説明

半導体発光装置用樹脂成形体

【課題】 本発明は、シリコーン樹脂を用いて、変色しにくく高い反射率を保持して高い輝度を実現し、また封止材やリードフレームと剥離しにくく長期使用時の信頼性の高い、半導体発光装置用樹脂成形体を提供することを課題とする。
【解決手段】 (A)ポリオルガノシロキサン、(B)白色顔料、及び(C)硬化触媒を含有するシリコーン樹脂組成物から得られた半導体発光装置用樹脂成形体であって、
前記樹脂成形体は、アビエチン酸蒸気を発生している200℃に加熱されたアビエチン酸の上方3cmの距離で20分間アビエチン酸蒸気に曝した後、波長250nm以上500nm以下のUVまたは可視光(強度:1900mW/cm2(365nm受光素子で測定))を15分間照射したときの、照射前後における樹脂成形体の白色度(WI(CIE))の減少率が40%以下であることを特徴とする、半導体発光装置用樹脂成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光ダイオード等の発光素子を備えた半導体発光装置に用いられる樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子を搭載してなる半導体発光装置は、図1に示すように半導体発光素子1、樹脂成形体2、ボンディングワイヤ3、封止材4、リードフレーム5等から構成される。なお、リードフレーム等の導電性金属配線及び絶縁性の樹脂成形体からなる構成をパッケージと称する。
【0003】
従来、樹脂成形体に用いる絶縁性材料は、ポリアミド等の熱可塑性樹脂に白色顔料を配合したものやアルミナ等のセラミックが一般的に用いられてきた(例えば特許文献1参照)。発光に指向性が求められる半導体発光装置は、半導体発光素子より目的とする方向へ発せられた光だけでなく、それ以外の光を樹脂成形体やリードフレームなどの金属配線、及び反射材等で目的の方向に反射させ、発光効率を上げている。ポリアミドなどの熱可塑性樹脂は透光性であるために、樹脂成形体で反射させる際は樹脂に白色顔料を配合することで、樹脂と白色顔料の屈折率の差を利用し半導体発光素子からの光を反射し半導体発光装置としての発光効率を上げている。
【0004】
上記特許文献1では、白色顔料を使用した場合であっても、白色顔料の種類によってはその反射効率が十分でなく吸収や透過する光線も出てしまうため、結果として半導体発光素子からの光を目的の方向に集中できずに半導体発光装置としての効率が下がってしまう場合があった。
また、ポリアミドを用いたパッケージは、ポリアミドが熱可塑性樹脂であり、環境問題のため鉛を含有しない鉛フリー半田が積極的に使用されるようになっているが、このような半田は融点が高いのでリフロー温度が高くなり、その熱により軟化してしまうという、耐熱性の問題が発生する可能性がある。また、ポリアミドは紫外線、熱により、光劣化、熱劣化が起こるため、近年実用化が進んでいる青色〜近紫外線半導体発光素子のようなエネルギーの高い波長領域まで発光域を持つ発光素子を用いた場合、光による劣化が特に問題となる。また、より明るい発光素子が求められている現状においては、半導体発光素子から発せられる光束の大きな光、発熱により、熱劣化、光劣化の問題がより顕在化する。
【0005】
一方、耐熱性が求められる場合は焼結されたアルミナを配合したセラミックが絶縁材料として用いられる(例えば特許文献2参照)。セラミックを用いたパッケージは耐熱性が良いが、製造に際し成形後に高温での焼結工程が必要である。焼結工程では電気代などのコスト面での問題や、焼結により成形体の大きさ、形状が変化するために不良品が出やすく量産性に問題があった。さらにその細孔のために、有機物などを吸着し易く長期間使用すると着色するという問題があった。
【0006】
これに対して近年、樹脂にオルガノポリシロキサンを用い、白色顔料として酸化チタンを用いたシリコーン樹脂組成物を成形したパッケージも提案されている(例えば特許文献3参照)。樹脂にオルガノポリシロキサンを用いる事により、ポリアミドを用いたものと比べ耐熱性の向上が図られ、また成形性においてはセラミックを用いたものよりも優れている。
しかしながら、白色顔料として用いられる酸化チタンは、一般に樹脂に対する分散性が低い。このため、樹脂組成物を硬化した後の樹脂成形体において、酸化チタンが均一に分散しておらず樹脂成形体内での反射率に分布があり、その結果半導体発光装置から発せら
れる光線の均一性の点で問題がある。
【0007】
ところで、近年の半導体発光技術の飛躍的な進歩により、半導体発光装置の高出力化及び短波長化が著しいため、長期間の使用に対する耐久性を有し、色ムラの発生や剥離が生じにくく、機械的強度が低下しにくいことが、樹脂成形体に求められており、種々の開発がなされている。
例えば、特許文献4には、ビスフェノールA型又はF型エポキシ樹脂、硬化剤および硬化促進剤を構成成分とするBステージ上光半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、上記構成成分が分子レベルで均一に混合されている樹脂組成物が記載されている。また、トリアジン誘導体エポキシ樹脂を用いた半導体発光装置用樹脂成形物も挙げられる(特許文献5〜7)。また、エポキシ樹脂を用いた光反射用樹脂組成物で、波長800〜350nmにおける光反射率が80%以上であるという例もある(特許文献8)。また、重量平均分子量が5×103以上のポリオルガノシロキサン及び縮合触媒を含有する樹脂組成物も開発がなされている(特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−283498号公報
【特許文献2】特開2004−288937号公報
【特許文献3】特開2009−155415号公報
【特許文献4】特許第2656336号
【特許文献5】特開2000−196151号公報
【特許文献6】特開2003−224305号公報
【特許文献7】特開2005−306952号公報
【特許文献8】特開2006−140207号公報
【特許文献9】特開2006−77234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献3〜9に記載された樹脂組成物による樹脂成形体は、何れも高温、長時間の放置で変色(黄変)し、樹脂成形体の反射率が低下して、結果として発光装置としての輝度が低下してしまうという問題がある。特に、半導体発光素子が、青色〜近紫外領域の波長を持つ高エネルギータイプの光を発するものである場合には、その問題が顕著となる傾向となる。
【0010】
また、半導体発光装置は一般的に、パッケージの上に半導体発光素子を搭載してワイヤボンディングした後、発光素子からの光が漏れないように封止材で封止して製造されるので、パッケージが備える樹脂成形体には封止材やリードフレームとの接着性が要求される。しかしながら、従来の樹脂成形体はその接着性が弱く、実装する際のリフロー工程等で高温(215〜260℃)に曝されるため、製造過程で樹脂成形体と封止材やリードフレームとの接着界面の剥離が発生し、長期使用時の信頼性が低下するという問題がある。
【0011】
本発明は、シリコーン樹脂を用いて、変色しにくく高い反射率を保持して高い輝度を実現し、また封止材やリードフレームと剥離しにくく長期使用時の信頼性の高い、半導体発光装置用樹脂成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の成形体の変色という問題に関して、本発明者らは、樹脂そのものの変色(ポリアミド系樹脂で顕著)の他、セラミック等で認められる、成形体へ有機物等の汚れが吸着してしまうことにより生じる変色も大きな問題であることに着目し、解決策の開発に着手し
た。そして、樹脂成形体の表面近傍では、入射光がその吸着した物質により散乱されるために光路長が長くなり、その結果反射率が低下して輝度が低下するという知見を得た。
さらに、成形体と封止材やリードフレームとの剥離の原因について、本発明者らは、上記のように従来の樹脂成形体用材料は物質の吸着性が高いため、吸着した成分がリフロー時に樹脂から放出されて接着界面での剥離を生じさせるとの知見を得た。
【0013】
