説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】 はんだからなるバンプの形成工程中やフリップチップ実装時に、スズのようなはんだ成分がバンプ電極のアンダーバリアメタルを透過してその下のパッド電極と反応し、バンプとパッド電極間の接合信頼性が低下することを防止する。
【解決手段】 半導体基板1上に形成されたパッド電極3とはんだからなるバンプ8間にアンダーバリアメタル6が形成される。アンダーバリアメタル6は保護絶縁膜4に形成された開口5に露出するパッド電極3上から開口5周囲の保護絶縁膜4上までを被覆する。しかしバンプ8の底面はアンダーバリアメタル6より小さく、望ましくは開口5より小さく、且つ開口5内部領域の垂直上方に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリップチップ実装を可能とするためにパッド電極上にバンプが設けられた半導体装置、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や表面弾性波(SAW)フィルタのような一部の電子部品に対する実装方法の一つにフリップチップ実装法がある。フリップチップ実装法は基本的に、半導体集積回路装置(半導体ベアチップ)などのパッド電極と配線パターンが形成された配線基板のパッド電極の一方または両方の上に突起状のバンプ電極を形成し、配線基板表面に半導体集積回路の表面を下向きに対向させ(フェースダウンの状態)、バンプを介して直接接合する技術である。
【0003】
フリップチップ実装法は、以上のようにサイズの小さいバンプを介して両者を接合する方法であるため実装面積や体積が小さく、高密度実装および半導体集積回路を搭載する電子機器の小型化を可能とする。またこの実装法ではボンディングワイヤなどの長い配線の引き回しが不要であるため、電子機器の動作を高速化することができるというメリットを有する。このような理由で、近年電極としてバンプを採用する半導体集積回路装置が増加している。
【0004】
バンプを有する電極部は一般に、半導体集積回路の基板上に形成されたパッド電極、突起状のバンプおよびこれら両者の間であってバンプの下に設けられるアンダーバリアメタル(Under Barrier Metal:以下特に必要がない限りUBMという)からなる。バンプの材料は主として金または「はんだ」であり、パッド電極の材料は通常アルミニウムあるいはアルミニウムを主成分とする合金である。しかしながら高周波信号を扱うデバイス、接続部に高信頼性を確保することが必要なデバイスでは、少なくとも最上層に金膜(例えば金めっき層)を形成したパッド電極が使用されている。またUBMは、バンプの成分元素である金やスズ(Sn)がバンプの形成時や半導体装置の実装時における加熱によってパッド電極中に拡散し、バンプとパッド電極との界面が脆性を有して接着性が低下することを防止するために用いられる。
【0005】
現在までに種々のバンプ電極構造が提案されている。特許文献1には、Pb−Sn系のはんだバンプとアルミニウムパッドとの間にチタン/ニッケルチタン化合物(ニッケルチタン固溶体)/ニッケル構造のUBMを形成したバンプ電極が開示されている。そして上記UBMによりUBM中へのSnの拡散を抑制すると共に、拡散により形成される金属間化合物で破断が発生することを防止できる旨報告している。
【0006】
また特許文献2には、Pb−5wt%Snからなる半田バンプ、Ti−Ni系のUBM層、アルミニウム、アルミニウム合金層等からなる電極パッドを含むバンプ電極が記載されている。さらに特許文献3には、Snを主成分とする半田バンプ、接着層としての機能を持つTi層、バリア層としての機能を持つNi層、半田濡れ性確保のための機能を持つAu層を含むUBM、Auを主成分とする電極パッドを含むバンプ電極が記載されている。特許文献4には、金バンプと、Ti−W、Ti−Pd、Ti−Pt等からなるUBM層と、アルミニウムを含むパッド部とを含むバンプ電極が記載されている。特許文献5には、Pb/Sn系突起電極、Ti層/Pt層/Au層からなるUBM、Ti/Pt/Auからなる配線金属を含むバンプ電極が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−129647号公報
【特許文献2】特開平11−186309号公報
【特許文献3】特開2006−19550号公報
【特許文献4】特開2001−77150号公報
