説明

半導体組成物

【課題】高い電界効果移動度、空気安定性および良好な溶解性を示す半導体化合物の提供。
【解決手段】下式に代表される化合物:

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体層を含む薄膜トランジスタ(TFT)および/または他の電子デバイスに関する。この半導体層は、本明細書に記載されるような半導体組成物から形成される。この組成物がデバイスの半導体層に使用される場合、高い移動度および優れた安定性が達成され得る。
【背景技術】
【0002】
TFTは一般に、基板上に、電気伝導性ゲート電極、ソースおよびドレイン電極、ゲート電極をソースおよびドレイン電極と分離する電気絶縁ゲート誘電体層、およびゲート誘電体層と接触し、ソースおよびドレイン電極を架橋する半導体層を含む。それらの性能は、電界効果移動度およびトランジスタ全体の電流オン/オフ比によって決定できる。高い移動度および高いオン/オフ比が望ましい。
【0003】
有機薄膜トランジスタ(OTFT)は、速いスイッチ操作速度および/または高い密度は重要でない場合に、電波による個体識別(RFID)タグおよびディスプレイ、例えば看板、読取機および液晶ディスプレイ用のバックプレーンスイッチ操作回路のような用途に使用できる。有機薄膜トランジスタはまた、魅力的な機械的特性、例えば物理的に小型で、軽量および可撓性であるような特性を有する。
【0004】
有機薄膜トランジスタは、低コストの溶液に基づくパターニングおよび堆積技術、例えばスピンコーティング、溶液キャスティング、浸漬コーティング、ステンシル/スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、ミクロ接触印刷などを用いて製作できる。そのため、薄膜トランジスタ回路を製作する際にこれらの溶液に基づくプロセスを使用可能にするためには、溶液処理可能な材料が必要である。小分子半導体は、高い移動度を達成するために使用され得る。しかし、小分子半導体はまた、それらの結晶性質により、不十分な溶解性、または不十分なフィルム形成特性を示し、均一なフィルムの形成を阻害する。ポリマー半導体は、均一フィルムを形成するために使用できる。しかし、ポリマー半導体は、通常、小分子半導体よりも移動度が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高い電界効果移動度、空気安定性および良好な溶解性を示す半導体化合物を開発することが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、種々の実施形態において、式(I)の化合物を開示する:
【化1】

式中、XはO、SまたはN−Rであり;AはOまたはSであり;YはOまたはSであり;ZはO、S、NまたはCであり;各Arは、独立に、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールであり;各nは、独立に、0〜約2であり;mはR側鎖の数であり、1〜3の整数であり;RおよびRは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、トリアルキルシリル、アリールアルキル、アルキルアリール、またはハロゲンであり;各Rは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、または置換されたアリールである。
【0007】
特定の実施形態において、Xは酸素であってもよい。他の場合には、Rは、水素またはアリールまたはヘテロアリール、特にフェニルであってもよい。特定の実施形態において、Xは酸素であり;Rは、水素、アリール、またはヘテロアリールである。
【0008】
特定の実施形態において、X、AおよびYは、Oであり;Zは窒素であり;Rは水素またはフェニルまたはチエニルであり;mは2であり;各Rは、独立に、水素、アルキルまたは置換されたアルキルである。
【0009】
実施形態において、Rはアルキル側鎖であり、このアルキル側鎖は、1〜約10個の炭素原子を有する。一部の特定の実施形態において、Rは、アルキルまたはアリールアルキルから選択される。
【0010】
一部の実施形態において、X、A、およびYはOであり;ZはCであり;R1は水素またはフェニルまたはチエニルであり;mは3であり;各R側鎖は、独立に水素、アルキルまたは置換されたアルキルである。
【0011】
追加の特定の実施形態において、各nは1であり;Arはチエニルまたはフェニルであり;Rは1〜約10個の炭素原子を有するアルキルであり、Rはアルキルまたはアリールアルキルである。
【0012】
さらに他の追加の実施形態において、X、A、ZおよびYはOであり;Rは水素またはフェニルまたはチエニルであり;mは1であり;Rはアルキルまたは置換されたアルキルである。
【0013】
化合物は、より詳細には、式(1)〜(16)の1つの構造を有していてもよい:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

式中、R、R、R、R、およびRは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、または置換されたアリールであり;Rは、アルキル、置換されたアルキル、アリール、または置換されたアリールである。
【0014】
電子デバイス、例えば薄膜トランジスタの半導体層を製作するプロセスも開示される。このプロセスは、半導体組成物を表面上に液体堆積させる工程、および半導体組成物を加熱して半導体層を形成する工程を含む。半導体組成物は、式(I)の化合物を含む:
【化8】

