説明

半導体発光装置用封止剤の製造方法及びイソシアヌレート化合物の精製方法、これを用いて調製した半導体発光装置用封止剤、これを用いた半導体発光装置用封止材及び半導体発光装置

【課題】複雑な操作や時間のかかる処理によらず、効率的に、特に半導体発光装置用封止剤として有用な二官能のイソシアヌレート化合物の濃度を高めることができるイソシアヌレート化合物の精製方法、これを用いた半導体発光装置用封止剤の製造方法、半導体発光装置用封止剤、光半導体用封止材及び光半導体素子の提供を目的とする。
【手段】イソシアヌレート化合物を含有する半導体発光装置用封止剤の製造方法であって、
下記式(II)で表される化合物と、下記式(I)で表される化合物と、下記式(III)で表される化合物とを含有する原料混合物に対し、少なくとも特定の抽出工程を経ることにより、前記式(II)で表される化合物の混合比を高める処理を含む半導体発光装置用封止剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体発光装置用封止剤の製造方法及びイソシアヌレート化合物の精製方法、これを用いて調製した半導体発光装置用封止剤、これを用いた半導体発光装置用封止材及び半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光装置は、白熱灯や蛍光灯に代わる次世代の光源として期待されており、国内外で発光効率の向上等の技術開発が活発に進められている。その適用範囲も多岐に渡っており、屋内照明のみならず、液晶表示装置のバックライトとしてもその利用が広がっている。特に、近年、省エネへの意識の高まりを受けて、消費電力の低い半導体発光装置に注目が集まっており、各企業や研究機関は半導体発光装置の技術開発を加速している。
【0003】
半導体発光装置の種類を構造別にみると、砲弾型、表面実装型(SMD)、チップオンボード(COB)等が挙げられる。図1は表面実装型の1例を挙げたものである。この例では、セラミックや樹脂などで成型したリフレクターパッケージ基材2の中に半導体発光素子1を実装している。そのキャビティ(凹状空間)はエポキシ樹脂やシリコーンなどの樹脂(封止材)3で封止されている。キャビティ内側の面には反射板の機能を付与してあり、多くの光を取り出せる構造とされている。
【0004】
上記の構造からも分かるとおり、半導体発光装置には、従来の白熱電球や蛍光灯とは異なる構造及び部材が必要であり、その開発は未だ十分になされているとはいえない。上述した封止材についても同様であり、現在エポキシ系もしくはシリコーン系の樹脂が主流であるが、さらなる性能向上のための開発検討、材料探索が求められている。例えば、特許文献1には脂環式炭化水素化合物を用いた半導体発光装置の樹脂原料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開公報2006/051803号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体発光素子の封止樹脂に求められる性能として、微小空間で素子を封止しながら硬化し、透明性のほか、耐熱着色性、耐熱衝撃性(耐クラック性)等が挙げられる。これらの特性を同時に満足することはこの用途に特有の要求であり、他の製品分野を含めてみても転用できるものが容易に見当たる状況ではない。
上記課題認識のもと、本発明者らは様々な物質や配合にあたり半導体発光装置用封止剤に適した材料の探索を行った。その結果、官能基を有する特定のイソシアヌレート化合物がその要求特性を満たす可能性があるという感触を得た。しかしながら、単に任意のイソシアヌレート化合物を用いたのでは満足な性能が得られず、特定の配合とすることで、上記要求特性を高いレベルで達成できることがわかってきた。
【0007】
一方、後記式(I)、(II)、(III)で表されるような官能基の数の異なるイソシアヌレート化合物の配合は容易ではなく、例えば、各化合物をカラムにより一度単離精製し、再度所定の割合で混合する必要がある。工業的規模での製造を考慮すると実際的ではなく、より簡便かつ効率的な調製方法が望まれた。
【0008】
そこで本発明は、複雑な操作や時間のかかる処理によらず、効率的に、特に半導体発光装置用封止剤として有用な二官能のイソシアヌレート化合物(下記式(II)参照)の濃度を高めることができるイソシアヌレート化合物の精製方法、これを用いた半導体発光装置用封止剤の製造方法、半導体発光装置用封止剤、半導体発光装置用封止材及び半導体発光装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、前記の課題を解決するものとして下記手段を提供するものである。
(1)イソシアヌレート化合物を含有する光半導体用封止剤の製造方法であって、
下記式(I)で表される化合物と、下記式(II)で表される化合物と、下記式(III)で表される化合物とを含有する原料混合物に対し、少なくとも下記a〜cの工程を経ることにより、前記式(II)で表される化合物の混合比を高める処理を含む半導体発光装置用封止剤の製造方法。
[a:前記原料混合物をSP値8.9以下の有機溶媒Aに溶解させる工程。]
[b:工程aで調製した原料混合物の溶解液と水性媒体とを接触させ、前記水性媒体の相に前記式(I)で表される化合物及び前記式(II)で表される化合物を抽出する工程。][c:工程bの水性媒体相とSP値9.0以上の有機溶媒Bと接触させ、前記式(II)で表される化合物を前記有機溶媒Bの相に抽出する工程。]
【0010】
【化1】

(Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、フッ素原子、CF、又はヒドロキシメチル基を表す。)
(2)前記工程aで用いる有機溶媒AがSP値7.0以上8.9以下である(1)に記載の封止剤の製造方法。
(3)前記有機溶媒Aが、トルエン、酢酸ブチル、及びヘキサンのいずれかである(1)又は(2)に記載の封止剤の製造方法。
(4)前記工程cで用いる有機溶媒BがSP値9.0以上9.5以下である(1)〜(3)のいずれか1項に記載の封止剤の製造方法。
(5)前記有機溶媒Bが、酢酸エチル及びメチルエチルケトンのいずれかである(1)〜(4)のいずれか1項に記載の封止剤の製造方法。
(6)工程cを経た有機溶媒Bの相に含まれる前記式(II)で表される化合物の混合比[rII]が、前記式(I)で表される化合物と式(II)で表される化合物と式(III)で表される化合物との総量100質量%に対し、60質量%以上である(1)〜(5)のいずれか1項に記載の封止剤の製造方法。
(7)前記原料混合物に含まれる前記式(II)で表される化合物の混合比[rII]が、前記式(I)で表される化合物と式(II)で表される化合物と式(III)で表される化合物との総量100質量%に対し、55質量%以下である(1)〜(6)のいずれか1項に記載の封止剤の製造方法。
(8)前記式(I)で表される化合物と式(II)で表される化合物と式(III)で表される化合物との総量100質量%に対する、前記式(II)で表される化合物の混合比を、前記原料混合物に対して80質量%以上高める(1)〜(7)のいずれか1項に記載の封止剤の製造方法。
(9)前記工程cで取得した抽出液を濃縮する、あるいは含有成分を粉末化する(1)〜(8)のいずれか1項に記載の封止剤の製造方法。
(10)下記式(I)で表される化合物と、下記式(II)で表される化合物と、下記式(III)で表される化合物とを含有する原料混合物に対し、少なくとも下記a〜cの工程の処理を経ることにより、前記式(II)で表される化合物の混合比を高めるイソシアヌレート化合物の精製方法。
