60であることがより好ましい。
【0079】
各々の系に応じて良好なフィラーの種類や適した範囲の含有量を選択することで、弾性を維持して傷つき指数を小さくすることが可能となる。
【0080】
さらにまた、成形体の強度アップを図る目的で、またフィラーの一部として、ガラス繊維やガラスファイバー、ガラスパウダー等を用いることもできる。
好ましいガラス繊維やガラスファイバー、ガラスパウダーとしては、具体的には、デンカ社製大粒径シリカFB−40S、セントラル硝子社製EFDE50−31、EGP20
0−10、EFH75−10、NSG Vetrotex社製REV1、REV7、REV8等が挙げられる。
【0081】
これらの材料の添加に際しても、各々の系に合った種類、適した範囲の含有量を選択することで傷つき指数を小さくすることが可能となる。
【0082】
<2−3.硬化触媒>
本発明における硬化触媒とはベース樹脂を硬化させる触媒である。硬化触媒を加えることにより重合反応が早まり硬化する。
【0083】
本発明の樹脂成形体がシリコーン樹脂の場合は、ポリオルガノシロキサンの硬化機構により付加重合用触媒、縮合重合用触媒がある。付加重合用触媒としては、上記(C1)成分中のアルケニル基と上記(C2)成分中のヒドロシリル基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒であり、この付加縮合触媒の例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。付加重合用触媒の配合量は、通常白金族金属として上記(C1)及び(C2)成分の合計重量に対して通常1ppm以上、好ましくは2ppm以上であり、通常500ppm以下、好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。これにより硬化反応速度を高く維持することができると同時に、大量に高価な金属触媒を使用することによる経済性の低さと活性な触媒種の残存による材料の耐久性低下(加熱保管時の着色や耐UV性等)を避けることが可能となる。
【0084】
縮合重合用触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、有機酸などの酸、アンモニア、アミン類などのアルカリ、金属キレート化合物などを用いることができ、好適なものとしてTi、Ta、Zr、Al、Hf、Zn、Sn、Ptのいずれか1以上を含む金属キレート化合物を用いることができる。なかでも、金属キレート化合物は、Ti、Al、Zn、Zrのいずれか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものがさらに好ましく用いられる。
これらの触媒は半導体発光装置パッケージ材料として配合した際の安定性、被膜の硬度、無黄変性、硬化性などを考慮して選択される。
【0085】
縮合重合用触媒の配合量は、上記式(3)及び(4)で表される成分の合計重量に対して通常0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜6重量%であることがより好ましい。
添加量が上記範囲であると半導体発光装置パッケージ材料の硬化性、保存安定性、パッケージの品質が良好である。添加量が上限値以上と成るとパッケージ材料の保存安定性に問題が生じ、下限値未満と成ると硬化時間が長くなりパッケージの生産性の低下、未硬化成分によりパッケージの品質が低下する。
【0086】
<2−4.その他の成分>
本発明の樹脂組成物中には、本発明の要旨を損なわない限り、必要に応じて他の成分を1種、または2種以上、任意の比率及び組み合わせで含有させることができる。
例えば、樹脂組成物の流動性コントロールや白色顔料の沈降抑制の目的で、粒径0.2μm未満のシリカ微粒子を含有させることができる。このシリカ微粒子は本発明におけるフィラーとは定義しない。
上記シリカ微粒子の含有量は、通常、ベース樹脂がシリコーンである場合には、ポリオルガノシロキサン100重量部に対し60重量部以下、好ましくは40重量部以下である。シリカ微粒子を均一に分散させ、充分な弾性を有する材料とするために、該シリカ微粒子表面はトリメチルシリル化処理がなされていることが好ましい。さらには残存する酸分がアミン成分で中和されていると安定な材料となることから、ヘキサメチルジシラザンに
よって処理がなされていることがより好ましい。分散性や濡れ性と添加効果とのバランスから、該シリカ微粒子のBET法による比表面積としては5m2/g〜400m2/gが好ましく、さらには150m2/g〜250m2/gが好ましい。
比表面積が小さすぎるとシリカ微粒子の添加効果が認められず、大きすぎると樹脂中への分散処理が困難になる。シリカ微粒子は、例えば親水性のシリカ微粒子の表面に存在するシラノール基と表面改質剤を反応させることにより表面を疎水化したものを使用してもよい。
【0087】
表面改質剤としては、アルキルシラン類の化合物が挙げられ、具体例としてジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、オクチルシラン、ジメチルシリコーンオイルなどが挙げられる。
【0088】
シリカ微粒子としては、例えばフュームドシリカを挙げることができ、フュームドシリカは、H2とO2との混合ガスを燃焼させた1100〜1400℃の炎でSiCl4ガスを酸化、加水分解させることにより作製される。フュームドシリカの一次粒子は、平均粒径が5〜50nm程度の非晶質の二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする球状の超微粒子であり、この一次粒子がそれぞれ凝集し、粒径が数百nmである二次粒子を形成する。フュームドシリカは、超微粒子であるとともに、急冷によって作製されるため、表面の構造が化学的に活性な状態となっている。