式中、XはO、SまたはN−Rであり;AはOまたはSであり;YはOまたはSであり;ZはO、S、NまたはCであり;各Arは、独立に、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールであり;各nは、独立に、0〜約2であり;mはR側鎖の数であり、1〜3の整数であり;RおよびRは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、トリアルキルシリル、アリールアルキル、アルキルアリール、またはハロゲンであり;各Rは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、または置換されたアリールである。
【0015】
半導体組成物は、約100℃〜約250℃の温度に加熱されてもよい。
【0016】
は、水素またはアリールまたはヘテロアリールであってもよい。一部の実施形態において、Rはフェニルまたはチエニルである。
【0017】
一部の実施形態において、Xは酸素であり、Rは水素またはアリールである。アリールはフェニルであってもよい。
【0018】
一部の実施形態において、X、A、YおよびZはOであり;nは0であり;Rは水素またはアリールであり;mは1であり;Rは水素、アルキルまたは置換されたアルキルである。
【0019】
他の実施形態において、XはOであり;Rは水素またはアリールであり;各nは1であり;Arはチエニルまたはフェニルであり;各Rは水素または1〜約10個の炭素原子を有するアルキルである。
【0020】
他の実施形態において、X、A、およびYはOであり;Zは炭素であり;Rは水素またはアリールであり;mは3であり;各Rは、独立に、水素、アルキルまたは置換されたアルキルである。
【0021】
他の実施形態において、X、A、YおよびZはOであり;各nは0であり;Rは水素またはアリールであり;mは1であり;Rはアルキルまたは置換されたアルキルである。
【0022】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、非晶質化合物であり、半導体層は主に結晶性である。
【0023】
他の実施形態において、半導体層を含む電子デバイスが開示される。半導体層は、半導体組成物を表面上に液体堆積させる工程、および半導体組成物を加熱して半導体層を形成する工程によって形成される。半導体組成物は、式(I)の化合物を含む:
【化9】

式中、XはO、SまたはN−Rであり;AはOまたはSであり;YはOまたはSであり;ZはO、S、NまたはCであり;各Arは、独立に、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールであり;各nは、独立に、0〜約2であり;mはR側鎖の数であり、1〜3の整数であり;RおよびRは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、トリアルキルシリル、アリールアルキル、アルキルアリール、またはハロゲンであり;各Rは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、または置換されたアリールである。
【0024】
は、水素またはアリールまたはヘテロアリールであってもよい。実施形態において、アリールはフェニルである。Rは、1〜約10個の炭素原子を有するアルキルであってもよい。一部の他の実施形態において、各nは0である。半導体層は、主に結晶性であり得る。
【0025】
半導体層は、式(II)の化合物および残存量の式(I)の化合物を含んでいてもよい:
【化10】

式中、XはO、SまたはN−Rであり;各Arは、独立に、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールであり;各nは、独立に、0〜約2であり;Rは、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、トリアルキルシリル、アリールアルキル、アルキルアリール、またはハロゲンである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本開示に従うTFTの第1の実施形態の図である。
【図2】本開示に従うTFTの第2の実施形態の図である。
【図3】本開示に従うTFTの第3の実施形態の図である。
【図4】本開示に従うTFTの第4の実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書に開示される構成要素、プロセスおよび装置のより完全な理解は、添付の図面を参照することによって得ることができる。これらの図は、本開示を例証する便宜および容易さに基づいて概略的に示されているにすぎず、そのためデバイスまたはそれらの構成要素の相対的なサイズおよび寸法を示すことは意図されておらず、および/または例示的な実施形態の範囲を規定または限定することは意図されていない。
【0028】
明瞭性のために特定の用語が次の説明において使用されるが、これらの用語は、図面での例示のために選択された実施形態の特定構造だけを指すことを意図し、開示の範囲を規定または限定することを意図しない。図面および以下の次の説明において、同様の数字による指定は、同様の機能を有する構成要素を指すことを理解すべきである。
【0029】
量に関連して使用される修飾語「約」は、記載される値を含み、内容によって指定される意味を有する(例えば、特定量の測定に関連した程度の誤差を少なくとも含む)。範囲の内容において使用される場合、修飾語「約」はまた、2つの端点の絶対値によって規定される範囲を開示すると考えられるべきである。例えば、「約2〜約10」の範囲はまた、「2〜10」の範囲を開示する。
【0030】
用語「含む」は、指名された構成要素の存在を必要とし、他の構成要素の存在を可能にするように本明細書で使用される。用語「含む」は、指名された構成要素の製造から生じ得るいずれかの不純物と共に、指名された構成要素だけの存在を可能にする用語「からなる」を含むように解釈されるべきである。
【0031】
本開示は、本明細書に開示されるような式(I)の化合物に関する。これらの化合物は、電子デバイス、例えば薄膜トランジスタ(TFT)における半導体層を形成するのに有用な半導体組成物に使用できる。式(I)の化合物から電子デバイスの半導体層を形成するためのプロセスも開示される。
【0032】
図1は、本開示に従うボトムゲート型のボトムコンタクト型TFT構成を例示する。TFT10は、ゲート電極30およびゲート誘電体層40と接触した基板20を含む。ゲート電極30は、ここでは基板20内のくぼみの中に記載されるが、ゲート電極はまた、基板の頂上に位置させることもできる。ゲート誘電体層40は、ゲート電極30とソース電極50、ドレイン電極60、および半導体層70とを分離することが重要である。半導体層70は、ソースおよびドレイン電極50および60の間に延びる。半導体は、ソースとドレイン電極50および60との間のチャンネル長さ80を有する。
【0033】
図2は、本開示に従う別のボトムゲート型のトップコンタクト型TFT構成を例示する。TFT10は、ゲート電極30およびゲート誘電体層40と接触した基板20を含む。半導体層70は、ゲート誘電体層40の頂部上に配置され、ソースおよびドレイン電極50および60とゲート誘電体層40とを分離する。
【0034】
図3は、本開示に従うボトムゲート型のボトムコンタクト型TFT構成を例示する。TFT10は、ゲート電極としても作用し、ゲート誘電体層40と接触する基板20を含む。ソース電極50、ドレイン電極60、および半導体層70は、ゲート誘電体層40の頂上部に位置する。
【0035】
図4は、本開示に従うトップゲート型のトップコンタクト型TFT構成を例示する。TFT10は、ソース電極50、ドレイン電極60、および半導体層70と接触した基板20を含む。半導体層70は、ソースおよびドレイン電極50および60の間に延びる。ゲート誘電体層40は、半導体層70の頂部上にある。ゲート電極30は、ゲート誘電体層40の頂部上にあり、半導体層70と接触しない。
【0036】
本開示の化合物は、式(I)の構造に見られるように、2つの嵩高い置換基を有する:
【化11】