【特許文献5】特開平6−104262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上に述べたように従来から種々の構造を有するバンプ電極が提案されてきた。そのうちはんだを電極材料とするバンプを搭載する半導体集積回路装置をフリップチップ実装する場合は、バンプを溶融状態にして配線基板と接合する。このため、バンプの下地に印加される接合荷重が金バンプと比較して圧倒的に小さく、特にバンプ直下の層に回路素子などが形成された半導体集積回路の場合、その回路素子などに及ぼす影響が少ないというメリットがある。
【0009】
バンプ材料としてはんだを用いる場合は、パッド電極の主要材料であるアルミニウムや金に溶融はんだ中のスズが非常によく浸透する。そのため、従来から種々のUBMが採用され、はんだバンプの形成過程あるいは実装工程における加熱処理によってはんだ中のスズがパッド電極へ拡散することが抑制されてきている。しかしながらはんだ中のスズがUBMと金属間化合物層や合金層を形成すると、UBMが設けられているにもかかわらずスズがパッド電極へ拡散し、パッド電極材料の金属と金属間化合物層や合金層を形成し、バンプとパッド電極間の接合強度の低下、接合信頼性の劣化を起こす確率が増大する。
【0010】
本発明はこのような課題を解決する手段を提供するものである。本発明は特に、はんだに含まれる金属成分元素の、パッド電極中への拡散抑制効果を一層向上させることができるバンプ電極構造、その構造を有する半導体装置、および当該半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係る第1の半導体装置は、半導体基板上に形成されたパッド電極と、前記パッド電極を被覆するように前記半導体基板上に形成された保護絶縁膜と、前記パッド電極上の前記保護絶縁膜に設けられ、前記保護絶縁膜から前記パッド電極の表面を露出させる開口と、前記開口内に露出した前記パッド電極の表面上から、前記開口の周囲の前記保護絶縁膜上にかけての領域を被覆するように形成されたアンダーバリアメタルと、前記アンダーバリアメタル上に設けられ、底面の面積が前記アンダーバリアメタルの面積より小さい、はんだからなるバンプとを備えている。
【0012】
第1の半導体装置の一形態においては、前記アンダーバリアメタルを、その膜厚が前記保護絶縁膜の膜厚より大きく、前記開口内に露出した前記パッド電極上から、前記開口の周囲の前記保護絶縁膜上にかけての表面が平坦なものとされる。
【0013】
また第1の半導体装置は種々のより望ましい形態を有し、第1に前記バンプの底面は、前記アンダーバリアメタル上の、前記開口に包含される領域に位置する。あるいはまた前記アンダーバリアメタルと前記バンプとの間に、前記はんだに対する濡れ性が前記アンダーバリアメタルより大きい金属材料の元素と前記はんだの成分元素とを含む金属層が形成される。この金属層は、前記アンダーバリアメタル上の、前記開口に包含される領域に位置していることが望ましい。さらに別の形態では、前記金属層は、前記バンプの底面と同一面積で且つ全面で接する。
【0014】
前記はんだに対する濡れ性が前記アンダーバリアメタルより大きい金属材料の元素の好適な例は、少なくともAu、AgまたはPdのうちのいずれか一つである。また前記はんだの成分元素はSnである。さらにまた前記アンダーバリアメタルの例はNiとPとの合金からなるものである。
【0015】
上記課題を解決するための本発明に係る第2の半導体装置は、半導体基板上に形成されたパッド電極と、前記パッド電極を被覆するように前記半導体基板上に形成された保護絶縁膜と、前記パッド電極上の前記保護絶縁膜に設けられ、前記保護絶縁膜から前記パッド電極の表面を露出させる開口と、前記開口内に露出した前記パッド電極の表面上から、前記開口の周囲の前記保護絶縁膜上にかけての領域を被覆するように形成され、その膜厚が前記保護絶縁膜の膜厚より大きく、前記開口内に露出した前記パッド電極上から、前記開口の周囲の前記保護絶縁膜上にかけての表面が平坦であるアンダーバリアメタルと、前記アンダーバリアメタル上に設けられたはんだからなるバンプとを備えている。
【0016】
第2の半導体装置において、前記アンダーバリアメタルの膜厚を前記保護絶縁膜の膜厚の2〜6倍とすることが望ましい。
【0017】
上記の第1の半導体装置または第2の半導体装置は、フリップチップ実装法等を用い、はんだからなるバンプを溶融させて2個の半導体装置を接合し、実装体を製造する場合にもその効果を発揮する。
【0018】