【0089】
具体的には、例えば日本アエロジル株式会社製「アエロジル」(登録商標)が挙げられ、親水性アエロジル(登録商標)の例としては、「90」、「130」、「150」、「200」、「300」、疎水性アエロジル(登録商標)の例としては、「R8200」、「R972」、「R972V」、「R972CF」、「R974」、「R202」、「R805」、「R812」、「R812S」、「RY200」、「RY200S」「RX200」が挙げられる。
【0090】
また、ガラス繊維やガラスファイバー、ガラスパウダー等を添加剤として用いることで成形体の強度アップを図ることも好ましい。
【0091】
また、樹脂組成物を成形した成形体の傷つき指数を調整するため、架橋剤を加えることもできる。架橋剤としては、例えば、下記一般式(6)で表わされる化合物及び/又はその部分加水分解縮合物が好適に用いられる。
7aSiX4-a ・・・(6)
上記式(6)中、R7は非置換又は置換の一価炭化水素基であり、Xは加水分解性基であり、aは0又は1である。
【0092】
一般式(6)中、R7で表される非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数10以下、好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6の低級アルキル基;
ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;(メタ)アクリロイル基;
(メタ)アクリロイルオキシ基;
シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;
フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;
ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;
及び、これらの基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子等で置換された基、例えば、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等の、炭素原子数1〜10、好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6のものが挙げられる。このうち、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基及びフェニル基であり、特に好ましく
はメチル基及びフェニル基である。
【0093】
一般式(6)中、Xで表される加水分解性基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、イソプロペノキシ基等のアルケニルオキシ基、アセトキシ基等のアシロキシ基、ジメチルアミノキシ基等のアミノキシ基等が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
【0094】
一般式(6)で表される化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン等の3官能性アルコキシシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等の4官能性アルコキシシラン;メチルトリプロペノキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリ(ブタノキシム)シラン、ビニルトリ(ブタノキシム)シラン、フェニルトリ(ブタノキシム)シラン、プロピルトリ(ブタノキシム)シラン、テトラ(ブタノキシム)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリ(ブタノキシム)シラン、3−クロロプロピルトリ(ブタノキシム)シラン、メチルトリ(プロパノキシム)シラン、メチルトリ(ペンタノキシム)シラン、メチルトリ(イソペンタノキシム)シラン、ビニルトリ(シクロペンタノキシム)シラン、メチルトリ(シクロヘキサノキシム)シラン及びこれらの部分加水分解縮合物等が挙げられ、好ましくはアルコキシシラン類とその部分加水分解縮合物である。
【0095】
樹脂組成物中に含まれる架橋剤の配合量は、ベース樹脂がシリコーンである場合には、ポリオルガノシロキサン100重量部に対して0〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは0〜20重量部、特に好ましくは0〜10重量部である。配合量が30重量部より多いと樹脂の硬度があがり、傷つき指数としての値も高くなりすぎる傾向にある。
【0096】
また、樹脂成形体の弾性を高めて物理的特性を改善して傷つき指数を小さくする目的において、粉状シリコーンゴムなどのゴム状弾性体を添加することも好ましい。
添加量としては、樹脂成形体100重量部に対して0〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは0〜20重量部、特に好ましくは0〜5重量部である。配合量が30重量部より多いと高分子として共有結合により、もしくは分子同士の絡み合いによって発現される強度が小さくなり、逆に成形体として脆くなる。
【0097】
また、樹脂組成物を成形した成形体の傷つき指数の値を調整するため、硬化遅延剤(触媒制御剤)を加えることもできる。硬化遅延剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、これらを併用してもかまわない。
