半導体装置、表示モジュール、及び半導体装置の製造方法
【課題】 絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る半導体装置、表示モジュール、及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体装置10は、有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板1に配線パターン2・3を有して、半導体チップ4が実装されており、液晶表示パネル21及びPW基板30と異方性導電接着剤11にて電気的に接続される。絶縁フィルムの少なくとも片方の表面にシリコンカップリング剤31にて処理がされている。シリコンカップリング剤の構成元素であるシリコン(Si)は、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在する。
【解決手段】 半導体装置10は、有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板1に配線パターン2・3を有して、半導体チップ4が実装されており、液晶表示パネル21及びPW基板30と異方性導電接着剤11にて電気的に接続される。絶縁フィルムの少なくとも片方の表面にシリコンカップリング剤31にて処理がされている。シリコンカップリング剤の構成元素であるシリコン(Si)は、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COF(Chip On FPC,Chip On Film) と呼ばれる、有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板に配線パターンを有し、該配線パターンに半導体チップが接続される半導体装置、表示モジュール、及び半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶モジュール120では、図8に示すように、液晶表示パネル121に、配線パターン102・103を形成した有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板101上に半導体チップ104を接続した半導体装置であるCOF(Chip On FPC,Chip On Film))110が、異方性導電接着剤(ACF:Anisotropic Conductive Film)111にて接着され、実装されている。
【特許文献1】特開平6−157875号公報(1994年6月7日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の半導体装置、表示モジュール、及び半導体装置の製造方法では、絶縁フィルムからなる基板101と異方性導電接着剤111との密着強度が低く、実装後の機械的な応力により、基板101と異方性導電接着剤111との接着部に剥れが発生する虞があった。
【0004】
このため、上記接着部の剥れの発生による電気的不具合の発生を防止するために、従来では、図8に示すように、補強剤112・113を液晶表示パネル121との接合部周辺に追加して塗布する必要があり、表示モジュールを製造する上で、大きなコスト増となっているという問題点を有している。
【0005】
なお、補強剤の密着性を高めるために、例えば特許文献1では、補強剤として、エポキシ樹脂、ロジンエステル、及び可溶性のポリイミドシロキサンからなる、有機溶剤に高い溶解性を有するポリイミドシクロヘキサン溶液組成物を用いることにより、容易に塗布、乾燥及び硬化ができるとしている。
【0006】
しかしながら、この方法では、所詮、追加の補強剤112・113を前提としているので、本質的な解決にはなっていない。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る半導体装置、表示モジュール、及び半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体装置は、上記課題を解決するために、有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板に配線パターンを有して、半導体チップが実装される半導体装置において、
上記絶縁フィルムの少なくとも片方の表面にシリコンカップリング剤処理がされていると共に、上記シリコンカップリング剤の構成元素であるシリコン(Si)は、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在することを特徴としている。
【0009】
上記の発明によれば、有機物からなる絶縁フィルムの表面は、シリコンカップリング剤にて表面処理されている。したがって、半導体装置の配線パターンと外部回路基板の配線とを異方性導電接着剤を用いて電気的に接続したときに、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性が向上する。その波及効果として、剥れによる電気的不具合を低減できると共に、追加の補強剤の塗布する必要がなく、コスト低減を図ることができる。
【0010】
また、本発明の半導体装置では、前記シリコンカップリング剤の構成元素であるシリコン(Si)は、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在している。
【0011】
これにより、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を確実に向上させることができる。
【0012】
この結果、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る半導体装置を提供することができる。
【0013】
また、本発明の半導体装置では、前記絶縁フィルムは、ポリイミドからなっていることが好ましい。
【0014】
一般に、半導体装置の基板は、高耐熱性を有するポリイミドにてなる絶縁フィルムが使用される場合が多い。一方、ポリイミドと、例えばエポキシ樹脂が多用される異方性導電接着剤との密着性はあまりよくない。したがって、ポリイミドからなる絶縁フィルムをシリコンカップリング剤にて表面処理することによって、密着性向上効果が高いものとなる。
【0015】
また、本発明の半導体装置では、前記基板には、各種機能の半導体チップが搭載可能である。例えば、液晶表示駆動用、システム用、又はメモリ用等の各種機能の半導体チップである。
【0016】
これにより、半導体チップの機能の種類を問わず、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の半導体装置では、前記基板には、複数の半導体チップが搭載されていることが可能である。
【0018】
これにより、複数の半導体チップが搭載された半導体装置においても、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の半導体装置では、前記半導体チップに形成されているバンプ電極は金(Au)にてなる一方、前記基板上の配線パターンは錫(Sn)又は錫(Sn)メッキにてなっていることが好ましい。
【0020】
これにより、半導体チップのバンプ電極と基板上の配線パターンとの接合方式が、金(Au)−錫(Sn)の合金接合によって行われるので、接合強度が高まる。
【0021】
また、本発明の半導体装置では、前記半導体チップに形成されているバンプ電極は金(Au)にてなると共に、前記基板上の配線パターンも金(Au)又は金(Au)メッキにてなっていることが好ましい。
【0022】
これにより、半導体チップのバンプ電極と基板上の配線パターンとの接合方式が、金(Au)−金(Au)の接合によって行われるので、伝送効率が向上する。
【0023】
また、本発明の半導体装置では、前記基板には、半導体チップに加えて、抵抗、コンデンサ、LED等の電子部品が搭載されていることが好ましい。
【0024】
これにより、半導体チップに加えて、抵抗、コンデンサ、LED等の電子部品が搭載された半導体装置において、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上させることができる。
【0025】
また、本発明の表示モジュールは、上記課題を解決するために、前記記載の半導体装置を用いた表示モジュールであって、表示パネルと上記半導体装置とは異方性導電接着剤にて電気的に接続されていることを特徴としている。
【0026】
上記の発明によれば、表示モジュールは、表示パネルと半導体装置とが異方性導電接着剤にて電気的に接続されていると共に、この半導体装置は、有機物からなる絶縁フィルムの表面がシリコンカップリング剤にて表面処理されている。
【0027】
したがって、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る表示モジュールを提供することができる。
【0028】
また、本発明の表示モジュールでは、前記表示パネルは、液晶表示パネルであることが好ましい。
【0029】
これにより、液晶表示パネルに半導体装置を接合する場合に、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る液晶表示モジュールを提供することができる。