次に上記課題を解決するための本発明に係る半導体装置の製造方法の第1は、半導体基板上にパッド電極を形成する工程と、前記パッド電極を被覆するように前記半導体基板上に保護絶縁膜を形成する工程と、前記パッド電極上の前記保護絶縁膜に、前記パッド電極の表面を露出させる開口を形成する工程と、前記開口内に露出した前記パッド電極の表面上から、前記開口の周囲の前記保護絶縁膜上にかけての領域を被覆するようにアンダーバリアメタルを形成する工程と、前記アンダーバリアメタル上に、前記アンダーバリアメタルの面積より小さい面積の金属膜を形成する工程と、前記金属膜上にはんだ材料を供給する工程と、前記はんだ材料を溶融し、前記金属膜上にはんだからなるバンプを形成する工程とを含み、前記金属膜は、前記はんだに対する濡れ性が前記アンダーバリアメタルより大きい金属材料の元素からなる。
【0019】
上記第1の製造方法においても、第1および第2の半導体装置の場合と同様に、前記はんだに対する濡れ性が前記アンダーバリアメタルより大きい金属材料の元素の好適な例は、少なくともAu、AgまたはPdのうちのいずれか一つである。また前記アンダーバリアメタルの例はNiとPとの合金からなるものである。
【0020】
上記課題を解決するための本発明に係る半導体装置の製造方法の第2は、半導体基板上にパッド電極を形成する工程と、前記パッド電極を被覆するように前記半導体基板上に保護絶縁膜を形成する工程と、前記パッド電極上の前記保護絶縁膜に、前記パッド電極の表面を露出させる開口を形成する工程と、めっき法を用いて、前記開口内に露出した前記パッド電極の表面上から、前記開口の周囲の前記保護絶縁膜上にかけての領域を被覆し、膜厚が前記保護絶縁膜の膜厚より大きく、前記開口内に露出した前記パッド電極上から、前記開口の周囲の前記保護絶縁膜上にかけての表面が平坦であるアンダーバリアメタルを形成する工程と、前記アンダーバリアメタル上にはんだ材料を供給する工程と、前記はんだ材料を溶融し、前記金属膜上にはんだからなるバンプを形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、半導体装置において(1)はんだからなるバンプが、その底面の面積がアンダーバリアメタルの面積より小さくなるように、アンダーバリアメタル上に設けられ、(2)特にバンプの底面が、アンダーバリアメタル上の、保護絶縁膜の開口に包含される領域に位置するように設けられ、あるいはまた(3)アンダーバリアメタルは、その膜厚が保護絶縁膜の膜厚より大きく、保護絶縁膜の開口内に露出したパッド電極上から、その開口の周囲の保護絶縁膜上にかけての表面が平坦に形成される。
【0022】
このうち(1)および(2)によれば、バンプの底面の面積がアンダーバリアメタルの面積より小さく絞り込まれるため、アンダーバリアメタル中をSn等のはんだの成分元素が下方に拡散する範囲を制限できる。これにより成分元素がパッド電極まで到達しにくくできる。特に(2)によれば、バンプの底面が、アンダーバリアメタルの膜密度(または拡散阻止能力)が低下し易い、保護絶縁膜の開口境界(開口による保護絶縁膜段差部)上に位置しないから効果が大きい。また(3)によれば、アンダーバリアメタルの膜密度が大きく低下することがなくなることにより、はんだの成分元素がパッド電極まで到達しにくくできる。
【0023】
以上のように本発明によれば、はんだの成分元素がパッド電極へまで拡散し、そこではんだ成分元素とパッド電極材料との化合物層や合金層を形成し、バンプとパッド電極間の接合強度が低下することを強く抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体装置のバンプ電極部を示す断面図(a)および平面図(b)。
【図2】本発明の実施形態に係る半導体装置におけるバンプ電極部の製造方法を示す工程断面図。
【図3】本発明の実施形態に係る半導体装置におけるバンプ電極部の製造方法、およびそれに続く実装工程の一部を示す工程断面図。
【図4】本発明の実施形態に係る製造方法により製造された半導体装置に対する実装工程の一部を示す工程断面図。
【図5】本発明に係る製造方法により製造された半導体装置の実装体の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1(a)は本発明の実施形態に係る半導体装置のバンプ電極部の断面図である。半導体装置は、その1チップ上に多数のバンプ電極が形成される、例えばメモリやシステムLSIのような半導体集積回路を想定しており、図はそのバンプ電極の1個を示している。また、図1(b)は図1(a)に示すバンプ電極の領域を上から見た平面図である。
【0026】
図1に示す半導体装置において、半導体基板(シリコン単結晶基板)1上には回路形成層2が設けられている。この回路形成層2はその詳細構造を図示してはいないが、微細寸法のMOS型トランジスタ、容量、抵抗等の素子、それらを被覆する絶縁膜、複数の配線層とそれら配線層間を分離する層間絶縁膜からなる多層配線構造などが含まれている。回路形成層2上の所定の位置には、Ti/TiNバリアメタルとアルミニウム合金膜との積層膜からなるパッド電極3が形成されている。パッド電極3には図1(b)に示すように配線3aが接続され、パッド電極3はその配線を介して直接的に、あるいは間接的に回路形成層2に含まれる素子に電気接続されている。