【0098】
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、ジメチルマレート等のマレイン酸エステル類等が例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。有機過酸化物としては、ジ−t−ブ
チルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示される。
【0099】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
【0100】
硬化遅延剤の添加量は種々設定できるが、使用する(C)硬化触媒1molに対する好ましい添加量の下限は10-1モル、より好ましくは1モルであり、好ましい添加量の上限は103モル、より好ましくは50モルである。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0101】
また、樹脂組成物を成形した成形体の物理特性を調整するため、脂環式の炭化水素基を有する化合物を加えることも好ましい。脂環式の炭化水素基を有する化合物としては、シクロヘキシル基やノルボルニル基を有するシランカップリング剤や、ビニル基を有するシクロヘキサン系有機化合物が挙げられ、特にトリビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネンが好ましい。充分な弾性を与えるという材料面からの観点と、入手がし易いという経済面からの観点から、最も好ましいのは、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンである。
上記脂環式の炭化水素基を有する化合物の含有量は適宜設定できるが、樹脂成形体100重量部当たり0〜10重量部であることが好ましく、2〜5重量部であることがより好ましい。
【0102】
また、樹脂組成物の熱硬化後の強度、靭性を高める目的で、ガラス繊維などの無機物繊維を含有させてもよく、また、熱伝導性を高めたるため、熱伝導率の高い窒化ホウ素、窒化アルミ、繊維状アルミナ等を前述の白色顔料とは別に含有させることができる。その他、硬化物の線膨張係数を下げる目的で、石英ビーズ、ガラスビーズ等を含有させることができる。
これらの添加する場合の含有量は、少なすぎると目的の効果か得られず、多すぎると樹脂組成物の粘度が上がり、加工性に影響するので、十分な効果が発現し、材料の加工性を損なわない範囲で適宜選択できる。通常、ポリオルガノシロキサン100重量部に対し100重量部以下、好ましくは60重量部以下である。
【0103】
また上記樹脂組成物中には、その他、イオンマイグレーション(エレクトロケミカルマイグレーション)防止剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、カップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤などを本発明の目的および効果を損なわない範囲において含有させることができる。
【0104】
なお、これら以外にカップリング剤を添加することも成形体の物理特性をより一層制御する観点から好ましい。一部はフィラー表面修飾剤や架橋剤の箇所でも紹介したが、好ましいカップリング剤としては例えばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応
性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0105】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0106】
<3.本発明の樹脂成形体の製造方法>
本発明の半導体発光装置用パッケージが備える樹脂成形体は、以下に説明する樹脂組成物を成形することにより得られる。
【0107】
<3-1.樹脂組成物の製造方法>
(使用原料)
使用する原料としては、上述した(A)ポリオルガノシロキサン、(B)フィラーの他、適宜、シリカ微粒子、硬化触媒、硬化遅延剤、およびその他の添加剤を用いることができる。
ここで、各原料の配合量は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に制限はないが、上述した範囲にすることが好ましい。
【0108】
(混合方法)
各原料を混合する際は、液状媒体としてポリオルガノシロキサンを使用することができる。例えば、所定量のポリオルガノシロキサン、フィラー、硬化触媒等を計量し、攪拌装置、ミキサー、高速ディスパー、ホモジナイザー、3本ロール、ニーダー、遠心脱泡装置等で混合する等、従来公知の方法で混合することができる。
(A)フィラーを(B)ポリオルガノシロキサンに混合させる場合の混合方法としては、特に制限はなく、遠心力を使用する方式の装置を用いても、攪拌翼で攪拌混合する方式の装置を用いてもよい。中でも、傷つき指数が1以下のパッケージを製造するために特に好ましい攪拌装置としては、充分な弾性を有する材料を素早く製造するという観点から、自転と公転の双方の力を利用して混合させる方式が好ましい。具体的には、Thinky社製の泡取練太郎、Dalton社製やプライミクス社製のプラネタリーミキサー等が挙げられる。これらの装置を使用することによって、(A)フィラーの分散度の高い混合物を得ることができ、混合後の樹脂組成物の弾性力向上が期待される。さらには、ムラが少なく均一な混合が出来て、使用時の欠けや割れ、粉立ちを抑制することが出来る。
