説明

半導体発光装置

【課題】光ファイバや光導波路等への結合損失を小さくした半導体発光装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
半導体発光素子11と、半導体発光素子を載置する円形の載置面19と、載置面の外縁19cから上方に起立して半導体発光素子の側方を包囲し、半導体発光素子の放射光iを反射する反射面20とを有する半導体発光装置であって、反射面は、載置面の中心を通り該載置面に直交する平面上の平面曲線21を、該載置面の中心を通る線を回転軸17にして回転させた、上に向かって内径が常に大きくなる回転面であり、平面曲線21は、載置面の外縁上にある下端点Aから該下端点より上方にある中間点Bまで延びる所定の第一曲線22と、中間点から該中間点より上方にあり、反射面の上端である上端点Cまで延びる所定の第二曲線27とからなることを特徴とする半導体発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED素子等の半導体発光素子を用いた半導体発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射光を光ファイバや光導波路に入射して用いる通信用LED(Light Emitting Diode)装置は、光ファイバや光導波路へと導入されない光の割合が低く、光ファイバや光導波路へ導入された光の挿入損失が低いものが求められている。
通信用LED装置としては、例えば、緑色発光のLED素子を平坦なリードフレームに実装し、パッケージ前面にレンズを設けることで集光して結合効率を高めているものがある。
しかし、LED素子からの放射光は、全方向に拡がるため、レンズにすら入らない光がある。このため、LED素子の放射光のうち、光ファイバや光導波路に入らない光の割合(結合損失)が大きくなっている。また、指向性が低いことが、光ファイバや光導波路に導入された光の挿入損失が大きくなる原因になっている。なお、一般的な表示用LEDについても指向性が低く、同様の問題がある。
【0003】
そこで、結合損失を小さくする複合型結合鏡として、特許文献1には、放物線と、その放物線を焦点を中心として回転移動させて得られる曲線とを、放物線の対称軸を回転軸として回転させて得られる面を回転鏡面にしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−262763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の複合型結合鏡では、LED素子の側面から放出された放射光を開口へと導き難いことから、光ファイバや光導波路等への結合損失を十分に小さくすることが難しいと考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、光ファイバや光導波路等への結合損失を小さくした半導体発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の半導体発光装置は、半導体発光素子と、前記半導体発光素子を載置する円形の載置面と、前記載置面の外縁から上方に起立して前記半導体発光素子の側方を包囲し、前記半導体発光素子の放射光を反射する反射面とを有する半導体発光装置であって、前記反射面は、前記載置面の中心を通り該載置面に直交する平面上の平面曲線を、該載置面の中心を通る線を回転軸にして回転させた、上に向かって内径が常に大きくなる回転面であり、前記平面曲線は、前記外縁上にある下端点から該下端点より上方にある中間点まで延びる第一曲線と、前記中間点から該中間点より上方にあり、前記反射面の上端である上端点まで延びる第二曲線とからなり、前記回転軸の垂線と前記下端点から中間点まで延びる第一直線との交差角度のうちで劣角の角度θ1が、56.61°≦θ1≦74.63°であり、前記第一直線から前記第一曲線まで延びる、前記第一直線の最長の第一垂線の長さI1(但し、I1は、前記第一垂線が前記第一直線より上方に延びる場合は負の値をとり、前記第一垂線が前記第一直線より下方に延びる場合は正の値をとる)を、前記第一直線の長さS1で割った値が、−0.011≦I1/S1≦0.110であり、前記回転軸の垂線と、前記中間点から上端点まで延びる第二直線との交差角度のうちで劣角の角度θ2が、63.74°≦θ2≦66.30°であり、前記第二直線から前記第二曲線まで延びる、前記第二直線の最長の第二垂線の長さI2(但し、I2は、前記第二垂線が前記第二直線より上方に延びる場合は負の値をとり、前記第二垂線が前記第二直線より下方に延びる場合は正の値をとる)を、前記第二直線の長さS2で割った値が、0.041≦I2/S2≦0.078であることを特徴とする。
【0008】
半導体発光素子としては、特に限定されないが、発光ダイオード(LED)素子、レーザダイオード素子等が例示できる。