【0030】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、上記課題を解決するために、有機物からなる絶縁フィルムを、構成元素であるシリコン(Si)が、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在するシリコンカップリング剤にて表面処理する工程と、有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板に配線パターンを形成し、かつ半導体チップを実装する工程とを含むことを特徴としている。なお、絶縁フィルムへの表面処理は、絶縁フィルムの表面又は裏面のいずれか一方、又はこれらの両方の処理であってよい。また、先に、基板に半導体チップを実装した後、有機物からなる絶縁フィルムをシリコンカップリング剤にて表面処理することも可能である。
【0031】
上記の発明によれば、半導体装置を製造するときには、有機物からなる絶縁フィルムをシリコンカップリング剤にて表面処理した後、有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板に配線パターンを形成し、かつ半導体チップを実装する。また、シリコンカップリング剤は、構成元素であるシリコン(Si)が、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在する。
【0032】
これにより、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の半導体装置は、以上のように、絶縁フィルムの少なくとも片方の表面にシリコンカップリング剤処理がされていると共に、上記シリコンカップリング剤の構成元素であるシリコン(Si)は、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在するものである。
【0034】
それゆえ、半導体装置の配線パターンと外部回路基板の配線とを異方性導電接着剤を用いて電気的に接続したときに、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性が向上する。その波及効果として、剥れによる電気的不具合を低減できると共に、追加の補強剤の塗布する必要がなく、コスト低減を図ることができる。
【0035】
この結果、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る半導体装置を提供することができるという効果を奏する。
【0036】
また、本発明の表示モジュールは、以上のように、上記記載の半導体装置を用いた表示モジュールであって、表示パネルと上記半導体装置とは異方性導電接着剤にて電気的に接続されているものである。
【0037】
それゆえ、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る表示モジュールを提供することができるという効果を奏する。
【0038】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、以上のように、有機物からなる絶縁フィルムを、構成元素であるシリコン(Si)が、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在するシリコンカップリング剤にて表面処理する工程と、
有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板に配線パターンを形成し、かつ半導体チップを実装する工程とを含む方法である。
【0039】
それゆえ、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る半導体装置の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の一実施形態について図1ないし図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0041】
本実施の形態の表示モジュールとしての液晶モジュール20は、図1(a)に示すように、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)基板21a及びカラーフィルタ基板21bからなる表示パネルとしての液晶表示パネル21に、半導体装置10が実装されてなっている。また、上記半導体装置10における液晶表示パネル21と反対側には、PW(Printed Wiring)基板30が取り付けられている。なお、これら液晶表示パネル21及びPW基板30は、本発明の外部回路基板としての機能を有している。
【0042】
上記半導体装置10は、上記液晶表示パネル21を駆動するためのものであり、図2(a)(b)に示すように、配線パターン2・3を形成した有機物からなる絶縁フィルムにてなる基板1上に半導体チップ4が接続されてなっており、いわゆるCOF(Chip On FPC,Chip On Film)にてなっている。すなわち、COFでは、フレキシブルフィルム上に、直接、半導体チップ4を実装する。
【0043】
上記配線パターン2・3は、例えば、銅(Cu)からなる配線に錫(Sn)メッキしてなっている。また、半導体チップ4には、金(Au)にてなるバンプ電極5が設けられている。そして、このバンプ電極5と上記配線パターン2・3とが接続されることにより、両者が電気的に接続されるようになっている。
【0044】
すなわち、COFの半導体チップ4上のバンプ電極5と絶縁フィルム上の配線パターン2・3との接合するときには、錫メッキを施した配線パターン2・3と半導体チップ4上の金(Au)のバンプ電極5とを相対するように位置合わせし、半導体チップ4のバンプ電極5の形成面と反対側の面、又は絶縁フィルムの配線パターン2・3の形成面と反対側の面から、一定時間加熱圧着を施し、金(Au)−錫(Sn)の合金によって接合する。
【0045】
また、本実施の形態では、例えば、バンプ電極5と絶縁フィルム上の配線パターン2・3を接合した後、半導体チップ4と絶縁フィルムとの間にできる隙間及び半導体チップ4の周辺に、樹脂からなるアンダーフィル材6を注入する。これにより、半導体装置10の耐湿性及び機械的強度の向上を図っている。
【0046】
さらに、必要に応じて、絶縁フィルムの外部接続端子以外、及び半導体チップ4とその外周部上以外の絶縁フィルムに、絶縁性材料からなるソルダーレジスト7を塗布する。これにより、導電性異物が、直接、配線パターン2・3上に付着することによるショートを防止することができる。
【0047】
なお、上記半導体装置10は、製造過程においては、図2(a)に示す連続する絶縁フィルムに連続して複数個が設けられている。したがって、同図(a)に示すように、この絶縁フィルムにおけるユーザ外形8にて切り出すことにより、絶縁フィルムからなる基板1に半導体チップ4が搭載された1個の半導体装置10となる。
【0048】
ところで、本実施の形態の液晶モジュール20では、図1(a)に示すように、上記半導体装置10は、液晶表示パネル21及びPW基板30に対して異方性導電接着剤(ACF:Anisotropic Conductive Film)11を用いて接着することにより、電気的に接続されている。この異方性導電接着剤11は、厚さ15〜45μmの接着性フィルムの中に、直径3〜15μmの導電粒子を分散させたものである。したがって、導電粒子がフィルム中に分散しているために、異方性導電接着剤11自体は絶縁物である。しかし、この異方性導電接着剤11を回路パターンの間に挟み、加熱・加圧することにより、上下の電極間の導通をとり、隣り合う電極間を絶縁し、上下の接着を同時に行うことができる。
【0049】
ここで、本実施の形態では、前述したように、上記基板1を構成する絶縁フィルムは、有機物からなっていると共に、図1(b)に示すように、この基板1の表面は、シリコンカップリング剤31にて表面処理されている。
【0050】
詳細には、本実施の形態では、基板1を構成する絶縁フィルムは、例えばポリイミド等の有機物からなっている。このポリイミドは、主鎖にイミド結合を有するプラスチックであり、最も耐熱性の優れたプラスチックの一つである。なお、基板1を構成する絶縁フィルムは、必ずしもこれに限らず、他の有機物からなっていてもよい。
【0051】
一方、シリコンカップリング剤31は、本実施の形態では、例えば、構成元素として、SiOn、Si(OH)n、SiOn(OH)n等のSiXの構造を有するものが使用される。なお、nの個数は可変である。
【0052】
すなわち、一般に、有機物からなる絶縁フィルムの表面では、水(H2O)分子の物理吸着(ファンデアワールス結合)及び化学吸着(水素結合)が起こるので、絶縁フィルムの表面には水の多分子層が存在する。このため、絶縁フィルムの表面は、親水基となっている。したがって、この親水基となっている絶縁フィルムの表面に、例えばエポキシ樹脂系の異方性導電接着剤11を接触させたときに、エポキシ樹脂の水酸基(−OH)と表面に吸着した水分子との間で結合が起こり、エポキシ樹脂の接着性は低下する。したがって、迅速に、絶縁フィルムの表面から水の多分子層を除去し、絶縁フィルムの表面を疎水性にするために、シリコンカップリング剤31によって絶縁フィルムの表面処理を行う。このように、絶縁フィルムに、シリコンカップリング剤31を塗布する等の表面処理を行うことによって、シリコンカップリング剤31は絶縁フィルムの表面の水酸基(−OH)と反応し、絶縁フィルムの表面を疎水基にする。この結果、絶縁フィルムとエポキシ樹脂系の異方性導電接着剤11との接着力が向上する。