さらに、フィラーの分散にムラのない均一な材料を得るために、泡取練太郎を使用する場合には、攪拌時に真空脱泡工程を有することが好ましく、プラネタリーミキサー使用時にも真空下での攪拌混合操作を実施することが好ましい。
【0109】
(混合の形態)
上述の原料成分を全て混合して、1液型の樹脂組成物を製造してもよいが、2液型にしてもよい。2液型の 場合、例えば、(i)ポリオルガノシロキサンとフィラーとシリカ微粒子とを主成分とするポリオルガノシロキサン樹脂組成物と、(ii)硬化触媒と硬化遅延剤とを主成分とする架橋剤液の2液を調製しておき、使用直前に(i)ポリオルガノシロキサン樹脂組成物と(ii)架橋剤液とを混合することもできる。
【0110】
(樹脂組成物の保管)
樹脂組成物の保管方法に特に制限はないが、保管時の環境温度を15℃以下とすると、硬化反応の急速な進行を抑制することで、成形の際の金型への充填不良を防止することができるので好ましい。中でも、樹脂組成物の保管時の環境温度を0℃より高くすると保管中にSiH存在量が少なくなる傾向にあり、環境温度を0℃以下、好ましくは−20℃以下にすると樹脂成形体中のSiH存在量が多くなる傾向にあるので、SiH存在量が特定の範囲となるよう、保管時の環境温度を調整することが好ましい。
【0111】
<3−2.成形方法>
本発明の樹脂成形体の成形方法として圧縮成形法やトランスファー成形法や射出成形法が挙げられる。中でも、熱硬化性樹脂(例えば、ヒドロシリル化の反応にて加熱硬化するポリオルガノシロキサン)を射出成形すると、傷つき指数が小さくなり、割れや欠けが生じにくくなる傾向にあり、好ましい。さらに、射出成型法は、圧縮成型法等と比べて装置に対する初期投資額が小さくて済むため、経済的効果も高い。
【0112】
樹脂成形体は、成形加工前の材料を製造するプロセス温度、及び保管温度として一貫して45℃以下であり、かつ300℃以下の温度における成形加工により製造されることが好ましい。
【0113】
圧縮成形法ではコンプレッション成形機を用いて行う事が出来る。成形温度は材料に応じて適宜選択すればよいが、通常80℃以上、300℃以下、好ましくは100℃以上、250℃以下、さらに好ましくは、130℃以上、200℃以下である。成形時間は材料の硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、通常3秒以上、1200秒以下、好ましくは5秒以上、1000秒以下、さらに好ましくは10秒以上、900秒以下である。
【0114】
トランスファー成形法ではトランスファー成形機を用いて行う事が出来る。成形温度は材料に応じて適宜選択すればよいが、通常80℃以上、300℃以下、好ましくは100℃以上、250℃以下、さらに好ましくは、130℃以上、200℃以下である。成形時間は材料のゲル化速度や硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、通常3秒以上、1200秒以下、好ましくは5秒以上、1000秒以下、さらに好ましくは10秒以上、900秒以下である。
【0115】
射出成形法では射出成形機を用いて行う事が出来る。シリンダー設定温度は材料に応じて適宜選択すればよいが、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、さらに好ましくは、60℃以下である。金型温度は80℃以上、300℃以下、好ましくは100℃以上、250℃以下、さらに好ましくは、130℃以上、200℃以下である。射出時間は材料によって変わるが、通常数秒あるいは秒以下である。成形時間は材料のゲル化速度や硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、通常3秒以上、1200秒以下、好ましくは5秒以上、1000秒以下、さらに好ましくは10秒以上、900秒以下である。
成形時の温度と時間の組み合わせとしては、いずれの成形法においても、経済的な観点から、300℃以下の温度にて20分間以下加温することが好ましい。成形時間が短いことは、経済的にも寄与がある他、樹脂組成物の劣化も抑えられ、かつ加温途中でのフィラーの沈降を抑えることが出来る。また、短時間による昇温・降温を経て成形されることで、その後の半田付け工程において樹脂成形体と電極表面との隙間の発生を抑制することができ、接着性、および耐久性を向上させることができる。
【0116】
いずれの成形法でも必要に応じて後硬化を行う事ができ、後硬化温度は100℃以上、300℃以下、好ましくは150℃以上、250℃以下、さらに好ましくは、170℃以上、250℃以下である。後硬化時間は通常1分以上、24時間以下、好ましくは3分以上、10時間以下、さらに好ましくは5分以上、5時間以下である。
【0117】
本発明の樹脂成形体は、成形の際に金属配線と共に成形することで、半導体発光装置用パッケージとすることができる。例えば、金属配線として配線を有する基板を作成し、基板上に金型を用いて樹脂成形体を射出成形する方法や、金属配線としてリードフレームを金型に配置して樹脂成形体を射出成形する方法などにより製造することができる。
【0118】
<4.半導体発光装置>
本発明の半体導体発光装置用パッケージは、通常半導体発光素子を搭載して半導体発光装置として用いられる。半導体発光装置の概要を、図を用いて説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
図1には、半導体発光装置の一例が示され、半導体発光素子1、樹脂成形体2および金属リードフレーム5からなるパッケージ、ボンディングワイヤー3、封止材4等から構成される。
【0119】