[a:前記原料混合物をSP値8.9以下の有機溶媒Aに溶解させる工程。]
[b:工程aで調製した原料混合物の溶解液と水性媒体とを接触させ、前記水性媒体の相に前記式(I)で表される化合物及び前記式(II)で表される化合物を抽出する工程。][c:工程bの水性媒体相とSP値9.0以上の有機溶媒Bと接触させ、前記式(II)で表される化合物を前記有機溶媒Bの相に抽出する工程。]
【0011】
【化2】

(Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、フッ素原子、CF、又はヒドロキシメチル基を表す。)
(11)(10)に記載の精製方法により混合比が高められた前記式(II)で表される化合物を含む半導体発光装置用封止剤であって、前記式(I)で表される化合物と式(II)で表される化合物と式(III)で表される化合物との総量100質量%に対し、前記式(II)で表される化合物を混合比[rII]60質量%以上で含む半導体発光装置用封止剤。
(12)(11)に記載の半導体発光装置用封止剤を硬化してなる半導体発光装置用封止材。(13)(12)に記載の封止材を具備する半導体発光装置。
【0012】
本明細書においてSP値は、特に断らない限り、Allan F. M. Barton “Solubility Parameters” Chemical Reviews,1975,Vol.75,No.6,731−753に掲載の値を前提とする。また、SP値については単位を省略して示しているが、その単位はcal1/2cm-3/2である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複雑な操作や時間のかかる処理によらず、効率的に、特に半導体発光装置用封止剤として有用な二官能のイソシアヌレート化合物(下記式(II)参照)の濃度を高めることができる。
また、上記により得られた特定のイソシアヌレート化合物を含む封止剤を用いた半導体発光装置用封止材及び半導体発光装置は、そのアプリケーションに求められる、耐熱着色性、耐熱衝撃性(耐クラック性)を高いレベルで達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】半導体発光装置の一例を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明の製造方法の一例における操作手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の精製方法ないし製造方法は、特定イソシアヌレート化合物を含有する原料混合物を有機溶媒に溶解する工程(工程a)、そこからイソシアヌレート化合物の二官能体の混合比を高める少なくとも二段階の抽出工程(工程b、c)を含んでなる。以下、特定イソシアヌレート化合物について説明した上で、上記各工程について詳細に説明する。
【0016】
[特定イソシアヌレート化合物]
本発明に用いられる原料混合物には、下記式(I)で表される化合物と、下記式(II)で表される化合物と、下記式(III)で表される化合物とが含まれる。なお、本明細書においては、これらの各化合物及び後記式(IV)で表される化合物を総称して「特定イソシアヌレート化合物」と呼ぶ。
【0017】
【化3】

【0018】
Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、フッ素原子、CF、又はヒドロキシメチル基を表す。
【0019】
[工程a]
工程aでは、前記特定イソシアヌレート化合物を含有する原料混合物を、有機溶媒Aに溶解する。特定イソシアヌレート化合物において、各式の化合物の割合は特に限定されないが、前記原料混合物に含まれる前記式(II)で表される化合物の混合比[rII]が、前記式(I)で表される化合物と式(II)で表される化合物と式(III)で表される化合物との総量100質量%に対し、55質量%以下であることが好ましく、40質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。このように、混合比[rII]が比較的低いものを用いることで、本発明を適用するメリットが相対的に高まり好ましい。
【0020】
有機溶媒Aは、SP値が8.9以下であり、7.0以上8.9以下であることが好ましく、7.3以上8.9以下であることがより好ましい。有機溶媒Aとして具体的には、トルエン、酢酸ブチル、及びヘキサンのいずれかが挙げられる。有機溶媒Aは一種の化合物からなる溶媒であっても、上記SP値を満たす二種以上の化合物の混合溶媒であってもよい。
【0021】
前記有機溶媒Aと特定イソシアヌレート化合物との比率は特に限定されないが、特定イソシアヌレート化合物の濃度が20〜70質量%の範囲となるようにすることが好ましい。このような濃度範囲にすることにより、前記式(III)で表される化合物の除去と一回あたりの抽出効率を両立することとなり好ましい。
【0022】
工程aにおける溶解条件は特に限定されないが、室温(約28℃)で行うことができ、通常の攪拌装置などを用い均一に溶解することができる。
【0023】
[工程b]
工程bでは、工程aで調製した原料混合物の溶解液と水性媒体とを接触させ、前記水性媒体の相に前記式(I)で表される化合物及び式(II)で表される化合物を抽出する(図2参照)。
ここで水性媒体とは、水及び水に可溶な溶質を溶解した水溶液を指す。当該溶質としてはアルコール化合物、エーテル化合物、ケトン化合物、アルカリ金属もしくはその塩、アルカリ土類金属もしくはその塩、有機酸もしくはその塩、無機酸もしくはその塩などが挙げられる。アルコール化合物としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。エーテル化合物としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテルなどが挙げられる。ケトン化合物としてはアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどが挙げられる。アルカリ金属塩としては、塩化カリウム、塩化ナトリウム、ナトリウムアルコキシドなどが挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化マネシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。有機酸としては酢酸、プロピオン酸、コハク酸などが挙げられる。無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。酸が塩をなすときの対イオンは特に制限されず、上記アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機アミン化合物イオンなどであってもよい。
なお、エーテル類等には、SP値が8.9以下のものもあるが、この場合には水性媒体にこの溶質を含まないものとして定義することが好ましい。
【0024】
前記原料混合物の溶解液と水性媒体との比率は特に限定されないが、前記溶解液100質量部に対して、水性媒体を50〜200質量部とすることが好ましく、75〜150質量部とすることがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、混合した際の乳化を避けることとなり好ましい。一方、上記上限値以下とすることにより、前記式(II)で表される化合物の抽出と一回あたりの抽出効率を両立することとなり好ましい。
【0025】
