半導体装置の検査装置及び検査方法
【課題】半導体装置からのエミッションの検出を加熱しながら行う半導体装置の検査装置を提供する。
【解決手段】検査装置1は、半導体チップ2を載置する観察ステージ16を、半導体チップ2の基板材料と同じSiで製造し、半導体チップ2の裏面側に撮像素子35を配置した。半導体チップ2で発生した微弱な光は、半導体チップ2、観察ステージ16を透過して撮像素子35に入射する。観察ステージ16は、Siから製造されているので、ヒータ25によって簡単に加熱できる。また、観察ステージ16の上方には、プローブカード19及びLSIテスタ20が配置されており、半導体チップ2の回路のテストが可能である。
【解決手段】検査装置1は、半導体チップ2を載置する観察ステージ16を、半導体チップ2の基板材料と同じSiで製造し、半導体チップ2の裏面側に撮像素子35を配置した。半導体チップ2で発生した微弱な光は、半導体チップ2、観察ステージ16を透過して撮像素子35に入射する。観察ステージ16は、Siから製造されているので、ヒータ25によって簡単に加熱できる。また、観察ステージ16の上方には、プローブカード19及びLSIテスタ20が配置されており、半導体チップ2の回路のテストが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを有する半導体装置では、検査装置を用いて異常解析や信頼性評価をしている。例えば、従来の半導体装置の検査装置としては、半導体チップの異常箇所から発生する微弱光を検出するエミッション顕微鏡がある。エミッション顕微鏡では、例えばバイアス印加時に電子正孔対が生成されたときに発生するマイクロプラズマを検出したり、バイアス印加時にドレイン近傍に電子正孔対が形成されたときの発光を検出したりできる。そして、これらの発光位置を調べると、配線間ショートなどの故障箇所を特定できる。
【0003】
さらに、エミッション顕微鏡と、半導体テスタやプローブカードを組み合わせると、半導体チップを動作させた状態での発光解析が可能になる。また、近年では、時間分解エミッション顕微鏡と呼ばれる超高感度の検出器を搭載した検査装置が開発されている。時間分解エミッション顕微鏡では、高い時間分解能でフォトンを検出して時系列データを作成するので、例えば半導体チップ内のトランジスタの動作タイミングの検証などが可能になる。
【0004】
半導体装置の異常解析においては、不良となる現象を再現した状態でエミッション顕微鏡を用いて不良箇所を観察することがある。例えば、エミッション顕微鏡と併用する半導体テスタ及びプローブカードがウェハの温度を制御する機能を有する場合は、高温時の半導体チップのみに発生する不良現象を観察できる。温度制御手段としては、例えば、半導体チップを載置するステージをアルミニウムや銅などの金属で製造し、ステージに取り付けたヒータで半導体チップを加熱するものがある。
【0005】
また、ショート抵抗値が大きい配線の故障解析では、エミッション顕微鏡での観察が困難なことがある。この場合には、OBIRCH(光ビーム加熱抵抗変動)解析装置が使用されることがある。OBIRCH解析装置は、赤外線レーザをウェハの表面でスキャンさせ、レーザによる抵抗値変化を検知することで不良の発生箇所を特定する。
【0006】
ここで、半導体チップは、配線構造の多層化が進んでおり、半導体装置の表面側から配線層の最下層に形成されたトランジスタの故障箇所を観察しようとすると、トランジスタからの発光が配線層によって遮断されてしまうことがある。このために、近年では、半導体チップの裏面から故障箇所を観察する裏面観察が主流になっている。これは、半導体チップの基板材料を透過する光を用いて検査すれば、トランジスタからの発光が遮断されることなく検出できるからである。このように裏面観察を行う検査装置では、レーザ光をトランジスタなどに照射できるように、半導体チップを載置するステージにガラスが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−190946
【特許文献2】特開平6−112285
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ステージをガラスで製造すると、ステージ上の半導体チップを均一に加
熱することが困難であった。これはガラスの熱伝導率が金属に比べて小さいためである。
また、ステージを金属で製造すると、半導体チップを容易に加熱できるが、金属製のステージは観察光を透過させないので、半導体チップの上方から観察しなければならない。このために、金属製のステージを有する検査装置では、裏面観察ができなかった。
【0009】
ここで、金属製のステージを使用し、かつ裏面観察するためには、金属製のステージの中心部に観察用の孔が開ける必要がある。このケースでは、半導体チップの観察位置を変える場合には、その都度、観察位置が孔の上に配置されるように半導体チップを移動させなければならなかった。また、孔が形成されている領域は、孔が形成されていない領域に比べて熱伝達率が低下するので、半導体チップを加熱し難かった。さらに、熱を伝達させ難いことから、半導体チップの温度を安定させるのに時間が必要であった。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、半導体装置からのエミッションの検出を加熱しながら行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の一観点によれば、基板上に半導体回路が形成された半導体装置を下方から支持し、前記基板と同じ材料を用いた観察ステージと、前記観察ステージの下方に配置され、前記半導体装置で発生した光を撮像する撮像装置と、前記観察ステージに取り付けられ、前記半導体装置を加熱する加熱装置と、を含むことを特徴とする半導体装置の検査装置が提供される。
