説明

半導体装置、発振器、アンテナシステムおよび送受信システム

【課題】簡易に半導体基板上に形成でき、差動型で動作する半導体装置ならびにこれを用いた発振器、アンテナシステムおよび送受信システムを提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板と、複数の音響波伝播層と、分離層と、音響波反射層と、第1のコンタクトと、第2のコンタクトとを備える。前記複数の音響波伝播層は、前記半導体基板に、互いに離間して形成される。前記分離層は、前記半導体基板に形成され、前記複数の音響波伝播層を互いに電気的に分離するが、音響波は通過させる。前記音響波反射層は、前記半導体基板に形成され、前記複数の音響波伝播層内に前記音響波を閉じ込めるように形成される。前記第1のコンタクトは、前記複数の音響波伝播層の1つに形成され、第1の差動信号が入力または出力される。前記第2のコンタクトは、前記複数の音響波伝播層の他の1つに形成され、前記第1の差動信号とは位相が異なる第2の差動信号が入力または出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置、発振器、アンテナシステムおよび送受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
共振器として、水晶の圧電効果を利用した水晶振動子が広く用いられている。水晶振動子の機械系振動を利用することで、電気系振動のみを用いたインダクタンスより大きなインダクタンス成分を実現できる。ところが、水晶振動子を半導体集積回路上に形成することは極めて困難である。
【0003】
半導体集積回路においても、MEMS(Micro Electro Mechanical System)共振器のように、機械系振動を利用したデバイスを半導体基板上に形成することもできるが、特殊なプロセスが必要である。
【0004】
また、対ノイズ耐性を考慮すると、共振器は単相型より差動型で動作することが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】G. Weinreich, Physical Review, 104 (1956), pp. 321 - 324
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
簡易に半導体基板上に形成でき、差動型で動作する半導体装置ならびにこれを用いた発振器、アンテナシステムおよび送受信システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、半導体装置は、半導体基板と、複数の音響波伝播層と、分離層と、音響波反射層と、第1のコンタクトと、第2のコンタクトとを備える。前記複数の音響波伝播層は、前記半導体基板に、互いに離間して形成される。前記分離層は、前記半導体基板に形成され、前記複数の音響波伝播層を互いに電気的に分離するが、音響波は通過させる。前記音響波反射層は、前記半導体基板に形成され、前記複数の音響波伝播層内に前記音響波を閉じ込めるように形成される。前記第1のコンタクトは、前記複数の音響波伝播層の1つに形成され、第1の差動信号が入力または出力される。前記第2のコンタクトは、前記複数の音響波伝播層の他の1つに形成され、前記第1の差動信号とは位相が異なる第2の差動信号が入力または出力される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置100の上面図。
【図2】第1の実施形態に係る半導体装置100の斜視図。
【図3】第1の実施形態に係る半導体装置100の断面図。
【図4】半導体装置100の製造工程を示す斜視図。
【図5】半導体装置100の動作原理を示す図。
【図6】一次元形状の細長い半導体領域10のモデルを示す図。
【図7】分離部6がない場合の、波数n=2の場合の波動方程式の解を示す図。
【図8】半導体装置100における波数n=2の場合の波動方程式の解を示す図。
【図9】半導体装置100を共振器として用いた差動型発振回路の一例を示す回路図。
【図10】第2の実施形態に係る半導体装置101の上面図。
【図11】第2の実施形態に係る半導体装置101の断面図。
【図12】半導体装置101の動作原理を示す図。
【図13】第3の実施形態に係る半導体装置102の上面図。
【図14】第3の実施形態に係る半導体装置102の断面図。
【図15】半導体装置102の製造工程を示す上面図。
【図16】第4の実施形態に係る半導体装置103の上面図。
【図17】第4の実施形態に係る半導体装置103の断面図。
【図18】半導体装置103の動作原理を示す図。
【図19】第5の実施形態に係る半導体装置104の上面図。
【図20】第5の実施形態に係る半導体装置104の断面図。
【図21】半導体装置104の動作原理を示す図。
【図22】アンテナシステム20の概略構成を示すブロック図。
【図23】アンテナシステム30の概略構成を示すブロック図。
【図24】送信器40および受信器50を含む送受信システムの概略ブロック図。
【図25】図23の送受信システムの共振器45、アンテナ46,51および共振器52の概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1および図2はそれぞれ、第1の実施形態に係る半導体装置100の上面図および斜視図である。また、図3(a)は半導体装置100の断面図であり、同図(b)はその一部の拡大図である。半導体装置100は、シリコン基板1と、p型拡散層2a,2bと、SiO膜3と、コンタクト4a,4bと、配線5a,5bとを備えている。半導体装置100は、配線5a,5bから差動信号を入力または出力する差動型共振器として用いることができる。
【0011】
