説明

半導体装置および半導体装置の製造方法

【課題】ボイドを発生させることなく絶縁膜を注入することを可能とする終端トレンチを備えた半導体装置を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態にかかる半導体装置は,半導体素子が形成されたセル領域と,このセル領域の四方をX方向に対して長手方向が平行な2つのトレンチとX方向と90度であるY方向に対して長手方向が平行な2つのトレンチとで囲む終端トレンチ領域とを有する素子形成領域と,複数の素子形成領域を分離する溝を備えるダイシングライン領域とを具備する。この終端トレンチ領域は,素子形成領域の四隅においてX方向に長手方向が平行なトレンチとY方向に長手方向が平行なトレンチとが交差し,素子形成領域の四方側面において,終端トレンチ領域の短手方向の垂直断面が開放された状態で,ダイシングライン領域の長手方向と垂直に接していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は半導体ウエハの終端トレンチの構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧,大電流のスイッチング素子の一種であるパワーMOSFET(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)やパワーIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)において
は,トレンチゲート構造を採用したトランジスタ素子が用いられている。
【0003】
この種の半導体装置では,半導体ウエハ上に形成された素子形成領域の終端部分に,セル領域を囲い込む終端トレンチ領域が形成される。この終端トレンチ領域には,ボディ領域の表面からドリフト領域に達した内部に,ポリシリコン等の低誘電率絶縁材料が充填され,これによって,アバランシェ耐圧を向上させることを可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−193382号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,スピン塗布法によって低誘電率絶縁材料がされる場合,上記低誘電率絶縁材料は,個々のチップ領域を区分するダイシングラインに沿って流失し,その結果,終端トレンチ領域内部には低誘電率絶縁材料が完全に注入されず,ボイドが発生する。終端トレンチ領域内部にこのボイドが生じると,半導体ウエハを熱処理する際に終端トレンチ領域内部が膨張し,破裂や破損等の問題が生じる。
【0006】
そこで,終端トレンチ領域の内部が低誘電率絶縁材料で十分に注入された半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態にかかる半導体装置は,半導体素子が形成されたセル領域と,このセル領域の四方をX方向に対して長手方向が平行な2つのトレンチとX方向と90度であるY方向に対して長手方向が平行な2つのトレンチとで囲む終端トレンチ領域とを有する素子形成領域と,複数の素子形成領域を分離する溝を備えるダイシングライン領域とを具備する。この終端トレンチ領域は,素子形成領域の四隅においてX方向に長手方向が平行なトレンチとY方向に長手方向が平行なトレンチとが交差し,素子形成領域の四方側面において,終端トレンチ領域の短手方向の垂直断面が開放された状態で,ダイシングライン領域の長手方向と垂直に接していることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態にかかる半導体ウエハの平面図。
【図2】第1の実施形態にかかる絶縁膜が塗布される前の半導体ウエハの部分の平面拡大図。
【図3】第1の実施形態にかかる半導体ウエハの部分立体断面図。
【図4】第1の実施形態にかかる半導体ウエハの製造プロセス図。
【図5】第2の実施形態にかかる絶縁膜が塗布される前の半導体ウエハの部分の平面拡大図。
【図6】第2の実施形態にかかる絶縁膜で被覆された半導体ウエハの部分平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下,図面を参照して発明の実施の形態を説明する。まず,図1乃至図5を参照して第1の実施例を説明する。
【0010】
図1は第1の実施形態にかかる半導体ウエハの平面図,図2は第1の実施形態にかかる絶縁膜が塗布される前の半導体ウエハの部分の平面拡大図,図3は第1の実施形態にかかる半導体ウエハの部分立体断面図,図4は,第1の実施形態にかかる半導体ウエハの製造プロセス図,図5は第2の実施形態にかかる絶縁膜が塗布される前の半導体ウエハの部分の平面拡大図,図6は,第2の実施形態にかかる絶縁膜で被覆された半導体ウエハの部分平面図を示す。
【0011】
(第1の実施形態)
図1に示すように,半導体素子が形成されたシリコンなどの半導体ウエハ1は,半導体素子が形成され,分離後に半導体チップとなる複数の素子形成領域2と,素子形成領域2の間に配置されたダイシングライン領域3とから構成されている。半導体ウエハ1は,ダイシングライン領域3に沿って切り込みを入れる。この切り込みに沿って半導体ウエハ1を割ることにより,複数の半導体チップが形成される。切り込みを入れる方法には,ダイヤモンドカッタを用いる(スクライブ方式),レーザ照射によりウエハ表面を溶解する(レーザ方式)ブレードを高速回転させることにより切削溝を形成する(ダイシングソ−方式)などの手段がある。
【0012】