半導体発光素子の大きさは、特に限定されないが、厚さが0.01〜0.3mmであることが好ましい。厚さが0.01mm未満では半導体発光素子の強度が低く取扱いし難くなる。一方、0.3mmを超えると半導体発光装置そのものが大きくなりすぎてしまう。
【0009】
半導体発光素子から平面曲線の下端点までの最小距離は、特に限定されないが、0.01〜0.05mmであることが好ましい。この最小距離が0.01mm未満では半導体発光素子を載置面にセットし難くなる。一方、0.05mmを超えると結合損失が大きくなる。より好ましくは、0.02〜0.04mmである。
【0010】
載置面から平面曲線の中間点までの高さは、特に限定されないが、載置面から半導体発光素子の上端までの高さの0.7〜1.25倍であることが好ましい。0.7倍未満では、平面曲線の第一曲線部の回転面で反射されない半導体発光素子の放射光(主に、半導体発光素子の側面からの放射光)が多くなり、指向性が低くなる。一方、1.25倍を超えると、第二曲線が短くなるため平面曲線の第二曲線部の回転面が小さくなり、指向性が低くなる。
【0011】
載置面から平面曲線の上端点までの高さは、特に限定されないが、半導体発光装置に用いるリードフレームをプレス加工して載置面及び反射面を形成する場合には、0.5〜1mmであることが好ましい。0.5mm未満では指向性が得られ難くなる。一方、1mmを超えると載置面や反射面が変形し易くなる。
【0012】
半導体発光装置の用途は、特に限定されないが、光ファイバや光導波路に放射光を入射する通信用LED発光装置等の通信用半導体発光装置が例示できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ファイバや光導波路等への結合損失を小さく(例えば、結合損失が4dB以下)した半導体発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例のLED発光装置の平面図である。
【図2】同LED発光装置の凹部付近を拡大した平面図及び断面図である。
【図3】同LED発光装置の反射面の平面曲線の説明図である。
【図4】同LED発光装置の使用状態の断面模式図である。
【図5】実施例及び比較例の平面曲線の図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
本発明の実施例のLED発光装置10について、図1〜図5を用いて説明する。
【0016】
LED発光装置10は、LED素子11と、銀メッキが表面に施された銅合金からなり、LED素子11が上面に載置されているリードフレーム12と、透明な樹脂を成形してなり、リードフレーム12の一部とLED素子11とを覆っている封止材15とを備えている。
【0017】
リードフレーム12は、プレス加工により上面に凹部18が形成されている。凹部18の底面19は略円形状の平面である。この底面19が、LED素子11が載置される載置面である。凹部18の側面20は、底面19の中心を通りこの底面19に直交する平面上の平面曲線21を、底面19の中心を通る、底面19の垂線を回転軸17にして回転させた、上に向かって内径が常に大きくなる回転面である。この側面20が、LED素子11の放射光iを反射する反射面である。
【0018】
平面曲線21は、底面19の中心を通り底面19に直交する平面で凹部18を切断したときに断面に現れる底面19の外縁19cから凹部18の上端まで延びる曲線であり、底面19より上方に位置する中間点Bより下側の第一曲線22と、この中間点Bより上側の第二曲線27とからなっている。
【0019】
LED素子11は、略正方形の板状で発光面を上に向けて、底面19の略中央に載置されている。また、LED素子11の放射光iは、底面19の外縁19cから上方に起立してLED素子11の側方を包囲している凹部18の側面20によって反射され、凹部18の開口へと導かれる。
【0020】
ここで、凹部18の形状が異なる3種類の実施例のLED発光装置10を作成し、それぞれの結合損失を測定した。また、凹部の形状が異なる3種類の比較例のLED発光装置を作成し、それらの結合損失も測定した。実施例及び比較例の凹部形状と結合損失の測定値とを次の表1に示す。また、それぞれの平面曲線を図5に示す。なお、LED素子11は、高さが0.1mmで、底面の角11bと凹部18の底面19の外縁19cとの最小間隔が0.03mmのものを用いた。
【0021】
【表1】

【0022】
表1のそれぞれの値について詳述すると、C点高さH1は、底面19から平面曲線21の上端点C(凹部18の開口)までの高さ、即ち、凹部18の深さであり、B点高さH2は底面19から平面曲線21の中間点Bまでの高さであり、チップ高さH3は底面19からLED素子11の上面11aまでの高さである。また、底面半径Rは円形状の底面19の半径であり、間隙GはLED素子11の底面の角11bから平面曲線21の下端点Aまでの最短の距離である。
【0023】
