説明

半導体素子

【課題】
バルク的薄膜であっても、駆動光電力を低減化した光可飽和吸収特性を有する半導体素子およびその製造方法を提供すること
【解決手段】
可飽和吸収特性を示す半導体薄膜を有する半導体素子であって、この半導体薄膜を加圧する加圧手段を有することを特徴とする。本発明者らは、可飽和吸収特性を示す半導体薄膜に加圧を行うことで、半導体薄膜に存在する結晶構造に歪みを与え、その歪みに応じて飽和励起光強度密度Isが変化することに想到し、半導体薄膜を加圧する加圧手段を有することでバルク的薄膜であっても、駆動光電力を低減化した光可飽和吸収特性を有することができ、これを用いて半導体素子を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体薄膜を有する半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の光可飽和吸収特性とは、材料の同一領域に弱い光を当てながら別に強い光を当てると、その材料の光の吸収係数が減少する特性をいう。この特性について図1を用いて説明する。
【0003】
図1に示すように、弱い光である信号光パルス(図中(a))と強い光パルスである制御光パルス(図中(b))をある材料の同じ場所に照射すると、信号光パルスと制御光パルスとが重なった期間だけ出力光パルス(図中(c))が現れる。一方、それ以外の期間に出力パルスは現れない。即ちこれは、アンド回路の特性を有すると言え、この特性を用いて光−光スイッチ動作を行う半導体素子としての応用が考えられる。なおこの半導体素子を実現するためには、急峻に応答するだけでなく、できるだけ小さな制御光パルスで動作可能とすることが望まれている。
【0004】
一方、従来の光可飽和吸収特性は、強い光励起密度によって発生した高密度キャリアが状態密度を占有するために生じるバンドフィリング効果、高密度キャリアによって生じる多体効果であるバンドギャップのリノーマリゼーション効果、またはワニエ励起子に基づく位相空間フィリング効果等によって生じている。いずれの場合も、価電子帯から伝導帯の底に励起された電子が自然放出過程を経て正孔と再結合して元の状態に戻るために1ns程度の時間を要するという課題があった。
【0005】
そこで、上記問題を解決して急峻な応答を実現すべく、キャリアトラップを導入して電子の寿命を減少させる試みがなされている。そのひとつとして、通常よりも低い温度で半導体薄膜をMBE成長させ(以下これによって成長した膜を単に「低温MBE成長膜」という。)、その膜中に意図的に結晶欠陥を導入し、電子のトラップとして機能させる試みがなされている(例えば下記特許文献1参照)。なお更に、このような低温MBE成長を行う際に、ドーパントとしてBeなどのアクセプタ不純物を導入し1ps程度の速い応答を実現することも可能となってきている。
【特許文献1】特開平7−36065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体素子を実現するためには、上記のとおり速い応答だけでなくより小さな制御光パルスで動作可能とすること即ち駆動光電力の低減化が望まれており、その技術として、量子井戸構造エピタキシャル薄膜を形成する際に予め引っ張り歪みを導入し、駆動光電力を低減化する技術が特願2003−297542号によって提案されている。
【0007】
しかし、より一層の駆動光電力の低減化が必要である。さらに、量子井戸構造ではなく、偏波無依存性や波長帯域特性に優れているバルク的薄膜(最小の厚さが100nm以上であって、電子の性質がバルク的である薄膜をいう。以下同じ。)を用いた半導体素子でも駆動光電力を低減化する必要であるが、この場合には上記特願2003−297542号に記載の技術でさえ未解決である。
【0008】
なお、駆動光電力の低減化の尺度としては飽和励起光強度密度Isを用いることが有用である。飽和励起光強度密度Isとは、材料の光吸収係数αを入射光強度密度Iの関数として表した場合に、α=(α(0)+β)/2となる励起光強度密度Iをいう(図2参照)。なお光吸収係数αとは、入射光強度をP1、透過光強度をP2としたときにα=−ln(P2/P1)にて計算されるものであり、入射光強度密度Iとは、入射光強度をその照射面積にて割ったものをいう。また,α(0)は入射光強度密度Iが0におけるαの極限値であり、βは入射光強度密度Iが無限大におけるαの極限値をいう。
【0009】
そこで本発明は、上記課題を考慮し、バルク的薄膜であっても、駆動光電力を低減化した光可飽和吸収特性を有する半導体素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、具体的には以下の手段を採用する。
