説明

半導体薄膜、これを用いてなる薄膜トランジスタ及び半導体薄膜の製造方法

【課題】簡便な方法によりキャリア移動度が高い半導体薄膜を提供する。
【解決手段】一般式(I)で表わされる金属錯体からなる半導体薄膜。一般式(I)中、Mは遷移金属原子を含有する基を、Lは配位子を表わす。A、A、B及びBは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含有する基を表わす。B−Q(A)(A)−Bは、共役系を構成している。mは、0〜4の整数であり、nは、正の整数である。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体薄膜に関する。更に詳しくは、簡易に作成できる半導体薄膜、これを用いてなる薄膜トランジスタ及び半導体薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用のディスプレイとしてFPD(フラットパネルディスプレイ)に対するニーズが高まっている。
一般に、平板型のディスプレイ装置においては液晶、有機EL、電気泳動等を利用した素子を用いて表示媒体を形成している。また、こうした表示媒体では画面輝度の均一性や画面書き換え速度等を確保するために、画像駆動素子として薄膜トランジスタ(TFT)により構成されたアクティブ駆動素子を用いる技術が主流となっている。
【0003】
TFT素子は、一般にガラス基板上に、主にa−Si(アモルファスシリコン)、p−Si(ポリシリコン)等の半導体薄膜や、ソース、ドレイン、ゲートの各電極等の金属薄膜を基板上に順次形成していくことによって製造することができる。このTFT素子を用いるFPDの製造には、通常、CVD(化学蒸着)、スパッタリング等の真空系の設備、高温処理工程、精度の高いフォトリソグラフィ工程等が必要となる。そのため、設備コスト及びランニングコストの負荷が非常に大きい。更に、近年の大画面化のニーズに伴い、それらのコストは非常に膨大なものとなっている。
【0004】
一方で、従来のTFT素子のデメリットを補う技術として、有機半導体材料を用いた有機TFT素子の研究開発が盛んに進められている。有機TFT素子は、低温プロセスで製造可能であるため、軽く、割れにくい樹脂基板を用いることができ、例えば樹脂フィルムを支持体として用いることにより柔軟性のあるディスプレイを実現できると言われている。また、有機半導体材料を用いると、常圧下で印刷や塗布等のウェットプロセスにより有機半導体層を形成することが可能であり、生産性に優れ、非常に低コストのディスプレイが実現できる。
【0005】
しかしながら、有機半導体には、導電性に異方性を示すものが多い。この問題の解決のためには、特殊な配向技術を施したり、真空系の製造工程を繰り返したりする必要があり、製造工程上のコスト高の問題が残されている。
また、有機半導体には、キャリア移動度が充分でないという問題を持つものも多い。
【0006】
特許文献1では、1つの環炭素原子上にアミノ置換基を有し、更に、これと隣接しない環炭素原子上に少なくとも1つのアミノ基、ヒドロキシ基又はメルカプト基を有するアントラキノン又はナフトキノンと、第VIII族(Ni)、第IB族(Cu、Ag)又は第IIB族(Zn)金属の塩とを、極性非プロトン性溶媒中、酸素含有ガスの存在下で、接触させることにより、導電性錯体を得ている。
しかしながら、この方法には、長時間を有する上、得られる錯体が導体であり、しかも粉末であってフィルムではない、副生物を水層に分離する必要がある、といった問題がある。
【0007】
特許文献2では、有機半導体材料としてポリ(3−アルキルチオフェン)を用いて、この溶液のキャスト膜によりウェットプロセスで有機TFTを作製することによって生産性の向上を図っているが、キャリア移動度が充分でなかった。
【0008】
非特許文献1には、1,6−ジオキシフェナジン、2,5−ジオキシベンゾキノン、クロラニル酸、ブロムアニル酸等の芳香族化合物を配位子として有する銅錯体の粉末を加圧成形してその電気抵抗を測定したことが記載されているが、勿論、これは、薄膜として用いることはできない。
同様に、非特許文献2には、ルベアン酸の銅錯体の粉末を加圧成形してその電気伝導度を測定したことが報告されている。やはり、このものも、薄膜として用いることはできない。
【0009】
【特許文献1】米国特許第4622169号明細書
【特許文献2】特開平10−190001号公報
【非特許文献1】日本化学雑誌、第83巻(1962年)p.282
【非特許文献2】日本化学雑誌、第83巻(1962年)p.560
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、特殊な技術を用いずに、簡便な方法によりキャリア移動度が高い半導体薄膜を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、導電性薄膜の構造及びその調製方法について、鋭意研究を進めた結果、特定の構造を有する金属錯体を特定の溶媒に溶解してなる溶液中に、必要に応じて特定の配位子を添加して得られる均一な溶液から、優れた特性を有する半導体薄膜が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かくして、本発明によれば、一般式(I)で表わされる金属錯体からなる半導体薄膜が提供される。
【化1】