シリコン基板1はn型の半導体基板であり、その表面に不純物として例えばホウ素がドーピングされたp型拡散層2a,2bが形成される。p型拡散層2a,2bを上面から見たそれぞれの形状は、垂直方向に短辺を、水平方向に長辺をそれぞれ有する略長方形である。p型拡散層2a,2bは、図示のように、シリコン基板1の一部である分離層6により物理的に分離して形成される。図3(b)の拡大図に示すように、分離層6では、p型拡散層2a,2bとn型のシリコン基板1との界面に空乏層領域8が形成され、p型拡散層2aとp型拡散層2bは電気的にも分離される。
【0012】
そして、p型拡散層2a、分離層6およびp型拡散層2bの外側を囲うように溝7がシリコン基板1に形成され、その中にSiO膜3が埋め込まれている。SiO膜3は、いわゆるSTI(Shallow Trench Isolation)構造であり、p型拡散層2a,2bを、シリコン基板1上に形成される他のデバイスと電気的に分離する。
【0013】
コンタクト4aはp型拡散層2aに形成され、アルミニウム等の金属からなる配線5aとp型拡散層2aとを電気的に接続する。同様に、コンタクト4bはp型拡散層2bに形成され、配線5bとp型拡散層2bとを電気的に接続する。
【0014】
後述するように、p型拡散層2a,2bからコンタクト4a,4bおよび配線5a,5bを介して差動信号が出力され、あるいは、外部から配線5a,5bおよびコンタクト4a,4bを介してp型拡散層2a,2bに差動信号が入力される。
【0015】
半導体装置100では、不図示のマスクを用いてホウ素等の不純物を注入することにより、互いに分離したp型拡散層2a,2bが形成される。より一般的な製造プロセスでは、図4に示すように、まずゲート電極9を形成し、これをマスクとして不純物を注入する自己整合プロセスによりp型拡散層2a,2bを形成してもよい。これにより、ゲート電極9に対応する位置が分離層6となって半導体装置100が形成される。これは一般的なトランジスタとほぼ同様の製造法である。いずれにしても、通常のCMOSプロセスにより、簡易に半導体装置100を形成できる。なお、図4のゲート電極9は、製造に用いられるものであり、必ずしも電圧を印加することを目的として形成するわけではない。
【0016】
図5は、半導体装置100の動作原理を示す図である。一般に、キャリアを有する半導体中では、電荷密度が変化すると体積が変化し、体積が変化すると電荷密度が変化すること、すなわち、電気と機械振動との相互作用が知られている。より具体的には、ρを電荷密度、Φを体積変化に比例する変数、cを半導体中の音速とすると、下記(1)式の波動方程式が成立する。
【数1】

【0017】
上記(1)式の左辺は音響波の伝搬を表す方程式であり、電荷密度ρの変化があると(右辺)、音速cの音響波が伝播する(左辺)ことを示している。
【0018】
このことを図1〜図3の半導体装置100に当てはめる。半導体装置100では、p型拡散層2a,2bにキャリアとしてホールが存在する。コンタクト4a,4bの一方または両方から電気入力が与えられるとp型拡散層2a,2bの電荷密度が変化し、その結果、p型拡散層2a,2bが音響波伝播層となって音響波が伝播する。
【0019】
p型拡散層2a、空乏層領域8を含む分離層6、および、p型拡散層2bは、いずれも連続したシリコン基板1の内部に形成され、弾性定数および密度ともに等しいため、音響波は分離層6で反射したり減衰したりすることなく伝播できる。
【0020】
一方、SiO膜3は音響波反射層として機能する。すなわち、音響波はp型拡散層2a,2bとSiO膜3との界面で反射し、p型拡散層2a,2bに音響定在波が生じる。ここで、分離層6には空乏層領域8が形成されており、キャリアはほとんど存在しない。そのため、分離層6は定在波の節となる。
【0021】
音響定在波の周波数はp型拡散層2a,2bの長辺の長さと音速cとに応じて定まる。したがって、半導体装置100は特定の周波数のみで共振する共振器となる。p型拡散層2a,2bの長辺の長さが短いほど定在波の波長は短くなるため、p型拡散層2a,2bの長辺の長さに応じて、共振周波数を調整できる。また、シリコン基板1あるいはp型拡散層2a,2bにバイアスを印加することにより共振周波数を調整することもできる。
【0022】
上述したように半導体装置100の共振周波数は長辺の長さによって決定されるため、共振周波数のばらつきは製造上の形状ばらつきと同程度となる。半導体プロセスの加工精度は非常に高いため、半導体装置100における共振周波数のばらつきを極めて小さくできる。
【0023】
以下、より詳細に説明する。図6は、一次元形状の細長い半導体領域10のモデルを示す図である。断面積をA、長さをLとする。また、半導体領域10の長辺に沿う方向にx軸を設定し、半導体領域10の一端の位置をx=0、他端の位置をx=Lとする。半導体領域10は、周囲を絶縁膜あるいは空乏層で囲まれており、その外側は接地電位であるとする。さらに、半導体領域10全体の接地電位に対する全体のキャパシタンスをCとし、x軸方向に対してキャパシタンスは一様であると仮定する。この場合、単位長さ当たりのキャパシタンスはC/Lである。
【0024】
任意の位置xにおける微小な長さdxの領域11のキャパシタンスをCdx、電荷密度をρ(x)とする。この領域11に蓄積されている電荷QdxおよびキャパシタンスCdxはそれぞれ下記(2),(3)式で表される。
Qdx = ρ(x) * dx * A ・・・(2)
Cdx = Ct * dx / L ・・・(3)
したがって、電位V(x)と電荷密度ρ(x)との関係は下記(4)で表される。
V(x) = Qdx / Cdx = ρ(x) * A * L / Ct = ρ(x) / C0・・・(4)
ここで、Cは単位体積当たりのキャパシタンスである。上記(4)式から分かるように、電位V(x)は電荷密度ρ(x)に比例する。
【0025】