式中、XはO、SまたはN−Rであり;AはOまたはSであり;YはOまたはSであり;ZはO、S、NまたはCであり;各Arは、独立に、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールであり;各nは、独立に、0〜約2であり;mはR側鎖の数であり、1〜3の整数であり;RおよびRは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、トリアルキルシリル、アリールアルキル、アルキルアリール、またはハロゲンであり;各Rは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、または置換されたアリールである。
【0037】
化合物の縮合環は、小分子半導体のコアと称されてもよい。XがOである場合、コアは、キサンテノキサンテンコアと称される。XがSである場合、コアはチオキサンテノチオキサンテンコアと称される。XがN−Rである場合、コアはアクリジノアクリジンコアと称される。コアの番号付けされた変形例を式(I−A)に例示される。
【化12】

【0038】
嵩高い置換基の1つ、
【化13】

は、一方の側にある1〜5のいずれかの位置にてコアに位置する。他方の嵩高い置換基は、他方の側にある7〜11のいずれかの位置にてコアに位置する。2つの置換基は、対称の炭素原子(すなわち2と8、または3と9)に配置されなくてもよい。しかし、一部の特定の実施形態において、2つの置換基は、対称な炭素原子に配置される。
【0039】
用語「アルキル」は、全体として完全に飽和した炭素原子および水素原子を含むラジカルを指す。アルキルラジカルは、線状、分岐、または環状であってもよい。アルキルラジカルは、1つまたは2つの異なる非水素原子に結合してもよい。例えば、式−CH−CHおよび−CH−CH−は両方ともアルキルであると考えられるべきである。
【0040】
用語「アルケニル」とは、アリールまたはヘテロアリール構造の一部ではない少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する、全体として炭素原子および水素原子を含むラジカルを指す。アルケニルラジカルは、線状、分岐または環状であってもよい。アルケニルラジカルは、1つまたは2つの異なる非水素原子に結合してもよい。
【0041】
用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含有する、全体として炭素原子および水素原子を含むラジカルを指す。アルキニルラジカルは、1つまたは2つの異なる非水素原子に結合してもよい。
【0042】
用語「アリール」は、全体として炭素原子および水素原子を含む芳香族ラジカルを指す。アリールは、炭素原子の数値範囲と関連して記載される場合、置換された芳香族ラジカルを含むように解釈されるべきではない。例えば、「6〜10個の炭素原子を含有するアリール」という語句は、フェニル基(6個の炭素原子)またはナフチル基(10個の炭素原子)だけを指すように解釈されるべきであり、メチルフェニル基(7個の炭素原子)を含むように解釈されるべきではない。アリールラジカルは、1つまたは2つの異なる非水素原子に結合されてもよい。例えば、ラジカル−Cおよび−C−の両方は、フェニルと称されることができ、両方ともアリールラジカルと考えられるべきである。
【0043】
用語「ヘテロアリール」は、炭素原子、水素原子およびヘテロ原子を、ラジカル環内に含む環状ラジカルを指し、この環状ラジカルは芳香族である。ヘテロ原子は、窒素、硫黄または酸素であってもよい。例示的なヘテロアリール基としては、チエニル、ピリジニル、およびキノリニルが挙げられる。ヘテロアリールが炭素原子の数値範囲と関連して記載される場合、置換されたヘテロ芳香族ラジカルを含むように解釈されるべきでない。ヘテロアリールラジカルは、1つまたは2つの異なる非水素原子に結合してもよい。例えば、ラジカル−CSおよび−CS−は両方とも、チエニルと称されることができ、両方ともヘテロアリールラジカルと考えられるべきである。
【0044】
用語「アルコキシ」は、酸素原子に結合したアルキルラジカル、例えば−O−C2n+1を指す。酸素原子は、化合物のコアに結合する。
【0045】
