説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】パッドに加わるダメージを抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】インナチャンファ部ICUの広がり角度θICAが90度よりも小さい場合、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさは、極めて小さくなる。つまり、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさは、パッドPDの表面に平行な方向の超音波変換荷重F1UXの大きさよりも充分に小さくなる。この結果、インナチャンファ部ICUの広がり角度θICAが90度よりも小さい場合においては、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさを充分小さくすることができ、パッド剥がれを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に関し、特に、半導体チップの表面上に配置されたパッドに銅ワイヤをボンディングした半導体装置およびその製造技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009−194136号公報(特許文献1)には、キャピラリのインナチャンファアングルが60度や120度であることが記載されている。そして、キャピラリをボールごとボンディングパッドに押し付けてボンディング荷重を印加するとともに、ボンディングパッドの表面に平行な方向に、キャピラリを介して超音波振動を供給することにより、ボンディングパッド上に圧着ボールを形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−194136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体素子と多層配線を形成した半導体チップと、この半導体チップを覆うように形成されたパッケージから形成されている。パッケージには、(1)半導体チップに形成されている半導体素子と外部回路とを電気的に接続するという機能や、(2)湿度や温度などの外部環境から半導体チップを保護し、振動や衝撃による破損や半導体チップの特性劣化を防止する機能がある。さらに、パッケージには、(3)半導体チップのハンドリングを容易にするといった機能や、(4)半導体チップの動作時における発熱を放散し、半導体素子の機能を最大限に発揮させる機能なども合わせ持っている。
【0005】
パッケージでは、例えば、半導体チップ上に形成されている半導体素子と外部回路とを電気的に接続するという機能を実現するために、半導体チップを配線板上に搭載し、半導体チップ上に形成されているパッドと、配線板上に形成されている端子とをワイヤで接続することが行なわれている。このとき、パッドと端子とを接続するワイヤには、例えば、金を材料とする金ワイヤが用いられている。
【0006】
ところが、近年、金の価格が上昇してきていることから、半導体装置の製造工程における直材費を抑制するため、金よりも価格の安い銅からなる銅ワイヤを使用することが検討されている。特に、銅ワイヤは、コストだけでなく、金ワイヤよりも電気抵抗率が低いという特性を有していることから、電気的特性も優れており、注目されている。
【0007】
ここで、半導体チップ上に形成されているパッドと、配線板に形成されている端子とをワイヤで接続する場合、まず、キャピラリの先端部に初期ボールを形成し、その後、キャピラリの先端部に形成されている初期ボールをパッド上に押し付ける。具体的には、キャピラリによる荷重と超音波振動によって、初期ボールをパッド上に押し付ける。これにより、初期ボールが変形し、パッドとの接触面積を充分に確保できる圧着ボールが形成される。その後、キャピラリを配線板の端子へ移動させながらワイヤを引き出し、キャピラリによって配線板の端子へワイヤをボンディングすることにより、パッドと端子がワイヤで接続されることになる。
【0008】
このように、パッド上に圧着ボールを形成する場合、キャピラリによる荷重と超音波振動を初期ボールに印加する必要がある。しかし、銅は、金よりも硬く、かつ、金は酸化されないのに対し、銅は酸化される。このため、初期ボールを変形させるとともに酸化膜を除去するために印加される荷重および超音波振動は、金ワイヤを使用する場合よりも銅ワイヤを使用する場合のほうが大きくなる。したがって、銅ワイヤを使用する場合には、パッドに加わるダメージが大きくなる問題点が発生する。
【0009】
本発明の目的は、パッドに加わるダメージを抑制することができる技術を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
代表的な実施の形態における半導体装置の製造方法は、キャピラリの先端部に形成した初期ボールに荷重と超音波を印加することにより、初期ボールを変形させた圧着ボールを形成し、パッドと圧着ボールとを電気的に接続する工程を含む。ここで、圧着ボールは、パッドと接続された第1部分、第1部分の上に位置する第2部分、および、第2部分の上に位置し、キャピラリから引き出された銅ワイヤが接続された第3部分を有する。そして、圧着ボールの第2部分を形成するキャピラリのインナチャンファ部の広がり角度は、90度より小さいことを特徴とするものである。
【0013】
また、代表的な実施の形態における半導体装置の製造方法は、キャピラリの先端部に形成した初期ボールに荷重と超音波を印加することにより、初期ボールを変形させた圧着ボールを形成し、パッドと圧着ボールとを電気的に接続する工程を含む。ここで、圧着ボールは、パッドと接続された第1部分、第1部分の上に位置する第2部分、および、第2部分の上に位置し、キャピラリから引き出された銅ワイヤが接続された第3部分を有する。そして、圧着ボールの第3部分の縦断面形状は、テーパ形状となっていることを特徴とするものである。
【0014】
代表的な実施の形態における半導体装置は、パッド上に形成された銅からなる圧着ボールを備える。ここで、圧着ボールは、パッドと接続された第1部分、第1部分の上に位置する第2部分、および、第2部分の上に位置する第3部分を有する。そして、第2部分の広がり角度は、90度より小さいことを特徴とするものである。
【0015】
また、代表的な実施の形態における半導体装置は、パッド上に形成された銅からなる圧着ボールを備える。ここで、圧着ボールは、パッドと接続された第1部分、第1部分の上に位置する第2部分、および、第2部分の上に位置する第3部分を有する。そして、圧着ボールの第3部分の縦断面形状は、テーパ形状となっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0017】
パッドに加わるダメージを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】BGAパッケージからなる半導体装置を上面から見た平面図である。
【図2】半導体装置を上面から見た図であり、樹脂を透視して示す図である。
【図3】実施の形態1における半導体装置を裏面から見た図である。
【図4】図1のA−A線で切断した断面図である。
【図5】BGAパッケージからなる半導体装置を製造する工程の流れを示すフローチャートである。
【図6】QFPパッケージからなる半導体装置を上面から見た平面図である。
【図7】図6のA−A線で切断した断面図である。
【図8】半導体チップに集積回路を形成した後、QFPパッケージからなる半導体装置を製造する工程の流れを示すフローチャートである。
【図9】ワイヤボンディング工程を説明する図である。
【図10】図9に続くワイヤボンディング工程を説明する図である。
【図11】図10に続くワイヤボンディング工程を説明する図である。
【図12】図11に続くワイヤボンディング工程を説明する図である。
【図13】図12に続くワイヤボンディング工程を説明する図である。
【図14】本発明者が見出した課題を説明する図である。
【図15】本発明者が見出した課題を説明する図である。
【図16】本発明者が見出した課題を説明する図である。
【図17】金ワイヤを使用する場合に、圧着ボールに印加される圧縮荷重および引張荷重を示すとともに、圧着ボールに印加される超音波振幅を示すグラフである。
【図18】金からなる圧着ボールをパッド上に形成する様子を示す図である。
【図19】圧着ボールを形成した後、キャピラリを上方に引き上げる様子を示す図である。
【図20】銅ワイヤを使用する場合に、圧着ボールに印加される圧縮荷重および引張荷重を示すとともに、圧着ボールに印加される超音波振幅を示すグラフである。
【図21】銅からなる圧着ボールをパッド上に形成する様子を示す図である。
【図22】圧着ボールを形成した後、キャピラリを上方に引き上げる様子を示す図である。
【図23】キャピラリの外観構成を示す図である。
【図24】図23の一部領域を拡大した図である。
【図25】キャピラリによってパッド上に圧着ボールを形成する様子を示す図である。
【図26】(a)は、インナチャンファ部の広がり角度が90度よりも大きい場合を示しており、(b)は、インナチャンファ部の広がり角度が90度の場合を示しており、(c)は、インナチャンファ部の広がり角度が90度よりも小さい場合を示している。
【図27】銅ワイヤを使用する場合に、圧着ボールに印加される圧縮荷重および引張荷重を示すとともに、圧着ボールに印加される超音波振幅を示すグラフである。
【図28】実施の形態1において、銅からなる圧着ボールをパッド上に形成する様子を示す図である。
【図29】圧着ボールを形成した後、キャピラリを上方に引き上げる様子を示す図である。
【図30】一般的なワイヤボンディング工程を経ることにより形成された圧着ボールの構造を示す図である。
【図31】実施の形態1におけるワイヤボンディング工程を経ることにより形成された圧着ボールの構造を示す図である。
【図32】半導体チップ上に形成された複数のスタッドバンプ電極を示す図である。
【図33】スタッドバンプ電極を形成した半導体チップを配線基板に実装する一例を示す図である。
【図34】銅ワイヤを使用する場合に、圧着ボールに印加される圧縮荷重および引張荷重を示すとともに、圧着ボールに印加される超音波振幅を示すグラフである。
【図35】実施の形態2において、銅からなる圧着ボールをパッド上に形成する様子を示す図である。
【図36】圧着ボールを形成した後、キャピラリを上方に引き上げる様子を示す図である。
【図37】実施の形態2におけるワイヤボンディング工程を経ることにより形成された圧着ボールの構造を示す図である。
【図38】銅ワイヤを使用する場合に、圧着ボールに印加される圧縮荷重および引張荷重を示すとともに、圧着ボールに印加される超音波振幅を示すグラフである。
【図39】従来のキャピラリの先端部の形状を示す図である。
【図40】実施の形態3で使用するキャピラリの先端部の形状を示す図である。
【図41】(a)〜(c)は、従来のキャピラリを使用したワイヤボンディング工程を説明する図である。
【図42】(a)〜(c)は、実施の形態3におけるキャピラリを使用したワイヤボンディング工程を説明する図である。
【図43】実施の形態3におけるワイヤボンディング工程を経ることにより形成された圧着ボールの構造を示す図である。
【図44】変形例における圧着ボールの構造を示す図である。
【図45】銅ワイヤを使用する場合に、圧着ボールに印加される圧縮荷重および引張荷重を示すとともに、圧着ボールに印加される超音波振幅を示すグラフである。
【図46】実施の形態4において、銅からなる圧着ボールをパッド上に形成する様子を示す図である。
【図47】圧着ボールを形成した後、キャピラリを上方に引き上げる様子を示す図である。
【図48】実施の形態4におけるワイヤボンディング工程を経ることにより形成された圧着ボールの構造を示す図である。
【図49】パッドの下層に存在する複数の層間絶縁膜の構成を示す断面図である。
【図50】ワイヤボンディング工程を示す図である。
【図51】図50に続くワイヤボンディング工程を示す図である。
【図52】比較的パッド剥がれが生じにくいパッド構造におけるワイヤボンディング工程を示す図である。
【図53】比較的パッド剥がれが生じやすいパッド構造におけるワイヤボンディング工程を示す図である。
【図54】パッドを構成するバリア導体膜の厚さが薄くなる製造工程の流れを示すフローチャートである。
【図55】パッドを構成するバリア導体膜の厚さが厚くなる製造工程の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0020】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0021】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0022】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0023】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0024】
(実施の形態1)
<半導体装置(BGAパッケージ)の構成例>
半導体装置のパッケージ構造には、例えば、BGA(Ball Grid Array)パッケージやQFP(Quad Flat Package)パッケージなどのように様々な種類がある。本発明の技術的思想は、これらのパッケージに適用可能であり、以下に、BGAパッケージからなる半導体装置の構成例と、QFPパッケージからなる半導体装置の構成例について説明する。
【0025】
まず、BGAパッケージからなる半導体装置の構成例について図面を参照しながら説明する。図1は、BGAパッケージからなる半導体装置SA1を上面から見た平面図である。図1に示すように、本実施の形態における半導体装置SA1は矩形形状をしており、半導体装置SA1の上面は樹脂(封止体)MRで覆われている。
【0026】
続いて、図2は、半導体装置SA1を上面から見た図であり、樹脂MRを透視して示す図である。図2に示すように、半導体装置SA1の樹脂MRを透視した内部には、矩形形状の配線基板WBが存在しており、この配線基板WB上に半導体チップCHPが配置されている。この半導体チップCHPも矩形形状をしている。半導体チップCHPの大きさは、配線基板WBの大きさよりも小さくなっており、半導体チップCHPは平面的に配線基板WBに内包されるように配置されている。特に、半導体チップCHPの四辺がそれぞれ配線基板WBの四辺と互いに並行するように配置されている。
【0027】
上述した半導体チップCHPには集積回路が形成されている。具体的に、半導体チップCHPを構成する半導体基板には、複数のMOSFETなどの半導体素子が形成されている。そして、半導体基板の上層には層間絶縁膜を介して多層配線が形成されており、これらの多層配線が半導体基板に形成されている複数のMOSFETと電気的に接続されて集積回路が構成されている。つまり、半導体チップCHPは、複数のMOSFETが形成されている半導体基板と、この半導体基板の上方に形成された多層配線を有している。このように半導体チップCHPには、複数のMOSFETと多層配線によって集積回路が形成されているが、この集積回路と外部回路とのインタフェースをとるために、半導体チップCHPにはパッドPDが形成されている。このパッドPDは、多層配線の最上層に形成されている最上層配線の一部を露出することにより形成されている。
