説明

半導体装置および半導体装置の製造方法

【課題】集積回路チップの表面に接着層が付着することで発生する問題を防止すること。
【解決手段】回路基板10と、前記回路基板上に設けられた第一の半導体チップ4と、前記第一の半導体チップ上に設けられた複数の第一スペーサと、下面に第一接着剤層を有し、前記複数の第一スペーサの上部に設けられた第二の半導体チップ4bと、前記回路基板と前記第一の半導体チップとを接続するワイヤ26と、前記第一の半導体チップと前記第一接着剤層の間を封止する第一封止材8とを有し、前記複数の第一スペーサの高さは、前記第一の半導体チップの上面に対する前記ワイヤの高さよりも高いこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、パッケージ基板(以下、基板と呼ぶ)に搭載された集積回路チップ(半導体チップ)をエポキシ系樹脂等で封止することで形成される。半導体装置に含まれる集積回路チップは、通常一つである。
【0003】
しかし、近年、基板上に複数の集積回路チップを積層したスタックドIC(Integrated Circuit)が開発された。スタックドICは、集積回路チップと平板状のスペーサ(例えば、単結晶シリコン)が交互に積層された半導体装置である。
【0004】
スタックドICは、集積回路チップ及びスペーサそれぞれの裏面に設けられた接着層が下側の部材(集積回路チップまたはスペーサ)に接着(付着)することで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−194189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スタックドICに用いられる接着層は、例えば接着フィルム(Die Attach Film等)である。このような接着層と集積回路チップとの相性は、封止材(モールド樹脂)と集積回路チップほどはよくない。このため、集積回路チップの表面に接着層が付着すると、種々の問題が発生する。
【0007】
例えば、リフロー処理によって半導体装置が加熱されると、集積回路チップと接着層の熱膨張係数の差により応力が発生する。この時、発生した応力は、両部材の弾性係数の差により集積回路チップの表面に集中する。その結果、集積回路チップの配線が断線する。同様の問題は、接着層を用いて放熱板等を集積回路チップに積層する場合にも発生する。
【0008】
また、集積回路チップに接続されたボンディングワイヤの間隔が狭ピッチになると、モールディング時の樹脂注入により、ボンディングワイヤがずれて接触しやすくなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決するために、本装置の一観点によれば、回路基板と、前記回路基板上に設けられた第一の半導体チップと、前記第一の半導体チップ上に設けられた複数の第一スペーサと、下面に第一接着剤層を有し、前記複数の第一スペーサの上部に設けられた第二の半導体チップと、前記回路基板と前記第一の半導体チップとを接続するワイヤと、前記第一の半導体チップと前記第一接着剤層の間を封止する第一封止材とを有し、前記複数の第一スペーサの高さは、前記第一の半導体チップの上面に対する前記ワイヤの高さよりも高い半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本実施の形態によれば、集積回路チップの表面に接着層が付着することで発生する問題が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1の半導体装置の断面図である。
【図2】実施の形態1の半導体装置の断面図である。
【図3】実施の形態1の半導体装置が有する集積回路チップの平面図である。
【図4】スペーサの一例を示す側面図である。
【図5】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する工程断面図である。
【図6】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する工程断面図である。
【図7】実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する工程断面図である。
【図8】実施の形態1の変形例を説明する断面図である。
【図9】実施の形態1の変形例を説明する断面図である。
【図10】実施の形態1の別の変形例を説明する断面図である。
