説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】固相拡散接合により、プロセス温度が低温化され、プロセス時間が短縮化され、かつフリップチップ構造の半導体装置提供する。
【解決手段】絶縁基板8と、絶縁基板8上に配置された信号配線電極12と、絶縁基板8上に若しくは絶縁基板8を貫通して配置されたパワー配線電極16と、絶縁基板8上にフリップチップに配置され、半導体基板26と、半導体基板26の表面上に配置されたソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GPと、半導体基板26の裏面上に配置されたドレインパッド電極36とを有する半導体デバイス10と、ゲートパッド電極GP上に配置されたゲートコネクタ18と、ソースパッド電極SP上に配置されたソースコネクタ20とを備え、ゲートコネクタ18とゲートパッド電極GPおよび信号配線電極12、ソースコネクタ20とソースパッド電極SPおよびパワー配線電極16は、固相拡散接合される半導体装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に固相拡散接合によるフリップチップ構造の半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在多くの研究機関において、シリコンカーバイド(SiC:Silicon Carbide)デバイスの研究開発が行われている。SiCデバイスの特徴として、低オン抵抗、高速スイッチングおよび高温動作などを挙げることができる。
【0003】
従来、半導体パワーモジュールの分野で使用されている絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などのSiデバイスでは、動作可能な温度範囲が150℃程度までであるため、従来のSn−Ag系などの低融点半田を使用しても駆動することが可能であった。
【0004】
しかしながら、SiCデバイスでは、理論的に、約400℃まで動作可能であり、従来の低融点半田を使用する場合、SiCデバイスを高温で駆動すると、低融点半田による結合部が溶融し、電極間のショート、SiCデバイスとベースプレート間の剥離などを生じ、SiCデバイスの信頼性を損なうものとなっていた。
【0005】
このため、SiCデバイスを高温で駆動することができず、SiCデバイスの特徴を最大限に生かすことができなかった。
【0006】
また、現在はこの高融点の接合などが盛んに開発されているが、量産を考慮した場合、プロセス時間が長く量産性に向いておらず、さらにプロセス温度も高いため、モジュールを作製する際に使用される個々の材料の熱膨張係数の違いにより、材料に余分なストレスがかかり、信頼性の確保ができない。
【0007】
SiCデバイスの相互接続方法および低熱抵抗パッケージについては、既に開示されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。特許文献1および特許文献2においては、SiCデバイスを収容するパッケージの形成方法が開示されており、SiCデバイスは、他の部品若しくは導電性表面に対して、液相拡散(TLP:Transient Liquid Phase)接合技術を用いて結合されている。
【0008】
一方、Snおよび/又はPbを含んでなり、融点が比較的低い、例えば、430℃以下の複合はんだ物品については、既に開示されている(例えば、特許文献3参照。)。特許文献3においては、半田合金が基本半田より小さい液相と固相の温度差を有することを特徴とする。
【0009】
さらに、ウエハレベルのソルダ・トランスファ技術を用いた金属トランスファMEMSパッケージについても、既に開示されている(例えば、非特許文献1参照。)。非特許文献1においては、相対的に薄いNi−Sn層を用いて、デバイスウェハとパッケージキャップとをTLP技術により、結合している。
【0010】
また、半導体素子を裏面から冷却器を介して液体冷却する機器についても開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第WO2006/074165号
【特許文献2】米国特許出願公開第US2006/0151871号明細書
【特許文献3】特表平04−503480号
【特許文献4】特開2010−245329号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ワレン シー・ウエルシュ3世、ジュンセオク チャエ、カーリル ナジャフィ著「ウエハレベルのソルダ・トランスファ技術を用いた金属トランスファMEMSパッケージ」、米国電気電子協会 トランザクション オン アドバンスド パッケージング,28巻、ナンバー4、2005年11月、643−649ページ(Warren C. Welch, III, Junseok Chae, and Khalil Najafi, “Transfer of Metal MEMS Packages Using a Wafer-Level Solder Transfer Technique”, IEEE TRANSACTION ON ADVANCED PACKAGING, VOL, 28, NO.4, NOVEMBER 2005, pp. 643-649)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
現在Pbフリーの要求を満たすために、一般的には、低融点半田であるSn−Ag半田などが使用されている。しかし上記で述べたように、低融点半田では、最大でも230℃程度と融解温度が低く、SiCのような高温駆動が可能なデバイスでは使用することができない。
【0014】
本発明の目的は、固相拡散接合により、プロセス温度が低温化され、プロセス時間が短縮化され、かつフリップチップ構造の半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明の一態様によれば、絶縁基板と、前記絶縁基板上に配置された信号配線電極と、前記絶縁基板上に若しくは前記絶縁基板を貫通して配置されたパワー配線電極と、前記絶縁基板上にフリップチップに配置され、半導体基板と、前記半導体基板の裏面上に配置されたソースパッド電極およびゲートパッド電極と、前記半導体基板の表面上に配置されたドレインパッド電極とを有する半導体デバイスと、前記ゲートパッド電極上に配置されたゲートコネクタと、前記ソースパッド電極上に配置されたソースコネクタとを備え、前記ゲートコネクタと前記ゲートパッド電極および前記信号配線電極、前記ソースコネクタと前記ソースパッド電極および前記パワー配線電極は、固相拡散接合される半導体装置が提供される。
【0016】