【0028】
図2に示すように、半導体チップCHPの主面(表面、上面)には、複数のパッドPDが形成されている。具体的に、矩形形状をした半導体チップCHPの四辺のそれぞれに沿うように複数のパッドPDが形成されている。そして、半導体チップCHPに形成されている複数のパッドPDと相対するように配線基板WBの四辺のそれぞれに沿って複数のランド端子LD1が形成されている。そして、半導体チップCHPに形成されているパッドPDは、配線基板WBに形成されているランド端子LD1と、導電性部材を介して電気的に接続されている。なお、本実施の形態における導電性部材は、例えば、銅(Cu)からなるワイヤWである。
【0029】
次に、図3は、本実施の形態1における半導体装置SA1を裏面から見た図である。図3に示すように、半導体装置SA1の裏面には、複数の半田ボールSBがアレイ状(行列状)に配置されている。この半田ボールSBは半導体装置SA1の外部接続端子として機能するものである。
【0030】
図4は、図1のA−A線で切断した断面図である。図4において、配線基板WBの上面にはランド端子LD1が形成されている一方、配線基板WBの下面には端子(バンプランド、電極)LD2が形成されている。配線基板WBの内部には多層配線およびビアが形成されており、配線基板WBの上面に形成されているランド端子LD1と、配線基板WBの下面に形成されている端子LD2とは、配線基板WBの内部に形成されている多層配線と、ビアの内部に形成されたビア配線とによって電気的に接続されている。配線基板WBの下面に形成されている端子LD2はアレイ状に配置されており、この端子LD2上に半田ボールSBが搭載される。これにより、配線基板WBの裏面(下面)には、端子LD2と接続された半田ボールSBがアレイ状に配置される。
【0031】
配線基板WBの上面(表面、主面)には、半導体チップCHPが搭載されており、この半導体チップCHPは、配線基板WBと絶縁性の接着材ADで接着されている。そして、半導体チップCHPの主面に形成されているパッドPDと、配線基板WBの上面に形成されているランド端子LD1とはワイヤWで接続されている。さらに、配線基板WBの上面には半導体チップCHPおよびワイヤWを覆うように樹脂(封止体)MRが形成されている。
【0032】
このように構成されている半導体装置SA1によれば、半導体チップCHPに形成されているパッドPDがワイヤWを介して配線基板WBに形成されたランド端子LD1に接続され、このランド端子LD1は、配線基板WBの内部に形成されている配線およびビア配線によって、配線基板WBの裏面に形成されている端子LD2と電気的に接続される。したがって、半導体チップCHPに形成されている集積回路は、パッドPD→ワイヤW→ランド端子LD1→端子LD2→半田ボールSBの経路で最終的に半田ボールSBと接続されていることがわかる。このことから、半導体装置SA1に形成されている半田ボールSBへ外部回路を電気的に接続することにより、半導体チップCHPに形成されている集積回路と外部回路とを接続することができることがわかる。
【0033】
<半導体装置(BGAパッケージ)の製造方法>
BGAパッケージからなる半導体装置SA1は、上記のように構成されており、以下に、その製造方法について簡単に説明する。図5は、BGAパッケージからなる半導体装置SA1を製造する工程の流れを示すフローチャートである。
【0034】
まず、半導体基板(半導体ウェハ)のそれぞれのチップ領域上に半導体素子(MOSFET)、多層配線およびパッドを形成する。そして、半導体基板の裏面研削を実施して半導体基板の厚さを薄くした後、半導体基板に形成されているチップ領域をダイシングすることにより、複数の半導体チップを形成する。
【0035】
次に、表面に複数のランド端子が形成され、表面とは反対側の裏面に複数の端子が形成された配線基板を用意する。そして、配線基板の表面に存在するチップ搭載部(チップ搭載領域)に接着材を塗布する。その後、配線基板のチップ搭載部上に塗布した接着材を介して半導体チップを搭載する(ダイボンディング工程)(S101)。
【0036】
続いて、半導体チップに形成されているパッドと、配線基板に形成されているランド端子とをワイヤで接続する(ワイヤボンディング工程)(S102)。具体的には、まず、キャピラリを半導体チップに形成されているパッドに押し付けてボンディングする(ファーストボンディング)。その後、キャピラリを移動させて、配線基板に形成されているランド端子にワイヤをボンディングする(セカンドボンディング)。このようにして、半導体チップに形成されているパッドと、配線基板に形成されているランド端子とをワイヤで接続することができる。
【0037】
次に、半導体チップ、ワイヤ、配線基板の表面を覆うように、例えば、樹脂からなる封止体を形成する(モールド工程)(S103)。その後、配線基板の裏面に形成されている端子に、例えば、半田からなる半田ボール(外部接続端子)を取り付ける(半田ボール取り付け工程)(S104)。そして、封止体の表面に、例えば、レーザによって製造番号などからなるマークを刻印する(マーキング工程)(S105)。このようにして製造された半導体装置SA1は、最終的に検査を実施することにより(テスティング工程)(S106)、良品と不良品が選別され、良品と判断された半導体装置SA1が出荷される。
【0038】
上述した半導体装置SA1は、BGAパッケージからなる半導体装置であるが、本発明の技術的思想を適用できるパッケージ形態はこれに限らない。例えば、半導体チップを搭載する基材(配線板)として配線基板ではなくリードフレームを使用するパッケージ形態にも適用することができる。具体的に、本発明の技術的思想は、QFPパッケージやQFNパッケージにも幅広く適用することができる。特に、以下では、QFPパッケージからなる半導体装置の構成例について説明する。
【0039】
<半導体装置(QFPパッケージ)の構成例>
まず、QFPパッケージからなる半導体装置の構成について図面を参照しながら説明する。図6は、QFPパッケージからなる半導体装置SA2を上面から見た平面図である。図6に示すように、半導体装置SA2は矩形形状をしており、半導体装置SA2の上面は樹脂(封止体)RMで覆われている。そして、樹脂RMの外形を規定する四辺から外側に向ってアウターリードOLが突き出ている。
【0040】
続いて、半導体装置SA2の内部構造について説明する。図7は、図6のA−A線で切断した断面図である。図7に示すように、チップ搭載部TABの裏面は樹脂RMで覆われている。一方、チップ搭載部TABの上面には半導体チップCHPが搭載されており、半導体チップCHPの主面にはパッドPDが形成されている。そして、半導体チップCHPに形成されているパッドPDは、インナーリードILとワイヤWで電気的に接続されている。これらの半導体チップCHP、ワイヤWおよびインナーリードILは樹脂RMで覆われており、インナーリードILと一体化しているアウターリードOLが樹脂RMから突き出ている。樹脂RMから突き出ているアウターリードOLは、ガルウィング形状に成形されており、その表面にめっき膜PFが形成されている。
【0041】
チップ搭載部TAB、インナーリードIL、および、アウターリードOLは、例えば、銅材や鉄とニッケルとの合金である42アロイ(42Alloy)などから形成されており、ワイヤWは、例えば、銅線から形成されている。半導体チップCHPは、例えば、シリコンや化合物半導体(GaAsなど)から形成されており、この半導体チップCHPには、MOSFETなどの複数の半導体素子が形成されている。そして、半導体素子の上方に層間絶縁膜を介して多層配線が形成されており、この多層配線の最上層に多層配線と接続されるパッドPDが形成されている。したがって、半導体チップCHPに形成されている半導体素子は、多層配線を介してパッドPDと電気的に接続されていることになる。つまり、半導体チップCHPに形成されている半導体素子と多層配線により集積回路が形成され、この集積回路と半導体チップCHPの外部とを接続する端子として機能するものがパッドPDである。このパッドPDは、ワイヤWでインナーリードILと接続され、インナーリードILと一体的に形成されているアウターリードOLと接続されている。このことから、半導体チップCHPに形成されている集積回路は、パッドPD→ワイヤW→インナーリードIL→アウターリードOL→外部接続機器の経路によって、半導体装置SA2の外部と電気的に接続することができることがわかる。つまり、半導体装置SA2に形成されているアウターリードOLから電気信号を入力することにより、半導体チップCHPに形成されている集積回路を制御することができることがわかる。また、集積回路からの出力信号をアウターリードOLから外部へ取り出すこともできることがわかる。
【0042】
<半導体装置(QFPパッケージ)の製造方法>
QFPパッケージからなる半導体装置SA2は上記のように構成されており、以下に、その製造方法について簡単に説明する。図8は、半導体チップに集積回路を形成した後、QFPパッケージからなる半導体装置を製造する工程の流れを示すフローチャートである。まず、リードフレームに形成されているチップ搭載部に半導体チップを搭載した後(S201のダイボンディング)、半導体チップに形成されているパッドとインナーリードとをワイヤで接続する(S202のワイヤボンディング)。その後、チップ搭載部、半導体チップ、ワイヤ、インナーリードを樹脂で封止する(S203のモールド)。そして、リードフレームに形成されているダムを切断した後(S204のダム切断)、樹脂から露出しているアウターリードの表面にめっき膜を形成する(S205のめっき)。続いて、樹脂の表面にマークを形成した後(S206のマークキング)、樹脂から突き出ているアウターリードを成形する(S207のリード成形)。このようにして半導体装置SA2を形成した後、電気的特性検査が実施され(S208のテスティング)、良品と判断された半導体装置SA2が製品として出荷される。
【0043】
<ワイヤボンディング工程の詳細>
上述したように、半導体装置のパッケージ構造例として、BGAパッケージからなる半導体装置SA1と、QFPパッケージからなる半導体装置SA2を挙げたが、本発明の技術的思想は、両方に共通するワイヤボンディング工程(図5のS102、図8のS202)に関するものである。そこで、以下では、ワイヤボンディング工程の詳細について説明し、その後、本発明者が見出した課題、この課題を解決する工夫を施した実施の形態1における技術的思想の順で説明する。
【0044】
まず、上述したワイヤボンディング工程の詳細について、図面を参照しながら説明する。図9に示すように、放電トーチTCHによる放電により、キャピラリCAPから引き出されるワイヤWの先端部に初期ボールIBLを形成する。
【0045】
そして、図10に示すように、配線基板WBに搭載された半導体チップCHPのパッドPD上に、キャピラリCAPの先端部に形成されている初期ボールIBLをボンディングする(ファーストボンディング)。このとき、キャピラリCAPには、荷重および超音波振動が印加されており、半導体チップCHPのパッドPD上に着地した初期ボールIBLは、キャピラリCAPに加えられている荷重および超音波振動によって変形し、パッドPDとの接触面積が大きい圧着ボールPBLが形成される。
【0046】
次に、図11に示すように、半導体チップCHP上のパッドPDが形成されている位置から、キャピラリCAPからワイヤWを引き出しながら、キャピラリCAPを移動させる。そして、図12に示すように、配線基板WBに形成されているランド端子LD1にワイヤWをボンディングする(セカンドボンディング)。その後、図13に示すように、セカンドボンディングしたワイヤWをキャピラリCAPから切断する。このようにして、半導体チップCHPに形成されているパッドPDと、配線基板WBに形成されているランド端子LD1とをワイヤWで接続することができる。
【0047】
<本発明者が見出した課題>
上述したワイヤボンディング工程において、半導体チップCHP上に初期ボールIBLを着地させた後、キャピラリCAPに印加される荷重および超音波振動によって初期ボールIBLを変形させて圧着ボールPBLを形成する。その後、キャピラリCAPを上昇させる際、圧着ボールPBLとともにパッドPDが剥がれてしまう問題点が顕在化することが本発明者の検討により明らかになった。この点について、図面を参照しながら説明する。
【0048】
図14に示すように、例えば、パッドPDは、窒化チタン膜やチタン膜からなるバリア導体膜BCF1やバリア導体膜BCF2とアルミニウム膜(アルミニウム合金膜)から構成されており、このパッドPD上にキャピラリCAPによって圧着ボールPBLが形成される。このとき、キャピラリCAPは、ワイヤWを通すホール部HLUと、テーパ形状をしたインナチャンファ部ICUとを有しており、これらの形状に沿うようにして圧着ボールPBLが形成される。具体的に、圧着ボールPBLは、図14に示すように、パッドPDと接触する台座部(ツバ部)(第1部分)PEと、この台座部PE上に形成されたコーン部(第2部分)CNと、このコーン部CN上に形成され、ワイヤWと接続するホール挿入部(第3部分)HIとから構成される。ここで、圧着ボールPBLのコーン部CNは、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUにより形づけられる部分であり、圧着ボールPBLのホール挿入部HIは、キャピラリCAPのホール部HLUにより形づけられる部分である。
【0049】
図14に示すように、圧着ボールPBLは、キャピラリCAPにより印加される圧縮荷重F1によって形成されるが、特に、圧着ボールPBLの外縁部に加わる圧縮荷重F1は大きくなる。このため、例えば、図15に示すように、圧着ボールPBLの外縁部に局所的に印加される圧縮荷重F1によって、圧着ボールPBLの台座部PEにおける外縁部がパッドPDの内部に入り込み、パッドPDの外縁部に形成されているバリア導体膜BCF2が破壊される。さらに、圧着ボールPBLに印加される圧縮荷重によって、キャピラリCAPのホール部HLUに挿入される(押し込まれる)ホール挿入部HIの厚さも厚くなる。
【0050】
この結果、図16に示すように、キャピラリCAPを上昇させる際、パッドPDに入り込んだ台座部PEの外縁部で挟まれるパッドPDの一部が、キャピラリCAPのホール部HLUと、圧着ボールPBLのホール挿入部HIとの間の摩擦力に基づく引張荷重F2によって、剥がれてしまうのである。
【0051】
つまり、ワイヤボンディング工程においては、まず、キャピラリCAPから圧着ボールPBLの外縁部に印加される圧縮荷重が大きくなることで、圧着ボールPBLの台座部PEの外縁部がパッドの内部に入り込むという第1要因がある。さらに、圧縮荷重が大きくなることによって、ホール挿入部HIへの挿入圧力が大きくなる結果、圧着ボールPBLのホール挿入部HIとキャピラリCAPのホール部との間の摩擦力が大きくなり、キャピラリCAPを引き上げる際の引張応力が大きくなる第2要因がある。そして、この第1要因と第2要因によって、パッドPDの剥がれが生じると考えられるのである。