【0027】
パッド電極3上の周辺部はシリコン窒化膜(SiNx)、シリコン酸窒化膜(SiON)、シリコン酸化膜SiO2、またはそれらの適当な積層膜などからなる保護絶縁膜4で被覆され、パッド電極3の中央部では保護絶縁膜4に開口5が設けられて、パッド電極3の表面が露出している。本実施形態では、開口5は矩形のパッド電極3の2つの対角線の交点を中心とする円形状パターンに形成されている。
【0028】
上記開口5に露出したパッド電極3の表面上から開口5の外側周囲の保護絶縁膜4の表面上に至る領域を被覆するようにUBM6が形成されている。UMB6はニッケル(Ni)を主成分とするNi−7wt%P(リン)の合金金属膜である。またUBM6のパターンは開口5の中心を中心とする同心円形状であり、その一部は平面的に見てパッド電極3の外部領域まで達している。しかしながらUBM6は、パッド電極3の領域に、当該パッド電極5の側壁上に形成された保護絶縁膜4の膜厚(横方向へ測定した膜厚)分を加えた領域よりは内側に位置している。
【0029】
UBM6の表面上には薄い金属層7およびその上のバンプ8が形成されている。バンプ8は例えばSn−Ag系のはんだからなり、ほぼ半球状でその底面は円状を呈している。一方金属層は金(Au)とはんだの成分元素であるスズ(Sn)とを含む合金層であり、バンプ8の底面と実質的に同一形状、同一位置および同一面積を有し、バンプ8の底面全面と接触している。しかし場合によっては金属層7は、バンプ8の底面より内側に位置し、形状はバンプ8の底面と実質的に同一であるが面積は僅かに小さいこともあり得る。バンプ8の底面および金属層7は、図1に示すように、保護絶縁膜4の開口5より寸法が小さく形成され、これに加えて開口5の内部領域の上層に位置するように設けられることが望ましい。
【0030】
次に、図1に示した半導体装置の製造方法を説明する。図2〜図4は、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法、特にバンプ電極部の製造方法とバンプ電極製造後のフリップチップ実装工程を示す工程断面図である。各工程断面図は図1の半導体装置のバンプ電極部と同一部分を示す。
【0031】
まず図2(a)に示すように、一般に拡散工程と呼ばれる工程を利用してウエハ状態の半導体基板1上にMOS型トランジスタのような半導体素子や多層配線構造等を含む回路形成層2を形成する。その後回路形成層2上にスパッタリング法によりTi/TiN膜/Al合金膜からなる積層膜を1μm〜2μmの厚さに堆積し、パターン化してパッド電極3を形成する。さらにパッド電極3上にプラズマCVD法により例えばSiNx、SiONまたはSiO2のうち少なくとも1種からなる保護絶縁膜4を1μmの厚さに堆積し、ドライエッチングにより開口5を形成してパッド電極3の表面を露出させる。
【0032】
次に図2(b)に示すように、開口5に露出したパッド電極3の表面上に無電解めっき法を用いて、Ni−7wt%P膜を5μmの厚さに堆積し、UBM6とする。この工程は、例えば次亜燐酸とNiを含むめっき液を用いることによって実施することができ、開口5に露出したパッド電極3の表面の金属材料が触媒となって概ね選択的にNi−P合金膜を堆積させることができる。Ni−P合金膜がパッド電極3の表面から保護絶縁膜4の上面の高さまで成長した後は、さらに上方へ盛り上がると共に一部は横方向へ広がり、開口5の周囲の保護絶縁膜4上にも成長するので図2(b)に示す形状となる。このようにUBM6は少なくとも保護絶縁膜4の膜厚より厚く堆積する。またNi−P合金膜のP濃度としては5〜12wt%が適切である。
【0033】
この膜成長機構から分かるように成長後のUBM6は自動的に開口5の円状パターンに対して同心円の形状となる(図1(b)参照)。従ってこのめっき工程では特にUBM6のパターン形成用マスクを必要としない。なお、UBM6中のリンに対する所望の組成比を得るためには、めっき液中の次亜燐酸濃度を調整すればよい。
【0034】
次に図2(c)に示すように、UBM6上に、円形状で且つ保護絶縁膜4の開口5よりも面積の小さい開口パターンを有するフォトレジスト膜9を全面に形成する。続いて無電解めっき法を用いて金属膜、具体的には金膜10をフォトレジスト膜9の開口部に露出したUBM6上に0.1μmの厚さに堆積する。このめっきは金とUBM6の材料Niとの置換反応によって進行するのでほぼUBM6上にだけ金膜10を成長させることができる。この後、有機溶剤を用いてフォトレジスト膜9を除去する。