用語「アルキルチオ」は、硫黄原子に結合するアルキルラジカル、例えば−S−C2n+1を指す。硫黄原子は、化合物のコアに結合する。
【0046】
用語「トリアルキルシリル」は、ケイ素原子に結合した3つのアルキルラジカルを有する四価のケイ素原子を含むラジカル、すなわち−Si(R)を指す。3つのアルキルラジカルは、同一または異なっていてもよい。ケイ素原子は、化合物のコアに結合する。
【0047】
用語「アリールアルキル」とは、アルキルラジカルに関連する芳香族ラジカルを指す。アルキルラジカルは化合物のコアに結合する。アリールアルキルラジカルはまた置換されることができる。例示的なアリールアルキルラジカルはベンジル(−CH−C)である。アリールアルキルラジカルは、置換されたアルキルラジカルの組のサブセットであることに留意すべきである。
【0048】
用語「アルキルアリール」は、芳香族ラジカルに連結するアルキルラジカルを指す。芳香族ラジカルは化合物のコアに結合する。アルキルアリールラジカルはまた、置換されることができる。例示的なアルキルアリールラジカルはメチルフェニル(−C−CH)である。アルキルアリールラジカルは、置換されたアリールラジカルの組のサブセットであることに留意すべきである。
【0049】
用語「置換された」とは、指名されたラジカルの少なくとも1つの水素原子が、別の官能基、例えばハロゲン、−CN、−NO、−COOHおよび−SOHで置換されていることを指す。例示的な置換されたアルキル基は、ペルハロアルキル基であり、ここでアルキル基中の1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、例えばフッ素、塩素、ヨウ素および臭素で置換される。上述の官能基の他、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基はまた、アリールまたはヘテロアリール基で置換されてもよい。例示的な置換されたアルケニル基はフェニルエテニル(−CH=CH−C)である。例示的な置換されたアルキニル基はフェニルエチニル(−C≡C−C)である。アリールまたはヘテロアリール基はまた、アルキルまたはアルコキシで置換されてもよい。例示的な置換されたアリール基としては、メチルフェニルおよびメトキシフェニルが挙げられる。例示的な置換されたヘテロアリール基としては、3−メチルチエニルが挙げられる。
【0050】
一般に、アルキルおよびアルコキシ基は、それぞれ独立に、1〜30個の炭素原子を含有する。アルキルおよびアルコキシ基はまた、1〜約10個の炭素原子を含有してもよい。 同様に、アリール基は、6〜30個の炭素原子を含有してもよい。ヘテロアリール基は、5〜25個の炭素原子を含有してもよい。
【0051】
mの値はZ原子に依存することに留意すべきである。Zが酸素または硫黄である場合、mは1である。Zが窒素である場合、mは2である。Zが炭素である場合、mは3である。 式(I)の記載は、例えばZが炭素である場合、mは1または2であることができるように解釈されるべきではない。
【0052】
一部の実施形態において、XはOであり;Rは水素、アリールまたはヘテロアリールである。他の特定の実施形態において、各Rは、水素、アルキル、または置換されたアルキルから選択される。R−Rがアルキルである場合、アルキルは1〜約10個の炭素原子を有してもよい。Rがアリールである場合、アリールはフェニルであってもよい。Rがヘテロアリールである場合、ヘテロアリールはチエニルであってもよい。
【0053】
一部の実施形態において、nは0である。他の実施形態において、nは1である。各Ar部分は独立に、次の構造からなる群から選択されてもよい:
【化14】

式中、R’は独立に、水素、1〜約16個の炭素原子を含有するアルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アルコキシまたは置換されたアルコキシ、ヘテロ原子含有基、ハロゲン、−CN、または−NOから選択される。
【0054】
特定の実施形態において、各Arはフェニルまたはチエニルである。
【0055】
式(I)の化合物は、より詳細には、式(1)〜(16)としてここで示される構造の1つを有していてもよい:
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