本発明の他の態様によれば、絶縁基板と、前記絶縁基板上に配置された信号配線電極と、前記絶縁基板上に若しくは前記絶縁基板を貫通して配置されたパワー配線電極と、前記絶縁基板上にフリップチップに配置され、半導体基板と、前記半導体基板の裏面上に配置されたソースパッド電極およびゲートパッド電極と、前記半導体基板の表面上に配置されたドレインパッド電極とを有する半導体デバイスと、前記ゲートパッド電極上に配置されたゲートコネクタと、前記ソースパッド電極上に配置されたソースコネクタとを備える半導体装置の製造方法において、前記ゲートコネクタと前記ゲートパッド電極および前記信号配線電極を固相拡散接合して、ゲート固相拡散接合層およびゲートコネクタ固相拡散接合層を形成する工程と、前記ソースコネクタと前記ソースパッド電極および前記パワー配線電極を固相拡散接合して、ソース固相拡散接合層およびソースコネクタ固相拡散接合層を形成する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、固相拡散接合により、プロセス温度が低温化され、プロセス時間が短縮化され、かつフリップチップ構造の半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態に係る半導体装置に搭載する半導体デバイスの模式的平面パターン構成図。
【図2】実施の形態に係る半導体装置に搭載する半導体デバイスの模式的鳥瞰構造図。
【図3】図1のI−I線に沿う模式的断面構造図。
【図4】実施の形態に係る半導体装置を搭載する絶縁基板の模式的平面パターン構成図。
【図5】図4の絶縁基板上に複数の半導体デバイスをフリップチップに搭載した様子を説明する模式的平面パターン構成図。
【図6】図4の絶縁基板上に複数の半導体デバイスをフリップチップに搭載した実施の形態に係る半導体装置の模式的平面パターン構成図。
【図7】図6のII−II線に沿う模式的断面構造図。
【図8】図6のII−II線に沿う模式的断面構造であり、かつヒートスプレッダー上に搭載した実施の形態に係る半導体装置の模式的断面構造図。
【図9】(a)実施の形態の変形例1に係る半導体装置の模式的鳥瞰構造図、(b)図9(a)のIII−III線に沿う模式的断面構造図。
【図10】実施の形態の変形例2に係る半導体装置の模式的断面構造図。
【図11】ヒートスプレッダー上に搭載した実施の形態の変形例2に係る半導体装置の模式的断面構造図。
【図12】(a)実施の形態の変形例3に係る半導体装置の模式的鳥瞰構造図、(b)図12(a)のIV−IV線に沿う模式的断面構造図。
【図13】実施の形態に係る半導体装置に適用する半導体デバイスの例であって、SiC・MOSFETの模式的断面構造図。
【図14】実施の形態に係る半導体装置に適用する半導体デバイスの例であって、ソースパッド電極SP、ゲートパッド電極GPを含むSiC・MOSFETの模式的断面構造図。
【図15】実施の形態に係る半導体装置を適用して構成された3相交流インバータの模式的回路構成図。
【図16】実施の形態に係る半導体装置の製造方法に適用する固相拡散接合工程の説明であって、(a)2つの金属材料が互いに対向した様子を示す模式的断面構造図、(b)2つの金属材料が互いに対向して接触し、高圧下で、接触界面が変形した様子を示す模式的断面構造図、(c)接触界面が完全に消失し、1つの境界面のみが形成された様子を示す模式的断面構造図、(d)原子拡散によって、境界面が除去されてシームレスな固相拡散接合が形成された様子を示す模式的断面構造図。
【図17】実施の形態に係る半導体装置の製造方法において、加圧・加熱工程における温度プロファイル例および圧力プロファイル例。
【図18】実施の形態に係る半導体装置の製造方法において、適用される実装基板の模式的断面構造図。
【図19】実施の形態に係る半導体装置の製造方法において、適用される半導体基板の模式的断面構造図。
【図20】実施の形態に係る半導体装置の熱サイクルテストにおける温度プロファイル例。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照して、実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0020】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0021】
[実施の形態]
実施の形態に係る半導体装置1に搭載する半導体デバイス10の模式的平面パターン構成は、図1に示すように表され、模式的鳥瞰構造は、図2に示すように表され、図1のI−I線に沿う模式的断面構造は、図3に示すように表される。
【0022】
実施の形態に係る半導体装置1に搭載する半導体デバイス10は、図1〜図3に示すように、半導体基板26と、半導体基板26の表面に形成された層間絶縁膜44上に配置されたゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPと、ゲートパッド電極GP上にゲート固相拡散接合層48Gを介して配置されたゲートコネクタ18と、ソースパッド電極SP上にソース固相拡散接合層48Sを介して配置されたソースコネクタ20と、半導体基板26の裏面に形成されたドレイン領域24上に配置されたドレインパッド電極36とを備える。ゲートコネクタ18は、T字型形状を有する。半導体デバイス10の詳細構造は、図7〜図8において詳述するため、図2においては、詳細構造は図示を省略している。
【0023】
図1において、ソースパッド電極SP、ゲートパッド電極GPの表面上には、銀(Ag)、金(Au)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)などを形成しても良い。すなわち、半導体デバイス10の表面には、ソースパッド電極SP・ゲートパッド電極GP上に、Ag、Au、Ti、Niなどからなる金属層を、めっき技術、スパッタリング技術若しくは真空蒸着技術などを用いて形成し、ソースコネクタ20・ゲートコネクタ18との間で、固相拡散接合層48S・48Gを形成しても良い。
【0024】
実施の形態に係る半導体装置1を搭載する実装基板70は、図4に示すように、絶縁基板8と、絶縁基板8上に配置された信号配線電極12およびパワー配線電極16を備える。
【0025】
図4の実装基板70上に複数の半導体デバイス101・102・103・104をフリップチップに搭載した様子を説明する模式的平面パターン構成は、図5に示すように表される。また、図4の実装基板70上に複数の半導体デバイス101・102・103・104をフリップチップに搭載した実施の形態に係る半導体装置1の模式的平面パターン構成は、図6に示すように表され、図6のII−II線に沿う模式的断面構造は、図7に示すように表され、図6のII−II線に沿う模式的断面構造であり、かつヒートスプレッダー100上に搭載した実施の形態に係る半導体装置1の模式的断面構造は、図8に示すように表される。尚、ここでは、半導体デバイス10を複数個並列配置した構成例について開示しているが、半導体デバイス10は、1個のみ配置されていても良い。ここで、図7および図8においては、半導体基板26の表面に形成された層間絶縁膜44は、図示を省略している。
【0026】
実施の形態に係る半導体装置1は、図1〜図8に示すように、絶縁基板8と、絶縁基板8上に配置された信号配線電極12と、絶縁基板8上に配置されたパワー配線電極16と、絶縁基板8上にフリップチップに配置され、半導体基板26と、半導体基板26の裏面上に配置されたソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GPと、半導体基板26の表面上に配置されたドレインパッド電極361・362・363・364とを有する半導体デバイス101・102・103・104と、ゲートパッド電極GP上に配置されたゲートコネクタ181・182・183・184と、ソースパッド電極SP上に配置されたソースコネクタ201・202・203・204とを備える。ここで、ゲートコネクタ181・182・183・184とゲートパッド電極GPおよび信号配線電極12、ソースコネクタ201・202・203・204とソースパッド電極SPおよびパワー配線電極16は、固相拡散接合される。
