説明

半導体装置の作製方法及び半導体装置

【課題】微細な構造であっても高い電気特性を有するトランジスタを歩留まりよく提供する。該トランジスタを含む半導体装置においても、高性能化、高信頼性化、及び高生産化を達成する。
【解決手段】酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極層及びドレイン電極層を、酸化物半導体層上のゲート絶縁層及び絶縁層の開口を埋め込むように設ける。ソース電極層を設けるための開口とドレイン電極層を設けるための開口は、それぞれ別のマスクを用いた別のエッチング処理によって形成される。これにより、ソース電極層(またはドレイン電極層)と酸化物半導体層が接する領域と、ゲート電極層との距離を十分に縮小することができる。また、ソース電極層またはドレイン電極層は、開口を埋め込むように絶縁層上に導電膜を形成し、絶縁層上の導電膜を化学的機械研磨処理によって除去することで形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する発明は、半導体装置及びその作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、発光表示装置、半導体回路及び電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(単に表示装置とも表記する)のような半導体電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0004】
例えば、酸化物半導体として、酸化亜鉛、In−Ga−Zn−O系酸化物を用いてトランジスタを作製し、表示装置の画素のスイッチング素子などに用いる技術が特許文献1及び特許文献2で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、トランジスタの動作の高速化、トランジスタの低消費電力化、高集積化等を達成するためにはトランジスタの微細化が必須である。
【0007】
より高性能な半導体装置を実現するため、微細化されたトランジスタのオン特性(例えば、オン電流や電界効果移動度)を向上させて、半導体装置の高速応答、高速駆動を実現する構成およびその作製方法を提供することを目的の一とする。
【0008】
また、トランジスタの微細化に伴って作製工程における歩留まりの低下が懸念される。
【0009】
微細な構造であっても高い電気特性を有するトランジスタを歩留まりよく提供することを目的の一とする。
【0010】
また、該トランジスタを含む半導体装置においても、高性能化、高信頼性化、及び高生産化を達成することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示する発明の一態様では、酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極層及びドレイン電極層が、酸化物半導体層上のゲート絶縁層及びゲート電極層上の絶縁層に設けられた開口を埋め込むように設けられており、ソース電極層を設けるための開口とドレイン電極層を設けるための開口とは、それぞれ別のマスクを用いた別のエッチング処理によって形成される。これにより、ソース電極層(またはドレイン電極層)と酸化物半導体層が接する領域と、ゲート電極層との距離を十分に縮小することができる。また、ソース電極層またはドレイン電極層は、開口を埋め込むように絶縁層上に導電膜を形成し、絶縁層上の導電膜を研磨(切削、研削)して除去することで形成される。研磨(切削、研削)方法としては化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)処理を好適に用いることができる。より具体的には、例えば以下の作製方法とすることができる。
【0012】
本発明の一態様は、絶縁表面上に酸化物半導体層を形成し、酸化物半導体層上にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層を介して酸化物半導体層上にゲート電極層を形成し、ゲート電極層上に絶縁層を形成し、第1のマスクを用いて、絶縁層及びゲート絶縁層をエッチングして、酸化物半導体層に達する第1の開口を形成し、第2のマスクを用いて、絶縁層及びゲート絶縁層をエッチングして、ゲート電極層を挟んで第1の開口と逆側の領域に酸化物半導体層に達する第2の開口を形成し、第1の開口及び第2の開口を埋め込むように絶縁層上に導電膜を形成し、導電膜に研磨処理を行うことにより、絶縁層上に設けられた導電膜を除去して、第1の開口または第2の開口にソース電極層またはドレイン電極層を形成し、ソース電極層またはドレイン電極層上に、ソース配線層またはドレイン配線層を形成する半導体装置の作製方法である。
【0013】
上記の半導体装置の作製方法において、絶縁層の形成前に、ゲート電極層をマスクとして、酸化物半導体層に不純物を導入し、酸化物半導体層に自己整合的に第1の低抵抗領域、第2の低抵抗領域、及び第1の低抵抗領域と第2の低抵抗領域に挟まれたチャネル形成領域を形成するのが好ましい。
【0014】
また、本発明の他の一態様は、酸化物半導体層と、酸化物半導体層上に設けられたゲート絶縁層と、ゲート絶縁層を介して、酸化物半導体層上に設けられたゲート電極層と、ゲート電極層上に設けられた絶縁層と、ゲート絶縁層及び絶縁層の第1の開口または第2の開口に埋め込まれ、酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極層またはドレイン電極層と、ソース電極層またはドレイン電極層上に接して設けられたソース配線層またはドレイン配線層と、を有し、ソース電極層とドレイン電極層とのチャネル長方向(キャリアの流れる方向)の距離は、ソース配線層とドレイン配線層とのチャネル長方向の距離よりも小さい半導体装置である。
【0015】
上記の半導体装置において、ソース電極層またはドレイン電極層は、化学的機械研磨処理によって平坦化された表面を有することが好ましい。
【0016】
また、上記の半導体装置において、酸化物半導体層は、第1の低抵抗領域、第2の低抵抗領域、及び第1の低抵抗領域と第2の低抵抗領域に挟まれたチャネル形成領域を含むことが好ましい。
【0017】
なお、酸化物半導体は、単結晶、多結晶(ポリクリスタルともいう)、または非晶質(アモルファスともいう)などの状態をとる。
【0018】
アモルファス状態の酸化物半導体は、比較的容易に平坦な表面を得ることができるため、これを用いたトランジスタは動作させた際の界面散乱を低減でき、比較的容易に、比較的高い電界効果移動度を得ることができる。
【0019】
また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めれば、該結晶性を有する酸化物半導体を用いたトランジスタは、アモルファス状態の酸化物半導体を用いたトランジスタ以上の電界効果移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が0.15nm以下、好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
【0020】
なお、Raとは、JIS B 0601:2001(ISO4287:1997)で定義されている算術平均粗さを曲面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」で表現でき、以下の式にて定義される。
【0021】
【数1】

【0022】
ここで、指定面とは、粗さ計測の対象となる面であり、座標(x,y,f(x,y)),(x,y,f(x,y)),(x,y,f(x,y)),(x,y,f(x,y))の4点で表される四角形の領域とし、指定面をxy平面に投影した長方形の面積をS、基準面の高さ(指定面の平均の高さ)をZとする。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて測定可能である。
【0023】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0024】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0025】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0026】
本明細書等において厚さに関する「略等しい」の用語は、完全に等しい場合のみでなく、実質的に等しい場合をも含む趣旨で用いる。例えば、「略等しい」には、完全に等しい場合と比較して半導体装置の特性に与える影響が無視できる程度の差(特性に与える影響が5%以下)である場合や、意図せずに僅かに研磨された場合(研磨量が5nm未満程度の場合)などが含まれる。
【発明の効果】
【0027】
開示する発明の一態様によって、トランジスタサイズの微細化を達成することが可能である。また、開示する発明の一態様によって、微細化されたトランジスタを歩留まりよく作製することができる。
【0028】
また、開示する発明の一態様によって、良好な電気的特性を維持しつつ、トランジスタサイズを十分に小さくすることが可能になる。
【0029】
トランジスタサイズを十分に小さくすることで、半導体装置の占める面積が小さくなり、一基板あたりの半導体装置の取り数が増大する。これにより、半導体装置の製造コストは抑制される。また、半導体装置が小型化されるため、同程度の大きさでさらに機能が高められた半導体装置を実現することができる。また、チャネル長の縮小による、動作の高速化、低消費電力化などの効果を得ることもできる。つまり、開示する発明の一態様により酸化物半導体を用いたトランジスタの微細化が達成されることで、上述のような、微細化に付随する様々な効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】半導体装置の一態様を示す平面図及び断面図。
【図2】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【図3】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【図4】半導体装置の一形態を説明する断面図。
【図5】半導体装置の一形態を示す断面図、平面図及び回路図。
【図6】半導体装置の一形態を示す回路図及び斜視図。
【図7】半導体装置の一形態を示す断面図及び平面図。
【図8】半導体装置の一形態を示す回路図。
【図9】半導体装置の一形態を示すブロック図。
【図10】半導体装置の一形態を示すブロック図。
【図11】半導体装置の一形態を示すブロック図。
【図12】半導体装置の一形態を説明する図。
【図13】半導体装置の一形態を説明する図。
【図14】半導体装置の一形態を説明する図。
【図15】電子機器を示す図。
【図16】実施例のトランジスタの電気特性評価を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分または同様の機能を有する部分には、同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0032】
なお、本明細書等において、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書等において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0033】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一態様を図1乃至図4を用いて説明する。
【0034】
〈半導体装置の構成例〉
図1(A)乃至図1(C)に半導体装置の例として、トランジスタ420の平面図及び断面図を示す。図1(A)は、トランジスタ420の平面図であり、図1(B)は、図1(A)のX−Yにおける断面図であり、図1(C)は、図1(A)のV−Wにおける断面図である。なお、図1(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ420の構成要素の一部(例えば、絶縁層407)を省略して図示している。
【0035】
図1(A)乃至図1(C)に示すトランジスタ420は、絶縁表面を有する基板400上に、酸化物半導体層403と、酸化物半導体層403上に設けられたゲート絶縁層402と、ゲート絶縁層402を介して酸化物半導体層403上に設けられたゲート電極層401と、ゲート電極層401上に設けられた絶縁層407と、ゲート絶縁層402及び絶縁層407の開口を介して、酸化物半導体層403と電気的に接続するソース電極層405aまたはドレイン電極層405bと、ソース電極層405aまたはドレイン電極層405b上に接して設けられたソース配線層465aまたはドレイン配線層465bと、を含んで構成される。
【0036】
トランジスタ420において、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bは、ゲート絶縁層402及び絶縁層407に設けられた開口を埋め込むように設けられており、酸化物半導体層403とそれぞれ接している。これらの電極層は、ゲート絶縁層402及び絶縁層407に設けられた酸化物半導体層403に達する開口を埋め込むように絶縁層407上に導電膜を形成し、当該導電膜に研磨処理を行うことにより、絶縁層407上(少なくともゲート電極層401と重畳する領域)の導電膜を除去することで、導電膜を分断して形成されたものである。
【0037】
また、チャネル長方向の断面図においてソース電極層405aとドレイン電極層405bとのチャネル長方向の距離(図1(B)のL)は、ソース配線層465aとドレイン配線層465bとのチャネル長方向の距離(図1(B)のL)よりも小さい。
【0038】
本実施の形態において、酸化物半導体層403は、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜であることが好ましい。
【0039】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、非晶質相に結晶部及び非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体層である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0040】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸及びb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書等において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0041】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0042】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0043】
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射によるトランジスタの電気特性の変動が低減することが可能である。よって、当該トランジスタは信頼性が高い。
【0044】
また、トランジスタ420において、酸化物半導体層403は、ゲート電極層401と重畳するチャネル形成領域403cと、チャネル形成領域403cを挟んでチャネル形成領域403cよりも抵抗が低く、ドーパントを含む低抵抗領域403a及び低抵抗領域403bを含むのが好ましい。低抵抗領域403a及び低抵抗領域403bは、ゲート電極層401を形成後に、該ゲート電極層401をマスクとして不純物元素を導入することによって、自己整合的に形成することができる。また、当該領域は、トランジスタ420のソース領域またはドレイン領域として機能させることができる。低抵抗領域403a及び低抵抗領域403bを設けることによって、当該一対の低抵抗領域の間に設けられたチャネル形成領域403cに加わる電界を緩和させることができる。また、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bがそれぞれ低抵抗領域と接する構成とすることで、酸化物半導体層403と、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bと、のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0045】
〈半導体装置の作製方法〉
以下、図2(A)乃至図3(C)を用いて、図1に示すトランジスタ420の作製工程の例について説明する。
【0046】
まず、絶縁表面を有する基板400上に、酸化物半導体層403を形成する。