【0053】
本実施の形態では、上記シリコンカップリング剤31の構成元素であるシリコン(Si)は、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在することが好ましい。すなわち、シリコンカップリング剤31は、溶剤とを含んでおり、乾燥させることによって、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在するものとなる。なお、上記シリコンカップリング剤31の構成元素であるシリコン(Si)は、絶縁フィルムの表面に1.0〜6.0atomic%(表面元素濃度)存在することがより好ましい。
【0054】
このシリコンカップリング剤31の存在により、後述する〔実施例〕に示すように、従来に比べて、異方性導電接着剤11と基板1を構成する絶縁フィルムとの付着強度が向上する。したがって、例えば、液晶表示パネル21に対して半導体装置10の部分を曲げた場合等においても、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との剥れを防止することができる。また、図7に示すように、絶縁フィルムの表面にシリコンカップリング剤31を0.4atomic%(表面元素濃度)以下存在させたものは、表面処理していない場合と同様に、密着性向上が見られない。また、シリコンカップリング剤31を13atomic%(表面元素濃度)以上存在させると接合強度が低下する。
【0055】
次に、本実施の形態の半導体装置10及び液晶モジュール20の製造方法について説明する。
【0056】
まず、絶縁フィルムに対して、シリコンカップリング剤31にて表面処理を行う。表面処理を行う場合には、例えば、絶縁フィルムの両面からシリコンカップリング剤31を吹き付け塗装し、その後、乾燥させる。乾燥は、過熱を行うことも可能である。なお、必ずしも絶縁フィルムの両面に限らず、一方の表面だけであってもよい。これにより、シリコンカップリング剤31が絶縁フィルムに付着して表面処理される。また、塗装についても、吹き付け塗装に限らず、ハケ塗り、ローラ塗装等の一般的な塗装で足りる。
【0057】
次いで、図2(a)(b)に示すように、上記有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板1に配線パターン2・3を形成し、かつこれら配線パターン2・3に配線パターン2・3を接続して半導体装置10を形成する。なお、この半導体装置10の形成工程は、連続した絶縁フィルム上にて行われ、最終的には、ユーザ外形8にて切り出され、個々の半導体装置10となる。
【0058】
次いで、図1(a)に示すように、半導体装置10の配線パターン2と液晶表示パネル21とを異方性導電接着剤11を用いて電気的に接続する。また、半導体装置10の配線パターン3とPW基板30との接続も行われる。これにより、液晶モジュール20が完成する。
【0059】
本実施の形態の液晶モジュール20では、シリコンカップリング剤31による表面処理により、異方性導電接着剤11と基板1を構成する絶縁フィルムとの付着強度が向上している。この結果、半導体装置10の絶縁フィルムを従来よりも曲げても、両者が容易に剥れることはない。これにより、基板1と異方性導電接着剤11とが剥れることによる電気的不具合が低減できると共に、従来必要であった追加の補強剤も塗布する必要がない。
【0060】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、液晶モジュール20に設けられる半導体装置10は、半導体チップ4が1個であるかのように説明したが、必ずしもこれに限らず、例えば、図3に示すように、基板1上に複数の半導体チップ41・42が搭載された半導体装置40であってもよい。すなわち、半導体チップ4は、2、3個以上であってもよい。
【0061】
また、これら複数の半導体チップ41・42についても、必ずしも同一の機能を有するものではなく、例えば、液晶表示駆動用、システム用、又はメモリ用等の各種機能の半導体チップであってもよい。具体的には、液晶駆動ドライバ用の半導体チップ41、液晶駆動コントローラ用の半導体チップ42等である。
【0062】
さらに、半導体装置40における基板1上には、半導体チップ41・42のみでなく、必要に応じて、例えば抵抗、コンデンサ、LED(Light Emitting Diode) 等の電子部品43も搭載されていてもよい。
【0063】
また、上記の説明では、配線パターン2・3は、例えば、錫(Sn)又は錫(Sn)メッキにてなっているとしていたが、必ずしもこれに限らず、例えば、図4に示すように、配線パターン2・3を、例えば、金(Au)又は金(Au)メッキにてなるとすることも可能である。
【0064】
これにより、金(Au)又は金(Au)メッキからなる配線パターン2・3と、金(Au)からなるバンプ電極5との同種の金(Au)による接合が可能となるので、伝送効率が向上する。
【0065】
このように、本実施の形態の半導体装置10は、有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板1に配線パターン2・3を有して、半導体チップ4が実装されており、かつ液晶表示パネル21及びPW基板30と異方性導電接着剤11にて電気的に接続される。
【0066】
そして、本実施の形態では、有機物からなる絶縁フィルムの表面は、シリコンカップリング剤31にて表面処理されている。したがって、半導体装置10の配線パターン2・3と液晶表示パネル21及びPW基板30の各配線とを異方性導電接着剤11を用いて電気的に接続したときに、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との密着性が向上する。また、その波及効果として、剥れによる電気的不具合を低減できると共に、追加の補強剤の塗布する必要がなく、コスト低減を図ることができる。
【0067】
この結果、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る半導体装置10を提供することができる。
【0068】
また、本実施の形態の半導体装置10では、絶縁フィルムは、ポリイミドからなっている。したがって、ポリイミドからなる絶縁フィルムをシリコンカップリング剤にて表面処理することによって、密着性向上効果が高いものとなる。
【0069】
また、本実施の形態の半導体装置10では、シリコンカップリング剤31の構成元素であるシリコン(Si)は、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在する。これにより、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との密着性を確実に向上させることができる。
【0070】
また、本実施の形態の半導体装置40では、基板1には、各種機能の半導体チップ4が搭載可能である。例えば、液晶表示駆動用、システム用、又はメモリ用等の各種機能の半導体チップ41・42である。
【0071】
これにより、半導体チップ41・42の機能の種類を問わず、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との密着性を向上させることができる。
【0072】
また、本実施の形態の半導体装置40では、基板1には、複数の半導体チップ41・42が搭載されていることが可能である。
【0073】
これにより、複数の半導体チップ41・42が搭載された半導体装置40においても、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との密着性を向上させることができる。
【0074】
また、本実施の形態の半導体装置10・40では、半導体チップ4・42・42に形成されているバンプ電極は金(Au)にてなる一方、基板1上の配線パターン2・3は錫(Sn)又は錫(Sn)メッキにてなっていることが好ましい。
【0075】
これにより、半導体チップ4・42・42のバンプ電極5と基板1上の配線パターン2・3との接合方式が、金(Au)−錫(Sn)の合金接合によって行われるので、接合強度が高まる。
【0076】
また、本実施の形態の半導体装置10・40では、半導体チップ4・42・42に形成されているバンプ電極5は金(Au)にてなると共に、基板1上の配線パターン2・3も金(Au)又は金(Au)メッキにてなっていることが好ましい。
【0077】
これにより、半導体チップ4・42・42のバンプ電極5と基板1上の配線パターン2・3との接合方式が、金(Au)−金(Au)の接合によって行われるので、接合強度が高まる。
【0078】
また、本実施の形態の半導体装置40では、基板1には、半導体チップ42・42に加えて、抵抗、コンデンサ、LED等の電子部品43が搭載されているとすることができる。
【0079】
これにより、半導体チップ42・42に加えて、抵抗、コンデンサ、LED等の電子部品43が搭載された半導体装置40において、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との密着性を向上させることができる。