【0027】
実施の形態に係る半導体装置1は、半導体デバイス10のゲートパッド電極GP、ソースパッド電極SP、ドレインパッド電極36のすべてに固相拡散技術による固相拡散接合を形成し、半導体デバイス10のソースパッド電極SPが裏側になるように、フェースダウン(Face Down)に配置する。ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPを裏面に配置し、ドレインパッド電極36を表面に配置したフェースダウン配置によって、フリップチップ構造を実現している。半導体デバイス10のゲートパッド電極GP、ソースパッド電極SP、ドレインパッド電極36のすべてに固相拡散技術による固相拡散接合を形成するため、完全なワイヤボンドレス化を実現することができる。
【0028】
また、実施の形態に係る半導体装置1は、図8に示すように、実装基板70を搭載するヒートスプレッダー100をさらに備え、実装基板70とヒートスプレッダー100は、固相拡散接合されていても良い。
【0029】
また、実施の形態に係る半導体装置1は、図6〜図8に示すように、ドレインパッド電極361・362・363・364上に配置されたドレインコネクタDCを備え、ドレインパッド電極361・362・363・364とドレインコネクタDCは、固相拡散接合される。
【0030】
また、ゲートコネクタ181・182・183・184は、図2に示すように、T字型形状のゲートコネクタ181・182・183・184がゲートパッド電極GPと接触する面積よりもゲートコネクタ181・182・183・184が信号配線電極12と接触する面積のほうが大きくなされていても良い。さらに、ゲートコネクタ181・182・183・184のT字型形状は、末広がりのバチ型形状、若しくはテーパー形状を備えていても良い。このような末広がりのバチ型形状、若しくはテーパー形状を備えることによって、ゲートコネクタ181・182・183・184の強度を増大することができる。
【0031】
また、実施の形態に係る半導体装置1は、図5〜図6に示すように、半導体デバイス101・102・103・104を複数備え、半導体デバイス101・102・103・104の複数のゲートコネクタ181・182・183・184は、ゲートパッド電極GPと同時に固相拡散接合可能である。
【0032】
また、実施の形態に係る半導体装置1は、図5〜図6に示すように、半導体デバイス101・102・103・104を複数備え、半導体デバイス101・102・103・104の複数のソースコネクタ201・202・203・204は、ソースパッド電極SPと同時に固相拡散接合可能である。
【0033】
また、実施の形態に係る半導体装置1は、図5〜図6に示すように、半導体デバイス101・102・103・104を複数備え、半導体デバイス101・102・103・104の複数のドレインパッド電極361・362・363・364は、ドレインコネクタDCと同時に固相拡散接合可能である。
【0034】
また、図6〜図8に示すように、実施の形態に係る半導体装置1は、ゲートコネクタ181・182・183・184とゲートパッド電極GPおよび信号配線電極12との間に、固相拡散接合によって形成されたゲート固相拡散接合層48Gおよびゲートコネクタ固相拡散接合層48GCを備えていても良い。
【0035】
同様に、図6〜図8に示すように、ソースコネクタ201・202・203・204とソースパッド電極SPおよびパワー配線電極16との間に、固相拡散接合によって形成されたソース固相拡散接合層48Sおよびソースコネクタ固相拡散接合層48SCを備えていても良い。
【0036】
同様に、図6〜図8に示すように、ドレインコネクタDCとドレインパッド電極361・362・363・364との間に、固相拡散接合によって形成されたドレイン固相拡散接合層48Dを備えていても良い。
【0037】
また、実施の形態に係る半導体装置1において、実装基板70は、絶縁基板8の裏面上に配置された金属層6を備え、金属層6とヒートスプレッダー100との間に、固相拡散接合によって形成されたヒートスプレッダー固相拡散接合層48Hを備えていても良い。
【0038】
ゲート固相拡散接合層48G、ゲートコネクタ固相拡散接合層48GC、ソース固相拡散接合層48S、ソースコネクタ固相拡散接合層48SC、ドレイン固相拡散接合層48Dおよびヒートスプレッダー固相拡散接合層48Hは、Ag、Au、Ti、若しくはNiの組み合わせから選択されるいずれか単数若しくは複数の金属同士の固相拡散接合によって形成可能である。ここで、Ag、Au、Ti、若しくはNiの組み合わせから選択されるいずれか単数若しくは複数の金属は、めっき技術、スパッタリング技術若しくは真空蒸着技術を用いて形成可能である。
【0039】
また、ドレインコネクタDC、ソースコネクタ201・202・203・204およびゲートコネクタ181・182・183・184は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銅モリブデン(CuMo)合金、銅タングステン(CuW)合金、若しくはAl-SiCのいずれかで形成可能である。
【0040】
また、実施の形態に係る半導体装置1において、固相拡散接合層48G・48GC・48S・48SC・48D・48Hを形成する際に、接合部に加圧する圧力は、約1MPa以上約100MPa以下であり、加熱温度は、約200℃以上約350℃以下であることが望ましい。
【0041】
(変形例1)
実施の形態の変形例1に係る半導体装置1の模式的鳥瞰構造は、図9(a)に示すように表され、図9(a)のIII−III線に沿う模式的断面構造は、図9(b)に示すように表される。実施の形態の変形例1に係る半導体装置1においては、複数の半導体デバイス101・102・103を、絶縁基板8上にそれぞれ配置された信号配線電極12・パワー配線電極16に対して、フリップチップに配置し、かつドレインパッド電極361・362・363上にドレインコネクタDCを共通に配置している。実施の形態の変形例1に係る半導体装置1においては、ゲートパッド電極GPとソースパッド電極SPが並列に配置され、ゲートパッド電極GP上に配置されるゲートコネクタ181・182・183およびソースパッド電極SP上に配置されるソースコネクタ201・202・203は互いに並列にストライプ状に配置される。実施の形態の変形例1に係る半導体装置1においては、ゲートパッド電極GPとゲートパッド電極GP上に配置されるゲートコネクタ181・182・183を実施の形態に比較して、相対的に大きな面積で形成して、接合強度の増大化を図っている。
【0042】
また、実施の形態の変形例1においても、図示は省略されているが、固相拡散接合層48G・48GC・48S・48SC・48D・48Hを実施の形態の構成と同様に配置している。
【0043】