【0011】
実施形態の別の観点によれば、半導体装置の基板上の検査対象部位の位置に応じて観察ステージの厚さを変更する工程と、前記観察ステージの下面に固浸レンズを取り付ける工程と、前記観察ステージの上に前記半導体装置を載置する工程と、前記検査対象部位で発生した光を前記観察ステージ及び前記固浸レンズを通して取得する工程と、を含み、前記観察ステージは、前記基板と同じ材料から製造されており、前記観察ステージの厚さは、前記観察ステージから前記検査対象部位までの距離と、前記観察ステージの厚さの合計が前記固浸レンズの焦点距離内に収まるように変更することを特徴とする半導体装置の検査方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
ガラスで観察ステージを製造した場合に比べて熱伝導率を高くできるので、検査対象を加熱しながら検査できる。また、回路で発生した光を透過できるので、検査対象の裏面観察が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の概略構成の一例を示す図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の一部の一例を拡大した図である。
【図3A】図3Aは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の観察ステージの一例を示す平面図である。
【図3B】図3Bは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の観察ステージの他の例を示す平面図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の概略構成の一例を示す図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の一部の一例を拡大した斜視図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の一部の一例を拡大した図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の固浸レンズの形状と焦点距離の一例を示す図である。
【図8】図8は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の一部の一例を拡大した図である。
【図9】図9は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の検査装置において、厚さの異なる観察ステージと固浸レンズの組み合わせの一例を示す図である。
【図10】図10は、本発明の変形例に係る半導体装置の検査装置の一例を示す図である。
【図11】図11は、本発明の別の変形例に係る半導体装置の検査装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の目的及び利点は、請求の範囲に具体的に記載された構成要素及び組み合わせによって実現され達成される。
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、典型例及び説明のためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
【0015】
図1の断面図に概略構成を示すように、半導体装置の検査装置1は、検査対象である半導体チップ2(半導体装置)を収容してデータを取得する測定部3と、装置制御及びデータ処理する処理部4とを有する。測定部3は、ベース10上に観察室11が取り付けられている。ベース10及び観察室11には、不図示のカバーが取り付けられており、内部が暗室になっている。
【0016】
観察室11内の中央部分には、プローバ12が設けられている。プローバ12は、支持部材14に固定プレート15を介して支持された観察ステージ16を有する。観察ステージ16上には、検査対象となる半導体チップ2が載置される。さらに、プローバ12は、支持部材14を一対の支持部材17を有し、支持部材17から延びる3方向移動可能な支持ステージ18にプローブカード19が取り付けられている。プローブカード19は、観察ステージ16の上方に配置されている。プローブカード19は、中心部分に開口部が形成されたプリント基板19Aを有し、プリント基板19Aからは電気信号を印加する複数のプローブ針19Bが下方に向けて延びている。
【0017】
さらに、プローブカード19の上方には、LSIテスタ20が設けられている。LISテスタ20は、プローブカード19のプローブ針19Bに、配線20Aなどを介して電気的に接続されている。LSIテスタ20は、半導体チップ2のテスト用の信号パターンを生成可能に構成されている。信号パターンは、プローブカード19のプローブ針19Bを通して、半導体チップ2の電極に入力できる。また、LSIテスタ20には、信号パターンの入力によって半導体チップ2内で発生した信号パターンがプローブカード19を介して入力される。
【0018】