半導体発光素子1は、近紫外領域の波長を有する光を発する近紫外半導体発光素子、紫領域の波長の光を発する紫半導体発光素子、青領域の波長の光を発する青色半導体発光素子などを用いることが可能であり、350nm以上520nm以下の波長を有する光を発する。図1においては半導体発光素子が1つのみ記載されているが、複数個の半導体発光素子を線状、平面状に配置することも可能である。半導体発光素子1を平面状に配置することで、容易に面照明とすることができ、該実施形態は、より出力を強くしたい場合に好適である。
【0120】
パッケージを形成する樹脂成形体2は、リードフレーム5と共に成形される。パッケージの形状は特段限定されず平面型でもカップ型でもよいが、光に指向性を持たせる観点からカップ型とすることが好ましい。リードフレーム5は導電性の金属からなり、半導体発光装置外からの電源供給を行い、半導体発光素子1に通電する役割を果たす。
【0121】
ボンディングワイヤー3は、半導体発光素子1をパッケージに固定する。また、半導体発光素子1が電極となるリードフレームと接触していない場合には、導電性のボンディングワイヤー3が半導体発光素子1への電極供給の役割を担う。ボンディングワイヤー3は、リードフレーム5に圧着し、熱及び超音波の振動を与えることで接着させるが、リードフレーム5の表面が銀または銀合金である場合には、当該接着性が向上し、好ましい。
【0122】
封止材4は、バインダー樹脂に蛍光体を混合させた混合物であり、蛍光体が半導体発光素子1からの励起光を蛍光に変換する。本実施形態においては、封止材が蛍光体層の役割を兼ねている。封止材4に含まれる蛍光体は、半導体発光素子1の励起光の波長に応じて適宜選択される。白色光を発する発光装置において、青色励起光を発する半導体発光素子を励起光源とする場合であれば、緑色及び赤色の蛍光体を蛍光体層に含ませることで白色光を生成することができる。紫色励起光を発する半導体発光素子の場合であれば、青色及び黄色の蛍光体を蛍光体層に含ませる場合や、青色、緑色、及び赤色の蛍光体を蛍光体層に含ませる場合などが挙げられる。
封止材4に含まれるバインダー樹脂は、従来封止材に用いられている透光性のものを適宜選択することが可能であり、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが用いられるが、シリコーン樹脂を用いることが好ましい。
【0123】
封止材4は、蛍光体を混合せず封止の役割のみを持たせ、蛍光体層を別に構成する態様も本発明の実施の態様である。例えば図2のように、樹脂成形体2を覆うように透明基板(図示せず)を用意し、その上に蛍光体層6を形成する態様も考えられる。このような態様の場合、半導体発光素子1と蛍光体層6とが距離をあけて配置されているため、蛍光体層6の劣化を防ぐことができ、また発光装置の出力も向上させることができる。半導体発
光素子1と蛍光体層6との距離は、0.1〜10mmであることが好ましく、0.15〜5mmであることがより好ましい。
【0124】
図1においては、樹脂成形体2に半導体発光素子1が直接搭載されており、半導体発光素子1が搭載された箇所の樹脂成形体2の厚さは、通常100μm以上、好ましくは200μm以上である。また、通常3000μm以下であり好ましくは2000μm以下である。厚みが薄すぎると底面に光が透過して反射率が低下する傾向があり、パッケージの強度が不十分で取り扱い上変形する、などの問題が生じるおそれがあり、厚すぎるとパッケージ自体も厚く嵩高くなるため、半導体発光装置の適用用途が限られる可能性がある。
【実施例】
【0125】
以下、本発明について実施例を挙げより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0126】
[実施例1]
58mLのポリエチレン製軟膏壺に、6.0gのアルミナ(かさ密度:0.8、平均粒子径:1.2μm、平均アスペクト比:1.48、純度:99.12%)、0.25gの表面処理(トリメチルシリル処理)済みフュームドシリカ、フェニル基非含有シリコーン(ビニル基:0.3mmol/g含有、白金:8ppm含有、常温での粘度3700cp。以下、このシリコーンを「フェニル基非含有シリコーンE」と表記する。)を3.04g、フェニル基非含有シリコーン(ビニル基:0.1mmol/g含有、ヒドロシリル基:4.6mmol/g含有、常温での粘度600cp。以下、このシリコーンを「フェニル基非含有シリコーンF」と表記する。)を0.30g、硬化遅延成分(触媒制御成分)を含むフェニル基非含有シリコーン(ビニル基:0.2mmol/g含有、ヒドロシリル基:0.1mmol/g含有、アルキニル基:0.2mmol/g含有、500cp。以下、このシリコーンを「フェニル基非含有シリコーンG」と表記する。)を0.15g入れ、室温雰囲気下にてThinky社製泡取練太郎ARV−200にて攪拌した。再度0.25gの表面処理(トリメチルシリル処理)済みフュームドシリカを添加し、室温雰囲気下にてARV−200にて真空脱泡を実施することにより白色樹脂組成物1を得た。
【0127】
得られた白色樹脂組成物1を1.3cm径で0.3mm厚、1.0mm厚、3.0mm厚のステンレス製型に各々入れて、銀板上にて10kg/cm2の圧力下、空気中にて3分間150℃で加温加圧プレスし、さらに通風乾燥機内にて200℃で10分間後硬化することによって樹脂成形体1乃至3を得た。なお、樹脂成形体1乃至3のベース樹脂とフィラーの比は36.8:63.2である。
【0128】
[物性の測定]
得られた樹脂成形体1について反射率、樹脂成形体2について傷つき指数、樹脂成形体3について硬度の測定を行った。