図6の一次元モデルにおいて、上記波動方程式(1)の変数Φおよびρは位置xおよび時間tの関数であると仮定すると、(1)式の解として、下記(5)式が考えられる。
Φ(x, t) =Φn * exp(ikx - iωt) ・・・(5)
【0026】
長さLの一次元領域に励起される定在波において、下記(6)式の境界条件を仮定する。
Φ(0, t) = Φ(L, t) = 0 ・・・(6)
これは、半導体領域10の端部を固定端とする仮定であり、半導体領域10に比べ、周囲の材料が「固い」場合、すなわち、音響インピーダンスが大きい場合に成立する。本実施形態の半導体装置100では、半導体領域10はp型拡散層2a,2bであり、その端部には音響インピーダンスがより高いSiO膜3が形成されているため、この仮定の下に以下の説明を行う。
【0027】
上記(6)式の境界条件により、上記(5)式の変数kは下記(7)式のようになる。
k = n * π / L ・・・(7)
ここで、波数nは1以上の整数である。n=0の場合、全ての位置xについて均一な分布を表すが、境界条件を満たすためにはΦ=0となるので、定在波は存在できない。
【0028】
一方、電荷密度ρについてはこのような制約がないため、n=0の場合でも位置xについて均一な電荷分布でもよい。そこで、電荷密度ρは音響電荷に起因する位置xに依存する項ρ(x)と、静電容量に起因しする位置xに依存しない均一な項ρとに分けて考えることができ、下記(8)式で表される。
ρ(x, t) = ρ1(x) +ρ2
= ρn * exp(ikx - iωt) +ρ0 * exp(-iωt) ・・・(8)
ただし、nは0以上の整数である。
【0029】
図7は、波数n=2の場合の波動方程式の解を示す図である。音響定在波に起因する電荷密度ρは、中心位置L/2に対して左右対称となり、極性が反転している。仮に、半導体領域10が電気的に連続な場合、位置xに依存しない均一な項ρは半導体領域10全体にわたって一定の極性である。半導体領域10の左側(x≦L/2)半分ではρ(x)とρとの極性が同じであるためにこれらが互いに強めあうが、右側(L/2≦x)半分では極性が異なるために、弱めあう。したがって、実際には、電気的に図7に示すモードの音響定在波を励起することはできない。
【0030】
ところが、図1〜図3の半導体装置100では、半導体領域10に対応するp型拡散層2a,2bは、分離層6により電気的に分離されている。配線5a,5bを介して、p型拡散層2a,2bに互いに極性(位相)が異なる差動信号が入力されると、図8に示すように、位置xに依存しない項ρは左側半分と右側半分で極性が反転する。そのため、左側半分および右側半分ともにρ(x)とρとの極性が一致し、互いに強め合う。結果として、電気的な差動信号により音響定在波を励起させることができるとともに、音響定在波により電気的な差動信号を発生させることができる。このようにして、半導体装置100は差動型の音響共振器として動作する。
【0031】
差動信号の振幅を等しくするためには、コンタクト4a,4bを分離層6から互いに等しい位置に形成するのが望ましい。例えば、図8に示すように、p型拡散層2a,2bの中央に形成することにより、差動信号の振幅をともに最大にすることができる。
【0032】
図9は、半導体装置100を共振器として用いた差動型発振回路20の一例を示す回路図である。同図の差動型発振器20は、半導体装置100の出力を増幅してフィードバックすることにより発振信号を生成するものである。
【0033】
差動型発振回路20は、電源端子と接地端子との間に縦続接続されるp型トランジスタMpaおよびn型トランジスタMnaから構成されるインバータ(増幅器)I1と、p型トランジスタMpbおよびn型トランジスタMnbから構成されるインバータ(増幅器)I2と、インバータI1,I2の入出力端子間にそれぞれ接続される抵抗Ra,Rbと、インバータI1の出力端子と、インバータI2の出力端子との間に縦続接続される容量Ca,半導体装置100および容量Cbとを有する。半導体装置100のコンタクト4aが容量Caに接続され、コンタクト4bが容量Cbに接続される。
【0034】
図9の差動型発振器20では、半導体素子100の共振時、各インバータI1,I2の出力における位相シフトは0度である。したがって、トータルの位相シフトが360度の正のフィードバックが形成され、発振する。抵抗RaはインバータIaのフィードバック抵抗であり、容量Caと合わせてハイパスフィルタを構成する。抵抗Rbおよび容量Cbも同様である。これにより、インバータI1,I2の入出力端子が電源電圧あるいは接地電圧に固定されるのが防止される。結果として、インバータI1,I2の入出力端子のいずれからも発振信号を取り出すことができる。
【0035】
同図のトランジスタMpa等と同じ半導体基板上に共振器として半導体装置100を形成でき、小型かつ低コストで差動型発振回路を構成できる。
【0036】
このように、第1の実施形態では、シリコン基板1上に、分離層6により分離されたp型拡散層2a,2bを形成し、これらを取り囲むようにSiO膜3を形成する。そのため、互いに極性が異なる差動信号により音響定在波を励起でき、かつ、音響定在波により差動信号が生成される差動型共振器を、シリコン基板1上に簡易に形成できる。
【0037】
なお、図1〜図3では、n型のシリコン基板1上にp型拡散層2a,2bを形成する例を示しているが、p型またはn型のシリコン基板1上にnウェルを形成し、このnウェルにp型拡散層2a,2bを形成してもよい。このようにして、p型拡散層2a,2bの間のnウェル、すなわち、音響波伝播層とは導電型が異なる半導体層を分離層としてもよい。また、分離層は、音響波伝播層間を、音響波は通過させるが電気的には分離するものであればよく、例えばp型拡散層2a,2bの間に溝を形成して、この溝にSiO膜を埋め込んだものでもよい。
