説明

半導体装置のコンタクトホール形成方法

【構成】 基板11上にSiO2 膜12を成膜し、SiO2 膜12上に反射防止膜13を成膜し、反射防止膜13上に膜厚を制御してレジスト14を塗布し、全面露光、PEB(Post Exposure Bake)処理及びマスク露光を施して現像した後、CF4 、CHF3 ならびにHe及び/またはArの混合ガスでSiO2 膜12をエッチングして半導体装置のコンタクトホールを形成する。
【効果】 テーパ形状の制御性および再現性に優れたテーパ角を有するコンタクトホールを形成することができ、コンタクトホール部での配線の断線や埋め込み不良による導通不良を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半導体装置のコンタクトホール形成方法に関し、より詳細には半導体集積回路製造過程のSiO2 膜をエッチングしてコンタクトホールを形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、半導体装置(半導体集積回路)の製造において、半導体基板の表面のSiO2 膜にコンタクトホールを形成するためには、フォトリソグラフィとエッチングを組み合わせた技術が採用されている。フォトリソグラフィ技術は、レジストにマスクのパターンを転写する工程であり、エッチング技術はパターン形成されたレジストをマスクとしてSiO2 膜を加工する工程である。
【0003】一般的なコンタクトホールを形成するためのフォトリソグラフィ及びエッチング工程を図5に基づいて説明する。まず、Si基板41上にSiO2 膜42を形成し、次いで感光性高分子から成るレジスト43を塗布し、この後プリベークを行なってレジスト43中に含まれる有機溶剤を除去する(図5(a))。次に、マスクパターン44を露光によってレジスト43上に転写し(図5(b))、その後レジスト43を現像してマスクパターン44に対応するレジスト43のパターンを形成する。次に、ポストベークを行なってレジスト43を硬化させ、SiO2 膜42との密着性を高めておく(図5R>5(c))。さらに、レジスト43をマスクとしてSiO2 膜42にエッチング処理を施し、コンタクトホール45を形成する(図5(d))。次に、不要となったレジスト43を溶かして除去する(図5(e))。以上のように、(図5(a)〜(e))に示したような5つの主な工程から一般的なフォトリソグラフィ及びエッチング工程は構成されていた。上記したフォトリソグラフィ及びエッチング工程により形成されるコンタクトホール45の断面形状は矩形形状をしているが、デバイスの応用上、SiO2 膜42のエッチング後、テーパ角のついた断面形状を得ることが望ましい場合がある。例えば、多層配線における絶縁膜(SiO2 膜42)のコンタクトホール45の断面形状をテーパ状とすることにより、上層配線における断線を防止したり、金属材料の埋め込み特性を改善して導通不良を防止したりする場合である。このようなテーパ形状を有するコンタクトホールを得る方法としては、ウェットエッチングとドライエッチングとを組み合わせた方法、重合物をレジストパターンの側壁に堆積させながらドライエッチングを行なう方法、エッチング時のマスク材として用いるレジストにテーパ角を付けておく方法などがある。
【0004】まず、図6に基づいてウェットエッチングとドライエッチングとを組み合わせた方法について説明する。この方法ではまず最初に、Si基板51上にSiO2膜52を形成し、さらにSiO2 膜52上に感光性高分子から成るレジスト53を塗布する。この後、プリベークを行なってレジスト53中に含まれる有機溶剤を除去し、マスク上のパターン(図示せず)を露光によってレジスト53上に転写してから現像する。次に、ポストベークを行なってレジスト53を硬化させ、下地との密着性を高めておく(図6(a))。さらに、レジスト53をマスクとし、例えば10:1BHF溶液(HF、HNO3 、H2 Oの混合液)を用いたウェットエッチングにより、SiO2 膜52の上部に等方的エッチングを施して面取りを行なう(図6(b))。この後、ドライエッチングにより異方的エッチングを施し、SiO2 膜52に面取りされたパターンを形成する(図6(c))。次に、不要となったレジスト53を溶かして除去する(図6(d))。
【0005】次に、重合膜を利用したドライエッチングによるパターン形成方法を図7に基づいて説明する。まず、Si基板61上にSiO2 膜62を形成し、次にレジスト63を塗布する。この後プリベークを行なってレジスト63中に含まれる有機溶剤を除去し、マスクパターン(図示せず)を露光によってレジスト63上に転写してから現像をする(図7(a))。さらにレジスト63をマスクとし、CCl22 /C26 混合ガス系を用い、反応性ドライエッチングにより異方的エッチングを行なう。この場合、SiO2 膜62がエッチングされると同時に重合物がレジスト63のパターンの側壁に堆積して重合膜64が形成され、SiO2膜62にテーパ角を有するパターンを形成することができる(図7(b))。次に、不要となったレジスト63を溶かして除去する(図7(c))。