反射率は、樹脂成形体1(0.3mm厚)に対してコニカミノルタ社製SPECTROPHOTOMETER CM−2600dを用いて、測定径3mmにて波長400nmの光の反射率、及び波長460nmの光の反射率を測定した。
また硬度は、JIS K6253の記述に従って、樹脂成形体3(3.0mm厚)を二枚重ねたものに対してデュロメーターを用いてShoreA及びShoreDを測定した。
一方、傷つき指数は、樹脂成形体2(1.0mm厚)に対して対面角α=136°の正四角錐ダイヤモンドで作られたピラミッド形をしている圧子を、樹脂成形体表面に0.3kgfの力で15秒間押しつけることで痕跡を付け、荷重を除いたあとに残ったへこみの対角線の長さd(mm)から表面積S(mm2)を算出し、測定した。
【0129】
0.3mm厚の樹脂成形体1の反射率は400nmの光照射下では94.2%であり、460nmの光照射下では94.3%であった。また、3.0mm厚の樹脂成形体3の硬度はShore Aで91、Shore Dで33であり、1.0mm厚の樹脂成形体2の傷つき指数は0μm2/gfであった。
【0130】
銀板上にて0.3mm厚にて成形したサンプルは、金型から取り外す際にも剥離することも崩れることもなく、またその後、スパチュラで横から少々の力を加えても銀表面から剥離することも崩れることも無かった。
よって、この傷つき指数1.0μm2/gf以下のサンプルは脆くなく、銀表面へも良好に接着する材料であることが判明した。
また、樹脂成形体1 100μm2中におけるフィラーの数は平均183個とカウントされた。測定方法はHITACHI製のSEM S800を用いて次のとおり行った。
1)はさみで樹脂成形体1小さく切り出した。
2)2液混合型エポキシで包埋固定した。
3)ライカマイクロシステムズ(株)製のウルトラミクロトームUC6とFC6を用いて、設定温度−120℃でダイヤモンドナイフで切削した。
4)切削面を自作装置でイオンエッチング処理を行った。
5)フィルジェン(株)製のオスミウムプラズマコーターで導電処理を行った。
6)HITACHI製のSEM S800で観察を行った。
7)0.2μm径以上50μm径以下の粒子を100μm2中にいくつあるかカウントした。SEMにて観察した様子を図3に示す。
【0131】
[実施例2]
フェニル基非含有シリコーンEを1.82g、フェニル基非含有シリコーンFを0.18g、硬化遅延成分(触媒制御成分)を含むフェニル基非含有シリコーンGを0.09g、アルドリッチ社製1,2,4−トリビニルシクロヘキサンを0.37g、ヒドロシリル基をSiの個数(mol数)に対して0.5個(mol)含有する直鎖状シリコーン(平均分子量:5600、常温での粘度17cp)を1.04g使用したこと(トータルのヒドロシリル基のモル数をトータルのビニル基のモル数の1.1倍にそろえたこと)以外は実施例1と同様にして樹脂成形体4を作成した。なお、樹脂成形体4のベース樹脂とフィラーの比は36.8:63.2である。
樹脂成形体4(3.0mm厚)について硬度を測定したところ、ShoreDで73であり、実施例1の樹脂成形体3と比べて高い値となった。
【0132】
[実施例3]
フェニル基非含有シリコーンH(ビニル基:1.2mmol/g含有、白金:6.8ppm含有)を1.75g、フェニル基非含有シリコーンI(ビニル基:0.3mmol/g含有、ヒドロシリル基:1.8mmol/g含有)を1.75g使用したこと(両シリコーン混合後の常温の粘度は1460cpであった。)以外は実施例1と同様にして樹脂成形体5を作成した。なお、樹脂成形体5のベース樹脂とフィラーの比は36.8:63.2である。
【0133】
実施例1同様に、樹脂成形体5の物性を測定したところ、0.3mm厚とした樹脂成形体5の反射率は400nmの光照射下では94.6%であり、460nmの光照射下では94.6%であった。また、3.0mm厚とした樹脂成形体5の硬度はShore Aは90以上で、Shore Dは40であり、1.0mm厚とした樹脂成形体5の傷つき指数は0μm2/gfであった。
【0134】
[比較例1]
数μm〜100μm径の球状シリカ及び白色顔料としてチタニアを、フィラー総量とし
て樹脂成形体中80重量%以上、Shore Dが90以上となるように硬度を上げた市販のシリコーン系パッケージ材料を実施例1と同様の条件で成形し、樹脂成形体6を得た。1.0mm厚とした樹脂成形体6の傷つき指数は12μm2/gfであった。
樹脂成形体6の5mm角1mm厚のピース4個をガラス製のサンプル瓶に入れ20回(約4回/秒)振って目視観察を行なったところ、ガラス瓶内壁に非常に多数の微粉の付着が認められた。よってこのシリコーン系パッケージ材料は、硬度は高いが、脆いものであることが判明した。
【0135】
[比較例2]
共立エレックス社製のセラミックスLEDパッケージ(M5050N(KA−6))の傷つき指数は1.3μm2/gfであった。このパッケージ4個をガラス製のサンプル瓶に入れ20回(約4回/秒)振って目視観察を行なったところ、欠けや微粉末の発生は認められなかった。
【0136】
[比較例3]
ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリフタルアミド(アモデルA4122)材の1.0mm厚のときの傷つき指数は16μm2/gfであった。
【0137】
[比較例4]
表面処理(トリメチルシリル処理)済みフュームドシリカの替わりにガラスファイバー(単繊維径:6μm、平均繊維長:50μm、表面シランカップリング処理済み)を1.5g、フェニル基非含有シリコーンEを2.17g、フェニル基非含有シリコーンFを0.22g、硬化遅延成分(触媒制御成分)を含むフェニル基非含有シリコーンGを0.11g使用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂成形体7を作成した。なお、樹脂成形体7のベース樹脂とフィラーの比は25.0:75.0である。