【図11】実施の形態1の別の変形例を説明する断面図である。
【図12】実施の形態2の半導体装置の断面図である。
【図13】実施の形態2の半導体装置の断面図である。
【図14】実施の形態2の半導体装置が有する積層部材の平面図である。
【図15】追加積層部材の基板側の平面図である。
【図16】実施の形態2の変形例を説明する断面図である。
【図17】実施の形態2の変形例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。尚、図面が異なっても対応する部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0013】
(実施の形態1)
(1)構造
図1及び2は、本実施の形態の半導体装置2の平面図である。図3は、半導体装置2が有する集積回路チップ4の平面図である。図1は、スペーサ12を通る直線(図3のI-I線)に沿った半導体装置2の断面図である。図2は、ICパッド電極24を通る直線(図3のII−II線)に沿った半導体装置2の断面図である。
【0014】
本実施の形態の半導体装置2は、図1及び2に示すように、集積回路チップ4、積層部材6、および封止材8を有している。
【0015】
集積回路チップ4の表面には、メモリや論理回路等の集積回路が形成されている(後述する別の集積回路チップでも同様)。集積回路チップ4は、図1に示すように、例えば導電性ペースト32により裏面側で基板(パッケージ基板)10に搭載されている。
【0016】
また、集積回路チップ4は、図1及び3に示すように、その表面に直接接着された複数のスペーサ12を有している。この複数のスペーサ12は、全て同じ高さを有している。スペーサ12の接着位置としては、図3に示すように、集積回路チップ4の外周部(特に、四隅)が好ましい。
【0017】
積層部材6の基板側の面(以下、下面と呼ぶ)には、接着層(接着剤層)14が設けられている。この接着層14により、積層部材6は複数のスペーサ12の上部に接着されている。したがって、接着層14は、集積回路チップ4から離隔している。
【0018】
積層部材6は、例えば放熱板である。接着層14は、例えば厚さ10〜100μmの熱可塑性の樹脂フィルム(例えば、日立化成社製のHIATTCH(商品名))である。
【0019】
封止材8は、少なくても集積回路チップ4と接着層14の間を封止している(すなわち、満たしている)。封止材8は、例えば熱硬化性の樹脂(エポキシ樹脂を主成分とする樹脂)である。
【0020】
図4は、スペーサ12の一例を示す側面図である。スペーサ12は、例えば、集積回路チップ4の表面に設けられた接着パッド(例えば、Alパッド)18に直接接着された第1のボール(例えば、Auボール)20と、第1のボール20の上に直接接着された第2のボール(例えば、Auボール)22とを有している。第1のボール20、第2のボール22、および接着パッド18は、好ましくは金属である。
【0021】
尚、スペーサ12は、図4に示すような2層のボールには限られない。スペーサ12は、例えば、集積回路チップ4の表面に設けられた突起物(バンプスペーサ)であればよい。
【0022】
第1のボール20および第2のボール22は、例えばボンディングワイヤ(Auワイヤ等)の先端に放電により形成されるボール状の膨らみである。この膨らみを接着パッド18に押圧しながら超音波振動を印加することで、第1のボール20は集積回路チップ4の表面に接着される。
【0023】
第1のボール20に超音波振動が印加されると、第1のボール20に接触している接着パッド18の表面の酸化物が破壊される。その結果、第1のボール20と接着パッド18は、接着層(接着剤層)を介さずに直接接着する。同様に、第2のボール22を第1のボール20に押圧しながら超音波振動を第2のボール22に印加することで、第2のボール22は第1のボール20に直接接着される。
【0024】
このように、半導体装置2には、集積回路チップ4の表面に付着する接着層が存在しない。したがって、本実施の形態によれば、集積回路チップの表面に接着層が付着することで発生する問題が防止される。
【0025】
集積回路チップの表面に付着した接着層が発生する問題としては、集積回路チップの断線がある。封止材8には、集積回路チップ4(半導体チップ)と略同じ熱膨張係数を持つ樹脂が用いられる。しかし、接着層に用いられる樹脂の熱膨張係数は、集積回路チップ4の熱膨張係数とは大きく異なる。