【0052】
ここで、ワイヤWの材料としては、例えば、金が使用される場合が多い。ところが、近年の金の需要増加に伴い、価格が上昇してきていることから、半導体装置の製造工程における材料コストを抑制するため、金よりも価格の安い銅からなる銅ワイヤを使用することが検討されている。特に、銅ワイヤは、コストだけでなく、金ワイヤよりも電気抵抗率が低いという特性を有していることから、電気的特性も優れており、注目されている。しかしながら、ワイヤWとして、銅を主成分とする材料を使用する場合、特に、上述したパッド剥がれが顕在化する。以下では、ワイヤWの材料として金を使用する場合と比較しながら、ワイヤWの材料として銅を主成分とする材料を使用する場合にパッド剥がれが頻発するメカニズムについて説明する。
【0053】
<銅ワイヤを使用する場合にパッド剥がれが頻発するメカニズム>
まず、金ワイヤを使用してワイヤボンディングを行なう場合について説明する。図17は、金ワイヤを使用する場合に、圧着ボールに印加される圧縮荷重および引張荷重を示すとともに、圧着ボールに印加される超音波振幅を示すグラフである。図17の上図において、まず、ワイヤボンディング工程では、初期ボールに圧縮荷重F1が印加される。この圧縮荷重F1には、キャピラリ自体の押し付けによる圧縮荷重と、パッドの水平方向に印加された超音波振幅がキャピラリの構造によって変換された超音波変換荷重からなる。そして、初期ボールに圧縮荷重を印加することにより圧着ボールを形成した後、キャピラリを引き上げる際、圧着ボールに引張荷重F2が印加される。
【0054】
ここで、金は柔らかく変形しやすいため、初期ボールから圧着ボールへ変形させるために印加される圧縮荷重F1は比較的小さい。さらに、超音波振幅は、圧着ボールをパッドに擦りつけることにより、圧着ボールの表面に形成された酸化膜とパッド表面(一般的にはアルミニウム膜が多い)に形成された酸化膜と、を除去するために印加される。金ワイヤを使用する場合、金は酸化されないため、キャピラリに印加される超音波振幅は比較的小さい。このため、超音波振幅が変換された超音波変換荷重も小さくなる。
【0055】
具体的に、図18は、金からなる圧着ボールPBLをパッドPD上に形成する様子を示す図である。図18に示すように、圧着ボールPBLには、圧縮荷重F1が印加されている。この圧縮荷重F1は、キャピラリCAPの押し付けによる荷重と、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUによるテーパ形状によって、超音波振動USが垂直方向に変換された超音波変換荷重F1UYから構成される。このとき、金自体は柔らかく変形しやすいため、キャピラリCAPの押し付けによる荷重も小さくなるとともに、金自体は酸化されないため、超音波振動USも小さくなる。この結果、超音波変換荷重F1UYも小さくなる。したがって、キャピラリCAPの押し付けによる荷重と、超音波変換荷重F1UYとを加えた圧縮荷重F1も小さくなる。このため、図18に示すように、圧着ボールPBLの外縁部に局所的に大きな圧縮荷重F1がかかることがなく、台座部PEとパッドPDの接触部分にほぼ均一に荷重が印加される。このことから、金ワイヤを使用する場合には、台座部PEの外縁部がパッドPDに入り込むことはなく、パッド剥がれが生じる第1要因はほとんど生じない。また、圧縮荷重F1自体の大きさが小さくなるため、キャピラリCAPのホール部HLUへの注入圧力F1Pも小さくなる。この結果、圧着ボールPBLのホール挿入部HIの厚さが薄くなる。
【0056】
続いて、図19は、圧着ボールPBLを形成した後、キャピラリCAPを上方に引き上げる様子を示す図である。図19において、金ワイヤを使用する場合、上述したように、キャピラリCAPのホール部HLUに挿入される圧着ボールPBLのホール挿入部HIの厚さは薄い。したがって、キャピラリCAPのホール部HLUと、圧着ボールPBLのホール挿入部HIとの間の摩擦力も小さくなる結果、圧着ボールPBLに加わる引張荷重F2も小さくなる。このため、金ワイヤを使用する場合、上述した第2要因の影響も小さくなる。このように、金ワイヤを使用するワイヤボンディングでは、上述した第1要因および第2要因が顕在化しないため、第1要因と第2要因に起因したパッド剥がれが生じにくくなることがわかる。
【0057】
次に、銅ワイヤを使用してワイヤボンディングを行なう場合について説明する。図20は、銅ワイヤを使用する場合に、圧着ボールに印加される圧縮荷重および引張荷重を示すとともに、圧着ボールに印加される超音波振幅を示すグラフである。図20の上図において、まず、ワイヤボンディング工程では、初期ボールに圧縮荷重F1が印加される。この圧縮荷重F1は、キャピラリ自体の押し付けによる圧縮荷重と、パッドの水平方向に印加された超音波振幅がキャピラリの構造によって変換された超音波変換荷重からなる。そして、初期ボールに圧縮荷重を印加することにより圧着ボールを形成した後、キャピラリを引き上げる際、圧着ボールに引張荷重F2が印加される。
【0058】
ここで、銅は金よりも硬いため、銅からなる初期ボールを変形させて圧着ボールを形成するためには、金ワイヤの場合よりも大きな圧縮荷重F1を印加する必要がある。さらに、銅は金と異なり、酸化されるため、圧着ボールのパッドとの接触面に形成された酸化膜を除去する必要があり、圧着ボールに加える超音波振動(超音波振幅)も大きくなる。
【0059】
具体的に、図21は、銅からなる圧着ボールPBLをパッドPD上に形成する様子を示す図である。図21に示すように、圧着ボールPBLには、圧縮荷重F1が印加されている。この圧縮荷重F1は、キャピラリCAPの押し付けによる荷重と、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUによるテーパ形状によって、超音波振動USが垂直方向に変換された超音波変換荷重F1UYから構成される。このとき、銅は金よりも硬いため、キャピラリCAPの押し付けによる荷重も大きくなるとともに、銅自体は酸化されるため、酸化膜を除去するために必要とされる超音波振動USも大きくなる。この結果、超音波変換荷重F1UYも大きくなる。したがって、キャピラリCAPの押し付けによる荷重と、超音波変換荷重F1UYとを加えた圧縮荷重F1も大きくなる。このことから、図21に示すように、圧着ボールPBLの外縁部に局所的に大きな圧縮荷重F1がかかるため、台座部PEの外縁部がパッドPDの内部へ入り込み、パッドPDの内部に存在するバリア導体膜BCF2を局所的に破壊する。すなわち、銅ワイヤを使用する場合には、台座部PEの外縁部がパッドPDに入り込む可能性が高くなり、パッド剥がれが生じる第1要因が顕在化する。また、圧縮荷重F1自体の大きさが大きくなるため、キャピラリCAPのホール部HLUへの注入圧力F1Pも大きくなる。この結果、圧着ボールPBLのホール挿入部HIの厚さも厚くなる。
【0060】
続いて、図22は、圧着ボールPBLを形成した後、キャピラリCAPを上方に引き上げる様子を示す図である。図22において、銅ワイヤを使用する場合、上述したように、キャピラリCAPのホール部HLUに挿入される圧着ボールPBLのホール挿入部HIの厚さは厚くなっている。したがって、キャピラリCAPのホール部HLUと、圧着ボールPBLのホール挿入部HIとの間の摩擦力も大きくなる結果、圧着ボールPBLに加わる引張荷重F2も大きくなる。このため、銅ワイヤを使用する場合、上述した第2要因も顕在化する。このように、銅ワイヤを使用するワイヤボンディングでは、上述した第1要因および第2要因が顕在化するため、第1要因と第2要因に起因したパッド剥がれが生じやすくなることがわかる。
【0061】
そこで、本実施の形態1では、銅ワイヤを使用するワイヤボンディング工程において、パッド剥がれ(パッドに加わるダメージの一態様)を抑制できる工夫を施している。以下に、この工夫を施した本実施の形態1における技術的思想について説明する。
【0062】
<実施の形態1における特徴>
本実施の形態1における技術的思想は、パッド剥がれを防止するために、パッドの表面と平行する方向(水平方向)に印加される超音波振動が、キャピラリのインナチャンファ部のテーパ形状によって、パッドの表面に対して垂直方向の超音波変換荷重に変換される点に着目している。すなわち、この超音波変換荷重が大きくなると、圧着ボールに加わる圧縮荷重が大きくなり、パッド剥がれを引き起こすことになるので、本実施の形態1では、超音波変換荷重ができるだけ小さくなるように工夫を施している。
【0063】
まず、図23は、キャピラリCAPの外観構成を示す図である。図23に示すように、キャピラリCAPは先端部に行くにつれて細くなっており、先端部に広がり角度θICAが存在する。具体的に、この広がり角度θICAを拡大図で説明する。図24は、図23の領域ARを拡大した図である。図24に示すように、キャピラリCAPの先端部には、テーパ形状をしたインナチャンファ部ICUが存在し、このインナチャンファ部ICUの広がりを示す角度が広がり角度θICAである。この広がり角度θICAは、インナチャンファアングルとも呼ばれる。
【0064】
上述したキャピラリCAPによりパッドPD上に圧着ボールPBLを形成する際、パッドPDの表面と平行な方向の超音波振動USがキャピラリCAPに印加される。このとき、キャピラリCAPに印加される超音波振動USが、キャピラリCAPの先端部に形成されているインナチャンファ部ICUのテーパ形状によって超音波変換荷重に変換される。このメカニズムについて、図25を参照しながら説明する。
【0065】
図25は、キャピラリCAPによってパッドPD上に圧着ボールPBLを形成する様子を示す図である。図25に示すように、キャピラリCAPには、ワイヤを通すホール部HLUと、テーパ形状をしたインナチャンファ部ICUが形成されており、このホール部HLUおよびインナチャンファ部ICUの形状に沿うように圧着ボールPBLが形成されている。具体的に、圧着ボールPBLは、パッドPDと接触する台座部(第1部分)PEと、台座部PE上に形成されたコーン部(第2部分)CNと、コーン部CN上に形成され、ワイヤWと接続されるホール挿入部(第3部分)HIから形成される。このとき、圧着ボールPBLのコーン部CNは、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUのテーパ形状を反映するように形成され、圧着ボールPBLのホール挿入部HIは、キャピラリCAPのホール部HLUの形状を反映するように形成される。
【0066】
ここで、図25に示すように、キャピラリCAPには、パッドPDの表面と平行な方向に超音波振動USが印加されている。この超音波振動USによって、パッドPDの表面と圧着ボールPBLの底面との間を擦り付ける力が発生し、これにより、圧着ボールPBLの底面とパッドPDの表面に形成されている酸化膜を除去することができる。
【0067】
図25に示すように、超音波振動US自体は、パッドPDの表面と平行な方向に印加されるが、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUは、テーパ形状をしているため、このテーパ形状によって、超音波振動USは、斜め方向の超音波変換荷重F1Uに変換される。この斜め方向の超音波変換荷重F1Uは、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUのテーパが付いている面に対して垂直である。そして、この斜め方向の超音波変換荷重F1Uは、パッドPDの表面に平行な方向の超音波変換荷重F1UXと、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYを成分に持つことになる。ここで、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYは、パッドPDの表面と圧着ボールPBLの底面とを擦り付ける力としては機能せず、圧着ボールPBLをパッドPDに押し付ける圧縮荷重の一部となってしまうことがわかる。したがって、このパッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYが大きくなると、圧着ボールPBLの外縁部に局所的に大きな圧縮荷重がかかることになるため、台座部PEの外縁部がパッドPDの内部へ入り込む可能性が高くなり、パッド剥がれが生じる第1要因が顕在化しやすくなる。さらに、圧縮荷重自体の大きさが大きくなるため、キャピラリCAPのホール部HLUへの注入圧力も大きくなる。この結果、圧着ボールPBLのホール挿入部HIの厚さも厚くなることから、キャピラリCAPを引き上げる際、圧着ボールPBLのホール挿入部HIと、キャピラリCAPのホール部HLUとの間の摩擦力も大きくなり、パッド剥がれが生じる第2要因も顕在化しやすくなる。このように、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYが大きくなると、パッド剥がれが生じる第1要因および第2要因が顕在化しやすくなるので、パッド剥がれを防止する観点から、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYをできるだけ小さくする必要があることがわかる。
【0068】
この点に関し、本発明者が着目したのは、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUのテーパ形状に依存して、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさが変化することである。このことについて、さらに、図26を使用して説明する。
【0069】
図26は、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUの広がり角度θICAを変化させることにより、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさがどのように変化するのかを説明する図である。具体的に、図26(a)は、インナチャンファ部ICUの広がり角度θICAが90度よりも大きい場合を示しており、図26(b)は、インナチャンファ部ICUの広がり角度θICAが90度の場合を示している。また、図26(c)は、インナチャンファ部ICUの広がり角度θICAが90度よりも小さい場合を示している。
【0070】
まず、図26(a)に示すように、インナチャンファ部ICUの広がり角度θICAが90度よりも大きい場合、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさが大きくなってしまうことがわかる。つまり、図26(a)の場合、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさは、パッドPDの表面に平行な方向の超音波変換荷重F1UXの大きさよりも大きくなる。したがって、インナチャンファ部ICUの広がり角度θICAが90度よりも大きい場合、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさを小さくすることができず、パッド剥がれが生じる第1要因および第2要因が顕在化しやすくなることがわかる。
