説明

半導体組成物

【課題】高い電界効果移動度、良好なフィルム形成特性、および複合システムにおける高性能のための適切な形態を示す半導体組成物を提供する。
【解決手段】ボトムゲート型のボトムコンタクト型TFT10は、ゲート電極18およびゲート誘電体層14と接触した基板16を含む。ゲート電極18は、ここでは基板16の頂上に記載されているが、ゲート電極は基板内のくぼみとして位置することもできる。ゲート誘電体層14は、ゲート電極18とソース電極20、ドレイン電極22、および半導体層12とを分離することが重要である。半導体組成物から形成される半導体層12は、ソース電極20とドレイン電極22との間に延びる。この半導体組成物は、ポリマー結合剤および小分子半導体を含む。半導体層中の小分子半導体は、100ナノメートル未満の結晶サイズを有する。組成物から形成されたデバイスは、高い移動度および優れた安定性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体層を含む薄膜トランジスタ(TFT)および/または他の電子デバイスに関する。この半導体層は、本明細書に記載されるような半導体組成物から形成される。この組成物がデバイスの半導体層に使用される場合、高い移動度および優れた安定性が達成され得る。
【背景技術】
【0002】
TFTは一般に、基板上に、電気伝導性ゲート電極、ソースおよびドレイン電極、ゲート電極をソース電極およびドレイン電極と分離する電気絶縁ゲート誘電体層、およびゲート誘電体層と接触し、ソース電極およびドレイン電極を架橋する半導体層を含む。それらの性能は、電界効果移動度およびトランジスタ全体の電流オン/オフ比によって決定できる。高い移動度および高いオン/オフ比が望ましい。
【0003】
有機薄膜トランジスタ(OTFT)は、速いスイッチ操作速度および/または高い密度は重要でない場合に、電波による固体識別(RFID)タグおよびディスプレイ、例えば看板、読取機および液晶ディスプレイ用のバックプレーンスイッチ操作回路のような用途に使用できる。有機薄膜トランジスタはまた、魅力的な機械的特性、例えば物理的に小型で、軽量および可撓性であるような特性を有する。
【0004】
有機薄膜トランジスタは、低コストの溶液に基づくパターニングおよび堆積技術、例えばスピンコーティング、溶液キャスティング、浸漬コーティング、ステンシル/スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、ミクロ接触印刷などを用いて製作できる。そのため、薄膜トランジスタ回路を製作する際にこれらの溶液に基づくプロセスを使用可能にするためには、溶液処理可能な材料が必要である。しかし、溶液処理によって形成される有機半導体またはポリマー半導体は、限られた溶解度、空気感受性、および特に低電界効果移動度が問題となる傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高い電界効果移動度、良好なフィルム形成特性、および複合システムにおける高性能のための適切な形態を示す半導体組成物を開発することが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、種々の実施形態において、電子デバイス、この電子デバイスにおける半導体層を製造するために使用される半導体組成物、およびこうした電子デバイスを製造するためのプロセスを開示する。半導体層は、ポリマー結合剤および結晶性小分子半導体を含む半導体組成物から形成される。小分子半導体は、約50ナノメートル未満の平均結晶サイズを有する。得られる半導体層は、高い移動度を達成し、優れた安定性を有する。電子デバイスは、こうした半導体組成物から形成される半導体層を含む。特定実施形態において、電子デバイスは薄膜トランジスタである。
【0007】
実施形態において、半導体層を含む電子デバイスを開示する。半導体層は、ポリマー結合剤および結晶性小分子半導体を含む。小分子半導体は、半導体層が小分子半導体の溶融温度を超える温度にて熱処理された後の小分子半導体の平均結晶サイズの少なくとも2分の1の平均結晶サイズを有する。この態様は、本明細書においてさらに詳細に説明される。得られた半導体層は、少なくとも0.2cm/V・secの電界移動度を有し、少なくとも0.4cm/V・secまたは少なくとも0.7cm/V・secの移動度を有していてもよい。
【0008】
小分子半導体は100ナノメートル以下、50ナノメートル以下、または35ナノメートル以下の平均結晶サイズを有していてもよい。小分子半導体の平均結晶サイズは、少なくとも5ナノメートルであってもよい。
【0009】
小分子半導体は、式(I)の構造を有していてもよい:
【化1】