【0035】
金膜10のめっきによりフォトレジスト膜9の表面上にも微小な金粒子が多少付着する可能性があるが、フォトレジスト膜9の除去工程においてリフトオフ機構により金粒子は自動的に除去される。この工程により、UBM6および開口5より面積が小さく、且つUBM6上の、開口5に包含される平面領域内に金膜10のパターンが形成される。
【0036】
次に図2(d)に示すように、UBM6上に開口12のパターンが形成されたフォトレジストなどの有機樹脂膜(マスクパターン層)11を形成する。有機樹脂膜11はそれ自体が感光性であっても、そうでなくてもよい。開口12は円形状であり、UBM6より寸法、面積が小さいが金膜10のパターンより大きい。また開口12はUBM6の領域内に包含されると共に金膜10を包含するように設けられる。次いではんだ材料、例えばはんだペースト13を開口12内部のみに埋め込むように塗布する。このはんだペースト13は、例えばSn−Ag系のはんだの微小粉末にロジン、溶剤、活性剤、増粘剤などのフラックス成分を混合した材料である。
【0037】
次に図3(a)に示すように、百数十度以上の温度で加熱することによってはんだペースト13中のはんだ成分を溶融すると、その表面張力により半球に近いバンプ8が形成される。このとき最初UBM6および金膜10(図2(d)に示す)とはんだとは直接接触した状態にある。しかしUBM6を構成しているNi−P合金は溶融はんだに対する濡れ性が小さい、すなわちNi−P合金中にはんだ材料元素が拡散しにくいという性質を有する。一方、金は溶融はんだに対する濡れ性が大きい。このような濡れ性の差によりUBM6上に溶融はんだが濡れ広がらず、反対に金膜10上へ溶融はんだが集まることでバンプ8が半球状になる。金膜10上へ集まった溶融はんだは金膜10へ容易に拡散し、はんだを構成する成分元素(特にSn)と金とを含む合金の金属層7に変化する。
【0038】
ここではんだの「濡れ性」は、溶融状態のはんだが下地表面に濡れ広がる程度を表し、一般に広く認められている種々の測定方法によって数値として定義できるものである。なお、バンプ8は、このようなはんだペーストの印刷法で形成する代わりに、有機樹脂膜11の開口12中にフラックスとともにはんだボールを落とし込んではんだ溶融処理することによっても形成することができる。
【0039】
次に有機樹脂膜11を除去し、必要に応じてフラックス残留物を洗浄すればウエハ状態での半導体装置が完成する。その後半導体基板1の裏面研磨、ダイ毎のダイシングによる個片化を経て半導体チップが形成される。図3(b)の半導体デバイスAはこのようにして形成されたチップ状の半導体装置である。
【0040】
図3(b)に示す工程では半導体デバイスAと同様な工程で形成された半導体デバイスBが用意される。半導体デバイスBは半導体デバイスAと同様に、半導体基板21、回路形成層22、パッド電極23、開口25が形成された保護絶縁膜24、UBM26、例えば金とはんだの成分元素であるスズとの合金からなる金属層27、バンプ28を備えている。そして半導体デバイスAおよびBは、フリップチップ実装するために電気接続すべき対応するパッド電極3および23上それぞれに形成されたバンプ8および28が対向するように位置合わせをして設置される。
【0041】
次に図4に示すように、百数十℃以上の温度でバンプ8および28を溶融し互いに接合して接合バンプ30を形成する。このようにして半導体デバイスAおよびBが接合される。その後さらに、バンプ接合によって半導体デバイスAとB間に生じたギャップに樹脂を主成分とするアンダーフィル31を充填し、両半導体デバイスの接合をより信頼性の高いものにする。
【0042】
図5は、本発明に係る半導体装置の製造方法により製造された半導体デバイスCおよび半導体デバイスDをフリップチップ実装した実装体の一例を示す断面図である。半導体デバイスCは半導体基板40上に回路形成層41を有し、半導体デバイスDも半導体基板43上に回路形成層44を有する。これら半導体デバイスC、Dは複数のはんだの接合バンプ45、および両デバイス間に充填したアンダーフィル46で接合されている。図5においては、バンプ電極に含まれるパッド電極、UBM、UBM上の金属層などの直接の図示は省略し、それらは回路形成層41、44に含まれるものとしている。
【0043】
半導体デバイスC、Dは、本発明によるバンプ電極を、MOS型トランジスタなどを含む半導体回路形成領域の直上に設けられるマイクロバンプとして適用した半導体装置例である。このようなマイクロバンプを適用すれば、バンプを形成するためのパッド電極配列ピッチを小さくして限られた領域に多数のパッド電極を配置でき、これら多数の電極を介して互いに接続された半導体デバイスを高速化できるという利点を有する。