【0071】
続いて、図26(b)に示すように、インナチャンファ部ICUの広がり角度θICAが90度である場合、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさは、図26(a)の場合に比べて小さくなるが、まだ充分に小さくするまでには至っていない。つまり、図26(b)の場合、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさは、パッドPDの表面に平行な方向の超音波変換荷重F1UXの大きさと同程度となるが、この場合、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさが充分に小さいとは言えず、パッド剥がれが生じる第1要因および第2要因を充分に抑制できるまでには至っていないことがわかる。
【0072】
これに対し、図26(c)に示すように、インナチャンファ部ICUの広がり角度θICAが90度よりも小さい場合、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさは、図26(a)や図26(b)の場合に比べて極めて小さくなることがわかる。つまり、図26(c)の場合、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさは、パッドPDの表面に平行な方向の超音波変換荷重F1UXの大きさよりも充分に小さくなる。この結果、インナチャンファ部ICUの広がり角度θICAが90度よりも小さい場合においては、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさを充分小さくすることができ、パッド剥がれが生じる第1要因および第2要因を充分に抑制できることがわかる。
【0073】
そこで、本実施の形態1においては、圧着ボールPBLのコーン部CNを形成するキャピラリCAPのインナチャンファ部ICUの広がり角度θICAを90度より小さくするように構成してワイヤボンディング工程を実施する。つまり、本実施の形態1における特徴は、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUの広がり角度θICAを90度より小さくした状態で、圧着ボールPBLをパッドPD上に形成する点にある。
【0074】
これにより、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさが、パッドPDの表面に平行な方向の超音波変換荷重F1UXの大きさよりも小さくなるので、圧着ボールPBLの外縁部に局所的に大きな圧縮荷重がかかることを抑制できる。つまり、本実施の形態1によれば、台座部PEの外縁部がパッドPDの内部へ入り込む可能性を低くすることができるため、パッド剥がれが生じる第1要因の顕在化を抑制することができる。さらに、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさが、パッドPDの表面に平行な方向の超音波変換荷重F1UXの大きさよりも小さくなることから、圧縮荷重全体の大きさも小さくなり、キャピラリCAPのホール部HLUへの注入圧力も小さくなる。この結果、圧着ボールPBLのホール挿入部HIの厚さも薄くなることから、キャピラリCAPを引き上げる際、圧着ボールPBLのホール挿入部HIと、キャピラリCAPのホール部HLUとの間の摩擦力も低減することができ、パッド剥がれが生じる第2要因の顕在化も抑制できる。
【0075】
このように、本実施の形態1によれば、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUの広がり角度θICAを90度より小さく構成することにより、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYの大きさをパッドPDの表面に平行な方向の超音波変換荷重F1UXの大きさよりも小さくすることができる。このため、本実施の形態1によれば、パッド剥がれが生じる第1要因および第2要因の顕在化を抑制できるので、パッド剥がれを防止することができる。
【0076】
すなわち、本実施の形態1では、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUの広がり角度θICAを90度より小さく構成する直接的な効果として、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYをパッドPDの表面に平行な方向の超音波変換荷重F1UXよりも小さくできる。このことから、圧着ボールPBLの外縁部に印加される圧縮荷重全体の大きさを小さくすることができるので、圧着ボールPBLの外縁部がパッドPDに入り込むというパッド剥がれの第1要因を効果的に防止することができる。そして、さらに、本実施の形態1では、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYをパッドPDの表面に平行な方向の超音波変換荷重F1UXの大きさよりも小さくできる間接的な効果として、キャピラリCAPのホール部HLUへの注入圧力を小さくすることができる。この結果、キャピラリCAPのホール部HLUに注入される圧着ボールPBLのホール挿入部HIの厚さも薄くなり、キャピラリCAPを引き上げる際に発生するホール部HLUとホール挿入部HIとの間の摩擦力を低減できる。この結果、キャピラリCAPを引き上げる際に圧着ボールPBLに加わる引張荷重を低減できるので、パッド剥がれの第2要因も効果的に防止することができる。
【0077】
以上のように、本実施の形態1の特徴は、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUの広がり角度θICAを90度より小さくする点にあるが、さらに、パッド剥がれを引き起こす要因であるパッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYを小さくする観点からは、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUの広がり角度θICAを50度から70度の範囲内にすることが望ましい。なぜなら、広がり角度θICAを小さくすればするほど、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYを小さくすることができるからである。ただし、キャピラリCAPの先端部にテーパ形状のインナチャンファ部ICUを形成している理由がある。すなわち、キャピラリCAPの先端部に放電トーチによって初期ボールを形成するが、この初期ボールを固定するため、キャピラリCAPの先端部にテーパ形状のインナチャンファ部ICUを設けているのである。つまり、テーパ形状のインナチャンファ部ICUに初期ボールの一部を挿入して初期ボールを固定することにより、初期ボールがずれることなくパッドPD上に着地させることができるのである。したがって、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYをできるだけ小さくする観点からは、広がり角度θICAを小さくすることが望ましいが、あまり広がり角度θICAを小さくしすぎると、初期ボールを固定する観点から支障をきたすことになる。そこで、本実施の形態1では、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYをできるだけ小さくする観点と、初期ボールを確実に固定する観点との両立を図ることを考慮し、インナチャンファ部ICUの広がり角度θICAを50度から70度の範囲内にすることが望ましいとしているのである。この範囲の広がり角度θICAであれば、充分に、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYを小さくできるとともに、初期ボールの固定も確実に行なうことができる。
【0078】
続いて、本実施の形態1におけるワイヤボンディング工程について説明する。図27は、銅ワイヤを使用する場合に、圧着ボールに印加される圧縮荷重および引張荷重を示すとともに、圧着ボールに印加される超音波振幅を示すグラフである。図27の上図において、まず、ワイヤボンディング工程では、初期ボールに圧縮荷重F1が印加される。この圧縮荷重F1は、キャピラリ自体の押し付けによる圧縮荷重と、パッドの水平方向に印加された超音波振幅がキャピラリの構造によって変換された超音波変換荷重からなる。そして、初期ボールに圧縮荷重を印加することにより圧着ボールを形成した後、キャピラリを引き上げる際、圧着ボールに引張荷重F2が印加される。ここで、図20と図27を見比べてわかるように、銅ワイヤによる一般的なワイヤボンディング工程(図20参照)に対して、本実施の形態1によるワイヤボンディング工程(図27参照)では、超音波変換荷重と引張荷重F2とが共に小さくなっていることがわかる。
【0079】
つまり、超音波変換荷重に関して、本実施の形態1によるワイヤボンディング工程(図27参照)は、銅ワイヤによる一般的なワイヤボンディング工程(図20参照)と比べて、同程度の超音波(エネルギー、パワー)を印加しても、圧縮荷重F1が抑えられ、より圧着ボールとパッドとの接合性を向上できる方法であることがわかる。上述したパッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYが、パッドPDの表面に平行な方向の超音波変換荷重F1UXよりも小さい(パッドPDの表面に平行な方向の超音波変換荷重F1UXの方が、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYよりも大きい)ということは、印加した超音波の接合に寄与させる割合をその分高めたということを意味する。このことは、金ワイヤよりもパッドPDに接合させづらい銅ワイヤの接合性を高める上で重要である。
【0080】
さらに、本実施の形態1によるワイヤボンディング工程(図27参照)は、銅ワイヤによる一般的なワイヤボンディング工程(図20参照)と比べて、引張荷重F2が小さい。これは、本実施の形態1によるワイヤボンディング工程(図27参照)は、キャピラリのホール部に押し込まれた圧着ボールのホール挿入部の厚さが薄くなり(体積が少なくなり)、キャピラリを引き上げる際にホール部から圧着ボールのホール挿入部が抜けやすくなったことを意味する。このことは、パッド剥がれを抑制する上で重要である。
【0081】
具体的に、図28は、本実施の形態1において、銅からなる圧着ボールPBLをパッドPD上に形成する様子を示す図である。図28に示すように、圧着ボールPBLには、圧縮荷重F1が印加されている。この圧縮荷重F1は、キャピラリCAPの押し付けによる荷重と、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUによるテーパ形状によって、超音波振動USが垂直方向に変換された超音波変換荷重F1UYから構成される。このとき、本実施の形態1では、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUの広がり角度θICA(図28では図示せず)が90度よりも小さくなっているので、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYは、パッドPDの表面に平行な方向の超音波変換荷重F1UXよりも小さくなる。したがって、キャピラリCAPの押し付けによる荷重と、超音波変換荷重F1UYとを加えた圧縮荷重F1を小さくすることができる。このことから、図28に示すように、圧着ボールPBLの外縁部にかかる圧縮荷重F1の大きさを小さくすることができるので、台座部PEの外縁部がパッドPDの内部へ入り込む可能性が低くなり、パッド剥がれが生じる第1要因の顕在化は抑制される。さらに、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYが小さいことから、圧縮荷重F1自体の大きさも小さくなり、キャピラリCAPのホール部HLUへの注入圧力F1Pも小さくなる。この結果、圧着ボールPBLのホール挿入部HIの厚さも薄くなる。
【0082】
続いて、図29は、圧着ボールPBLを形成した後、キャピラリCAPを上方に引き上げる様子を示す図である。図29において、本実施の形態1では、上述したように、キャピラリCAPのホール部HLUに挿入される圧着ボールPBLのホール挿入部HIの厚さは薄くなっている。したがって、キャピラリCAPのホール部HLUと、圧着ボールPBLのホール挿入部HIとの間の摩擦力も低減できる結果、圧着ボールPBLに加わる引張荷重F2を小さくすることができる。このため、本実施の形態1によれば、上述した第2要因の顕在化も抑制される。このように、本実施の形態1におけるワイヤボンディングでは、上述した第1要因および第2要因の顕在化が抑制されるため、第1要因と第2要因に起因したパッド剥がれを効果的に抑制することができる。
【0083】
<本実施の形態1における圧着ボールの構造上の特徴>
上述したように、本実施の形態1では、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUの広がり角度θICAを90度より小さくした状態で、銅ワイヤのワイヤボンディングを実施することに特徴があるが、このワイヤボンディング工程上の特徴により形成された圧着ボールPBLの構造に製造工程中の特徴が痕跡として顕在化する。この圧着ボールPBLの構造上の特徴点を、一般的なワイヤボンディング工程で形成される圧着ボールPBL(P)との構造と比較しながら説明する。
【0084】
図30は、一般的なワイヤボンディング工程を経ることにより形成された圧着ボールPBL(P)の構造を示す図である。図30において、一般的な圧着ボールPBL(P)は、パッドPD上に形成された台座部PEと、この台座部PE上に形成されたコーン部CNと、コーン部CN上に形成されたホール挿入部HIから構成される。このとき、圧着ボールPBL(P)のパッドPDに接する圧着径をA、台座部PEの厚さをB、ホール挿入部HIの厚さをCとすると、以下の関係が成立する。すなわち、B≦A/10、C≧A/6が成立する。さらに、台座部PEの外縁部がパッドPDの内部へ入り込むとともに、コーン部CNの広がり角度は90度よりも大きくなっている。
【0085】