【0006】エッチング時のマスク材として用いられるレジスト自身にテーパ角を付けておく方法は、現像後のレジストに熱処理を加えることにより、レジストにテーパ角を付けておき、その後エッチングを施してテーパ角を有するSiO2 膜を形成するというものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記したウェットエッチングとドライエッチングとを併用する方法の場合、レジスト53とSiO2 膜52との密着性が悪いと、レジスト53とSiO2 膜52との界面から水平方向にエッチング液が染み込み、横方向にエッチングが拡がってしまう。従って、再現性、制御性が悪くなるとともに微細加工上も不利になるという問題があった。
【0008】重合膜64を利用してドライエッチングを行なう方法の場合、レジスト63側壁に形成される重合膜64を利用してSiO2 膜62にテーパ角を形成するため、エッチング処理枚数が増加するにつれて、重合物の影響でエッチングレートの低下が生じ、各パターンにおける制御性、再現性が悪いという課題があった。
【0009】さらに、エッチングの際のマスク材として用いられるレジストにテーパ角を付けておく方法の場合、レジストに熱処理を施したときに生じる伸縮がパターン幅、パターン密度の相違に起因して一様に起こらず、レジストのテーパ形状に差が生じてしまい、制御性、再現性が悪いという課題があった。
【0010】本発明はこのような課題に鑑み発明されたものであって、基板上のSiO2 膜にテーパ形状を有するコンタクトホールを形成することができ、しかもテーパ角の制御性および再現性に優れた半導体装置のコンタクトホール形成方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明に係る半導体装置のコンタクトホール形成方法は、基板上にSiO2 膜を成膜し、該SiO2 膜上に反射防止膜を成膜し、該反射防止膜上に膜厚を制御してレジストを塗布し、全面露光、PEB(Post Exposure Bake)処理及びマスク露光を施して現像した後、CF4 、CHF3 ならびにHe及び/またはArの混合ガスで前記SiO2 膜をエッチングすることを特徴としている。
【0012】
【作用】上記した方法によれば、レジストパターンを形成する際のフォトリソグラフィ工程の前処理として、基板上のSiO2 膜上に、たとえばアモルファスSiを堆積させて反射防止膜を成膜した後、さらにフォトリソグラフィ工程として該反射防止膜上に、後の露光工程で定在波の腹がレジスト表面に生じるようにレジストの膜厚を制御して塗布し、全面露光、PEB処理及びマスク露光とを組み合わせて行なった後現像する。
【0013】レジスト中のインヒビタ(現像抑制剤)は、レジストが露光されることにより分解されるので、全面露光の強度を調整すればレジストの表面のみが強く露光され、インヒビタ濃度は小さくなり、現像可能状態となる。また、深い部分になるにしたがって露光された光強度が弱まった状態となり、インヒビタ濃度は大きくなり現像不可能状態となる。つまり、前記全面露光後のインヒビタ濃度はレジスト表面から深くなるにつれて大きくなるという濃度分布を示す。この状態からマスク露光を行なうと、マスク露光では開口部のみから光がレジストに照射され、前記開口部における光強度分布は表面部に近いほど現像により溶解可能な状態が大きく拡がった状態となる(図8(a)参照)。
【0014】また、露光波長が単一波長の場合、定在波の影響で下地膜に対して垂直方向にλ/4n(λ;波長,n;屈折率)周期で光の強度が変化することによって、レジストの側壁に波状模様が現われることがある。そこで、定在波の影響を緩和するため全面露光またはマスク露光の後にPEB処理を施すことによって、前記全面露光及び前記マスク露光後におけるレジスト中のインヒビタ濃度分布がなめらかになり、線幅の制御が容易となる(図8(b)参照)。また、前記マスク露光の前に前記PEB処理を施した場合は、前記マスク露光における光が入射し易くなるため、マスク露光量を小さく見積もることも可能となり、またマスク露光時における光の定在波の影響も緩和されることとなる。