図1と、観察ステージの拡大図である図2に示すように、固定プレート15は中央部分に開口部15Aが形成されており、開口部15Aを覆うように観察ステージ16が載置されている。観察ステージ16は、例えば、Siから製造される。このような観察ステージ16は、例えば、Siウェハを50μm〜200μmに削った後、両面を鏡面加工することで簡単に製造できる。さらに、観察ステージ16は、透過特性を変更しない範囲において、表面に酸化膜の形成などの表面処理を施しても良い。ここで、観察ステージ16は、検査対象の半導体チップ2の基板材料と同じ性質、又は同様な性質を有する材料から製造されることが好ましい。さらに、観察ステージ16は、半導体チップ2からの発光を透過可能で、熱伝導率が高い材料から製造されることが好ましい。このような観察ステージ16の材料の他の例としては、GaAsなどの半導体基板や、サファイヤなどがある。例え
ば、照射光の波長や、半導体回路で発生する微弱光の波長によっては、Si基板を有する半導体チップ2にGaAs製の観察ステージ16を使用することもできるし、GaAs基板を有する半導体チップ2にSi製の観察ステージ16を使用することも可能である。
【0019】
さらに、観察ステージ16には、加熱用のヒータ25(加熱装置)と、1つの温度センサ26が貼り付けられている。図3Aに観察ステージ16の平面図の一例を示すように、ヒータ25は、半導体チップ2が載置される中央部分を囲むように等間隔に4つ配置されている。ヒータ25には、例えば、抵抗加熱型ヒータが用いられる。温度センサ26は、ヒータ25と半導体チップ2の間に配置されている。温度センサ26は、半導体チップ2の温度を精度良く測定するために、半導体チップ2の近くに配置することが好ましい。ヒータ25や温度センサ26は、例えばグリースなどを用いて観察ステージ16に取り付けられている。ここで、ヒータ25及び温度センサ26の数や配置は、図3Aに限定されない。例えば、図3Bに変形例の平面図を示すように、リング形状のヒータ25Aを観察ステージ16上に取り付けても良い。また、ヒータ25,25Aと温度センサ26の少なくとも1つを観察ステージ16の下面に取り付けても良い。
【0020】
また、図1に示すように、プローバ12の下方のベース10内には、撮像装置21が配置されている。撮像装置21は、撮像光学系37に撮像素子35と光源36とが接続されており、撮像光学系37の上端、即ち半導体チップ2側には対物レンズ38が取り付けられている。撮像素子35には、例えば冷却CCDカメラが用いられている。冷却CCD(Charge Coupled Device)カメラは、暗電流の発生を抑制できるので、解析の精度を向上できる。光源36には、例えばハロゲンランプが用いられている。撮像装置21は、光源36を有しない構成でも良い。撮像光学系37には、所定波長以上の赤外光を透過させる不図示の光学フィルタや、照射光と反射光を分けるハーフミラーなどが設けられている。対物レンズ38は、半導体チップ2の観察位置に併せた焦点距離を有する長焦点レンズから構成されている。
【0021】
処理部4は、測定部3の動作を制御する制御装置と、測定部3に入出力するデータを処理をする処理装置と、データを表示したり、他の装置に出力したりする入出力装置としての機能を有する。
【0022】
次に、検査装置1の作用について説明する。
最初に、検査対象となる半導体チップ2を観察ステージ16上に載置する。半導体チップ2は、例えば、Si基板の上にトランジスタなどの半導体素子と、多層の配線構造が形成されている。検査対象は、半導体装置が形成されたウェハや、ウェハ片であっても良い。この後、観察室11を閉じて外からの光を遮断すると暗室が形成される。さらに、処理部4が観察ステージ16のヒータ25に通電する。観察ステージ16は、半導体チップ2の基板2Bと同じ材料、若しくは同等の熱伝導率を有する材料を用いて製造されている。特に、このケースでは、観察ステージ16は低抵抗のSiから製造されている。このために、半導体チップ2は、速やかに加熱される。この際、処理部4は、温度センサ26の出力をモニタしながら、半導体チップ2が所定の温度に加熱されるようにヒータ25の出力を制御する。ここで、この実施の形態では、同等の熱伝導率を有する半導体チップ2を観察ステージ16に密着させているので、均一な温度分布が得られ、半導体チップ2に直接に温度センサ26を取り付ける場合と同様の温度制御が可能になる。
【0023】
続いて、支持ステージ18を駆動させて、プローブカード19のプローブ針19Bを半導体チップ2上の電極パッドの上方に配置したら、プローブカード19を支持ステージ18ごと降下させて、プローブ針19Bを半導体チップ2上の電極パッドに電気的に接触させる。
【0024】
この後、処理部4は、LSIテスタ20から信号パターンを出力する。信号パターンは、プローブ針19Bを通して半導体チップ2の半導体回路に入力される。このとき、半導体チップ2の所定の電極パッドから出力される信号(出力パターン)がプローブ針19Bを通してLSIテスタ20に入力される。処理部4は、テストパターンに対応して半導体チップ2から出力された出力パターンを調べ、半導体回路の故障などを判定する。
【0025】
また、半導体チップ2に故障があるときには、その場所から微弱な光が発生することがある。そこで、故障を有する半導体チップ2に対しては、処理部4が半導体回路の故障を再現するような信号パターンを半導体チップ2に入力させる。これによって、半導体チップ2に故障状態が再現される。この状態における半導体チップ2からの発光は、Si製の基板2Bを通過し、観察ステージ16に入力する。観察ステージ16は、Siで製造されているので、半導体チップ2から出力された光は、観察ステージ16を通過して、撮像装置21の対物レンズ38に入射する。さらに、対物レンズ38から撮像光学系37を通って撮像素子35に入力する。
【0026】