これに対し、図31は、本実施の形態1におけるワイヤボンディング工程を経ることにより形成された圧着ボールPBLの構造を示す図である。図31において、本実施の形態1における圧着ボールPBLは、パッドPD上に形成された台座部PEと、この台座部PE上に形成されたコーン部CNと、コーン部CN上に形成されたホール挿入部HIから構成される。このとき、圧着ボールPBLのパッドPDに接する圧着径をA、ホール挿入部HIの厚さをCとすると、以下の関係が成立する。すなわち、C<A/6が成立する。これは、本実施の形態1では、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYが充分に小さくなることから、ホール挿入部HIへの注入圧力が小さくなることに基づくものである。また、台座部PEの外縁部がパッドPDの内部へ入り込むことが防止されている。これも、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYが充分に小さくなることによる圧縮荷重の低減によるものである。さらに、コーン部CNの広がり角度は90度よりも小さくなっている。これは、本実施の形態1では、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUの広がり角度θICAを90度より小さくした状態で、銅ワイヤのワイヤボンディングを実施しているため、インナチャンファ部ICUの形状を反映して形成されるコーン部CNの広がり角度も90度よりも小さくなることに起因している。以上のように、本実施の形態1におけるワイヤボンディング工程を実施することにより形成される圧着ボールPBLでは、製法上の特徴が圧着ボールPBLの構造上の特徴として顕在化することがわかる。
【0086】
<変形例>
次に、本実施の形態1の変形例について説明する。上述したように本実施の形態1では、銅ワイヤを使用したワイヤボンディング工程を例に挙げて説明したが、本実施の形態1における技術的思想は、銅からなるスタッドバンプ電極を形成する工程にも幅広く適用することができる。なぜなら、スタッドバンプ電極も、キャピラリによって、先端部に形成された初期ボールをパッド上に着地させた後、圧縮荷重および超音波振動を印加することにより初期ボールを変形させて圧着ボールを形成し、この圧着ボールの先端部で銅ワイヤを切断することによりスタッドバンプ電極を形成するからである。つまり、銅ワイヤによるワイヤボンディング工程とスタッドバンプ電極形成工程のいずれにおいても、圧縮荷重および超音波振動を印加して圧着ボールを形成する点は共通するため、銅からなるスタッドバンプ電極を形成する工程においても、パッド剥がれの問題が顕在化すると考えられる。したがって、スタッドバンプ電極を形成する工程においても、本発明の技術的思想を適用することにより、パッド剥がれを効果的に防止することができる。
【0087】
以下に、スタッドバンプ電極の構成例について説明する。図32は、半導体チップCHP上に形成された複数のスタッドバンプ電極SBMPを示す図である。図32では、図示されていないが、半導体チップCHPの表面に形成されたパッド上にスタッドバンプ電極SBMPが配置されている。このようにスタッドバンプ電極SBMPを形成した半導体チップCHPは、例えば、フェイスダウンボンディングによって配線基板に実装される。
【0088】
図33は、スタッドバンプ電極SBMPを形成した半導体チップCHPを配線基板WBに実装する一例を示す図である。図33に示すように、配線基板WB上には端子TEが形成されており、この端子TEと、半導体チップCHPに搭載されたスタッドバンプ電極SBMPが相対するように配置される。そして、半導体チップCHPに搭載されたスタッドバンプ電極SBMPと、配線基板WB上に形成された端子TEとは、例えば、半田Sによって接続される。以上のようにして、スタッドバンプ電極SBMPを形成した半導体チップCHPを配線基板WBに実装することができる。
【0089】
(実施の形態2)
本実施の形態2における技術的思想も、前記実施の形態1における技術的思想と同様にパッド剥がれを防止することを目的とするが、本実施の形態2では、前記実施の形態1とは異なるアプローチでパッド剥がれを防止する例を説明する。具体的に、本実施の形態2では、キャピラリを引き上げる際に発生する圧着ボールへの引張荷重をできるだけ小さくすることを主要観点とした技術的思想について説明する。
【0090】
<実施の形態2の特徴>
まず、本実施の形態2におけるワイヤボンディング工程について説明する。図34は、銅ワイヤを使用する場合に、圧着ボールに印加される圧縮荷重および引張荷重を示すとともに、圧着ボールに印加される超音波振幅を示すグラフである。図34の上図において、まず、ワイヤボンディング工程では、初期ボールに圧縮荷重F1が印加される。この圧縮荷重F1は、キャピラリ自体の押し付けによる圧縮荷重と、パッドの水平方向に印加された超音波振幅がキャピラリの構造によって変換された超音波変換荷重からなる。そして、初期ボールに圧縮荷重を印加することにより圧着ボールを形成した後、キャピラリを引き上げる際、圧着ボールに引張荷重F2が印加される。ここで、図27と図34を見比べてわかるように、前記実施の形態1におけるワイヤボンディング工程(図27参照)に対して、本実施の形態2によるワイヤボンディング工程(図34参照)では、超音波変換荷重が大きくなっていることがわかる。それにもかかわらず、本実施の形態2でも、引張荷重F2が小さくなっている。前記実施の形態1では、キャピラリのインナチャンファ部の広がり角度を90度よりも小さくするという構成を取ることにより、パッドの表面に垂直な方向の超音波変換荷重の大きさを小さくする手段を取っている。これに対し、本実施の形態2では、超音波変換荷重を減らす工夫ではない別の工夫を施すことにより、圧着ボールに加わる引張荷重を低減しているのである。以下に、本実施の形態2における工夫について図面を参照しながら説明する。
【0091】
具体的に、図35は、本実施の形態2において、銅からなる圧着ボールPBLをパッドPD上に形成する様子を示す図である。図35に示すように、圧着ボールPBLには、圧縮荷重F1が印加されている。この圧縮荷重F1は、キャピラリCAPの押し付けによる荷重と、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUによるテーパ形状によって、超音波振動USが垂直方向に変換された超音波変換荷重F1UYから構成される。このとき、本実施の形態2では、前記実施の形態1とは異なり、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUの広がり角度θICA(図35では図示せず)が90度よりも小さくなっていない。このため、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYは、従来と同様であり、前記実施の形態1ほど小さくならない。したがって、キャピラリCAPの押し付けによる荷重と、超音波変換荷重F1UYとを加えた圧縮荷重F1はそれほど小さくならない。しかし、本実施の形態2では、図35に示すように、キャピラリCAPのホール部HLUへの注入圧力F1Pが小さくなっている。したがって、本実施の形態2によれば、注入圧力F1Pが小さくなっているので、圧着ボールPBLを構成するホール挿入部HIの厚さも薄くなる。この結果、キャピラリCAPを引き上げる際、キャピラリCAPのホール部HLUと、圧着ボールPBLのホール挿入部HIの間で発生する摩擦力を軽減できることから、圧着ボールPBLに加わる引張荷重を低減できる。このため、本実施の形態2によれば、パッド剥がれを防止することができる。
【0092】
では、本実施の形態2においては、どのようにして、キャピラリCAPのホール部HLUへの注入圧力F1Pを小さくしているのかについて説明する。図35に示すように、本実施の形態2では、台座部PEの厚さがコーン部CNの厚さよりも厚くなっている。つまり、本実施の形態2の特徴は、台座部PEの厚さを充分厚くすることにある。これにより、圧着ボールPBLにおいて、台座部PEの体積が大きくなる。台座部PEの体積が大きくなるということは、仮に、圧縮荷重F1が変わらないとすると、圧着ボールPBLにおける単位体積当たりの荷重が少なくなることを意味している。したがって、本実施の形態2では、台座部PEの厚さを厚くすることにより、単位体積当たりの荷重を減らすことができ、この構成によって、キャピラリCAPのホール部HLUへの注入圧力F1Pを減少させることができるのである。そして、この結果、圧着ボールPBLのホール挿入部HIの厚さは薄くなる。
【0093】
続いて、図36は、圧着ボールPBLを形成した後、キャピラリCAPを上方に引き上げる様子を示す図である。図36において、本実施の形態2では、上述したように、キャピラリCAPのホール部HLUに挿入される圧着ボールPBLのホール挿入部HIの厚さは薄くなっている。したがって、キャピラリCAPのホール部HLUと、圧着ボールPBLのホール挿入部HIとの間の摩擦力も低減できる結果、圧着ボールPBLに加わる引張荷重F2を小さくすることができる。このため、本実施の形態2によれば、上述した第2要因の顕在化が抑制される。さらに、本実施の形態2では、台座部PEの厚さを厚くするという特徴により、単位体積当たりの荷重を小さくすることができることから、圧着ボールPBLの外縁部にかかる圧縮荷重F1の大きさ自体も小さくすることができる。したがって、台座部PEの外縁部がパッドPDの内部へ入り込む可能性が低くなり、パッド剥がれが生じる第1要因の顕在化も抑制される。このように、本実施の形態2におけるワイヤボンディングにおいても、上述した第1要因および第2要因の顕在化を抑制することができるため、第1要因と第2要因に起因したパッド剥がれを効果的に抑制することができる。
【0094】
ここで、本実施の形態2では、台座部PEの厚さをコーン部CNの厚さよりも充分に厚くすることに特徴があるが、この特徴構成は、例えば、キャピラリCAPの先端部に形成する初期ボールの大きさを大きくすることにより実現できる。具体的に、初期ボールの大きさを大きくするには、放電トーチによる放電エネルギーを大きくすることにより実現することができる。例えば、放電トーチによる放電エネルギーを大きくするためには、放電電流を大きくしたり、放電時間を長くしたりすることにより実施することができる。例えば、初期ボールの径を55μmφから57μmφにすることにより、台座部PEの厚さを充分に厚くすることができる。
【0095】
<実施の形態2における圧着ボールの構造上の特徴>
上述したように、本実施の形態2におけるワイヤボンディング工程上の特徴により形成された圧着ボールPBLの構造に製造工程中の特徴が痕跡として顕在化する。この圧着ボールPBLの構造上の特徴点について説明する。
【0096】
図37は、本実施の形態2におけるワイヤボンディング工程を経ることにより形成された圧着ボールPBLの構造を示す図である。図37において、本実施の形態2における圧着ボールPBLは、パッドPD上に形成された台座部PEと、この台座部PE上に形成されたコーン部CNと、コーン部CN上に形成されたホール挿入部HIから構成される。このとき、圧着ボールPBLのパッドPDに接する圧着径をA、台座部PEの厚さをB、ホール挿入部HIの厚さをC、コーン部CNの厚さをDとすると、以下の関係が成立する。すなわち、本実施の形態2では、B>2A/9、C<A/6、B≧5D/4(BはDの1.25倍以上)が成立する。これは、本実施の形態2では、初期ボールの大きさを従来よりも大きくした結果、台座部PEの厚さが圧着径の2/9倍よりも大きくなるとともに、台座部PEの厚さがコーン部CNの厚さの1.25倍以上になるものである。また、C<A/6は、台座部PEの厚さが厚くなる結果、単位体積当たりの荷重が充分に小さくなることから、ホール挿入部HIへの注入圧力が小さくなることに基づくものである。さらに、台座部PEの外縁部がパッドPDの内部へ入り込むことも防止されている。これも、単位体積当たりの荷重が充分に小さくなることによる圧縮荷重の低減によるものである。以上のように、本実施の形態2におけるワイヤボンディング工程を実施することにより形成される圧着ボールPBLでは、製法上の特徴が圧着ボールPBLの構造上の特徴として顕在化することがわかる。
【0097】
(実施の形態3)
本実施の形態3における技術的思想も、前記実施の形態1や前記実施の形態2における技術的思想と同様にパッド剥がれを防止することを目的とするが、本実施の形態3では、前記実施の形態1や前記実施の形態2とは異なるアプローチでパッド剥がれを防止する例を説明する。具体的に、本実施の形態3では、キャピラリを引き上げる際に発生する圧着ボールへの引張荷重を限りなくゼロに近づけることを主要観点とした技術的思想について説明する。
【0098】
<実施の形態3の特徴>
まず、本実施の形態3におけるワイヤボンディング工程について説明する。図38は、銅ワイヤを使用する場合に、圧着ボールに印加される圧縮荷重および引張荷重を示すとともに、圧着ボールに印加される超音波振幅を示すグラフである。図38の上図において、まず、ワイヤボンディング工程では、初期ボールに圧縮荷重F1が印加される。この圧縮荷重F1は、キャピラリ自体の押し付けによる圧縮荷重と、パッドの水平方向に印加された超音波振幅がキャピラリの構造によって変換された超音波変換荷重からなる。そして、初期ボールに圧縮荷重を印加することにより圧着ボールを形成した後、キャピラリを引き上げる際、本実施の形態3では、圧着ボールに印加される引張荷重が限りなくゼロに近づくようになっている。このように本実施の形態3では、圧着ボールに加わる引張荷重を限りなくゼロに近づける点に特徴があり、この特徴を実現するための工夫を施している。以下に、本実施の形態3における工夫について図面を参照しながら説明する。
【0099】
本実施の形態3では、キャピラリCAPの先端部の形状に工夫を施しているので、この工夫点について説明する。図39は、従来のキャピラリCAPの先端部の形状を示す図である。図39において、キャピラリCAPの先端部には、テーパ形状をしたインナチャンファ部ICUが形成されており、このインナチャンファ部ICUの上部にワイヤを通すためのホール部HLU1が形成されている。このホール部HLU1の側面は、通常、垂直形状となっている。これに対し、図40は、本実施の形態3で使用するキャピラリCAPの先端部の形状を示す図である。図40に示すように、本実施の形態3において、キャピラリCAPの先端部には、テーパ形状をしたインナチャンファ部ICUが形成されており、このインナチャンファ部ICUの上方にワイヤを通すためのホール部HLU2が形成されている。本実施の形態3では、このホール部HLU2の形状に特徴があり、具体的に、ホール部HLU2の縦断面形状がテーパ形状となっている点に特徴がある。
【0100】
以下に、図39に示す従来のキャピラリCAPを使用したワイヤボンディング工程と、図40に示す本実施の形態3におけるキャピラリCAPを使用したワイヤボンディング工程とを比較することにより、本実施の形態3の利点について説明する。
【0101】
図41(a)〜図41(c)は、従来のキャピラリCAPを使用したワイヤボンディング工程を説明する図である。まず、図41(a)に示すように、キャピラリCAPの先端部に初期ボールIBLを形成する。そして、図41(b)に示すように、キャピラリCAPの先端部に形成した初期ボールIBLをパッドPD上に着地させた後、キャピラリCAPからの圧縮荷重および超音波振動を初期ボールIBLに印加して、圧着ボールPBLを形成する。このとき、キャピラリCAPからの圧縮荷重により圧着ボールPBLの一部がキャピラリCAPのホール部HLU1に挿入される。この圧着ボールPBLの部位がホール挿入部HIとなる。続いて、図41(c)に示すように、キャピラリCAPを引き上げる。このとき、従来のキャピラリCAPでは、ホール部HLU1の縦断面形状が垂直形状となっているため、キャピラリCAPを引き上げる際、キャピラリCAPのホール部HLU1の側面と、圧着ボールPBLのホール挿入部HIの側面の間で摩擦力が発生する(図41(c)の斜線部分)。このことから、圧着ボールPBLには、上述した摩擦力に起因する引張荷重F2が加わることになる。この圧着ボールPBLに加わる引張荷重F2が大きくなると、圧着ボールPBLがキャピラリCAPとともに上昇してしまうとともに、パッドPD剥がれが生じる要因ともなる。