そこで本発明者らは上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリオルガノシロキサン、白色顔料及び硬化触媒を含有する半導体発光装置用樹脂成形体において、その有機物質吸着を低く抑え、加熱や高専照射時の変色度合いを特定の値以下とすることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)(A)ポリオルガノシロキサン、(B)白色顔料、及び(C)硬化触媒を含有するシリコーン樹脂組成物から得られた半導体発光装置用樹脂成形体であって、
前記樹脂成形体は、アビエチン酸蒸気を発生している200℃に加熱されたアビエチン酸の上方3cmの距離で20分間アビエチン酸蒸気に曝した後、波長250nm以上500nm以下のUVまたは可視光(強度:1900mW/cm2(365nm受光素子で測定))を15分間照射したときの、照射前後における樹脂成形体の白色度(WI(CIE))の減少率が40%以下であることを特徴とする、半導体発光装置用樹脂成形体。
(2)前記(B)白色顔料は、アスペクト比が1.2以上4.0以下でかつ一次粒径が0.1μm以上2.0μm以下であることを特徴とする、(1)に記載の樹脂成形体。
(3)前記(B)白色顔料の一次粒径Xと二次粒径Yの比Y/Xが1以上10以下であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の樹脂成形体。
(4)前記(B)白色顔料がアルミナであることを特徴とする、(1)〜(3)の何れか一項に記載の樹脂成形体。
(5)前記(A)ポリオルガノシロキサンが常温、常圧下で液体の熱硬化性ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする、(1)〜(4)の何れか一項に記載の樹脂成形体。(6)前記熱硬化性ポリオルガノシロキサンが付加型ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする、(5)に記載の樹脂成形体。
(7)前記シリコーン樹脂組成物は、更に(D)硬化速度制御剤を含有することを特徴とする、(1)〜(6)の何れか一項に記載の樹脂成形体。
(8)厚さ0.4mmにおいて、波長460nmにおける光反射率が80%以上であることを特徴とする、(1)〜(7)の何れか一項に記載の樹脂成形体。
(9)厚さ0.4mmにおいて、波長400nmにおける光反射率が60%以上であることを特徴とする、(1)〜(8)の何れか一項に記載の樹脂成形体。
(10)液状射出成形法により成形されてなる(1)〜(9)の何れか一項に記載の樹脂成形体。
(11)半導体発光素子、(1)〜(10)の何れか一項に記載の樹脂成形体及び封止材を少なくとも備えてなる半導体発光装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、変色しにくく高い反射率を保持して高い輝度を実現し、また封止材やリードフレームと剥離しにくく長期使用時の信頼性の高い、シリコーン樹脂を用いた半導体発光装置用樹脂成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】半導体発光装置の構成の一態様を概略的に示す断面図である。
【図2】半導体発光装置の構成の一態様を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるもの
ではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0017】
<1.シリコーン樹脂組成物>
本発明において、半導体発光装置用樹脂成形体の成形に用いる材料は、(A)ポリオルガノシロキサン、(B)白色顔料、及び(C)硬化触媒を含有するシリコーン樹脂組成物である。
上記材料をリードフレームなどの導電性金属配線と共に成形・硬化することにより、半導体発光装置用樹脂成形体である半導体発光装置用パッケージとなり、半導体発光装置用樹脂成形体(パッケージ)に半導体発光素子を装着すると半導体発光装置となる。半導体発光装置の一態様の断面の略図を図1に示す。
【0018】
<1−1.(A)ポリオルガノシロキサン>
ポリオルガノシロキサンは、ケイ素原子が酸素を介して他のケイ素原子と結合した部分を持つ構造に有機基が付加している高分子物質であり、本発明に用いるポリオルガノシロキサンとしては、常温常圧において液体であるものが好ましい。これは、半導体発光装置用樹脂成形体を射出成形法により製造するのに適するからである。また、常温常圧において固体のポリオルガノシロキサンは、一般的に硬化物としての硬度は比較的高いが、靭性が低く、脆いものや、耐光性、耐熱性が不十分で光や熱により変色しやすいものが多いからである。
なお、上記常温とは20℃±15℃(5〜35℃)の範囲の温度をいい、常圧とは大気圧に等しい圧力をいい、ほぼ一気圧である。また、液体とは流動性の有る状態をいう。
【0019】
上記(A)ポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体であって、例えば以下に示す一般組成式(1)で表される化合物や、その混合物が挙げられる。(R123SiO1/2M(R45SiO2/2D(R6SiO3/2T(SiO4/2Q・・・(1)
ここで、上記式(1)中、R1〜R6はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ハロアルキル基等の有機官能基、水酸基、水素原子から選択される。またM、D、T及びQは0から1未満であり、M+D+T+Q=1を満足する数である。
【0020】
ポリオルガノシロキサンは、硬化触媒の存在下で、熱エネルギーや光エネルギー等を与えることにより硬化させる事ができる。ここで硬化とは、流動性を示す状態から、流動性を示さない状態に変化することをいい、例えば、対象物を水平より45度傾けた状態で30分間静置して流動性が見られる状態を未硬化状態といい、全く流動性がない状態を硬化状態として判断することができる。
ポリオルガノシロキサンは、硬化のメカニズムにより分類すると、通常、付加重合硬化タイプ、縮合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架橋タイプなどを挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型ポリオルガノシロキサン)、及び縮合硬化タイプ(縮合型ポリオルガノシロキサン)が好適である。中でも特に付加重合タイプの熱硬化性ポリオルガノシロキサンが好適である。以下、付加型ポリオルガノシロキサン、及び縮合型ポリオルガノシロキサンとそれから得られる硬化物について説明する。
【0021】
<1−1−1.付加型ポリオルガノシロキサン>
付加型ポリオルガノシロキサンとは、付加反応によりポリオルガノシロキサン鎖が架橋結合を生成するものであり、このような架橋生成反応の代表的なものとしては、例えばビニルシラン等の(A1)アルケニル基を有するケイ素含有化合物と、例えばヒドロシラン等の(A2)ヒドロシリル基を含有するケイ素化合物とを混合し、(C1)Pt触媒などの付加縮合触媒の存在下反応させてSi−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を得る反応を挙げることができる。
ここで、上記(A1)と(A2)の混合比率を、シリコーン樹脂中のSiHの存在量を特定の範囲に制御することで、付加型ポリオルガノシロキサンを用いた場合に、シリコーン樹脂に存在するアルケニル基に起因するパッケージの変色による反射率の低下を防止することができるので好ましい。具体的には、(A1)アルケニル基を有するケイ素含有化合物と(A2)ヒドロシリル基を含有するケイ素化合物を、SiHとSi(CHCH2)のモル比SiH/Si(CHCH2)が0.9以上2.5以下となる割合で、より好ましくはSiH/Si(CHCH2)が1.2以上2.0以下となる割合で混合することが好ましい。
【0022】
(A1)アルケニル基を有するケイ素含有化合物としては、下記一般式(2)
nSiO[(4-n)/2] ・・・(2)
で表わされる、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。
式(2)中、Rは同一又は異種の置換又は非置換の1価炭化水素基、アルコキシ基、エポキシ基含有炭化水素基、又は水酸基で、nは1≦n<2を満たす正の数である。