式中、各Rは、独立に、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ケトニル、シアノ、およびハロゲンから選択され;mおよびnは、それぞれフェニル環またはナフチル環上のR側鎖の数であり、独立に、0〜6の整数であり;XはO、SおよびSeからなる群から選択され;a、bおよびcは独立に0または1である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示に従うTFTの第1の実施形態の図である。
【図2】本開示に従うTFTの第2の実施形態の図である。
【図3】本開示に従うTFTの第3の実施形態の図である。
【図4】本開示に従うTFTの第4の実施形態の図である。
【図5A】毎分約1,000回転(RPM)の速度でのスピンコーティングによって堆積された本開示の半導体層の偏光顕微鏡画像である。
【図5B】約2,000RPMの速度でのスピンコーティングによって堆積された本開示の半導体層の偏光顕微鏡画像である。
【図5C】約4,000RPMの速度でのスピンコーティングによって堆積された本開示の半導体層の偏光顕微鏡画像である。
【図6】本開示の異なる半導体フィルムのx線回折パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、本明細書にさらに記載されるように、非晶質ポリマー結合剤および結晶性小分子半導体を含む組成物に関する。この組成物から形成された半導体層は、小分子半導体単独だけから形成される半導体層と比べて、空気中で非常に安定であり、高い移動度を有する。これらの半導体組成物は、電子デバイス、例えば薄膜トランジスタ(TFT)の層を形成するのに有用である。本開示の半導体層は、特有の特徴(半導体層における結晶性小分子半導体の結晶サイズが低減されている)を有する。
【0012】
低減した結晶サイズの特徴は、種々の手段、例えば高速で溶媒を乾燥させて結晶化時間を短縮することによって、高いプロセス温度(例えば乾燥またはアニーリング中)の使用を回避して大きい結晶が成長するのを回避することによって、場合により結晶化阻害剤構成成分などを添加することによって達成できることに留意すべきである。しかし、いかなるプロセスが使用されようとも、半導体層は、最終半導体層中の小分子半導体が低減した結晶サイズを有する限り、高い性能(例えば高い電荷キャリア移動度)を提供することを見出した。一般には、大きい結晶サイズを有する半導体層が高性能に好ましいと考えられる。反対に、本明細書において、本発明者らは、より小さい結晶サイズを有する半導体層が高性能のために好ましいことを開示する。「低減した結晶サイズ」という用語は相対的なものである。半導体層の小分子半導体の結晶サイズは処理方法に依存するので、一貫した比較を行うために、小分子半導体の融点を超える温度で熱処理を行った後の同じ半導体層中の小分子半導体の結晶サイズが、熱処理(例えばアニーリング)がアニーリングの前に使用された方法に関わらず、通常同様のサイズの結晶をもたらし、従って処理方法間の比較のための一貫した基準を与えるので、比較の基準として使用される。
【0013】
実施形態において、このことは、小分子半導体の溶融温度を超える温度にて熱処理された後の同じ半導体層の小分子半導体の平均結晶サイズの少なくとも2分の1の平均結晶サイズを有する小分子半導体によって証明される。換言すれば、本開示の半導体層中の小分子半導体の平均結晶サイズが、同じ組成を有し、同じ方法で処理されているが熱処理が加えられている半導体層の小分子半導体の平均結晶サイズと比較される場合に、熱処理されていない層の平均結晶サイズは、熱処理された層の平均結晶サイズの少なくとも半分である。一部の実施形態において、半導体層中の小分子半導体は、50ナノメートル以下を含む100ナノメートル以下の平均結晶サイズを有する。
【0014】
この低減した結晶サイズはまた、結晶性小分子半導体を含有する半導体層またはフィルムのx線回折(XRD)パターンにて証明される。本開示の半導体層のX線回折パターンは、半導体層が小分子半導体の溶融温度を超える温度にて熱処理された後の半導体層の半値全幅(FWHM)の少なくとも2倍のFWHMを有する一次回折ピークを有する。換言すれば、本開示の半導体層のXRDパターンを、同じ組成を有し、同じ方法で処理されているが熱処理が加えられている半導体層のXRDパターンと比較する場合、熱処理されていない層の一次回折ピークは、熱処理された層の一次回折ピークのFWHMの少なくとも2倍のFWHMを有する。「一次回折ピーク」という用語は、最低回折角度(2θ)を有するXRDパターンにおける回折ピークまたは換言すれば第1の主ピークを指す。XRDパターンは、散乱角度(2θ)に対する強度のグラフであり、一次回折ピークの位置は、一般に熱処理されていない層および熱処理された層の両方について同じ散乱角度にあり、またはわずかに異なるだけである。強度は、これが一次回折ピークのFWHMを変更しないので、規格化される必要はない。一部の実施形態において、一次回折ピークは、0.20°2θ以上(0.25°以上を含む)のFWHMを有する。当業者は、回折ピークと、ベースラインまたは背景に存在し得る小さいピークとを区別することができる。
【0015】
図1は、本開示に従うボトムゲート型のボトムコンタクト型TFT構成を例示する。TFT10は、ゲート電極18およびゲート誘電体層14と接触した基板16を含む。ゲート電極18は、ここでは基板16の頂上に記載されているが、ゲート電極は基板内のくぼみとして位置することもできる。ゲート誘電体層14は、ゲート電極18とソース電極20、ドレイン電極22、および半導体層12とを分離することが重要である。半導体層12は、ソース電極20とドレイン電極2022との間に延びる。半導体は、ソース電極20とドレイン電極22との間のチャンネル長さを有する。
【0016】
図2は、本開示に従う別のボトムゲート型のトップコンタクト型TFT構成を例示する。TFT30は、ゲート電極38およびゲート誘電体層34と接触した基板36を含む。半導体層32は、ゲート誘電体層34の頂部上に配置され、ソース電極40およびドレイン電極42と分離する。
【0017】
図3は、本開示に従うボトムゲート型のボトムコンタクト型TFT構成を例示する。TFT50は、ゲート電極としても作用し、ゲート誘電体層54と接触する基板56を含む。ソース電極60、ドレイン電極62、および半導体層52は、ゲート誘電体層54の頂上部に位置する。
【0018】
図4は、本開示に従うトップゲート型のトップコンタクト型TFT構成を例示する。TFT70は、ソース電極80、ドレイン電極82、および半導体層72と接触した基板76を含む。半導体層72は、ソース電極80およびドレイン電極82の間に延びる。ゲート誘電体層74は、半導体層72の頂部上にある。ゲート電極78は、ゲート誘電体層74の頂部上にあり、半導体層72と接触しない。
【0019】
半導体組成物は、ポリマー結合剤および小分子半導体を含む。実施形態において、小分子半導体は、式(I)の構造を有し得る:
【化2】