(一般式(I)中、Mは遷移金属原子を含有する基を、Lは配位子を表わす。A、A、B及びBは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含有する基を表わす。B−Q(A)(A)−Bは、共役系を構成している。mは、0〜4の整数であり、nは、正の整数である。)
【0012】
本発明の半導体薄膜において、一般式(I)で表わされる金属錯体が一般式(II)で表わされるものであることが好ましい。
【化2】

(一般式(II)中、Mは遷移金属原子を含有する基を、Lは配位子を表わす。A、A、B及びBは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含有する基を表わす。一般式(III)で表わされる部分構造は、炭素環又はヘテロ環Q並びにヘテロ原子又はヘテロ原子を含有する基A、A、B及びBで構成されるπ共役系を示す。mは、0〜4の整数であり、nは、正の整数である。)
【化3】

【0013】
一般式(II)で表わされる本発明の半導体薄膜において、一般式(III)で表わされる部分構造が一般式(IV)で表わされるものであることが好ましい。
【化4】

(一般式(IV)中、A、A、B及びBは、一般式(I)における定義に同じ。一般式(IV)において、A、A、B及びBを除いた部分は、炭素環又はヘテロ環Zであり、単環でも縮合環であってもよく、更に任意の置換基を有していてもよい。)
【0014】
本発明の半導体薄膜において、一般式(IV)で表わされる部分構造における、B及びBが、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又は=NR(Rは、水素原子、炭化水素基、水酸基、メルカプト基又はアミノ基である。)であり、A及びAが、それぞれ、−O−、−S−、−Se−又は−NR−(Rは、水素原子、炭化水素基、水酸基又はアミノ基である。)であることが好ましい。
【0015】
本発明の半導体薄膜において、一般式(IV)で表わされる部分構造が、下記一般式(Va)〜(Vg)のいずれかで表されるものであることが好ましい。
【化5】

【化6】

【化7】

【0016】
本発明の半導体薄膜において、一般式(I)におけるB−Q(A)(A)−Bで示される共役系は、一般式(VI)で表わされるものであってもよい。
【化8】

(式(VI)中、B及びBは、それぞれ、S又はSeであり、Rは水素原子、炭化水素基、水酸基又はアミノ基である。)
【0017】
本発明の半導体薄膜において、一般式(I)におけるMが周期表第5〜12族の遷移金属を含有する基であることが好ましい。
また、本発明の半導体薄膜において、一般式(I)におけるMが周期表第5〜12族の金属原子又はVO、TiO、UO若しくはVCp(但し、Cpは、置換基を有していてもよいシクロペンタジエン環を表わす。)であることが好ましい。
本発明の半導体薄膜において、一般式(I)におけるLが、へテロ芳香環化合物、アミン、ニトリル、カルボン酸又はβ−ジケトンであることが好ましい。
【0018】
また、本発明によれば、一般式(VII)で表わされる化合物、遷移金属の塩MX(Mは遷移金属を含有する基であり、Xは塩を形成する1価の陰イオンである。)及び、金属錯体(I)の構造に応じて必要ならば、配位子化合物Lを溶媒に溶解して溶液とし、これを基板に塗布した後、溶媒、及び一般式(VII)で表わされる化合物と遷移金属の塩MXとの縮合反応で発生する化合物HXを除去することを特徴とする本発明の半導体薄膜の製造方法が提供される。
【化9】

本発明の半導体薄膜製造方法において、化合物HX(Xは、遷移金属の塩MXを形成する1価の陰イオンである。)の沸点よりも高い沸点を有する溶媒を使用することが好ましい。
【0019】
更に、本発明によれば、本発明の半導体薄膜からなる薄膜トランジスタが提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡便な操作で半導体薄膜および印刷法薄膜トランジスタを得ることができる。この印刷法薄膜トランジスタは、ディスプレイ駆動TFT、RFID等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の半導体薄膜は、一般式(I)で表わされる金属錯体からなる。
【化10】