【0047】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理工程に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することもでき、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板400として用いてもよい。
【0048】
また、基板400として、可とう性基板を用いて半導体装置を作製してもよい。可とう性を有する半導体装置を作製するには、可とう性基板上に酸化物半導体層403を含むトランジスタ420を直接作製してもよいし、他の作製基板に酸化物半導体層403を含むトランジスタ420を作製し、その後可とう性基板に剥離、転置してもよい。なお、作製基板から可とう性基板に剥離、転置するために、作製基板と酸化物半導体層を含むトランジスタ420との間に剥離層を設けるとよい。
【0049】
なお、基板400上に下地絶縁層を形成してもよい。下地絶縁層は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、またはこれらの混合材料を含む膜から選ばれた、単層または積層構造とすることができる。但し、下地絶縁層は、酸化物絶縁膜を含む単層または積層構造として、該酸化物絶縁膜が後に形成される酸化物半導体層と接する構造とすることが好ましい。
【0050】
また、下地絶縁層は化学量論的組成を超える酸素を含む領域(以下、酸素過剰領域とも表記する)を有すると、下地絶縁層に含まれる過剰な酸素によって、後に形成される酸化物半導体層の酸素欠損を補填することが可能であるため好ましい。下地絶縁層が積層構造の場合は、少なくとも酸化物半導体層と接する層において酸素過剰領域を有するのが好ましい。下地絶縁層に酸素過剰領域を設けるには、例えば、酸素雰囲気下にて下地絶縁層を成膜すればよい。または、成膜後の下地絶縁層に、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオンのいずれかを含む)を注入して、酸素過剰領域を形成しても良い。酸素の注入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、プラズマ処理などを用いることができる。
【0051】
酸化物半導体層403は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。また、非晶質構造であってもよいし、結晶性酸化物半導体としてもよい。酸化物半導体層403を非晶質構造とする場合には、後の作製工程において、酸化物半導体層に熱処理を行うことによって、結晶性酸化物半導体層としてもよい。非晶質酸化物半導体層を結晶化させる熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは、400℃以上、より好ましくは500℃以上、さらに好ましくは550℃以上とする。なお、当該熱処理は、作製工程における他の熱処理を兼ねることも可能である。
【0052】
酸化物半導体層403の成膜方法は、スパッタリング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることができる。また、酸化物半導体層403は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタリング装置を用いて成膜してもよい。
【0053】
酸化物半導体層403を形成する際、できる限り酸化物半導体層403に含まれる水素濃度を低減させることが好ましい。水素濃度を低減させるには、例えば、スパッタリング法を用いて成膜を行う場合には、スパッタリング装置の処理室内に供給する雰囲気ガスとして、水素、水、水酸基または水素化物などの不純物が除去された高純度の希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、及び希ガスと酸素との混合ガスを適宜用いる。
【0054】
また、成膜室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入して成膜を行うことで、成膜された酸化物半導体層の水素濃度を低減させることができる。成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素分子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等の排気能力が高いため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体層403に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0055】
また、酸化物半導体層403をスパッタリング法で成膜する場合、成膜に用いる金属酸化物ターゲットの相対密度(充填率)は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下とする。相対密度の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体層を緻密な膜とすることができる。
【0056】
なお、酸化物半導体層403として、CAAC−OS膜を成膜する場合、該CAAC−OS膜は、例えば、多結晶である酸化物半導体スパッタリング用ターゲットを用い、スパッタリング法によって成膜することができる。当該スパッタリング用ターゲットにイオンが衝突すると、スパッタリング用ターゲットに含まれる結晶領域がa−b面から劈開し、a−b面に平行な面を有する平板状又はペレット状のスパッタリング粒子として剥離することがある。この場合、当該平板状のスパッタリング粒子が、結晶状態を維持したまま基板に到達することで、CAAC−OS膜を成膜することができる。
【0057】
また、CAAC−OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0058】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制できる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素及び窒素など)を低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0059】
また、成膜時の基板加熱温度を高めることで、基板到達後にスパッタリング粒子のマイグレーションが起こる。具体的には、基板加熱温度を100℃以上740℃以下、好ましくは200℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の基板加熱温度を高めることで、平板状のスパッタリング粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレーションが起こり、スパッタリング粒子の平らな面が基板に付着する。
【0060】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージを低減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は30体積%以上、好ましくは100体積%とする。
【0061】
スパッタリング用ターゲットの一例として、In−Ga−Zn−O化合物ターゲットについて以下に示す。
【0062】
InO粉末、GaO粉末およびZnO粉末を所定のmol数比で混合し、加圧処理後、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn−Ga−Zn−O化合物ターゲットとする。なお、X、YおよびZは任意の正数である。ここで、所定のmol数比は、例えば、InO粉末、GaO粉末およびZnO粉末が、2:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3または3:1:2である。なお、粉末の種類、及びその混合するmol数比は、作製するスパッタリング用ターゲットによって適宜変更すればよい。
【0063】
また、基板400を高温に保持した状態で酸化物半導体層403を形成することも、酸化物半導体層403中に含まれうる不純物濃度を低減するのに有効である。基板400を加熱する温度としては、150℃以上450℃以下とすればよく、好ましくは基板温度が200℃以上350℃以下とすればよい。また、成膜時に基板を高温で加熱することで、結晶性酸化物半導体層を形成することができる。
【0064】
酸化物半導体層403に用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてジルコニウム(Zr)を有することが好ましい。
【0065】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0066】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0067】
なお、酸化物半導体層403は、成膜時に酸素が多く含まれるような条件(例えば、酸素100%の雰囲気下でスパッタリング法により成膜を行うなど)で成膜して、酸素を多く含む(好ましくは酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている)膜とすることが好ましい。
【0068】
また酸化物半導体層403を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0069】
酸化物半導体層403としてCAAC−OS膜を適用する場合、該CAAC−OS膜を得る方法としては、三つ挙げられる。一つ目は、成膜温度を200℃以上450℃以下として酸化物半導体層の成膜を行い、表面に概略垂直にc軸配向させる方法である。二つ目は、酸化物半導体層を薄い膜厚で成膜した後、200℃以上700℃以下の熱処理を行い、表面に概略垂直にc軸配向させる方法である。三つ目は、一層目の膜厚を薄く成膜した後、200℃以上700℃以下の熱処理を行い、二層目の成膜を行い、表面に概略垂直にc軸配向させる方法である。
【0070】
酸化物半導体層403の成膜前に、酸化物半導体層403の成膜表面に平坦化処理を行ってもよい。平坦化処理としては、特に限定されないが、研磨処理(例えば、化学的機械研磨法)、ドライエッチング処理、プラズマ処理を用いることができる。
【0071】
プラズマ処理としては、例えば、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行うことができる。逆スパッタリングとは、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。逆スパッタリングを行うと、酸化物半導体層403の成膜表面に付着している粉状物質(パーティクル、ごみともいう)を除去することができる。
【0072】
平坦化処理として、研磨処理、ドライエッチング処理、プラズマ処理は複数回行ってもよく、それらを組み合わせて行ってもよい。また、組み合わせて行う場合、工程順も特に限定されず、酸化物半導体層403の成膜表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。
【0073】
成膜後の酸化物半導体層をフォトリソグラフィ工程により加工して、島状の酸化物半導体層403が形成する。島状の酸化物半導体層403へ加工するためのレジストマスクをインクジェットで形成してもよい。レジストマスクをインクジェットで形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減することができる。
【0074】
また、酸化物半導体層403に、当該酸化物半導体層403に含まれる過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための熱処理を行うのが好ましい。熱処理の温度は、300℃以上700℃以下、または基板の歪み点未満とする。熱処理は減圧下または窒素雰囲気下などで行うことができる。
【0075】
この熱処理によって、n型不純物である水素を酸化物半導体から除去することができる。例えば、脱水化又は脱水素化処理後の酸化物半導体層102に含まれる水素濃度を、5×1019/cm以下、好ましくは5×1018/cm以下とすることができる。
【0076】
なお、脱水化または脱水素化のための熱処理は、酸化物半導体層の成膜後であればトランジスタ420の作製工程においてどのタイミングで行ってもよい。但し、ゲート絶縁層402または絶縁層407として酸化アルミニウム膜を用いる場合には、当該酸化アルミニウム膜を形成する前に行うのが好ましい。また、脱水化又は脱水素化のための熱処理は、複数回行ってもよく、他の加熱処理と兼ねてもよい。
【0077】
なお、基板400上に酸素を含む下地絶縁層を設ける場合、脱水化または脱水素化のための熱処理を酸化物半導体層403の島状への加工前に行うと、下地絶縁層に含まれる酸素が熱処理によって放出されるのを防止することができるため好ましい。
【0078】
熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0079】
また、熱処理で酸化物半導体層403を加熱した後、加熱温度を維持、またはその加熱温度から徐冷しながら同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の一酸化二窒素ガス、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)を導入してもよい。酸素ガスまたは一酸化二窒素ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する酸素ガスまたは一酸化二窒素ガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち、酸素ガスまたは一酸化二窒素ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素ガスまたは一酸化二窒素ガスの作用により、脱水化または脱水素化処理による不純物の排除工程によって同時に減少してしまった酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給することによって、酸化物半導体層403を高純度化及びi型(真性)化することができる。
【0080】
また、脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体層に、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して膜中に酸素を供給してもよい。
【0081】
脱水化または脱水素化処理を行った酸化物半導体層403に、酸素を導入して膜中に酸素を供給することによって、酸化物半導体層403を高純度化、及びi型(真性)化することができる。高純度化し、i型(真性)化した酸化物半導体層403を有するトランジスタは、電気特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0082】
酸素の導入工程は、酸化物半導体層403に酸素導入する場合、酸化物半導体層403に直接導入してもよいし、後に形成されるゲート絶縁層402や絶縁層407などの他の膜を通過して酸化物半導体層403へ導入してもよい。酸素を他の膜を通過して導入する場合は、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いればよいが、露出された酸化物半導体層403へ直接酸素を導入する場合は、上記の方法に加えてプラズマ処理なども用いることができる。
【0083】
酸化物半導体層403への酸素の導入は、脱水化又は脱水素化処理を行った後であればよく、特に限定されない。また、上記脱水化または脱水素化処理を行った酸化物半導体層403への酸素の導入は複数回行ってもよい。
【0084】
次いで、酸化物半導体層403を覆うゲート絶縁層402を形成する(図2(A)参照)。
【0085】
ゲート絶縁層402は、1nm以上20nm以下の膜厚で、スパッタリング法、MBE法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD法等を適宜用いて形成することができる。また、ゲート絶縁層402は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタ装置を用いて成膜してもよい。
【0086】
ゲート絶縁層402の材料としては、酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化窒化アルミニウム、又は窒化酸化シリコン等を用いることができる。ゲート絶縁層402は、酸化物半導体層403と接する部分において酸素を含むことが好ましい。特に、ゲート絶縁層402は、膜中(バルク中)に少なくとも化学量論的組成を超える量の酸素が存在することが好ましく、例えば、ゲート絶縁層402として、酸化シリコン膜を用いる場合には、SiO2+α(ただし、α>0)とするのが好ましい。本実施の形態では、ゲート絶縁層402として、SiO2+α(ただし、α>0)である酸化シリコン膜を用いる。この酸化シリコン膜をゲート絶縁層402として用いることで、酸化物半導体層403に酸素を供給することができ、特性を良好にすることができる。さらに、ゲート絶縁層402は、作製するトランジスタのサイズやゲート絶縁層402の段差被覆性を考慮して形成することが好ましい。