上記(A1)アルケニル基を有するケイ素含有化合物においてアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基などの炭素数2〜8のアルケニル基であることが好ましい。また、Rは炭化水素基である場合、メチル基、エチル基などのアルキル基、ビニル基、フェニル基等の炭素数1〜20の1価炭化水素基から選択される。好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基である。
Rは独立に選択されるが、耐紫外線(UV)性が要求される場合にはRの80%以上がメチル基であることが好ましい。Rは炭素数1〜8のアルコキシ基、水酸基、エポキシ基含有炭化水素基であってもよいが、アルコキシ基、水酸基、エポキシ基の含有率は、(A1)アルケニル基を有するケイ素含有化合物の重量の3%以下であることが好ましい。また、nは1≦n<2を満たす正の数であるが、nの値が2以上であると樹脂成形体用材料とリードフレーム等の導電体との接着に十分な強度が得られなくなり、一方、nが1未満であるようなオルガノポリシロキサンの合成は通常困難である。
【0023】
上記(A1)アルケニル基を有するケイ素含有化合物としては、例えばビニルシラン、ビニル基含有ポリオルガノシロキサンを挙げることができ、これらを1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。上記の中でも分子内に2個以上のビニル基を有するビニル基含有ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0024】
分子内に2個以上のビニル基を有するビニル基含有ポリオルガノシロキサンとして具体的には以下のものが挙げられる。
両末端ビニルポリジメチルシロキサン
DMS−V00、DMS−V03、DMS−V05、DMS−V21、DMS−V22、DMS−V25、DMS−V31、DMS−V33、DMS−V35、DMS−V41、DMS−V42、DMS−V46、DMS−V52(いずれもGelest社製)
両末端ビニルジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサンコポリマー
PDV−0325、PDV−0331、PDV−0341、PDV−0346、PDV−0525、PDV−0541、PDV−1625、PDV−1631、PDV−1635、PDV−1641、PDV−2331、PDV−2335(いずれもGelest社製)
両末端ビニルフェニルメチルシロキサン
PMV−9925(Gelest社製)
トリメチルシリル基封鎖ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー
VDT−123、VDT−127、VDT−131、VDT−153、VDT−431、VDT−731、VDT−954(いずれもGelest社製)
ビニルT−構造ポリマー
VTT−106、MTV−124(いずれもGelest社製)
【0025】
また、(A2)ヒドロシリル基を有するケイ素含有化合物としては、例えばヒドロシラン、ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンを挙げることができ、これらを1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。上記の中でも分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0026】
分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサンとして具体的には以下のものが挙げられる。
両末端ヒドロシリルポリジメチルシロキサン
DMS−H03、DMS−H11、DMS−H21、DMS−H25、DMS−H31、DMS−H41(いずれもGelest社製)
両末端トリメチルシリル封鎖メチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーHMS−013、HMS−031、HMS−064、HMS−071、HMS−082、HMS−151、HMS−301、HMS−501(いずれもGelest社製)
【0027】
本発明における上記(A1)アルケニル基を有するケイ素化合物及び(A2)ヒドロシリル基を有するケイ素化合物の使用量は、(A1)アルケニル基を有するケイ素化合物1モルに対して、(A2)ヒドロシリル基を有するケイ素化合物が通常0.5モル以上であり、好ましくは0.7モル以上、より好ましくは0.8モル以上である。また通常2.0モル以下であり、好ましくは1.8モル以下、より好ましくは1.5モル以下である。これにより硬化後の未反応末端基の残存量を低減し、点灯使用時の着色や剥離等の経時変化が少ない硬化物を得ることができる。
【0028】
<1−1−2.縮合型ポリオルガノシロキサン>
縮合型ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。具体的には、下記一般式(3)及び/若しくは(4)で表される化合物、並びに/又はそのオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
【0029】
SiXn14-n ・・・(3)
式(3)中、Xは加水分解性基を表し、Y1は1価の有機基を表し、nはX基の数を表す1以上の整数を表す。但し、4≧nである。
【0030】
(SiXt14-t-1u2 ・・・(4)
【0031】
式(4)中、Xは加水分解性基を表し、Y1は1価の有機基を表し、Y2はu価の有機基を表し、tは1以上、3以下の整数を表し、uは2以上の整数を表す。
【0032】
縮合型ポリオルガノシロキサンは公知のものを使用することができ、例えば、特開2006−77234号公報、特開2006−291018号公報、特開2006−316264号公報、特開2006−336010号公報、特開2006−348284号公報、および国際公開2006/090804号パンフレットに記載の半導体発光デバイス用部材が好適である。
【0033】
<1−1−3.特に好ましいポリオルガノシロキサン>
ポリオルガノシロキサンの中で、特に好ましい材料について、以下に説明する。
ポリオルガノシロキサンは、一般に半導体発光装置に用いた場合、半導体発光素子や半導体素子を配置する基板、樹脂成形体等との接着性が弱いことがあるが、これらと密着性
が高いポリオルガノシロキサンとするため、特に、以下の[1]および[2]のうち少なくともいずれかの特徴を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。
[1]ケイ素含有率が20重量%以上である。
[2]測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
(a)ピークトップの位置がジメチルシリコーンゴムのジメチルシリコーンを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がジメチルシリコーンゴムのジメチルシリコーンを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
【0034】
本発明においては、上記の特徴[1]および[2]のうち、特徴[1]を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。さらに好ましくは、上記の特徴[1]および[2]を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。また、上記の特徴を有するポリオルガノシロキサンの中でも、反応の進行に伴い脱離する成分の無い付加型ポリオルガノシロキサンが、閉じた金型内での硬化を想定した場合の成形加工性、硬化物の耐熱性(重量変化が少ないこと)等の観点からは好ましい。成形加工方法により、縮合反応の進行に伴い発生する成分の成形加工性への影響が大きくない場合には縮合型ポリオルガノシロキサンも用いることができ、その場合には、特にシラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下である縮合型ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0035】