【0022】
一般式(I)中、Mは遷移金属原子を含有する基を表わす。
遷移金属は、特に限定されないが、好ましくは、周期表第第5〜12族の金属原子である。遷移金属の代表例としては、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Rh等を示すことができる。
また、遷移金属を含有する基としては、M(IV)O、M(VI)O、M(III)acac、M(IV)(acac)、M(III)Cp(但し、M(III)、M(IV)及びM(VI)は、それぞれ、3、4及び6価の遷移金属を、Cpは置換基を有していてもよいシクロペンタジエン環を、表わす。)等を挙げることができる。遷移金属を含有する基の具体例として、VO、TiO、UO及びVCpを挙げることができる。
Lは遷移金属原子Mに配位する配位子を表わす。Lは、特に限定されないが、中性のルイス塩基が好ましい。その具体例としては、へテロ芳香環化合物、アミン、ニトリル、カルボン酸又はβ−ジケトンを挙げることができる。
一般式(I)で表わされる化合物を得るための、一般式(VII)で表わされる化合物と遷移金属の塩MXとの、縮合反応で発生するHXがLとなってもよい。Lは、金属の種類に応じて適宜選定される。
【0023】
、A、B及びBは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含有する基を表わす。
本発明において、ヘテロ原子は、周期表第15〜16族の原子、好ましくは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子及びリン原子を意味する。
ヘテロ原子を含有する基の具体例としては、カルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、−NR−基(Rは、水素原子、炭化水素基、水酸基、メルカプト基又はアミノ基である。)等を挙げることができる。
【0024】
mは、0〜4の整数であり、遷移金属の配位数及びこれに配位する他の配位子により決定される。
nは、正の整数であり、一般式(I)で表わされる金属錯体からなる半導体薄膜をエタノールに対して不溶とする範囲であればよい。
【0025】
一般式(I)において、B−Q(A)(A)−Bは、共役系を構成している。
−Q(A)(A)−Bで表わされる共役系は、一般式(III)で表わされるπ共役系であることが好ましい。
【化11】

即ち、本発明において、一般式(I)で表わされる金属錯体が一般式(II)で表わされるものであることが好ましい。
【化12】

【0026】
一般式(III)において、B及びBを除いた部分は、炭素環又はヘテロ環Q(以下、単に、「環Q」という。)である。
【0027】
一般式(III)で表わされるπ共役系は、一般式(IV)で表されるものであることが好ましい。
【化13】

【0028】
一般式(IV)において、A、A、B及びBを除いた部分は、炭素環又はヘテロ環Z(以下、単に、「環Z」という。)である。
環Zは、それを構成する環原子の数によって限定されないが、好ましくは、1つの環を構成する環原子の数は、4〜8である。
環Zは、炭素環でもヘテロ環でもよく、ヘテロ原子の数及び種類にも特に限定はない。
環Zは、単環でも縮合環でもよい。
また、環Zは、その環原子上に任意の置換基を有していてもよい。
環Zの具体例としては、シクロブテン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、ベンゾキノン環等の単環炭素環;ピリジン環、イミダゾール環、イミダゾリン環、フラン環、チオフェン環等の単環ヘテロ環;ナフタレン環、アントラセン環、インデン環、ナフトキノン環、アントラキノン環等の縮合炭素環;ベンゾフラン環、インドール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチオフェン環、フェナジン環等の縮合ヘテロ環;を挙げることができる。
【0029】
一般式(IV)で示されるπ共役系において、B及びBが、それぞれ、酸素原子、イミノ基、硫黄原子又はセレン原子であることが好ましく、酸素原子であることが好ましい。
また、A及びAは、それぞれ、−O−、−S−、−Se−又は−NR−であることが好ましい。Rは、水素原子、炭化水素基、水酸基又はアミノ基である。A及びAは、それぞれ、好ましくは、−O−又は−NH−である。
【0030】
本発明において、一般式(IV)で表わされる部分構造が、一般式(Va)〜(Vg)のいずれかであることが好ましい。
これらの部分構造は、対応する2価のアルコール、フェノール又はアミンから誘導されるものである。
【0031】
【化14】

【化15】

【化16】

【0032】
本発明において、一般式(I)におけるB−Q(A)(A)−Bで示される共役系は、一般式(VI)で表わされるものであってもよい。
【化17】

一般式(VI)中、B及びBは、それぞれ、S又はSeであり、Rは水素原子、炭化水素基、水酸基又はアミノ基である。
【0033】
本発明の半導体薄膜は、一般式(VII)で表わされる化合物、遷移金属の塩MX(Mは遷移金属を含有する基であり、Xは塩を形成する1価の陰イオンである。)及び、金属錯体(I)の構造に応じて必要ならば、配位子化合物Lを溶媒に溶解して溶液とし、これを基材に塗布した後、溶媒、及び一般式(VII)で表わされる化合物と遷移金属の塩MXとの縮合反応で発生する化合物HXを除去することにより調製することができる。
【化18】