ここで、観察ステージ16及び半導体チップ2の基板2BがSiで製造されるケースでは、撮像素子35は、Siの透過波長である1100nm〜1200nmの光に感度を有するものが使用される。例えば、低電圧で駆動する半導体回路に対しては、撮像素子35にInGaAsが用いられる。InGaAsは、900nm〜1600nmの波長領域の光を撮像できる。また、高電圧で駆動するパワーデバイスに対しては、400nm〜1100nmの波長領域の光を撮像できる冷却CCDを使用する。これは、低電圧で作動するデバイスからの発光波長は、長波長側にシフトするためである。
【0027】
撮像素子35からは、発光量に応じた信号が、発光位置を示すデータと共に出力される。処理部4は、画像処理によって分光像である発光情報と発光位置をマッピングして透過パターン像を形成する。さらに、処理部4は、透過パターン像を不図示のモニタに出力させる。作業者は、透過パターン像をモニタで確認することによって、半導体チップ2上の故障箇所を確認する。
【0028】
また、検査装置1は、撮像装置21からの観察光を半導体チップ2の半導体回路に照射し、半導体回路から出力される微弱な光を検出することもできる。このケースでは、処理部4は、撮像装置21の光源36から観察光、例えばレーザ光や赤外線等を出力させる。観察光は、撮像光学系37から対物レンズ38を通って、半導体チップ2に向けて出射される。ここで、観察光は、観察ステージ16及び半導体チップ2の基板2Bを透過する波長の光、例えば、一般的な半導体材料を透過可能な波長である1100nm〜1200nmの光が用いられる。このために、観察光は、観察ステージ16及び半導体チップ2の基板2Bを透過して半導体チップ2の半導体回路に照射される。入射光は、対物レンズ38によって収束させられているので、半導体チップ2のトランジスタなどの小さい領域に光を照射することができる。
【0029】
半導体回路から発生する微弱な光は、半導体チップ2、観察ステージ16を通過して対物レンズ38から撮像光学系37に入射し、撮像素子35によって撮像される。撮像素子35によって撮像されたデータは、処理部4において画像処理され、発光と発光位置を関連付けた透過パターン像として出力される。
【0030】
以上、説明したように、この実施の形態では、検査対象物を載置する観察ステージ16を、光を透過可能なSiから製造した。金属でステージを製造すると透過光を検出できないが、Siは特定の光を透過するので、裏面観察が行える。
また、検査装置1は、観察ステージ16を熱伝導率が良好なSiから製造した。Siは、熱伝導率が168W/mKで、従来のガラスの熱伝導率(1W/mK)に比べて非常に
大きい。このために、従来のガラス製のステージに比べて検査対象物を速やかに加熱できる。
【0031】
ここで、観察ステージ16を単結晶の半導体ウェハから製造する場合には、結晶構造や不純物などを選択することによって透過特性を変化させることができる。低抵抗のSiウェハから観察ステージ16を製造すると、透過率が高くなる。また、観察ステージ16を製造する際に、Siに所定の処理をして抵抗値を変化させたり、表面に膜をコーティングしたりすることで観察ステージ16の透過特性を変化させても良い。例えば、単結晶Siに所定の処理を行って透過率を意図的に下げた場合には、不良部位に発生する大電流発生に伴う強い発光反応を緩和することが可能になる。例えば、ラッチアップの不良解析などにおいて、数百mA〜数Aの大電流が発生した場合には、大電流に伴って発生する強い光が直接に撮像素子35に入射すると、撮像素子35が飽和してしまい、透過パターン像が得られなくなることがある。このような場合に備えて、観察ステージ16の透過率を調整しておくことによって、観察ステージ16を強発光に対するフィルタとして機能させることが可能になる。
【0032】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。第1の実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。また、第1の実施の形態と重複する説明は省略する。
図4の断面図と、図5の一部拡大図に示すように、検査装置51は、観察室11内に検査対象物であるウェハ52を保持する移動ステージ53を有する。移動ステージ53は、支持部材17に3方向に移動可能に支持されたベース部材54を有し、ベース部材54の先端にはウェハ52を保持するホルダ55が取り付けられている。ホルダ55は、ウェハ52の外形に合わせた開口部55Aが形成されている。例えば、円形のウェハ52に形成された複数の半導体チップ2が解析対象の場合、ホルダ55の中央にはウェハ52の外径より小さい径の開口部55Aが形成される。ホルダ55の裏面には、ウェハ52の外縁部分を吸着する不図示の吸着孔が複数形成されており、不図示の真空ポンプなどに接続されている。
【0033】
観察ステージ16Aは、Siから製造されており、裏面には複数の固浸レンズ(固浸レンズ)61,62,63,64が観察ステージ16の裏面を削ることで一体に形成されている。即ち、各固浸レンズ61〜64もSiから製造されている。このような固浸レンズ61〜64は、ほぼ半球状のレンズから形成されており、所定の間隔で一列に並んでいる。
【0034】
図6に拡大して示すように、固浸レンズ61は、撮像装置21から入射される光の集光角を増大させつつ、観察ステージ16Aに入射させる。これによって、この検査装置51では、回折限界を超える解像度が得られる。観察ステージ16Aの裏面には、焦点距離が異なる複数の固浸レンズ61〜64が配置されている。例えば、図5及び図7に示すように、第1の固浸レンズ61は、第1の半径r1の球体で、100nm〜300nmの範囲N1の焦点距離を有する。第2の固浸レンズ62は、第2の半径r2の球体で、275nm〜475nmの範囲N2の焦点距離を有する。また、第3の固浸レンズ63は、第3の半径r3の球体で、450nm〜650nmの範囲N3の焦点距離を有する。第4の固浸レンズ64は、第4の半径r4の球体で、625nm〜775nmの範囲N4の焦点距離を有する。各固浸レンズ61〜64の半径は、r1<r2<r3<r4である。固浸レンズ61〜64の数及び焦点距離の範囲N1〜N4は、図7に限定されない。