【0015】ところで、露光する際にレジスト中に定在波が発生する場合、通常反射面での定在波は節となり、以下等間隔で腹と節とが交互に存在し、定在波の周期LはL=λ/2n[Å](露光波長をλ[Å]、屈折率をnとする)となる。そして、レジスト表面に定在波の節がきた場合、レジスト表面は溶解されにくくなり、レジストパターンの断面形状がお椀型のレジストパターンが形成される。この形状がコンタクトホールに転写されると上層配線における断線や導通不良が起こりやすい形状となる。レジスト表面に定在波の腹がきた場合、レジスト表面は溶解されやすくなり、なだらかな裾を引いたテーパ角を有するレジストパターンが形成される。しかし、基板上にSiO2 膜が形成され、その上にレジストが塗布されている場合、SiO2 膜を反射面とした定在波や、基板を反射面とした定在波などが発生することがあり、その影響で深さ方向に周期的な露光強度ムラができてしまう。例えば、SiO2 膜の屈折率を1.45、レジストの屈折率を1.64、露光波長を4360Å(g線)とすると、定在波の節の間隔はレジスト中で約1330Å、SiO2 膜中で約1500Åである。このため、基板上面を反射面とする場合と、SiO2 膜上面を反射面とする場合の両者の影響が定在波に現われるとその関係は複雑となり、レジスト中における定在波の影響を抑制することは困難となる。
【0016】そこで、SiO2 膜上にアモルファスSiなどをスパッタし、光の通過を遮断するための反射防止膜を形成することにより、SiO2 膜厚の変動による定在波の影響を除去することが可能となり、前記反射防止膜を反射面とした定在波の影響だけを考慮すれば良いこととなる。下記の表1は、定在波が生じるレジスト膜厚とレジスト表面での定在波の状態との関係を示しており、膜厚を増やしてゆくにつれて定在波の腹と節が周期的に現われることが分かる。このことを利用して、定在波の腹付近がレジスト表面に位置するようにレジストの膜厚を制御する。例えば、レジストの屈折率を1.64、露光波長を4360Å(g線)とすると定在波の周期は約1330Åとなる。反射防止膜上面では定在波は節になるから、膜厚が約(1330k−665)Å,kは自然数;(表1参照)ならばレジスト表面の定在波は腹となる。
【0017】
【表1】


【0018】
【表2】


【0019】表2は、レジストの種々の屈折率及び種々の露光波長における、レジストの表面に定在波の腹付近がくるためのレジストの最適膜厚例を示しており、この表から明らかなように、レジストの屈折率と露光波長との組合せにより種々の最適膜厚を選択することが可能となり、定在波の腹がレジストの表面にくる適切な膜厚を選ぶことによって制御性、再現性の良いテーパ角を有するレジストパターンが安定的に形成され、この後異方的エッチングを施せば、制御性、再現性の良いテーパ角を有するコンタクトホールが形成されることとなる。
【0020】
【実施例】以下、本発明に係る半導体装置のコンタクトホール形成方法の実施例を図面に基づいて説明する。図1R>1(a)〜(d)は実施例に係る半導体装置のコンタクトホール形成方法を説明するための各工程を示した断面図である。まず、Siからなる基板11上にSiO2 膜12を形成し、次にSiO2 膜12上にアモルファスSiをスパッタして反射防止膜13を形成する(図1(a))。さらに、反射防止膜13上に、感光性高分子から成るレジスト14を後の露光工程でレジスト14中に発生する定在波の腹付近がレジスト14表面に位置するような膜厚でスピンコートする(図1(b))。この後、プリベークを行なってレジスト14中に含まれる有機溶剤を除去する。次に、レジスト14上から全面露光を行ない((図1(c))、続いてPEB処理を施した後、マスクパターン15を用いてステッパーでマスク露光を行なう(図1(d))。次にレジスト14を現像し、マスクパターン15に対応するテーパ角を有するレジストパターン14aを形成する(図1(e))。その後、ポストベークを行ない、レジスト14中に含まれる水分を飛ばし、SiO2 膜12との密着性を高めておく。さらに、このテーパ角を有するレジストパターン14aをマスクとしてSiO2 膜12にエッチングを施し、テーパ角を有するコンタクトホール16を形成し、不要となったレジストパターン14aを除去する(図1(f))。ただし、SiO2 膜12をエッチングする際、SiO2 膜12上のアモルファスSiは膜厚が薄いため通常のエッチング条件で十分処理でき、問題にはならない。
【0021】上記アモルファスSiのスパッタ条件としては温度:室温、ガス圧:2〜8mTorr 、DCパワー:2kW、膜厚:100〜120Åを用い、図2に示した装置を使用して行なった。また、上記エッチング処理はCF4 、CHF3 ならびにHe及び/またはArから選んだ1種または2種の混合ガスを用い、図3の装置を使用してRFパワー:850W、電極間距離:1cm、試料温度:−30℃で行なった。
【0022】図中21はターゲットを、22は基板電極を、23高周波電源を、24はガス導入口を、25はウエハをそれぞれ示している。また、31は上部電極を、32は下部電極を、33は高周波電源を、34はガス導入口を、35はウエハをそれぞれ示している。