工程bにおける二液の接触条件は特に限定されないが、室温(約28℃)で行うことができ、通常の攪拌装置などを用い混合することができる。
【0026】
本実施形態において、工程bを経て静置された混合液は二相に分離され、それぞれ前記有機溶媒Aの相と、水性媒体の相に分離することができる。分離は、この種の用途に通常用いられる分液装置等を用いることができる。分離された水性媒体の相には主に式(I)又は(II)で表される化合物が含有され、有機溶媒Aの相には式(III)で表される化合物が含有される(図2参照)。ただし、本発明の効果を損ねない範囲で、逆に、水性媒体の相に式(III)で表される化合物が含有されていたり、有機溶媒Aの相に式(I)又は(II)で表される化合物が含有されていたりしてもよい。
【0027】
[工程c]
工程cでは、工程bの水性媒体相とSP値9.0以上の有機溶媒Bと接触させ、前記式(II)で表される化合物を前記有機溶媒Bの相に抽出する。工程cで用いる有機溶媒Bは、SP値9.0以上13.0以下であることが好ましく、9.0以上12.0以下であることがより好ましい。具体的には、酢酸エチル及びメチルエチルケトンのいずれかが挙げられる。有機溶媒Bは一種の化合物からなる溶媒であっても、上記SP値を満たす二種以上の化合物の混合溶媒であってもよい。
【0028】
前記水性媒体の相と有機溶媒Bとの比率は特に限定されないが、前記水性媒体相100質量部に対して、有機溶媒Bを50〜200質量部とすることが好ましく、75〜150質量部とすることがより好ましい。上記下限値以上とすることにより、混合した際の乳化を避けることとなり好ましい。一方、上記上限値以下とすることにより、前記式(II)で表される化合物の抽出と一回あたりの抽出効率を両立することとなり好ましい。
【0029】
工程cにおける二液の接触条件は特に限定されないが、室温(約28℃)で行うことができ、通常の攪拌装置などを用い均一に溶解することができる。
【0030】
本実施形態において、工程cを経て静置された混合液は二相に分離され、それぞれ前記有機溶媒Bの相と、水性媒体の相に分離することができる。分離は、この種の用途に通常用いられる分液装置等を用いることができる。分離された水性媒体の相には主に式(I)で表される化合物が含有され、有機溶媒Aの相には式(II)で表される化合物が含有される(図2参照)。ただし、本発明の効果を損ねない範囲で、逆に、水性媒体の相に式(II)で表される化合物が含有されていたり、有機溶媒Aの相に式(I)で表される化合物が含有されていたりしてもよい。
【0031】
本発明によれば、前記処理前の式(II)で表される化合物の混合比[rII]に対し、処理後の式(II)で表される化合物の混合比[rII]を高めることができる。混合比の上昇幅は初期の混合比にもよるが、混合比の差(Δ[rII]=[rII]−[rII])で、20〜50であることが好ましく、30〜50であることがより好ましい。
精製後の式(II)で表される化合物の混合比[rII]は特に限定されないが、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0032】
濃縮の際の残留溶媒量は全質量に対して、好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、最も好ましくは5質量%以上である。残留溶媒量をこのように制御することで、硬化時の溶媒揮発による泡混入を防ぐことができる。また、残留溶媒量を下げた時の懸念点は、粘度上昇による操作性低下であるが、本実施形態の製造法を用いれば、最終的に前記式(II)で表される化合物と相溶性の高い溶媒が残留するため、比較的低い粘度を保つことができる。
【0033】
[封止剤の成分組成]
本発明の好ましい実施形態における封止剤は上記精製処理を終えた特定イソシアヌレート化合物を利用することが好ましい。封止剤は、粉末、ペースト、分散体、溶液等、いずれの形態であってもよい。本実施形態において、封止剤を溶液ないし分散液として用いる場合、特定イソシアヌレート化合物の濃度は、封止剤全量に対して80質量%超であり、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。上限は特になく、重合開始剤を除いて言うと実質的に100質量%程度であることが特に好ましい。ただし、この濃度は後記式(IV)で表される化合物がある場合には、これを含む意味である。ここで実質的にとしたのは、トルエンなどの残溶媒が、0〜10質量%程度の割合で混入してしまうことがあり、本発明の効果を損ねない範囲でそのような不可避混入物の存在を許容するものである。あるいは、封止剤の粘度を下げる必要がある場合などには、必要量の添加剤を付与してもよい。また、本発明の封止剤は、必須成分に加え後記重合禁止剤など必要に応じて任意成分を含んでもよいが、無溶媒で用いることが好ましい。このように無溶媒でありながら十分な流動性と好適な粘性を有するため、半導体発光素子の封止剤の成形性に優れる。とりわけポッティングによる成形に効果的に対応することができ、モールド成形などと比し、大幅な製造効率の改善にも資するものである。
【0034】
本実施形態の封止剤は重合開始剤を有してなることが好ましい。重合開始剤はこの種の重合性化合物に通常適用されるものであればよく、その具体的なものは後述する。重合開始剤の量は特に限定されないが、0.01質量%以上0.5以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.2以下であることがより好ましい。上記下限値以上とすることで重合反応を良好に開始させることができる。一方、上記上限値以下とすることで、上記特定イソシアヌレート化合物を適用したことによる封止剤の優れた効果を十分に引き出すことができ好ましい。
【0035】
上記特定イソシアヌレート化合物は、上記各式の化合物について特定の比率で含有させることがこのましい。前記精製処理により得られたものの混合比にもよるが、封止剤としての性能を考慮すると、前記特定イソシアヌレート化合物(I)、(II)、(III)を100質量%としたとき、式(I)で表される化合物が0質量%以上35質量%以下であることが好ましく、0質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。
式(II)で表される化合物が65質量%以上100質量%以下であることが好ましく、75質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。
式(III)で表される化合物が0質量%以上25質量%以下であることが好ましく、0質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。
【0036】
特定イソシアヌレート化合物をそれぞれ上記の比率で含有させることで、これを硬化させ封止材としたときに、透明性と、耐熱着色性と、耐熱衝撃性を一層高いレベルで満足することができる。その理由は定かではないが、本発明において、このような組成が好適に作用することは本発明者らが見出した重要な技術的知見の一つである。
【0037】
[式(IV)で表される化合物]
本発明においては、前記特定イソシアヌレート化合物として、さらに、下記式(IV)で表される化合物を1質量%以上50質量%未満含むことが好ましい。
【0038】
【化4】

【0039】
・R、R、R