さらに、本発明においては、樹脂成形体が含む吸着性官能基を少なくして、その物質吸着性や吸湿性を抑える観点から、樹脂成形体を構成するシリコーン樹脂中の水酸基、エポキシ基及び炭素数1〜3アルコキシ基の含有率が重量比で3%以下であることが好ましい。そのため、本発明においては、(A)ポリオルガノシロキサンとしてビニル基含有ポリジメチルシロキサンとヒドロシリル基含有ポリジメチルシロキサンの組み合わせによる付加型のシリコーンを採用することが特に好ましい。
【0036】
<1−2.(B)白色顔料>
本発明における(B)白色顔料のアスペクト比は1.2以上4.0以下であることが好ましく、1.2以上3.0以下であることがより好ましい。
アスペクト比が上記範囲である場合には、散乱により高反射率を発現しやすく、特に近紫外領域の短波長の光の反射が大きくなる。このため、上記(B)白色顔料を含む組成物から得られる成形体を用いた半導体発酵装置において、発光効率を向上させることができる。
【0037】
アスペクト比は、粒子等の形状を定量的に表現する簡便な方法として一般に用いられており、本発明では走査式電子顕微鏡(以下「SEM」と略記する。)などの電子顕微鏡観察により計測した粒子の長軸長さ(最大長径)を短軸長さ(長径に垂直方向で最も長い部分の長さ)で除して求めるものとする。軸長さにばらつきがある場合は、複数点(例えば10点)をSEMで計測し、その平均値から算出することができる。あるいは、30点、100点を計測しても同様の算出結果を得ることができる。
【0038】
アスペクト比は、粒子の形状が繊維状や棒状か、あるいは球状かの指標となり、粒子が繊維状の場合はアスペクト比が大きくなり、粒子が真球の場合は、1.0となる。
本発明では、アスペクト比が上記範囲であるので、(B)白色顔料の好ましい形状からは、球状、真球状の粒子を主成分とするもの、あるいは、極端に細長い形状の粒子を主成分とするものは、本発明で用いる(B)白色顔料としては好ましくない。
本発明では、アスペクト比が上記範囲に含まれる粒子が(B)白色顔料全体の60体積
%以上、より好ましくは70体積%以上、特に好ましくは80体積%以上を占めることが好ましく、(B)白色顔料に含まれるすべての粒子が上記アスペクト比の範囲を満たさなければならないわけではないことは当業者が当然に理解できる事項である。
【0039】
アスペクト比を上記範囲とするためには、白色顔料の表面処理をしたり、研磨したりする等の一般的な方法を採ってもよい。また、白色顔料を破砕(粉砕)して微細化することや、白色顔料を焼成により生成することによっても、達成できる。
【0040】
本発明に用いる(B)白色顔料としては、形状が破砕形状であるものが好ましい。ここで破砕形状とは、主に白色顔料を破砕(粉砕)によって微細化した形状をいい、破砕後の処理により結晶の角が少ない丸みを帯びた形状となったもの、焼成などによって生成した球状でない形状のものも含まれる。破砕形状の白色顔料は、球状の白色顔料に比べ、散乱により高反射率を発現しやすく、特に近紫外領域の短波長の光(特に、波長360nm〜460nmの光)の反射が大きい。このため、破砕形状の白色顔料を用いることにより、半導体発光装置の発光効率を向上させることができる。
【0041】
また、本発明における(B)白色顔料の一次粒子径は、0.1μm以上2.0μm以下であることが好ましい。下限値については好ましくは0.15μm以上、更に好ましくは0.2μm以上であり、上限値については好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.8μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。
一次粒子径が小さすぎると、散乱光強度が小さくなって反射率が低くなる傾向があり、一次粒子径が大きすぎると、散乱強度は大きくなるが、前方散乱傾向になるため反射率が小さくなる傾向にある。なお、樹脂組成物中の白色顔料の充填率を上げる等の目的で、一次粒子径が2μmよりも大きい白色顔料を併用することもできる。
【0042】
本発明における一次粒子とは粉体を構成している粒子のうち、他と明確に区別できる最小単位の粒子状の構成単位をいい、一次粒子径はSEMなどの電子顕微鏡観察により計測できる。この際、観察する方向によって面積が異なる粒子の場合には、面積が最大となる方向から観察した際の長軸の長さを一次粒子径とする。一方、一次粒子が凝集してできる凝集粒子を二次粒子といい、二次粒子径は粉体を適当な分散媒(例えばアルミナの場合は水)に分散させて、マイクロトラックやコールターカウンター等の粒度分析計等で測定した体積粒径を言う。一次粒子の粒子径にばらつきがある場合は、数点(例えば10点)をSEM観察し、その平均値を粒子径とすればよい。また、測定の際、個々の粒子形状が球状でない場合は最も長い、すなわち長軸の長さを粒子径とする。
【0043】
一方、上記白色顔料は、二次粒子の中心粒径が、0.2μm以上10μm以下であるものが好ましく、0.2μm以上5μm以下であるものがより好ましい。なお、樹脂組成物中の白色顔料の充填率を上げる等の目的で、二次粒子径が10μmよりも大きい白色顔料を併用することもできる。なお、中心粒径とは積算%の体積基準粒度分布曲線が50%の横軸と交差する点に対応する粒子径を言い、通常50%粒子径(D50)「メディアン径」と呼ばれるものを指す。
【0044】
また、本発明における(B)白色顔料の一次粒径Xと二次粒径Yの比Y/Xは、通常1以上、好ましくは1より大きく、特に好ましくは1.2以上であり、また、通常10以下、好ましくは5以下である。
一次粒径Xと二次粒径Yの比Y/Xが上記範囲である場合には、散乱により高反射率を発現しやすく、特に近紫外領域の短波長の光の反射が大きい。このため、このような白色顔料を含む半導体発光装置において、発光効率を向上させることができる。
【0045】
(B)白色顔料の種類としては、シリコーン樹脂組成物の硬化を阻害しない限り、特に
制限はなく無機および/または有機の材料を用いる事ができる。ここで白色とは、無色であり透明ではない事をいう。すなわち可視光領域に特異な吸収波長を持たない物質により入射光が乱反射されて発現する色をいう。
【0046】
本発明において、(B)白色顔料は、表面活性が低いことが好ましい。ここで、表面活性とは、表面近傍の他の物質に対する化学的・物理的反応性をいう。
(B)白色顔料の表面活性が低いことで、これを含む材料の硬化後(半導体発光装置用樹脂成形体)における有機物吸着性を下げることができ、半導体発光装置の輝度を維持することと長期使用時の高い信頼性とを実現することができる。
【0047】
(B)白色顔料の表面活性は、通常(B)白色顔料の表面に疎水化処理を施すことにより低くすることができる。
疎水化処理は、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤による処理が挙げられる。このようなカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いることが好ましい。なお、カップリング剤による表面処理は、通常の処理方法によって実施されればよく、その方法は特に限定されるものではない。例えば、シランカップリング剤を適当な溶媒中に溶解し、この溶液中に白色顔料を浸し、溶媒を留去および加熱乾燥する方法などが挙げられる。表面処理にカップリング剤を用いる場合には、白色顔料100重量部に対して、カップリング剤0.05重量部以上10重量部以下の割合で用いることが好ましい。
【0048】
また、(B)白色顔料の表面活性を低くすることは、(B)白色顔料を十分に乾燥させること、高温で焼成すること、あるいは結晶化させることによっても実現することができる。
また、(B)白色顔料の表面に微細な凹凸ができないような粉砕処理をして表面を加工することも有効である。
【0049】
白色顔料として用いることができる無機粒子としては、アルミナ(以下、「アルミナ微粉」、または「酸化アルミニウム」と称する場合がある。)、酸化ケイ素、酸化チタン(チタニア)、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属塩;窒化硼素、アルミナホワイト、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、硼酸アルミニウム、クレー、タルク、カオリン、雲母、合成雲母などが挙げられる。