【0035】
ウェハ52の検査時には、観察ステージ16Aの上面から検査対象部位、例えばトランジスタまでの高さに従って、固浸レンズ61〜64を選択する。通常は、検査対象部位ま
での高さが既知なので、処理部4は、移動ステージ53を移動させて適切な固浸レンズ61〜64の上方にウェハ52の検査対象部位を配置する。
【0036】
図6に示すように、観察光は、対物レンズ38で集光され、例えば、第1の固浸レンズ61に入射する。固浸レンズ61によってさらに集光された観察光が、観察ステージ16A、ウェハ52を通過し、半導体回路の検査対象部位に入射する。このときに発生する光が、ウェハ52、観察ステージ16A、固浸レンズ61、対物レンズ38Aを順番に透過して、撮像光学系37に入射し、撮像素子35で撮像される。LSIテスタ20からの信号によって故障状態を再現させたときに発生する微弱な発光を観察する場合も、同様にして撮像素子35で撮影される。
【0037】
ここで、観察ステージ16Aの上面から解析対象部位までの高さが既知でない場合には、いずれかの固浸レンズ61〜64から順番に観察する。作業者は、透過パターン像を確認しながら、最適な浸レンズ61〜64を選択する。
【0038】
以上、説明したように、この実施の形態では、観察ステージ16Aの裏面に固浸レンズ61〜64を形成したので、高い解像度の透過パターン像が得られる。固浸レンズ61〜64は、観察ステージ16Aと同じ材料で一体に形成したので、観察光やウェハ52からの微弱な光を透過できる。複数の固浸レンズ61〜64を配置したので、検査対象部位の高さに応じて最適な焦点距離を有する固浸レンズ61〜64を選択できるので、検査効率が向上する。また、撮像装置21に固浸レンズを取り付ける必要がなくなる。その他の作用及び効果は第1の実施の形態と同様である。
【0039】
ここで、検査対象物は、ウェハ52から切り離した個々の半導体チップ2やウェハ片でも良い。この場合の移動ステージ53のホルダ55は、1つの半導体チップ2又はウェハ片を保持可能な形状になる。
【0040】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。第1、第2の実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付している。また、第1、第2の実施の形態と重複する説明は省略する。
【0041】
図8に一部を拡大して示すように、検査装置71は、Si製の観察ステージ72が固定プレート15に交換可能に支持されている。観察ステージ72は両面が鏡面研磨されており、上面には半導体チップ2を囲むにようにヒータ25が少なくとも1つ配置されると共に、温度制御用の温度センサ26が1つ設けられている。さらに、観察ステージ72の下面には、固浸レンズ73が取り付けられている。
【0042】
固浸レンズ73は、観察ステージ72に密着させられるプレート81を有し、プレート81の下面にほぼ半球体のレンズ部82が一体に形成されている。固浸レンズ73は、観察ステージ72と同様の透過特性及び熱伝導率を有する材料、例えば観察ステージ72と同じ材料のSiから製造されている。レンズ部82の半径は、例えば、焦点距離が長い第4の半径r4(図7参照)とする。
【0043】
プレート81の表面は、鏡面仕上げにはなっていない。このために、レーザ光は、プレート81の表面で散乱し、観察ステージ72側には入射しない。また、撮像光学系37への反射光も殆ど観測されなくなる。このために、撮像素子35には、検査対象からの光のみが入射される。プレート81の表面は、レーザ光を吸収したり、反射を防止したりする膜を形成しても良い。
【0044】
ここで、この検査装置71は、1種類の固浸レンズ73を有し、検査対象部位までの距離に併せて厚さの異なる観察ステージ72を適宜交換しながら半導体チップ2を検査することを特徴とする。
【0045】
例えば、図9(a)に示すように、第1の厚さt1の観察ステージ72Aと固浸レンズ73を組み合わせると、観察ステージ72Aの上面から検査対象までの距離がh1となる半導体チップ85Aの観察が可能になる。第1の厚さt1と距離h1の合計値は、固浸レンズ73の焦点距離の範囲内であり、固浸レンズ73を用いて半導体チップ85Aの検査対象部位の透過パターン像を取得できる。
【0046】
また、図9(b)に示すように、第2の厚さt2の観察ステージ72Bと固浸レンズ73を組み合わせると、観察ステージ72Bの上面から検査対象までの距離がh2となる半導体チップ85Bの観察が可能になる。第2の厚さt2と距離h2の合計値は、固浸レンズ73の焦点距離の範囲内であり、固浸レンズ73を用いて半導体チップ85Bの検査対象部位の透過パターン像を取得できる。
【0047】
図9(c)に示すように、第3の厚さt3の観察ステージ72Cと固浸レンズ73を組み合わせると、観察ステージ72Cの上面から検査対象までの距離がh3となる半導体チップ85Cの観察が可能になる。第3の厚さt3と距離h3の合計値は、固浸レンズ73の焦点距離の範囲内であり、固浸レンズ73を用いて半導体チップ85Cの検査対象部位の透過パターン像を取得できる。
【0048】