【0026】
今、接着層14によって、積層部材6と集積回路チップ4が接着された半導体装置を考える。このような半導体装置が高温に曝されると、集積回路チップ4と接着層14の熱膨張係数の差により応力が発生する。
【0027】
集積回路チップ4と接着層14は熱膨張係数だけでなく、弾性係数も大きく異なっている。このため熱膨張係数の差により生じた応力が集積回路チップ4と接着層14の界面に集中して、集積回路チップ4の配線を切断する。尚、半導体装置が高温に曝される場合としては、半導体装置をプリント基板に実装するリフロー処理等がある。
【0028】
接着層が発生する別の問題としては、所謂ポップコーン現象がある。集積回路チップの表面に接着層を付着させるには、まず裏面に接着層が設けられた積層部材を集積回路チップに載置する。その後、接着層を加熱しながら積層部材を集積回路チップに押圧して、積層部材と集積回路チップを付着させる。
【0029】
積層部材を集積回路チップに載置する時、集積回路チップと接着層の間には僅かな隙間が発生する。接着層が加熱されて軟化すると、この隙間に残留していた空気が接着層に取り込まれてボイドを形成する。
【0030】
ところで、半導体装置の封止材には、吸湿性の物質が僅かに含まれている。このため、封止材は、集積回路チップの封止後、大気中の水分を除々に吸収する。
【0031】
リフロー処理等のため半導体装置が再加熱されると、封止材に吸収されていた水分の一部が接着層内のボイドに集中する。その結果、ボイド内の圧力が上昇し、上昇した圧力によって半導体装置が破裂する。
【0032】
これらの問題は、スタックドICのように、接着層によりスペーサが集積回路チップに接着された半導体装置でも、同様に発生する。
【0033】
一方、本実施の形態の半導体装置2には、集積回路チップ4の表面に付着する接着層は存在しない。従って、本実施の形態によれば、集積回路チップ4の表面に付着した接着層が発生するこれらの問題が防止される。
【0034】
ところで、集積回路チップ4の表面には、図2示すように、ICパッド電極24が設けられている。このICパッド電極24には、ボンディングワイヤ26の先端部が接着される。このボンディングワイヤ26の他端は、基板10の表面に設けられた基板表面側パッド電極(図示せず)に接着されている。
【0035】
基板10には、この基板表面側パッド電極に加え、基板裏面側パッド電極(図示せず)、ビア導体、および半田ボール28が設けられている。ビア導体は、基板10に設けられたビアに充填された導体であり、基板表面側パッド電極を基板裏面側パッド電極に接続する導体である。半田ボール28は、この基板裏面側パッドに接着されている。ここで、半田ボール28は、基板10の裏面に2次元的に配置されている。
【0036】
半導体装置2に入力した信号は、半田ボール28とボンディングワイヤ26を結ぶ経路によって集積回路チップ4に伝達される。また、集積回路チップ4が生成した信号は、この経路を経由して出力される。すなわち、半導体装置2は、BGA(Ball Grid Array)型の半導体装置である。
【0037】
図3に示すように、ボンディングワイヤ26の先端部30は、ボール状の膨らみ(以下、ワイヤボールと呼ぶ)に加工されている。ICパッド電極24(図2参照)には、このワイヤボール30が接着(接続)されている。一方、接着パッド18(図1参照)には、スペーサ12が有する第1の金属ボール20が接着されている。
【0038】
この第1の金属ボール20のサイズ(特に、基板10に垂直な方向のサイズ)は、ワイヤボール30より大きい。第2の金属ボール22についても、同様である。したがって、スペーサ12のサイズ(特に、基板10に垂直な方向のサイズ)は、ワイヤボール30より大きい。すなわち、複数のスペーサ12の高さは、集積回路チップ4の上面に対するボンディングワイヤ26の高さよりも高い。
【0039】
このため、図2に示すように、ボンディングワイヤ26のループが、積層部材6に接触し難くなっている。故に、本実施の形態の半導体装置2では、積層部材6(例えば、放熱板)を介したボンディングワイヤ26のショートが起こり難くい。
【0040】
また、本実施の形態では、図2に示すように、ボンディングワイヤ26の一部(ワイヤループの頂上およびその近傍)が、接着層14に埋め込まれている。このため、後述するモールディング工程で、ボンディングワイヤ26がモールド樹脂に流されて互いに接触することはない。よって、ボンディングワイヤ同士のショートも起こり難くい。