【0034】
一般式(VII)において、各記号が意味するものは、一般式(I)におけると同じである。
一般式(VII)で表される化合物の具体例としては、2,5−ジヒドロキシベンゾキノン、2,3,5,6−テトラヒドロキシベンゾキノン、5,8−ジヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、1,4−ジヒドロキシ−9,10−アントラキノン、1,4−ジアミノ−9,10−アントラキノン、1−シクロブテン−3,4−ジオン−1,2−ジオール、4,5−ジヒドロキシ−4−シクロペンテン−1,2,3−トリオン、2,5−ジヒドロキシジチオベンゾキノン、3,4−ジアミノ−3−シクロブテン−1,2−ジオン、3,4−ジチオ−1−シクロブテン−3,4−ジオン−1,2−ジオール、3,4−ジアミノ−1,2−ジチオ−3−シクロブテン−1,2−ジオン並びにルベアン酸及びジセレノオキサミドを挙げることができる。
これらの化合物には、適宜アルキル基を導入して、一般式(VII)で表わされる化合物と遷移金属の塩MXとの縮合反応途中における成長鎖の溶解性を向上させることができる。具体的には、2,5−ジヒドロキシベンゾキノンにブチル基を導入して3,6−ジブチル−2,5−ジヒドロキシベンゾキノンとする、3,4−ジアミノ−3−シクロブテン−1,2−ジオンにヘキシル基を導入して3,4−ビス(ヘキシルアミノ)−3−シクロブテン−1,2−ジオンとする、ルベアン酸にブチル基を導入してN,N’−ジブチルジチオオキサミドとする、等の例を挙げることができる。
また、これらの化合物には、適宜、電子吸引基又は電子供与基を導入して、生成する膜のHOMO準位又はLUMO準位を調節することができる。置換基の電子吸引性が大きいほどLUMO準位が下がり電子を受け入れやすくなり、n型特性が出やすくなる。また、置換基の電子供与性が大きいほどHOMO準位が上がり電子が奪われやすくなり、p型特性が出やすくなる。
【0035】
遷移金属の塩MXは、これから誘導される化合物HXが弱酸であり、また、揮発性である限り、特に限定されない。化合物HXが強酸であると(換言すると、遷移金属の塩MXが強酸の塩であると)、縮合反応を円滑に進行させるためには、アンモニア等で塩基性雰囲気にする必要があるが、この場合、得られる膜は、アンモニウム塩等の副生物を含有するものとなってしまう。
遷移金属は、一般式(I)で定義したものと同じである。
遷移金属の塩としては、蟻酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩等のカルボン酸塩;置換基を有していてもよいアセチルアセトナト;炭酸塩;炭酸水素塩;シアン化物;シアン酸塩;等を挙げることができる。
縮合反応は平衡反応であるので、反応が完結するためには生成する化合物HXを反応系から除去する必要があるので、HXの常圧での沸点は250℃以下であることが好ましい。
【0036】
遷移金属の塩の具体例としては、酢酸鉄(II)、酢酸モリブデン(II)、酢酸クロム(III)、酢酸ロジウム(II)、酢酸コバルト(II)、酢酸パラジウム(II)、プロピオン酸鉄(II)、蟻酸鉄(II);アセチルアセトナト鉄(II)、アセチルアセトナト鉄(III)、アセチルアセトナトコバルト(II)、アセチルアセトナトバナジウム(III)、アセチルアセトナトオキシバナジウム(IV)、アセチルアセトナトニッケル(II)、アセチルアセトナトマンガン(III)、アセチルアセトナトジルコニウムマンガン(IV);テトラキス(アセタト)ビス(シクロペンタジエニル)ジバナジウム(III);ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ニッケル(II);等を挙げることができる。
これらの遷移金属塩は、水和物であっても、含水塩であっても、多量体であってもよい。
【0037】
本発明の半導体薄膜製造方法において、金属錯体(I)の構造に応じて必要ならば、一般式(VII)で表わされる化合物及び遷移金属の塩MXを溶媒に溶解して溶液とする際に、配位子化合物Lを添加する。
配位子化合物は、特に限定されないが、ルイス塩基が好ましい。
その具体例としては、ピリジン;4−(3−ペンチル)ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、4−ノニルピリジン等の置換ピリジン、ピラジン、トリアジン、イミダゾール、フェナジン等のヘテロ芳香環化合物;トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアミン;トリフェニルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のホスフィン;アセトニトリル、フマロニトリル、テレフタロニトリル等のニトリル;酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸;アセチルアセトン等のβ−ジケトン;等を挙げることができる。これらのうち、ピラジン、フマロニトリル等の複数の配位箇所を有する配位子(多座配位子)化合物を用いた場合は、配位子を架橋点とした架橋高分子とすることもできる。
また、縮合時に生成する化合物HXをそのまま配位子化合物とすることもできる。例えば、遷移金属の塩として酢酸塩を用いた場合は酢酸を、アセチルアセトナトを用いた場合はアセチルアセトンを配位子化合物とすることもできる。もちろん、より配位能の大きい配位子を添加した場合は、酢酸やアセチルアセトンはそれに交換される。