式中、R、R、R、R、およびRは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、または置換されたアリールであり;Rは、アルキル、置換されたアルキル、アリール、または置換されたアリールである。
【0056】
特定の実施形態において、X、AおよびYはOであり;Zは窒素であり;Rは水素またはフェニルまたはチエニルであり;mは2であり;各Rは独立に、水素、アルキル、または置換されたアルキルである。これは、式(3)に対応し、ここでRおよびRは2つのR側鎖である。
【0057】
他の実施形態において、Rは1〜約10個の炭素原子を有するアルキルであり、Rはアルキルまたはアリールアルキルである。こうした実施形態において、XはN−Rである。
【0058】
他の実施形態において、X、A、およびYはOであり;ZはCであり;Rは水素またはフェニルであり;mは3であり;Rは独立に、水素、アルキルまたは置換されたアルキルである。特定の実施形態において、nは0であり;mは3であり;1つのR側鎖は水素であり、R側鎖の2つは、独立に、アルキルまたは置換されたアルキルである。この化合物は、以下に示されるような式(1)または式(1−a)に対応し得る:
【化21】

ここでわかるように、各Z原子は炭素であり、1つの側鎖(R)は水素であり、2つの側鎖(RおよびR)は、独立に、アルキルまたは置換されたアルキルである。
【0059】
実施形態において、式(I)の化合物は非晶質化合物である。化合物が非晶質であるかどうかは、当該技術分野において既知の方法を用いて決定できる。例えば、DSC方法を用いて、溶融ピークの不存在は、非晶質化合物の特徴を有する。同様に、X線回折方法を用いて、回折ピークは、非晶質化合物には観察できない。本開示の化合物の非晶質性質は、液体堆積、例えばスピンコーティング、浸漬コーティング、およびインクジェット印刷にて均一フィルムを形成するのに非常に有利である。
【0060】
加熱される場合、式(I)の化合物は、以下に例示されるように嵩高い可溶化基の除去によって、式(II)の小分子半導体に転化され得る。
【化22】

【0061】
式(II)の小分子半導体はまた、他の合成経路から形成されてもよい。しかし、式(II)の小分子半導体自体が、基板または誘電体層上に堆積される場合、均一なフィルム形成は、こうした小分子の結晶性のために得るのが困難な場合がある。式(I)の化合物を堆積させることにより、式(I)の化合物は、式(I)の化合物をより非晶質で可溶性にする熱除去可能な可溶化基を含むので、フィルム均一性を改善する。しかし、最終的な式(II)の小分子化合物は、高度に結晶性であり、高い移動度を示すことが予測される。 簡単には、式(I)の化合物が本明細書に開示されるように使用される場合、非晶質フィルム形成特性および高い結晶性の半導体特性が組み合わされ、優れた移動度を示す溶液処理が可能な半導体層を得ることができる。換言すれば、式(I)の小分子半導体化合物の非晶質特徴により、均一なフィルムをコーティングできる;式(II)の化合物に熱転化させる場合、式(II)の小分子半導体化合物の結晶性特徴により、高い電界効果移動度が可能になる。
【0062】
式(I)の化合物は、Xが酸素である場合、次の3つの工程手順を介して合成できる。第1に、キサンテノキサンテンコアXX構造は、以下に例示されるようにフリーデルクラフツ還元を行う。
【化23】

【0063】
次に、化合物1のカルボニルは、以下に示されるように、例えば水素化リチウムアルミニウム(LAH)を用いて還元できる。
【化24】

【0064】
最後に、化合物2は、例えば塩化2−ブチルオクタノイルでエステル化されて、式(1)の小分子半導体3を形成できる。この反応は以下に示される。
【化25】

【0065】
キサンテノキサンテンコアXXは、番号付けされた置換基位置で以下に再現される。
【化26】

嵩高い置換基は、一般に、1−および7−位、2−および8−位、または3−および9−位のいずれかに結合する。
【0066】
上述の小分子半導体は、電子デバイスの半導体層を製作するために使用されてもよい。特に、小分子半導体は、薄膜トランジスタの製作に使用されてもよい。
【0067】
電子デバイスを製作するためのプロセスも開示される。一般に、半導体組成物は、表面上に堆積され、次いで半導体層を形成するために加熱される。表面は、基板または誘電体層の表面であってもよい。半導体組成物は、式(I)の化合物を含む:
【化27】