【0041】
ボンディングワイヤ26の間隔が狭ピッチになると、樹脂を流し込む際にボンディングワイヤ26がずれてワイヤ間でショートが起きやすくなる。しかし、ボンディングワイヤ26の上部が接着層14に埋め込まれることでボンディングワイヤ26が固定されているので、ボンディングワイヤ26間でショートが起きることはない。
【0042】
(2)製造方法
図5乃至7は、本実施の形態の半導体装置2の製造方法を説明する工程断面図である。以下、図5乃至7にしたがって、半導体装置2の製造方法を説明する。
【0043】
(i)ダイボンディング工程(図5(a))
まず、導電性ペースト32が塗布された基板10に、集積回路チップ4をスクラブして接着する。これにより、集積回路チップ4は裏面側で基板10に接着される。
【0044】
(ii)スペーサ形成工程(図5(b)および(c))
まず、ワイヤボンディング装置のキャピラリ(図示せず)から、ボンディングワイヤ(例えば、Auワイヤ)の先端を射出する。このボンディングワイヤの先端部を放電により融解して、第1のボール20を形成する。
【0045】
この第1のボール20を集積回路チップ表面の接着パッド18(図1参照)に押圧しながら、超音波振動を第1のボール20に印加する。すると、接着パッド19の表面の酸化物が破壊され、図5(b)に示すように、第1のボール20が接着パッドに直接接着される。この時、第1のボール20と接着パッド19は、金属間結合により接合する。
【0046】
次に、第1のボール20から伸びているボンディングワイヤの先端部を、放電により第1のボール20から切り離す。この放電により、新たな第1のボール20が形成される。
【0047】
新たに形成された第1のボール20を、上述した手順にしたがって別の接着パッド18に直接接着する。以上の操作を繰り返して、全ての接着パッド18に第1のパッド20を接着する。
【0048】
最後に接着した第1のボール20からボンディングワイヤを切り離す時にも、ボンディングワイヤの先端部に新たなボールが形成される。このボールを第2のボール22として、第1のボール20の上に接着する。これにより、図5(c)に示すように、スペーサ12が形成される。この操作を繰り返して、全ての第1のボール上に第2のボールを接着する。以上の手順により、集積回路チップ4の表面に複数のスペーサ12が直接接着される。
【0049】
(iii)ワイヤボンディング工程(図5(d))
次に、集積回路チップ4の表面に設けられたICパッド電極24(図2参照)にボンディングワイヤの一端を接着する。更に、基板10の基板表面側パッド電極(図示せず)に、ボンディングワイヤ26の他端を接続する。
【0050】
(iv)載置工程(図6(a))
基板側に熱可塑性の接着層14(例えば、接着フィルム)が設けられた積層部材6を、集積回路チップ4の表面に直接接着されたスペーサ12の上に載置する。
【0051】
(v)接着工程(図6(b)および(c))
接着層14を加熱しながら、スペーサ12の上に載置された積層部材6をスペーサ12に対して押圧する。この時、例えば、集積回路チップ4が設けられた基板10と積層部材6を、オーブン等で接着層14ごと加熱する。
【0052】
この加熱により、熱可塑性の接着層14は軟化する。この状態で積層部材6がスペーサ12に押圧されると、スペーサ12およびボンディングワイヤ26が接着層14の中に押し込められる(図6(b)および(c))。
【0053】
尚、図6(b)は、スペーサ12を通る直線(図3のI−I線)に沿った工程断面図である。図6(c)は、ICパッド電極24を通る直線(図3のII−II線)に沿った工程断面図である。
【0054】
その後、接着層14が室温に戻ると接着層14が硬化し、スペーサ12の上部およびボンディングワイヤ26の一部が接着層14に埋め込まれる。
【0055】
(v)モールディング工程(図7(a))
次に、積層部材6がスペーサ12に接着された基板10を、樹脂封止用の金型(図示せず)に装着する。この金型にエポキシ系樹脂を注入し、注入した樹脂を加熱して硬化(キャア)させる。これにより、集積回路チップ4は、封止材8により封止される。その後、金型を外す。
【0056】
樹脂を金型に注入すると、ボンディンワイヤ26が樹脂によって流されて、互いに接触する虞がある。しかし、本実施の形態では、ボンディンワイヤ26のループ頂上およびその近傍が接着層14に埋め込まれているので、ボンディンワイヤ26は容易には接触しない。