図9(d)に示すように、第4の厚さt4の観察ステージ72Dと固浸レンズ73を組み合わせると、観察ステージ72Dの上面から検査対象までの距離がh4となる半導体チップ85Dの観察が可能になる。第4の厚さt4と距離h4の合計値は、固浸レンズ73の焦点距離の範囲内であり、固浸レンズ73を用いて半導体チップ85Dの検査対象部位の透過パターン像を取得できる。
【0049】
ここで、各観察ステージ72A〜72Dの上面から検査対象部位までの距離h1〜h4は、h1>h2>h3>h4である。また、各観察ステージ72A〜72Dの板厚は、t1<t2<t3<t4である。即ち、観察ステージ72の上面から検査対象部位までの距離が短いときは厚い観察ステージ72を使用し、観察ステージ72の上面から検査対象部位までの距離が長いときは薄い観察ステージ72を使用する。即ち、観察ステージ72を固浸レンズ73の焦点距離を調整するスペーサとして使用することで、1種類の固浸レンズ73で異なる厚さの半導体チップ2の検査が可能になる。また、観察ステージ72がフィルタとなって発光強度が大きすぎる光が撮像素子35に入力することを防止する。
【0050】
半導体チップ2の観察時には、適切な厚さの観察ステージ72に交換した後、半導体チップ2を載置する。また、半導体チップ2を移動ステージ53で持ち上げた状態で観察ステージ72を交換しても良い。観察ステージ72の厚さは、検査対象部位の位置に併せて研削しても良い。観察ステージ72をSiで製造した場合には、研削作業によって簡単に板厚調整できる。ここで、検査対象は、半導体チップ2や、半導体装置が形成されたウェハ、ウェハ片であっても良い。
【0051】
以上、説明したように、この実施の形態では、1つの固浸レンズ73と複数の観察ステージ72A〜72Dを組み合わせることで、半導体チップ2の高精度な裏面観察が可能になる。その他の作用及び効果は第1、第2の実施の形態と同様である。
【0052】
ここで、この実施の形態の変形例について説明する。
まず、図10に示す観察ステージ91は、裏面を中心側が凸となる階段形状にし、各段
階に1つずつ固浸レンズ73を配置している。例えば、最も厚い中央部分の観察ステージ91Aの板厚はt4とし、その外側の2番目の厚い部分の観察ステージ91Bの板厚はt3とする。さらに外側の3番目の厚い部分の観察ステージ91Cの板厚はt2とする。最も外側で、最も薄い部分の観察ステージ92Dの板厚はt1とする。各固浸レンズ73のレンズ部82は、例えば、焦点距離が長い第4の半径r4とする。
【0053】
この観察ステージ91を有する検査装置では、1つの観察ステージ91の異なる板厚の領域のそれぞれに、1種類の固浸レンズ73が取り付けているので、検査対象部位の位置に応じて最適な板厚の領域を選択することで高精度の裏面観察が可能になる。半導体チップ2の移動には、図5に示すような移動ステージ53を使用できる。
【0054】
また、図11に別の変形例を示すように、観察ステージ101では、裏面の全体に固浸レンズ102を形成しても良い。
【0055】
ここで挙げた全ての例及び条件的表現は、発明者が技術促進に貢献した発明及び概念を読者が理解するのを助けるためのものであり、ここで具体的に挙げたそのような例及び条件に限定することなく解釈するものであり、また、明細書におけるそのような例の編成は本発明の優劣を示すこととは関係ない。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換及び変形を施すことができる。
【0056】
以下に、前記の実施の形態の特徴を付記する。
(付記1)基板上に半導体回路が形成された半導体装置を下方から支持し、前記基板と同じ材料を用いた観察ステージと、前記観察ステージの下方に配置され、前記半導体装置で発生した光を撮像する撮像装置と、前記観察ステージに取り付けられ、前記半導体装置を加熱する加熱装置と、を含むことを特徴とする半導体装置の検査装置。
(付記2) 前記観察ステージがシリコンを含むことを特徴とする付記1に記載の半導体装置の検査装置。
(付記3) 基板上に半導体回路が形成された半導体装置を下方から支持し、シリコンで製造された観察ステージと、前記観察ステージの下方に配置され、前記半導体装置で発生した光を撮像する撮像装置と、前記観察ステージに取り付けられ、前記半導体装置を加熱する加熱装置と、を含むことを特徴とする半導体装置の検査装置。
(付記4) 前記観察ステージの上方に配置され、前記半導体装置の回路に電気的に接続されるプローブカードを有することを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか一項に記載の半導体装置の検査装置。
(付記5) 前記観察ステージの裏面に固浸レンズが一体に形成されていることを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか一項に記載の半導体装置の検査装置。
(付記6) 焦点距離が異なる複数の固浸レンズが前記観察ステージの裏面に形成され、いずれかの前記固浸レンズの上方に前記半導体装置を移動させる移動ステージを有することを特徴とする付記1又は付記2に記載の半導体装置の検査装置。
(付記7) 厚さの異なる複数の前記観察ステージと、前記半導体装置を支持する前記観察ステージの裏面に取り付け可能な1種類の固浸レンズと、を含むことを特徴とする付記1乃至付記5のいずれか一項に記載の半導体装置の検査装置。