【0023】なお、上記したエッチングガスにO2 を添加しても良い。
【0024】図4は上記の実施例で形成されたレジストパターン14aを示す断面図である。この際の形成条件は、レジスト14としてポジレジストPFXー15(住友化学工業(株)製)を用い、プリベークは100℃で120秒間行なった。なお、この段階でのレジスト14の膜厚は1.3μmである。マスクなしの全面露光にはNSR1505G7E(ニコン(株)製)を用いて露光量90 mJ/cm2 の条件で行ない、PEB処理を120℃で120秒間施し、マスク露光は露光量45mJ/cm2の露光条件で行なった。現像は23℃で65秒間行ない、ポストベークを120℃で120秒間行なった。これにより、図4に示したように65°テーパ角を有するレジストパターン14aを形成することができた。
【0025】
【表3】


【0026】表3は、本発明により形成されるレジストパターン14aのテーパ角θと全面露光及びマスク露光の際の露光量、A1スパッタにおけるカバレッジ・微細加工性・レジスト残膜との関係を表わしたものである。全面露光での露光量が増大するにつれて、レジストパターン14aのテーパ角が小さくなっている。テーパ角θは全面露光の際の露光量で調整できる。テーパ角55°では、テーパ角が穏やかであるのでA1スパッタ時におけるカバレッジは良くなるが、反面レジスト膜の減る量が大きくなり、A1スパッタ後、隣接するパターンと導通する可能性があり、微細加工には向かない。また、テーパ角85°では、微細加工性及びレジスト残膜の点では良いが、A1スパッタ時におけるカバレッジが悪く断線する可能性が大きい。したがって、テーパ角60°〜65°では、上記55°と85°の中間的性質を有しており、すべての特性を考慮した場合、最も好ましいテーパ角といえる。
【0027】上記実施例にあっては、全面露光の後にPEB処理を施しているが、全面露光後マスク露光を行なってからPEB処理を施してもほぼ同様の効果が得られる。
【0028】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係る半導体装置のコンタクトホール形成方法においては、半導体装置を製造する際のコンタクトホール形成工程において、基板上にSiO2 膜を成膜し、該SiO2 膜上に反射防止膜を成膜することによって、前記SiO2 膜中の定在波の発生と影響を抑制することができ、またレジストを適切な膜厚を選択して塗布することによって、お椀型のパターンの発生を抑制するとともに定在波の影響を利用してテーパ角を有するレジストパターンを形成することもでき、さらに全面露光、PEB処理及びマスク露光を施して現像した後、CF4 、CHF3 ならびにHe及び/またはArの混合ガスで前記SiO2 膜をエッチングすることにより、テーパ形状の制御性および再現性に優れたテーパ角を有するコンタクトホールを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(f)は本発明に係る半導体装置のコンタクトホール形成方法の実施例を各工程順に示した模式的断面図である。
【図2】実施例におけるフォトリソグラフィ工程の前処理であるアモルファスSiの成膜に使用されたスパッタ装置を示した概略断面図である。
【図3】実施例におけるエッチング処理工程に使用されたエッチング装置を示した概略断面図である。
【図4】実施例におけるレジストパターンを示した断面図である。
【図5】(a)〜(e)は従来のレジストパターンを用いたコンタクトホール形成工程を順に示した模式的断面図である。
【図6】(a)〜(d)は従来のテーパー角の付いたコンタクトホールを形成する際の各工程を順に示した模式的断面図である。
【図7】(a)〜(c)は別の従来例におけるテーパー角の付いたコンタクトホールを形成する際の各工程を順に示した模式的断面図である。
【図8】PEB処理有無での(二重露光)本発明によるレジストパターンを示した摸式的断面図である。
【符号の説明】
11 基板
12 SiO2
13 反射防止膜
14 レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上にSiO2 膜を成膜し、該SiO2 膜上に反射防止膜を成膜し、該反射防止膜上に膜厚を制御してレジストを塗布し、全面露光、PEB(Post Exposure Bake)処理及びマスク露光を施して現像した後、CF4 、CHF3 ならびにHe及び/またはArの混合ガスで前記SiO2 膜をエッチングすることを特徴とする半導体装置のコンタクトホール形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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