まず、第一の手段として、可飽和吸収特性を示す半導体薄膜を有する半導体素子であって、この半導体薄膜を加圧する加圧手段を有することを特徴とする。本発明者らは、可飽和吸収特性を示す半導体薄膜に加圧を行うことで、半導体薄膜に存在する結晶構造に歪みを与え、その歪みに応じて飽和励起光強度密度Isが変化することに想到し、半導体薄膜を加圧する加圧手段を有することでバルク的薄膜であっても、駆動光電力を低減化した光可飽和吸収特性を有する半導体素子を提供できることに思い至った。なおここで加圧手段としては半導体薄膜を加圧する限りにおいて種々考えられるが、圧力を加える冶具を用いて半導体薄膜を加圧することも可能であり、また、半導体薄膜に応力を加えることができるよう応力を内在させた被覆層として配置することも可能である。即ち加圧する限りにおいて特段に制限はない。
またこの場合において、加圧手段は、半導体薄膜を0Paより大きく、1GPaより小さい圧力で加圧すること、半導体薄膜は、Be又はCが1×1019cm−3以下の濃度で添加されていること、半導体薄膜は100nm以上の厚さを有すること、半導体薄膜は、砒化インジウムガリウムを含んでなること、半導体薄膜は、多重量子井戸構造の薄膜であることもそれぞれ望ましい。なお本明細書における多重量子井戸構造の薄膜とは、量子効果を得ることができる程度に薄い(厚さ30nm以下の)層を複数積層してなる薄膜をいう。
また、第二の手段として、基板と、この基板上に配置される複数の光入力部と、複数の光入力部から入力される光に基づいて光の透過、不透過を制御する半導体薄膜と、半導体薄膜が光を透過した場合に光を外部に導く出力部と、半導体薄膜を加圧する加圧手段と、を有することを特徴とする。
またこの場合において、加圧手段は、前記半導体薄膜を0Paより大きく、1GPaより小さい圧力で加圧すること、半導体薄膜は、Be又はCが9×1018cm−3以下の濃度で添加されていること、半導体薄膜は100nm以上の厚さを有すること、半導体薄膜は、砒化インジウムガリウムを含んでなること、半導体薄膜は、多重量子井戸構造の薄膜であることも望ましい。
なお、この手段において半導体薄膜がバルクである場合は、加圧する方向と光を導入する方向とを異ならせても駆動光電力を低減化した光可飽和吸収特性を有する半導体素子を実現することができるという利点を有する。
【発明の効果】
【0011】
以上により、駆動光電力を低減化した光可飽和吸収特性を有する半導体素子およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
InP(燐化インジウム)の(100)面ウェーハを基板(厚さ300nm)とし、この上にInGa1−XAs(砒化インジウムガリウム)の半導体混晶薄膜を、V族元素とIII族元素のビーム強度比(V/III)を10、温度を380℃又は570℃とする条件の下で1500nmの暑さの薄膜を分子線エピタキシャル成長(以下単に「MBE成長」という)させた。なおドーピングに関しては、ノンドープもしくはBe(ベリリウム)をドーパントとし、Beをドーパントとして用いた場合、その濃度は1×1018cm−3となるようにした。この半導体ウェーハは光通信の中心波長である1.5〜1.7μmを中心とする広い波長帯域で動作し、かつピコ秒の動作速度を有する光可飽和吸収半導体であった。なお、作製した3種類の半導体混晶薄膜の膜厚、ドーパントの種類など各種データについては以下に示す。なお上記のInGa1−XAsの半導体混晶薄膜はX=0.47、0.53、0.72の3種類を作成した。
【表1】

次に、この半導体混晶薄膜の表面に対して垂直な方向から重さを加えながら飽和励起光強度密度Isを測定した。図3(a)に重さを加える際に用いた加重装置1の概略図を示す。
図3(a)に示す加重装置1は、先端を劈開した単一モードの光ファイバー2(コア径10μmφ、クラッド径125μmφ、図3(b)参照)を半導体混晶薄膜3の表面に対して垂直な方向から突き立てて重さを加えることができる装置であって、光ファイバー2は金属棒4により支持されている。そしてこの金属棒の上端には水ため5が置かれており、水ため内の水の量を変えることによって光ファイバー2の先端から半導体混晶薄膜に加えられる重さを調整することができる。