式中、XはO、SまたはN−R3であり;AはOまたはSであり;YはOまたはSであり;ZはO、S、NまたはCであり;各Arは、独立に、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールであり;各nは、独立に、0〜約2であり;mはR側鎖の数であり、1〜3の整数であり;RおよびRは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、トリアルキルシリル、アリールアルキル、アルキルアリール、またはハロゲンであり;各Rは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、または置換されたアリールである。
【0068】
半導体組成物は、約100℃〜約300℃(約100℃〜約250℃、または約100℃〜約200℃を含む)の温度に加熱されてもよい。加熱は、約30秒〜約2時間(約1分〜約60分、または約5分〜約30分を含む)行われてもよい。
【0069】
加熱される場合、式(I)の化合物は、式(II)の化合物に電子デバイス中でインサイチュで転化できる。実施形態において、転化率は、モル百分率(モル%)によって測定される場合、少なくとも85%(約90%〜100%、約95%〜約99.8%を含む)である。一部の実施形態において、残存量の式(I)の化合物がない。他の実施形態において、残存量の式(I)の化合物がある。非常に少量の式(I)の化合物の存在は、電気デバイスの電気性能に全くまたはほとんど影響を与えない加加熱後、実施形態において、半導体層中の式(I)の化合物の残存量は、約10モル%〜約0.001モル%、または約5モル%〜約0.01モル%、または約0.5モル%〜約0.01モル%である。
【0070】
半導体組成物は、式(I)の化合物およびポリマー結合剤を含むように形成されてもよい。ポリマー結合剤は任意であることに留意すべきである。ポリマー結合剤の使用によりさらに、半導体組成物のフィルム形成特性を向上させてもよい。
ポリマー結合剤は、式(I)の化合物が分散されたマトリックスを形成すると考えられ得る。
【0071】
いずれかの好適なポリマーは、半導体組成物のためのポリマー結合剤として使用できる。一部の実施形態において、ポリマーは非晶質ポリマーである。非晶質ポリマーは、式(I)の化合物の分解温度(転化温度)未満のガラス転移温度を有していてもよい。他の実施形態において、非晶質ポリマーは、式(I)の化合物の転化温度を超えるガラス転移温度を有する。実施形態において、ポリマーは、室温にて60Hzで測定される場合、4.5未満、好ましくは3.5未満(3.0未満を含む)誘電率を有する。実施形態において、ポリマーは、C、H、F、ClまたはN原子を含有するポリマーから選択される。一部の実施形態において、ポリマーは、極性基を有していない低極性ポリマー、例えば炭化水素ポリマーまたはフルオロカーボンポリマーである。例えば、ポリスチレンは、非晶質ポリマーであり、約2.6の誘電率を有する。他の低極性ポリマーのリストとしては、次のもの:フルオロポリアリールエーテル、ポリ(p−キシリレン)、ポリ(ビニルトルエン)、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(a−ビニルナフタレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(2−メチル−1,3−ブタジエン)、ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(ビニル、シクロヘキサン)、ポリフェニレン、ポリ−p−フェニルビニリデン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリイソブチレン、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ[1,1−(2−メチルプロパン)ビス−(4−フェニル)カーボネート]、ポリ(a−a−a’−a’テトラフルオロ−p−キシリレン)、フッ素化ポリイミド、ポリ(エチレン/テトラフルオロエチレン)、ポリ(エチレン/クロロトリフルオロエチレン)、フッ素化エチレン/プロピレンコポリマー、ポリ(スチレン−co−a−メチルスチレン)、ポリ(スチレン/ブタジエン)、ポリ(スチレン/2,4−ジメチルスチレン)、CYTOP、ポリ(プロピレン−co−1−ブテン)、ポリ(スチレン−co−ビニルトルエン)、ポリ(スチレン−ブロック−ブタジエン−ブロック−スチレン)、ポリ(スチレン−ブロック−イソプレン−ブロック−スチレン)、テルペン樹脂、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリカルバゾール、ポリトリアリールアミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
半導体組成物に好適な他の例示的な任意のポリマー結合剤としては、ポリチオフェン、ポリ(ビニルシンナメート)、トリアリールアミンポリマー、ポリシロキサン、ポリピロール、ポリ−p−フェニレン、ポリ−p−フェニルビニリデンまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0073】
式(I)の化合物とポリマー結合剤との重量比は、約99:1〜約1:3(約10:1〜約1:2、約5:1〜約2:3または約3:2〜約3:4を含む)であってもよい。
【0074】