【0057】
(vi)ボールマウント工程および切断工程(図7(b))
樹脂封止された半導体装置2を金型から外し、基板10の裏面に形成された基板裏面側パッド電極に半田ボール28を搭載する。最後に、基板10を切断して半導体装置2を個片化する。
【0058】
(3)変形例
図8及び9は、本実施の形態の変形例2aを説明する断面図である。図8は、スペーサ12を通る直線に沿った断面図である。図9は、ICパッド電極24を通る直線に沿った断面図である。
【0059】
本変形例2aの集積回路チップ4は、図8に示すように、リードフレーム34のダイパッド(基板)36に搭載されている。また、集積回路チップ4のICパッド電極24は、図9に示すように、リード38に接着されている。変形例2aの他の部分は、図1乃至3に示す半導体装置2と略同じ構造を有している。
【0060】
図10及び11は、本実施の形態の別の変形例2bを説明する断面図である。図10は、スペーサ12を通る直線に沿った断面図である。図11は、ICパッド電極24を通る直線に沿った断面図である。
【0061】
図1乃至3を参照して説明した半導体装置2では、積層部材6は放熱板である。一方、本変形例2bの積層部材6は、集積回路チップ4bである。すなわち、本変形例の半導体装置は、スタックドICである。
【0062】
図11に示すように、集積回路チップ4b(積層部材)が有するICパッド電極24bには、ボンディングワイヤ26bの先端部が接着されている。ボンディングワイヤ26bの他端には、基板10の表面に設けられた基板表面側パッド電極(図示せず)が接着(接続)されている。同様に、集積回路チップ4のICパッド電極24には、別の基板表面側パッド電極が接着(接続)されている。
【0063】
これらの基板表面側パッド電極には、基板10に設けられた配線回路が接続されている。この配線回路を介して、一層目の集積回路チップ4と二層目の集積回路チップ4b(積層部材)が接続される。そして、この配線回路には、半田ボール28が接着された基板裏面側パッド電極が接続される。
【0064】
尚、図1及び2の半導体装置2とは異なり、本変形例2bでは、積層部材6(集積回路チップ4b)全体が封止材8で封止されている。これは、積層部材6(集積回路チップ4b)を保護するためである。本変形例2bの他の部分は、図1及び2に示す半導体装置2と略同じ構造を有している。
【0065】
(実施の形態2)
図12及び13は、本実施の形態の半導体装置40の断面図である。図14は、半導体装置40が有する積層部材6の平面図である。以下、図12乃至14にしたがって、本実施の形態の半導体装置40を説明する。尚、実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0066】
(1)構造
図12は、スペーサ12を通る直線に沿った断面図である。図13は、ICパッド電極24を通る直線に沿った断面図である。
【0067】
本実施の形態の半導体装置40は、図10及び11を参照して説明した半導体装置2b(スタックドIC)において、更に追加積層部材42を有する半導体装置である。ここで、追加積層部材42は、集積回路チップ4cである。
【0068】
図10及び11を参照して説明したように、積層部材6は、集積回路チップ4Bである。集積回路チップ(積層部材)4Bは、図12に示すように、基板10と反対側の面(以下、上面と呼ぶ)に直接接着された複数の追加スペーサ44を有している。
【0069】
一方、追加積層部材42は、基板側の面(以下、下面と呼ぶ)に設けられた追加接着層(接着剤層)46を有している。追加接着層46は、例えば熱可塑性の樹脂フィルムである。
【0070】
追加接着層46は、図12に示すように、複数の追加スペーサ44の上部に接着されている。したがって、追加接着層46は、集積回路チップ4B(積層部材6)と離隔している。
【0071】
図12及び13に示すように、封止材8は、集積回路チップ4と接着層14の間を封止し、更に集積回路チップ4B(積層部材)と追加接着層46の間を封止している(すなわち、満たしている)。また、図13に示すように、集積回路チップ4B(積層部材)の上面に接着されたボンディングワイヤ26Bの一部は、追加接着層46に埋め込まれている。
【0072】
従って、本実施の形態の半導体装置40によれば、追加接着層46に起因する問題(集積回路チップ4Bの断線等)およびボンディングワイヤ26Bの流れが防止される。