一方、半導体混晶薄膜3の裏側の基板面(光ファイバー2が突き立てられる面とは反対の面)には光パワーメータ6が配置されており、光ファイバー2内を伝播してきた光パルスのうち半導体混晶薄膜3を透過した光を計測することができる。そしてこの透過した光の量と半導体混晶薄膜3へ入射した光の量とに基づいて光吸収係数αを求め、更に、飽和励起光強度密度Isを求める。なお飽和励起光強度密度Isは、光吸収係数αをこの入射光強度Iに対して測定し、下記式でフィッティングすることにより求めることができる。また、本実施例で測定に用いる光は、それぞれx=0.47のとき1.5μm、x=0.53のとき1.6μm、x=0.72のとき1.7μmとした。なお本実施例では、光は基板InP(300μm)を透過することとなるが、InPはこれら光の波長範囲では十分透明であると考えられ、その吸収は厚さと吸収係数から概ね30%と見積もって測定した。
【数1】

図4に本実施例で作製した3種類の半導体混晶薄膜の飽和励起光強度密度Isの荷重依存性を示す。図4で示すように、本実施例で作製したいずれの半導体混晶薄膜も、荷重0の状態から荷重が加わるにつれてIsが減少し、それぞれ所定の荷重で最小値を示した。なお本実施例で作製した半導体混晶薄膜はそれぞれ最小のIsを示した後、再び増加する傾向を示した。
なお、Isが最小になる荷重の値は半導体混晶薄膜の種類によって異なり、X=0.47の場合は40g重、X=0.53の場合は150g重、X=0.72の場合は300g重であった。なおここで、光ファイバーの面積は上記径から1.2×10−4cm2と求めることができ、それぞれの荷重をこの面積に基づいて計算すると、X=0.47の場合は30MPa、0.53のときは120MPa、0.72のときは240MPaとなった。本実施例の半導体混晶薄膜における最小のIsの値は荷重0の状態のIsに比べ1/2から1/10程度となった。
なお半導体混晶薄膜が破壊しない範囲を考慮すると、望ましい圧力範囲としては0より大きく1GPa以下の範囲であることが望ましいといえる。またより具体的に、加えるべき荷重に関し、InGa1−XAsにおいてxと最小のIsを示す圧力との関係を検討した。図5にその結果を示す。
図5の結果は、最小のIsを与える圧力がxとともに直線的に増加する傾向を示しており、最小のIsを示す圧力はx=1.0とした場合であっても、500MPa以下となっている。よって0より大きく500MPaの範囲内とすることも荷重を加える範囲としてより望ましい。また、光通信の主たる波長は1.5〜1.7μmの範囲であり、この半導体混晶薄膜を用いた半導体素子を実現するためにはxは0.4から1.0の範囲に収めることが望ましく、それを考慮すると、図5の直線の範囲として、30MPaから500MPaの範囲としておくことがより望ましい。
以上、荷重を加えることにより飽和励起光強度密度Isを下げることができ、荷重を加えていない場合に比べより一層駆動光電力の低減化を図ることができた。
なお、本実施例では、V族元素とIII族元素のビーム強度比(V/III)を10としているが、製膜条件や組成に応じて2〜200と適宜調整することができる。また、MBE膜を製膜する際の温度は、本実施例では380℃、570℃であるが、半導体混晶薄膜を生成することができる限りにおいて適宜調整が可能であり、具体的には、150℃〜570℃程度で適宜調整可能である。また、半導体混晶薄膜の厚さは特に限定はないが、吸収係数との関係から概ね2000nm以下であることが好ましい。
【実施例2】
【0014】
本実施例では、InP(燐化インジウム)の(100)面ウェーハの基板上にInGa1−XAs(砒化インジウムガリウム)の半導体混晶の超薄膜とInAl1−yAs(砒化インジウムアルミニウム)の半導体混晶の超薄膜とを相互に各100層MBE成長させて多重量子井戸構造の薄膜(以下単に「MQW膜」という)とした点が主に実施例1と異なる。なお本実施例における半導体混晶薄膜の断面概略図について図6に示す。
具体的には、まず第一層としてInGa1−XAs(砒化インジウムガリウム)の半導体混晶薄膜をInP(燐化インジウム)の(100)面ウェーハ上に380℃の条件下で7nm積層させた。V族元素とIII族元素のビーム強度比V/IIIは10とした。更に、その層上にInAl1−yAs(砒化インジウムアルミニウム)の半導体混晶を7nm積層した。この積層温度は380℃、V族元素とIII族元素のビーム強度比V/IIIは10とした。そしてこれを各100層(合計200層)となるよう繰り返し、全体で1400nmの半導体薄膜とした。なお上記複数層積層した半導体混晶薄膜はX=0.53、0.78の2種類作製し、そのそれぞれの詳細については以下の表2に示す。なお本実施例においてはいずれのMQW膜、いずれの層においてもドーパントは添加していない。
【表2】

この結果作製した半導体混晶薄膜について、実施例1と同様な実験を行った。この結果を図7に示す。この実験に用いる光の波長は、x=0.53のとき1.6μm、x=0.72のとき1.7μmであった。