【0080】
また、本実施の形態の液晶モジュール20は、液晶表示パネル21と半導体装置10とが異方性導電接着剤11にて電気的に接続されていると共に、この半導体装置10は、有機物からなる絶縁フィルムの表面がシリコンカップリング剤31にて表面処理されている。
【0081】
したがって、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る液晶モジュール20を提供することができる。
【0082】
また、本実施の形態の液晶モジュール20を製造するときには、有機物からなる絶縁フィルムをシリコンカップリング剤31にて表面処理した後、有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板1に配線パターン2・3を形成し、かつ該配線パターン2・3に半導体チップ4を接続して半導体装置10を形成する。このとき、シリコンカップリング剤31は、構成元素であるシリコン(Si)が、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在する。なお、先に、半導体装置10を形成した後、有機物からなる絶縁フィルムをシリコンカップリング剤31にて表面処理することも可能である。
【0083】
その後、半導体装置10の配線パターン2・3と液晶表示パネル21とを異方性導電接着剤11を用いて電気的に接続する。
【0084】
これにより、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る液晶モジュール20の製造方法を提供することができる。
【実施例】
【0085】
〔実施例1〕
前記実施の形態に記載した構成について、効果を確認するために、検証実験を行ったので、以下に説明する。
【0086】
最初に、シリコンカップリング剤31にて表面処理した絶縁フィルムと異方性導電接着剤11との密着強度について検証した。
【0087】
シリコンカップリング剤31は、SiXを溶剤に混入したものを使用し、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在するようにした。
【0088】
密着強度の測定においては、図5に示すように、まず、液晶表示パネル21のTFT基板21aに異方性導電接着剤11を挟んで、基板1の構成材料である絶縁フィルムを接着した。その後、引っ張り角度を90度にして、引っ張り治具50にて上記絶縁フィルムを引っ張った。
【0089】
この結果、図6(a)に示すように、60℃/90%RHにおける放置時間0時間後、100時間後、300時間後、500時間後のいずれにおいても、図6(b)に示すシリコンカップリング剤31を塗布処理していないCOFに比べ、密着強度が向上していることが分かった。全体としては、密着性が約88%(316/168=1.88)向上した。なお、上記図6(a)(b)に示す異方性導電接着剤11の接合強度の値は、絶縁フィルムの幅の単位長さを基準にした値であり、各サンプルにおいて、複数試料のうちの最小値を示している。
【0090】
また、図7に、シリコンカップリング剤31の添加量による密着強度測定結果を示した。この結果、絶縁フィルムの表面にシリコンカップリング剤31を0.4atomic%(表面元素濃度)以下存在したものでは、表面処理していない場合と同様に、密着性向上が見られなかった。また、シリコンカップリング剤31を13atomic%(表面元素濃度)以上存在させると接合強度が低下した。
〔実施例2〕
次に、液晶モジュール20の製造に際しては、溶剤による洗浄が行われるので、この溶剤を対象とする耐溶剤性についても確認実験を行った。
【0091】
溶剤としては、洗浄に使用されるイソプロピルアルコールとアセトンとを用いた。試験は、シリコンカップリング剤31にて表面処理した絶縁フィルムを、常温でこれらイソプロピルアルコールとアセトンに1時間、浸漬した後、目視観察を行った。なお、この場合も、シリコンカップリング剤31は、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在するようにした。
【0092】
その結果、表1に示すように、シリコンカップリング剤31にて表面処理した絶縁フィルムは、表面処理しない絶縁フィルムと同様に、剥れ、膨れ、溶解、クラックについて、異常がなかった。
【0093】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、COF(Chip On FPC,Chip On Film) と呼ばれる、有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板に配線パターンを有し、該配線パターンに半導体チップが接続される半導体装置、表示モジュール、及び半導体装置の製造方法に適用できる。
【0095】
表示モジュールとしては、例えば、アクティブマトリクス型等の液晶表示モジュールに用いることができると共に、電気泳動型ディスプレイ、ツイストボール型ディスプレイ、微細なプリズムフィルムを用いた反射型ディスプレイ、デジタルミラーデバイス等の光変調素子を用いたディスプレイの他、発光素子として、有機EL発光素子、無機EL発光素子、LED(Light Emitting Diode) 等の発光輝度が可変の素子を用いたディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイにも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】(a)は本発明における液晶モジュールの実施の一形態を示す断面図であり、(b)は上記液晶モジュールに実装される半導体装置の基板に使用される、シリコンカップリング剤にて表面処理された絶縁フィルムを示す断面図である。
【図2】(a)は上記COFにてなる半導体装置を示す平面図であり、(b)は上記COFにてなる半導体装置を示す断面図である。
【図3】上記基板に複数の半導体チップ及び電子部品を搭載した半導体装置を示す断面図である。
【図4】上記半導体装置の要部を示す断面図である。
【図5】上記シリコンカップリング剤にて表面処理された絶縁フィルムの密着強度測定方法を示す断面図である。
【図6】(a)は上記シリコンカップリング剤にて表面処理された絶縁フィルムの密着強度測定結果を示すグラフであり、(b)は上記シリコンカップリング剤にて表面処理しない場合の絶縁フィルムの密着強度測定結果を示すグラフである。
【図7】上記シリコンカップリング剤の添加量による密着強度測定結果を示すグラフである。
【図8】従来の液晶モジュールを示す断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1 基板
2 配線パターン
3 配線パターン
4 半導体チップ
5 バンプ電極
10 半導体装置
11 異方性導電接着剤
20 液晶モジュール(表示モジュール)
21 液晶表示パネル(表示パネル、外部回路基板)
21a TFT基板
21b カラーフィルタ基板
30 PW基板(外部回路基板)
31 シリコンカップリング剤
40 半導体装置
41 半導体チップ
42 半導体チップ
43 電子部品
50 引張り治具
【技術分野】
【0001】
本発明は、COF(Chip On FPC,Chip On Film) と呼ばれる、有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板に配線パターンを有し、該配線パターンに半導体チップが接続される半導体装置、表示モジュール、及び半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶モジュール120では、図8に示すように、液晶表示パネル121に、配線パターン102・103を形成した有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板101上に半導体チップ104を接続した半導体装置であるCOF(Chip On FPC,Chip On Film))110が、異方性導電接着剤(ACF:Anisotropic Conductive Film)111にて接着され、実装されている。
【特許文献1】特開平6−157875号公報(1994年6月7日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の半導体装置、表示モジュール、及び半導体装置の製造方法では、絶縁フィルムからなる基板101と異方性導電接着剤111との密着強度が低く、実装後の機械的な応力により、基板101と異方性導電接着剤111との接着部に剥れが発生する虞があった。
【0004】
このため、上記接着部の剥れの発生による電気的不具合の発生を防止するために、従来では、図8に示すように、補強剤112・113を液晶表示パネル121との接合部周辺に追加して塗布する必要があり、表示モジュールを製造する上で、大きなコスト増となっているという問題点を有している。
【0005】
なお、補強剤の密着性を高めるために、例えば特許文献1では、補強剤として、エポキシ樹脂、ロジンエステル、及び可溶性のポリイミドシロキサンからなる、有機溶剤に高い溶解性を有するポリイミドシクロヘキサン溶液組成物を用いることにより、容易に塗布、乾燥及び硬化ができるとしている。
【0006】