式中、各Rは、独立に、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ケトニル、シアノ(CN)、およびハロゲンから選択され;mおよびnは、それぞれフェニル環上またはナフチル環上のR側鎖の数であり、独立に、0〜6の整数であり;XはO、SおよびSeからなる群から選択され;a、bおよびcは独立に0または1である。この点において、aまたはbが0である場合、化合物の外側部分は、4個までの側鎖を有していてもよいフェニル環である。aまたはbが1である場合、化合物の外側部分は、6個までの側鎖を有していてもよいナフチル環である。
【0020】
a、bおよびcが0である場合、Xは硫黄であり、mおよびnはそれぞれ1であり、式(I)の分子はまた、形式的に、二置換−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェンとして既知である。[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェン部分(mおよびnがそれぞれ0である)は、「BTBT」として本明細書では略記されてもよい。例えば、式(I)の半導体は、二置換BTBTと称され得る。
【0021】
実施形態において、小分子半導体は、約1.5〜約3.5eV(約1.8〜約2.8eVを含む)のバンドギャップを有する。この大きなバンドギャップは、通常、ペンタセン系半導体と比較した場合に、小分子半導体が、良好な空気中での安定性を有することを意味する。小分子半導体は、結晶性構造または液晶構造を有する。特定実施形態において、式(I)の半導体は、電磁スペクトル(すなわち390nm〜750nm)の可視領域にて無色である。無色半導体は、それらの大きなバンドギャップのために優れた安定性を与えるだけでなく、透明デバイス用途のための透明性においても有利である。
【0022】
式(I)の化合物の5個の特定変形例が、本開示により想定される。1つの変形例において、小分子半導体は式(II)の構造を有する:
【化3】

式中、RおよびRは、独立に、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ケトニル、シアノおよびハロゲンから選択される。式(II)のこの半導体化合物において、Rは2位に位置し、Rは7位に位置する。故に、式(II)の化合物は、2,7−二置換−BTBTと称され得る。式(I)を参照して、式(II)の化合物は、a、bおよびcが0である場合に得られる。
【0023】
一部の実施形態において、RおよびRは、独立に、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ケトニル、シアノおよびハロゲンから選択される。一部の他の実施形態において、RおよびRは、独立に、アルキルおよび置換されたアルキルから選択され、小分子半導体は、特定ポリマー結合剤と組み合わせて、高い電界移動度を達成する。ポリマー結合剤はさらに、本明細書において説明される。アルキル基は、約4〜約30個の炭素原子(約4〜約16個の炭素原子を含む)を含有してもよい。代表的なアルキル基としては、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、トリデシル、ヘキサデシルなどが挙げられる。一部の実施形態において、アルキル基は、奇数の炭素原子を有し;他の実施形態においてアルキル基は偶数の炭素原子を有する。特定実施形態において、RおよびRは同一である。
【0024】
別の変形例において、小分子半導体は式(III)の構造を有する:
【化4】

式中、RおよびRは、独立に、アルキルまたは置換されたアルキルであり;各Arは、独立にアリーレン基またはヘテロアリーレン基である。式(I)を再び参照すると、式(III)の化合物は、a、bおよびcが0であり;mおよびnが1であり;各Rがアルケニルまたは置換されたアルケニルである場合に得られる。アルキル基は、1〜約30個の炭素原子(約4〜約18個の炭素原子を含む)を含有してもよい。
【0025】
用語「アリーレン」とは、2つの異なる原子を用いて単結合を形成し得る、全体として炭素原子および水素原子を含む芳香族ラジカルを指す。例示的なアリーレン基はフェニレン(−C−)である。
【0026】
用語「ヘテロアリーレン」は、炭素原子、水素原子および1つ以上のヘテロ原子を含み、2つの異なる原子を用いて単結合を形成し得る芳香族ラジカルを指す。炭素原子およびヘテロ原子は、ラジカルの環状環または骨格に存在する。ヘテロ原子は、O、SおよびNから選択される。例示的なヘテロアリーレン基は、2,5−チエニルである。
【0027】
第3の変形例において、小分子半導体は式(IV)の構造を有する:
【化5】