半導体素子が形成された半導体ウエハ1上には,複数層の配線層(多層配線)等が形成される(図示せず)。この複数層の配線層は,その層間を積層された絶縁膜により覆われている。この積層された絶縁膜は,後述の通り,素子形成領域2及びダイシングライン領域3を共に被覆する。
【0013】
図2は,前述の絶縁膜が塗布される前の半導体ウエハ1の部分(以下,A領域という)の平面拡大図である。A領域は,図1に示された半導体ウエハ1の点線で囲まれた平面領域Aを表している。素子形成領域2は2つの領域に大別される。すなわち,セル領域11と,素子形成領域2の終端でセル領域11の四方を囲むように形成された終端領域12(斜線部)とから構成される。
【0014】
セル領域11は,半導体素子で構成されるが,特定の素子に限定されない。一例としては,半導体基板としてのN+型層上に形成された半導体層としてのN−型エピタキシャル層にプレーナ型のMOSFETの一部としてP型ベース層を形成した例が示されている。
【0015】
終端領域12には,幅20μm〜50μm程度の終端トレンチ部21が,図2に示すようにセル領域11と終端領域12との境界にセル領域11の四方を囲い,さらに,終端部22を垂直に突き抜けて形成される。すなわち,この終端トレンチ部21は,1つのセル領域11について,長手方向がX方向に平行な2つのトレンチと,Y方向に平行な2つのトレンチとから構成される。この4つのトレンチでセル領域11の四方を囲むと共に,素子形成領域2の各四隅で長手方向がX方向に平行なトレンチとY方向に平行なラインとがそれぞれ交差する。
【0016】
図3は,前述の絶縁膜が塗布される前の半導体ウエハ1の上面図の立体断面図である。本図は,図2に示した半導体ウエハ1の上面図をB−B´で切断した図である。本図に示す通り,ダイシングライン領域3を挟んで異なる素子形成領域2が隣接しているが,本実施形態では各素子形成領域2の終端トレンチ部21はダイシングライン領域3を超えて接続されない。終端トレンチ部21の短手方向断面は開放状態でダイシングライン領域3の長手方向に対して垂直に接しているため,一部開放されるも,ダイシングライン領域3で閉塞状態が一部形成される。
【0017】
さらに,本図に示す通り,ダイシングライン領域3の深さは,終端トレンチ部21の深さより浅く形成される。一例として,ダイシングライン領域3の深さが50μm以下であるのに対し,終端トレンチ部21の深さは50μmになるように形成される。このため,半導体ウエハ1上に絶縁膜を滴下し,回転塗布すると,絶縁膜は,まず終端トレンチ部21よりも浅いダイシングライン領域3に絶縁膜が広がり,その後,ダイシングライン領域3よりも深い終端トレンチ部21に広がる。終端トレンチ部21はセル領域11を一巡する形状となっているため,毛細管現象により,トレンチ領域21にボイドが生じることなく満遍なく広がることが可能となる。
【0018】
以下,本実施形態にかかる半導体ウエハ1の製造方法について説明する。
【0019】
図4は,半導体ウエハ1の各領域,すなわちセル領域11,終端領域12,ダイシングライン領域3の製造方法を示す図である。
【0020】
図(a)に示すとおり,上記のセル領域11,終端領域12,ダイシングライン領域3について,まず,n型半導体基板(ドレイン領域)51の表層部に,トレンチゲート素子用のpウエル(ベース領域)52を選択的に形成するとともに,プレナーゲート素子用のPウエル53を選択的に形成する。次に,セル領域11およびダイシングライン領域3に対応する開口を有するSiO膜54を半導体ウエハ1上に形成する。ここで,セル領域11については,SiO膜をエッチングし,たとえば,3.8μm程度の厚さでメタル55を積層する。
【0021】
図(b)に示すとおり,図(a)の上にレジスト56を0.6から3.8μm程度の厚さで積層した後,終端領域12についてはRIE(Reactive Ion Etching)を施し,SiO膜をエッチングするとともにトレンチ部21の構造を形成する。終端トレンチ部21は,一例として,開口が20〜100μm,深さが50μm前後になるように形成される。このとき,ダイシングライン領域3についても,終端トレンチ部21と同様の方法で形成する。ただし,前述の通り,ダイシングライン領域3は終端トレンチ部21よりも深さが浅く,たとえば開口が50〜60μm程度であり,深さが50μm以下であることが好ましい。
【0022】
その後,絶縁膜57を半導体ウエハ1全体に回転塗布し,図(c)に示す通り,終端トレンチ部21にこれを埋め込む。本実施形態で用いられる絶縁膜57は,主として低誘電率絶縁膜(通常Low−k膜といわれている)を用いる。低誘電率絶縁膜は,半導体装置に用いられる材料として,シリコン酸化膜(比誘電率3.9−4.1)より比誘電率の低いF添加シリコン酸化膜(3.4−3.7)が広く用いられている。具体的には,回転と負において,PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene (比誘電率2.1)),PAE(Poly Aryl Ether (比誘電率2.7−2.9),ポーラスPAE(比誘電率2.0−2.2),BCB(Benzo Cyclo Butene:比誘電率2.6−3.3)などの絶縁膜を用いることが好ましい。
【0023】
この後,図(d)に示すように,パシベーション膜58を塗布することにより,半導体ウエハ1を保護してもよい。ただし,使用する絶縁膜57が保護膜として機能する場合には,パシベーション膜58を別途塗布する必要はない。
【0024】