また、実施の形態の変形例1に係るに係る半導体装置1においても、固相拡散接合層48G・48GC・48S・48SC・48D・48Hを形成する際に、接合部に加圧する圧力は、約1MPa以上約100MPa以下であり、加熱温度は、約200℃以上約350℃以下であることが望ましい。
【0044】
(変形例2)
実施の形態の変形例2に係る半導体装置1は、図10に示すように、絶縁基板8と、絶縁基板8に配置された信号配線電極12と、絶縁基板8を貫通して配置されたパワー配線電極16aと、絶縁基板8上にフリップチップに配置され、半導体基板26と、半導体基板26の裏面上に配置されたソースパッド電極SPおよびゲートパッド電極GPと、半導体基板26の表面上に配置されたドレインパッド電極36とを有する半導体デバイス101と、ゲートパッド電極GP上に配置されたゲートコネクタ181と、ソースパッド電極SP上に配置されたソースコネクタ201とを備える。ここで、ゲートコネクタ181とゲートパッド電極GPおよび信号配線電極12、およびソースコネクタ201とソースパッド電極SPおよびパワー配線電極16は、固相拡散接合される。図10の構成は、実施の形態における図7の構成に対応している。
【0045】
実施の形態の変形例2に係る半導体装置1においては、パワー配線電極16aが絶縁基板8を貫通して配置されている。ここで、パワー配線電極16aは、例えば、厚さ約0.5mm〜約1.0mm程度の厚銅板で形成される。パワー配線電極16a上には、例えば、銀メッキ層19を形成して、ソースコネクタ201との接続を容易にしても良い。
【0046】
パワー配線電極16aにより、低抵抗で放熱性にも優れる厚銅板を介して、例えば、約数百アンペア程度の大電流も絶縁基板8の厚さ方向への通電が可能である。
【0047】
また、実施の形態の変形例2に係る半導体装置1は、図11に示すように、実装基板70を搭載するヒートスプレッダー100をさらに備え、実装基板70とヒートスプレッダー100は、固相拡散接合されていても良い。その他の構成は、実施の形態と同様であるため、重複説明は省略する。
【0048】
(変形例3)
実施の形態の変形例3に係る半導体装置1の模式的鳥瞰構造は、図12(a)に示すように表され、図12(a)のIV−IV線に沿う模式的断面構造は、図12(b)に示すように表される。実施の形態の変形例3に係る半導体装置1においては、複数の半導体デバイス101・102・103を、絶縁基板8上に配置された信号配線電極12・絶縁基板8を貫通して配置されたパワー配線電極16aに対して、フリップチップに配置し、かつドレインパッド電極361・362・363上にドレインコネクタDCを共通に配置している。実施の形態の変形例3に係る半導体装置1においては、ゲートパッド電極GPとソースパッド電極SPが並列に配置され、ゲートパッド電極GP上に配置されるゲートコネクタ181・182・183およびソースパッド電極SP上に配置されるソースコネクタ201・202・203は互いに並列にストライプ状に配置される。
【0049】
実施の形態の変形例3に係る半導体装置1においても、変形例2と同様に、パワー配線電極16aが絶縁基板8を貫通して配置されている。パワー配線電極16a上には、例えば、銀メッキ層19を形成して、ソースコネクタ201・202・203との接続を容易にしても良い。その他の構成は、実施の形態の変形例1と同様であるため、重複説明は省略する。
【0050】
(半導体装置の製造方法)
実施の形態に係る半導体装置1の製造方法は、図7に示すように、ゲートコネクタ181とゲートパッド電極GPおよび信号配線電極12を固相拡散接合して、ゲート固相拡散接合層48Gおよびゲートコネクタ固相拡散接合層48GCを形成する工程と、ソースコネクタ201とソースパッド電極SPおよびパワー配線電極16aを固相拡散接合して、ソース固相拡散接合層48Sおよびソースコネクタ固相拡散接合層48SCを形成する工程とを有する。
【0051】
また、実施の形態に係る半導体装置1の製造方法は、図7に示すように、ドレインコネクタDCとドレインパッド電極361を固相拡散接合して、ドレイン固相拡散接合層48Dを形成する工程を有していても良い。
【0052】
また、ゲート固相拡散接合層48Gおよびゲートコネクタ固相拡散接合層48GCを形成する工程と、ソース固相拡散接合層48Sおよびソースコネクタ固相拡散接合層48SCを形成する工程は、同時に実施しても良い。
【0053】
また、ドレイン固相拡散接合層48Dを形成する工程と、ソース固相拡散接合層48Sおよびソースコネクタ固相拡散接合層48SCを形成する工程は、同時に実施しても良い。
【0054】
また、実施の形態に係る半導体装置1の製造方法は、図8に示すように、絶縁基板8の裏面上に配置された金属層6とヒートスプレッダー100を固相拡散接合して、ヒートスプレッダー固相拡散接合層48Hを形成する工程を有していても良い。
【0055】
また、実施の形態に係る半導体装置1の製造方法において、固相拡散接合を形成する圧力は、例えば、約1MPa〜約100MPaであり、固相拡散接合を形成する温度は、例えば、約200℃〜約350℃である。
【0056】
(ドレイン固相拡散接合)
半導体デバイス10のドレイン側表面上にAg、Au、Ti、Niなどを、めっき技術、スパッタリング技術若しくは真空蒸着技術を用いて形成する。例えば、ドレイン領域24に対して順次Ti/Ni/Au/Agが積層されたドレインパッド電極36の構造を形成しても良い。また、半導体デバイス10のソース電極34をAlで形成する場合には、このAl上に順次Ni/Agが積層された電極構造を形成しても良い。
【0057】
また、ドレインコネクタDCの裏面上に、Ag、Au、Ti、Niなどを、めっき技術、スパッタリング技術若しくは真空蒸着技術を用いて形成しても良い。
【0058】
半導体デバイス10のドレイン側表面上に形成されたTi/Ni/Au/Agと、ドレインコネクタDCの裏面上に形成されたAg、Au、Ti、Niなどを接触させる。組み合わせは、基本的にはどのような組み合わせでも接合は可能である。また、基本的には半田などの接合材料は必要としないが、ドレインコネクタDCの裏面が粗い場合には、Agなどの半田や上記の金属で構成されたインサート金属を半導体デバイス10のドレイン側表面上とドレインコネクタDCとの間に配置し、表面の接触を促進しても良い。
【0059】
この状態で、ドレインコネクタDCの上部および実装基板70の下部から圧力を印加する。この圧力の値は、例えば、約1MPa以上約100MPa以下である。この圧力を印加する理由は、半導体デバイス10のドレイン側表面とドレインコネクタDCの裏面の接触を促進させるためである。接触が行われる過程でさらに圧力をかけ続けることで、それぞれの表面は塑性変形を起こし、接触面が界面に変化していく。このプロセス時には、圧力と同様に熱も与えている。この加熱温度は、約200℃〜約350℃である。この加熱工程によって、新しく接合面に形成された界面で起こる原子拡散を助長して、最終的には界面も消え、きれいな接合面が形成される。
【0060】
加熱温度(約200℃〜約350℃)の保持時間は約20分であり、加熱温度から常温までの冷却時間および常温から加熱温度まで昇温時間は合わせて約20分〜約40分であり、全体のプロセス時間としては、約1時間以内である。
【0061】
(ヒートスプレッダー固相拡散接合)