【0038】
音響波反射層は必ずしもSiO膜3でなくてもよく、SiN等シリコン基板1と音響インピーダンスが異なる材料であればよい。
【0039】
さらに、取り出される差動信号の振幅を大きくするためには、図6に示す容量が大きいほうがよい。したがって、図1〜図3に示すように、p型拡散層2a、分離層6およびp型拡散層2bを取り囲むようにSiO膜3を形成するのが望ましいが、音響波をp型拡散層2a,2b内に閉じ込めるよう、少なくともp型拡散層2a、分離層6およびp型拡散層2bの長手方向外側に音響波反射層を形成してもよい。
【0040】
また、コンタクト4a,4bをあえて分離層6に対して非対称の位置に形成してもよい。例えば、図8において、x=L/12の位置にコンタクト4aを形成し、x=3L/4の位置にコンタクト4bを形成すると、コンタクト4a,4bに生成される電圧の振幅の比は1:2となる。このようにして、半導体装置100を電圧振幅1:2の変圧器として動作させることもできる。
【0041】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態は、分離層6により分離される2つのp型拡散層2a,2bが形成されるものであったが、以下に説明する第2の実施形態では、奇数個の分離層により互いに分離される偶数個のp型拡散層が形成されるものである。
【0042】
図10および図11はそれぞれ、第2の実施形態に係る半導体装置101の上面図および断面図である。図10および図11では、図1および図3とそれぞれ共通する構成部分には同一の符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0043】
半導体装置101は、図1の半導体装置100とは異なり、3つの分離層6a〜6cによりそれぞれ分離される4つのp型拡散層2a〜2dと、p型拡散層2a〜2d上にそれぞれ形成されるコンタクト4a〜4dと、コンタクト4a〜4dとそれぞれ電気的に接続される配線5a〜5dとを備えている。p型拡散層2a〜2dおよび分離層6a〜6cは、所定の方向に沿ってほぼ一直線上に形成される。
【0044】
左端のp型拡散層2cと左から3番目のp型拡散層2bは、コンタクト4c,4bおよび配線5c,5bを介してポート1に電気的に接続される。一方、左から2番目のp型拡散層2aと4番目のp型拡散層2dは、コンタクト4a,4dおよび配線5a,5dを介してポート2に電気的に接続される。ポート1およびポート2から互いに位相が異なる差動信号が入出力される。
【0045】
図12は、半導体装置101の動作原理を示す図である。ポート1およびポート2に差動信号を入力すると音響定在波が励起され、同図に示すような電荷密度分布が生じる。これにより、第1の実施形態と同様に、半導体装置101は差動型の音響共振器として動作する。
【0046】
ここで、分離層6a〜6cはいずれも定在波の節になる。そのため、第1の実施形態に係る半導体装置100と本実施形態に係る半導体装置101とが同じサイズである場合、より具体的には、半導体装置100におけるp型拡散層2aの左端からp型拡散層2bの右端までの距離と、半導体装置101におけるp型拡散層2cの左端からp型拡散層2dの右端までの距離とが等しい場合、半導体装置101では波長が2倍になるため、共振周波数がより高くなる。
【0047】
このように、第2の実施形態では、より多くの偶数個のp型拡散層を形成するため、共振周波数を高くすることができる。
【0048】
なお、図10および図11では、4つのp型拡散層2a〜2dが形成される例を示したが、偶数個のp型拡散層を形成し、偶数番目のp型拡散層同士を電気的に接続し、奇数番目のp型拡散層同士を電気的に接続し、差動信号を入出力してもよい。分割数を多くするほど共振周波数を高くすることができる。
【0049】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、半導体装置を並列に設けるものである。
【0050】
図13および図14はそれぞれ、第3の実施形態に係る半導体装置102の上面図および断面図である。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0051】
半導体装置102は、水平方向および垂直方向に沿ってマトリクス状に形成される複数のp型拡散層2a,2bを備えている。より具体的には、p型拡散層2a,2bは、シリコン基板1上のSiO膜3で囲まれた領域に、シリコン基板1の一部であり、水平方向に延びる分離層6hにより垂直方向に互いに分離され、かつ、垂直方向に延びる分離層6vにより水平方向に互いに分離されて形成される。すなわち、図1〜図3に示す半導体装置100を、分離層6hを介して垂直方向に並列に設けた構成になっている。また、p型拡散層2aに形成される各コンタクト4aは配線5aを介してポート1に接続され、p型拡散層2bに形成される各コンタクト4bは配線5bを介してポート2に接続されている。ポート1およびポート2から差動信号が入出力される。
【0052】
また、半導体装置102の水平方向(長辺)および垂直方向(短辺)の長さはそれぞれ、例えば40μmおよび10μmであり、スパイラルインダクタを用いたLC共振器と比べても大幅に面積を削減できる。
【0053】
図15は、半導体装置102の製造工程を示す上面図である。まず、ゲート電極9をSiO膜3で囲まれたシリコン基板1上に形成する。ゲート電極9は、水平方向に延びる複数のゲート電極9hと、垂直方向に延びる1つのゲート電極9vとからなる。このゲート電極9をマスクとしてp型の不純物をシリコン基板1に注入することにより、ゲート電極9と対応する位置が分離層6h,6vとなって半導体装置102が形成される。なお、ゲート電極9は製造に用いられるものであり、必ずしも電圧を印加することを目的として形成するわけではない。
【0054】