しかしながら、この方法では、所詮、追加の補強剤112・113を前提としているので、本質的な解決にはなっていない。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る半導体装置、表示モジュール、及び半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体装置は、上記課題を解決するために、有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板に配線パターンを有して、半導体チップが実装される半導体装置において、
上記絶縁フィルムの少なくとも片方の表面にシリコンカップリング剤処理がされていると共に、上記シリコンカップリング剤の構成元素であるシリコン(Si)は、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在することを特徴としている。
【0009】
上記の発明によれば、有機物からなる絶縁フィルムの表面は、シリコンカップリング剤にて表面処理されている。したがって、半導体装置の配線パターンと外部回路基板の配線とを異方性導電接着剤を用いて電気的に接続したときに、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性が向上する。その波及効果として、剥れによる電気的不具合を低減できると共に、追加の補強剤の塗布する必要がなく、コスト低減を図ることができる。
【0010】
また、本発明の半導体装置では、前記シリコンカップリング剤の構成元素であるシリコン(Si)は、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在している。
【0011】
これにより、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を確実に向上させることができる。
【0012】
この結果、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る半導体装置を提供することができる。
【0013】
また、本発明の半導体装置では、前記絶縁フィルムは、ポリイミドからなっていることが好ましい。
【0014】
一般に、半導体装置の基板は、高耐熱性を有するポリイミドにてなる絶縁フィルムが使用される場合が多い。一方、ポリイミドと、例えばエポキシ樹脂が多用される異方性導電接着剤との密着性はあまりよくない。したがって、ポリイミドからなる絶縁フィルムをシリコンカップリング剤にて表面処理することによって、密着性向上効果が高いものとなる。
【0015】
また、本発明の半導体装置では、前記基板には、各種機能の半導体チップが搭載可能である。例えば、液晶表示駆動用、システム用、又はメモリ用等の各種機能の半導体チップである。
【0016】
これにより、半導体チップの機能の種類を問わず、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の半導体装置では、前記基板には、複数の半導体チップが搭載されていることが可能である。
【0018】
これにより、複数の半導体チップが搭載された半導体装置においても、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の半導体装置では、前記半導体チップに形成されているバンプ電極は金(Au)にてなる一方、前記基板上の配線パターンは錫(Sn)又は錫(Sn)メッキにてなっていることが好ましい。
【0020】
これにより、半導体チップのバンプ電極と基板上の配線パターンとの接合方式が、金(Au)−錫(Sn)の合金接合によって行われるので、接合強度が高まる。
【0021】
また、本発明の半導体装置では、前記半導体チップに形成されているバンプ電極は金(Au)にてなると共に、前記基板上の配線パターンも金(Au)又は金(Au)メッキにてなっていることが好ましい。
【0022】
これにより、半導体チップのバンプ電極と基板上の配線パターンとの接合方式が、金(Au)−金(Au)の接合によって行われるので、伝送効率が向上する。
【0023】
また、本発明の半導体装置では、前記基板には、半導体チップに加えて、抵抗、コンデンサ、LED等の電子部品が搭載されていることが好ましい。
【0024】
これにより、半導体チップに加えて、抵抗、コンデンサ、LED等の電子部品が搭載された半導体装置において、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上させることができる。
【0025】
また、本発明の表示モジュールは、上記課題を解決するために、前記記載の半導体装置を用いた表示モジュールであって、表示パネルと上記半導体装置とは異方性導電接着剤にて電気的に接続されていることを特徴としている。
【0026】
上記の発明によれば、表示モジュールは、表示パネルと半導体装置とが異方性導電接着剤にて電気的に接続されていると共に、この半導体装置は、有機物からなる絶縁フィルムの表面がシリコンカップリング剤にて表面処理されている。
【0027】
したがって、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る表示モジュールを提供することができる。
【0028】
また、本発明の表示モジュールでは、前記表示パネルは、液晶表示パネルであることが好ましい。
【0029】
これにより、液晶表示パネルに半導体装置を接合する場合に、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る液晶表示モジュールを提供することができる。
【0030】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、上記課題を解決するために、有機物からなる絶縁フィルムを、構成元素であるシリコン(Si)が、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在するシリコンカップリング剤にて表面処理する工程と、有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板に配線パターンを形成し、かつ半導体チップを実装する工程とを含むことを特徴としている。なお、絶縁フィルムへの表面処理は、絶縁フィルムの表面又は裏面のいずれか一方、又はこれらの両方の処理であってよい。また、先に、基板に半導体チップを実装した後、有機物からなる絶縁フィルムをシリコンカップリング剤にて表面処理することも可能である。
【0031】
上記の発明によれば、半導体装置を製造するときには、有機物からなる絶縁フィルムをシリコンカップリング剤にて表面処理した後、有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板に配線パターンを形成し、かつ半導体チップを実装する。また、シリコンカップリング剤は、構成元素であるシリコン(Si)が、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在する。
【0032】
これにより、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の半導体装置は、以上のように、絶縁フィルムの少なくとも片方の表面にシリコンカップリング剤処理がされていると共に、上記シリコンカップリング剤の構成元素であるシリコン(Si)は、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在するものである。
【0034】
それゆえ、半導体装置の配線パターンと外部回路基板の配線とを異方性導電接着剤を用いて電気的に接続したときに、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性が向上する。その波及効果として、剥れによる電気的不具合を低減できると共に、追加の補強剤の塗布する必要がなく、コスト低減を図ることができる。
【0035】
この結果、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る半導体装置を提供することができるという効果を奏する。
【0036】
また、本発明の表示モジュールは、以上のように、上記記載の半導体装置を用いた表示モジュールであって、表示パネルと上記半導体装置とは異方性導電接着剤にて電気的に接続されているものである。
【0037】
それゆえ、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る表示モジュールを提供することができるという効果を奏する。
【0038】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、以上のように、有機物からなる絶縁フィルムを、構成元素であるシリコン(Si)が、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在するシリコンカップリング剤にて表面処理する工程と、
有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板に配線パターンを形成し、かつ半導体チップを実装する工程とを含む方法である。
【0039】