【0073】
図14には、集積回路チップ4B(積層部材)の上面が示されている。図14に示すように、集積回路チップ4Bの四隅には、上記追加スペーサ44が設けられている。また、集積回路チップ4Bの外周部には、上記ボンディングワイヤ26Bの先端部が接着(接続)されている。一方、集積回路チップ4Bの中央部には、2次元的に配列された複数のアレイICパッド電極50が設けられている。
【0074】
図15は、追加積層部材42の基板側の平面図である。本実施の形態の追加積層部材42は、裏返しにされた集積回路チップ4cである。すなわち、集積回路チップ4cの表面は、集積回路チップ4B(積層部材6)の表面に対向している。
【0075】
尚、図14には、集積回路チップ4c(追加積層部材42)の輪郭を集積回路チップ4B(積層部材6)に投影した投影線が、破線45で示されている。
【0076】
図15に示すように、集積回路チップ4c(追加積層部材42)の外周部には、追加接着層46が設けられている。この追加接着層46により、集積回路チップ4c(追加積層部材42)が追加スペーサ44に接着される。尚、図15には、追加スペーサ44の接着位置が破線で示されている。
【0077】
追加接着層46の内側には、集積回路チップ4B(積層部材6)のアレイICパッド電極50に接着(接続)される半田バンプ52が設けられている。この半田バンプ52を介して、集積回路チップ4B(積層部材6)と集積回路チップ4c(追加積層部材42)は、互いの信号を交換する。
【0078】
(2)製造方法
半導体装置40を製造するには、まず実施の形態1で説明した接着工程(図6(b)及び(c))までを実施する。但し、積層部材6は、集積回路チップ4Bである。
【0079】
その後、集積回路チップ4BのICパッド電極24B(図13参照)と基板表面側パッド電極をボンディングワイヤ26Bで接続する。更に、集積回路チップ4Bの接着パッド18B(図12参照)に、追加スペーサ44を接着する。
【0080】
その後、追加スペーサ44の上に、集積回路チップ4c(追加積層部材42)を載置する。次に、追加接着層46及び半田バンプ52を加熱しながら、集積回路チップ4c(追加積層部材42)を追加スペーサ44に押圧する。
【0081】
これにより、集積回路チップ4c(追加積層部材42)が集積回路チップ4B(積層部材6)に接着(接続)される。その後、実施の形態1で説明したモールディング工程、ボールマウント工程、および切断工程を実施する。以上により、本実施の形態の半導体装置40が形成される。
【0082】
ところで、追加スペーサ44の構造は、図4を参照して説明したスペーサ12の構造と略同じである。半田バンプ52の代わりに、この追加スペーサ44と略同じ構造のボール積層構造を用いてもよい。
【0083】
図16及び17は、本実施の形態の変形例40aを説明する断面図である。図16は、スペーサ12を通る直線に沿った断面図である。図17は、ICパッド電極24に沿った断面図である。
【0084】
図16及び17に示すように、変形例40aは、リードフレーム型の半導体装置である。この変形例40aでは、追加積層部材42は放熱板である。変形例40aの他の部分は、半導体装置40または実施の形態1の変形例2aと略同じである。
【0085】
以上の実施の形態では、スペーサ12は、図4に示すように、ボンディングワイヤの先端部に形成されるボールを積層したものである。しかし、スペーサ12は、このようなものには限られない。例えば、スペーサ12は、金属製の支柱であってもよい。
【0086】
また、以上の実施の形態では、接着層および追加接着層は、熱可塑性の接着フィルムである。しかし、接着層および追加接着層は、接着フィルムには限られない。例えば、接着層は、積層部材の裏面に塗布された樹脂ペーストであってもよい。同様に、追加接着層は、追加積層部材の裏面に塗布された樹脂ペーストであってもよい。
【0087】
以上の実施の形態1及び2に関し、更に以下の付記を開示する。
【0088】
(付記1)
回路基板と、
前記回路基板上に設けられた第一の半導体チップと、
前記第一の半導体チップ上に設けられた複数の第一スペーサと、
下面に第一接着剤層を有し、前記複数の第一スペーサの上部に設けられた第二の半導体チップと、
前記回路基板と前記第一の半導体チップとを接続するワイヤと、
前記第一の半導体チップと前記第一接着剤層の間を封止する第一封止材と
を有し、
前記複数の第一スペーサの高さは、前記第一の半導体チップの上面に対する前記ワイヤの高さよりも高いこと