以上の通り,セル領域11の四方を取り囲む終端領域12にダイシング領域3と導通すように形成された終端トレンチ部21を設けることで,ダイシングライン領域3に沿って広がった絶縁膜57が毛細管現象により週右端トレンチ部21内部に充填され易くなる。
【0025】
なお,毛細管現象は材料粘度が大きく影響するが,例えば開口が50μmまでは1000Cp以下の材料を使用することで,ボイドレスの埋め込み形状を形成することが可能である。また50μm以上では〜20000Cpまでの材料を使用することで,良好な埋め込み形状を得ることができる。終端トレンチ部21とダイシングライン領域3のトレンチ寸法は同一あるいはダイシングライン領域3のトレンチ寸法を広く作ることでより,毛細管現象を優位にすることができる。
【0026】
(第2の実施形態)
図5は第2の実施形態にかかる半導体ウエハ1の平面図であり,絶縁膜が塗布される前の状態を示す。本実施形態では,第1の実施形態と異なり,ダイシングライン領域3および隣接する素子形成領域2の終端トレンチ部21まで終端トレンチ部21を長手方向に延長させ,本図に示すように,終端トレンチ部をダイシングライン領域2まで永手方向に突き抜け,これらと接続可能とする。
【0027】
図6は,第2の実施形態にかかる絶縁膜が塗布される前の半導体ウエハ1の部分立体断面図であり,図5のC−C´で切断したものである。本図に示す通り,ダイシングライン領域3上であり,かつ終端トレンチ部21の長手方向延長上にトレンチ(以下,延長トレンチという)13が形成される。さらに,この延長トレンチ13はその長手方向延長上にある,隣接する素子形成領域2の終端トレンチ部21と接続される。また,本図に示すとおり,終端トレンチ部21や延長トレンチ13の深さはダイシングライン領域3よりも深く形成される。一例として,ダイシングライン領域3の深さが50μm以下であるのに対し,終端トレンチ部21および延長トレンチ部13の深さは50μmになるように形成される。このため,半導体ウエハ1上に絶縁膜を滴下し,回転塗布すると,絶縁膜は,まず終端トレンチ部21よりも浅いダイシングライン領域3に絶縁膜が広がり,その後,ダイシングライン領域3よりも深い終端トレンチ部21と延長トレンチ部13に広がる。終端トレンチ部21はセル領域11を一巡するとともに,延長トレンチ部13を介して隣接する素子形成領域2内に対しても導通する形状となっているため,毛細管現象により,トレンチ領域21にボイドが生じることなく満遍なく広がることが可能となる。
【0028】
なお,本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく,実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また,上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより,種々の発明を形成できる。例えば,実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに,異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 半導体ウエハ,2 素子形成領域,3 ダイシングライン領域,11 セル領域,12 終端領域,13 延長トレンチ部,21 終端トレンチ部,22 終端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が形成されたセル領域と,このセル領域の四方をX方向に対して長手方向が平行な2つのトレンチとX方向と90度であるY方向に対して長手方向が平行な2つのトレンチとで囲むように形成された終端トレンチ領域とを有する素子形成領域と,
複数の前記素子形成領域を分離する溝を備えるダイシングライン領域とを具備し,
前記終端トレンチ領域は,四隅においてX方向に長手方向が平行なトレンチとY方向に長手方向が平行なトレンチとが交差し,前記素子形成領域の四方側面においてトレンチの短手方向の垂直断面が開放された状態で前記ダイシングライン領域の長手方向と垂直に接していることを特徴とする。
【請求項2】
前記ダイシングライン領域の前記溝の深さは,前記終端トレンチ領域を構成するいずれのトレンチの深さよりも浅いことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記終端トレンチ領域は,長手方向延長上に,前記ダイシングライン領域の長手方向に対して垂直に交差するように形成され,隣接する前記素子形成領域の前記終端トレンチ領域と接続される延長トレンチ領域を有することを特徴とする請求項1および2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
半導体基板の表層部に,ベース領域と,ウエル領域と,酸化膜を順に積層する工程と,
半導体素子を形成するセル領域上に,酸化膜をエッチングし,メタルを積層刷る工程と,
前記半導体基板上にレジストパターンを形成し,終端トレンチ領域とダイシング領域には酸化膜を除去し,この終端トレンチ領域の深さがこのダイシング領域の溝よりも深くなるようにエッチングを施す工程と,
絶縁膜を前記半導体基板全体に回転塗布し,前記終端トレンチ領域に絶縁膜を埋め込む工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−79890(P2012−79890A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223207(P2010−223207)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】