p型拡散層2a,2bは電気的には分離されているが、p型拡散層2a、分離層6およびp型拡散層2bは、いずれも連続したシリコン基板1の内部に形成され、弾性定数および密度ともに等しいため、音響波は分離層6で反射したり減衰したりすることなく伝播できる。
【0055】
p型拡散層2a,2bのそれぞれは、シリコン基板1の電位に対して静電容量を持つが、これらを並列接続することにより、全体の静電容量は大きくなる。すなわち、並列接続する数に応じてインピーダンスを調整できる。
【0056】
したがって、例えば並列数を多くすることにより出力インピーダンスが小さくなり、半導体装置102はより大きな素子を駆動することができる。また、並列数を少なくすることにより入力インピーダンスが大きくなるため、小さな素子でも半導体装置102を駆動することができる。
【0057】
このように、第3の実施形態では、p型拡散層2a,2bを垂直方向に並列に形成するため、半導体装置102のインピーダンスを簡易に調整できる。
【0058】
なお、第2の実施形態と同様に、水平方向に奇数個の分離層6vおよび偶数個のp型拡散層を形成してもよい。
【0059】
(第4の実施形態)
第3の実施形態の半導体装置102は水平方向に2つのp型拡散層を備えるものであったが、以下に説明する第4の実施形態の半導体装置は、水平方向に奇数個のp型拡散層を備えるものである。本実施形態の半導体装置をトランス(インピーダンス変換器)またはバラン(単相差動変換器)としても用いることができる。
【0060】
図16および図17はそれぞれ、第4の実施形態に係る半導体装置103の上面図および断面図である。以下、第3の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0061】
半導体装置103は、シリコン基板1の一部である分離層6va,6vbにより水平方向および垂直方向に互いに分離されて形成される、複数のp型拡散層2a,2b,2cを備えている。半導体装置103の水平方向(長辺)および垂直方向(短辺)の長さはそれぞれ、例えば60μmおよび10μmである。第3の実施形態と同様に、並列接続する数に応じてインピーダンスを調整できる。
【0062】
半導体装置103をトランスとして用いる場合、p型拡散層2bに形成される各コンタクト4bを配線5bを介してポート1に接続し、p型拡散層2a,2cに形成される各コンタクト4a,3cを配線5a,5cを介してポート2に接続する。
【0063】
図18は、半導体装置103の動作原理を示す図である。ポート1はp型拡散層2bのみに接続され、ポート2はp型拡散層2a,2cに接続されるため、ポート2から見た静電容量はポート1から見た静電容量の2倍となる。音響定在波が励起されない場合、これらの容量は結合せず、互いに独立な容量とみなすことができる。
【0064】
ところが、ポート1およびポート2に差動信号を入力すると、分離層6ha,6hbを節とするn=3の音響定在波が励起される。これによって生じる電荷はポート1とポート2との間で結合する。ポート1側の電荷とポート2側の電荷の極性は反転しており、絶対値の比は1:2となる。このように、同じ振幅の電圧信号を与えても、ポート1とポート2との間でインピーダンスが異なるため、半導体装置103をトランス(インピーダンス変換器)として使用できる。
【0065】
一方、半導体装置103をバランとして用いる場合、p型拡散層2aに形成される各コンタクト4aを配線5aを介してポート1に接続し、p型拡散層2bに形成される各コンタクト4bを配線5bを介してポート2に接続し、p型拡散層2cに形成される各コンタクト4cを配線5cを介してポート3に接続する。
【0066】
p型拡散層2bとp型拡散層2cでは音響定在波の極性が異なるため、ポート1から単相信号を入力し、ポート2およびポート3から差動信号を出力することにより単相−差動変換が可能である。また、ポート2およびポート3から差動信号を入力し、ポート1から単相信号を出力することにより、差動−単相変換が可能である。
【0067】
このように、第4の実施形態では、水平方向で3つに分離されるp型拡散層2a〜2cを備えるため、半導体集積回路上に簡易にトランスあるいはバランとして半導体装置103を形成できる。
【0068】
なお、水平方向に5個以上の奇数個のp型拡散層を形成してもよい。
【0069】
(第5の実施形態)
上述した第1〜第4の実施形態は、p型拡散層2a,2bの端部を固定端として境界条件(上記(6)式)を仮定していた。これに対し、第5の実施形態では異なる境界条件を念頭に置いている。
【0070】
図19および図20はそれぞれ、第5の実施形態に係る半導体装置104の上面図および断面図である。図1および図3とそれぞれ共通する構成部分には同一の符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0071】
半導体装置104は、2つの分離層6a,6bによりそれぞれに分離される3つのp型拡散層2a〜2cと、p型拡散層2a〜2c上にそれぞれ形成されるコンタクト4a〜4cと、コンタクト4a〜4cとそれぞれ電気的に接続される配線5a〜5cを備えている。p型拡散層2a,2cの長辺の長さは互いに等しく、p型拡散層2bの長辺の長さの1/2である。
【0072】
左端のp型拡散層2aと右端のp型拡散層2cとは、コンタクト4a,4cおよび配線5a,5cを介してポート1に電気的に接続され、中央のp型拡散層2bは、コンタクト4bおよび配線5bを介してポート2に電気的に接続される。ポート1およびポート2から差動信号が入出力される。
【0073】
また、半導体装置100のSiO膜3に代えて、シリコン基板1より音響インピーダンスが小さい材料(例えば樹脂、空洞など)の音響波反射層3’が形成される。
【0074】