また、白色顔料として用いることができる有機微粒子としては、弗素樹脂粒子、グアナミン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子等の樹脂粒子などを挙げることができるが、いずれもこれらに限定されるものではない。
これらの中でも白色度が高く、少量でも光反射効果が高く、かつ変質しにくい点から、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛などがより好ましく、また、材料硬化時の熱伝導率向上の点からは、アルミナ、窒化硼素などがより好ましい。特に樹脂成形体の熱伝導率が良好となる観点からも、アルミナが好ましい。
これらの白色顔料は、単独もしくは2種以上混合して用いる事ができる。
酸化チタンを用いる場合は、光触媒性を考慮し、分散性や白色性等に問題が出ない程度に含有する事ができる。
【0050】
酸化チタンとしては具体的には富士チタン工業社製のTA−100、TA−200、TA−300、TA−500、TR−840等が挙げられ、アルミナとしては具体的には日本軽金属社製A30シリーズ、ANシリーズ、A40シリーズMMシリーズ、LSシリーズ、AHPシリーズ、アドマテックス社製「Admafine Alumina」AO−5タイプ、AO−8タイプ、日本バイコウスキー社製CRシリーズ、大明化学工業社製タイミクロン、Aldrich社製10μm径アルミナ粉末、昭和電工社製A−42シリーズ、A−43シリーズ、A−50シリーズ、ASシリーズ、AL−43シリーズ、AL−47シリーズ、AL−160SGシリーズ、A−170シリーズ、AL−170シリーズ、住友化学社製AMシリーズ、ALシリーズ、AMSシリーズ、AESシリーズ、AKPシリーズ、AAシリーズ等が挙げられ、ジルコニアとしては具体的には第一希元素化学工業社製UEP−100等が挙げられ、酸化亜鉛としては具体的にはハクスイテック社製酸化亜鉛2種等が挙げられる。
【0051】
(A)ポリオルガノシロキサンの屈折率と(B)白色顔料の屈折率差が大きいほど、少量の白色顔料添加でも、白色度がより高く、かつ反射・散乱効率の良い半導体発光装置用樹脂成形体を得ることができる。(A)ポリオルガノシロキサンは屈折率が1.41なので、屈折率が1.76のアルミナ粒子を(B)白色顔料として好適に用いることができる。
【0052】
上述のとおり本発明において(B)白色顔料はアルミナであることが好ましい。アルミナの結晶形態は特に限定されないが、化学的に安定、融点が高い、機械的強度が大きい、硬度が高い、電気絶縁抵抗が大きい等の特性を持つα−アルミナが好適に使用できる。
アルミナ中にアルミニウム、酸素以外の元素を不純物として含むと可視光領域に吸収を持つこととなって着色するために好ましくない。本発明に用いるアルミナとしては、クロム、鉄、チタンの含有量がそれぞれ0.02%以下、好ましくは0.01%以下のものを使用することが好ましい。
本発明のシリコーン樹脂組成物の硬化時の熱伝導率は、前述のとおり高い方が好ましく、より熱伝導率を高くするためには、純度が98%以上のアルミナを用いることが好ましい。中でも純度99%以上のアルミナを用いることがより好ましく、特に低ソーダアルミナを用いることが好ましい。また、熱伝導率を高くするためには、窒化硼素を用いることも好ましく、純度が99%以上の窒化硼素を用いることが更に好ましい。
【0053】
本発明において用いる半導体発光装置用樹脂成形体の原材料であるシリコーン組成物中の(B)白色顔料の含有量は、使用する顔料の種類や粒径、(A)ポリオルガノシロキサンと顔料の屈折率差により適宜選択される。一般的には(A)ポリオルガノシロキサン100重量部に対し20重量部以上、好ましくは50重量部以上、更に好ましくは100重量部以上であり、通常900重量部以下、好ましくは600重量部以下、更に好ましくは400重量部以下である。
白色顔料の添加量が上記範囲内であると反射率、成形性等が良好である。上記下限未満である場合には透過光が多くなって半導体発光装置の発光効率が低下する傾向にあり、上限以上である場合には材料の流動性が悪化して、成形・加工性が低下する傾向となる。
【0054】
<1−3.(C)硬化触媒>
本発明における(C)硬化触媒とは、(A)のポリオルガノシロキサンを硬化させる触媒である。ポリオルガノシロキサンは触媒により重合反応が加速され、速やかに硬化する。この触媒はポリオルガノシロキサンの硬化機構により付加重合用触媒、縮合用触媒がある。
【0055】
付加重合用触媒としては、(A1)成分中のアルケニル基と(A2)成分中のヒドロシリル基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒であり、この付加縮合触媒の例
としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。なお、この(C1)付加縮合触媒の配合量は触媒量とすることができるが、通常、白金族金属として(A1)及び(A2)成分の合計重量に対して通常1ppm以上、好ましくは2ppm以上であり、通常500ppm以下、好ましくは100ppm以下である。これにより触媒活性を高いものとすることができる。
【0056】
縮合用触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、有機酸などの酸、アンモニア、アミン類などのアルカリ、金属キレート化合物などを用いることができ、好適なものとしてTi、Ta、Zr、Al、Hf、Zn、Sn、Ptのいずれか1以上を含む金属キレート化合物を用いることができる。金属キレート化合物の中でも、Ti、Al、Zn、Zrのいずれか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものがさらに好ましく用いられる。
これらの触媒は半導体発光装置用樹脂成形体材料として配合した際の安定性、得られる成形品の硬度、無黄変性、硬化性などを考慮して選択される。
【0057】
縮合用触媒の配合量は、上記式(3)及び/又は(4)で表される成分の合計重量に対して通常0.01重量%以上10重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上6重量%以下であることがより好ましい。
添加量が上記範囲であると半導体発光装置用樹脂成形体材料の硬化性、保存安定性、樹脂成形体の品質が良好である。添加量が上限値を超えると樹脂成形体材料の保存安定性に問題が生じ、下限値未満では硬化に要する時間が長くなり樹脂成形体の生産性の低下、未硬化成分による樹脂成形体の品質低下の可能性が高くなる。
【0058】
<1−4.(D)硬化速度制御剤>
本発明の半導体発光装置用樹脂成形体の原材料であるシリコーン樹脂組成物は、さらに(D)硬化速度制御剤を含有することが好ましい。ここで硬化速度制御剤とは、シリコーン樹脂組成物を成形する際に、その成形効率を向上させるために硬化速度を制御するためのものであり、硬化遅延剤または硬化促進剤が挙げられる。
【0059】
硬化遅延剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、これらを併用してもかまわない。
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、二重結合−三重結合含有化合物類、ジメチルマレート等のマレイン酸エステル類等が例示される。脂肪族不飽和結合を含有する化合物の中でも、三重結合を有する化合物が好ましい。
有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示される。
有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。
窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。
スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。
有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示される。
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料が入手しやすいという観点からは、
ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