を特徴とする半導体装置。
【0089】
(付記2)
回路基板と、
前記回路基板上に設けられた第一の半導体チップと、
前記第一の半導体チップ上に設けられた複数の第一スペーサと、
下面に第一接着剤層を有し、前記複数の第一スペーサの上部に設けられた放熱板と、
前記回路基板と前記第一の半導体チップとを接続するワイヤと、
前記第一の半導体チップと前記第一接着剤層の間を封止する第一封止材と
を有し、
前記複数の第一スペーサの高さは、前記第一の半導体チップの上面に対する前記ワイヤの高さよりも高いこと
を特徴とする半導体装置。
【0090】
(付記3)
付記1又は2に記載の半導体装置において、
前記複数の第一スペーサは全て同じ高さを有することを特徴とする半導体装置。
【0091】
(付記4)
付記3に記載の半導体装置において、
前記ワイヤの一部は、前記第一接着剤層に埋め込まれていることを特徴とする半導体装置。
【0092】
(付記5)
付記1に記載の半導体装置において、
前記第二の半導体チップ上に設けられた複数の第二スペーサと、
下面に第二接着剤層を有し、前記複数の第二スペーサの上部に設けられた、第三の半導体チップと、
少なくても前記第二の半導体チップと前記第二接着剤層の間とを封止する第二封止材と
を有することを特徴とする半導体装置。
【0093】
(付記6)
付記1または2に記載の半導体装置において、
前記第一スペーサは、前記第一の半導体チップの表面の接着パッドに直接接着された第1の金属ボールと、前記第1の金属ボール上に直接接着された第2の金属ボールとを有することを
特徴とする半導体装置。
【0094】
(付記7)
付記6に記載の半導体装置において、
前記ワイヤは、前記第一の半導体チップの表面に接着されたワイヤボールを有し、
前記第一のスペーサが有する前記第1の金属ボールおよび前記第2の金属ボールは、前記ワイヤボールより大きいことを
特徴とする半導体装置。
【0095】
(付記8)
回路基板上に設けられた第一の半導体チップの上面に直接接着されたスペーサの上に、下面に熱可塑性の第一接着剤層が設けられた第二の半導体チップを載置する載置工程と、
前記第一接着剤層を加熱しながら前記スペーサの上に載置された前記第二の半導体チップを前記スペーサに押圧して、前記スペーサに前記第二の半導体チップを接着する接着工程とを
有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0096】
(付記9)
回路基板上に設けられた第一の半導体チップの上面に直接接着されたスペーサの上に、下面に熱可塑性の第一接着剤層が設けられた放熱板を載置する載置工程と、
前記第一接着剤層を加熱しながら前記スペーサの上に載置された前記放熱板を前記スペーサに押圧して、前記スペーサに前記放熱板を接着する接着工程とを
有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0097】
(付記10)
付記8に記載の半導体装置の製造方法において、
更に、前記載置工程の前に、前記第一の半導体チップの上面にボンディングワイヤの一端を接着するワイヤボンディング工程を有し、
前記接着工程において、前記第一接着剤層を加熱しながら前記第二の半導体チップを前記第一の半導体チップに押圧して、前記スペーサの一部および前記ボンディングワイヤの一部を前記接着剤層に埋め込むこと
を特徴とする半導体装置の製造方法。
【0098】
(付記11)
付記9に記載の半導体装置の製造方法において、
更に、前記載置工程の前に、前記第一の半導体チップの上面にボンディングワイヤの一端を接着するワイヤボンディング工程を有し、
前記接着工程において、前記第一接着剤層を加熱しながら前記放熱板を前記第一の半導体チップに押圧して、前記スペーサの一部および前記ボンディングワイヤの一部を前記接着剤層に埋め込むこと
を特徴とする半導体装置の製造方法。
【0099】
(付記12)
付記8または9に記載の半導体装置の製造方法において、
更に、前記載置工程の前に、ボンディングワイヤの先端部に形成された第1のボールを前記第一の半導体チップの表面に設けられた接着パッドに直接接着し、
前記直接接着された前記第1のボール上にボンディングワイヤ先端部に形成された第2のボールを接着して、前記スペーサを形成するスペーサ形成工程を有することを
特徴とする半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0100】