【0138】
実施例1同様に、樹脂成形体7の物性を測定したところ、0.3mm厚とした樹脂成形体7の反射率は400nmの光照射下では90.7%であり、460nmの光照射下では92.8%であった。また、3.0mm厚とした樹脂成形体7の硬度はShoreAで96、ShoreDで58であり、1.0mm厚とした樹脂成形体7の傷つき指数は487μm2/gfであった。
【0139】
銀板上にて0.3cm厚にて成形した樹脂成形体7は、金型から取り外す際に剥離が認められた。さらに、#80の紙やすりで表面を荒らした銀板上にて0.3mm厚にて成形した樹脂成形体7も、金型から取り外す際にも剥離が認められた。よって、この傷つき指数の大きなシリコーン系樹脂成形体7は銀への接着性に乏しいことが判明した。樹脂成形体7では、ガラスファイバーの添加によって材料の弾性が低下したことにより傷つき指数が大きくなってしまったと推定される。
【0140】
[耐久評価試験]
実施例3で得られた白色樹脂組成物を、全面銀メッキした銅リードフレームとともに加熱射出成形して作成した縦5mm×横5mm×高さ1.5mm、開口部の直径3.6mmの凹部を有するカップ状の表面実装型パッケージに成形し、パッケージ1を得た。また、これと同形の比較例3のPPAパッケージ(パッケージ2)を準備し、LEDの点灯耐久試験を実施した。
半導体発光素子(406nmの発光波長、定格電流20mA)の装着は、パッケージの凹部に露出しているインナーリード上の所定位置にシリコーンダイボンド材(信越化学工業(株)製 KER−3000−M2)を介して設置した後、該シリコーンダイボンド材を100℃で1時間、さらに150℃で2時間硬化させることにより行なった。
【0141】
次に、封止材を製造した。
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を385g、メチルトリメトキシシランを10.28g、及び、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を0.791gを、攪拌翼と、分留管、ジムロートコンデンサ及びリービッヒコンデンサとを取り付けた500ml三つ口コルベン中に計量し、室温にて15分触媒の粗大粒子が溶解するまで攪拌した。この後、反応液を100℃まで昇温して触媒を完全溶解し、100℃全還流下で30分間500rpmで攪拌しつつ初期加水分解を行った。
続いて、留出をリービッヒコンデンサ側に接続し、窒素をSV20で液中に吹き込み生成メタノール及び水分、副生物の低沸ケイ素成分を窒素に随伴させて留去しつつ100℃、500rpmにて1時間攪拌した。窒素をSV20で液中に吹き込みながらさらに130℃に昇温、保持しつつ5時間重合反応を継続し、粘度120mPa・sの反応液を得た。なお、ここで「SV」とは「Space Velocity」の略称であり、単位時間当たりの吹き込み体積量を指す。よって、SV20とは、1時間に反応液の20倍の体積のN2を吹き込むことをいう。
窒素の吹き込みを停止し反応液をいったん室温まで冷却した後、ナス型フラスコに反応液を移し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、1kPaで50分間微量に残留しているメタノール及び水分、低沸ケイ素成分を留去し、常温における粘度230mPa・sの無溶剤の封止材液を得た。
【0142】
得られたシリコーン封止材液をパッケージ1及びパッケージ2のパッケージ凹部へ、開口部上縁と同じ高さになるように滴下した後、恒温器にて90℃2時間、次いで110℃1時間、150℃3時間の加熱硬化を行うことで半導体発光素子を封止した。
【0143】
点灯耐久試験は、点灯電源に上記の封止したパッケージ1および2を、熱伝導性絶縁シートを介した3mm厚の放熱アルミ板にセットして、温度60℃、相対湿度90%の環境試験機中において60mAの駆動電流を通電することで連続点灯試験を行った。所定時間ごとに半導体発光装置を取り出し、オフラインにて初期出力(mW)に対する経時の出力の百分率(出力維持率)を測定した(輝度測定は20mA通電)。測定結果を図4に示す。
図4に示すように、実施例3によるパッケージ1を用いた場合は、比較例3によるパッケージ2を用いた場合に比べて明らかに出力の維持率が高くなることが判明した。
【0144】
また、実施例3のパッケージ1と比較例3のパッケージ2を温度85℃、85%RH(相対湿度)の雰囲気下にて24時間保管し、その雰囲気からの取り出し直後に260℃のホットプレート上に1分間静置することにより、封止材とパッケージ表面もしくはリードフレーム表面との間の接着性(剥離)の確認試験も実施した。その結果、図5に示すように、比較例3のPPA(ポリフタルアミド)製パッケージ2の場合のみ剥離が認められた。
【0145】
[接着性評価試験]
耐久試験にて作成した、実施例3のパッケージ1と比較例3のパッケージ2、および比較例2のセラミックス製LEDパッケージについて、以下の手法にてリードフレームと樹脂成形体との間の接着性(剥離)の確認実験を行なった。
まず、それぞれのパッケージをエタノールで洗浄し、乾燥させた。次に検査用の浸透液((株)タセトのカラーチェック浸透液FP−S(赤色))を乾燥させたパッケージにスプレーし5分放置した。放置後のパッケージについて、ワイパーで表面の液をぬぐい、エタノールでさらにきれいに洗浄し、室温で1時間乾燥させた。
【0146】
上記手順で処理したパッケージについて、次の剥離の観察を行った。
(i)金属と樹脂を引き剥がして樹脂についた着色を観察する。