式中、RおよびRは、独立に、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ケトニル、シアノ、およびハロゲンから選択され;jおよびkは、独立に、0〜6の整数である。再び式(I)を参照すると、式(IV)の化合物は、aおよびbが両方とも1であり、cが0である場合に得られる。RおよびR側鎖は、式(IV)の化合物の外側ナフチル部分のいずれかの炭素原子に位置してもよい。
【0028】
式(IV)の特定実施形態において、RおよびRは、独立にアルキルであり、jは1であり、kは1である。
【0029】
次の変形例において、小分子半導体は、式(V)の構造を有する:
【化6】

式中、RおよびRは、独立に、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ケトニル、シアノ、およびハロゲンから選択され;pおよびqは、独立に、0〜4の整数である。再び式(I)を参照すると、式(V)の化合物は、aおよびbが両方とも0であり、cが1である場合に得られる。
【0030】
最終の変形例において、小分子半導体は、式(VI)の構造を有する:
【化7】

式中、R10およびR11は、独立に、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ケトニル、シアノ、およびハロゲンから選択され;a、bおよびcは独立に0または1である。
【0031】
式(VI)の特定実施形態において、R10は、ハロゲンまたはシアノであり、R11はアルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニルまたはケトニルである。他の実施形態において、R11はハロゲンまたはシアノであり、R10はアルキルであり、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、またはケトニルである。
【0032】
式(I)の小分子半導体における他の特定変形例も、式(1)−(50)として本明細書で示される:
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【化45】

【化46】

【化47】

【化48】

【化49】

【化50】

【化51】

【化52】

【化53】

【化54】

【化55】

【化56】

【化57】

式中、各R’は、独立に、約4〜約20個の炭素原子(約4〜約16個の炭素原子を含む)を含有するアルキルまたは置換されたアルキルである。
【0033】
式(2)、(3)、(7)、(8)、(9)、(13)、(14)、(15)、(20)、(21)、および(43)から(50)の半導体化合物もまた、式(II)の例示的な化合物である。
【0034】
式(2)、(3)、(13)、(14)、(15)、(20)、および(21)の半導体化合物もまた、式(III)の例示的化合物である。
【0035】
式(22)、(23)、(24)、(25)、(26)、(27)、(28)、(29)、(30)、(31)、(34)、および(35)の半導体化合物もまた、式(IV)の例示的な化合物である。
【0036】
式(36)、(37)、(38)、(39)および(40)の半導体化合物もまた、式(V)の例示的な化合物である。
【0037】
式(4)、(5)、(10)、(11)、(12)、(18)、(19)、(24)、(25)、(26)、(27)、(37)、(38)、(39)、(41)、および(42)の半導体化合物もまた、式(VI)の例示的な化合物である。
【0038】
当該技術分野にて既知の種々の方法が、本発明に開示される小分子半導体を製造するために使用できる。例えば、式(II)の小分子半導体を製造する方法は、2,7−ジハロ−BTBTAと、アルキンとを反応させ、2,7−ジアルキン−1−イル−BTBT1を形成させることを含む。この初期反応を以下に例示する:
【化58】

式中、Xはハロゲンであり、Rはアルキルであり、Ph(PPhClはビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドであり、CuIはヨウ化銅であり、iPRNHはジイソプロピルアミンである。ここで示されるように、2つのR基は同一である。しかし、2つのR基はまた、例えばX基の1つにブロッキング/保護基を用い、第1の反応を第1のアルキンを用いて行って、保護されていないX基を転化し、ブロッキング/保護基を除去し、次いで続いて第2の反応を第2の異なるアルキンを用いて行うことによって異なるようにすることができる。
【0039】
次に、2,7−ジアルキン−1−イル−BTBT1は、以下で記載されるように、2,7−ジアルキル−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェン1aに還元されることができる。
【化59】

ここで、Pd/Cは炭素触媒上のパラジウムであり、THFはテトラヒドロフランである。同様の反応を、他の可能なR置換基について行うことができる。
【0040】
化合物1aを調製するための方法はまた、三塩化アルミニウムの存在下、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]−ベンゾチオフェンコアBと置換された酸塩化物との反応により、2,7−ジケトニルBTBT2を形成することを含む。
【化60】

【0041】
次に、ジケトニルBTBT2は、ジエチレングリコール中の水酸化カリウムの存在下、ヒドラジンを用いて変更されたウォルフキッシュナー還元を用いて脱酸素される。これにより、2,7−ジアルキル−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェン1bを形成する。
【化61】