第1の実施形態で説明したように、音響波伝播層としてのp型拡散層2a〜2cに比べて、音響波反射層としてのSiO膜3の音響インピーダンスが大きい場合、両者の界面は固定端となる。一方、音響反射層の音響インピーダンスが小さい場合、界面は自由端となる。本実施形態の半導体装置はこの違いを考慮したデバイス構造となっている。
【0075】
図21は、半導体装置104の動作原理を示す図である。p型拡散層2a,2cとSiO膜3’との界面が自由端であるために音響定在波の腹となり、分離層6a,6bが節となる。さらに、中央のp型拡散層2bの長さは両端のp型拡散層2a,2cの2倍であるため、n=3のモードの音響定在波が励起される。これにより、第1の実施形態と同様に、差動型の音響共振器として動作する。
【0076】
このように、第5の実施形態では、2つの分離層6a,6bにより3つに分離されたp型拡散層2a〜2cを形成する。そのため、音響波伝播層と音響波反射層との界面が自由端となる場合でも、半導体装置104を差動型の共振器として動作させることができる。
【0077】
音響波伝播層の音響インピーダンスより、音響波反射層の音響インピーダンスが大きい場合、これらの界面が固定端となるため、半導体装置の構造を第1の実施形態(図1等)のようにすればよい。一方、音響波伝播層の音響インピーダンスより、音響波反射層の音響インピーダンスが小さい場合、これらの界面が自由端となるため、半導体装置の構造を第5の実施形態(図18等)のようにすればよい。
【0078】
上述した各実施形態の半導体装置において、音響定在波が励起される半導体領域としてp型拡散領域を利用したが、n型拡散領域で形成してもよい。また半導体基板としてシリコン基板を例にとって説明したが、そのゲルマニウムや、SiCやGaN、GaAsなどの化合物半導体を用いてもよい。
【0079】
以下、上述した各実施形態の半導体装置を使用したアプリケーションをいくつか説明する。
【0080】
(第6の実施形態)
第6の実施形態は、半導体装置をアンテナシステムに使用するものである。
【0081】
図22は、アンテナシステム20の概略構成を示すブロック図である。アンテナシステム20は、差動型共振器21と、2つの導体22a,22bを有するダイポールアンテナ22と、差動型信号源23とを備えている。
【0082】
差動型共振器21は、例えば図1〜図3の半導体装置100であり、p型拡散層2a,2bに形成されたコンタクト4a,4bが、それぞれ導体22a,22bと接続される。また、p型拡散層2a,2bにはさらにコンタクト4c,4dがそれぞれ形成され、差動型信号源23の端子に接続される。ダイポールアンテナ22および差動型信号源23は差動型共振器21と同一のシリコン基板1上に形成するのが望ましい。
【0083】
差動型信号源23から差動型共振器21の共振周波数に等しい周波数の差動信号を入力することにより、差動型共振器21のp型拡散層2a,2bには差動型の音響定在波が励起される。音響定在波が励起された状態では、音響波と電荷が結合し、それぞれのp型拡散層2a,2bに配置されたコンタクト4a,4b間には、大きな高周波の電位差が発生する。このため、コンタクト4a,4b間に接続されたダイポールアンテナ22の2つの導体22a,22b間には大きな高周波の電位差が生じ、アンテナから外部に電磁波が放出される。
【0084】
ダイポールアンテナ22と差動型信号源23との間に差動型共振器21を接続し、共振現象を利用して増幅するため、結果として、通常のダイポールアンテナを用いたアンテナシステムよりも小型で効率のよい電磁波を放出できる。
【0085】
一方、ダイポールアンテナ22の外部から差動共振器21の共振周波数と同じ周波数成分を有する電磁波が到達すると、電磁波の強度が微弱であっても、差動型共振器21の内部に音響定在波を励起することができる。そのため、導体22a,22bを信号の波長の1/4に合わせなくても、p型拡散層2a,2bに配置されたコンタクト4a,4bを差動型共振器21に接続して受信した電磁波を増幅することにより、微弱な電磁波を効率的に検出できる。
【0086】
また、差動型共振器21として、例えば図13および図14の半導体装置102を用いて、並列接続する数を調整して、ダイポールアンテナ22および差動型信号源23のインピーダンスを整合させてもよい。
【0087】
このように、第6の実施形態のアンテナシステム20は、シリコン基板1上に形成可能な差動型共振器21を用いるため、小型かつ高効率のアンテナシステムを実現できる。
【0088】
なお、差動型共振器21として他の半導体装置を用いてもよい。
【0089】
(第7の実施形態)
第7の実施形態は、半導体装置を別のアンテナシステムに使用するものである。
【0090】
図23は、アンテナシステム30の概略構成を示すブロック図である。アンテナシステム30は、差動型共振器31と、ループアンテナ32と、差動型信号源33とを備えている。
【0091】
差動型共振器31は、例えば図10および図11の半導体装置101である。左端のp型拡散層2cおよび右端のp型拡散層2dには、差動型信号源33からそれぞれ差動信号が入力される。また、p型拡散層2b,2cには、ループアンテナ32の一端および他端がそれぞれ接続される。ループアンテナ32および差動型信号源33は差動型共振器31と同一のシリコン基板1上に形成されるのが望ましい。
【0092】
p型拡散層2a〜2dは、分離層6a〜6cによりそれぞれ電気的に分離されているため、差動型信号源33からループアンテナ32に直流電流が流れることはなく、電力効率がよい。
【0093】
差動型信号源33から差動型共振器31の共振周波数に等しい周波数の差動信号を入力することにより、差動型共振器31の4つのp型拡散層2a〜2dには、差動型の音響定在波が励起される。音響定在波が励起された状態では、音響波と電荷が結合し、中央の2つのp型拡散領域2a,2bに配置されたコンタクト4a,4bが、高周波の電流源として機能する。コンタクト4a,4b間に接続されたループアンテナ32には大きな高周波電流が流れ、ループアンテナ32から外部に電磁波が放出される。