【0087】
また、ゲート絶縁層402の材料として酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSix>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSiO(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))、酸化ランタンなどのhigh−k材料を用いることでゲートリーク電流を低減できる。さらに、ゲート絶縁層402は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0088】
次いで、ゲート絶縁層402を介して島状の酸化物半導体層403上にゲート電極層401を形成する。ゲート電極層401は、プラズマCVD法またはスパッタリング法等により形成することができる。また、ゲート電極層401の材料は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、ゲート電極層401としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイドなどのシリサイド膜を用いてもよい。ゲート電極層401は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0089】
また、ゲート電極層401の材料は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。また、上記導電性材料と、上記金属材料の積層構造とすることもできる。
【0090】
また、ゲート絶縁層402と接するゲート電極層401の一層として、窒素を含む金属酸化物、具体的には、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜や、窒素を含むIn−Sn−O膜や、窒素を含むIn−Ga−O膜や、窒素を含むIn−Zn−O膜や、窒素を含むSn−O膜や、窒素を含むIn−O膜や、金属窒化膜(InN、SnNなど)を用いることができる。これらの膜は5eV(電子ボルト)、好ましくは5.5eV(電子ボルト)以上の仕事関数を有し、ゲート電極層として用いた場合、トランジスタの電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現できる。
【0091】
なお、ゲート電極層401は、ゲート絶縁層402上に設けられた導電膜(図示しない)を、マスクを用いて加工することによって形成することができる。ここで、加工に用いるマスクは、フォトリソグラフィ法などによって形成されたマスクに、スリミング処理を行って、より微細なパターンを有するマスクとするのが好ましい。
【0092】
スリミング処理としては、例えば、ラジカル状態の酸素(酸素ラジカル)などを用いるアッシング処理を適用することができる。ただし、スリミング処理はフォトリソグラフィ法などによって形成されたマスクをより微細なパターンに加工できる処理であれば、アッシング処理に限定する必要はない。また、スリミング処理によって形成されるマスクによってトランジスタのチャネル長(L)が決定されることになるため、当該スリミング処理としては制御性の良好な処理を適用することができる。
【0093】
スリミング処理の結果、フォトリソグラフィ法などによって形成されたマスクを、露光装置の解像限界以下、好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下の線幅まで微細化することが可能である。例えば、線幅は、30nm以上2000nm以下、好ましくは50nm以上350nm以下とすることができる。これにより、トランジスタのさらなる微細化を達成することができる。
【0094】
次に、ゲート電極層401をマスクとして酸化物半導体層403にドーパント431を導入し、自己整合的に低抵抗領域403a、低抵抗領域403b及びチャネル形成領域403cを形成する(図2(B)参照)。
【0095】
ドーパント431は、酸化物半導体層403の導電率を変化させる不純物である。ドーパント431としては、15族元素(代表的にはリン(P)、砒素(As)、及びアンチモン(Sb))、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、インジウム(In)、フッ素(F)、塩素(Cl)、チタン(Ti)、及び亜鉛(Zn)のいずれかから選択される一以上を用いることができる。
【0096】
ドーパント431は、注入法により、他の膜(例えば絶縁層407)を通過して、酸化物半導体層403に導入することもできる。ドーパント431の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。その際には、ドーパント431の単体のイオンあるいはフッ化物、塩化物のイオンを用いると好ましい。
【0097】
ドーパント431の導入工程は、加速電圧、ドーズ量などの注入条件、また通過させる膜の膜厚を適宜設定して制御すればよい。本実施の形態では、ドーパント431としてホウ素を用いて、イオン注入法でホウ素イオンの注入を行う。なお、ドーパント431のドーズ量は1×1013ions/cm以上5×1016ions/cm以下とすればよい。
【0098】
低抵抗領域403a及び低抵抗領域403bにおけるドーパント431の濃度は、5×1018/cm以上1×1022/cm以下であることが好ましい。
【0099】
ドーパント431を導入する際に、基板400を加熱しながら行ってもよい。
【0100】
なお、酸化物半導体層403にドーパント431を導入する処理は、複数回行ってもよく、ドーパントの種類も複数種用いてもよい。
【0101】
また、ドーパント431の導入処理後、加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては、温度300℃以上700℃以下、好ましくは300℃以上450℃以下で1時間、酸素雰囲気下で行うことが好ましい。また、窒素雰囲気下、減圧下、大気(超乾燥エア)下で加熱処理を行ってもよい。
【0102】
酸化物半導体層403を結晶性酸化物半導体層とした場合、ドーパント431の導入により、一部非晶質化する場合がある。この場合、ドーパント431の導入後に加熱処理を行うことによって、酸化物半導体層403の結晶性を回復することができる。
【0103】
次いで、ゲート絶縁層402及びゲート電極層401上に絶縁層407を形成する(図2(C)参照)。
【0104】
絶縁層407は、プラズマCVD法、スパッタリング法、または蒸着法等により成膜することができる。絶縁層407は、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または酸化ガリウム膜などの無機絶縁膜などを用いることができる。
【0105】
また、絶縁層407として、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化マグネシウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ランタン膜、酸化バリウム膜、または金属窒化物膜(例えば、窒化アルミニウム膜)も用いることができる。
【0106】
絶縁層407は、単層でも積層でもよく、例えば酸化シリコン膜及び酸化アルミニウム膜の積層を用いることができる。酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高く、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体層403への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体層403からの放出を防止する保護膜として機能するため好ましく適用することができる。
【0107】
絶縁層407は、スパッタリング法など、絶縁層407に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することが好ましい。
【0108】
酸化物半導体層403の成膜時と同様に、絶縁層407の成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ(クライオポンプなど)を用いることが好ましい。クライオポンプを用いて排気した成膜室で成膜した絶縁層407に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、絶縁層407の成膜室内の残留水分を除去するための排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。
【0109】
本実施の形態では、絶縁層407として、ゲート電極層401に接する側から酸化アルミニウム膜と酸化シリコン膜の積層構造を用いるものとする。なお、酸化アルミニウム膜を高密度(膜密度3.2g/cm以上、好ましくは3.6g/cm以上)とすることによって、トランジスタ420に安定な電気特性を付与することができる。膜密度はラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や、X線反射率測定法(XRR:X−Ray Reflection)によって測定することができる。
【0110】
次いで、絶縁層407上にマスク440を形成し、マスク440を用いて絶縁層407及びゲート絶縁層402をエッチングして、酸化物半導体層403(より具体的には、低抵抗領域403a)に達する開口442を形成する(図2(D)参照)。
【0111】
マスク440は、フォトレジストなどの材料を用い、フォトリソグラフィ法などによって形成することができる。マスク440形成時の露光には、波長が数nm〜数10nmと短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いるのが望ましい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。したがって、微細なパターンを有するマスク440を形成することができる。
【0112】
なお、十分に微細なパターンのマスク440を形成できるのであれば、インクジェット法などの他の方法を用いてマスク440を形成してもよい。この場合には、マスク440の材料として、フォトレジストなどの感光性を有する材料を用いる必要はない。
【0113】
マスク440を除去した後、開口442及び絶縁層407上にマスク444を形成する。マスク444は、マスク440と同様に形成することができる。そしてマスク444を用いて絶縁層407及びゲート絶縁層402をエッチングして、酸化物半導体層403(より具体的には、低抵抗領域403b)に達する開口446を形成する(図2(E)参照)。これによって、ゲート絶縁層402及び絶縁層407に、ゲート電極層401を挟んで一対の開口が形成されることとなる。開口446を形成後、マスク444を除去する。
【0114】
次いで、開口442及び開口446を埋め込むように、絶縁層407上にソース電極層及びドレイン電極層となる導電膜405を形成する(図3(A)参照)。
【0115】
導電膜405は、後の加熱処理に耐えられる材料を用いる。例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としてもよい。また、ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成してもよい。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In−SnO、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛(In−ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0116】
次に、導電膜405にCMP処理を行う(図3(B)参照)。絶縁層407上(少なくともゲート電極層401と重畳する領域)に設けられた導電膜405を除去するように、導電膜405に対してCMP処理を行うことで、開口442または開口446に埋め込まれたソース電極層405a及びドレイン電極層405bを形成することができる。本実施の形態では、導電膜405に対して、絶縁層407の表面が露出する条件でCMP処理を行うことにより、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bを形成する。なお、CMP処理の条件によっては絶縁層407の表面またはゲート電極層401の表面も研磨される場合がある。
【0117】
ここで、CMP処理とは、被加工物の表面を化学的、機械的な複合作用により平坦化する手法である。より具体的には、研磨ステージの上に研磨布を貼り付け、被加工物と研磨布との間にスラリー(研磨剤)を供給しながら研磨ステージと被加工物とを各々回転または揺動させて、被加工物の表面を、スラリーと被加工物表面との間での化学反応と、研磨布と被加工物との機械的研磨の作用により、被加工物の表面を研磨する方法である。
【0118】
なお、CMP処理は、1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回に分けてCMP処理を行う場合は、高い研磨レートの一次研磨を行った後、低い研磨レートの仕上げ研磨を行うことが好ましい。このように研磨レートの異なる研磨を組み合わせることによって、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、絶縁層407の表面の平坦性をより向上させることができる。
【0119】
なお、本実施の形態では、絶縁層407と重畳する領域の導電膜405の除去にCMP処理を用いたが、他の研磨(研削、切削)処理を用いてもよい。または、CMP処理等の研磨処理と、エッチング(ドライエッチング、ウェットエッチング)処理や、プラズマ処理などを組み合わせてもよい。例えば、CMP処理後、ドライエッチング処理やプラズマ処理(逆スパッタリングなど)を行い、処理表面の平坦性向上を図ってもよい。研磨処理に、エッチング処理、プラズマ処理などを組み合わせて行う場合、工程順は特に限定されず、導電膜405の材料、膜厚、及び表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。
【0120】
上述したように、ソース電極層405aまたはドレイン電極層405bは、ゲート絶縁層402及び絶縁層407に設けられた開口を埋め込むように設けられる。したがって、トランジスタ420において、ソース電極層405aと酸化物半導体層403が接する領域(ソース側コンタクト領域)とゲート電極層401との距離(図3(B)におけるLSG)は、開口442の端部とゲート電極層401端部との距離によって決定される。同様に、トランジスタ420において、ドレイン電極層405bと酸化物半導体層403が接する領域(ドレイン側コンタクト領域)とゲート電極層401との距離(図3(B)におけるLDG)は、開口446の端部とゲート電極層401端部との距離によって決定される。
【0121】
ソース電極層405aを設けるための開口442と、ドレイン電極層405bを設けるための開口446を、一度のエッチング処理によって形成する場合、開口442と開口446との間のチャネル長方向の距離の最小加工寸法は、マスクの形成に用いる露光装置の解像限界に制約される。したがって、開口442と開口446との距離を十分に縮小することが難しく、結果としてソース側コンタクト領域及びドレイン側コンタクト領域と、ゲート電極層401との距離(LSG及びLDG)の微細化が困難である。
【0122】
しかしながら、本実施の形態で示す作製方法においては、開口442と開口446を、それぞれ別のマスクを用いた別のエッチング処理によって形成するため、露光装置の解像限界に依存せず、自由に開口の位置を設定することが可能である。よって、ソース側コンタクト領域またはドレイン側コンタクト領域と、ゲート電極層401との距離(LSGまたはLDG)を、例えば0.05μm以上0.1μm以下まで縮小することができる。LSG及びLDGを縮小することで、トランジスタ420のソースとドレイン間の抵抗を低減することができるため、トランジスタの電気的特性(例えばオン電流特性)を向上させることができる。
【0123】