図7の結果においても、実施例1と同様、荷重が増加するに従いIsが減少し、その後再び上昇する傾向を示していた。
飽和励起光強度密度Isの最小となる値は、x=0.53の場合は40g重、X=0.78の場合は260g重であった。また実施例1と同様に、上記加重をファイバの面積で割った結果、Isの最小となる値の圧力はそれぞれ30MPa、210MPaであった。
従って、荷重を加えることにより飽和励起光強度密度Isを下げることができる一方、半導体混晶薄膜が破壊しない範囲を考慮すると、0より大きく1GPa以下の範囲であることが望ましいといえる。また、実施例1と同様に、xの値と最小となるIsの値との関係を調べ、直線にて近似すると、x=1のときであっても約400MPa以下となるため、0Paより大きく400MPa以下であることはより望ましい。
以上、本実施例により、加重をしていないものに比べより一層駆動光電力の低減化を図ることができた。
なお、本実施例で用いるMQWの膜厚については、特に限定はないが、量子効果を得る必要から一層あたり30nm以下であることが好ましく、また、吸収係数との関係から、一層辺り30nm以下で合計約100〜200層の範囲がより望ましい。
なお、上記実施例1、実施例2では基板としてInPを用いているが、GaAsやその他の結晶を基板として用いても良い。
また、バルクの半導体混晶薄膜としてInGa1−XAs及びInAl1−yAsを用いているが、InGaAl1−x−zAsやInGa1−xAs1−zなど他の分子エピタキシャル成長させた膜でも可能である。またもちろん層毎にx、y、zの組成を異ならせても実現可能である。
また、上記実施例ではバルクの半導体混晶膜、MQW膜を用いているが、量子細線、量子ドットなどの低次元構造を有する分子エピタキシャル成長膜などにも応用できる。また、更に、上記実施例では価電子帯から伝導帯へのバンド間光吸収の場合について記載しているが、これに限定されることはなく、バンド内の量子準位間遷移による光吸収など他の機構による光吸収とその飽和現象にも等しく適用することができる。更に、上記実施例では加圧される場合のみを示しているが、可飽和吸収半導体薄膜が予め過度に荷重されているのと等しい状態にある場合、例えば2軸性引張り応力が加わるような状態でエピタキシャル成長をさせた場合などは加圧とは反対に引っ張り力を加えることになるが、そのような場合も本発明の一態様として有用である。
【実施例3】
【0015】
本実施例は、実施例1に記載の半導体混晶薄膜を用いた具体的な半導体素子についての例であって、光可飽和吸収特性を利用した光による光のスイッチングを可能とする半導体素子である。図8(a)にその構造を示す。
本実施例に係る半導体素子は、基板10と、この基板10の上に形成される導波路11と、この導波路11の一部として設けられる光可飽和吸収特性を示す半導体混晶薄膜18と、この半導体混晶薄膜18に対応して配置され、半導体混晶薄膜18を加圧する被覆層15と、を有して構成されている。
基板は、導波路11を配置することができる基板であれば特に限定はなく、例えば
GaAsを用いることができる。
導波路11は、第一の入力部12、第二の入力部13、半導体薄膜層18、出力部14とを有して構成されており、第一及び第二の入力部からは夫々強さの異なる光が入射される(図8(a)中の矢印参照)。なお出力部14は、半導体混晶薄膜18に入力される光に応じて光可飽和吸収特性を示し、光が透過した場合、この透過した光を外部へと導く。
半導体混晶薄膜18は、第一及び第二の入力部と出力部との間に配置され、光可飽和吸収特性に基づいて光の透過、不透過を制御する。
被覆層15は、半導体混晶薄膜18を覆うように配置されており、しかもこの半導体薄膜層18に圧力を加えるような構成となっている。具体的には熱収縮性の樹脂により形成され、熱収縮による応力により半導体混晶薄膜18を加圧する。
本実施例では、半導体混晶薄膜18に光が入射される方向と、圧力が加えられる方向とは90度異なっているが、本実施例の半導体混晶薄膜18は100nm以上の十分な厚さを有しているバルク的薄膜であるため、異なった方向からの圧力であっても、低い飽和励起光強度密度Is、即ち駆動光電力の低減化を達成することができている。