【0094】
ループアンテナ32と差動型信号源33との間に差動型共振器31を接続し、共振現象を利用して増幅するため、結果としてループアンテナ32を小さくすることができ、通常のループアンテナを用いたアンテナシステムよりも小型で効率のよい電磁波を放出できる。
【0095】
一方、ループアンテナ32の外部から差動型共振器31の共振周波数と同じ周波数成分を有する電磁波が到達すると、電磁波の強度が微弱であっても、差動型共振器31の内部には音響定在波を励起することができる。そのため、音響定在波に配置されたコンタクト4c,4dを差動型共振器31に接続して受信した電磁波を増幅することにより、微弱な電磁波を効率的に検出できる。
【0096】
このように、第7の実施形態のアンテナシステム30は、シリコン基板1上に形成可能な差動型共振器31を用いるため、小型かつ高効率のアンテナシステムを実現できる。
【0097】
なお、差動型共振器31として他の半導体装置を用いてもよい。
【0098】
(第8の実施形態)
第7の実施形態は、半導体装置を送受信システムに使用するものである。
【0099】
図24は、送信器40および受信器50を含む送受信システムの概略ブロック図である。本実施形態の送受信システムでは、送信器40が単相信号を差動信号に変換してアンテナから受信器50に送信し、受信器50はアンテナで受信した差動信号を単相信号に変換して用いることを念頭に置いている。
【0100】
送信機40は、変調回路41と、高周波発振器42と、アップコンバータ43と、増幅器44と、共振器45と、アンテナ46とを有する。変調回路41は送信すべき信号(入力信号)を変調して、変調信号を生成する。アップコンバータ43は高周波発振器42が生成した基準信号を用いて変調信号を高周波信号に変換する。増幅器44は高周波信号を増幅する。共振器45は増幅された高周波信号を差動信号に変換してアンテナ46に給電し、アンテナから差動信号が送信される。
【0101】
一方、受信器50は、アンテナ51と、共振器52と、ロウノイズアンプ(LNA)53と、局部発振器54と、ダウンコンバータ55と、ロウパスフィルタ(LPF)56と、低周波増幅器57とを有する。アンテナ51が送信器40から差動信号を受信すると、共振器52はこれを単相信号に変換する。LNA53は単相信号を増幅する。ダウンコンバータ55は、局部発振器54が生成した基準信号を用いて低周波信号に変換する。LPF56は低周波信号を復調し、復調信号を生成する。低周波増幅器57は復調信号を増幅し、外部へ取り出される。
【0102】
このようにして、送信器40と受信器50との間で無線通信ができる。
【0103】
図24は、図23の送受信システムの共振器45、アンテナ46,51および共振器52の概略構成を示すブロック図である。
【0104】
送信機40の共振器45は、例えば図16および図17に示す半導体装置103である。増幅器44により増幅された単相信号である高周波信号は、p型拡散層2aに入力される。そして、共振器44により差動信号に変換されて、p型拡散層2b,2cから取り出され、アンテナ46から受信器50へ送信される。
【0105】
また、受信器50の共振器52も、例えば半導体装置103である。共振器52の共振周波数は、共振器44の共振周波数と等しい。アンテナ51により受信された差動信号の一方はp型拡散層2bに、他方はp型拡散層2cに入力される。そして、共振器52により単相信号に変換されて、p型拡散層2aから取り出され、LNA53に供給される。
【0106】
アンテナ46,51は、例えばダイポールアンテナであり、第6の実施形態で説明したように、共振器44を,52を用いることにより、小型化が可能である。もちろん、アンテナ46,51は第7の実施形態で説明したループアンテナであってもよい。
【0107】
このように、第8の実施形態では、送信器40内に、信号源とアンテナ46との間に共振器44を設け、受信器50内に、アンテナ51とLNA33との間に共振器52を設ける。そのため、送信器40および受信器50を小型化できる。
【0108】
この送受信システムは、例えば無線ICタグやチップ間通信に適用することができる。また、環境に存在する電磁エネルギーを用いた発電、いわゆるエネルギーハーベストに用いることもできる。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0110】
1 シリコン基板
2a〜2d p型拡散層
3 SiO
4a〜4d コンタクト
5a〜5d 配線
6,6h,6v,6va,6vb 分離層
7 溝
8 空乏層領域
9,9h,9v ゲート電極
10 半導体領域
20,30 アンテナシステム
22 ダイポールアンテナ
22a,22b 導体
32 ループアンテナ
40 送信器
50 受信器
21,31,45,52 差動型共振器
100〜104 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板に、互いに離間して形成される複数の音響波伝播層と、
前記半導体基板に形成され、前記複数の音響波伝播層を互いに電気的に分離するが、音響波は通過させる分離層と、
前記半導体基板に形成され、前記複数の音響波伝播層内に前記音響波を閉じ込めるように形成される音響波反射層と、
前記複数の音響波伝播層の1つに形成され、第1の差動信号が入力または出力される第1のコンタクトと、
前記複数の音響波伝播層の他の1つに形成され、前記第1の差動信号とは位相が異なる第2の差動信号が入力または出力される第2のコンタクトと、を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