絶縁基板8とヒートスプレッダー100などのベースプレートの接合も同様に形成可能である。すなわち、ヒートスプレッダー100の表面にAg、Au、Ti、Niなどからなる金属層100a・100bを、めっき技術、スパッタリング技術若しくは真空蒸着技術を用いて形成する。また、絶縁基板8の表面にAg、Au、Ti、Niなどからなる金属層14・6を、めっき技術、スパッタリング技術若しくは真空蒸着技術を用いて形成する。
【0062】
その後、絶縁基板8の裏面とヒートスプレッダー100の表面を接触させ、上記と同様に圧力と熱を加えて、ヒートスプレッダー固相拡散接合層48Hを形成する。
【0063】
次に、半導体デバイス10の裏面側のゲートコネクタ18とゲートパッド電極GP間にゲート固相拡散接合層48Gを形成し、ソースコネクタ20とソースパッド電極SP間にソース固相拡散接合層48Sを形成しても良い。
【0064】
次に、半導体デバイス10のドレインパッド電極36の表面とドレインコネクタDCの裏面を接触させ、上記と同様に圧力と熱を加えて、ドレイン固相拡散接合層48Dを形成しても良い。
【0065】
尚、固相拡散接合層を形成する順番は、ヒートスプレッダー固相拡散接合層48H・ゲート固相拡散接合層48G・ソース固相拡散接合層48S・ドレイン固相拡散接合層48Dの順序に限定されるものではなく、適宜順番を選択可能である。例えば、ドレイン固相拡散接合層48D・ソース固相拡散接合層48S・ゲート固相拡散接合層48Gを同時工程で形成し、最後にヒートスプレッダー固相拡散接合層48Hを形成しても良い。
【0066】
(ソース固相拡散接合・ゲート固相拡散接合)
実施の形態に係る半導体装置1の製造方法においては、まず図2に示すように、ソースパッド電極SP、ゲートパッド電極GPに接合させるためのソースコネクタ20、ゲートコネクタ18を用意する。ソースコネクタ20およびゲートコネクタ18の材料は、基本的には、電気伝導度、熱伝導度の高い材料、さらに搭載する半導体デバイス10と熱膨張係数の近い材料が選択される。例えば、電気伝導度、熱伝導度の高い材料としては、Al、Cuなどの材料を選択可能である。或いは、搭載する半導体デバイス10と熱膨張係数の近い材料の観点からは、CuMoやCuW、さらにAl-SiCなどの材料を選択可能である。ソースコネクタ20およびゲートコネクタ18の材料の表面上には、AgやAu、さらにTiやNiを、めっき技術、スパッタリング技術若しくは真空蒸着技術を用いて形成しても良い。
【0067】
次に、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPの表面には、図示は省略されているが、Ag、Au、Ti、Niなどからなる金属層を、めっき技術、スパッタリング技術若しくは真空蒸着技術を用いて形成しても良い。
【0068】
ここで、金属層の材料は、これらに固体拡散接合するソースコネクタ20・ゲートコネクタ18の材料によって変更可能である。例えば、ゲートコネクタ・18ソースコネクタ20をAgめっき層で被覆する場合には、ゲートパッド電極GP・ソースパッド電極SP上は、Agからなる金属層をめっき技術、スパッタリング技術若しくは真空蒸着技術を用いて形成して、Ag同士で固相拡散接合を容易にすることも可能である。
【0069】
また、ゲートパッド電極GP・ソースパッド電極SPがAlで形成されている場合には、Alの酸化を防止するために、ゲートコネクタ18・ソースコネクタ20にはNiめっきを行うと良い。Alは非常に柔らかい金属であるため、固相拡散接合工程において塑性変形が容易に生じやすいが、ゲートコネクタ18・ソースコネクタ20にNiめっきを実施して、ある程度酸化膜が少ない状態を実現しておくことで、固相拡散接合を容易にすることができる。
【0070】
実施の形態に係る半導体装置1の製造工程後の構成は、図7〜図8に示すように表される。
【0071】
図7〜図8に示すように、半導体デバイス10のドレインパッド電極36とドレインコネクタDC間にドレイン固相拡散接合層48Dが形成され、さらにゲートコネクタ18とゲートパッド電極GP・信号配線電極12間にゲート固相拡散接合層48G・ゲートコネクタ固相拡散接合層48GCが形成される。
【0072】
同様に、図7〜図8に示すように、ソースコネクタ20とソースパッド電極SP・パワー配線電極16間にソース固相拡散接合層48S・ソースコネクタ固相拡散接合層48SCが形成される。
【0073】
実施の形態に係る半導体装置1の製造方法において、半導体デバイス10のドレインパッド電極36とドレインコネクタDCとの間のドレイン固相拡散接合工程では、ドレインパッド電極36の表面が、例えば、Agで形成され、ドレインコネクタDCの裏面には、例えば、Agめっきが施されているため、Ag−Ag接合による固相拡散接合層48Dが形成される。この固相拡散接合層48Dの融解温度もAgの融点である約960℃となる。
【0074】
実施の形態に係る半導体装置1においては、約200℃〜約350℃の相対的に低い加熱工程によって、高融点の固相拡散接合層48D・48S・48SC・48H・48G・48GCを得ることができる。
【0075】
また、実施の形態に係る半導体装置1においては、ソースパッド電極SP・ゲートパッド電極GPをソースコネクタ20・ゲートコネクタ18に固相拡散接合し、パワー配線電極16・信号配線電極12をソースコネクタ20・ゲートコネクタ18に固相拡散接合し、ドレインパッド電極36をドレインコネクタDCに固相拡散接合するため、完全なワイヤボンドレス化を実現すると共に、半導体デバイス10の両面冷却構造を実現することができる。
【0076】
さらに、実装基板70をヒートスプレッダー100に固相拡散接合することによって、半導体デバイス10の両面冷却性能をさらに向上することができる。
【0077】
尚、実施の形態の変形例1〜3に係る半導体装置1の製造方法についても実施の形態と同様であるため、重複説明は省略する。
【0078】
(半導体デバイスの構成例)
実施の形態に係る半導体装置1に適用する半導体デバイス10の例として、SiC・MOSFETの模式的断面構造は、図13に示すように、n-高抵抗層からなる半導体基板26と、半導体基板26の表面側に形成されたpベース領域28と、pベース領域28の表面に形成されたソース領域30と、pベース領域28間の半導体基板26の表面上に配置されたゲート絶縁膜32と、ゲート絶縁膜32上に配置されたゲート電極38と、ソース領域30に接続されたソース電極34と、半導体基板26の表面と反対側の裏面に配置されたn+ドレイン領域24と、n+ドレイン領域24に接続されたドレインパッド電極36とを備える。
【0079】
図7では、半導体デバイス10は、プレーナゲート型nチャネル縦型SiC・MOSFETで構成されているが、トレンチゲート型nチャネル縦型SiC・MOSFETなどで構成されていても良い。
【0080】
また、実施の形態に係る半導体装置1に適用する半導体デバイス10には、SiC・MOSFETの代わりに、GaN系FETなどを適用することもできる。
【0081】
実施の形態に係る半導体装置1に適用する半導体デバイス10には、SiC系、GaN系、若しくはAlN系のいずれかのパワーデバイスを適用可能である。
【0082】