配位子の電子供与性の大きさを調整することにより、膜のHOMO準位及びLUMO準位を調節することができる。例えば、ピリジンを配位させた場合は、酢酸を配位させた場合と比べて、電子供与性が大きいので、HOMO準位が上がり、p型特性が出やすくなる。
また、配位子にアルキル置換基を導入することにより、溶解性を改善することもできる。
【0038】
また、一般式(VII)で表わされる化合物、遷移金属の塩MX及び配位子化合物Lを溶解するための溶媒は、特に限定されないが、極性溶媒が好ましい。
また、一般式(VII)で表わされる化合物、遷移金属の塩MX及び配位子化合物Lを、全て同じ溶媒で溶液としても、それぞれ異なる溶媒溶液としてもよい。
また、場合により、配位子化合物を溶媒とすることも可能である。
極性溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、2−エトキシエタノール、2−メトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、トリクレン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;その他ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
溶剤の沸点は、特に限定されないが、HXと同等以上であると縮合反応を十分に進行させることができるので好ましい。
【0039】
遷移金属の塩の使用量は、一般式(VII)で表される化合物:遷移金属の塩のモル比が6:4〜4:6、好ましくは等モルとなる量である。この範囲を外れると得られる金属錯体の分子量が低下する。
遷移金属の塩MXの溶液中の濃度は、0.001〜10重量%の範囲が好ましい。
配位子化合物Lの使用量は、特に限定されないが、遷移金属原子に対して、等モル以上が好ましい。過剰の配位子化合物Lは乾燥時に揮発して除去される。
【0040】
本発明の半導体薄膜の製造方法においては、遷移金属の塩MX、一般式(VII)で表される化合物及び、金属錯体(I)の構造により必要に応じて使用する配位子化合物Lの溶液の調製方法は、特に限定されない。
混合の順序は特に限定されず、3成分を同時に混合してもよいし、任意の2成分を混合した後、第3の成分を混合してもよい。
溶解しにくい成分の場合は、適宜、加熱して溶解させればよい。多くの例では空気中で調製しても問題ないが、遷移金属化合物が酸化されやすい場合には、不活性ガス雰囲気下で調製することが好ましい。
【0041】
このようにして調製した溶液を基板の上に塗布する。
基板は、特に限定されないが、実験室では性能評価の目的で酸化皮膜のついたシリコンウエハがしばしば使われる。工業的には、プラスチックフィルムを用いるのが好ましい。
塗布の方法は、特に限定されないが、実験室ではマイクロシリンジやディスペンサーで滴下する方法や、スピンコート法がしばしば用いられる。工業的には、各種印刷法(凸版印刷、平板印刷、凹版印刷、孔版印刷等)、インクジェット等が利用される。
塗布の後、溶媒及び化合物HXを蒸発させる。常温、常圧で乾燥させてもよいが、溶媒及びHXを十分に除去するためには、減圧下での乾燥又は加熱下の乾燥を行なうのが好ましい。
加熱は、50〜200℃の温度範囲で、0.0001〜100mmHgの圧力下において行なうことが好ましい。
【0042】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。半導体薄膜の特性は、以下の試験法により測定した。
なお、「部」、「%」及び「ppm」は、特に断りのない限り、それぞれ「重量部」、「重量%」及び「重量ppm」を表す。
【0043】
(1)半導体薄膜のトランジスタ特性
基板にn+シリコン単結晶ウエハを使用し、これをゲート電極とした。この基板上に熱酸化膜を200nm形成し、その上にチタン1nm、重ねて金を50nmマスク蒸着してドレイン電極及びソース電極とする。チャネル幅は1mm、チャネル長は50μmとする。基板はセパラプルフラスコの中に置いたガラス板上に置き、フラスコ底にヘキサメチルジシラザン1mLを投入し、窒素雰囲気下120℃オイルバスで30分加熱して表面処理する。
基板のチャンネル部に、金属錯体の溶液10マイクロリットルを、マイクロシリンジで滴下して、半導体薄膜を形成し、真空下に50℃のホットプレート上で10分間加熱して溶媒を蒸発させた後、真空のまま室温に戻した後、トランジスタ特性を測定する。
トランジスタ特性の評価は、ゲート電圧(V)を印加しながら、ドレイン電圧(V)をスキャンしてドレイン電流(I)を測定することによって行なう。
【0044】
〔実施例1〕
酢酸鉄(II)17.4mg(0.10ミリモル)をエタノール10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液T1)を調製した。
一方、2,5−ジヒドロキシベンゾキノン14.0mg(0.10ミリモル)をエタノール10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液K1)を調製した。
1.0mLの溶液Aに、撹拌しながら1.0mLの溶液Bを加えたところ、濃茶色均一溶液となった。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、茶色薄膜が得られた。
この薄膜は、エタノールに不溶であることから、原料とは別の物質であることがわかる。
この薄膜について、元素分析を行なった。これから、この薄膜が一般式(X)で示す構造を有することが分かった。
【化19】