【0044】
半導体デバイスCのチップ周辺部にはパッド電極42が形成され、直接的または間接的に接合バンプ45のいずれかに電気的に接続されている。このパッド電極42を通じて実装体としての半導体装置と外部との信号入出力を行うことができる。図5の場合と異なり、フリップチップ実装すべき2個の半導体デバイスのチップサイズが同じであり、それらが互いにマイクロバンプのみによって接続される場合は、例えば、片方の半導体デバイスの特定の接合バンプの下から半導体基板の裏面まで貫通するシリコン貫通電極を設けることによって外部との信号のやり取りが可能となる。
【0045】
以上に述べてきた本発明に係る半導体装置は、図1(a)または図2(b)等に示す形状のUBM6を有する。すなわちUBM6の膜厚は少なくとも保護絶縁膜4の膜厚より厚く、またUBM6の上面は、開口5の内部領域に露出したパッド電極3上から開口5の周囲の保護絶縁膜4上にかけてほぼ平坦な形状を有する。このような形状の膜では、開口5を形成している保護絶縁膜4のコーナーや段差が存在する部分でも膜の密度は大きく低下せず、ある程度まで大きい密度を維持する傾向がある。
【0046】
特に本発明の実施形態による製造方法に述べたように、UBM6を、選択成長できるめっき法で形成する場合は、最初開口5内に露出したパッド電極3の表面から垂直上方へ膜が成長してゆき、次に開口5から突出して成長した後、すなわち保護絶縁膜4より厚く成長した後は横方向へ広がるように成長する。この膜成長機構によれば開口5の端に形成されるコーナー部あるいは段差部が膜成長を阻害する要因にならないと考えられる。従ってこの部分においてもUBM6の膜密度は低下せず、より均一となる。
【0047】
UBM6の膜密度がほとんど低下しないという上記性質により、バンプ8の形成工程(図3(a)参照)、バンプ同士の接合工程(図4参照)における加熱処理で、はんだ成分のSnがUBM6中に拡散してもパッド電極3まで達する確率を低減できる。この効果をさらに向上させるためにはUBM6は無電解めっき法を用い、保護絶縁膜4の膜厚の2〜6倍の膜厚に形成することが望ましい。
【0048】
これに対して従来は、UBM(またはこれに相当する膜)はパッド電極上の保護絶縁膜より薄く形成するか(例えば特許文献3、4)、(電子ビーム)蒸着法、スパッタリング法(例えば特許文献1、2、3、5)を用いて形成する場合がほとんどであった。
【0049】
特に後者のような物理気相成長法を用いるUBM形成工程では、パッド電極露出表面から垂直上方に成長してきた膜と、パッド電極上に形成された保護絶縁膜開口の側壁から水平方向に成長してきた膜とが衝突する部分で膜の密度が極めて低下する。また前者の場合、膜がパッド電極の水平面および開口の側壁に沿って開口の断面形状に忠実に成長し、膜が開口のコーナー部で屈曲する。従ってUBMが薄い場合であっても屈曲部で膜の密度が低下する。このように従来のUBMはSnの異常拡散防止効果は小さいといえる。
【0050】
本発明に係る半導体装置のバンプ電極では図1(a)等に示すように、バンプ8の底面はUBM6の面積より小さい面積に設定され、UBM6の上面領域に包含されるように設けられる。さらに当該底面は開口5により形成される保護絶縁膜4のコーナー部(または段差部)と上下方向に重ならないように、開口5の内部領域に包含されるように設けられる。バンプ8の底面をこのような位置に配置すれば、バンプ8から下方へ拡散するSnがUBM6の、開口5のコーナー部近傍へ到達しにくくすることができる。この結果、Snがパッド電極3とUBM6との界面まで達し、界面付近にパッド電極3と、UBM6またはバンプ8との接合信頼性を劣化させる合金層、例えば上記実施形態ではAl−Ni−P−Sn合金層をより一層形成しにくくすることができる。
【0051】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、溶融状態のはんだに対して濡れ性の小さい導電材料からなるUBM(Ni−P合金膜)上に、UBMより面積が小さく、UBMより前記濡れ性の大きい金属膜(金膜)を形成する工程(図2(b)、(c)参照)およびはんだを溶融させる工程(図3(a)参照)を備えている。これら工程により濡れ性の差を利用してバンプ8の底面の面積や位置を自動的に上記のような条件に設定することができる。
【0052】