更には、実施の形態に係る半導体装置1に適用する半導体デバイス10には、バンドギャップエネルギーが、例えば、1.1eV〜8eVの半導体を用いることができる。
【0083】
実施の形態に係る半導体装置によれば、固相拡散接合層48G・48S・48D・48Hとして、例えば、金属銀の融点が約960℃と高い耐熱性を備えているため、この固相拡散接合層48G・48S・48D・48HをSiC系FETやGaN系FETなどのパワーデバイスに適用することによって、パワーデバイスを高温で駆動することができる。
【0084】
実施の形態に係るに適用する半導体デバイス10の例であって、ソースパッド電極SP、ゲートパッド電極GPを含むSiC・MOSFETの模式的断面構造は、図14に示すように表される。ゲートパッド電極GPは、ゲート絶縁膜32上に配置されたゲート電極38に接続され、ソースパッド電極SPは、ソース領域30に接続されたソース電極34に接続される。
【0085】
また、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPは、図14に示すように、半導体デバイス10の表面を覆うパッシべーション用の層間絶縁膜44上に配置される。尚、ゲートパッド電極GPおよびソースパッド電極SPの下方の半導体基板26内には、図8の構成例では、図示を省略しているが、図13或いは、図14の中央部と同様に、微細構造のトランジスタ構造が形成されていても良い。
【0086】
さらに、図14に示すように、中央部のトランジスタ構造においても、パッシべーション用の層間絶縁膜44上にソースパッド電極SPが延在して配置されていても良い。或いは、図8の中央部のトランジスタ構造において、パッシべーション用の層間絶縁膜44上にゲートパッド電極GPが延在して配置されていても良い。
【0087】
(半導体装置を適用した応用例)
次に、図15を参照して、実施の形態に係る半導体装置1を用いて構成した3相交流インバータについて説明する。
【0088】
図15に示すように、3相交流インバータは、ゲートドライブ部50と、ゲートドライブ部50に接続されたパワーモジュール部52と、3相交流モータ部54とを備える。パワーモジュール部52は、3相交流モータ部54のU相、V相、W相に対応して、U、V、W相のインバータが接続されている。
【0089】
パワーモジュール部52は、コンデンサCが接続されたプラス端子(+)とマイナス端子(−)間に、インバータ構成のSiC・MOSFETQ1・Q2、Q3・Q4、およびQ5・Q6が接続されている。さらに、SiC・MOSFETQ1〜Q6のソース・ドレイン間には、ダイオードD1〜D6がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0090】
実施の形態に係る半導体装置1に適用される半導体デバイス10に相当するSiC・MOSFETQ1〜Q6は、上述のように、固相拡散接合層48G・48S・48D・48Hを介して実装基板70或いはヒートスプレッダー100の上にフリップチップ構成に電気的に接続される。
【0091】
(固相拡散接合工程)
ソースコネクタ20・ゲートコネクタ18の材料の表面上に、Ag、Au、Ti、Niなどを、めっき技術、スパッタリング技術若しくは真空蒸着技術を用いて形成し、かつソースパッド電極SP・ゲートパッド電極GPの表面上に、Ag、Au、Ti、Niなどを、めっき技術、スパッタリング技術若しくは真空蒸着技術を用いて形成した後、実際の固相拡散接合工程を実施する。
【0092】
固相拡散接合工程においては、プロセス時に大きな圧力(例えば、約10MPa〜約100MPa)と、例えば、約200℃〜約350℃程度の熱を与え、まず圧力により塑性変形を起こし接合させる材料の表面を接触させ、さらにそこに熱を与えることで原子拡散を起こし、2つの材料を接合させる。
【0093】
実施の形態に係る半導体装置の製造方法において、ドレインパッド電極36とドレインコネクタDCとの接合も上記の固相拡散接合工程によって、実現可能である。
【0094】
ドレインコネクタDCの上部から、さらに実装基板70の下部から圧力を印加する。さらに同時に熱も与えることで固相拡散接合を行う。
【0095】
実施の形態に係る半導体装置の製造方法に適用する固相拡散接合工程の説明であって、2つの金属材料M1・M2が互いに対向した様子を示す模式的断面構造は、図16(a)に示すように表され、2つの金属材料M1・M2が互いに対向して接触し、高圧下で、接触界面BFが塑性変形した様子を示す模式的断面構造は、図16(b)に示すように表され、接触界面BFが完全に消失し、1つの境界面BSのみが形成された様子を示す模式的断面構造は、図16(c)に示すように表され、原子拡散によって、境界面BSが除去されてシームレスな固相拡散接合が形成された様子を示す模式的断面構造は、図16(d)に示すように表される。
【0096】
(a)まず、図16(a)に示すように、2つの金属材料M1・M2を互いに対向して近接させる。
【0097】
(b)次に、2つの金属材料M1・M2を互いに対向して接触させ、例えば、約1MPa以上約100MPa以下の高い圧力を印加すると、図16(b)に示すように、接触界面BFが塑性変形する。
【0098】
(c)次に、上記の高圧下において、加熱工程を実施すると、図16(c)に示すように、接触界面BFが完全に消失し、1つの境界面BSのみが形成される。このときの加熱温度は、例えば、約200℃以上約350℃以下である。
【0099】
(d)さらに上記の高圧下において、加熱工程を実施し続けると、図16(d)に示すように、原子拡散によって、2つの金属材料M1・M2の境界面BSが除去されてシームレスな固相拡散接合が形成される。
【0100】
固相拡散接合工程における温度プロファイル例および圧力プロファイル例は、図17に示すように表される。図17の例では、初期状態において、圧力を約90MPa印加し、この圧力を保持したままで、約5分以内で、常温から350℃まで昇温する。その後、約20分間にわたり約90MPaの圧力と、約350℃の加熱温度を保持させる。その後、約25分間で、圧力を約90MPaから大気圧まで降下させると共に、加熱温度を約350℃から約200℃まで降下する。その後、約25分間で、加熱温度を約200℃から常温まで降下する。図17から明らかなように、加圧・加熱プロセス時間は、約1時間で終了しており、プロセス時間の短縮化が実現されている。
【0101】
実施の形態に係る半導体装置において適用される実装基板70の模式的断面構造は、図18に示すように、絶縁基板8の表面および裏面に金属層14・6を形成した構造を備えていても良い。ここで、金属層14・6は、DBC(Direct Bonding Copper)基板やDBA(Direct Brazed Aluminum)などの実装基板70の表面上のCu電極やAl電極で形成されていても良い。これらのCu電極やAl電極をパターニング加工して、絶縁基板8上に信号配線電極12とパワー配線電極16を形成しても良い。或いは、絶縁基板8上に、めっき技術、スパッタリング技術若しくは真空蒸着技術などを用いて信号配線電極12およびパワー配線電極16をパターン形成しても良い。
【0102】
ドレイン固相拡散接合を形成するためには、基板の平坦性が要求されるため、実装基板70の代わりに、図19に示すように、シリコンウェハなどの半導体基板7も適用可能である。図19の例では、半導体基板7上に、金属層5を形成している。