【0045】
〔実施例2〕
5,8−ジヒドロキシ−1,4−ナフトキノン19.0mg(0.10ミリモル)をジエチレングリコールジメチルエーテル10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液K2)を調製した。
溶液K1に代えて溶液K2を使用するほかは実施例1と同様に操作したところ、黒色均一溶液となった。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、黒色薄膜が得られた。
【0046】
〔実施例3〕
1,4−ジヒドロキシ−9,10−アントラキノン24.0mg(0.10ミリモル)をジエチレングリコールジメチルエーテル10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液K3)を調製した。
溶液K1に代えて溶液K3を使用するほかは実施例1と同様に操作したところ、黒緑色均一溶液となった。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、黒緑色薄膜が得られた。
【0047】
〔実施例4〕
4,5−ジヒドロキシ−4−シクロペンテン−1,2,3−トリオン14.2mg(0.10ミリモル)をエタノール10mLに溶解し、10ミリモル/リットル(溶液K4)を調製した。
溶液K1に代えて溶液K4を使用するほかは実施例1と同様に操作したところ、黒色均一溶液となった。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、黒色薄膜が得られた。
【0048】
〔実施例5〕
1−シクロブテン−3,4−ジオン−1,2−ジオール11.4mg(0.10ミリモル)をエタノール10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液K5)を調製した。
1.0mLの溶液T1に、撹拌しながら4−(3−ペンチル)ピリジンをマイクロシリンジで8.1マイクロリットル(0.05ミリモル、鉄に対して5倍モル量)加え、さらに1.0mLの溶液K5を加えたところ、濃茶色均一溶液となった。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、茶色薄膜が得られた。
【0049】
〔実施例6〕
アセチルアセトナト鉄(II)25.4mg(0.10ミリモル)を2−エトキシエタノール10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液T2)を調製した。
一方、2,3,5,6−テトラヒドロキシベンゾキノン・2水和物20.8mg(0.10ミリモル)をジエチレングリコールジメチルエーテル10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液K6)を調製した。
1.0mLの溶液T2に、撹拌しながら1.0mLの溶液K6を加えたところ、黒緑色均一溶液となった。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、黒緑色薄膜が得られた。
【0050】
〔実施例7〕
アセチルアセトナト鉄(III)35.3mg(0.10ミリモル)をテトラヒドロフラン10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液T3)を調製した。
1.0mLの溶液T3に、撹拌しながら1.0mLの溶液K3を加えたところ、濃茶色均一溶液となった。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、茶色薄膜が得られた。
【0051】
〔実施例8〕
2,5−ジヒドロキシベンゾキノン14.0mg(0.10ミリモル)をテトラヒドロフラン10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液K7)を調製した。
1.0mLの溶液T3に、撹拌しながら1.0mLの溶液K7を加えたところ、黒茶色均一溶液となった。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、黒茶色薄膜が得られた。
【0052】
〔実施例9〕
酢酸クロム(III)含水塩22.1mg(0.10ミリモル)をエタノール10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液T4)を調製した。
1.0mLの溶液T4に、撹拌しながら1.0mLの溶液K1を加えたところ、茶色均一溶液となった。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、茶色薄膜が得られた。
【0053】
〔実施例10〕
1.0mLの溶液T4に、撹拌しながら1.0mLの溶液K3を加えたところ、茶色均一溶液となった。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、茶色薄膜が得られた。
【0054】
〔実施例11〕
酢酸コバルト(II)・4水和物20.0mg(0.10ミリモル)をエタノール10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液T5)を調製した。
一方、1,4−ジアミノ−9,10−アントラキノン23.8mg(0.10ミリモル)をテトラヒドロフラン10mLに加熱溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液K8)を調製した。
1.0mLの溶液T5に、撹拌しながら4−(3−ペンチル)ピリジンをマイクロシリンジで8.1マイクロリットル(0.05ミリモル、コバルトに対して5倍モル量)加え、さらに1.0mLの溶液K8を加えたところ、濃紫色均一溶液となった。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、紫色薄膜が得られた。
【0055】
〔実施例12〕
ルベアン酸12.0mg(0.10ミリモル)をテトラヒドロフラン10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液K9)を調製した。
溶液K8に代えて溶液K9を使用するほかは実施例11と同様の操作を行なって、濃茶色均一溶液を得た。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、茶色薄膜が得られた。
【0056】
〔実施例13〕