また、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bを形成するために絶縁層407上の導電膜405を除去する工程において、レジストマスクを用いたエッチング処理を用いないため、ソース電極層405a及びドレイン電極層405b間のチャネル長方向の距離が微細化されている場合でも精密な加工を正確に行うことができる。よって、半導体装置の作製工程において、形状や特性のばらつきの少ない微細な構造を有するトランジスタ420を歩留まりよく作製することができる。
【0124】
次いで、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b及び絶縁層407上にソース配線層またはドレイン配線層(これと同じ層で形成される配線も含む)となる導電膜を成膜し、該導電膜を加工してソース配線層465a及びドレイン配線層465bを形成する(図3(C)参照)。
【0125】
ソース配線層465a及びドレイン配線層465bはゲート電極層401と同様の材料及び作製方法を用いて形成することができる。例えば、ソース配線層465a及びドレイン配線層465bとして窒化タンタル膜と銅膜との積層、または窒化タンタル膜とタングステン膜との積層などを用いることができる。
【0126】
上述のように、ソース電極層405aとドレイン電極層405bとのチャネル長方向の距離は、露光装置の解像限界に依存せずに微細に加工することが可能である。一方、ソース配線層465a及びドレイン配線層465bは、フォトリソグラフィ法によって形成したマスクを用いて加工されるため、その幅(チャネル長方向の距離)は、ソース電極層405aとドレイン電極層405bよりも大きくなる。トランジスタ420の微細化のためには、ソース配線層465aとドレイン配線層465bとの間隔を、露光装置の解像限界に合わせて設定することが好ましい。
【0127】
以上の工程によって、本実施の形態のトランジスタ420が形成される。
【0128】
トランジスタ起因の表面凹凸を低減するためにトランジスタ420上に平坦化絶縁膜を形成してもよい。平坦化絶縁膜としては、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン系樹脂等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜を形成してもよい。
【0129】
なお、トランジスタ420では、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bに挟まれた領域におけるゲート絶縁層402と絶縁層407の合計の膜厚(酸化物半導体層403表面から絶縁層407の上面までの距離と言い換えることもできる)と、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bの膜厚は、略等しい厚さであり、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b及び絶縁層407の上面が略一致する構成を示したが、本実施の形態はこれに限られない。
【0130】
例えば、図4(A)に示すトランジスタ422のように、導電膜405の研磨処理の条件によっては、ソース電極層405aまたはドレイン電極層405bの上面と、絶縁層407の上面と、に高低差が形成されることもある。または、図4(B)に示すトランジスタ423のように、導電膜405及び絶縁層407の研磨処理によって、ゲート電極層401の上面を露出させてもよい。また、ゲート電極層401も上方の一部が研磨処理によって除去されてもよい。トランジスタ423のようにゲート電極層401を露出する構造は、トランジスタ423上に他の配線や半導体素子を積層する集積回路において用いることができる。
【0131】
上述のように、開示する発明の一態様では、ソース電極層405aを設けるための開口442とドレイン電極層405bを設けるための開口446は、それぞれ別のマスクを用いた別のエッチング処理によって形成する。これにより、トランジスタ420の十分な微細化を達成することが可能であり、ソース側コンタクト領域及びドレイン側コンタクト領域と、ゲート電極層401との距離を十分に縮小することができるため、トランジスタ420のソースとドレイン間の抵抗を低減することができる。よって、トランジスタの電気的特性(例えばオン電流特性)を向上させることができる。
【0132】
また、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bの形成するために絶縁層407上の導電膜405を除去する工程において、レジストマスクを用いたエッチング処理を用いないため、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bの間隔が微細化されている場合でも精密な加工を正確に行うことができる。よって、半導体装置の作製工程において、形状や特性のばらつきの少ない微細な構造を有するトランジスタ420を歩留まりよく作製することができる。
【0133】
このように、開示する発明の一態様によって、不良を抑制しつつ、または、良好な特性を維持しつつ、微細化を達成した半導体装置を提供することができる。
【0134】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本明細書に示すトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置の一例を、図面を用いて説明する。
【0135】
図5は、半導体装置の構成の一例である。図5(A)に、半導体装置の断面図を、図5(B)に半導体装置の平面図を、図5(C)に半導体装置の回路図をそれぞれ示す。ここで、図5(A)は、図5(B)のC1−C2、及びD1−D2における断面に相当する。
【0136】
図5(A)及び図5(B)に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ160を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ162を有するものである。トランジスタ162は、実施の形態1で示すトランジスタ420の構造を適用する例である。
【0137】
ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なる禁制帯幅を持つ材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコンなど)とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0138】
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明するが、pチャネル型トランジスタを用いてもよい。また、情報を保持するために酸化物半導体を用いた実施の形態1に示すようなトランジスタに用いる他、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定する必要はない。
【0139】
図5(A)におけるトランジスタ160は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板100に設けられたチャネル形成領域116と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物領域120と、不純物領域120に接する金属間化合物領域124と、チャネル形成領域116上に設けられたゲート絶縁膜108と、ゲート絶縁膜108上に設けられたゲート電極110と、を有する。なお、図において、明示的にはソース電極やドレイン電極を有しない場合があるが、便宜上、このような状態を含めてトランジスタと呼ぶ場合がある。また、この場合、トランジスタの接続関係を説明するために、ソース領域やドレイン領域を含めてソース電極やドレイン電極と表現することがある。つまり、本明細書において、ソース電極との記載には、ソース領域が含まれうる。
【0140】
基板100上にはトランジスタ160を囲むように素子分離絶縁層106が設けられており、トランジスタ160を覆うように絶縁層128、及び絶縁層130が設けられている。なお、トランジスタ160において、ゲート電極110の側面に側壁絶縁層(サイドウォール絶縁層)を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域120としてもよい。
【0141】
単結晶半導体基板を用いたトランジスタ160は、高速動作が可能である。このため、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを高速に行うことができる。
【0142】
トランジスタ160とトランジスタ162との間には絶縁膜が形成されている。図5(A)では、トランジスタ160上に、絶縁層128及び絶縁層130が形成されている。なお、トランジスタ162および容量素子164の形成前の処理として、トランジスタ160上の絶縁層にCMP処理を施して、平坦化した絶縁層128、絶縁層130を形成し、同時にゲート電極110の上面を露出させる。
【0143】
絶縁層128、絶縁層130は、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。絶縁層128、絶縁層130は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0144】
また、ポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。有機材料を用いる場合、スピンコート法、印刷法などの湿式法によって絶縁層128、絶縁層130を形成してもよい。
【0145】
なお、本実施の形態において、絶縁層128として窒化シリコン膜、絶縁層130として酸化シリコン膜を用いる。
【0146】
絶縁層130表面において、酸化物半導体層144形成領域に、平坦化処理を行うことが好ましい。本実施の形態では、研磨処理(例えばCMP処理)により十分に平坦化した(好ましくは絶縁層130表面の平均面粗さを0.15nm以下とした)絶縁層130上に酸化物半導体層144を形成する。
【0147】
図5(A)に示すトランジスタ162は、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタである。ここで、トランジスタ162に含まれる酸化物半導体層144は、高純度化されたものであることが望ましい。高純度化された酸化物半導体を用いることで、極めて優れたオフ特性のトランジスタ162を得ることができる。
【0148】
トランジスタ162は、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない半導体記憶装置とすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0149】
トランジスタ162は作製工程において、絶縁層135上に設けられた導電膜を化学的機械研磨処理により除去する工程を用いて、ソース電極層及びドレイン電極層として機能する電極層142a、142bを形成する。
【0150】
また、電極層142a、142bに接続してソース配線層又はドレイン配線層として機能する配線層138a、138bを設ける。
【0151】
トランジスタ162は、ソース電極層又はドレイン電極層として機能する電極層142a、142bと酸化物半導体層144が接する領域(コンタクト領域)と、ゲート電極148との距離を短くすることができるため、電極層142a、142bと酸化物半導体層144とが接する領域(コンタクト領域)、及びゲート電極148間の抵抗が減少し、トランジスタ162のオン特性を向上させることが可能となる。
【0152】
電極層142a、142bの形成工程におけるゲート電極148上の導電膜を除去する工程において、レジストマスクを用いたエッチング工程を用いないため、精密な加工を正確に行うことができる。よって、半導体装置の作製工程において、形状や特性のばらつきを少ない微細な構造を有するトランジスタを歩留まりよく作製することができる。
【0153】
トランジスタ162上には、絶縁膜150が単層または積層で設けられている。本実施の形態では、絶縁膜150として、酸化アルミニウム膜を用いる。酸化アルミニウム膜を高密度(膜密度3.2g/cm以上、好ましくは3.6g/cm以上)とすることによって、トランジスタ162に安定な電気特性を付与することができる。
【0154】
また、酸化物半導体層144、ゲート絶縁膜146及びゲート電極148を覆うように保護膜となる無機絶縁膜(好ましくは酸化アルミニウム膜)を設けてもよい。
【0155】
また、絶縁膜150を介して、トランジスタ162の電極層142aと電気的に接続する配線層138aと重畳する領域には、導電層153が設けられており、配線層138aと、絶縁膜150と、導電層153とによって、容量素子164が構成される。すなわち、トランジスタ162の電極層142aは、容量素子164の一方の電極として機能し、導電層153は、容量素子164の他方の電極として機能する。なお、容量が不要の場合には、容量素子164を設けない構成とすることもできる。また、容量素子164は、別途、トランジスタ162の上方に設けてもよい。なお、図5(A)において、トランジスタ162の酸化物半導体層144の低抵抗領域の一方は、絶縁層130から露出したトランジスタ160のゲート電極110と接して設けられている。従って、トランジスタ160のゲート電極110と、容量素子164の電極の一方である配線層138aとは、電極層142aを介して電気的に接続される。
【0156】
トランジスタ162および容量素子164の上には絶縁膜152が設けられている。そして、絶縁膜152上にはトランジスタ162と、他のトランジスタを接続するための配線156が設けられている。図5(A)には図示しないが、配線156は、絶縁膜150、絶縁膜152などに形成された開口に形成された電極を介して配線層138b及び電極層142bと電気的に接続される。ここで、該電極は、少なくともトランジスタ162の酸化物半導体層144の一部と重畳するように設けられることが好ましい。
【0157】
図5(A)及び図5(B)において、トランジスタ160と、トランジスタ162とは、少なくとも一部が重畳するように設けられており、トランジスタ160のソース領域またはドレイン領域と酸化物半導体層144の一部が重畳するように設けられているのが好ましい。また、トランジスタ162及び容量素子164が、トランジスタ160の少なくとも一部と重畳するように設けられている。例えば、容量素子164の導電層153は、トランジスタ160のゲート電極110と少なくとも一部が重畳して設けられている。このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0158】
なお、配線層138b及び配線156の電気的接続は、配線層138b及び配線156を直接接触させて行ってもよいし、配線層138b及び配線156の間の絶縁膜に電極を設けて、該電極を介して行ってもよい。また、間に介する電極は、複数でもよい。
【0159】
次に、図5(A)及び図5(B)に対応する回路構成の一例を図5(C)に示す。
【0160】
図5(C)において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ160のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line)とトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line)と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方は、容量素子164の電極の一方と電気的に接続され、第5の配線(5th Line)と、容量素子164の電極の他方は電気的に接続されている。
【0161】
図5(C)に示す半導体装置では、トランジスタ160のゲート電極の電位が保持可能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0162】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ160のゲート電極、および容量素子164に与えられる。すなわち、トランジスタ160のゲート電極には、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
【0163】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ160のゲート電極の電荷は長時間にわたって保持される。
【0164】