硬化遅延剤の添加量はその目的とする遅延の程度に応じて適宜設定すればよいが、使用する(C)硬化触媒1モルあたりの添加量の下限は10-1モルが好ましく、より好ましくは1モルであり、添加量の上限は103モルが好ましく、より好ましくは50モルである。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
硬化促進剤としては、用いる熱硬化性樹脂を硬化させるものであれば特に限定されず、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられ、中でも高い硬化促進性を示す点でイミダゾール類を用いるのが好ましい。
上記イミダゾール類としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられ、商品名としては、2E4MZ、2PZ−CN、2PZ−CNS(四国化成工業株式会社)等がある。硬化促進剤の添加量は、(A)ポリオルガノシロキサンと(C)硬化触媒の合計100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下の範囲で添加することが好ましい。
【0061】
硬化速度制御剤の種類や配合量を上記のように設定することにより、樹脂成形体用のシリコーン組成物の成形が容易となり好ましい。例えば、金型への充填率が高くなったり、射出成形においては金型からの漏れがなく、バリが生成しにくくなったりするという利点が得られる。
【0062】
<1−5.その他の成分>
半導体発光装置用樹脂成形体の原材料であるシリコーン樹脂組成物中には、上記(A)ポリオルガノシロキサン、(B)白色顔料、(C)硬化触媒、(D)硬化速度制御剤以外に、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて他の成分の1種、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで含有させることができる。
【0063】
例えば、半導体発光装置用樹脂成形体の物質吸着性を調整するため、疎水性化粘度調節剤を加えることもできる。疎水性化粘度調節剤とは、一般的な粘度調節剤に対してトリメチルシリル化等の処理を施して、疎水性化したものである。疎水性化粘度調節剤としては、表面処理したヒュームドシリカ等が挙げられる。疎水性化粘度調節剤の好ましい添加量としては、通常、ポリオルガノシロキサン100重量部に対し90重量部以下、好ましくは50重量部以下である。
【0064】
また、半導体発光装置用樹脂成形体の原材料であるシリコーン組成物の流動性コントロールや白色顔料の沈降抑制の目的でシリカ微粒子を含有させることができる。上記シリカ微粒子の含有量は、通常、ポリオルガノシロキサン100重量部に対し60重量部以下、好ましくは40重量部以下である。
本発明に使用するシリカ微粒子としては、特に限定されるものではないが、BET法による比表面積が、通常50m2/g以上、好ましくは80m2/g以上、さらに好ましくは100m2/g以上のものを用いることが好ましい。また、通常300m2/g以下、好ましくは200m2/g以下である。比表面積が小さすぎるとシリカ微粒子の添加効果を十分に得ることができず、大きすぎると樹脂中への分散が困難になる。シリカ微粒子は、例えば親水性のシリカ微粒子の表面に存在するシラノール基と表面改質剤を反応させることにより表面を疎水化したものを使用してもよい。
【0065】
表面改質剤としては、アルキルシラン類の化合物が挙げられ、具体例としてジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、オクチルシラン、ジメチルシリコーンオイルなどが挙げられる。
シリカ微粒子は、例えばフュームドシリカを挙げることができ、フュームドシリカは、水素と酸素との混合ガスを燃焼させた1100〜1400℃の炎で四塩化ケイ素(SiCl4)ガスを酸化、加水分解することにより作製される。フュームドシリカの一次粒子は、平均粒径が5〜50nm程度の非晶質の二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする球状の超微粒子であり、この一次粒子がそれぞれ凝集し、粒径が数百nmの二次粒子を形成する。フュームドシリカは、超微粒子であるとともに、急冷によって製造されるため、表面の構造が化学的に活性な状態となっている。
具体的には、例えば日本アエロジル株式会社製「アエロジル」(登録商標)が挙げられ、親水性アエロジル(登録商標)の例としては、「90」、「130」、「150」、「200」、「300」、疎水性アエロジル(登録商標)の例としては、「R8200」、「R972」、「R972V」、「R972CF」、「R974」、「R202」、「R805」、「R812」、「R812S」、「RY200」、「RY200S」、「RX200」が挙げられる。
【0066】
また、材料の熱硬化後の強度、靭性を向上する目的で、ガラス繊維などの無機物繊維を含有させてもよく、また、熱伝導性を高めるため、熱伝導率の高い窒化ホウ素、窒化アルミ、繊維状アルミナ等を前述の白色顔料とは別に含有させることができる。その他、硬化物の線膨張係数を下げる目的で、石英ビーズ、ガラスビーズ等を含有させることができる。
これらを添加する場合の含有量は、少なすぎると目的の効果が得られず、多すぎると半導体装置用樹脂成形体用材料の粘度が上がり、加工性に影響するので、十分な効果が発現し、材料の加工性を損なわない範囲で選択するのがよい。通常、ポリオルガノシロキサン100重量部に対し100重量部以下、好ましくは60重量部以下である。
【0067】
また、上記樹脂成形体用の原材料であるシリコーン組成物には、その他、イオンマイグレーション(エレクトロケミカルマイグレーション)防止剤、硬化遅延剤(反射制御剤)、硬化促進剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、カップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤などを本発明の目的および効果を損なわない範囲において含有させることができる。
なお、カップリング剤としては例えばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性がある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0068】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、
アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0069】
<2.半導体発光装置用樹脂成形体の成形方法>
本発明の半導体発光装置用樹脂成形体を得るための製造方法としては、圧縮成形法やトランスファー成形法や射出成形法を挙げる事ができる。これらのうち、好ましい形成法としては、無駄な硬化物が発生せず二次加工が不要である(すなわちバリが発生しにくい)点から、樹脂成形体の成形工程の自動化、成形サイクルの短縮化、成形品のコスト削減が可能になる等のメリットがある、射出成形法、特に液状射出成形法が挙げられる。
【0070】
射出成形法は射出成形機を用いて行なわれ、そのシリンダー設定温度は材料に応じて適宜選択すればよいが、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、さらに好ましくは、60℃以下である。金型温度は80℃以上、300℃以下、好ましくは100℃以上、250℃以下、さらに好ましくは、130℃以上、200℃以下である。射出時間は材料によって変わるが、通常数秒あるいは秒以下である。成形時間は材料のゲル化速度や硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、通常3秒以上、1200秒以下、好ましくは5秒以上、900秒以下、さらに好ましくは10秒以上、600秒以下である。
【0071】
圧縮成形法は圧縮成形機を用いて行なわれ、その成形温度は材料に応じて適宜選択すればよいが、通常80℃以上、300℃以下、好ましくは100℃以上、250℃以下、さらに好ましくは、130℃以上、200℃以下である。成形時間は材料の硬化速度に応じて適宜選択し、通常3秒以上、1200秒以下、好ましくは5秒以上、900秒以下、さらに好ましくは10秒以上、600秒以下である。