酢酸モリブデン(II)二量体25.7mg(モリブデン原子換算で0.10ミリモル)をエタノール10mLに加熱溶解し、モリブデン原子換算で10ミリモル/リットル濃度の溶液(溶液T6)を調製した。
溶液T1に代えて溶液T6を使用するほかは、実施例1と同様の操作を行なって、茶色均一溶液を得た。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、茶色薄膜が得られた。
【0057】
〔実施例14〕
酢酸ロジウム(II)二量体・2水和物23.9mg(ロジウム原子換算で0.10ミリモル)をエタノール10mLに溶解し、ロジウム原子換算で10ミリモル/リットル溶液(溶液T7)を調製した。
1.0mLの溶液T7に、撹拌しながら4−(3−ペンチル)ピリジンをマイクロシリンジで8.1マイクロリットル(0.05ミリモル、ロジウムに対して5倍モル量)加え、さらに1.0mLの溶液K1を加えたところ、濃茶色均一溶液となった。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、茶色薄膜が得られた。
【0058】
〔実施例15〕
アセチルアセトナトコバルト(II)25.7mg(0.10ミリモル)をテトラヒドロフラン10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液T8)を調製した。
溶液T1に代えて溶液T8を使用するほかは、実施例3と同様の操作を行なって、黒色均一溶液を得た。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、黒色薄膜が得られた。
【0059】
〔実施例16〕
溶液K3に代えて溶液K7を使用するほかは、実施例15と同様の操作を行なって、濃緑茶色均一溶液を得た。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、緑茶色薄膜が得られた。
【0060】
〔実施例17〕
アセチルアセトナトニッケル(II)25.7mg(0.10ミリモル)をジメチルスルホキシド10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液T9)を調製した。
2,5−ジヒドロキシベンゾキノン14.0mg(0.10ミリモル)をジメチルスルホキシド10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液K10)を調製した。
1.0mLの溶液T9に、撹拌しながらピリジンをマイクロシリンジで4.1マイクロリットル(0.05ミリモル、ニッケルに対して5倍モル量)加え、さらに1.0mLの溶液K10を加えたところ、濃茶色均一溶液となった。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、茶色薄膜が得られた。
【0061】
〔実施例18〕
アセチルアセトナトマンガン(III)35.2mg(0.10ミリモル)をテトラヒドロフラン10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液T10)を調製した。
溶液T1に代えて溶液T10を使用するほかは、実施例3と同様の操作を行なって、濃紫色均一溶液を得た。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、紫色薄膜が得られた。
【0062】
〔実施例19〕
アセチルアセトナトバナジウム(III)34.8mg(0.10ミリモル)をテトラヒドロフラン10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液T11)を調製した。
溶液T3に代えて溶液T11を使用するほかは、実施例8と同様の操作を行なって、濃緑茶色均一溶液を得た。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、緑茶色薄膜が得られた。
【0063】
〔実施例20〕
アセチルアセトナトオキシバナジウム(IV)26.5mg(0.10ミリモル)をテトラヒドロフラン10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液T12)を調製した。
溶液T1に代えて溶液T12を使用するほかは、実施例3と同様の操作を行なって、濃茶色均一溶液を得た。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、茶色薄膜が得られた。
【0064】
〔実施例21〕
溶液T11に代えて溶液T12を使用するほかは、実施例19と同様の操作を行なって、黒茶色均一溶液を得た。これをガラス板に一滴、滴下し自然乾燥したところ、茶色薄膜が得られた。
【0065】
〔実施例22〕
2,5−ジヒドロキシベンゾキノン14.0mg(0.10ミリモル)を2−エトキシエタノール10mLに溶解し、10ミリモル/リットル溶液(溶液K11)を調製した。
1.0mLの溶液T1に、撹拌しながら1.0mLの溶液K11を加えたところ、濃茶色均一溶液となった。これを基板のチャネル部分に塗布し、乾燥した後、トランジスタ特性を測定した。結果を、図1に示す。
【0066】
〔実施例23〕
1.0mLの溶液T1に、撹拌しながらピリジンをマイクロシリンジで4.1マイクロリットル(0.05ミリモル、鉄に対して5倍モル量)加え、さらに1.0mLの溶液K11を加えたところ、濃茶色均一溶液となった。これを基板のチャネル部分に塗布し、乾燥した後、トランジスタ特性を測定した。結果を、図2に示す。
【0067】
図1及び図2から、ゲート電圧(V)をかけることによって、ドレイン電流(I)が流れており、半導体薄膜がp型電界効果型トランジスタの特性を示していることが分かる。
図1に示す半導体薄膜では、ドレイン電流(I)が流れ始めるのに要するゲート電圧(V)が、−60V程度であるのに対し、図2に示す半導体薄膜では、−40Vになっている。これは、ピリジンを配位させた実施例23の半導体薄膜では、ピリジン配位によりHOMO準位が上がり、電子を奪われやすくなり、よりp型特性が出やすくなったためであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例22で得られた半導体薄膜のトランジスタ特性を示す図である。
【図2】実施例23で得られた半導体薄膜のトランジスタ特性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表わされる金属錯体からなる半導体薄膜。
【化1】