この2工程方法は、短いR置換基(C−C)について特に有効である。
【0042】
小分子半導体自体は、その結晶性または液晶の性質に起因する劣ったフィルム形成特性を有する。故に、半導体組成物はまた、ポリマー結合剤を含み、これにより均一なフィルムが得られ、顕著にデバイス性能を改善する。ポリマー結合剤は、小分子半導体が分散されたマトリックスを形成すると考えられ得る。
【0043】
いずれかの好適なポリマーは、半導体組成物のためのポリマー結合剤として使用できる。
【0044】
式(I)の小分子半導体とポリマー結合剤との重量比は、約99:1〜約1:3(約10:1〜約1:2、約5:1〜約2:3、または約3:2〜約3:4を含む)であってもよい。一部の実施形態において、式(I)の小分子半導体とポリマー結合剤との重量比は約1:1である。式(II)の小分子半導体とスチレン系ポリマー結合剤との重量比は、約3:2〜約2:3であるのが望ましく、最適には約1:1の比で作用する。
【0045】
半導体組成物はさらに、小分子半導体およびポリマー結合剤が可溶性である溶媒を含んでいてもよい。
【0046】
実施形態において、小分子半導体およびポリマー結合剤を含む半導体組成物は、約1.5センチポイズ(cps)〜約100cps(約2〜約20cpsを含む)の粘度を有していてもよい。高分子量のポリマー結合剤の使用は、半導体組成物の粘度を増大させる。結果として、インクジェット印刷およびスピンコーティングのような溶液堆積技術を用いるときに均一な半導体層を形成するのに役立つ。
【0047】
ボトムゲート型TFTは、それらが一般に製作するのにより簡便であるので有利な場合がある。しかし、これまでの半導体/ポリマー複合システムは、トップゲート型デバイスにおいてのみ高い移動度を達成できる。本開示の半導体組成物が利用される場合、高い移動度はまた、図1〜3に示されるようなトップゲート型TFTおよびボトムゲート型デバイスの両方において達成され得る。
【0048】
半導体層は、当該技術分野において既知の従来のプロセスを用いて電子デバイスに形成されてもよい。実施形態において、半導体層は、溶液堆積技術を用いて形成される。例示的な溶液堆積技術としては、スピンコーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、浸漬コーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スタンプ印刷、ステンシル印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などが挙げられる。
【0049】
堆積させた後、半導体組成物は、場合により、半導体組成物に使用される小分子半導体の融点より低い高温において熱処理(例えば乾燥またはアニーリングにより)される。使用される小分子半導体に依存して、熱処理の温度は変動してもよい。例えば、熱処理は、200℃未満、150℃未満、または100℃未満の温度にて行われてもよい。一般に、半導体層は、小分子半導体の融点より高い温度を有する熱処理プロセスを行わない。一部の実施形態において、特に式(I)の小分子半導体を使用する実施形態において、半導体組成物から半導体層の製作中、アニーリング工程はない。小分子半導体の融点よりも高い温度でのアニーリングにより、小分子半導体およびポリマー結合剤の顕著な相分離が生じ、ならびに小分子半導体の平均結晶サイズが増大する。結果として、電子デバイスは、劣った電気性能を示す。低減した結晶サイズを有する半導体層は、少なくとも0.2cm/V・sec、または少なくとも0.4cm/V・sec、または少なくとも0.5cm/V・sec(少なくとも0.7cm/V・secを含む)の電界移動度を有する。
【0050】
低減した結晶サイズを有する半導体層は、種々の処理方法を用いて調製できる。特に、本開示の低減した結晶性を有する半導体層は、表面上の半導体組成物をスピンコーティングすることによって製造できる。速いスピンコーティング速度は、低下した小分子半導体結晶サイズに相関する。一般に、高い結晶化度および大きい結晶サイズは高い電荷キャリア移動度に理想的であると考えらている。しかし、予測できないことに、低下した結晶サイズは、本開示の複合システムの移動度を改善した。結晶性小分子半導体が50ナノメートル以下の平均結晶サイズを有する場合の層は、少なくとも毎分2000回転のスピン速度(rpm)にて行われるスピンコーティングによって得ることができる。特定実施形態において、半導体組成物は、少なくとも2,500rpm、少なくとも3,000rpm、少なくとも3,500rpm、または少なくとも4,000rpmの速度でのスピンコーティングによって堆積される。
【0051】
低減した結晶化度が示唆することの1つは、結晶性小分子半導体の平均結晶サイズにおけるものである。実施形態において、本開示の半導体層の小分子半導体の平均結晶サイズは、100ナノメートル以下である。特定実施形態において、平均結晶サイズは50ナノメートル以下である。より詳細な実施形態において、平均結晶サイズは35ナノメートル以下である。結晶性小分子半導体は、一般に5ナノメートルより大きい結晶サイズを有する。平均結晶サイズは、X線回折、透過電子顕微鏡(TEM)、走査電子顕微鏡(SEM)、原子力顕微鏡(AFM)などのような方法を用いて測定できる。平均結晶サイズの測定は、球状体積の直径として表現される。しかし、これは、小分子半導体の結晶が特定の形態または形状を有していなければならないと解釈されるべきではない。
【0052】
低減された結晶化度が示唆する別のことは、上記で記載されるような結晶性半導体およびポリマー結合剤を含む半導体層のX線回折パターンにおいて見出され得る。一次回折ピークを調査する場合、回折ピークは0.20°2θ以上の半値全幅(FWHM)を有する。特定実施形態において、FWMHは0.25°以上である。特定実施形態において、FWMHは0.5°2θ未満である。他の実施形態において、FWHMは約0.20〜約0.35°2θである。