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ160のゲート電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジスタ160をnチャネル型とすると、トランジスタ160のゲート電極にHighレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Hは、トランジスタ160のゲート電極にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ160を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの間の電位Vとすることにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(>Vth_H)となれば、トランジスタ160は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ160は「オフ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情報を読み出すことができる。
【0165】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読み出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_Hより小さい電位を第5の配線に与えればよい。または、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより大きい電位を第5の配線に与えればよい。
【0166】
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0167】
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため、ゲート絶縁膜の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
【0168】
以上のように、微細化及び高集積化を実現し、かつ高い電気的特性を付与された半導体装置、及び該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0169】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0170】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、実施の形態1に示すトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置について、実施の形態2に示した構成と異なる構成について、図6及び図7を用いて説明を行う。
【0171】
図6(A)は、半導体装置の回路構成の一例を示し、図6(B)は半導体装置の一例を示す概念図である。まず、図6(A)に示す半導体装置について説明を行い、続けて図6(B)に示す半導体装置について、以下説明を行う。
【0172】
図6(A)に示す半導体装置において、ビット線BLとトランジスタ162のソース電極又はドレイン電極とは電気的に接続され、ワード線WLとトランジスタ162のゲート電極とは電気的に接続され、トランジスタ162のソース電極又はドレイン電極と容量素子254の第1の端子とは電気的に接続されている。
【0173】
次に、図6(A)に示す半導体装置(メモリセル250)に、情報の書き込みおよび保持を行う場合について説明する。
【0174】
まず、ワード線WLの電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位として、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、ビット線BLの電位が、容量素子254の第1の端子に与えられる(書き込み)。その後、ワード線WLの電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位として、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、容量素子254の第1の端子の電位が保持される(保持)。
【0175】
酸化物半導体を用いたトランジスタ162は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ162をオフ状態とすることで、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは、容量素子254に蓄積された電荷)を極めて長時間にわたって保持することが可能である。
【0176】
次に、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ162がオン状態となると、浮遊状態であるビット線BLと容量素子254とが導通し、ビット線BLと容量素子254の間で電荷が再分配される。その結果、ビット線BLの電位が変化する。ビット線BLの電位の変化量は、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは容量素子254に蓄積された電荷)によって、異なる値をとる。
【0177】
例えば、容量素子254の第1の端子の電位をV、容量素子254の容量をC、ビット線BLが有する容量成分(以下、ビット線容量とも呼ぶ)をCB、電荷が再分配される前のビット線BLの電位をVB0とすると、電荷が再分配された後のビット線BLの電位は、(CB×VB0+C×V)/(CB+C)となる。従って、メモリセル250の状態として、容量素子254の第1の端子の電位がV1とV0(V1>V0)の2状態をとるとすると、電位V1を保持している場合のビット線BLの電位(=CB×VB0+C×V1)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合のビット線BLの電位(=CB×VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
【0178】
そして、ビット線BLの電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができる。
【0179】
このように、図6(A)に示す半導体装置は、トランジスタ162のオフ電流が極めて小さいという特徴から、容量素子254に蓄積された電荷は長時間にわたって保持することができる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0180】
次に、図6(B)に示す半導体装置について、説明を行う。
【0181】
図6(B)に示す半導体装置は、上部に記憶回路として図6(A)に示したメモリセル250を複数有するメモリセルアレイ251a及び251bを有し、下部に、メモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251a及び251b)を動作させるために必要な周辺回路253を有する。なお、周辺回路253は、メモリセルアレイ251と電気的に接続されている。
【0182】
図6(B)に示した構成とすることにより、周辺回路253をメモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251a及び251b)の直下に設けることができるため半導体装置の小型化を図ることができる。
【0183】
周辺回路253に設けられるトランジスタは、トランジスタ162とは異なる半導体材料を用いるのがより好ましい。例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いることが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、十分な高速動作が可能である。したがって、該トランジスタにより、高速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能である。
【0184】
なお、図6(B)に示した半導体装置では、2つのメモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251aと、メモリセルアレイ251b)が積層された構成を例示したが、積層するメモリセルの数はこれに限定されない。3つ以上のメモリセルを積層する構成としても良い。
【0185】
次に、図6(A)に示したメモリセル250の具体的な構成について図7を用いて説明を行う。
【0186】
図7は、メモリセル250の構成の一例である。図7(A)に、メモリセル250の断面図を、図7(B)にメモリセル250の平面図をそれぞれ示す。ここで、図7(A)は、図7(B)のF1−F2、及びG1−G2における断面に相当する。
【0187】
図7(A)及び図7(B)に示すトランジスタ162は、実施の形態1で示した構成と同様の構成とすることができる。
【0188】
トランジスタ162上には、絶縁膜256が単層または積層で設けられている。また、絶縁膜256を介して、トランジスタ162の電極層142aと電気的に接続する配線層138aと重畳する領域には、導電層262が設けられており、電極層142aと電気的に接続する配線層138aと、絶縁層135と、絶縁膜256と、導電層262とによって、容量素子254が構成される。すなわち、トランジスタ162の電極層142aは、容量素子254の一方の電極として機能し、導電層262は、容量素子254の他方の電極として機能する。
【0189】
トランジスタ162および容量素子254の上には絶縁膜258が設けられている。そして、絶縁膜258上にはメモリセル250と、隣接するメモリセル250を接続するための配線260が設けられている。図示しないが、配線260は、絶縁膜256及び絶縁膜258などに形成された開口を介してトランジスタ162の電極層142aと電気的に接続する配線層138aと電気的に接続されている。但し、開口に他の導電層を設け、該他の導電層を介して、配線260と電極層142aと電気的に接続する配線層138aとを電気的に接続してもよい。なお、配線260は、図6(A)の回路図におけるビット線BLに相当する。
【0190】
図7(A)及び図7(B)において、トランジスタ162の電極層142bは、隣接するメモリセルに含まれるトランジスタのソース電極としても機能することができる。このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0191】
以上のように、上部に多層に形成された複数のメモリセルは、酸化物半導体を用いたトランジスタにより形成されている。酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0192】
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ(換言すると、十分な高速動作が可能なトランジスタ)を用いた周辺回路と、酸化物半導体を用いたトランジスタ(より広義には、十分にオフ電流が小さいトランジスタ)を用いた記憶回路とを一体に備えることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現することができる。また、周辺回路と記憶回路を積層構造とすることにより、半導体装置の集積化を図ることができる。
【0193】
以上のように、微細化及び高集積化を実現し、かつ高い電気的特性を付与された半導体装置、及び該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0194】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0195】
(実施の形態4)
本実施の形態では、先の実施の形態で示した半導体装置を携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯機器に応用した場合の例を図8乃至図11を用いて説明する。
【0196】
携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯機器においては、画像データの一時記憶などにSRAMまたはDRAMが使用されている。SRAMまたはDRAMが使用される理由としてはフラッシュメモリでは応答が遅く、画像処理では不向きであるためである。一方で、SRAMまたはDRAMを画像データの一時記憶に用いた場合、以下の特徴がある。
【0197】
通常のSRAMは、図8(A)に示すように1つのメモリセルがトランジスタ801〜806の6個のトランジスタで構成されており、それをXデコーダー807、Yデコーダー808にて駆動している。トランジスタ803とトランジスタ805、トランジスタ804とトランジスタ806はインバータを構成し、高速駆動を可能としている。しかし1つのメモリセルが6トランジスタで構成されているため、セル面積が大きいという欠点がある。デザインルールの最小寸法をFとしたときにSRAMのメモリセル面積は通常100〜150Fである。このためSRAMはビットあたりの単価が各種メモリの中で最も高い。
【0198】
それに対して、DRAMはメモリセルが図8(B)に示すようにトランジスタ811、保持容量812によって構成され、それをXデコーダー813、Yデコーダー814にて駆動している。1つのセルが1トランジスタ1容量の構成になっており、面積が小さい。DRAMのメモリセル面積は通常10F以下である。ただし、DRAMは常にリフレッシュが必要であり、書き換えをおこなわない場合でも電力を消費する。
【0199】
しかし、先の実施の形態で説明した半導体装置のメモリセル面積は、10F前後であり、且つ頻繁なリフレッシュは不要である。したがって、メモリセル面積が縮小され、且つ消費電力が低減することができる。
【0200】
図9に携帯機器のブロック図を示す。図9に示す携帯機器はRF回路901、アナログベースバンド回路902、デジタルベースバンド回路903、バッテリー904、電源回路905、アプリケーションプロセッサ906、フラッシュメモリ910、ディスプレイコントローラ911、メモリ回路912、ディスプレイ913、タッチセンサ919、音声回路917、キーボード918などより構成されている。ディスプレイ913は表示部914、ソースドライバ915、ゲートドライバ916によって構成されている。アプリケーションプロセッサ906はCPU907、DSP908、インターフェイス909(IF909)を有している。一般にメモリ回路912はSRAMまたはDRAMで構成されており、この部分に先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0201】
図10に、ディスプレイのメモリ回路950に先の実施の形態で説明した半導体装置を使用した例を示す。図10に示すメモリ回路950は、メモリ952、メモリ953、スイッチ954、スイッチ955およびメモリコントローラ951により構成されている。また、メモリ回路950は、信号線から入力された画像データ(入力画像データ)、メモリ952、及びメモリ953に記憶されたデータ(記憶画像データ)を読み出し、及び制御を行うディスプレイコントローラ956と、ディスプレイコントローラ956からの信号により表示するディスプレイ957が接続されている。
【0202】
まず、ある画像データがアプリケーションプロセッサ(図示しない)によって、形成される(入力画像データA)。入力画像データAは、スイッチ954を介してメモリ952に記憶される。そしてメモリ952に記憶された画像データ(記憶画像データA)は、スイッチ955、及びディスプレイコントローラ956を介してディスプレイ957に送られ、表示される。
【0203】
入力画像データAに変更が無い場合、記憶画像データAは、通常30〜60Hz程度の周期でメモリ952からスイッチ955を介して、ディスプレイコントローラ956から読み出される。
【0204】
次に、例えばユーザーが画面を書き換える操作をしたとき(すなわち、入力画像データAに変更が有る場合)、アプリケーションプロセッサは新たな画像データ(入力画像データB)を形成する。入力画像データBはスイッチ954を介してメモリ953に記憶される。この間も定期的にメモリ952からスイッチ955を介して記憶画像データAは読み出されている。メモリ953に新たな画像データ(記憶画像データB)が記憶し終わると、ディスプレイ957の次のフレームより、記憶画像データBは読み出され、スイッチ955、及びディスプレイコントローラ956を介して、ディスプレイ957に記憶画像データBが送られ、表示がおこなわれる。この読み出しはさらに次に新たな画像データがメモリ952に記憶されるまで継続される。
【0205】
このようにメモリ952及びメモリ953は交互に画像データの書き込みと、画像データの読み出しを行うことによって、ディスプレイ957の表示をおこなう。なお、メモリ952及びメモリ953はそれぞれ別のメモリには限定されず、1つのメモリを分割して使用してもよい。先の実施の形態で説明した半導体装置をメモリ952及びメモリ953に採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0206】