(付記8) 半導体装置の基板上の検査対象部位の位置に応じて観察ステージの厚さを変更する工程と、前記観察ステージの下面に固浸レンズを取り付ける工程と、前記観察ステージの上に前記半導体装置を載置する工程と、前記検査対象部位で発生した光を前記観察ステージ及び前記固浸レンズを通して取得する工程と、を含み、前記観察ステージは、前記基板と同じ材料から製造されており、前記観察ステージの厚さは、前記観察ステージから前記検査対象部位までの距離と、前記観察ステージの厚さの合計が前記固浸レンズの焦点距離内に収まるように変更することを特徴とする半導体装置の検査方法。
【符号の説明】
【0057】
1,51,71 検査装置
2 半導体チップ(半導体装置)
16,16A,72,72A,72B,72C,72D 観察ステージ
19 プローブカード
21 撮像装置
25 ヒータ(加熱装置)
53 移動ステージ
61,62,63,64,73 固浸レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを有する半導体装置では、検査装置を用いて異常解析や信頼性評価をしている。例えば、従来の半導体装置の検査装置としては、半導体チップの異常箇所から発生する微弱光を検出するエミッション顕微鏡がある。エミッション顕微鏡では、例えばバイアス印加時に電子正孔対が生成されたときに発生するマイクロプラズマを検出したり、バイアス印加時にドレイン近傍に電子正孔対が形成されたときの発光を検出したりできる。そして、これらの発光位置を調べると、配線間ショートなどの故障箇所を特定できる。
【0003】
さらに、エミッション顕微鏡と、半導体テスタやプローブカードを組み合わせると、半導体チップを動作させた状態での発光解析が可能になる。また、近年では、時間分解エミッション顕微鏡と呼ばれる超高感度の検出器を搭載した検査装置が開発されている。時間分解エミッション顕微鏡では、高い時間分解能でフォトンを検出して時系列データを作成するので、例えば半導体チップ内のトランジスタの動作タイミングの検証などが可能になる。
【0004】
半導体装置の異常解析においては、不良となる現象を再現した状態でエミッション顕微鏡を用いて不良箇所を観察することがある。例えば、エミッション顕微鏡と併用する半導体テスタ及びプローブカードがウェハの温度を制御する機能を有する場合は、高温時の半導体チップのみに発生する不良現象を観察できる。温度制御手段としては、例えば、半導体チップを載置するステージをアルミニウムや銅などの金属で製造し、ステージに取り付けたヒータで半導体チップを加熱するものがある。
【0005】
また、ショート抵抗値が大きい配線の故障解析では、エミッション顕微鏡での観察が困難なことがある。この場合には、OBIRCH(光ビーム加熱抵抗変動)解析装置が使用されることがある。OBIRCH解析装置は、赤外線レーザをウェハの表面でスキャンさせ、レーザによる抵抗値変化を検知することで不良の発生箇所を特定する。
【0006】
ここで、半導体チップは、配線構造の多層化が進んでおり、半導体装置の表面側から配線層の最下層に形成されたトランジスタの故障箇所を観察しようとすると、トランジスタからの発光が配線層によって遮断されてしまうことがある。このために、近年では、半導体チップの裏面から故障箇所を観察する裏面観察が主流になっている。これは、半導体チップの基板材料を透過する光を用いて検査すれば、トランジスタからの発光が遮断されることなく検出できるからである。このように裏面観察を行う検査装置では、レーザ光をトランジスタなどに照射できるように、半導体チップを載置するステージにガラスが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−190946
【特許文献2】特開平6−112285
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ステージをガラスで製造すると、ステージ上の半導体チップを均一に加
熱することが困難であった。これはガラスの熱伝導率が金属に比べて小さいためである。
また、ステージを金属で製造すると、半導体チップを容易に加熱できるが、金属製のステージは観察光を透過させないので、半導体チップの上方から観察しなければならない。このために、金属製のステージを有する検査装置では、裏面観察ができなかった。
【0009】
ここで、金属製のステージを使用し、かつ裏面観察するためには、金属製のステージの中心部に観察用の孔が開ける必要がある。このケースでは、半導体チップの観察位置を変える場合には、その都度、観察位置が孔の上に配置されるように半導体チップを移動させなければならなかった。また、孔が形成されている領域は、孔が形成されていない領域に比べて熱伝達率が低下するので、半導体チップを加熱し難かった。さらに、熱を伝達させ難いことから、半導体チップの温度を安定させるのに時間が必要であった。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、半導体装置からのエミッションの検出を加熱しながら行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の一観点によれば、基板上に半導体回路が形成された半導体装置を下方から支持し、前記基板と同じ材料を用いた観察ステージと、前記観察ステージの下方に配置され、前記半導体装置で発生した光を撮像する撮像装置と、前記観察ステージに取り付けられ、前記半導体装置を加熱する加熱装置と、を含むことを特徴とする半導体装置の検査装置が提供される。
【0011】