【0072】
トランスファー成形法はトランスファー成形機を用いて行なわれ、その成形温度は材料に応じて適宜選択すればよいが、通常80℃以上、300℃以下、好ましくは100℃以上、250℃未以下、さらに好ましくは、130℃以上、200℃以下である。成形時間は材料のゲル化速度や硬化速度に応じて適宜選択し、通常3秒以上、1200秒以下、好ましくは5秒以上、900秒以下、さらに好ましくは10秒以上、600秒以下である。
【0073】
いずれの成形法でも必要に応じて後硬化を行うことができ、後硬化温度は100℃以上、300℃以下、好ましくは150℃以上、250℃以下、さらに好ましくは、170℃以上、200℃以下である。後硬化時間は通常3分以上、24時間以下、好ましくは5分以上、10時間以下、さらに好ましくは10分以上、5時間以下である。
【0074】
<3.半導体発光装置用樹脂成形体>
本発明の半導体発光装置用樹脂成形体は、通常半導体発光素子を搭載して半導体発光装置として用いられる。半導体発光装置は、例えば図1に示す様に、半導体発光素子1、樹脂成形体2、ボンディングワイヤ3、封止材4、リードフレーム5等から構成される。この場合、リードフレーム5等の導電性材料と絶縁性の樹脂成形体2からなるものを、例えばパッケージと称する。
本発明の半導体発光装置用樹脂成形の原材料であるシリコーン樹脂組成物を用いて成形された半導体発光装置用樹脂成形体は、以下の特徴を有する。
【0075】
本発明において、半導体発光装置用樹脂成形体は、(A)ポリオルガノシロキサン、(B)白色顔料、及び(C)硬化触媒を含有するシリコーン樹脂組成物から得られた半導体発光装置用樹脂成形体であって、アビエチン酸蒸気を発生している200℃に加熱されたアビエチン酸の上方3cmの距離で20分間アビエチン酸蒸気に曝した後、波長250nm以上500nm以下のUVまたは可視光(強度:1900mW/cm2(365nm受光素子で測定))を15分間照射したときの、照射前後における樹脂成形体の白色度(W
I(CIE)))の減少率が40%以下であることを特徴とする。白色度合いの変化は、例えばコニカミノルタ社SPECTROPHOTOMETER CM−2600Dを用いて測定することができる。
半導体発光装置用樹脂成形体の上記白色度の減少率が低いことは、樹脂成形体へのアビエチン酸の吸着率が低いことを意味し、樹脂成形体に入射する光がその吸着物質で散乱されることがないため、反射率が低下することも防止でき、その結果輝度の低下も防止することができる。
さらに、樹脂成形体に吸着した成分がリフロー時に樹脂から放出されることもないため、半導体発光装置において樹脂成形体と、封止材やリードフレームとの接着界面での剥離が生じにくくなる。すなわち、本発明の半導体発光装置用樹脂成形体は、半導体発光装置の輝度を維持することと長期使用時の高い信頼性とを実現するものである。
【0076】
本発明においては、半田フラックスの成分の一つであるアビエチン酸を200℃に加熱して蒸気を発生させ、アビエチン酸の上方3cmの距離で20分間アビエチン酸蒸気に樹脂成形体を曝した後、波長250nm以上500nm以下のUVまたは可視光(強度:1900mW/cm2(365nm受光素子で測定))を15分間照射したときの、照射前後における樹脂成形体の白色度(WI(CIE)))の減少率が40%以下であり、より好ましくは30%以下である。上記減少率が40%より大きいと、樹脂成形体の反射率が低下し、場合によってはこれを備える半導体発光装置において樹脂成形体と封止在やリードフレームとの剥離が生じたりする恐れが高くなる。
なお、波長250nm以上500nm以下のUVまたは可視光を用いることは、半導体発光装置で主に用いられる紫外、紫、青色の各発光素子の波長を意味する。また、強度1900mW/cm2の光を15分間照射することは、通常のLED使用時にチップから照射されるエネルギー量と相応のエネルギーを与えたことを意味する。
【0077】
上記白色度の減少率は、半導体発光装置用樹脂成形体が含有する(A)ポリオルガノシロキサンの吸着性官能基を少なくすること、低フェニルシリコーンを用いること、あるいは(A)ポリオルガノシロキサンと(B)白色顔料などのフィラーとの量比、フィラーの粒径を制御することなどにより、上記範囲にすることができる。上記吸着官能基としては、水酸基、エポキシ基及び炭素数1〜3のアルコキシ基等が挙げられる。
また、上記白色度の減少率は、半導体発光装置用樹脂成形体が含有する(B)白色顔料の表面活性を下げることによっても、低くすることができ、また、樹脂成形体に成形するシリコーン樹脂組成物に、疎水性化した粘度調節剤を配合することによっても、上記範囲に制御することができる。
【0078】
本発明の半導体発光装置用樹脂成形体は、可視光のみならず、紫色よりも短い波長の近紫外光、紫外光についても高い反射率が得られることが特徴である。波長360、400及び460nmの光の反射率が、それぞれ通常60%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。紫外光領域から可視光領域まで高反射率を有する本発明の半導体発光装置用樹脂成形体は、従来のものにないきわめて優れた特性を有する。特にポリシロキサン等を用いた樹脂製の半導体発光装置用成形体においては、これまで得られていなかった特性であり、技術的意義が極めて高い。更に、本発明の半導体発光装置用樹脂成形体は、物質吸着性が低いため、長期使用時においても高い反射率を維持することが可能となる。
【0079】
反射率の値は、具体的には厚さ0.4mmの成形体において、波長460nmにおける光反射率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。
また、同じく厚さ0.4mmの成形体において、波長400nmにおける光反射率については、60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
【0080】
本発明の半導体発光装置用樹脂成形体は、通常、半導体発光素子装着面の反対側に底面を有する。この場合、前記半導体発光素子装着面と底面の間の距離、即ち半導体発光装置用樹脂成形体の厚みは、通常100μm以上、好ましくは200μm以上である。また、通常3000μm以下であり好ましくは2000μm以下である。厚みが薄すぎると底面に光が透過して反射率が低下する、樹脂成形体の強度が不十分で取り扱い上変形する、などの問題が生じるおそれがあり、厚すぎると樹脂成形体自体も厚く嵩高くなるため、半導体発光装置の用途が限られる。
【0081】
<4.半導体発光装置>
本発明の半導体発光装置用パッケージは、通常半導体発光素子を搭載して半導体発光装置として用いられる。半導体発光装置の概要を、図1及び2を用いて説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
図1には、半導体発光装置の一例が示され、半導体発光素子1、樹脂成形体2および金属リードフレーム5からなるパッケージ、ボンディングワイヤ3、封止材4等から構成される。
【0082】
半導体発光素子1は、近紫外領域の波長を有する光を発する近紫外半導体発光素子、紫領域の波長の光を発する紫半導体発光素子、青領域の波長の光を発する青色半導体発光素子などを用いることが可能であり、通常350nm以上520nm以下の波長を有する光を発する。図1においては半導体発光素子が1つのみ記載されているが、複数個の半導体発光素子を線状、平面状に配置することも可能である。
パッケージを構成する樹脂成形体2は、封止材4及びリードフレーム5と接触する部分を含んでおり、本発明においては樹脂成形体2の白色度の減少率が低いため、封止材4又はリードフレーム5間との接着性が良好である。
【0083】
ボンディングワイヤ3は、半導体発光素子1をパッケージに固定している。また、半導体発光素子1が電極となるリードフレームと接触していない場合には、導電性のボンディングワイヤ3が半導体発光素子1への電極供給の役割を担う。
【0084】
封止材4は、蛍光体及びバインダー樹脂の混合物であり、半導体発光素子1からの励起光を蛍光に変換する。封止材4に含まれる蛍光体は、半導体発光素子1の励起光の波長に応じて適宜選択される。