【0103】
金属層14・6・5は、Ag、Au、Ti、Niなどを、めっき技術、スパッタリング技術若しくは真空蒸着技術を用いて形成可能である。
【0104】
(ダイシェアー強度テスト)
実施の形態に係る半導体装置1において、半導体デバイス10のドレインパッド電極36とドレインコネクタとの間のドレイン固相拡散接合について、ダイシェアー(Die Shear)強度テストを実施したところ、室温および300℃の環境下で、共に従来のPb半田接合と同程度、若しくは従来のPb半田接合より高強度接合の結果が得られた。
【0105】
(熱サイクルテスト)
実施の形態に係る半導体装置1において、熱サイクルテストにおける温度プロファイル例は、図20に示すように表される。熱サイクルテストは窒素雰囲気中で行われ、マイナス50℃〜プラス250℃の範囲で実施した。熱サイクルの1サイクルの周期は80分であり、その内訳は、マイナス50℃で30分、マイナス50℃からプラス250℃までの昇温時間10分、プラス250℃で30分、プラス250℃からマイナス50℃までの冷却時間10分である。100サイクル毎に順方向電圧降下Vf、逆方向耐圧Vrを測定したが、特性劣化は観測されていない。
【0106】
以上の熱サイクルテストの結果より、実施の形態に係る半導体装置1の製造方法を用いて形成された固相拡散接合層48S・48G・48D・48Hの接合強度は、充分に確保されている。
【0107】
実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法によれば、固相拡散接合層が、AgやAuが固有に有する融点まで接合耐熱性を保持するため、この固相拡散接合層をSiC系やGaN系などのパワーデバイスに適用することによって、半導体デバイスを高温で駆動することができる。
【0108】
実施の形態によれば、固相拡散接合層が、従来の低融点半田よりも電気伝導度や熱伝導度が高いため、電気的にも熱的にも効率の高い半導体装置を実現可能である。
【0109】
実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法によれば、低温度プロセスで高融点の固相拡散接合層を形成することができるため、製造工程時に材料へのダメージを低減することができる。
【0110】
実施の形態によれば、固相拡散接合を適用することによって、従来の高融点半田であるPb半田とほぼ同じプロセス温度と時間を達成することができるため、量産性に向いた半導体装置を提供することができる。
【0111】
実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法によれば、半導体デバイスを複数個並列に配置した構造を同時プロセスで実現することも可能であるため、大容量化、量産化、工程時間の短縮化、工程の簡略化が容易である。
【0112】
実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法においては、固相拡散接合により電極接続を実施しているため、完全なワイヤボンドレス化が可能である。このため、製造時の信頼性を向上可能であり、また、ボンディングワイヤの有する寄生インダクタンスが低減され、高速スイッチング性能や高周波駆動性能を達成可能である。
【0113】
本実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法によれば、半導体デバイスを実装基板側とドレインコネクタDC側の両面から冷却する両面冷却構造を実現することができ、放熱性能に優れている。
【0114】
本実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法によれば、半導体デバイスのゲートコネクタ、ソースコネクタ、ドレインコネクタのすべてに固相拡散技術による固相拡散接合を形成した構造により、高温接合を実現可能となり、搭載されるSiC系若しくはGaN系などの半導体デバイスの高温動作性能を発揮させることができる。
【0115】
本発明によれば、固相拡散接合により、プロセス温度が低温化され、プロセス時間が短縮化され、かつフリップチップ構造の半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【0116】
[その他の実施の形態]
上記のように、実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0117】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の半導体装置は、パワー半導体モジュール、インテリジェントパワーモジュールなどパワーデバイス全般に利用可能である。
【符号の説明】
【0119】
1…半導体装置
5、6、14、100a、100b…金属層
7…半導体基板
8…絶縁基板
10、101、102、103、104…半導体デバイス
12…信号配線電極
16、16a…パワー配線電極
18、181、182、183、184…ゲートコネクタ
19…銀メッキ層
20、201、202、203、204…ソースコネクタ
24…ドレイン領域
26…高抵抗基板
28…ベース領域
30…ソース領域
32…ゲート絶縁膜
34…ソース電極
36…ドレインパッド電極
38…ゲート電極
44…層間絶縁膜
48G…ゲート固相拡散接合層
48GC…ゲートコネクタ固相拡散接合層
48S…ソース固相拡散接合層
48SC…ソースコネクタ固相拡散接合層
48D…ドレイン固相拡散接合層
48H…ヒートスプレッダー固相拡散接合層
50…ゲートドライブ部
52…パワーモジュール部
54…3相交流モータ部
70…実装基板
100…ヒートスプレッダー
C…コンデンサ
D1〜D6…ダイオード
GP…ゲートパッド電極
SP…ソースパッド電極
DC…ドレインコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板上に配置された信号配線電極と、
前記絶縁基板上に若しくは前記絶縁基板を貫通して配置されたパワー配線電極と、
前記絶縁基板上にフリップチップに配置され、半導体基板と、前記半導体基板の裏面上に配置されたソースパッド電極およびゲートパッド電極と、前記半導体基板の表面上に配置されたドレインパッド電極とを有する半導体デバイスと、
前記ゲートパッド電極上に配置されたゲートコネクタと、
前記ソースパッド電極上に配置されたソースコネクタと