式中、R、Rはそれぞれ独立に、水素又はメチル基である。式中、Rは炭素数3〜10のアルキル基又は炭素数6〜24のアリール基を表す。アルキル基としては直鎖のアルキル基、分岐のアルキル基、環状アルキル基が上げられるが、中でも、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、メチル基、t-ブチル基、2−エチルヘキシル基が好ましい。アリール基としては単環でも複環でもよいが、中でも、フェニル基であることが好ましい。前記アルキル基及びアリール基はさらに置換基を伴っていてもよく、その例としては後記置換基Tが挙げられる。
【0040】
式(IV)で表される化合物の添加量は特に限定されないが、1質量%以上50質量%未満で含むことが好ましく、1質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上30質量%以下であることが特に好ましい。上記の範囲でこれを適用することで、耐熱衝撃特性(耐クラック性)の一層の向上を効果的に図ることができる。
【0041】
本発明の封止剤は、その酸価が0.10mgKOH/g以下であることが好ましく、0.05mgKOH/g以下であることがより好ましく、0.01mgKOH/g以下であることが特に好ましい。上記上限値以下とすることで耐熱着色性向上という利点があり好ましい。下限値は特に限定されないが、0.001mgKOH/g以上であることが実際的である。封止剤の酸価の調節方法は特に限定されないが、アルカリ洗浄のようにして低下させることができる。別の好ましい封止剤の酸価の調節方法としては、活性炭やシリカ等の吸着剤と本発明のイソシアヌレート化合物とを混ぜ合わせ、静置した後、ろ過により吸着剤を除去することにより、イソシアヌレート化合物の酸価を低下させることができる。
【0042】
なお、本明細書において「化合物」という語を末尾に付して呼ぶとき、あるいは特定の名称ないし化学式で示すときには、当該化合物そのものに加え、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、所定の形態で修飾された誘導体を含む意味である。また、本明細書において置換・無置換を明記していない置換基については、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換・無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Tが挙げられる。
【0043】
置換基Tとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルホンアミド基、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、シアノ基、又はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基又はハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基又はシアノ基が挙げられる。
【0044】
上記特定イソシアヌレート化合物は定法により合成すればよく、特にその合成方法は限定されない。その市販品の情報や合成に関する内容は、例えば、特開2003−213159号公報、特開昭54−162784号公報、特開昭60−2932号公報を参照することができる。
具体的には、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEI)を、アクリル酸ないしメタクリル酸等とエステル化反応し、所定のアクリロイル基を導入したイソシアヌレート化合物を得ることができる。エステル化反応は公知の条件を採用すればよく、例えば、THEI及びアクリル酸をイソオクタンやトルエン等に溶解させ、硫酸、ハイドロキノンを添加して、加熱攪拌することが挙げられる。このとき得られた生成物は不安定なことがあるため、その場合は、水を反応系外に取り出す等の処理をほどこすことが好ましい。こうして取得されるイソシアヌレート化合物のアクリロイル基の数は制御しがたかく、通常、一環能、二官能、三官能化合物の混合物となる。すなわち、二官能の特定イソシアヌレート化合物のみを選択的に合成することは困難である。これに対し、本発明の方法を用いれば、得られた混合物を用い、上述のように式(2)で表される二官能化合物を高濃度化して取得することができる。
【0045】
上記特定イソシアヌレート化合物は定法により合成すればよく、特にその合成方法は限定されない。その市販品等の情報は、例えば、特開2003−213159号公報を参照することができる。
【0046】
[重合開始剤]
本発明の封止剤には、重合開始剤を含有させる。
なかでもラジカル重合開始剤を配合することが挙げられる。
熱によって開裂して開始ラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド及びメチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド及びt−ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;ジイソブチリルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド及びm−トルイルベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキセンなどのジアルキルパーオキサイド類;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチル)シクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキサン及び2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール類;1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオジカーボネート、α−クミルペルオキシネオジカーボネート、t−ブチルペルオキシネオジカーボネート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート、t−アミルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート及びジブチルペルオキシトリメチルアジペートなどのアルキルパーエステル類;ジ−3−メトキシブチルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(1,1−ブチルシクロヘキサオキシジカーボネート)、ジイソプロピルオキシジカーボネート、t−アミルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート及び1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボキシ)ヘキサンなどのパーオキシカーボネート類;1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン及び(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネートなどが挙げられる。
アゾ系(AIBN等)の重合開始剤として使用するアゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリック酸、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド等が挙げられる(特開2010−189471など参照)。
【0047】
ラジカル重合開始剤として、上記の熱ラジカル重合開始剤の他に、光、電子線又は放射線で開始ラジカルを生成するラジカル重合開始剤を用いることができる。