2,40・・・半導体装置
4・・・集積回路チップ
6・・・積層部材
8・・・封止材
12・・・スペーサ
14・・・接着層
18・・・接着パッド
20・・・第1のボール
22・・・第2のボール
24・・・パッド電極
30・・・ワイヤボール
42・・・追加積層部材
44・・・追加スペーサ
46・・・追加接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
前記回路基板上に設けられた第一の半導体チップと、
前記第一の半導体チップ上に設けられた複数の第一スペーサと、
下面に第一接着剤層を有し、前記複数の第一スペーサの上部に設けられた第二の半導体チップと、
前記回路基板と前記第一の半導体チップとを接続するワイヤと、
前記第一の半導体チップと前記第一接着剤層の間を封止する第一封止材と
を有し、
前記複数の第一スペーサの高さは、前記第一の半導体チップの上面に対する前記ワイヤの高さよりも高いこと
を特徴とする半導体装置。
【請求項2】
回路基板と、
前記回路基板上に設けられた第一の半導体チップと、
前記第一の半導体チップ上に設けられた複数の第一スペーサと、
下面に第一接着剤層を有し、前記複数の第一スペーサの上部に設けられた放熱板と、
前記回路基板と前記第一の半導体チップとを接続するワイヤと、
前記第一の半導体チップと前記第一接着剤層の間を封止する第一封止材と
を有し、
前記複数の第一スペーサの高さは、前記第一の半導体チップの上面に対する前記ワイヤの高さよりも高いこと
を特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置において、
前記複数の第一スペーサは全て同じ高さを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記ワイヤの一部は、前記第一接着剤層に埋め込まれていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第二の半導体チップ上に設けられた複数の第二スペーサと、
下面に第二接着剤層を有し、前記複数の第二スペーサの上部に設けられた、第三の半導体チップと、
少なくても前記第二の半導体チップと前記第二接着剤層の間とを封止する第二封止材と
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
回路基板上に設けられた第一の半導体チップの上面に直接接着されたスペーサの上に、下面に熱可塑性の第一接着剤層が設けられた第二の半導体チップを載置する載置工程と、
前記第一接着剤層を加熱しながら前記スペーサの上に載置された前記第二の半導体チップを前記スペーサに押圧して、前記スペーサに前記第二の半導体チップを接着する接着工程とを
有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
回路基板上に設けられた第一の半導体チップの上面に直接接着されたスペーサの上に、下面に熱可塑性の第一接着剤層が設けられた放熱板を載置する載置工程と、
前記第一接着剤層を加熱しながら前記スペーサの上に載置された前記放熱板を前記スペーサに押圧して、前記スペーサに前記放熱板を接着する接着工程とを
有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
更に、前記載置工程の前に、前記第一の半導体チップの上面にボンディングワイヤの一端を接着するワイヤボンディング工程を有し、
前記接着工程において、前記第一接着剤層を加熱しながら前記第二の半導体チップを前記第一の半導体チップに押圧して、前記スペーサの一部および前記ボンディングワイヤの一部を前記接着剤層に埋め込むこと
を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
更に、前記載置工程の前に、前記第一の半導体チップの上面にボンディングワイヤの一端を接着するワイヤボンディング工程を有し、
前記接着工程において、前記第一接着剤層を加熱しながら前記放熱板を前記第一の半導体チップに押圧して、前記スペーサの一部および前記ボンディングワイヤの一部を前記接着剤層に埋め込むこと
を特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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