θ1は平面曲線21の下端点Aから中間点Bまで延びる第一直線23と回転軸17の垂線との交差角度のうちで劣角の角度である。また、S1は第一直線23の長さであり、I1は第一直線23から第一曲線22まで延びる、第一直線23の垂線のうちで最長の線である第一垂線24の長さであり、I1/S1はI1の値をS1の値で割った値である。但し、I1は、第一垂線24が第一直線23より上方に延びる場合、即ち、第一曲線22が上に凸の曲線の場合は負の値をとり、第一垂線24が第一直線23より下方に延びる場合、即ち、第一曲線22が下に凸の曲線の場合は正の値をとる。
【0024】
θ2は平面曲線21の中間点Bから上端点Cまで延びる第二直線28と回転軸17の垂線との交差角度のうちで劣角の角度である。また、S2は第二直線28の長さであり、I2は第二直線28から第二曲線27まで延びる、第二直線28の垂線のうちで最長の線である第二垂線29の長さであり、I2/S2はI2の値をS2の値で割った値である。但し、I2は、第二垂線29が第二直線28より上方に延びる場合、即ち、第二曲線27が上に凸の曲線の場合は負の値をとり、第二垂線29が第二直線28より下方に延びる場合、即ち、第二曲線27が下に凸の曲線の場合は正の値をとる。
【0025】
結合損失は、図4に示すように、封止材15の厚さを0.2mmにしたLED発光装置10に、BK7のガラス板32(厚さ0.1mm)を介在させて、光ファイバ30(外径1.20mm、コア31の直径0.98mm、)を接続したときに、LED素子11の放射光iのうち、光ファイバ30に入らないものの割合を測定して求めた。
【0026】
表1に示すように、実施例1〜3は、結合損失が3.6dB以下となり、小さくなった。また、挿入損失が低減できた。一方、I1/S1の値が0.142である比較例1及びθ1が90°である比較例2、3は、結合損失が4.1dB以上であった。
【0027】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【符号の説明】
【0028】
10 LED発光装置
11 LED素子
11a 上面
17 回転軸
19 底面
19c 外縁
20 側面
21 平面曲線
22 第一曲線
23 第一直線
24 第一垂線
27 第二曲線
28 第二直線
29 第二垂線
A 下端点
B 中間点
C 上端点
i 放射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子(11)と、前記半導体発光素子(11)を載置する円形の載置面(19)と、前記載置面(19)の外縁(19c)から上方に起立して前記半導体発光素子(11)の側方を包囲し、前記半導体発光素子(11)の放射光(i)を反射する反射面(20)とを有する半導体発光装置(10)であって、
前記反射面(20)は、前記載置面(19)の中心を通り該載置面(19)に直交する平面上の平面曲線(21)を、該載置面(19)の中心を通る線を回転軸(17)にして回転させた、上に向かって内径が常に大きくなる回転面であり、
前記平面曲線(21)は、前記外縁(19c)上にある下端点(A)から該下端点(A)より上方にある中間点(B)まで延びる第一曲線(22)と、前記中間点(B)から該中間点(B)より上方にあり、前記反射面(20)の上端である上端点(C)まで延びる第二曲線(27)とからなり、
前記回転軸(17)の垂線と前記下端点(A)から中間点(B)まで延びる第一直線(23)との交差角度のうちで劣角の角度θ1が、56.61°≦θ1≦74.63°であり、
前記第一直線(23)から前記第一曲線(22)まで延びる、前記第一直線(23)の最長の第一垂線(24)の長さI1(但し、I1は、前記第一垂線が前記第一直線より上方に延びる場合は負の値をとり、前記第一垂線が前記第一直線より下方に延びる場合は正の値をとる)を、前記第一直線(23)の長さS1で割った値が、−0.011≦I1/S1≦0.110であり、
前記回転軸(17)の垂線と、前記中間点(B)から上端点(C)まで延びる第二直線(28)との交差角度のうちで劣角の角度θ2が、63.74°≦θ2≦66.30°であり、
前記第二直線(28)から前記第二曲線(27)まで延びる、前記第二直線(28)の最長の第二垂線(29)の長さI2(但し、I2は、前記第二垂線が前記第二直線より上方に延びる場合は負の値をとり、前記第二垂線が前記第二直線より下方に延びる場合は正の値をとる)を、前記第二直線(28)の長さS2で割った値が、0.041≦I2/S2≦0.078であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
前記載置面(19)から前記中間点(B)までの高さH2が前記載置面(19)から前記半導体発光素子(11)の上端(11a)までの高さH3の0.7〜1.25倍である請求項1記載の半導体発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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