図11に電子書籍のブロック図を示す。図11はバッテリー1001、電源回路1002、マイクロプロセッサ1003、フラッシュメモリ1004、音声回路1005、キーボード1006、メモリ回路1007、タッチパネル1008、ディスプレイ1009、ディスプレイコントローラ1010によって構成される。
【0207】
ここでは、図11のメモリ回路1007に先の実施の形態で説明した半導体装置を使用することができる。メモリ回路1007の役割は書籍の内容を一時的に保持する機能を持つ。機能の例としては、ユーザーがハイライト機能を使用する場合などがある。ユーザーが電子書籍を読んでいるときに、特定の箇所にマーキングをしたい場合がある。このマーキング機能をハイライト機能と言い、表示の色を変える、アンダーラインを引く、文字を太くする、文字の書体を変えるなどによって、周囲との違いを示すことである。ユーザーが指定した箇所の情報を記憶し、保持する機能である。この情報を長期に保存する場合にはフラッシュメモリ1004にコピーしてもよい。このような場合においても、先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0208】
以上のように、本実施の形態に示す携帯機器には、先の実施の形態に係る半導体装置が搭載されている。このため、読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力を低減した携帯機器が実現される。
【0209】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0210】
(実施の形態5)
上記実施の形態で一例を示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0211】
図12(A)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シール材4005が設けられ、第2の基板4006によって封止されている。図12(A)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a、4018bから供給されている。
【0212】
図12(B)(C)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。図12(B)(C)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。図12(B)(C)においては、別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0213】
また図12(B)(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装してもよいし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装してもよい。
【0214】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。図12(A)は、COG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、図12(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図12(C)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0215】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネル(表示パネル、発光パネル)と、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0216】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0217】
また第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、上記実施の形態で一例を示したトランジスタを適用することができる。
【0218】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0219】
半導体装置の一形態について、図12及び図13を用いて説明する。図13は、図12(B)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0220】
図12及び図13で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して、電気的に接続されている。
【0221】
接続端子電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電膜から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、4011のソース配線層及びドレイン配線層と同じ導電膜で形成されている。
【0222】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、図12及び図13では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。図13(A)では、トランジスタ4010、4011上には層間絶縁膜4020、絶縁膜4021が設けられている。なお、絶縁膜4023は下地膜として機能する絶縁膜である。また、トランジスタ4010、4011と重畳する領域には遮光膜4050が設けられている。
【0223】
トランジスタ4010、4011としては、上記実施の形態で示したトランジスタを適用することができる。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ420と同様な構造を有するトランジスタを適用する例を示す。
【0224】
トランジスタ4010、4011は作製工程において、層間絶縁膜4020上に設けられた導電膜を化学的機械研磨処理することによって除去することによって、ソース電極層及びドレイン電極層を形成する。
【0225】
従って、ソース電極層又はドレイン電極層と酸化物半導体層とが接する領域(コンタクト領域)と、ゲート電極層との距離を短くすることができるため、ソース電極層又はドレイン電極層と酸化物半導体層とが接する領域(コンタクト領域)、及びゲート電極層間の抵抗が減少し、トランジスタ4010、4011のオン特性を向上させることが可能となる。
【0226】
ソース電極層及びドレイン電極層の形成工程におけるゲート電極層上の導電膜を除去する工程において、レジストマスクを用いたエッチング工程を用いないため、精密な加工を正確に行うことができる。よって、半導体装置の作製工程において、形状や特性のばらつきを少ない微細な構造を有するトランジスタ4010、4011を歩留まりよく作製することができる。
【0227】
よって、図12及び図13で示す本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0228】
また、駆動回路用のトランジスタ4011の酸化物半導体層のチャネル形成領域と重なる位置にさらに導電層を設けてもよい。導電層を酸化物半導体層のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、バイアス−熱ストレス試験(BT試験)前後におけるトランジスタ4011のしきい値電圧の変化量をさらに低減することができる。また、導電層は、電位がトランジスタ4011のゲート電極層と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層の電位がGND、0V、或いはフローティング状態であってもよい。
【0229】
また、該導電層は外部の電場を遮蔽する、すなわち外部の電場が内部(トランジスタを含む回路部)に作用しないようにする機能(特に静電気に対する静電遮蔽機能)も有する。導電層の遮蔽機能により、静電気などの外部の電場の影響によりトランジスタの電気的な特性が変動することを防止することができる。
【0230】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0231】
図13(A)に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。図13(A)において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜4032、4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031とは液晶層4008を介して積層する構成となっている。
【0232】
またスペーサ4035は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていてもよい。
【0233】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料(液晶組成物)は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0234】
また、液晶層4008に、配向膜を用いないブルー相を発現する液晶組成物を用いてもよい。この場合、液晶層4008と、第1の電極層4030及び第2の電極層4031とが接する構造となる。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は、液晶及びカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて発現させることができる。また、ブルー相が発現する温度範囲を広げるために、ブルー相を発現する液晶組成物に重合性モノマー及び重合開始剤などを添加し、高分子安定化させる処理を行って液晶層を形成することもできる。ブルー相を発現する液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。
【0235】
また、液晶材料の固有抵抗は、1×10Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
【0236】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。保持容量の大きさは、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。
【0237】
本実施の形態で用いる酸化物半導体層を用いたトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0238】
また、本実施の形態で用いる酸化物半導体層を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバートランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路として、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0239】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0240】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。また、VA型の液晶表示装置にも適用することができる。VA型の液晶表示装置とは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種である。VA型の液晶表示装置は、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0241】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0242】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0243】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0244】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0245】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0246】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透光性であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0247】
図13(B)に表示素子として発光素子を用いた発光装置(発光パネル)の例を示す。表示素子である発光素子4513は、画素部4002に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光素子4513の構成は、第1の電極層4030、電界発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、示した構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができる。
【0248】
隔壁4510は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0249】
電界発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでもよい。
【0250】
発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031及び隔壁4510上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、DLC膜等を形成することができる。また、第1の基板4001、第2の基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0251】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用いればよい。
【0252】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0253】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能である。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)とも呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
【0254】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒または溶質に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0255】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものである。また、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0256】
また、電子ペーパーとして、ツイストボール表示方式を用いる表示装置も適用することができる。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を、表示素子に用いる電極層である第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差を生じさせて球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0257】
なお、図12及び図13において、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラス基板の他、可とう性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、透光性が必要でなければ、アルミニウムやステンレスなどの金属基板(金属フィルム)を用いてもよい。例えば、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0258】
層間絶縁膜4020は酸化物絶縁膜を用いることができ、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、又はこれらの混合材料を用いて形成することができる。また、上記酸化物絶縁膜上に窒化物絶縁膜を積層してもよく、窒化物絶縁膜は窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、又はこれらの混合材料を用いて形成することができる。