【0102】
次に、図42(a)〜図42(c)は、本実施の形態3におけるキャピラリCAPを使用したワイヤボンディング工程を説明する図である。まず、図42(a)に示すように、キャピラリCAPの先端部に初期ボールIBLを形成する。そして、図42(b)に示すように、キャピラリCAPの先端部に形成した初期ボールIBLをパッドPD上に着地させた後、キャピラリCAPからの圧縮荷重および超音波振動を初期ボールIBLに印加して、圧着ボールPBLを形成する。このとき、キャピラリCAPからの圧縮荷重により圧着ボールPBLの一部がキャピラリCAPのホール部HLU1に挿入される。この圧着ボールPBLの部位がホール挿入部HIとなる。続いて、図42(c)に示すように、キャピラリCAPを引き上げる。このとき、本実施の形態3におけるキャピラリCAPでは、ホール部HLU2の縦断面形状がテーパ形状TPとなっているため、キャピラリCAPを引き上げる際、キャピラリCAPのホール部HLU1の側面と、圧着ボールPBLのホール挿入部HIの側面の間でほとんど摩擦力が発生しない。なぜなら、ホール部HLU2の側面の断面形状がテーパ形状TPになっている状態で、キャピラリCAP自体は垂直上方に引き上げられるため、キャピラリCAPのホール部HLU1の側面と、圧着ボールPBLのホール挿入部HIの側面の間で擦りあうことがほとんど生じないからである。したがって、本実施の形態3によれば、圧着ボールPBLには、摩擦力に起因する引張荷重F2がほとんど加わらないことがわかる。つまり、この圧着ボールPBLに加わる引張荷重が限りなくゼロに近づくので、本実施の形態3では、圧着ボールPBLに引張荷重が加わることによるパッドPD剥がれを効果的に防止できるのである。このように、本実施の形態3では、キャピラリCAPのホール部HLU2の断面形状をテーパ形状とすることにより、キャピラリCAPを引き上げる際、圧着ボールPBLに加わる引張荷重をほとんどゼロにすることができるので、引張荷重に基づくパッド剥がれを防止することができる。
【0103】
<実施の形態3における圧着ボールの構造上の特徴>
上述したように、本実施の形態3におけるワイヤボンディング工程上の特徴により形成された圧着ボールPBLの構造に製造工程中の特徴が痕跡として顕在化する。この圧着ボールPBLの構造上の特徴点について説明する。
【0104】
図43は、本実施の形態3におけるワイヤボンディング工程を経ることにより形成された圧着ボールPBLの構造を示す図である。図43において、本実施の形態3における圧着ボールPBLは、パッドPD上に形成された台座部PEと、この台座部PE上に形成されたコーン部CNと、コーン部CN上に形成されたホール挿入部HIから構成される。このとき、本実施の形態3では、キャピラリCAPのホール部HLU2の断面形状がテーパ形状となっているため、ホール部HLU2の形状を反映して形成される圧着ボールPBLのホール挿入部HIの側面もテーパ形状TPになる。この点が、本実施の形態3における圧着ボールPBLの構造上の特徴である。言い換えれば、本実施の形態3における圧着ボールPBLの構造上の特徴は、図43に示すように、パッドPDの表面に垂直な仮想垂直線L1を引いた場合、この仮想垂直線L1と、ホール挿入部HIの側面を通る直線L2とのなすテーパ角が0度以上(θ>0)となっているということができる。このように本実施の形態3では、テーパ角が0度以上であることが特徴であるが、特に、テーパ角は10度から20度の範囲内にあることが望ましい。これは、テーパ角が10度から20度の範囲内にあれば、キャピラリCAPを上昇させる際、キャピラリCAPのホール部HLU2と、圧着ボールPBLのホール挿入部HIとの間に発生する摩擦力を確実にほとんどゼロにすることができるからである。一方、テーパ角をあまり大きくしすぎると、ホール挿入部HIに銅材が注入されやすくなってしまうため、テーパ角は10度から20度の範囲内にあることが望ましいのである。さらに、本実施の形態3における圧着ボールPBLの構造上の特徴を言い換えれば、ホール挿入部HIのテーパ形状は、キャピラリCAPの根元部から先端部に向う方向において広がる形状となっているということもできるし、また、圧着ボールPBLのホール挿入部HIにおいて、コーン部CNと接するホール挿入部HIの底面の径は、ワイヤW(銅ワイヤ)と接するホール挿入部HIの上面の径よりも大きいということもできる。
【0105】
<変形例>
なお、圧着ボールPBLの構造を、例えば、図44に示すような形状となるように、キャピラリCAPのホール部HLU2の形状を加工しても、本実施の形態3と同様の効果を得ることができる。図44は、変形例における圧着ボールPBLの構造を示す図である。図44において、本変形例における圧着ボールPBLは、パッドPD上に形成された台座部PEと、この台座部PE上に形成されたコーン部CNと、コーン部CN上に形成されたホール挿入部HIから構成される。このとき、本変形例では、圧着ボールPBLのホール挿入部HIの側面とコーン部CNの側面が一体的な曲線で形成されている。この場合も、図44に示すように、パッドPDの表面に垂直な仮想垂直線L1を引いた場合、この仮想垂直線L1と、ホール挿入部HIの側面に接する直線L2とのなすテーパ角が0度以上(θ>0)となっている。このように本変形例でも、テーパ角が0度以上であることが特徴であるが、特に、テーパ角は10度から20度の範囲内にあることが望ましい。これは、テーパ角が10度から20度の範囲内にあれば、キャピラリCAPを上昇させる際、キャピラリCAPのホール部HLU2と、圧着ボールPBLのホール挿入部HIとの間に発生する摩擦力を確実にほとんどゼロにすることができるからである。一方、テーパ角をあまり大きくしすぎると、ホール挿入部HIに銅材が注入されやすくなってしまうため、テーパ角は10度から20度の範囲内にあることが望ましいのである。
【0106】
以上のように、本実施の形態3や本変形例におけるワイヤボンディング工程を実施することにより形成される圧着ボールPBLでは、製法上の特徴(ここでは、キャピラリCAPの形状)が圧着ボールPBLの構造上の特徴として顕在化することがわかる。
【0107】
(実施の形態4)
本実施の形態4における技術的思想は、前記実施の形態1〜前記実施の形態3における技術的思想を組み合わせたものである。
【0108】
<実施の形態4の特徴>
まず、本実施の形態4におけるワイヤボンディング工程について説明する。図45は、銅ワイヤを使用する場合に、圧着ボールに印加される圧縮荷重および引張荷重を示すとともに、圧着ボールに印加される超音波振幅を示すグラフである。図45の上図において、まず、ワイヤボンディング工程では、初期ボールに圧縮荷重F1が印加される。この圧縮荷重F1は、キャピラリ自体の押し付けによる圧縮荷重と、パッドの水平方向に印加された超音波振幅がキャピラリの構造によって変換された超音波変換荷重からなる。そして、初期ボールに圧縮荷重を印加することにより圧着ボールを形成した後、キャピラリを引き上げる際、圧着ボールに引張荷重F2が印加される。
【0109】
ここで、図20と図45を見比べてわかるように、銅ワイヤによる一般的なワイヤボンディング工程(図20参照)に対して、本実施の形態4によるワイヤボンディング工程(図45参照)では、超音波変換荷重が小さくなっていることがわかる。また、本実施の形態4でも、引張荷重F2が小さく、あるいは、かぎりなくゼロに近づくようになっている。
【0110】
具体的に、図46は、本実施の形態4において、銅からなる圧着ボールPBLをパッドPD上に形成する様子を示す図である。図46に示すように、圧着ボールPBLには、圧縮荷重F1が印加されている。この圧縮荷重F1は、キャピラリCAPの押し付けによる荷重と、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUによるテーパ形状によって、超音波振動USが垂直方向に変換された超音波変換荷重F1UYから構成される。このとき、本実施の形態4では、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUの広がり角度θICA(図46では図示せず)が90度よりも小さくなっているので、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYは小さくなる。したがって、キャピラリCAPの押し付けによる荷重と、超音波変換荷重F1UYとを加えた圧縮荷重F1を小さくすることができる。このことから、図46に示すように、圧着ボールPBLの外縁部にかかる圧縮荷重F1の大きさを小さくすることができるので、台座部PEの外縁部がパッドPDの内部へ入り込む可能性が低くなり、パッド剥がれが生じる第1要因の顕在化は抑制される。さらに、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYが小さいことから、圧縮荷重F1自体の大きさも小さくなり、キャピラリCAPのホール部HLUへの注入圧力F1Pも小さくなる。この結果、圧着ボールPBLのホール挿入部HIの厚さも薄くなる。
【0111】
さらに、本実施の形態4では、図46に示すように、台座部PEの厚さがコーン部CNの厚さよりも厚くなっている。つまり、本実施の形態4でも、台座部PEの厚さを充分厚くしている。これにより、圧着ボールPBLにおいて、台座部PEの体積が大きくなる。台座部PEの体積が大きくなるということは、仮に、圧縮荷重F1が変わらないとすると、圧着ボールPBLにおける単位体積当たりの荷重が少なくなることを意味している。したがって、本実施の形態4では、台座部PEの厚さを厚くすることにより、単位体積当たりの荷重を減らすことができ、この構成によって、キャピラリCAPのホール部HLUへの注入圧力F1Pを減少させることができるのである。そして、この結果、圧着ボールPBLのホール挿入部HIの厚さは薄くなる。
【0112】
続いて、図47は、圧着ボールPBLを形成した後、キャピラリCAPを上方に引き上げる様子を示す図である。図47において、本実施の形態4では、上述したように、キャピラリCAPのホール部HLUに挿入される圧着ボールPBLのホール挿入部HIの厚さは薄くなっている。したがって、キャピラリCAPのホール部HLUと、圧着ボールPBLのホール挿入部HIとの間の摩擦力も低減できる結果、圧着ボールPBLに加わる引張荷重F2を小さくすることができる。その上、本実施の形態4では、キャピラリCAPのホール部HLU2の縦断面形状がテーパ形状TPとなっている。このため、キャピラリCAPを引き上げる際、キャピラリCAPのホール部HLU1の側面と、圧着ボールPBLのホール挿入部HIの側面の間でほとんど摩擦力が発生しない。したがって、本実施の形態4によれば、圧着ボールPBLには、摩擦力に起因する引張荷重F2がほとんど加わらない。このように、本実施の形態4では、圧着ボールPBLに加わる引張荷重F2が限りなくゼロに近づくので、圧着ボールPBLに引張荷重が加わることによるパッドPD剥がれを効果的に防止できる。
【0113】
<実施の形態4における圧着ボールの構造上の特徴>
上述したように、本実施の形態4におけるワイヤボンディング工程上の特徴により形成された圧着ボールPBLの構造に製造工程中の特徴が痕跡として顕在化する。この圧着ボールPBLの構造上の特徴点について説明する。
【0114】
図48は、本実施の形態4におけるワイヤボンディング工程を経ることにより形成された圧着ボールPBLの構造を示す図である。図48において、本実施の形態4における圧着ボールPBLは、パッドPD上に形成された台座部PEと、この台座部PE上に形成されたコーン部CNと、コーン部CN上に形成されたホール挿入部HIから構成される。
【0115】
このとき、圧着ボールPBLのパッドPDに接する圧着径をA、ホール挿入部HIの厚さをCとすると、以下の関係が成立する。すなわち、C<A/6が成立する。これは、本実施の形態4では、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYが充分に小さくなることから、ホール挿入部HIへの注入圧力が小さくなることに基づくものである。また、台座部PEの外縁部がパッドPDの内部へ入り込むことが防止されている。これも、パッドPDの表面に垂直な方向の超音波変換荷重F1UYが充分に小さくなることによる圧縮荷重の低減によるものである。さらに、コーン部CNの広がり角度は90度よりも小さくなっている。これは、本実施の形態4では、キャピラリCAPのインナチャンファ部ICUの広がり角度θICAを90度より小さくした状態で、銅ワイヤのワイヤボンディングを実施しているため、インナチャンファ部ICUの形状を反映して形成されるコーン部CNの広がり角度も90度よりも小さくなることに起因している。
【0116】
さらに、本実施の形態4では、圧着ボールPBLのパッドPDに接する圧着径をA、台座部PEの厚さをB、ホール挿入部HIの厚さをC、コーン部CNの厚さをDとすると、以下の関係が成立する。すなわち、本実施の形態4では、B>2A/9、B≧5D/4(BはDの1.25倍以上)が成立する。これは、本実施の形態4では、初期ボールの大きさを従来よりも大きくした結果、台座部PEの厚さが圧着径の2/9倍よりも大きくなるとともに、台座部PEの厚さがコーン部CNの厚さの1.25倍以上になるものである。また、台座部PEの外縁部がパッドPDの内部へ入り込むことも防止されている。これは、単位体積当たりの荷重が充分に小さくなることによる圧縮荷重の低減によるものである。
【0117】
また、本実施の形態4では、キャピラリCAPのホール部HLU2の断面形状がテーパ形状となっているため、ホール部HLU2の形状を反映して形成される圧着ボールPBLのホール挿入部HIの側面もテーパ形状TPとなっている。
【0118】
以上のように、本実施の形態4におけるワイヤボンディング工程を実施することにより形成される圧着ボールPBLでは、製法上の特徴が圧着ボールPBLの構造上の特徴として顕在化することがわかる。
【0119】
(実施の形態5)
前記実施の形態1で説明したように、特に、銅ワイヤを使用したワイヤボンディング工程においては、パッド剥がれという問題点が存在する。このパッド剥がれは、キャピラリCAPから圧着ボールPBLの外縁部に印加される圧縮荷重が大きくなることで、圧着ボールPBLの台座部PEの外縁部がパッドの内部に入り込むという第1要因に起因する。さらに、パッド剥がれは、圧縮荷重が大きくなることによって、ホール挿入部HIへの注入圧力が大きくなる結果、圧着ボールPBLのホール挿入部HIとキャピラリCAPのホール部との間の摩擦力が大きくなり、キャピラリCAPを引き上げる際の引張応力が大きくなる第2要因にも起因する。特に、パッド剥がれは、パッドPDの構造だけではなく、パッドPDの下層に形成されている層間絶縁膜の構成にも依存する。したがって、パッド剥がれが生じやすくなる層間絶縁膜の構成を有する半導体装置においては、本発明の技術的思想を適用する有用性が高まることになる。以下に、上述したパッド剥がれが生じやすい層間絶縁膜の構成の一例について説明する。