【0053】
半導体組成物を用いて形成される半導体層は、約5ナノメートル〜約1000ナノメートル深さ(約20〜約100ナノメートル深さを含む)であることができる。特定構成、例えば図1および図4に示される構成において、半導体層は、完全にソース電極およびドレイン電極を覆う。
【0054】
TFTの性能は、移動度によって測定できる。移動度は、cm/V・secの単位で測定され;より高い移動度が望ましい。本開示の半導体組成物を用いて得られたTFTは、少なくとも0.1cm/V・sec(少なくとも0.4cm/V・secを含む)の電界効果移動度を有していてもよい。本開示のTFTは、少なくとも10(少なくとも10を含む)の電流オン/オフ比を有していてもよい。式(I)の小分子半導体およびポリマー結合剤を含む半導体層を含むTFTは、空気中の優れた安定性を有する。例えば、周囲空気に曝される際、電界効果移動度は、最初に増大し、次いで水平になり得る。2週間(1カ月を含む)にわたって電界効果移動度の低下はない。
【0055】
薄膜トランジスタは、半導体層に加えて、一般に基板、任意のゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、および誘電体層を含む。
【0056】
本開示において、誘電体層は、表面改質剤を用いて表面改質されてもよい。半導体層は、この改質された誘電体層表面と直接接触し得る。接触は、完全または部分的であってもよい。この表面改質はまた、誘電体層と半導体層との間の界面層を形成するものとして考えられ得る。特定実施形態において、誘電体層の表面は、式(A)のオルガノシラン剤で改質されている:
(L)−[SiR(R’)4−m−t
式(A)
式中、Rはアルキルであり、R’はハロゲンまたはアルコキシであり;mは1〜4の整数であり;Lは連結原子であり;tは0または1であり、連結原子が存在するかどうかを示し;vは連結原子上の三置換シリル基の数を示す。(m+t)の合計は決して4を超えない。tが0である場合、vは自動的に1である。式(A)の例示的なオルガノシラン剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)(L=NH、t=1、R=メチル、m=3、v=2)、およびオクチルトリクロロシラン(OTS−8)(t=0、R=オクチル、m=1、R’=クロロ、v=1)が挙げられる。
【0057】
ゲート電極は、電気伝導性材料を含む。ゲート電極は、金属薄膜、伝導性ポリマーフィルム、伝導性インクまたはペーストから製造される伝導性フィルム、または基板自体、例えば重ドープされたケイ素であることができる。
【0058】
ソースおよびドレイン電極として使用するのに好適な典型的な材料としては、ゲート電極材料の材料、例えば金、銀、ニッケル、アルミニウム、白金、伝導性ポリマー、および伝導性インクが挙げられる。特定実施形態において、電極材料は、半導体に対して低接触抵抗を与える。典型的な厚さは、例えば約40ナノメートル〜約1マイクロメートルであり、より詳細な厚さは、約100〜約400ナノメートルである。本開示のOTFTデバイスは、半導体チャンネルを含有する。半導体チャンネル幅は、例えば約5マイクロメートル〜約5ミリメートルであってもよく、特定のチャンネル幅は約100マイクロメートル〜約1ミリメートルである。半導体チャンネル長さは、例えば約1マイクロメートル〜約1ミリメートルであってもよく、より詳細にはチャンネル長さは約5マイクロメートル〜約100マイクロメートルである。
【0059】
ソース電極は、接地され、例えば約0ボルト〜約80ボルトのバイアス電圧は、ドレイン電極に印加され、例えば約+10ボルト〜約−80ボルトの電圧がゲート電極に印加される場合に、半導体チャンネルにわたって輸送された電荷キャリアを回収する。電極は、当該技術分野において既知の従来のプロセスを用いて形成または堆積されてもよい。
【0060】
所望により、バリア層はまた、電気的特性を劣化させ得る環境条件、例えば光、酸素および湿分などから保護するために、TFTの頂部上に堆積されてもよい。こうしたバリア層は、当該技術分野において既知であり、ポリマーだけからなってもよい。
【0061】
OTFTの種々の構成要素は、いずれかの順序で基板上に堆積されてもよい。しかし、一般に、ゲート電極および半導体層は両方とも、ゲート誘電体層と接触すべきである。加えて、ソース電極およびドレイン電極は両方とも、半導体層と接触すべきである。「いずれかの順序で」という語句は、連続した形成および同時形成を含む。
【実施例】
【0062】
小分子半導体の合成
2,7−ジトリデシル−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェン(2,7−ジトリデシル−BTBT)(式(49))を次のように製造した。
【0063】
50mLのSchlenkフラスコを、2,7−ジヨード−BTBT(0.51グラム、1.036mmol)およびトリデシ−1−イン(0.934グラム、5.18mmol)で充填した。トルエン(15ml)およびジイソプロピルアミン(15ml)を添加し、反応を2回の凍結/ポンプ輸送/解凍サイクルで脱気した。凍結した反応混合物に、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(0.145グラム、0.207mmol)およびヨウ化銅(I)(0.079グラム、0.415mmol)を添加した。反応を、最終的な凍結/ポンプ輸送/解凍サイクルに供し、アルゴン下で撹拌した。18時間後、反応をろ過し、ロータリーエバポレータ−を用いてろ液を乾燥するまで濃縮した。粗生成物を、BiotageSP1クロマトグラフィーシステム(50グラムSNAP、ヘキサン中0−20%CHl2)を用いて精製した。生成物2,7−ジトリデシン−1−イル−BTBTを単離し、ヘキサンから再結晶化した。構造をHおよび13C NMR分光法により確認した。0.25g(40%)の収率が達成された。この工程を以下に例示する:
【化62】