(ii)さらに(株)タセトのカラーチェック現像液を薄くスプレーし10分間放置して浮き出てくる赤色を確認して剥離の有無を確認する。
上記(i)の観察時においても、上記(ii)の観察時においても、実施例3由来のパッケージ1の場合にはリードフレームと樹脂成形体との間に全く赤色が確認されなかったのに対して、比較例3由来のパッケージ2と比較例2由来のセラミックスパッケージの場合には、ともに赤色が確認され、リードフレームと樹脂成形体乃至セラミックス材との間に剥離が有ったことがわかった。
【0147】
[考察]
これらの結果から、まず、比較例1のように、本発明と同じシリコーン系の材料であっても、従来の思想に基づいて硬さを極めて硬くした材料ではあるものの、傷つき指数が12μm2/gfであるために、ガラス瓶内での手振り確認によって、非常に脆い材料であることが判明した。
比較例4からは、同様なシリコーン系であっても、フィラー種や量の添加の相違によっては弾性を失って傷つき指数が大きくなり、金属フレームとの接着性が悪くなる傾向にあることがわかった。
また、比較例2の傷つき指数が16μm2/gfのセラミックス製LEDパッケージの場合には、接着性評価試験の結果から樹脂成形体とリードフレームの間に剥離が認められ、冒頭にも記載した通り、焼結工程を要するために、シリコーン系もしくは他の樹脂材料によるものと比較して経済性に劣る。
さらに、比較例3のポリフタルアミド製材料由来のLEDパッケージの場合には耐久評価試験から、シリコーン系のLEDパッケージを使用した場合に比較して実際のLEDの出力維持率が低いという不具合があることと、接着性評価試験から、リードフレームとの間に剥離が生じ易いという不具合があることが判明した。
よって、シリコーン系の材料が優れていること、特に傷つき指数が1.0μm2/gf以下のシリコーン系の材料が好ましいということが判明した。
【0148】
【表1】

【符号の説明】
【0149】
1 半導体発光素子
2 樹脂成型体
3 ボンディングワイヤー
4 封止材
5 リードフレーム
6 蛍光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)樹脂と(B)フィラーとを含有する樹脂成形体を少なくとも備える半導体発光装置用パッケージであって、
前記樹脂成形体は、対面角α=136°の正四角錐ダイヤモンドで作られたピラミッド形をしている圧子を材料表面に0.3kgfの力で15秒間押しつけることで痕跡を付けて実施されるビッカース硬度測定試験において、ビッカース硬度の逆数の1000倍で表される傷つき指数(μm2/gf)が1.0以下であることを特徴とする半導体発光装置用パッケージ。
【請求項2】
前記樹脂成形体は、前記樹脂成形体の断面観察において、樹脂成形体断面100μm2あたりに含まれる粒径0.2μm以上50μm以下の前記(B)フィラーの個数が100個以上350個以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置用パッケージ。
【請求項3】
前記樹脂成形体は、前記(A)樹脂としてポリオルガノシロキサンを含み、さらに(C)硬化触媒を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体発光装置用パッケージ。
【請求項4】
前記(B)フィラーは、アルミナを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体発光装置用パッケージ。
【請求項5】
前記(B)フィラーは、表面処理されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体発光装置用パッケージ。
【請求項6】
前記樹脂成形体は、樹脂成形体中に含まれる前記(A)樹脂と前記(B)フィラーの重量比が15〜60:85〜40であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体発光装置用パッケージ。
【請求項7】
前記樹脂成形体は、0.3mm厚において波長460nmの光の反射率が60%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体発光装置用パッケージ。
【請求項8】
前記樹脂成形体は、0.3mm厚において波長400nmの光の反射率が50%以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体発光装置用パッケージ。
【請求項9】
前記樹脂成形体は、更に脂環式の炭化水素基を有する化合物を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体発光装置用パッケージ。
【請求項10】
前記樹脂成形体は、成形加工前の操作温度として一貫して45℃以下であり、かつ300℃以下の温度における成形加工により製造されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体発光装置用パッケージ。
【請求項11】
半導体発光素子、請求項1〜10のいずれか1項に記載の半導体発光装置用パッケージ、封止材を少なくとも備えることを特徴とする、半導体発光装置。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−249786(P2011−249786A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99370(P2011−99370)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】