【0259】
なお、トランジスタ4010、4011を覆うように、保護膜として酸化アルミニウム膜を用いることが好ましい。保護膜はスパッタリング法やプラズマCVD法によって形成することができる。
【0260】
酸化物半導体層上に保護膜として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0261】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体層への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体層からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0262】
また、平坦化絶縁膜として機能する絶縁膜4021は、アクリル樹脂、ポリイミド、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜を形成してもよい。
【0263】
絶縁膜4021の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷)等の方法、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等のツール(設備)を用いることができる。
【0264】
表示装置は光源又は表示素子からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁膜、導電膜などの薄膜はすべて可視光の波長領域の光に対して透光性とする。
【0265】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層及び第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0266】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、グラフェンなどの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0267】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその金属窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0268】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができる。例えば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンまたはその誘導体、若しくはアニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体などがあげられる。
【0269】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0270】
以上のように上記実施の形態で示したトランジスタを適用することで、様々な機能を有する半導体装置を提供することができる。
【0271】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0272】
(実施の形態6)
実施の形態1で一例を示したトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0273】
図14(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。図14(A)はフォトセンサの等価回路であり、図14(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0274】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、他方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ640は、ソース又はドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソース又はドレインの他方がトランジスタ656のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。トランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソース又はドレインの他方がフォトセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0275】
なお、本明細書における回路図において、酸化物半導体層を用いるトランジスタと明確に判明できるように、酸化物半導体層を用いるトランジスタの記号には「OS」と記載している。図14(A)において、トランジスタ640、トランジスタ656は上記実施の形態に示したトランジスタが適用でき、酸化物半導体層を用いるトランジスタである。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ420と同様な構造を有するトランジスタを適用する例を示す。
【0276】
図14(B)は、フォトセンサにおけるフォトダイオード602及びトランジスタ640に示す断面図であり、絶縁表面を有する基板601(TFT基板)上に、センサとして機能するフォトダイオード602及びトランジスタ640が設けられている。フォトダイオード602、トランジスタ640の上には接着層608を用いて基板613が設けられている。
【0277】
絶縁膜631上に設けられたトランジスタ640上には層間絶縁膜632、絶縁膜633、層間絶縁膜634が設けられている。フォトダイオード602は、絶縁膜633上に設けられ、絶縁膜633上に形成した電極層641a及び電極層641bと、層間絶縁膜634上に設けられた電極層642との間に、絶縁膜633側から順に第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cを積層した構造を有している。
【0278】
なお、トランジスタ640と重畳する領域に遮光膜650が設けられている。
【0279】
電極層641bは、層間絶縁膜634に形成された導電層643と電気的に接続し、電極層642は電極層641aを介して導電層645と電気的に接続している。導電層645は、トランジスタ640のゲート電極層と電気的に接続しており、フォトダイオード602はトランジスタ640と電気的に接続している。
【0280】
ここでは、第1半導体膜606aとしてp型の導電型を有する半導体膜と、第2半導体膜606bとして高抵抗な半導体膜(I型半導体膜)、第3半導体膜606cとしてn型の導電型を有する半導体膜を積層するpin型のフォトダイオードを例示している。
【0281】
第1半導体膜606aはp型半導体膜であり、p型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成することができる。第1半導体膜606aの形成には13族の不純物元素(例えばボロン(B))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第1半導体膜606aの膜厚は10nm以上50nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0282】
第2半導体膜606bは、i型半導体膜(真性半導体膜)であり、アモルファスシリコン膜により形成する。第2半導体膜606bの形成には、半導体材料ガスを用いて、アモルファスシリコン膜をプラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては、シラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。第2半導体膜606bの形成は、LPCVD法、気相成長法、スパッタリング法等により行ってもよい。第2半導体膜606bの膜厚は200nm以上1000nm以下となるように形成することが好ましい。
【0283】
第3半導体膜606cは、n型半導体膜であり、n型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成する。第3半導体膜606cの形成には、15族の不純物元素(例えばリン(P))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第3半導体膜606cの膜厚は20nm以上200nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0284】
また、第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cは、アモルファス半導体ではなく、多結晶半導体を用いて形成してもよいし、微結晶(セミアモルファス(Semi Amorphous Semiconductor:SAS))半導体を用いて形成してもよい。
【0285】
微結晶半導体は、ギブスの自由エネルギーを考慮すれば非晶質と単結晶の中間的な準安定状態に属するものである。すなわち、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する。柱状または針状結晶が基板表面に対して法線方向に成長している。微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側に、シフトしている。即ち、単結晶シリコンを示す520cm−1とアモルファスシリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体膜が得られる。
【0286】
この微結晶半導体膜は、周波数が数十MHz〜数百MHzの高周波プラズマCVD法、または周波数が1GHz以上のマイクロ波プラズマCVD装置により形成することができる。代表的には、SiH、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiFなどの珪素を含む化合物を水素で希釈して形成することができる。また、珪素を含む化合物(例えば水素化珪素)及び水素に加え、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して微結晶半導体膜を形成することができる。これらのときの珪素を含む化合物(例えば水素化珪素)に対して水素の流量比を5倍以上200倍以下、好ましくは50倍以上150倍以下、更に好ましくは100倍とする。さらには、シリコンを含む気体中に、CH、C等の炭化物気体、GeH、GeF等のゲルマニウム化気体、F等を混入させてもよい。
【0287】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、pin型のフォトダイオードはp型の半導体膜側を受光面とする方がよい特性を示す。ここでは、pin型のフォトダイオードが形成されている基板601の面からフォトダイオード602が受ける光を電気信号に変換する例を示す。また、受光面とした半導体膜側とは逆の導電型を有する半導体膜側からの光は外乱光となるため、電極層は遮光性を有する導電膜を用いるとよい。また、n型の半導体膜側を受光面として用いることもできる。
【0288】
絶縁膜631、層間絶縁膜632、絶縁膜633としては、絶縁性材料を用いて、その材料に応じて、スパッタリング法、プラズマCVD法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)の方法、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等のツール(設備)を用いて形成することができる。
【0289】
本実施の形態では、絶縁膜633として酸化アルミニウム膜を用いる。絶縁膜633はスパッタリング法やプラズマCVD法によって形成することができる。
【0290】
酸化物半導体層上に絶縁膜633として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0291】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体層への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体層からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0292】
本実施の形態において、トランジスタ640は、作製工程において、層間絶縁膜632上に設けられた導電膜を化学的機械研磨処理することによって除去し導電膜を分断することによって、ソース電極層及びドレイン電極層を形成する。
【0293】
従って、ソース電極層又はドレイン電極層と酸化物半導体層とが接する領域(コンタクト領域)と、ゲート電極層との距離を短くすることができるため、ソース電極層又はドレイン電極層と酸化物半導体層とが接する領域(コンタクト領域)、及びゲート電極層間の抵抗が減少し、トランジスタ640のオン特性を向上させることが可能となる。
【0294】
ソース電極層及びドレイン電極層の形成工程におけるゲート電極層上の導電膜を除去する工程において、レジストマスクを用いたエッチング工程を用いないため、精密な加工を正確に行うことができる。よって、半導体装置の作製工程において、形状や特性のばらつきを少ない微細な構造を有するトランジスタ640を歩留まりよく作製することができる。
【0295】
絶縁膜631、層間絶縁膜632、絶縁膜633としては、無機絶縁材料を用いることができ、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、又は酸化窒化アルミニウム膜などの酸化物絶縁膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などの窒化物絶縁膜の単層、又は積層を用いることができる。
【0296】
また、層間絶縁膜634としては、表面凹凸を低減するため平坦化絶縁膜として機能する絶縁膜が好ましい。
【0297】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いることができる。
【0298】
以上のように、微細化及び高集積化を実現し、かつ高い電気的特性を付与された半導体装置、及び該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0299】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0300】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器について説明する。具体的には、上記実施の形態で示すトランジスタを有する表示パネル、又は発光パネルを搭載した電子機器について図15を用いて説明する。
【0301】
半導体装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図15に示す。
【0302】
図15(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、表示パネルを表示部7103に用いることができる。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。
【0303】
テレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0304】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0305】
図15(B)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、コンピュータは、表示パネルをその表示部7203に用いることにより作製される。
【0306】
図15(C)は携帯型遊技機であり、筐体7301と筐体7302の2つの筐体で構成されており、連結部7303により、開閉可能に連結されている。筐体7301には表示部7304が組み込まれ、筐体7302には表示部7305が組み込まれている。また、図15(C)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部7306、記録媒体挿入部7307、LEDランプ7308、入力手段(操作キー7309、接続端子7310、センサ7311(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン7312)等を備えている。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、少なくとも表示部7304および表示部7305の両方、または一方に表示パネルを用いていればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。図15(C)に示す携帯型遊技機は、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図15(C)に示す携帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0307】