(一般式(I)中、Mは遷移金属原子を含有する基を、Lは配位子を表わす。A、A、B及びBは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含有する基を表わす。B−Q(A)(A)−Bは、共役系を構成している。mは、0〜4の整数であり、nは、正の整数である。)
【請求項2】
一般式(I)で表わされる金属錯体が一般式(II)で表わされるものである請求項1に記載の半導体薄膜。
【化2】

(一般式(II)中、Mは遷移金属原子を含有する基を、Lは配位子を表わす。A、A、B及びBは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含有する基を表わす。一般式(III)で表わされる部分構造は、炭素環又はヘテロ環Q並びにヘテロ原子又はヘテロ原子を含有する基A、A、B及びBで構成されるπ共役系を示す。mは、0〜4の整数であり、nは、正の整数である。)
【化3】

【請求項3】
一般式(III)で表わされる部分構造が下記一般式(IV)で表わされるものである請求項2に記載の半導体薄膜。
【化4】

(一般式(IV)中、A、A、B及びBは、一般式(I)における定義に同じ。一般式(IV)において、A、A、B及びBを除いた部分は、炭素環又はヘテロ環Zであり、単環でも縮合環であってもよく、更に任意の置換基を有していてもよい。)
【請求項4】
一般式(IV)で表わされる部分構造において、B及びBが、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又は=NR(Rは、水素原子、炭化水素基、水酸基又はアミノ基である。)であり、A及びAが、それぞれ、−O−、−S−、−Se−又は−NR−(Rは、水素原子、炭化水素基、水酸基又はアミノ基である。)である請求項3に記載の半導体薄膜。
【請求項5】
一般式(IV)で表わされる部分構造が、下記一般式(Va)〜(Vg)のいずれかで表されるものである請求項4に記載の半導体薄膜。
【化5】

【化6】

【化7】

【請求項6】
−Q(A)(A)−Bで示される共役系が一般式(VI)で表わされるものである請求項1に記載の半導体薄膜。
【化8】

(式(VI)中、B及びBは、それぞれ、S又はSeであり、Rは水素原子、炭化水素基、水酸基又はアミノ基である。)
【請求項7】
Mが周期表第5〜12族の遷移金属を含有する基である請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体薄膜。
【請求項8】
Mが、周期表第5〜12族の金属原子又はVO、TiO、UO若しくはVCp(但し、Cpは、置換基を有していてもよいシクロペンタジエン環を表わす。)である請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体薄膜。
【請求項9】
Lが、へテロ芳香環化合物、アミン、ニトリル、カルボン酸又はβ−ジケトンである請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体薄膜。
【請求項10】
一般式(VII)で表わされる化合物、遷移金属の塩MX(Mは遷移金属を含有する基であり、Xは塩を形成する1価の陰イオンである。)及び、金属錯体(I)の構造に応じて必要ならば、配位子化合物Lを溶媒に溶解して溶液とし、これを基板に塗布した後、溶媒、及び一般式(VII)で表わされる化合物と遷移金属の塩MXとの縮合反応で発生する化合物HXを除去することを特徴とする請求項1に記載の半導体薄膜の製造方法。
【化9】

【請求項11】
化合物HX(Xは、遷移金属の塩MXを形成する1価の陰イオンである。)の沸点よりも高い沸点を有する溶媒を使用することを特徴とする請求項10に記載の半導体薄膜の製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の半導体薄膜からなる薄膜トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−260157(P2009−260157A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109749(P2008−109749)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】