それゆえ、絶縁フィルムからなる基板と異方性導電接着剤との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る半導体装置の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の一実施形態について図1ないし図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0041】
本実施の形態の表示モジュールとしての液晶モジュール20は、図1(a)に示すように、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)基板21a及びカラーフィルタ基板21bからなる表示パネルとしての液晶表示パネル21に、半導体装置10が実装されてなっている。また、上記半導体装置10における液晶表示パネル21と反対側には、PW(Printed Wiring)基板30が取り付けられている。なお、これら液晶表示パネル21及びPW基板30は、本発明の外部回路基板としての機能を有している。
【0042】
上記半導体装置10は、上記液晶表示パネル21を駆動するためのものであり、図2(a)(b)に示すように、配線パターン2・3を形成した有機物からなる絶縁フィルムにてなる基板1上に半導体チップ4が接続されてなっており、いわゆるCOF(Chip On FPC,Chip On Film)にてなっている。すなわち、COFでは、フレキシブルフィルム上に、直接、半導体チップ4を実装する。
【0043】
上記配線パターン2・3は、例えば、銅(Cu)からなる配線に錫(Sn)メッキしてなっている。また、半導体チップ4には、金(Au)にてなるバンプ電極5が設けられている。そして、このバンプ電極5と上記配線パターン2・3とが接続されることにより、両者が電気的に接続されるようになっている。
【0044】
すなわち、COFの半導体チップ4上のバンプ電極5と絶縁フィルム上の配線パターン2・3との接合するときには、錫メッキを施した配線パターン2・3と半導体チップ4上の金(Au)のバンプ電極5とを相対するように位置合わせし、半導体チップ4のバンプ電極5の形成面と反対側の面、又は絶縁フィルムの配線パターン2・3の形成面と反対側の面から、一定時間加熱圧着を施し、金(Au)−錫(Sn)の合金によって接合する。
【0045】
また、本実施の形態では、例えば、バンプ電極5と絶縁フィルム上の配線パターン2・3を接合した後、半導体チップ4と絶縁フィルムとの間にできる隙間及び半導体チップ4の周辺に、樹脂からなるアンダーフィル材6を注入する。これにより、半導体装置10の耐湿性及び機械的強度の向上を図っている。
【0046】
さらに、必要に応じて、絶縁フィルムの外部接続端子以外、及び半導体チップ4とその外周部上以外の絶縁フィルムに、絶縁性材料からなるソルダーレジスト7を塗布する。これにより、導電性異物が、直接、配線パターン2・3上に付着することによるショートを防止することができる。
【0047】
なお、上記半導体装置10は、製造過程においては、図2(a)に示す連続する絶縁フィルムに連続して複数個が設けられている。したがって、同図(a)に示すように、この絶縁フィルムにおけるユーザ外形8にて切り出すことにより、絶縁フィルムからなる基板1に半導体チップ4が搭載された1個の半導体装置10となる。
【0048】
ところで、本実施の形態の液晶モジュール20では、図1(a)に示すように、上記半導体装置10は、液晶表示パネル21及びPW基板30に対して異方性導電接着剤(ACF:Anisotropic Conductive Film)11を用いて接着することにより、電気的に接続されている。この異方性導電接着剤11は、厚さ15〜45μmの接着性フィルムの中に、直径3〜15μmの導電粒子を分散させたものである。したがって、導電粒子がフィルム中に分散しているために、異方性導電接着剤11自体は絶縁物である。しかし、この異方性導電接着剤11を回路パターンの間に挟み、加熱・加圧することにより、上下の電極間の導通をとり、隣り合う電極間を絶縁し、上下の接着を同時に行うことができる。
【0049】
ここで、本実施の形態では、前述したように、上記基板1を構成する絶縁フィルムは、有機物からなっていると共に、図1(b)に示すように、この基板1の表面は、シリコンカップリング剤31にて表面処理されている。
【0050】
詳細には、本実施の形態では、基板1を構成する絶縁フィルムは、例えばポリイミド等の有機物からなっている。このポリイミドは、主鎖にイミド結合を有するプラスチックであり、最も耐熱性の優れたプラスチックの一つである。なお、基板1を構成する絶縁フィルムは、必ずしもこれに限らず、他の有機物からなっていてもよい。
【0051】
一方、シリコンカップリング剤31は、本実施の形態では、例えば、構成元素として、SiOn、Si(OH)n、SiOn(OH)n等のSiXの構造を有するものが使用される。なお、nの個数は可変である。
【0052】
すなわち、一般に、有機物からなる絶縁フィルムの表面では、水(H2O)分子の物理吸着(ファンデアワールス結合)及び化学吸着(水素結合)が起こるので、絶縁フィルムの表面には水の多分子層が存在する。このため、絶縁フィルムの表面は、親水基となっている。したがって、この親水基となっている絶縁フィルムの表面に、例えばエポキシ樹脂系の異方性導電接着剤11を接触させたときに、エポキシ樹脂の水酸基(−OH)と表面に吸着した水分子との間で結合が起こり、エポキシ樹脂の接着性は低下する。したがって、迅速に、絶縁フィルムの表面から水の多分子層を除去し、絶縁フィルムの表面を疎水性にするために、シリコンカップリング剤31によって絶縁フィルムの表面処理を行う。このように、絶縁フィルムに、シリコンカップリング剤31を塗布する等の表面処理を行うことによって、シリコンカップリング剤31は絶縁フィルムの表面の水酸基(−OH)と反応し、絶縁フィルムの表面を疎水基にする。この結果、絶縁フィルムとエポキシ樹脂系の異方性導電接着剤11との接着力が向上する。
【0053】
本実施の形態では、上記シリコンカップリング剤31の構成元素であるシリコン(Si)は、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在することが好ましい。すなわち、シリコンカップリング剤31は、溶剤とを含んでおり、乾燥させることによって、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在するものとなる。なお、上記シリコンカップリング剤31の構成元素であるシリコン(Si)は、絶縁フィルムの表面に1.0〜6.0atomic%(表面元素濃度)存在することがより好ましい。
【0054】
このシリコンカップリング剤31の存在により、後述する〔実施例〕に示すように、従来に比べて、異方性導電接着剤11と基板1を構成する絶縁フィルムとの付着強度が向上する。したがって、例えば、液晶表示パネル21に対して半導体装置10の部分を曲げた場合等においても、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との剥れを防止することができる。また、図7に示すように、絶縁フィルムの表面にシリコンカップリング剤31を0.4atomic%(表面元素濃度)以下存在させたものは、表面処理していない場合と同様に、密着性向上が見られない。また、シリコンカップリング剤31を13atomic%(表面元素濃度)以上存在させると接合強度が低下する。
【0055】
次に、本実施の形態の半導体装置10及び液晶モジュール20の製造方法について説明する。
【0056】
まず、絶縁フィルムに対して、シリコンカップリング剤31にて表面処理を行う。表面処理を行う場合には、例えば、絶縁フィルムの両面からシリコンカップリング剤31を吹き付け塗装し、その後、乾燥させる。乾燥は、過熱を行うことも可能である。なお、必ずしも絶縁フィルムの両面に限らず、一方の表面だけであってもよい。これにより、シリコンカップリング剤31が絶縁フィルムに付着して表面処理される。また、塗装についても、吹き付け塗装に限らず、ハケ塗り、ローラ塗装等の一般的な塗装で足りる。
【0057】
次いで、図2(a)(b)に示すように、上記有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板1に配線パターン2・3を形成し、かつこれら配線パターン2・3に配線パターン2・3を接続して半導体装置10を形成する。なお、この半導体装置10の形成工程は、連続した絶縁フィルム上にて行われ、最終的には、ユーザ外形8にて切り出され、個々の半導体装置10となる。
【0058】
次いで、図1(a)に示すように、半導体装置10の配線パターン2と液晶表示パネル21とを異方性導電接着剤11を用いて電気的に接続する。また、半導体装置10の配線パターン3とPW基板30との接続も行われる。これにより、液晶モジュール20が完成する。
【0059】
本実施の形態の液晶モジュール20では、シリコンカップリング剤31による表面処理により、異方性導電接着剤11と基板1を構成する絶縁フィルムとの付着強度が向上している。この結果、半導体装置10の絶縁フィルムを従来よりも曲げても、両者が容易に剥れることはない。これにより、基板1と異方性導電接着剤11とが剥れることによる電気的不具合が低減できると共に、従来必要であった追加の補強剤も塗布する必要がない。