このようなラジカル重合開始剤としては、ベンゾインエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン〔IRGACURE651、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン〔IRGACURE184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン〔DAROCUR1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン〔IRGACURE2959、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン〔IRGACURE127、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン〔IRGACURE907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1〔IRGACURE369、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モノホリニル)フェニル]−1−ブタノン〔IRGACURE379、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド〔DAROCUR TPO、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド〔IRGACURE819、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム〔IRGACURE784、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]〔IRGACURE OXE 01、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)〔IRGACURE OXE 02、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕などを挙げることができる。
これらのラジカル重合開始剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも好ましくは、パーオキサイド化合物が挙げられ、パーブチルO(t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、日油(株)社製)などを用いることができる。
重合開始剤の含有量は特に限定されないが、0.1〜5質量%で適用することが好ましい。
【0048】
[重合禁止剤]
本発明の封止剤には、重合禁止剤を添加してもよい。前記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン類;銅類等を用いることができる。
重合禁止剤の含有量は特に限定されないが、0〜20000ppm、好ましくは100〜10000ppm、更に好ましくは300〜8000ppmで添加することが好ましい。重合禁止剤の添加量が少なすぎると、封止硬化時に、急激に発熱を生じながら重合が起こるため、リフレクターパッケージ基材との密着性が低下し、熱衝撃を与えた際に、封止材/基材界面で剥離が生じやすくなる。一方、重合禁止剤の添加量が多すぎると、大気下で封止剤を硬化する際、硬化速度を著しく低下させ、表面硬化不良を引き起こす。
【0049】
[蛍光体]
本発明においては、封止剤100質量部に対し蛍光体1〜40質量部を配合してなることが好ましく、2質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上20質量部以下であることが特に好ましい。蛍光体としては、この種のデバイスに通常用いられるものを適用すればよいが、例えば、代表的な黄色蛍光体として、一般式A5012:M(式中、成分Aは、Y,Gd,Tb,La,Lu,Se及びSmからなるグループの少なくとも1つの元素を有し、成分Bは、Al,Ga及びInからなるグループの少なくとも一つの元素を有し、成分MはCe,Pr,Eu,Cr,Nd及びErからなるグループの少なくとも一つの元素を有する。)のガーネットのグループからなる蛍光体粒子を含有するのが特に有利である。青色光を放射する発光ダイオードチップを備えた白色光を放射する発光ダイオード素子用に蛍光体として、Yl512:Ce蛍光体及び/又は(Y,Gd,Tb)(Al,Ga)12:Ce蛍光体が適している。その他の蛍光体として、例えば、CaGa:Ce3+及びSrGa:Ce3+、YAlO:Ce3+、YGaO:Ce3+、Y(Al,Ga)O:Ce3+、YSiO:Ce3+等が挙げられる(特開2011−144360など参照)。また、混合色光を作製するためには、これらの蛍光体の他に希土類でドープされたアルミン酸塩や希土類でドープされたオルトケイ酸塩などが適している。この種の蛍光体を硬化性組成物100質量部に対して1〜50質量部配合することで、青色に発光する素子を用いたとき、その発光色を白色に変換することができる。
【0050】
[酸化防止剤]
本発明の封止剤には必要に応じて酸化防止剤を含有させることが好ましい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、チオエーテル酸化防止剤、ビタミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0051】
フェノール系酸化防止剤としては、Irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標)、Irganox1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標)、Irganox1330(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標)、Irganox3114(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標)、Irganox3125(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標)、アデカスタブAO−20(株式会社ADEKA、商標)、アデカスタブAO−50(株式会社ADEKA、商標)、アデカスタブAO−60(株式会社ADEKA、商標)、アデカスタブAO−80(株式会社ADEKA、商標)、アデカスタブAO−30(株式会社ADEKA、商標)、アデカスタブAO−40(株式会社ADEKA、商標)、BHT(武田薬品工業(株)製、商標)、Cyanox1790(サイアナミド社製、商標)、SumilizerGP(住友化学(株)製、商標)、SumilizerGM(住友化学(株)製、商標)、SumilizerGS(住友化学(株)製、商標)及び、SumilizerGA−80(住友化学(株)製、商標)などの市販品を挙げることができる。
【0052】