【0120】
図49は、パッドPDの下層に存在する複数の層間絶縁膜の構成を示す断面図である。なお、図49においては、半導体基板1S上に形成される半導体素子(例えば、MOSFET)や複数の層間絶縁膜の間に形成される配線などの図示は省略している。図49に示すように、例えば、シリコン基板からなる半導体基板1S上には、層間絶縁膜IL1が形成されており、この層間絶縁膜IL1上に層間絶縁膜IL2が形成されている。そして、層間絶縁膜IL2上に層間絶縁膜IL3が形成されており、この層間絶縁膜IL3上に層間絶縁膜IL4が形成されている。ここで、例えば、層間絶縁膜IL1や層間絶縁膜IL2や層間絶縁膜IL4は、酸化シリコン膜から形成され、層間絶縁膜IL3は、SOG(Spin On Glass)膜から形成されている。すなわち、本実施の形態5では、異なる材料からなる複数の層間絶縁膜IL1〜層間絶縁膜IL4が形成されている。
【0121】
特に、本実施の形態5で着目する点は、複数の層間絶縁膜IL1〜層間絶縁膜IL4のヤング率である。例えば、層間絶縁膜IL1、層間絶縁膜IL2および層間絶縁膜IL4を構成する酸化シリコン膜のヤング率は、70GPa程度であり、層間絶縁膜IL3を構成するSOG膜のヤング率は、20GPa程度である。これに対し、シリコン基板からなる半導体基板1Sのヤング率は、170GPa程度であることから、層間絶縁膜IL1〜層間絶縁膜IL4のヤング率は、半導体基板1Sのヤング率よりも小さいことがわかる。ここで、重要な点は、複数の層間絶縁膜IL1〜層間絶縁膜IL4の中に、ヤング率の低いSOG膜から構成される層間絶縁膜IL3が含まれている点である。このようにヤング率の低い層間絶縁膜IL3が含まれている場合、パッド剥がれが顕在化しやすいのである。以下に、このメカニズムについて図面を参照しながら説明する。
【0122】
まず、図50に示すように、キャピラリCAPの先端部に初期ボールを形成する。そして、キャピラリCAPの先端部に形成した初期ボールをパッドPD上に着地させた後、キャピラリCAPからの圧縮荷重F1および超音波振動USを初期ボールに印加して、圧着ボールPBLを形成する。このとき、キャピラリCAPからの圧縮荷重F1がパッドPDに伝達され、さらに、パッドPDの下層に形成されている複数の層間絶縁膜IL1〜層間絶縁膜IL4に伝わる。このとき、図51に示すように、ヤング率の小さな層間絶縁膜IL3においては、同じ圧縮荷重F1を受けても、他の層間絶縁膜IL1、層間絶縁膜IL2および層間絶縁膜IL4よりもたわみ量が大きくなる。この結果、たわみ量の大きくなった層間絶縁膜IL3では、せん断応力も大きくなり、剥離が発生する。そして、ヤング率の小さな層間絶縁膜IL3において剥離が発生すると、キャピラリCAPを上昇させるときに発生する引張応力によって、パッド剥がれが生じてしまうのである。つまり、複数の層間絶縁膜IL1〜層間絶縁膜IL4の中に、他の層間絶縁膜よりもヤング率の低い層間絶縁膜が含まれていると、そのヤング率の低い層間絶縁膜で圧縮荷重に起因する剥離が発生しやすくなり、キャピラリCAPを上昇させる際の引張荷重によってパッド剥がれが生じやすくなるのである。したがって、ヤング率の異なる層間絶縁膜を有する半導体装置では、パッド剥がれが生じやすくなるため、本発明の技術的思想を適用する有用性が高まることがわかる。
【0123】
さらに、近年では、半導体チップの高集積化を実現するため、多層配線の微細化が進められている。このため、配線の微細化による高抵抗化と、配線間の距離が縮まることによる寄生容量の増加が問題として顕在化してきている。つまり、多層配線には電気信号が流れるが、配線の高抵抗化と配線間の寄生容量の増加により、電気信号の遅延が発生するのである。例えば、タイミングが重要な回路では、配線を流れる電気信号の遅延が誤動作を引き起こし、正常な回路として機能しなくなるおそれがある。このことから、配線を流れる電気信号の遅延を防止するため、配線の高抵抗化の抑制と、配線間の寄生容量の低減が必要とされる。
【0124】
そこで、多層配線を構成する材料をアルミニウム膜から銅膜に代えることが行なわれている。すなわち、アルミニウム膜に比べて銅膜は抵抗率が低いので、配線を微細化しても、配線の高抵抗化を抑制できるからである。さらに、配線間の寄生容量を低減する観点から、配線間に存在する層間絶縁膜の一部を酸化シリコン膜よりも誘電率の低い低誘電率膜で構成することが行なわれている。以上のように、多層配線を有する半導体装置では高性能化を図るために、配線の材料として銅膜を使用し、かつ、層間絶縁膜の一部に低誘電率膜を使用する傾向にある。
【0125】
すなわち、層間絶縁膜として、酸化シリコン膜よりも誘電率の低い低誘電率膜が使用されるようになってきているが、この低誘電率膜は、ヤング率も小さいという性質がある。一般的には、低誘電率膜のヤング率は、10〜20GPa程度である場合が多い。なぜなら、低誘電率膜は、誘電率を下げるため、膜の内部に空孔を形成することがあり、空孔を有する膜は脆く、ヤング率が低くなるからである。例えば、低誘電率膜としては、空孔を有するSiOC膜、空孔を有するHSQ(ハイドロジェンシルセスキオキサン、塗布工程により形成され、Si−H結合を持つ酸化シリコン膜、又は、水素含有シルセスキオキサン)膜、あるいは、空孔を有するMSQ(メチルシルセスキオキサン、塗布工程により形成され、Si−C結合を持つ酸化シリコン膜、又は、炭素含有シルセスキオキサン)膜などが存在する。これらのヤング率の低い低誘電率膜から層間絶縁膜を構成する場合も、パッド剥がれが生じやすくなるため、本発明の技術的思想を適用する有用性が高まる。
【0126】
(実施の形態6)
本実施の形態6では、パッド剥がれが生じやすいパッド構造について、比較的パッド剥がれが生じにくいパッド構造と対比しながら説明する。図52は、比較的パッド剥がれが生じにくいパッド構造におけるワイヤボンディング工程を示す図である。図52において、パッドPDは、例えば、バリア導体膜BCF1Aとアルミニウム膜とバリア導体膜BCF2Aとアルミニウム膜から構成されている。ここで、図52に示すように、キャピラリCAPからの圧縮荷重および超音波振動を初期ボールに印加して、圧着ボールPBLを形成する。このとき、キャピラリCAPからの圧縮荷重が大きくなると、圧着ボールPBLの台座部PEがパッドPDの内部に入り込み、バリア導体膜BCF2Aが破壊される。ここで、バリア導体膜BCF2Aの厚さが薄い場合、図52に示すように、圧着ボールPBLの底面全体にわたってバリア導体膜BCF2Aが破壊される。この状態で、キャピラリCAPを上昇させる場合、台座部PEの底面にほぼ均一に引張荷重F2が印加される。このように、バリア導体膜BCF2Aが薄い場合、局所的に大きな引張荷重F2が印加されにくくなることから、パッド剥がれが生じにくい。
【0127】
これに対し、図53は、比較的パッド剥がれが生じやすいパッド構造におけるワイヤボンディング工程を示す図である。図53において、パッドPDは、例えば、バリア導体膜BCF1Bとアルミニウム膜とバリア導体膜BCF2Bとアルミニウム膜から構成されている。ここで、図53に示すように、キャピラリCAPからの圧縮荷重および超音波振動を初期ボールに印加して、圧着ボールPBLを形成する。このとき、キャピラリCAPからの圧縮荷重が大きくなると、圧着ボールPBLの台座部PEがパッドPDの内部に入り込み、バリア導体膜BCF2Bが破壊される。ここで、バリア導体膜BCF2Aの厚さが厚い場合、図53に示すように、圧縮荷重が大きくなる台座部PEの外縁部においてだけ、バリア導体膜BCF2Bが破壊される。すなわち、図53に示すパッド構造では、バリア導体膜BCF2Bの厚さが厚いため、圧縮荷重が大きくなる台座部PEの外縁部下に存在するバリア導体膜BCF2Bだけが破壊される。この状態で、キャピラリCAPを上昇させる場合、バリア導体膜BCF2Bが破壊されてパッドPDの内部に入り込んだ外縁部に局所的に大きな引張荷重F2が印加される。このように、バリア導体膜BCF2Bが厚い場合、外縁部に局所的に大きな引張荷重F2が印加されることになるから、パッド剥がれが生じやすくなる。
【0128】
以上のように、パッドPDを構成するバリア導体膜の厚さが厚くなる場合は、バリア導体膜の厚さが薄い場合に比べて、パッド剥がれが生じやすくなることがわかる。したがって、特に、パッドPDを構成するバリア導体膜の厚さが厚いパッド構造に銅ワイヤを使用したワイヤボンディングを行なう際に、本発明の技術的思想を適用する有用性が高まることがわかる。
【0129】
ここで、パッドPDを構成するバリア導体膜の厚さが薄い場合と、パッドPDを構成するバリア導体膜の厚さが厚い場合との相違点は、半導体装置の製造工程の相違に起因している。以下では、まず、パッドPDを構成するバリア導体膜の厚さが薄くなる製造工程について説明し、その後、パッドPDを構成するバリア導体膜の厚さが厚くなる製造工程について説明する。
【0130】
図54は、パッドPDを構成するバリア導体膜の厚さが薄くなる製造工程の流れを示すフローチャートである。図54において、まず、半導体基板上にMOSFETを形成し(S301)、その後、MOSFETを覆う半導体基板上に第1層間絶縁膜を形成する(S302)。このとき、第1層間絶縁膜の表面は、下層に形成されているMOSFETによる凹凸形状を反映して凹凸ができる。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、凹凸が形成されている第1層間絶縁膜にコンタクトホールを形成し、このコンタクトホールに導体膜を埋め込むことにより、第1層間絶縁膜に第1プラグを形成する(S303)。次に、第1プラグを形成した第1層間絶縁膜上に第1層配線を形成する(S304)。この第1層配線は、例えば、バリア導体膜とアルミニウム膜の積層膜から形成される。続いて、第1層配線を形成した第1層間絶縁膜上に第2層間絶縁膜を形成した後(S305)、第2層間絶縁膜に第2プラグを形成する(S306)。このとき、第2プラグは、第1層間絶縁膜上に形成されている第1層配線に達するように形成されるが、第1層間絶縁膜の表面は、上述したように凹凸が形成されている。したがって、第1層間絶縁膜の表面に形成されている第1層配線の表面にも凹凸形状が反映されることになる。したがって、凹凸形状が存在する第1層配線に達するように第2プラグを形成する場合、深い接続孔に第2プラグを形成する領域と、浅い接続孔に第2プラグを形成する領域が混在することになる。このため、深い接続孔に形成された第2プラグの抵抗と、浅い接続孔に形成された第2プラグの抵抗が異なることになる。このことから、深い接続孔に形成された第2プラグの抵抗と、浅い接続孔に形成された第2プラグの抵抗との間のばらつきを小さくするため、接続孔の底部に露出するバリア導体膜を除去することが行なわれる。すなわち、接続孔の底部には、バリア導体膜とアルミニウム膜とバリア導体膜の積層膜からなる第1層配線が形成されているが、このバリア導体膜は、例えば、チタン膜/窒化チタン膜などの比較的抵抗の大きな膜から形成される。このため、第2プラグの抵抗ばらつきを小さくする観点から、接続孔の底部から露出する比較的抵抗の高いバリア導体膜を除去した後、接続孔に導体膜を埋め込むことにより第2プラグを形成する。その後は、同様の工程を繰り返して多層配線を形成し、最上層にパッドを形成する(S307)。このような工程では、接続孔から露出するバリア導体膜を除去することから、パッドにおいてもバリア導体膜の厚さが薄くなるのである。しかし、図54に示す製造工程は、近年の配線の微細化に伴って使用されなくなりつつある。なぜなら、微細化された配線パターンを形成するには、フォトリソグラフィ工程で使用する露光装置の解像精度を上げる必要があるが、解像精度を上げるということは光学特性としての焦点深度が浅くなるからである。つまり、凹凸形状の大きな図54に示す製造工程では、微細な配線パターンを形成しにくくなるのである。
【0131】
そこで、近年では、図55に示す製造工程が主に使用されつつある。以下に、図55に示す製造工程について説明する。図55は、パッドPDを構成するバリア導体膜の厚さが厚くなる製造工程の流れを示すフローチャートである。図55において、まず、半導体基板上にMOSFETを形成し(S401)、その後、MOSFETを覆う半導体基板上に第1層間絶縁膜を形成する(S402)。このとき、第1層間絶縁膜の表面は、下層に形成されているMOSFETによる凹凸形状を反映して凹凸ができる。しかし、図55に示す製造工程では、第1層間絶縁膜の表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法で研磨する(S403)。これにより、第1層間絶縁膜の表面は平坦化される。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、表面が平坦化された第1層間絶縁膜にコンタクトホールを形成し、このコンタクトホールに導体膜を埋め込む。これにより、第1層間絶縁膜に第1プラグを形成する(S404)。次に、第1プラグを形成した第1層間絶縁膜上に第1層配線を形成する(S405)。この第1層配線は、例えば、バリア導体膜とアルミニウム膜の積層膜から形成される。このとき、図55に示す製造工程では、第1層間絶縁膜の表面が平坦化されていることから、第1層間絶縁膜上に形成される第1層配線の表面も平坦となっている。
【0132】
続いて、第1層配線を形成した第1層間絶縁膜上に第2層間絶縁膜を形成した後(S406)、第2層間絶縁膜に第2プラグを形成する(S407)。このとき、第2プラグは、第1層間絶縁膜上に形成されている第1層配線に達するように形成されるが、図55に示す製造工程において、第1層間絶縁膜の表面は平坦化されている。したがって、第1層間絶縁膜の表面に形成されている第1層配線の表面も平坦となっている。このことから、図55に示す製造工程では、図54に示す製造工程のように、深い接続孔に第2プラグを形成する領域と、浅い接続孔に第2プラグを形成する領域が混在することはなく、ほぼ均一の深さの接続孔に第2プラグを形成することになる。このため、複数の第2プラグ間の抵抗ばらつきをほとんど考慮する必要がないので、接続孔の底部に露出するバリア導体膜を除去することは行なわれていない。その後は、同様の工程を繰り返して多層配線を形成し、最上層にパッドを形成する(S408)。このような図55に示す製造工程では、接続孔から露出するバリア導体膜を除去しないことから、パッドにおいてもバリア導体膜の厚さが厚くなるのである。このように図55に示す製造工程では、第1層間絶縁膜の表面をCMP法によって平坦化することから、露光装置の解像精度を上げることにより焦点深度が浅くなっても大きな問題とはならない。つまり、図55に示す製造工程は、微細化された配線パターンを形成するのに適した製造工程であり、今後の主流となる半導体装置の製造工程と位置づけることができる。ところが、図55に示す製造工程では、パッドの一部を構成するバリア導体膜の厚さが厚くなるため、図55に示す製造工程後に、銅ワイヤによるワイヤボンディング工程を実施すると、パッド剥がれの問題が顕在化する。しかし、図55に示す製造工程後に、銅ワイヤによるワイヤボンディング工程を使用する場合であっても、本発明の技術的思想を適用することにより、効果的にパッド剥がれを防止できるのである。