【0060】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、液晶モジュール20に設けられる半導体装置10は、半導体チップ4が1個であるかのように説明したが、必ずしもこれに限らず、例えば、図3に示すように、基板1上に複数の半導体チップ41・42が搭載された半導体装置40であってもよい。すなわち、半導体チップ4は、2、3個以上であってもよい。
【0061】
また、これら複数の半導体チップ41・42についても、必ずしも同一の機能を有するものではなく、例えば、液晶表示駆動用、システム用、又はメモリ用等の各種機能の半導体チップであってもよい。具体的には、液晶駆動ドライバ用の半導体チップ41、液晶駆動コントローラ用の半導体チップ42等である。
【0062】
さらに、半導体装置40における基板1上には、半導体チップ41・42のみでなく、必要に応じて、例えば抵抗、コンデンサ、LED(Light Emitting Diode) 等の電子部品43も搭載されていてもよい。
【0063】
また、上記の説明では、配線パターン2・3は、例えば、錫(Sn)又は錫(Sn)メッキにてなっているとしていたが、必ずしもこれに限らず、例えば、図4に示すように、配線パターン2・3を、例えば、金(Au)又は金(Au)メッキにてなるとすることも可能である。
【0064】
これにより、金(Au)又は金(Au)メッキからなる配線パターン2・3と、金(Au)からなるバンプ電極5との同種の金(Au)による接合が可能となるので、伝送効率が向上する。
【0065】
このように、本実施の形態の半導体装置10は、有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板1に配線パターン2・3を有して、半導体チップ4が実装されており、かつ液晶表示パネル21及びPW基板30と異方性導電接着剤11にて電気的に接続される。
【0066】
そして、本実施の形態では、有機物からなる絶縁フィルムの表面は、シリコンカップリング剤31にて表面処理されている。したがって、半導体装置10の配線パターン2・3と液晶表示パネル21及びPW基板30の各配線とを異方性導電接着剤11を用いて電気的に接続したときに、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との密着性が向上する。また、その波及効果として、剥れによる電気的不具合を低減できると共に、追加の補強剤の塗布する必要がなく、コスト低減を図ることができる。
【0067】
この結果、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る半導体装置10を提供することができる。
【0068】
また、本実施の形態の半導体装置10では、絶縁フィルムは、ポリイミドからなっている。したがって、ポリイミドからなる絶縁フィルムをシリコンカップリング剤にて表面処理することによって、密着性向上効果が高いものとなる。
【0069】
また、本実施の形態の半導体装置10では、シリコンカップリング剤31の構成元素であるシリコン(Si)は、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在する。これにより、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との密着性を確実に向上させることができる。
【0070】
また、本実施の形態の半導体装置40では、基板1には、各種機能の半導体チップ4が搭載可能である。例えば、液晶表示駆動用、システム用、又はメモリ用等の各種機能の半導体チップ41・42である。
【0071】
これにより、半導体チップ41・42の機能の種類を問わず、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との密着性を向上させることができる。
【0072】
また、本実施の形態の半導体装置40では、基板1には、複数の半導体チップ41・42が搭載されていることが可能である。
【0073】
これにより、複数の半導体チップ41・42が搭載された半導体装置40においても、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との密着性を向上させることができる。
【0074】
また、本実施の形態の半導体装置10・40では、半導体チップ4・42・42に形成されているバンプ電極は金(Au)にてなる一方、基板1上の配線パターン2・3は錫(Sn)又は錫(Sn)メッキにてなっていることが好ましい。
【0075】
これにより、半導体チップ4・42・42のバンプ電極5と基板1上の配線パターン2・3との接合方式が、金(Au)−錫(Sn)の合金接合によって行われるので、接合強度が高まる。
【0076】
また、本実施の形態の半導体装置10・40では、半導体チップ4・42・42に形成されているバンプ電極5は金(Au)にてなると共に、基板1上の配線パターン2・3も金(Au)又は金(Au)メッキにてなっていることが好ましい。
【0077】
これにより、半導体チップ4・42・42のバンプ電極5と基板1上の配線パターン2・3との接合方式が、金(Au)−金(Au)の接合によって行われるので、接合強度が高まる。
【0078】
また、本実施の形態の半導体装置40では、基板1には、半導体チップ42・42に加えて、抵抗、コンデンサ、LED等の電子部品43が搭載されているとすることができる。
【0079】
これにより、半導体チップ42・42に加えて、抵抗、コンデンサ、LED等の電子部品43が搭載された半導体装置40において、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との密着性を向上させることができる。
【0080】
また、本実施の形態の液晶モジュール20は、液晶表示パネル21と半導体装置10とが異方性導電接着剤11にて電気的に接続されていると共に、この半導体装置10は、有機物からなる絶縁フィルムの表面がシリコンカップリング剤31にて表面処理されている。
【0081】
したがって、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る液晶モジュール20を提供することができる。
【0082】
また、本実施の形態の液晶モジュール20を製造するときには、有機物からなる絶縁フィルムをシリコンカップリング剤31にて表面処理した後、有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板1に配線パターン2・3を形成し、かつ該配線パターン2・3に半導体チップ4を接続して半導体装置10を形成する。このとき、シリコンカップリング剤31は、構成元素であるシリコン(Si)が、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在する。なお、先に、半導体装置10を形成した後、有機物からなる絶縁フィルムをシリコンカップリング剤31にて表面処理することも可能である。
【0083】
その後、半導体装置10の配線パターン2・3と液晶表示パネル21とを異方性導電接着剤11を用いて電気的に接続する。
【0084】
これにより、絶縁フィルムからなる基板1と異方性導電接着剤11との密着性を向上し、追加の密着補強材を排除し得る液晶モジュール20の製造方法を提供することができる。
【実施例】
【0085】
〔実施例1〕
前記実施の形態に記載した構成について、効果を確認するために、検証実験を行ったので、以下に説明する。
【0086】
最初に、シリコンカップリング剤31にて表面処理した絶縁フィルムと異方性導電接着剤11との密着強度について検証した。
【0087】
シリコンカップリング剤31は、SiXを溶剤に混入したものを使用し、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在するようにした。
【0088】
密着強度の測定においては、図5に示すように、まず、液晶表示パネル21のTFT基板21aに異方性導電接着剤11を挟んで、基板1の構成材料である絶縁フィルムを接着した。その後、引っ張り角度を90度にして、引っ張り治具50にて上記絶縁フィルムを引っ張った。
【0089】
この結果、図6(a)に示すように、60℃/90%RHにおける放置時間0時間後、100時間後、300時間後、500時間後のいずれにおいても、図6(b)に示すシリコンカップリング剤31を塗布処理していないCOFに比べ、密着強度が向上していることが分かった。全体としては、密着性が約88%(316/168=1.88)向上した。なお、上記図6(a)(b)に示す異方性導電接着剤11の接合強度の値は、絶縁フィルムの幅の単位長さを基準にした値であり、各サンプルにおいて、複数試料のうちの最小値を示している。
【0090】
また、図7に、シリコンカップリング剤31の添加量による密着強度測定結果を示した。この結果、絶縁フィルムの表面にシリコンカップリング剤31を0.4atomic%(表面元素濃度)以下存在したものでは、表面処理していない場合と同様に、密着性向上が見られなかった。また、シリコンカップリング剤31を13atomic%(表面元素濃度)以上存在させると接合強度が低下した。
〔実施例2〕