例えば、白色光を発する発光装置であれば、青色励起光を発する半導体発光素子を用いて、緑色及び赤色の蛍光体を含ませることで白色光を生成することができる。あるいは、紫色励起光を発する半導体発光素子を用いれば、青色及び黄色の蛍光体を蛍光体層に含ませるか、又は青色、緑色、及び赤色の蛍光体を蛍光体層に含ませることにより、白色光を生成できる。
【0085】
封止材4は、バインダーを用いることなく形成することも可能であり、例えば図2のように、樹脂成形体2を塞ぐように透明基板を用意し、その上に蛍光体層を構成する封止材4を形成する態様も可能である。このような態様の場合、半導体発光素子1と封止材4とが間隔をおいて配置されているため、蛍光体の劣化を防ぐことができ、また発光装置の出力も向上させることができる。半導体発光素子1と封止材4との間隔は、5〜500mmであることが好ましい。なお、図2においてリードフレームは図示していない。
【0086】
図1においては、樹脂成形体2に半導体発光素子1が搭載されており、半導体発光素子1が搭載された箇所の樹脂成形体2の厚さは、通常100μm以上、好ましくは200μm以上である。また、通常3000μm以下であり好ましくは2000μm以下である。厚みが薄すぎると底面に光が透過して反射率が低下する傾向があり、パッケージの強度が
不十分で取り扱い時に変形する等の問題が生じるおそれがあり、厚すぎるとパッケージ自体も厚く嵩高くなるため、半導体発光装置の用途が限られる可能性がある。
【実施例】
【0087】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定される物ではない。
【0088】
<実施例>
58mLのポリエチレン製軟膏壺に、6.0gのアルミナ(かさ密度:0.8、平均粒子径:1.2μm、平均アスペクト比:1.48、純度99.12%)、0.25gの表面処理(トリメチルシリル処理)済みヒュームドシリカ、フェニル基非含有シリコーン(ビニル基:0.3mmоl/g含有、白金:8ppm含有、常温での粘度3700cp。以下、このシリコーンを「フェニル基非含有シリコーンE」と表記する。)を3.04g、フェニル基非含有シリコーン(ビニル基:0.1mmоl/g含有、ヒドロシリル基:4.6mmоl/g含有、常温での粘度600cp。以下、このシリコーンを「フェニル基非含有シリコーンF」と表記する。)を0.30g、硬化遅延成分(触媒制御成分)を含むフェニル基非含有シリコーン(ビニル基:0.2mmоl/g含有、ヒドロシリル基:0.1mmоl/g含有、アルキニル基:0.2mmоl/g含有、常温での粘度500cp。以下、このシリコーンを「フェニル基非含有シリコーンG」と表記する。)を0.15g入れ、Thinky社製泡取練太郎ARV−200にて攪拌した。再度0.25gの表面処理(トリメチルシリル処理)済みフュームドシリカを添加し、ARV−200にて真空脱泡を実施することにより白色樹脂組成物を得た。
【0089】
得られた白色樹脂組成物を1.3cm径で0.3mm厚、1.0mm厚、3.0mm厚のステンレス製型に各々入れて、銀板上にて10kg/cm2の圧力下、空気中にて3分間150℃で加温加圧プレスし、さらに通風乾燥機内にて200℃で10分間後硬化することによって成形体1乃至3を得た。なお、成形体1乃至3のベース樹脂とフィラーの比は36.8:63.2である。
【0090】
<試験例1>
アビエチン酸(東京化成製)2.0gを200ccビーカーの中に入れて200℃に加熱し、そのアビエチン酸表面から3cmの高さの位置に実施例で得た1.0mm厚の成形体2を針金で吊るし、20分間アビエチン酸蒸気に曝した。
その後、成形体片に波長250nm以上のUV光及び可視光(以下、まとめて「UV光」と記す。強度:1900mW/cm2(365nmの受光素子で測定))を15分間照射した。UV光は、松下電工マシンアンドビジョン社製 紫外線硬化装置アイキュアANUP5204からのUV(光源:水銀−キセノンランプ)光を4分割し、朝日分光社製の短波長カットフィルター(ASAHI SPECTRA Co.製、OPTICAL FILTERS短波長カットフィルター(250nm))にて250nm以下の光をカットしたものを用いて、サンプルとカットフィルターまでの距離は0.5mmに設定した。
アビエチン酸蒸気に曝した後の白色後(WI(CIE))と、UVを照射した後の白色度(WI(CIE))を各々コニカミノルタ社SPECTROPHOTOMETER CM−2600dを用いて測定したところ、成形体2については照射の前後で値が減少しなかった。
【0091】
<比較例1>
実施例1の成形体2の代わりにソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリフタルアミド(アモデルA4122)材成形体(樹脂成形体4とする)を使用したところ、UV光照射前後で成形体は大きく着色し、UV光照射前後でその白色度(WI(CIE))は186.5%減少して値がマイナスの領域となった。
【0092】
<比較例2>
実施例1の成形体2の代わりに京セラ製セラミック成形体片(成形体5とする)を使用したところ、UV光照射前後で着色が認められ、UV光照射前後でその白色度(WI(CIE))は43.7%減少した。
【符号の説明】
【0093】
1 半導体発光素子
2 樹脂成形体
3 ボンディングワイヤ
4 封止材
5 リードフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオルガノシロキサン、(B)白色顔料、及び(C)硬化触媒を含有するシリコーン樹脂組成物から得られた半導体発光装置用樹脂成形体であって、
前記樹脂成形体は、アビエチン酸蒸気を発生している200℃に加熱されたアビエチン酸の上方3cmの距離で20分間アビエチン酸蒸気に曝した後、波長250nm以上500nm以下のUVまたは可視光(強度:1900mW/cm2(365nm受光素子で測定))を15分間照射したときの、照射前後における樹脂成形体の白色度(WI(CIE))の減少率が40%以下であることを特徴とする、半導体発光装置用樹脂成形体。
【請求項2】
前記(B)白色顔料は、アスペクト比が1.2以上4.0以下でかつ一次粒径が0.1μm以上2.0μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項3】
前記(B)白色顔料の一次粒径Xと二次粒径Yの比Y/Xが1以上10以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂成形体。
【請求項4】
前記(B)白色顔料がアルミナであることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項5】
前記(A)ポリオルガノシロキサンが常温、常圧下で液体の熱硬化性ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項6】
前記熱硬化性ポリオルガノシロキサンが付加型ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする、請求項5に記載の樹脂成形体。
【請求項7】
前記シリコーン樹脂組成物は、更に(D)硬化速度制御剤を含有することを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項8】
厚さ0.4mmにおいて、波長460nmにおける光反射率が80%以上であることを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項9】
厚さ0.4mmにおいて、波長400nmにおける光反射率が60%以上であることを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項10】
液状射出成形法により成形されてなる請求項1〜9の何れか一項に記載の樹脂成形体。
【請求項11】
半導体発光素子、請求項1〜10の何れか一項に記載の樹脂成形体及び封止材を少なくとも備えてなる半導体発光装置。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−124428(P2012−124428A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276104(P2010−276104)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】