所定の方向に沿って形成される偶数個の前記音響波伝播層を備え、
偶数番目の前記音響波伝播層には、前記第1の差動信号が入力または出力される前記第1のコンタクトが形成され、
奇数番目の前記音響波伝播層には、前記第2の差動信号が入力または出力される前記第2のコンタクトが形成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の音響波伝播層は、第1の方向およびこれと略直交する第2の方向に沿って、マトリクス状に前記半導体基板に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の音響波伝播層は所定の方向に沿って形成され、両端の音響波伝播層の幅は、他の音響波伝播層の幅の略1/2であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記音響波伝播層は、第1の導電型の不純物が注入された半導体層であり、
前記分離層は、前記第1の導電型とは異なる第2の不純物が注入された半導体層であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
第1の差動信号と、前記第1の差動信号とは位相が異なる第2の差動信号と、が入力または出力される共振器と、
前記第1の差動信号を増幅して前記共振器にフィードバックする第1の増幅器と、
前記第2の差動信号を増幅して前記共振器にフィードバックする第2の増幅器と、を備え、
前記共振器は、
半導体基板と、
前記半導体基板に、互いに離間して形成される複数の音響波伝播層と、
前記半導体基板に形成され、前記複数の音響波伝播層を互いに電気的に分離するが、音響波は通過させる分離層と、
前記半導体基板に形成され、前記複数の音響波伝播層内に前記音響波を閉じ込めるように形成される音響波反射層と、
前記複数の音響波伝播層の1つに形成され、前記第1の差動信号が入力または出力される第1のコンタクトと、
前記複数の音響波伝播層の他の1つに形成され、前記第2の差動信号が入力または出力される第2のコンタクトと、を有することを特徴とする発振器。
【請求項7】
アンテナと、
前記アンテナで送受信する信号を増幅する共振器と、を備え、
前記共振器は、
半導体基板と、
前記半導体基板に、互いに離間して形成される複数の音響波伝播層と、
前記半導体基板に形成され、前記複数の音響波伝播層を互いに電気的に分離するが、音響波は通過させる分離層と、
前記半導体基板に形成され、前記複数の音響波伝播層内に前記音響波を閉じ込めるように形成される音響波反射層と、
前記複数の音響波伝播層のうちの1つに形成され、第1の差動信号が入力または出力される第1のコンタクトと、
前記複数の音響波伝播層の他の1つに形成され、前記第1の差動信号とは位相が異なる第2の差動信号が入力または出力される第2のコンタクトと、
前記複数の音響波伝播層の1つに形成され、前記アンテナと接続される第3のコンタクトと、
を有することを特徴とするアンテナシステム。
【請求項8】
前記アンテナは、第1および第2の導体を有し、
前記第3のコンタクトは前記複数の音響波伝播層のうちの第1の音響波伝播層に形成されて、前記第1の導体に接続され、
前記共振器は、前記音響波伝播層のうちの第2の音響波伝播層に形成され、前記第2の導体と接続される第4のコンタクトを有することを特徴とする請求項7に記載のアンテナシステム。
【請求項9】
送信器と、
前記送信器が送信した信号を受信する受信器と、を備え、
前記送信器は、
入力信号を、第1の差動信号と、前記第1の差動信号とは位相が異なる第2の差動信号を含む送信信号に変換する第1の共振器と、
前記送信信号を前記受信器に送信する第1のアンテナと、を備え、
前記受信器は、
前記送信信号を受信する第2のアンテナと、
前記受信された送信信号を単相信号に変換する第2の共振器と、を備え、
前記第1の共振器は、
第1の半導体基板と、
前記第1の半導体基板に、互いに離間して形成される複数の第1の音響波伝播層と、
前記第1の半導体基板に形成され、前記複数の第1の音響波伝播層を互いに電気的に分離するが、音響波は通過させる第1の分離層と、
前記第1の半導体基板に形成され、前記複数の第1の音響波伝播層内に前記音響波を閉じ込めるように形成される第1の音響波反射層と、
前記複数の第1の音響波伝播層の1つに形成され、前記入力信号が入力される第1のコンタクトと、
前記複数の第1の音響波伝播層の他の1つに形成され、前記第1の差動信号が出力される第2のコンタクトと、
前記複数の第1の音響波伝播層の他の1つに形成され、前記第2の差動信号が出力される第3のコンタクトと、を有し、
前記第2の共振器は、
第2の半導体基板と、
前記第2の半導体基板に、互いに離間して形成される複数の第2の音響波伝播層と、
前記第2の半導体基板に形成され、前記複数の第2の音響波伝播層を互いに電気的に分離するが、音響波は通過させる第2の分離層と、
前記2の半導体基板に形成され、前記複数の第2の音響波伝播層内に前記音響波を閉じ込めるように形成される第2の音響波反射層と、
前記複数の第2の音響波伝播層の1つに形成され、前記第1の差動信号が入力される第4のコンタクトと、
前記複数の第2の音響波伝播層の他の1つに形成され、前記第2の差動信号が入力される第5のコンタクトと、
前記複数の第2の音響波伝播層の他の1つに形成され、前記単相信号が出力される第6のコンタクトと、を有することを特徴とする送受信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−9192(P2013−9192A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140978(P2011−140978)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】