【0133】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0134】
上述のMOSFETは、ゲート絶縁膜を酸化膜から形成する場合に限定するものではなく、ゲート絶縁膜を広く絶縁膜から形成するMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)をも含むものと想定している。つまり、本明細書では、便宜上MOSFETという用語を使用しているが、このMOSFETは、MISFETをも含む意図の用語として本明細書では使用している。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0136】
1S 半導体基板
AD 接着材
AR 領域
BCF1 バリア導体膜
BCF1A バリア導体膜
BCF1B バリア導体膜
BCF2 バリア導体膜
BCF2A バリア導体膜
BCF2B バリア導体膜
CAP キャピラリ
CHP 半導体チップ
CN コーン部
F1 圧縮荷重
F1P 注入圧力
F1U 超音波変換荷重
F1UX 超音波変換荷重
F1UY 超音波変換荷重
F2 引張荷重
HI ホール挿入部
HLU ホール部
HLU1 ホール部
HLU2 ホール部
IBL 初期ボール
ICU インナチャンファ部
IL インナーリード
IL1 層間絶縁膜
IL2 層間絶縁膜
IL3 層間絶縁膜
IL4 層間絶縁膜
LD1 ランド端子
LD2 端子
L1 仮想垂直線
L2 直線
MR 樹脂
OL アウターリード
PBL 圧着ボール
PD パッド
PE 台座部
PF めっき膜
RM 樹脂
S 半田
SA1 半導体装置
SA2 半導体装置
SB 半田ボール
SBMP スタッドバンプ電極
TAB チップ搭載部
TCH 放電トーチ
TE 端子
TP テーパ形状
US 超音波振動
W ワイヤ
WB 配線基板
θICA 広がり角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップの表面上に配置されたパッドに銅ワイヤをボンディングする工程を有する半導体装置の製造方法において、
前記銅ワイヤをボンディングする工程は、
(a)キャピラリの先端部に前記銅ワイヤからなる初期ボールを形成する工程と、
(b)前記初期ボールを前記パッド上に着地させる工程と、
(c)前記初期ボールに荷重と超音波を印加することにより、前記初期ボールを変形させた圧着ボールを形成し、前記パッドと前記圧着ボールとを電気的に接続する工程と、
(d)前記キャピラリから前記銅ワイヤを引き出す工程と、を備え、
前記圧着ボールは、前記パッドと接続された第1部分、前記第1部分の上に位置する第2部分、および、前記第2部分の上に位置し、前記(d)工程で引き出された前記銅ワイヤが接続された第3部分を有し、
前記圧着ボールの前記第2部分を形成する前記キャピラリのインナチャンファ部の広がり角度は、90度より小さいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記キャピラリの前記広がり角度は、50度から70度の範囲内にあることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記圧着ボールの前記第1部分の厚さは、前記第2部分の厚さよりも厚くなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記圧着ボールの前記第1部分の厚さは、前記第2部分の厚さの1.25倍以上となることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記圧着ボールの前記第1部分の厚さは、前記圧着ボールの径の2/9以上となることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記圧着ボールの前記第3部分の厚さは、前記圧着ボールの径の1/6よりも小さいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記半導体チップの前記パッドの下層には、複数の層間絶縁膜が形成されており、
前記複数の層間絶縁膜は、ヤング率の異なる複数の絶縁膜を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記複数の層間絶縁膜のそれぞれのヤング率は、シリコンのヤング率よりも小さいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記半導体チップの前記パッドの下層には、複数の層間絶縁膜が形成されており、
前記複数の層間絶縁膜には、酸化シリコン膜よりも誘電率の低い低誘電率膜が含まれていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記銅ワイヤをボンディングする工程の前に、前記半導体チップを配線板上に搭載する工程を有し、
前記銅ワイヤをボンディングする工程は、さらに、前記(d)工程後、前記銅ワイヤを前記配線板の端子に電気的に接続する工程と、を有し、
前記銅ワイヤをボンディングする工程の後に、前記半導体チップ、前記銅ワイヤ、および、前記配線板の一部を封止体により封止する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記配線板は、リードフレームであり、
前記配線板の前記端子は、リードであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記配線板は、配線基板であり、
前記配線板の前記端子は、前記配線基板上に形成されたランド端子であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
半導体チップの表面上に配置されたパッドに銅ワイヤをボンディングする工程を有する半導体装置の製造方法において、
前記銅ワイヤをボンディングする工程は、
(a)キャピラリの先端部に前記銅ワイヤからなる初期ボールを形成する工程と、
(b)前記初期ボールを前記パッド上に着地させる工程と、
(c)前記初期ボールに荷重と超音波を印加することにより、前記初期ボールを変形させた圧着ボールを形成し、前記パッドと前記圧着ボールとを電気的に接続する工程と、
(d)前記キャピラリから前記銅ワイヤを引き出す工程と、を備え、
前記圧着ボールは、前記パッドと接続された第1部分、前記第1部分の上に位置する第2部分、および、前記第2部分の上に位置し、前記(d)工程で引き出された前記銅ワイヤが接続された第3部分を有し、
前記圧着ボールの前記第3部分の縦断面形状は、テーパ形状となっていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記テーパ形状は、前記キャピラリの根元部から先端部に向う方向において広がる形状となっており、
前記パッドの表面に垂直な仮想垂直線を引いた時に、前記仮想垂直線と前記第3部分の側面で形成されるテーパ角度は、0度よりも大きいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記テーパ角度は、10度から20度の範囲内にあることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記圧着ボールの前記第3部分において、前記第2部分と接する前記第3部分の底面の径は、前記銅ワイヤと接する前記第3部分の上面の径よりも大きいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記圧着ボールの前記第1部分の厚さは、前記第2部分の厚さよりも厚くなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記圧着ボールの前記第1部分の厚さは、前記第2部分の厚さの1.25倍以上となることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記圧着ボールの前記第1部分の厚さは、前記圧着ボールの径の2/9以上となることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記圧着ボールの前記第3部分の厚さは、前記圧着ボールの径の1/6よりも小さいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項21】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記銅ワイヤをボンディングする工程の前に、前記半導体チップを配線板上に搭載する工程を有し、
前記銅ワイヤをボンディングする工程は、さらに、前記(d)工程後、前記銅ワイヤを前記配線板の端子に電気的に接続する工程と、を有し、
前記銅ワイヤをボンディングする工程の後に、前記半導体チップ、前記銅ワイヤ、および、前記配線板の一部を封止体により封止する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項22】
請求項21に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記配線板は、リードフレームであり、
前記配線板の前記端子は、リードであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項23】
請求項21に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記配線板は、配線基板であり、
前記配線板の前記端子は、前記配線基板上に形成されたランド端子であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項24】
(a)パッドが配置された表面を有する半導体チップと、
(b)前記半導体チップが搭載された上面を有する配線板と、
(c)前記パッド上に形成された銅からなる圧着ボールと、
(d)前記圧着ボールと電気的に接続された前記配線板の端子と、
(e)前記半導体チップ、前記配線板の一部、および、前記圧着ボールを封止する封止体と、を備え、
前記圧着ボールは、前記パッドと接続された第1部分、前記第1部分の上に位置する第2部分、および前記第2部分の上に位置する第3部分を有し、
前記第2部分の広がり角度は、90度より小さいことを特徴とする半導体装置。
【請求項25】
請求項24に記載の半導体装置であって、
前記第2部分の広がり角度は、50度から70度の範囲内にあることを特徴とする半導体装置。
【請求項26】
請求項24に記載の半導体装置であって、
前記圧着ボールの前記第1部分の厚さは、前記第2部分の厚さよりも厚いことを特徴とする半導体装置。
【請求項27】
請求項24に記載の半導体装置であって、
前記圧着ボールの前記第1部分の厚さは、前記第2部分の厚さの1.25倍以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項28】
請求項24に記載の半導体装置であって、
前記圧着ボールの前記第1部分の厚さは、前記圧着ボールの径の2/9以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項29】
請求項24に記載の半導体装置であって、
前記圧着ボールと前記配線板の前記端子とは、銅ワイヤを介して電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項30】
請求項24に記載の半導体装置であって、
前記圧着ボールは、スタッドバンプ電極を構成し、
前記スタッドバンプ電極は、前記配線板の前記端子と電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項31】
(a)パッドが配置された表面を有する半導体チップと、
(b)前記半導体チップが搭載された上面を有する配線板と、
(c)前記パッド上に形成された銅からなる圧着ボールと、
(d)前記圧着ボールと電気的に接続された前記配線板の端子と、
(e)前記半導体チップ、前記配線板の一部、および、前記圧着ボールを封止する封止体と、を備え、
前記圧着ボールは、前記パッドと接続された第1部分、前記第1部分の上に位置する第2部分、および前記第2部分の上に位置する第3部分を有し、
前記圧着ボールの前記第3部分の縦断面形状は、テーパ形状となっていることを特徴とする半導体装置。
【請求項32】
請求項31に記載の半導体装置であって、
前記テーパ形状は、前記キャピラリの根元部から先端部に向う方向において広がる形状となっており、
前記パッドの表面に垂直な仮想垂直線を引いた時に、前記仮想垂直線と前記第3部分の側面で形成されるテーパ角度は、0度よりも大きいことを特徴とする半導体装置。
【請求項33】
請求項31に記載の半導体装置であって、
前記テーパ角度は、10度から20度の範囲内にあることを特徴とする半導体装置。
【請求項34】
請求項31に記載の半導体装置であって、
前記圧着ボールの前記第3部分において、前記第2部分と接する前記第3部分の底面の径は、前記銅ワイヤと接する前記第3部分の上面の径よりも大きいことを特徴とする半導体装置。
【請求項35】
請求項31に記載の半導体装置であって、
前記圧着ボールの前記第1部分の厚さは、前記第2部分の厚さよりも厚くなることを特徴とする半導体装置。
【請求項36】
請求項31に記載の半導体装置であって、
前記圧着ボールの前記第1部分の厚さは、前記第2部分の厚さの1.25倍以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項37】
請求項31に記載の半導体装置であって、
前記圧着ボールの前記第1部分の厚さは、前記圧着ボールの径の2/9以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項38】
請求項31に記載の半導体装置であって、
前記圧着ボールの前記第3部分の厚さは、前記圧着ボールの径の1/6よりも小さいことを特徴とする半導体装置。
【請求項39】
請求項31に記載の半導体装置であって、
前記圧着ボールと前記配線板の前記端子とは、銅ワイヤを介して電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項40】
請求項31に記載の半導体装置であって、
前記圧着ボールは、スタッドバンプ電極を構成し、
前記スタッドバンプ電極は、前記配線板の前記端子と電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【公開番号】特開2012−238814(P2012−238814A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108530(P2011−108530)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】