図15(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、表示パネルを表示部7402に用いることにより作製される。
【0308】
図15(D)に示す携帯電話機7400は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0309】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0310】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部7402の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0311】
また、携帯電話機7400内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機7400の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0312】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、または筐体7401の操作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0313】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0314】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0315】
図15(E)は、平板状のコンピュータの一例を示している。平板状のコンピュータ7450は、ヒンジ7454で接続された筐体7451Lと筐体7451Rを備えている。また、操作ボタン7453、左側スピーカ7455Lおよび右側スピーカ7455Rの他、コンピュータ7450の側面には図示されていない外部接続ポート7456を備える。なお、筐体7451Lに設けられた表示部7452Lと、筐体7451Rに設けられた表示部7452Rが互いに対峙するようにヒンジ7454を折り畳むと、表示部を筐体で保護することができる。
【0316】
表示部7452Lと表示部7452Rは、画像を表示する他、指などで触れると情報を入力できる。例えば、インストール済みのプログラムを示すアイコンを指でふれて選択し、プログラムを起動できる。または、表示された画像の二箇所に触れた指の間隔を変えて、画像を拡大または縮小できる。または、表示された画像の一箇所に触れた指を移動して画像を移動できる。また、キーボードの画像を表示して、表示された文字や記号を指で触れて選択し、情報を入力することもできる。
【0317】
また、コンピュータ7450に、ジャイロ、加速度センサ、GPS(Global Positioning System)受信機、指紋センサ、ビデオカメラを搭載することもできる。例えば、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、コンピュータ7450の向き(縦か横か)を判断して、表示する画面の向きを自動的に切り替えるようにすることができる。
【0318】
また、コンピュータ7450はネットワークに接続できる。コンピュータ7450はインターネット上の情報を表示できる他、ネットワークに接続された他の機器を遠隔から操作する端末として用いることができる。
【0319】
図15(F)は、照明装置の一例を示している。照明装置7500は、筐体7501に光源として本発明の一態様の発光パネル7503a、7503b、7503c、7503dが組み込まれている。照明装置7500は、天井や壁等に取り付けることが可能である。
【0320】
また、本発明の一態様の発光パネルは、発光パネルが薄膜状であるため、曲面を有する基体に貼り付けることで、曲面を有する半導体装置とすることができる。また、その発光パネルを、曲面を有する筐体に配置することで、曲面を有する電子機器または照明装置を実現することができる。
【0321】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例】
【0322】
本実施例では、実施の形態1に示すトランジスタを作製し、電気特性の評価を行った。
【0323】
本実施例に用いたトランジスタの作製方法を以下に示す。
【0324】
はじめにシリコン基板をスパッタリング装置内に搬入し、アルゴン雰囲気下(流量50sccm)で、圧力0.6Pa、電源電力(電源出力)200Wとし3分間逆スパッタリングを行い、表面を平坦化させた。その後、大気開放せずに連続的に、下地絶縁層として膜厚300nmの酸化シリコン膜をスパッタリング法により成膜した。酸化シリコン膜の成膜条件は、酸素雰囲気下(流量50sccm)で、圧力0.4Pa、電源電力(電源出力)1.5kWとし、シリコン基板とターゲットとの間の距離を60mm、基板温度100℃とした。
【0325】
次に、下地絶縁層上に、酸化物半導体層としてIn:Ga:Zn=3:1:2[原子数比]の酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法により、膜厚20nmのIGZO膜を形成した。成膜条件は、アルゴン及び酸素(Ar:O=30sccm:15sccm)雰囲気下、圧力0.4Pa、電源電力0.5kW、基板温度200℃とした。
【0326】
成膜した酸化物半導体層へ、イオン注入法を用いて酸素イオンを注入した。酸素イオンの注入条件は加速電圧5kV、ドーズ量を5.0×1015ions/cm、チルト角を7°、ツイスト角を72°とした。
【0327】
その後、酸化物半導体層をICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法により、エッチングし、島状に加工した。エッチング条件は、エッチングガスとして三塩化ホウ素と塩素の混合ガスを用い(BCl:Cl=60sccm:20sccm)、電源電力450W、バイアス電力100W、圧力1.9Paとした。
【0328】
次いで、島状の酸化物半導体層上に、ゲート絶縁層としてCVD法によって窒化酸化シリコン膜を膜厚20nmで成膜した。
【0329】
ゲート絶縁層上に、スパッタリング法により膜厚30nmの窒化タンタル膜と膜厚135nmのタングステン膜の積層を成膜し、エッチング法によって加工してゲート電極層を形成した。窒化タンタル膜の成膜条件は、アルゴン及び窒素(Ar:N=50sccm:10sccm)雰囲気下、圧力0.6Pa、電源電力1kWとした。また、タングステン膜の成膜条件は、アルゴン雰囲気下(流量100sccm)、圧力2.0Pa、電源電力4kWとし、基板を加熱するために、加熱したアルゴンガスを流量10sccmで流した。
【0330】
また、窒化タンタル膜とタングステン膜のエッチング条件は、第1エッチング条件として、エッチングガスとして塩素、四フッ化メタン及び酸素の混合ガス(Cl:CF:O=45sccm:55sccm:55sccm)を用い、電源電力3kW、バイアス電力110W、圧力0.67Pa、基板温度40℃としてタングステン膜をエッチングした。その後、第2エッチング条件として、エッチングガスとして塩素ガス(Cl=100sccm)を用い、電源電力2kW、バイアス電力50W、基板温度−10℃として、15秒間エッチングした後、第3エッチング条件として、エッチングガスとして塩素ガス(Cl=100sccm)を用い、電源電力1kW、バイアス電力25W、基板温度−10℃として50秒間エッチングして窒化タンタル膜をエッチングした。
【0331】
次いで、ゲート電極層をマスクとしてイオン注入法により酸化物半導体層に、リン(P)イオンを注入して、一対の低抵抗領域と、一対の低抵抗領域に挟まれたチャネル形成領域を自己整合的に形成した。リン(P)イオンの注入条件は加速電圧30kV、ドーズ量を1.0×1015ions/cmとした。
【0332】
次いで、酸化物半導体層及びゲート電極層上に、絶縁層として、酸化アルミニウム膜と窒化酸化シリコン膜を順に積層させた。酸化アルミニウム膜は、スパッタリング法によって成膜し、膜厚を25nmとした。酸化アルミニウム膜の成膜条件は、アルゴン及び酸素雰囲気下(Ar:O=25sccm:25sccm)で、圧力0.4Pa、電源電力(電源出力)2.5kWとし、シリコン基板とターゲットとの間の距離を60mm、基板温度250℃とした。その後、酸化アルミニウム膜上に、CVD法によって窒化酸化シリコン膜を膜厚350nmで成膜した。
【0333】
絶縁層上にレジストマスクを形成し、絶縁層及びゲート絶縁層をICPエッチング法によりエッチングして、低抵抗領域の一方に達する開口を形成した。開口を形成するためのエッチング条件は、エッチングガスとしてトリフルオロメタンとヘリウムの混合ガスを用い(CHF:He=7.5sccm:142.5sccm)、電源電力470W、バイアス電力300W、圧力5.5Paとして第1のエッチングを行い、その後バイアス電力を150Wへ変化させて第2のエッチングを行った。
【0334】
レジストマスクを剥離した後、絶縁層上に別のレジストマスクを形成し、絶縁層及びゲート絶縁層をICPエッチング法によりエッチングして、低抵抗領域の他方に達する開口を形成した。開口を形成するためのエッチング条件は上述と同じ条件とした。
【0335】
開口にスパッタリング法により膜厚600nmのタングステン膜を形成した。タングステン膜の成膜条件は、アルゴン雰囲気下(流量80sccm)で、圧力0.8Pa、電源電力1kWとし、基板を加熱するために、加熱したアルゴンガスを流量10sccmで流した。
【0336】
次いで、タングステン膜にCMP処理を行い、絶縁層上(少なくともゲート電極層と重畳する領域)に設けられたタングステン膜を除去して、開口に埋め込まれたソース電極層及びドレイン電極層を形成した。CMP処理の条件は、CMP研磨パッドとしてポリウレタン系研磨布を用い、スラリーはSSW2000(Cabot社製)に過酸化水素水を4体積%添加して用い、研磨圧0.08MPa、基板を固定している側のスピンドル回転数、及び、研磨布が固定されているテーブル回転数をともに50rpmとした。
【0337】
次いで、ソース電極層、ドレイン電極層及び絶縁層上に、導電膜を成膜し、該導電膜を加工してソース配線層及びドレイン配線層を形成した。導電膜は、膜厚50nmのチタン膜と、膜厚100nmのアルミニウム膜と、膜厚50nmのチタン膜の積層構造とした。チタン膜の成膜条件は、アルゴン雰囲気下(流量20sccm)で、圧力0.1Pa、電源電圧12kWとし、室温で成膜した。また、アルミニウム膜の成膜条件は、アルゴン雰囲気下(流量50sccm)で、圧力0.4Pa、電源電圧1kWとし、室温で成膜した。
【0338】
また、導電膜のエッチングにはICPエッチング法を用いた。エッチング条件は、エッチングガスとして三塩化ホウ素と塩素(BCl:Cl=60sccm:20sccm)、電源電力450W、バイアス電力100W、圧力1.9Paとした。
【0339】
その後、ポリイミド膜を1.5μmの膜厚で塗布法によって成膜し、大気雰囲気下、300℃で1時間の熱処理を行った。
【0340】
以上によって、本実施例のトランジスタを作製した。
【0341】
なお、本実施例のトランジスタは、チャネル長(L)を0.25μm、チャネル幅(W)を10μm、ソース側コンタクト領域及びドレイン側コンタクト領域と、ゲート電極層との距離を0.05μmとした。
【0342】
図16に、本実施例で作製したトランジスタの電気特性を測定した結果を示す。図16に示す電気特性は、ドレイン電圧(Vd)を1Vまたは0.1Vとし、ゲート電圧(Vg)を−4Vから4Vまでとした際の、ドレイン電流(Id:[A])及び電界効果移動度(μFE:[cm/Vs]の値を測定した結果である。なお、ドレイン電圧(Vd)とは、ソースを基準としたドレインとソースとの電位差である。
【0343】
図16に示すように本実施例のトランジスタは、スイッチング素子としての電気特性を示した。また、本実施例のトランジスタにおけるドレイン電圧(Vd)が1Vの場合の電気特性の中央値(n数=12)は、しきい値電圧が−1.2V、S値(サブスレッショルド値)が93.0mV/dec、電界効果移動度が7.2cm/Vsであり、ドレイン電圧(Vd)が1Vでゲート電圧(Vg)が2.7Vにおいて126.8μAというオン電流値が得られた。
【0344】
以上より、本実施例のトランジスタは微細な構造であっても高い電気的特性を付与されたトランジスタであることが示された。
【符号の説明】
【0345】
400 基板
401 ゲート電極層
402 ゲート絶縁層
403 酸化物半導体層
403a 低抵抗領域
403b 低抵抗領域
403c チャネル形成領域
405 導電膜
405a ソース電極層
405b ドレイン電極層
407 絶縁層
420 トランジスタ
422 トランジスタ
423 トランジスタ
431 ドーパント
440 マスク
442 開口
444 マスク
446 開口
465a ソース配線層
465b ドレイン配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面上に酸化物半導体層を形成し、
前記酸化物半導体層上にゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層を介して前記酸化物半導体層上にゲート電極層を形成し、
前記ゲート電極層上に絶縁層を形成し、
第1のマスクを用いて、前記絶縁層及び前記ゲート絶縁層をエッチングして、前記酸化物半導体層に達する第1の開口を形成し、
第2のマスクを用いて、前記絶縁層及び前記ゲート絶縁層をエッチングして、前記ゲート電極層を挟んで前記第1の開口と逆側の領域に前記酸化物半導体層に達する第2の開口を形成し、
前記第1の開口及び前記第2の開口を埋め込むように前記絶縁層上に導電膜を形成し、
前記導電膜に研磨処理を行うことにより、前記絶縁層上に設けられた前記導電膜を除去して、前記第1の開口または前記第2の開口にソース電極層またはドレイン電極層を形成し、
前記ソース電極層または前記ドレイン電極層上に、ソース配線層またはドレイン配線層を形成する半導体装置の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、前記導電膜の研磨処理は、化学的機械研磨処理を用いて行う半導体装置の作製方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記絶縁層の形成前に、前記ゲート電極層をマスクとして、前記酸化物半導体層に不純物を導入し、前記酸化物半導体層に自己整合的に第1の低抵抗領域、第2の低抵抗領域、及び前記第1の低抵抗領域と前記第2の低抵抗領域に挟まれたチャネル形成領域を形成する半導体装置の作製方法。
【請求項4】
酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層上に設けられたゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層を介して、前記酸化物半導体層上に設けられたゲート電極層と、
前記ゲート電極層上に設けられた絶縁層と、
前記ゲート絶縁層及び前記絶縁層の第1の開口または第2の開口に埋め込まれ、前記酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極層またはドレイン電極層と、
前記ソース電極層または前記ドレイン電極層上に接して設けられたソース配線層またはドレイン配線層と、を有し、
前記ソース電極層と前記ドレイン電極層とのチャネル長方向の距離は、前記ソース配線層と前記ドレイン配線層とのチャネル長方向の距離よりも小さい半導体装置。
【請求項5】
請求項4において、前記ソース電極層または前記ドレイン電極層は、化学的機械研磨処理によって平坦化された表面を有する半導体装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、前記酸化物半導体層は、第1の低抵抗領域、第2の低抵抗領域、及び前記第1の低抵抗領域と前記第2の低抵抗領域に挟まれたチャネル形成領域を含む半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−102134(P2013−102134A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−207719(P2012−207719)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】