【0064】
次に、250mLの丸底フラスコに、テトラヒドロフラン(50ml)中の2,7−ジトリデシン−1−イル−BTBT(0.47グラム、0.787mmol)溶液を、Pd/C(0.5グラム、4.70mmol)で処理した。フラスコは、注意深く減圧下でエバポレートして、Hガスで3回パージした。反応物を、出発材料がTLCによって検出されるまでH雰囲気(バルーン)下で撹拌した。18時間後、ロータリーエバポレーターにて反応を濃縮し、ヘキサン中に再懸濁させ、短いシリカプラグ(ヘキサン)を通してろ過した。生成物を、TLCにより実質的に純粋であり、ヘキサンから再結晶させた。構造をHおよび13C NMR分光法により確認した。0.40g(84%)の収率が達成され、最終生成物を得た。この工程を以下に例示する:
【化63】

【0065】
小分子半導体の合成
2,7−ジペンチル−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェンを製造した(2,7−ジペンチル−BTBT)(式(46))。
【0066】
250mLの3ツ口丸底フラスコに、ベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン(1グラム、4.16mmol)をCHCl(100ml)中に溶解させ、−10℃に冷却した。反応物は、AlCl(3.05グラム、22.88mmol)で処理し、得られた褐色懸濁液を−78℃に冷却した。反応物を塩化ペンタノイル(2.52ml、20.80mmol)を滴下処理し、得られた赤色懸濁液をアルゴン雰囲気下、この温度で撹拌した。1時間後、冷却浴を除去し、反応物を室温まで加温し、アルゴン雰囲気下で撹拌した。48時間後、反応物を氷に注ぎ、1時間撹拌した。粗生成物を、減圧濾過によって回収し、続いて水(50mL)およびメタノール(50mL)で洗浄した。粗生成物を、トルエンから再結晶化させることによって精製した。構造をHおよび13C NMR分光法により確認した。0.65g(38%)の収率を達成した。
【化64】

【0067】
250mLの3ツ口丸底フラスコに、水酸化カリウム(0.453g、8.08mmol)をジエチレングリコール(70ml)中に溶解させた。反応物は、1,1’−(ベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン−2,7−ジイル)ビス(ペンタン−1−オン)(0.600g、1.469mmol)およびヒドラジン一水和物(1.817ml、37.4mmol)で処理し、得られた懸濁液を100℃に加熱した。1時間後、反応を210℃まで加熱した。5時間後、加熱源を除去し、反応を室温まで冷却し、一晩撹拌した。粗生成物を減圧濾過によって回収し、水(50mL)およびメタノール(50mL)で洗浄した。生成物は、ヘキサンで溶出するシリカゲル上のカラムクロマトグラフィによって精製し、次いでヘキサンから再結晶化させた。構造をHおよび13C NMR分光法により確認した。0.25g(45%)の収率が達成され、最終生成物を得た。
【化65】

【0068】
実施例1〜3
2,7−ジトリデシル−BTBTおよび約280,000の重量平均分子量を有するポリスチレンを含む半導体組成物から形成された半導体層を含むデバイスを製作した。n−ドープされたケイ素ウェハを基材として使用した。200nm厚さの酸化ケイ素誘電体層を、基材上の層として熱成長させた。2,7−ジトリデシル−BTBTおよびポリスチレンを1:1の重量比にて、得られた溶液の0.7重量%の総量にてクロロベンゼン中に溶解させた。溶液を1.0μmシリンジでろ過し、異なるスピン速度にて基材上にスピンコーティングした。
【0069】
実施例1において、溶液を1,000rpmのスピン速度で基材上にスピンコーティングした。
【0070】
実施例2において、溶液を2,000rpmのスピン速度で基材上にスピンコーティングした。
【0071】
実施例3において、溶液を4,000rpmのスピン速度で基材上にスピンコーティングした。
【0072】
複数のデバイスをそれぞれの実施例の条件下で製造した。70〜80℃で30分間乾燥した後、金ソースおよびドレイン電極を半導体層の頂上部に真空エバポレートし、デバイスを完成させた。半導体層はアニーリングされていなかった。トランジスタデバイスは、周囲条件において、KEITHLEY(登録商標)4200Semiconductor ChaRcterization Systemを用いて特徴付けた。
【0073】
表1は、異なるスピン速度で調製された半導体層を有するトランジスタの性能を要約する。
【0074】
【表1】