金膜等、溶融はんだに対してUBMより濡れ性が大きい金属膜の面積は、UBM上面の面積の40%〜60%にすることが望ましい。金属膜の面積がUBMの60%を超える場合、例えば90%の場合は溶融はんだがUBM上にも濡れ広がる確率が高くなり、バンプの底面が保護絶縁膜の形成された開口の外部領域上にオーバーラップして拡張する可能性が大きくなる。また金属膜の面積がUBMの40%より小さい場合、例えば10%の場合はバンプの底面積が過剰に小さくなるため、バンプとUBMとの接合強度不足となり易い。
【0053】
本発明に係る製造方法のように、UBMの面積より底面積を小さく絞り込んでバンプを形成する技術においては、UBM上に供給するはんだ材料が一定量と決められている場合、バンプの底面積をUBMの面積と同等またはそれ以上とする従来の技術と比較して、バンプの高さを高くすることができる。従って図4に示す工程のように半導体デバイス同士を接合した場合、半導体デバイス間の間隔dをより広く取ることができる。これによりアンダーフィル31(図4参照)を半導体デバイス間のギャップにボイドを生成することなく充填できるというメリットも生じる。
【0054】
高集積化、高機能化される半導体集積回路装置は多ピン化(パッド電極数の増大)およびパッド電極配列の狭ピッチ化、パッド電極の寸法縮小が行われる。これに伴ってパッド電極1個あたりへのバンプ用はんだ材料の供給量が減少し、バンプの高さおよびフリップチップ実装される半導体装置間のキャップも低下する傾向がある。このような場合にバンプを高くできる本発明は有効である。
【0055】
本発明に係る実施の形態では、はんだ材料としてSn−Ag系のはんだを示した。しかしこれ以外にSn−Cu系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Zn系、Pb−Sn系のはんだも使用可能である。また溶融はんだに対してUBMより濡れ性の高い金属膜の材料として金を示したが、金(Au)の他Ag、Ptを使用してもよい。またアルミニウムを主体とするパッド電極を示したが、少なくとも最上層が金膜(金めっき層等)となっているパッド電極やアルミニウム膜上にTiN膜が形成されたパッド電極でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したとおり、本発明は特に半導体装置の実装に対して有益な技術であるが、半導体装置だけでなく、その他の電子部品の実装にも有益である。さらにはんだを含む微小な突起状の部材を利用して接合を行おうとする一般の製品にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1、21、40、43 半導体基板
2、22、41、44 回路形成層
3、23、42 パッド電極
3a 配線
4、24 保護絶縁膜
5、12、25 開口
6、26 UBM
7、27 金属層
8、28 バンプ
9 フォトレジスト膜
10 金膜
11 有機樹脂膜
13 はんだペースト
30、45 接合バンプ
31、46 アンダーフィル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成されたパッド電極と、
前記パッド電極を被覆するように前記半導体基板上に形成された保護絶縁膜と、
前記パッド電極上の前記保護絶縁膜に設けられ、前記保護絶縁膜から前記パッド電極の表面を露出させる開口と、
前記開口内に露出した前記パッド電極の表面上から、前記開口の周囲の前記保護絶縁膜上にかけての領域を被覆するように形成されたアンダーバリアメタルと、
前記アンダーバリアメタル上に設けられ、底面の面積が前記アンダーバリアメタルの面積より小さい、はんだからなるバンプと
を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記アンダーバリアメタルは、その膜厚が前記保護絶縁膜の膜厚より大きく、前記開口内に露出した前記パッド電極上から、前記開口の周囲の前記保護絶縁膜上にかけての表面が平坦であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記バンプの底面は、前記アンダーバリアメタル上の、前記開口に包含される領域に位置していることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記アンダーバリアメタルと前記バンプとの間に、前記はんだに対する濡れ性が前記アンダーバリアメタルより大きい金属材料の元素と前記はんだの成分元素とを含む金属層が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記金属層は、前記アンダーバリアメタル上の、前記開口に包含される領域に位置していることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