次に、液晶モジュール20の製造に際しては、溶剤による洗浄が行われるので、この溶剤を対象とする耐溶剤性についても確認実験を行った。
【0091】
溶剤としては、洗浄に使用されるイソプロピルアルコールとアセトンとを用いた。試験は、シリコンカップリング剤31にて表面処理した絶縁フィルムを、常温でこれらイソプロピルアルコールとアセトンに1時間、浸漬した後、目視観察を行った。なお、この場合も、シリコンカップリング剤31は、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在するようにした。
【0092】
その結果、表1に示すように、シリコンカップリング剤31にて表面処理した絶縁フィルムは、表面処理しない絶縁フィルムと同様に、剥れ、膨れ、溶解、クラックについて、異常がなかった。
【0093】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、COF(Chip On FPC,Chip On Film) と呼ばれる、有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板に配線パターンを有し、該配線パターンに半導体チップが接続される半導体装置、表示モジュール、及び半導体装置の製造方法に適用できる。
【0095】
表示モジュールとしては、例えば、アクティブマトリクス型等の液晶表示モジュールに用いることができると共に、電気泳動型ディスプレイ、ツイストボール型ディスプレイ、微細なプリズムフィルムを用いた反射型ディスプレイ、デジタルミラーデバイス等の光変調素子を用いたディスプレイの他、発光素子として、有機EL発光素子、無機EL発光素子、LED(Light Emitting Diode) 等の発光輝度が可変の素子を用いたディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイにも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】(a)は本発明における液晶モジュールの実施の一形態を示す断面図であり、(b)は上記液晶モジュールに実装される半導体装置の基板に使用される、シリコンカップリング剤にて表面処理された絶縁フィルムを示す断面図である。
【図2】(a)は上記COFにてなる半導体装置を示す平面図であり、(b)は上記COFにてなる半導体装置を示す断面図である。
【図3】上記基板に複数の半導体チップ及び電子部品を搭載した半導体装置を示す断面図である。
【図4】上記半導体装置の要部を示す断面図である。
【図5】上記シリコンカップリング剤にて表面処理された絶縁フィルムの密着強度測定方法を示す断面図である。
【図6】(a)は上記シリコンカップリング剤にて表面処理された絶縁フィルムの密着強度測定結果を示すグラフであり、(b)は上記シリコンカップリング剤にて表面処理しない場合の絶縁フィルムの密着強度測定結果を示すグラフである。
【図7】上記シリコンカップリング剤の添加量による密着強度測定結果を示すグラフである。
【図8】従来の液晶モジュールを示す断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1 基板
2 配線パターン
3 配線パターン
4 半導体チップ
5 バンプ電極
10 半導体装置
11 異方性導電接着剤
20 液晶モジュール(表示モジュール)
21 液晶表示パネル(表示パネル、外部回路基板)
21a TFT基板
21b カラーフィルタ基板
30 PW基板(外部回路基板)
31 シリコンカップリング剤
40 半導体装置
41 半導体チップ
42 半導体チップ
43 電子部品
50 引張り治具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板に配線パターンを有して、半導体チップが実装される半導体装置において、
上記絶縁フィルムの少なくとも片方の表面にシリコンカップリング剤処理がされていると共に、上記シリコンカップリング剤の構成元素であるシリコン(Si)は、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記絶縁フィルムは、ポリイミドからなっていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記基板には、各種機能の半導体チップが搭載可能であることを特徴とする請求項1又又は2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記基板には、複数の半導体チップが搭載されていることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体チップに形成されているバンプ電極は金(Au)にてなる一方、前記基板上の配線パターンは錫(Sn)又は錫(Sn)メッキにてなっていることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体チップに形成されているバンプ電極は金(Au)にてなると共に、前記基板上の配線パターンも金(Au)又は金(Au)メッキにてなっていることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項7】
前記基板には、半導体チップに加えて、抵抗、コンデンサ、LED等の電子部品が搭載されていることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置を用いた表示モジュールであって、
表示パネルと上記半導体装置とは異方性導電接着剤にて電気的に接続されていることを特徴とする表示モジュール。
【請求項9】
前記表示パネルは、液晶表示パネルであることを特徴とする請求項8記載の表示モジュール。
【請求項10】
有機物からなる絶縁フィルムを、構成元素であるシリコン(Si)が、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在するシリコンカップリング剤にて表面処理する工程と、
有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板に配線パターンを形成し、かつ半導体チップを実装する工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項1】
有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板に配線パターンを有して、半導体チップが実装される半導体装置において、
上記絶縁フィルムの少なくとも片方の表面にシリコンカップリング剤処理がされていると共に、上記シリコンカップリング剤の構成元素であるシリコン(Si)は、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記絶縁フィルムは、ポリイミドからなっていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記基板には、各種機能の半導体チップが搭載可能であることを特徴とする請求項1又又は2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記基板には、複数の半導体チップが搭載されていることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体チップに形成されているバンプ電極は金(Au)にてなる一方、前記基板上の配線パターンは錫(Sn)又は錫(Sn)メッキにてなっていることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体チップに形成されているバンプ電極は金(Au)にてなると共に、前記基板上の配線パターンも金(Au)又は金(Au)メッキにてなっていることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項7】
前記基板には、半導体チップに加えて、抵抗、コンデンサ、LED等の電子部品が搭載されていることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置を用いた表示モジュールであって、
表示パネルと上記半導体装置とは異方性導電接着剤にて電気的に接続されていることを特徴とする表示モジュール。
【請求項9】
前記表示パネルは、液晶表示パネルであることを特徴とする請求項8記載の表示モジュール。
【請求項10】
有機物からなる絶縁フィルムを、構成元素であるシリコン(Si)が、絶縁フィルムの表面に0.5〜12.0atomic%(表面元素濃度)存在するシリコンカップリング剤にて表面処理する工程と、
有機物からなる絶縁フィルムにて形成した基板に配線パターンを形成し、かつ半導体チップを実装する工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2006−202856(P2006−202856A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10847(P2005−10847)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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