【0075】
実施例1〜3からわかるように、移動度(平均値および高い値の両方)は、スピン速度が増大するにつれて増大した。1000rpmでスピンコーティングされた半導体層の形態を図5Aに示す。大きい明確な結晶が観察され、結晶は50μmを超える結晶サイズを有していた。図5Bは、2000rpmでスピンコーティングされた半導体層の形態を示す。結晶サイズは顕著に低下する。図5Cにおいて、顕著に低減した結晶化度は、より高い速度にて観察された。
【0076】
実施例4〜8
いくつかのデバイスのバッチを作製し、X線回折試験を行い、より定量的な結果を得た。それぞれの場合、半導体層は4000rpmの速度にてスピンコーティングした。
【0077】
実施例4〜6において、小分子半導体は2,7−ジトリデシル−BTBTであり、半導体層はアニーリングされなかった。
【0078】
実施例7において、小分子半導体は2,7−ジトリデシル−BTBTであり、半導体層は、130℃にて10分間アニーリングされた。
【0079】
実施例8において、小分子半導体はBTBTであり、半導体層はアニーリングされなかった。
【0080】
表2は、実施例4〜8のトランジスタの性能をまとめたものである。
【0081】
【表2】

【0082】
実施例4〜8のX線回折パターンを図6に示す。青色、赤色および黒色曲線は、それぞれ実施例4〜6のX線回折パターンを示す。緑色曲線は、実施例7のX線回折パターンを示す。桃色曲線は、実施例8のX線回折パターンを示す。
【0083】
BTBT/PSブレンド(実施例8)は、非晶質の性質を示し、移動度はデバイス中では検出されなかった。アニーリングされた半導体層(実施例7)を有するデバイスは、非常にシャープな回折ピークを示し、非常に低い移動度を示した。アニーリングされなかった2,7−ジトリデシル−BTBT/PSブレンドを有するデバイスは、低い結晶化度および高い移動度を示した。
【0084】
実施例4〜7のそれぞれについて平均半値全幅(FWHM)はX線回折パターンから決定した。一次回折ピークは、約4.4°(2θ)に位置した。表3は、FWHMおよび結晶サイズを示す。
【0085】
【表3】

【0086】
実施例4〜6である高い移動度の実施例は、実施例7のFWHMの2倍の平均FWHMを示す。高い移動度の実施例における結晶サイズは、35nm未満であった。事実、高性能半導体層の3つのバッチは、約31〜約34nmあたりの良好な再現性を示す。反対に、低い移動度サンプルは、100nmを超える相当大きな結晶サイズを示した。10.18オングストローム(Å)のd−格子間隔における回折ピークも、高い移動度フィルムには欠けていた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層を含む電子デバイスであって、半導体層が:
非晶質ポリマー結合剤;および
小分子半導体の溶融温度より高い温度にて熱処理された半導体層中の小分子半導体よりも少なくとも2倍小さい平均結晶サイズを有する結晶性小分子半導体;
を含み、この半導体層が、少なくとも0.2cm/V・secの電界移動度を有する、電子デバイス。
【請求項2】
半導体層を含む電子デバイスであって:この半導体層が:
非晶質ポリマー結合剤、および
結晶性小分子半導体;
を含み、この半導体層のx線回折パターンが、小分子半導体の溶融温度より高い温度にて熱処理された小分子半導体を含む半導体層の半値全幅(FWHM)よりも少なくとも2倍大きいFWHMを有する一次回折ピークを有し、この半導体層が、少なくとも0.2cm/V・secの電界移動度を有する、電子デバイス。
【請求項3】
半導体層を含む電子デバイスであって、この半導体層が:
非晶質ポリマー結合剤;および
式(I)の構造を有する小分子半導体
を含む、電子デバイスであって:
【化1】

式中、各Rは、独立に、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ケトニル、シアノ、およびハロゲンから選択され;mおよびnは、それぞれフェニルまたはナフチル環上のR側鎖の数であり、独立に、0〜6の整数であり;XがO、SおよびSeからなる群から選択され;a、bおよびcは独立に0または1であり;
この小分子半導体が、半導体層中、100ナノメートル以下の平均結晶サイズを有する、電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公開番号】特開2012−227518(P2012−227518A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−72017(P2012−72017)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】