リン系化合物としてはIRAGAFOS168(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標)、IRAGAFOS12(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標)、IRAGAFOS38(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標)、IRAGAFOS P−EPQ(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標)、IRAGAFOS126(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標)、ADKSTAB 329K(株式会社ADEKA、商標)、ADKSTAB PEP−36(株式会社ADEKA、商標)、ADKSTAB PEP−8(株式会社ADEKA、商標)、ADKSTAB HP−10(株式会社ADEKA、商標)、ADKSTAB 2112(株式会社ADEKA、商標)、ADKSTAB 260(株式会社ADEKA、商標)、ADKSTAB 522A(株式会社ADEKA、商標)、Weston 618(GE社製、商標)、Weston 619G(GE社製、商標)、及びWeston 624(GE社製、商標)などの市販品を挙げることができる。
【0053】
イオウ系酸化防止剤としては、DSTP(ヨシトミ)〔吉富(株)製、商標〕、DLTP(ヨシトミ)〔吉富(株)製、商標〕、DLTOIB〔吉富(株)製、商標〕、DMTP(ヨシトミ)〔吉富(株)製、商標〕、Seenox 412S〔シプロ化成(株)製、商標〕、Cyanox 1212(サイアナミド社製、商標)及びTP−D、TPS、TPM、TPL−R[住友化学(株)製、商標]等の市販品を挙げることができる。ビタミン系酸化防止剤としては、トコフェロール〔エーザイ(株)製、商標〕及びIrganoxE201〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標、化合物名;2,5,7,8−テトラメチル−2(4’,8’,12’−トリメチルトリデシル)クマロン−6−オール〕などの市販品を挙げることができる。
【0054】
チオエーテル系酸化防止剤としては、アデカスタブAO−412S(株式会社ADEKA製、商標)、アデカスタブAO−503(株式会社ADEKA製、商標)などの市販品を挙げることができる。ラクトン系酸化防止剤としては、特開平7−233160号公報及び特開平7−247278号公報に記載されているものを使用することができる。また、HP−136〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標、化合物名;5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン〕などの市販品を挙げることができる。
【0055】
アミン系酸化防止剤としては、IrgastabFS042〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商標〕及びGENOX EP〔クロンプトン社製、商標、化合物名;ジアルキル−N−メチルアミンオキサイド〕などの市販品を挙げることができる。これらの酸化防止剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができ る。
【0056】
酸化防止剤の含有量は、半導体発光装置用樹脂材料(封止材)の透明性、黄変性の低下を抑制する観点から、前記誘導体A又はBとの合計量100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.02〜2質量部である。
【0057】
[光安定剤等]
本発明の原料組成物(封止剤)には、前記の酸化防止剤の他に、必要に応じて、滑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、無機充填剤、着色剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、酸化チタンや酸化ケイ素などの無機化合物との密着性改良を目的とした成分などを配合することができる。滑剤としては、高級ジカルボン酸金属塩及び高級カルボン酸エステル等を使用することができる。
【0058】
光安定剤としては、公知のものを使用することができるが、好ましくはヒンダードアミン系光安定剤である。ヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、ADKSTAB LA−77、同LA−57、同LA−52、同LA−62、同LA−67、同LA−68、同LA−63、同LA−94、同LA−94、同LA−82及び同LA−87〔以上、株式会社ADEKA製〕、Tinuvin123、同144、同440及び同662、Chimassorb2020、同119、同944〔以上、CSC社製〕、Hostavin N30(Hoechst社製)、Cyasorb UV−3346、同UV−3526(以上、Cytec社製)、Uval 299(GLC)及びSanduvorPR−31(Clariant)などを挙げることができる。これらの光安定剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
光安定剤の使用量は、前記誘導体A又はBとの合計量100質量部に対して、通常、0.005〜5質量部であり、好ましくは0.02〜2質量部である。
酸化チタンや酸化ケイ素などの無機化合物との密着性改良を目的とした成分としては、シラン化合物のメタクリオキシ基やアクリロキシ基を含むシランカップリング剤などが挙げられる。これを上記原料組成物(封止剤)に含有させ、重合、成形しても良い。
【0060】
(封止方式)
封止剤の封止方式としては通常半導体発光素子の封止で用いられている手法や一般的な熱硬化性樹脂の成形と同様の方法を用いることができる。例えば、ポッティング(ディスペンス)、印刷、コーティング、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形及びインサート成形などが挙げられる。ポッティングとは、パッケージのキャビティ(凹状空間)の内部に前記封止剤を吐出して内部を埋める操作を表す。また、印刷とはマスクを用いて目的の部位に封止剤を配置する操作を表し、目的に応じて周囲の圧力を減圧するいわゆる真空印刷の方式も採用できる。コーティングは各種のコーティング方式を採用することができ、例えばダム材と呼ばれる封止剤を留める堰を予め作製しておき、その内側に封止剤をコーティングする方法も採用できる。また、各種モールド成形においてはモールドの内側に封止剤を充填しそのまま熱硬化する方法が挙げられる。また、封止後の硬化は熱硬化、UV硬化などやそれらを組み合わせて用いることができる。
【0061】
本発明の好ましい実施形態における半導体発光装置は、上記の封止剤を硬化することによって作製した封止材を具備してなる。硬化方法としては通常の熱硬化性樹脂の成形と同様の方法を用いることができる。例えば、上記の原料組成物(封止剤)又はその予備重合物を用い、これらの液状樹脂の射出成形、圧縮成形、トランスファー成形及びインサート成形などで、重合・成形する方法が挙げられる。また、ポッティング加工やコーティング加工で成形体を得ることもできる。さらに、例えばUV硬化成形など光硬化樹脂の成形と同様の方法によっても成形体を得ることができる。
【0062】
本実施形態の半導体発光装置ないしその部材は、液状樹脂成形法により製造されることが好ましい。液状樹脂成形法としては、常温で液状の封止剤又はその予備重合物を高温の金型に圧入して加熱硬化させる液状樹脂射出成形、液状の封止剤を金型に入れ、プレスによって加圧し、硬化させる圧縮成形、加温した液状の封止剤に圧力をかけて金型に圧入することにより封止剤を硬化させるトランスファー成形などが挙げられる。
【0063】
本発明の封止剤は上述のように適度な流動性ないし粘性を有するため、ポッティングに用いることが好ましい。