図8(b)は、図8(a)中のA−Aを矢印方向から見た場合の断面図である。ここにおいて、導波路はコア層21と、このコア層を狭持する第一及び第二のクラッド層19、20とを有して構成されており、光をこれらの間に生ずる屈折率差により閉じ込めて導く。半導体混晶薄膜18は、第一の入力部及び第二の入力部の双方から光が入力された場合、光可飽和吸収特性を示し、強い制御光が入力されると信号光を透過させ、出力部14側にその信号光を透過させる。なお具体的な構成としては第三及び第四のクラッド層16、17に狭持される構成となっており、出力側に光を導く。この半導体混晶薄膜は、具体的には、第一及び第二のクラッド層をエッチングにより除去し、第三のクラッド層を形成した後その上に形成することによって実現する。なお特に本実施例の場合、被覆層15が半導体混晶薄膜18を加圧しているため、加圧しない場合に比べ一層駆動光電力の低減化を図ることができる。
以上により、バルク的薄膜を用い、駆動光電力を低減化した光可飽和吸収特性を有する半導体素子を提供することができる。
なお、本実施例では、加圧手段として、被覆層15を設けているが、半導体混晶薄膜を加圧することができればこれに限定されるわけではなく、例えばこの半導体素子全体を覆う絶縁膜を加圧手段として用いることも可能であり、種々の態様が考えられる。また、本実施例では、実施例1に記載の半導体混晶薄膜を用いて説明しているが、もちろん、実施例2に記載のMQW膜を用いて構成する態様も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】光可飽和吸収特性を説明する図。
【図2】飽和励起光強度密度Isを説明する図。
【図3】実施例1、2において用いた加重装置の概略図。
【図4】実施例1における半導体混晶薄膜におけるIsを示す図。
【図5】実施例1におけるIsの最小値を示す圧力とxとの関係図。
【図6】実施例2における半導体混晶薄膜の断面を示す図。
【図7】実施例2における半導体混晶薄膜におけるIsを示す図。
【図8】実施例3における半導体素子を示す概略図。
【符号の説明】
【0017】
1…加重装置、2…光ファイバー、3…半導体混晶薄膜、4…金属棒、5…水ため、6…光パワーメータ、10…基板、11…導波路、12…第一の入力部、13…第二の入力部、14…出力部、15…被覆層、16…第三のクラッド層、17…第四のクラッド層、18…半導体混晶薄膜、19…第一のクラッド層、20…第二のクラッド層、21…コア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可飽和吸収特性を示す半導体薄膜を有する半導体素子であって、前記半導体薄膜を加圧する加圧手段を有することを特徴とする半導体素子。
【請求項2】
前記加圧手段は、前記半導体薄膜を0Paより大きく、1GPaより小さい圧力で加圧することを特徴とする請求項1記載の半導体素子。
【請求項3】
前記半導体薄膜は、Be又はCが1×1019cm−3以下の濃度で添加されていることを特徴とする請求項1記載の半導体素子。
【請求項4】
前記半導体薄膜は100nm以上の厚さを有する請求項1記載の半導体素子。
【請求項5】
前記半導体薄膜は、砒化インジウムガリウムを含んでなることを特徴とする請求項1記載の半導体素子。
【請求項6】
前記半導体薄膜は、多重量子井戸型構造の薄膜であることを特徴とする請求項1記載の半導体薄膜。
【請求項7】
基板と、該基板上に配置される複数の光入力部と、該複数の光入力部から入力される光に基づいて光の透過、不透過を制御する半導体薄膜と、該半導体薄膜が光を透過した場合に光を外部に導く出力部と、該半導体薄膜を加圧する加圧手段と、を有することを特徴とする半導体素子。
【請求項8】
前記加圧手段は、前記半導体薄膜を0Paより大きく、1GPaより小さい圧力で加圧することを特徴とする請求項8記載の半導体素子。
【請求項9】
前記半導体薄膜は、Be又はCが1×1019cm−3以下の濃度で添加されていることを特徴とする請求項8記載の半導体素子。
【請求項10】
前記半導体薄膜は100nm以上の厚さを有する請求項8記載の半導体素子。
【請求項11】
前記半導体薄膜は、砒化インジウムガリウムを含んでなることを特徴とする請求項8記載の半導体素子。
【請求項12】
前記半導体薄膜は、多重量子井戸構造の薄膜であることを特徴とする請求項8記載の半導体薄膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−65133(P2006−65133A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−249408(P2004−249408)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【出願人】(504133110)国立大学法人 電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】