実施形態において、式(I)または(II)の小分子化合物は、約1.5〜約3.5eV(約1.8〜約2.8eVを含む)のバンドギャップを有する。この大きいバンドギャップは、通常、半導体が、ペンタセン系半導体と比較した場合に、空気中で良好な安定性を有することを意味する。特定の実施形態において、式(I)または(II)の半導体は、電磁スペクトルの可視領域(すなわち、390nm〜750nm)において無色である。無色半導体は、それらの大きなバンドギャップのために優れた安定性を与えるだけでなく、透明デバイス用途のための透明性においても有利である。
【0075】
半導体組成物はさらに、式(I)の化合物および任意のポリマー結合剤が可溶性である溶媒を含んでいてもよい。溶液中に使用される例示的な溶媒としては、塩素化溶媒、例えばクロロベンゼン、クロロトルエン、ジクロロベンゼン、ジクロロエタンなど;アルコールおよびジオール、例えばプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘキサンジオールなど;炭化水素、または芳香族炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなど;ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトンなど;アセテート、例えばエチルアセテート;ピリジン、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。
【0076】
実施形態において、式(I)の化合物およびポリマー結合剤を含む半導体組成物は、約1.5センチポイズ(cps)〜約100cps(約2〜約20cpsを含む)の粘度を有していてもよい。
【0077】
半導体層は、当該技術分野において既知の従来のプロセスを用いて電子デバイスに形成されてもよい。実施形態において、半導体層は、溶液堆積技術を用いて形成される。例示的な溶液堆積技術としては、スピンコーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、浸漬コーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スタンプ印刷、ステンシル印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などが挙げられる。
【0078】
半導体組成物を用いて形成される半導体層は、約5ナノメートル〜約1000ナノメートル深さ(約20〜約100ナノメートル深さを含む)であることができる。特定構成、例えば図1および図4に示される構成において、半導体層は、完全にソースおよびドレイン電極を覆う。
【0079】
半導体層は、主に結晶性である。用語「主に」とは、50%を超える結晶性を有する層を指す。実施形態において、半導体層は、約80%を超える、または約90%を超える結晶性を有していてもよい。半導体層の結晶性は、いずれかの好適な方法、例えばX−線回折方法を用いて決定できる。
【0080】
TFTの性能は、移動度によって測定できる。移動度は、cm/V・secの単位で測定され;より高い移動度が望ましい。本開示の半導体組成物を用いて得られたTFTは、0.01cm/V・secを超える(0.05cm/V・secを超える、0.1cm/V・secを超える、または0.5cm/V・secを超える移動度を含む)電界効果移動度を有していてもよい。本開示のTFTは、少なくとも10(少なくとも10を含む)の電流オン/オフ比を有していてもよい。薄膜トランジスタは、半導体層に加えて、一般に基板、任意のゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、および誘電体層を含む。
【0081】
基板は、ケイ素、ガラスプレート、プラスチックフィルムまたはシートが挙げられるが、これらに限定されない材料を含み得る。構造的に可撓性のデバイスのために、プラスチック基板、例えばポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドシートなどが好ましい場合がある。基板厚さは、約10マイクロメートルから10ミリメートルを超えてもよく、例示的な厚さは特に可撓性プラスチック基板について約50〜約100マイクロメートル、硬質基板、例えばガラスまたはケイ素については約0.5〜約10ミリメートルである。
【0082】
誘電体層は、一般に、無機材料フィルム、有機ポリマーフィルム、または有機−無機複合フィルムであることができる。誘電体層として好適な無機材料の例としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムジルコニウムなどが挙げられる。好適な有機ポリマーの例としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(ビニルフェノール)、ポリイミド、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、エポキシ樹脂などが挙げられる。誘電体層の厚さは、使用される材料の誘電率に依存し、例えば約10ナノメートル〜約500ナノメートルであることができる。誘電体層は、例えばセンチメートルあたり約10−12ジーメンス(S/cm)未満の伝導率を有していてもよい。誘電体層は、当該技術分野において既知の従来のプロセス(例えばゲート電極を形成する際に記載されたプロセスを含む)を用いて形成される。
【0083】
本開示において、誘電体層は、表面改質剤を用いて表面改質されてもよい。半導体層は、この改質された誘電体層表面と直接接触し得る。接触は、完全または部分的であってもよい。この表面改質はまた、誘電体層と半導体層との間の界面層を形成するものとして考えられ得る。特定の実施形態において、誘電体層の表面は、式(A)のオルガノシラン剤で改質されている:

−Si−(R’’)4−m

式(A)
式中、Rは、1〜約20個の炭素原子を含有する炭化水素またはフルオロカーボンであり、R’’は、ハロゲンまたはアルコキシであり;mは1〜4の整数である。例示的なオルガノシランとしては、オクチルトリクロロシラン(OTS−8)(R=オクチル、R’’=クロロ、m=1)、ドデシルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリメトキシルシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジクロロシラン、(3−フェニルプロピル)ジメチルクロロシラン、(3−フェニルプロピル)メチルジクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェネチルトリクロロシランなどが挙げられる。特定の実施形態において、Rはフェニル基を含む。他の表面改質剤、例えばポリスチレン、ポリシロキサン、またはポリシルセスキオキサンも同様に使用できる。
【0084】
ゲート電極は、電気伝導性材料を含む。ゲート電極は、金属薄膜、伝導性ポリマーフィルム、伝導性インクまたはペーストから製造される伝導性フィルム、または基板自体、例えば重ドープされたケイ素から製造された伝導性フィルムであることができる。ゲート電極材料の例としては、これらに限定されないが、アルミニウム、金、銀、クロム、酸化インジウムスズ、伝導性ポリマー、例えばポリスチレンスルホネートドープされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)、およびカーボンブラック/グラファイトを含む伝導性インク/ペーストが挙げられる。ゲート電極は、真空蒸着、金属または伝導性金属酸化物のスパッタリング、従来のリソグラフィおよびエッチング、化学蒸着、スピンコーティング、キャスティングまたは印刷または他の堆積プロセスによって調製できる。ゲート電極の厚さは、例えば金属フィルムでは約10〜約200ナノメートル、伝導性ポリマーでは約1〜約10マイクロメートルの範囲である。ソースおよびドレイン電極として使用するのに好適な典型的な材料としては、ゲート電極材料の材料、例えばアルミニウム、金、銀、クロム、亜鉛、インジウム、伝導性金属酸化物、例えば酸化亜鉛ガリウム、酸化インジウムスズ、酸化インジウムアンチモン、伝導性ポリマーおよび伝導性インクが挙げられる。ソースおよびドレイン電極の典型的な厚さは、例えば約40ナノメートル〜約1マイクロメートル(より詳細な厚さは約100〜約400ナノメートルを含む)である。
【0085】
ソースおよびドレイン電極として使用するのに好適な典型的な材料としては、ゲート電極材料の材料、例えば金、銀、ニッケル、アルミニウム、白金、伝導性ポリマー、および伝導性インクが挙げられる。特定の実施形態において、電極材料は、半導体に対して低接触抵抗を与える。典型的な厚さは、例えば約40ナノメートル〜約1マイクロメートルであり、より詳細な厚さは、約100〜約400ナノメートルである。本開示のOTFTデバイスは、半導体チャンネルを含む。半導体チャンネル幅は、例えば約5マイクロメートル〜約5ミリメートルであってもよく、特定のチャンネル幅は約100マイクロメートル〜約1ミリメートルである。半導体チャンネル長さは、例えば約1マイクロメートル〜約1ミリメートルであってもよく、より詳細にはチャンネル長さは約5マイクロメートル〜約100マイクロメートルである。
【0086】
ソース電極は、接地され、例えば約0ボルト〜約80ボルトのバイアス電圧は、ドレイン電極に印加され、例えば約+10ボルト〜約−80ボルトの電圧がゲート電極に印加される場合に、半導体チャンネルにわたって輸送された電荷キャリアを回収する。電極は、当該技術分野において既知の従来のプロセスを用いて形成または堆積されてもよい。
【0087】
所望により、バリア層はまた、電気的特性を劣化させ得る環境条件、例えば光、酸素および湿気などから保護するために、TFTの頂部上に堆積されてもよい。こうしたバリア層は、当該技術分野において既知であり、ポリマーだけからなってもよい。
【0088】
OTFTの種々の構成要素は、いずれかの順序で基板上に堆積されてもよい。しかし、一般に、ゲート電極および半導体層は両方とも、ゲート誘電体層と接触すべきである。加えて、ソースおよびドレイン電極は両方とも、半導体層と接触すべきである。「いずれかの順序で」という語句は、連続した形成および同時形成を含む。例えば、ソース電極およびドレイン電極は、同時または連続的に形成できる基板「上(on)」または「上(upon)」という用語は、種々の層および構成要素が頂部上にあり、これらの底部または支持体である基板に対して種々の層および構成要素を言及する。換言すれば、構成要素のすべては、それらすべてが基板と直接接触しない場合であっても、基板上にある。例えば、誘電体層および半導体層の両方は、1つの層が他の層よりも基板に近くても、基板上にある。得られたTFTは、良好な移動度および良好な電流オン/オフ比を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:式
【化1】

式中、XはO、SまたはN−Rであり;AはOまたはSであり;YはOまたはSであり;ZはO、S、NまたはCであり;各Arは、独立に、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールであり;各nは、独立に、0〜約2であり;mはR側鎖の数であり、1〜3の整数であり;RおよびRは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、トリアルキルシリル、アリールアルキル、アルキルアリール、またはハロゲンであり;各Rは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、または置換されたアリールである。
【請求項2】
電子デバイスの半導体層を製作するプロセスであって:半導体組成物を表面上に液体堆積させる工程;および半導体組成物を加熱して半導体層を形成する工程を含み、前記半導体組成物が式(I)の化合物を含む、プロセス:式
【化2】

式中、XはO、SまたはN−Rであり;AはOまたはSであり;YはOまたはSであり;ZはO、S、NまたはCであり;各Arは、独立に、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールであり;各nは、独立に、0〜約2であり;mはR側鎖の数であり、1〜3の整数であり;RおよびRは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、トリアルキルシリル、アリールアルキル、アルキルアリール、またはハロゲンであり;各Rは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、または置換されたアリールである。
【請求項3】
半導体層を含む電子デバイスであって、前記半導体層が、半導体組成物を表面上に液体堆積させる工程、および半導体組成物を加熱して半導体層を形成する工程によって形成され、前半導体組成物が式(I)の化合物を含む、デバイス:式
【化3】

式中、XはO、SまたはN−Rであり;AはOまたはSであり;YはOまたはSであり;ZはO、S、NまたはCであり;各Arは、独立に、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールであり;各nは、独立に、0〜約2であり;mはR側鎖の数であり、1〜3の整数であり;RおよびRは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、トリアルキルシリル、アリールアルキル、アルキルアリール、またはハロゲンであり;各Rは、独立に、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、または置換されたアリールである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−167089(P2012−167089A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20254(P2012−20254)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】