を備え、前記ゲートコネクタと前記ゲートパッド電極および前記信号配線電極、前記ソースコネクタと前記ソースパッド電極および前記パワー配線電極は、固相拡散接合されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記絶縁基板を搭載するヒートスプレッダーをさらに備え、前記絶縁基板と前記ヒートスプレッダーは、固相拡散接合されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ドレインパッド電極上に配置されたドレインコネクタを備え、前記ドレインパッド電極と前記ドレインコネクタは、固相拡散接合されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ゲートコネクタは逆T字型形状を備え、前記ゲートコネクタが前記ゲートパッド電極と接触する面積よりも前記ゲートコネクタが前記信号配線電極と接触する面積のほうが大きいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体デバイスを複数備え、前記半導体デバイスの複数の前記ゲートコネクタは、前記ゲートパッド電極と同時に固相拡散接合可能であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体デバイスを複数備え、前記半導体デバイスの複数の前記ソースコネクタは、前記ソースパッド電極と同時に固相拡散接合可能であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体デバイスを複数備え、前記半導体デバイスの複数の前記ドレインパッド電極は、前記ドレインコネクタと同時に固相拡散接合可能であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ゲートコネクタと前記ゲートパッド電極および前記信号配線電極との間に、固相拡散接合によって形成されたゲート固相拡散接合層およびゲートコネクタ固相拡散接合層を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ソースコネクタと前記ソースパッド電極および前記パワー配線電極との間に、固相拡散接合によって形成されたソース固相拡散接合層およびソースコネクタ固相拡散接合層を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ドレインコネクタと前記ドレインパッド電極との間に、固相拡散接合によって形成されたドレイン固相拡散接合層を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記絶縁基板の裏面上に配置された金属層を備え、前記金属層と前記ヒートスプレッダーとの間に、固相拡散接合によって形成されたヒートスプレッダー固相拡散接合層を備えることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ゲート固相拡散接合層および前記ゲートコネクタ固相拡散接合層は、Ag、Au、Ti、若しくはNiの組み合わせから選択されるいずれか単数若しくは複数の金属同士の固相拡散接合によって形成されることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記ソース固相拡散接合層および前記ソースコネクタ固相拡散接合層は、Ag、Au、Ti、若しくはNiの組み合わせから選択されるいずれか単数若しくは複数の金属同士の固相拡散接合によって形成されることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記ドレイン固相拡散接合層は、Ag、Au、Ti、若しくはNiの組み合わせから選択されるいずれか単数若しくは複数の金属同士の固相拡散接合によって形成されることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記ヒートスプレッダー固相拡散接合層は、Ag、Au、Ti、若しくはNiの組み合わせから選択されるいずれか単数若しくは複数の金属同士の固相拡散接合によって形成されることを特徴とする請求項11に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記ゲートコネクタおよび前記ソースコネクタは、Al、Cu、CuMo、CuW、若しくはAlSiCのいずれかで形成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記半導体デバイスは、SiC系、GaN系、若しくはAlN系のいずれかのパワーデバイスであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記半導体デバイスは、バンドギャップエネルギーが1.1eV〜8eVの半導体を用いることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項19】
絶縁基板と、前記絶縁基板上に配置された信号配線電極と、前記絶縁基板上に若しくは前記絶縁基板を貫通して配置されたパワー配線電極と、前記絶縁基板上にフリップチップに配置され、半導体基板と、前記半導体基板の裏面上に配置されたソースパッド電極およびゲートパッド電極と、前記半導体基板の表面上に配置されたドレインパッド電極とを有する半導体デバイスと、前記ゲートパッド電極上に配置されたゲートコネクタと、前記ソースパッド電極上に配置されたソースコネクタとを備える半導体装置の製造方法において、
前記ゲートコネクタと前記ゲートパッド電極および前記信号配線電極を固相拡散接合して、ゲート固相拡散接合層およびゲートコネクタ固相拡散接合層を形成する工程と、
前記ソースコネクタと前記ソースパッド電極および前記パワー配線電極を固相拡散接合して、ソース固相拡散接合層およびソースコネクタ固相拡散接合層を形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記ドレインコネクタと前記ドレインパッド電極を固相拡散接合して、ドレイン固相拡散接合層を形成する工程を有することを特徴とする請求項19に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
前記ゲート固相拡散接合層およびゲートコネクタ固相拡散接合層を形成する工程と、前記ソース固相拡散接合層およびソースコネクタ固相拡散接合層を形成する工程は、同時に実施することを特徴とする請求項19に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記ドレイン固相拡散接合層を形成する工程と、前記ソース固相拡散接合層およびソースコネクタ固相拡散接合層を形成する工程は、同時に実施することを特徴とする請求項20に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項23】
前記絶縁基板の裏面上に配置された金属層と前記絶縁基板を搭載するヒートスプレッダーを固相拡散接合して、ヒートスプレッダー固相拡散接合層を形成する工程を有することを特徴とする請求項19に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項24】
前記固相拡散接合を形成する圧力は、1MPa以上100MPa以下であることを特徴とする請求項19に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項25】
前記固相拡散接合を形成する温度は、200℃以上350℃以下であることを特徴とする請求項19に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−89948(P2013−89948A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93085(P2012−93085)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】