ここでポッティングについて説明する。ポッティングとは、前記リフレクターパッケージ基材のキャビティー(凹状空間)W(図1)の内部に前記封止液を吐出して内部を埋める操作を表す。硬化プロセスはポッティング後に封止液を充填されたリフレクタパッケージ(リフレクタパッケージ基材のほか、素子、ボンディングワイヤ、電極を含むパッケージ)をオーブンなどの一般的な加熱装置に入れて硬化できるため、システムとしてはディスペンサと加熱装置だけの非常に単純な構成で済む。また、金型やマスクを必要としないため、デバイスの形状などの変更の際にも迅速かつ安価に対応することが可能であり、汎用性の高い封止方式といえる。更に、コンプレッションモールド成形やトランスファーモールド成形などのモールド成形方式においては金型に対する離型性の悪さ、封止液の廃棄率の高さ、粘度の制限などが問題であるが、ポッティング方式ではこれらの問題がない。
【0064】
液の吐出方式としては、スクリュータイプなどのメカニカルなディスペンス方式、エアパルス式ディスペンス、非接触ジェット式ディスペンスなどが挙げられる。ポッティング装置であるディスペンサとしては、例えば具体的には武蔵エンジニアリング社、サンエイテック社などから出されている装置が使用される。
【0065】
封止剤の粘土は特に限定されないが、ポッティング性および蛍光体安定分散性の観点で、0.1〜100Pa.sが好ましく、0.5〜20Pa.sがより好ましく、1.0〜10Pa.sが更に好ましい。本発明において粘度は特に断らない限り、下記の方法で測定した値を言う。
(粘度の測定法)
本発明においては、特に断らない限り、温度可変型の回転式粘度計(Physica MCR301(商品名、アントンパール社製))で所定温度にした後100秒ごとに5回粘度を測定した値の平均をいう。測定温度は25℃とする。
【0066】
(半導体発光素子)
半導体発光素子としては、窒化ガリウム(GaN)系半導体からなる青色発光のLEDチップや、紫外発光のLEDチップ、レーザダイオードなどが用いられる。その他、例えば、MOCVD法等によって基板上にInN、AlN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物半導体を発光層として形成させたものも使用できる。フェースアップ実装される半導体発光素子や、フリップチップ実装される半導体発光素子のいずれも使用することができる。半導体発光素子は、同一平面上にn側電極とp側電極を持つ半導体発光素子の例であるが、一方の面にn側電極、反対の面にp側電極を持つ半導体発光素子も使用することができる。
【0067】
(パッケージ)
パッケージとしては電極が一体成型されているもの、及びパッケージを成型した後にメッキなどにより回路配線として電極を設けたものを用いることができる。パッケージの形状としては、円柱、楕円柱、立方体、直方体、直方体と楕円柱の間の形状やこれらの組み合わせなど任意の形状を採用することができる。内壁部の形状は底部に対して任意の角度を選択でき底面に対して直角になる箱型形状や鈍角になるすり鉢形状を選択することができる。凹部の底の形状は平面状や凹み形状などの任意の形状が選択できる。また、実装方式としてトップビュー、サイドビューなど任意の実装方式に対応したパッケージを用いることができる。
パッケージを構成する素材としては、耐光性、耐熱性に優れた電気絶縁性のものが好適に用いられ、例えばポリフタルアミドなどの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、ガラスエポキシ、セラミックスなどを用いることができる。また、半導体発光素子からの光を効率よく反射させるためにこれらの樹脂に酸化チタンなどの白色顔料などを混合させることができる。パッケージの成形法としては、前記電極を予め金型内に設置して行うインサート成形、射出成形、押出成形、トランスファ成型などを用いることができる。
【0068】
(電極)
電極は、半導体発光素子と電気的に接続され、例えば、パッケージにインサートされた板状の電極や、ガラスエポキシやセラミックなどの基板に形成された導電パターンであってよい。電極の材質は、銀若しくは銀を含有した合金の他、銅や鉄などを主成分とする電極の一部上に銀若しくは銀を含有した合金がメッキされているものを用いることができる。
【0069】
(評価方法)
光半導体発光装置は従来の試験方法において評価することができる。例えば電気特性、光特性、温度特性、熱特性、寿命、信頼性、安全性などが挙げられる。手法としては、例えば書籍『LED照明ハンドブック LED照明推進協議会編 株式会社オーム社発行』の第2章71ページから84ページに記載の手法や基準を採用することができる。
【0070】
(用途)
半導体発光装置は、光度の維持が要求される各種用途、例えば液晶ディスプレイ、携帯電話または情報端末等のバックライト、LEDディスプレイ、フラッシュライト、及び屋内外照明などに利用することができる。また、本発明で用いられるアクリル系封止材は、LEDやレーザダイオードのような発光素子だけでなく、受光素子、LSIやICなど半導体発光素子以外の半導体素子の封止にも利用することができる
【実施例】
【0071】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定して解釈されるものではない。
【0072】
(化合物1〜3の比率の定量)
【0073】
【化5】

【0074】
アロニックスM−215(東亜合成(株)製)をカラム精製することで、上記化合物1〜3を単離した。化合物1〜3それぞれについて、1.0g/l、4.0g/l、8.0g/lのアセトニトリル溶液を調製し、HPLC測定(カラム:TOSOH社製 TSK−GEL ODS−100Z 5μm 4.6mmx15cm)を行い、254nmの吸収より検量線を作成した。化合物1〜3の混合物についても、HPLC測定を行い254nmの吸収と、作成した検量線より化合物1〜3の各濃度を求め、比率を定量した。
【0075】
(実施例1)
アロニックスM−215(東亜合成(株)製)400gをトルエン400gに溶解させ、水1000gで4回抽出した。水相に酢酸エチル1000gを加え、攪拌、静置し、分液した。酢酸エチル相を、硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、濃縮することで、精製物(封止剤101)68gを得た。NMRより、残存酢酸エチル量は、全体の6質量%であった。各相の混合比(化合物1,2,3合計を100質量%としたときの各化合物の比率)及び抽出濃度(化合物1,2,3の溶媒中の合計濃度)を表1に示す。表2以降についても同様である。
【0076】
【表1】

【0077】
(実施例2)
精製例1において、トルエンの代わりに、酢酸ブチルを用いた以外は、同様の方法で精製した。各相の比率を表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
(実施例3)
精製例1において、トルエンの代わりに、トルエン/ヘキサンの7/3(重量比)の混合溶媒を用い、その量を1600 gとした以外は、同様の方法で精製した。各相の比率を表3に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
(比較例1)
アロニックスM−215(東亜合成(株)製)400gを酢酸エチル400gに溶解させ、水1000gで4回洗浄した(封止剤c11)。各相の比率を表4に示す。
【0082】
【表4】

【0083】
(比較例2)