記金属層は、前記バンプの底面と同一面積で且つ全面で接していることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記はんだに対する濡れ性が前記アンダーバリアメタルより大きい金属材料の元素は、少なくともAu、AgまたはPdのうちのいずれか一つであることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記はんだの成分元素はSnであることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記アンダーバリアメタルはNiとPとの合金からなることを特徴とする請求項7または8に記載の半導体装置。
【請求項10】
半導体基板上に形成されたパッド電極と、
前記パッド電極を被覆するように前記半導体基板上に形成された保護絶縁膜と、
前記パッド電極上の前記保護絶縁膜に設けられ、前記保護絶縁膜から前記パッド電極の表面を露出させる開口と、
前記開口内に露出した前記パッド電極の表面上から、前記開口の周囲の前記保護絶縁膜上にかけての領域を被覆するように形成され、その膜厚が前記保護絶縁膜の膜厚より大きく、前記開口内に露出した前記パッド電極上から、前記開口の周囲の前記保護絶縁膜上にかけての表面が平坦であるアンダーバリアメタルと、
前記アンダーバリアメタル上に設けられたはんだからなるバンプと
を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
前記アンダーバリアメタルの膜厚は前記保護絶縁膜の膜厚の2〜6倍であることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
請求項1または2に記載の構成を有する第1の半導体装置および第2の半導体装置が、前記第1の半導体装置および前記第2の半導体装置それぞれが有するバンプによって接合されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
半導体基板上にパッド電極を形成する工程と、
前記パッド電極を被覆するように前記半導体基板上に保護絶縁膜を形成する工程と、
前記パッド電極上の前記保護絶縁膜に、前記パッド電極の表面を露出させる開口を形成する工程と、
前記開口内に露出した前記パッド電極の表面上から、前記開口の周囲の前記保護絶縁膜上にかけての領域を被覆するようにアンダーバリアメタルを形成する工程と、
前記アンダーバリアメタル上に、前記アンダーバリアメタルの面積より小さい面積の金属膜を形成する工程と、
前記金属膜上にはんだ材料を供給する工程と、
前記はんだ材料を溶融し、前記金属膜上にはんだからなるバンプを形成する工程と
を含み、
前記金属膜は、前記はんだに対する濡れ性が前記アンダーバリアメタルより大きい金属材料の元素からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記はんだに対する濡れ性が前記アンダーバリアメタルより大きい金属材料の元素は、少なくともAu、AgまたはPdのうちのいずれか一つであることを特徴とする請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記アンダーバリアメタルはNiとPとの合金からなることを特徴とする請求項13または14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
半導体基板上にパッド電極を形成する工程と、
前記パッド電極を被覆するように前記半導体基板上に保護絶縁膜を形成する工程と、
前記パッド電極上の前記保護絶縁膜に、前記パッド電極の表面を露出させる開口を形成する工程と、
めっき法を用いて、前記開口内に露出した前記パッド電極の表面上から、前記開口の周囲の前記保護絶縁膜上にかけての領域を被覆し、膜厚が前記保護絶縁膜の膜厚より大きく、前記開口内に露出した前記パッド電極上から、前記開口の周囲の前記保護絶縁膜上にかけての表面が平坦であるアンダーバリアメタルを形成する工程と、
前記アンダーバリアメタル上にはんだ材料を供給する工程と、
前記はんだ材料を溶融し、前記アンダーバリアメタル上にはんだからなるバンプを形成する工程と
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−190939(P2012−190939A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52106(P2011−52106)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】