特開昭54−162784の実施例1に記載の方法において、アクリル酸等量をイソシアヌレートに対して、2等量に変えたこと以外は同様にして得られた封止剤c12中の化合物1〜3の比率を表5に示す。
【0084】
【表5】

【0085】
(実施例4)
(硬化性樹脂組成物の調製)
全量が3.000gとなるように表6に示す特定イソシアヌレート化合物の混合物を混合し、tert−ブチル−2−エチルペルオキシヘキサノアート(日本油脂(株)製 パーブチルO)を0.030g加え、攪拌して均一にし、硬化性樹脂組成物を調製した。
【0086】
(耐熱着色性)
1mm厚みのガラス板をスペーサーとし、調整した組成物を2枚のガラス板で挟みこみ、ホットプレートにて90℃/10分、100℃/10分、110℃/10分、150℃/90分で加熱処理することで、ボタン状硬化物を得た。硬化物を200℃/16時間オーブンで加熱し、加熱前後での400nmにおける透過率変化(UV可視分光計(島津製作所製 UV−1650PC[商品名])にて測定)を求めた。値が小さい方が、耐熱着色性に優れる。
【0087】
(実装)
3.0×2.0×1.0 mm(Al2O3)パッケージ(京セラ株式会社製 KD−V93B96−B[商品名])の凹部(2.0×1.5×0.75mmを、調製した硬化性樹脂組成物で充填し、130℃で30分、150℃で1時間30分硬化させ、該素子を封止した(n=10)。
【0088】
(耐クラック性)
実装した素子を楠本化成(株)社製気相式熱衝撃試験装置を用いて、−40℃で15min維持した後、100℃に急激に昇温し15min維持した後、また−40℃で15min維持というサイクルを50回繰り返した後の素子を観察し、クラックが発生しているものの個数を数えた。
【0089】
【表6】

【0090】
上記の結果より、本発明によれば、煩雑な操作なしに、半導体発光素子の封止剤として有用な式(II)で表される化合物を高混合比で取得することができる。そして、これにより得られた特定イソシアヌレート化合物は光半導体素子の封止剤として好適な性質を有し、これを硬化して封止材としたときの耐熱着色性、耐クラック性に優れることが分かる。
【符号の説明】
【0091】
1 半導体発光素子(Semiconductor Light Emitting Elememt)
2 リフレクターパッケージ基材
3 封止材
4 電極
6 ボンディングワイヤー
8 ダイボンド剤
10 半導体発光装置(Semiconductor Light Emitting Device)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアヌレート化合物を含有する光半導体用封止剤の製造方法であって、
下記式(I)で表される化合物と、下記式(II)で表される化合物と、下記式(III)で表される化合物とを含有する原料混合物に対し、少なくとも下記a〜cの工程を経ることにより、前記式(II)で表される化合物の混合比を高める処理を含む半導体発光装置用封止剤の製造方法。
[a:前記原料混合物をSP値8.9以下の有機溶媒Aに溶解させる工程。]
[b:工程aで調製した原料混合物の溶解液と水性媒体とを接触させ、前記水性媒体の相に前記式(I)で表される化合物及び前記式(II)で表される化合物を抽出する工程。]
[c:工程bの水性媒体相とSP値9.0以上の有機溶媒Bと接触させ、前記式(II)で表される化合物を前記有機溶媒Bの相に抽出する工程。]
【化1】

(Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、フッ素原子、CF、又はヒドロキシメチル基を表す。)
【請求項2】
前記工程aで用いる有機溶媒AがSP値7.0以上8.9以下である請求項1に記載の封止剤の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶媒Aが、トルエン、酢酸ブチル、及びヘキサンのいずれかである請求項1又は2に記載の封止剤の製造方法。
【請求項4】
前記工程cで用いる有機溶媒BがSP値9.0以上9.5以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の封止剤の製造方法。
【請求項5】
前記有機溶媒Bが、酢酸エチル及びメチルエチルケトンのいずれかである請求項1〜4のいずれか1項に記載の封止剤の製造方法。
【請求項6】
工程cを経た有機溶媒Bの相に含まれる前記式(II)で表される化合物の混合比[rII]が、前記式(I)で表される化合物と式(II)で表される化合物と式(III)で表される化合物との総量100質量%に対し、60質量%以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の封止剤の製造方法。
【請求項7】
前記原料混合物に含まれる前記式(II)で表される化合物の混合比[rII]が、前記式(I)で表される化合物と式(II)で表される化合物と式(III)で表される化合物との総量100質量%に対し、55質量%以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の封止剤の製造方法。
【請求項8】
前記式(I)で表される化合物と式(II)で表される化合物と式(III)で表される化合物との総量100質量%に対する、前記式(II)で表される化合物の混合比を、前記原料混合物に対して80質量%以上高める請求項1〜7のいずれか1項に記載の封止剤の製造方法。
【請求項9】
前記工程cで取得した抽出液を濃縮する、あるいは含有成分を粉末化する請求項1〜8のいずれか1項に記載の封止剤の製造方法。
【請求項10】
下記式(I)で表される化合物と、下記式(II)で表される化合物と、下記式(III)で表される化合物とを含有する原料混合物に対し、少なくとも下記a〜cの工程の処理を経ることにより、前記式(II)で表される化合物の混合比を高めるイソシアヌレート化合物の精製方法。
[a:前記原料混合物をSP値8.9以下の有機溶媒Aに溶解させる工程。]
[b:工程aで調製した原料混合物の溶解液と水性媒体とを接触させ、前記水性媒体の相に前記式(I)で表される化合物及び前記式(II)で表される化合物を抽出する工程。]
[c:工程bの水性媒体相とSP値9.0以上の有機溶媒Bと接触させ、前記式(II)で表される化合物を前記有機溶媒Bの相に抽出する工程。]
【化2】

(Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、フッ素原子、CF、又はヒドロキシメチル基を表す。)
【請求項11】
請求項10に記載の精製方法により混合比が高められた前記式(II)で表される化合物を含む半導体発光装置用封止剤であって、前記式(I)で表される化合物と式(II)で表される化合物と式(III)で表される化合物との総量100質量%に対し、前記式(II)で表される化合物を混合比[rII]60質量%以上で含む半導体発光装置用封止剤。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体発光装置用封止剤を硬化してなる半導体発光装置用封止材。
【請求項13】
請求項12に記載の封止材を具備する半導体発光装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−82648(P2013−82648A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222654(P2011−222654)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】