実施形態の別の観点によれば、半導体装置の基板上の検査対象部位の位置に応じて観察ステージの厚さを変更する工程と、前記観察ステージの下面に固浸レンズを取り付ける工程と、前記観察ステージの上に前記半導体装置を載置する工程と、前記検査対象部位で発生した光を前記観察ステージ及び前記固浸レンズを通して取得する工程と、を含み、前記観察ステージは、前記基板と同じ材料から製造されており、前記観察ステージの厚さは、前記観察ステージから前記検査対象部位までの距離と、前記観察ステージの厚さの合計が前記固浸レンズの焦点距離内に収まるように変更することを特徴とする半導体装置の検査方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
ガラスで観察ステージを製造した場合に比べて熱伝導率を高くできるので、検査対象を加熱しながら検査できる。また、回路で発生した光を透過できるので、検査対象の裏面観察が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の概略構成の一例を示す図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の一部の一例を拡大した図である。
【図3A】図3Aは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の観察ステージの一例を示す平面図である。
【図3B】図3Bは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の観察ステージの他の例を示す平面図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の概略構成の一例を示す図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の一部の一例を拡大した斜視図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の一部の一例を拡大した図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の固浸レンズの形状と焦点距離の一例を示す図である。
【図8】図8は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の検査装置の一部の一例を拡大した図である。
【図9】図9は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の検査装置において、厚さの異なる観察ステージと固浸レンズの組み合わせの一例を示す図である。
【図10】図10は、本発明の変形例に係る半導体装置の検査装置の一例を示す図である。
【図11】図11は、本発明の別の変形例に係る半導体装置の検査装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の目的及び利点は、請求の範囲に具体的に記載された構成要素及び組み合わせによって実現され達成される。
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、典型例及び説明のためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
【0015】
図1の断面図に概略構成を示すように、半導体装置の検査装置1は、検査対象である半導体チップ2(半導体装置)を収容してデータを取得する測定部3と、装置制御及びデータ処理する処理部4とを有する。測定部3は、ベース10上に観察室11が取り付けられている。ベース10及び観察室11には、不図示のカバーが取り付けられており、内部が暗室になっている。
【0016】
観察室11内の中央部分には、プローバ12が設けられている。プローバ12は、支持部材14に固定プレート15を介して支持された観察ステージ16を有する。観察ステージ16上には、検査対象となる半導体チップ2が載置される。さらに、プローバ12は、支持部材14を一対の支持部材17を有し、支持部材17から延びる3方向移動可能な支持ステージ18にプローブカード19が取り付けられている。プローブカード19は、観察ステージ16の上方に配置されている。プローブカード19は、中心部分に開口部が形成されたプリント基板19Aを有し、プリント基板19Aからは電気信号を印加する複数のプローブ針19Bが下方に向けて延びている。
【0017】
さらに、プローブカード19の上方には、LSIテスタ20が設けられている。LISテスタ20は、プローブカード19のプローブ針19Bに、配線20Aなどを介して電気的に接続されている。LSIテスタ20は、半導体チップ2のテスト用の信号パターンを生成可能に構成されている。信号パターンは、プローブカード19のプローブ針19Bを通して、半導体チップ2の電極に入力できる。また、LSIテスタ20には、信号パターンの入力によって半導体チップ2内で発生した信号パターンがプローブカード19を介して入力される。
【0018】
図1と、観察ステージの拡大図である図2に示すように、固定プレート15は中央部分に開口部15Aが形成されており、開口部15Aを覆うように観察ステージ16が載置されている。観察ステージ16は、例えば、Siから製造される。このような観察ステージ16は、例えば、Siウェハを50μm〜200μmに削った後、両面を鏡面加工することで簡単に製造できる。さらに、観察ステージ16は、透過特性を変更しない範囲において、表面に酸化膜の形成などの表面処理を施しても良い。ここで、観察ステージ16は、検査対象の半導体チップ2の基板材料と同じ性質、又は同様な性質を有する材料から製造されることが好ましい。さらに、観察ステージ16は、半導体チップ2からの発光を透過可能で、熱伝導率が高い材料から製造されることが好ましい。このような観察ステージ16の材料の他の例としては、GaAsなどの半導体基板や、サファイヤなどがある。例え
ば、照射光の波長や、半導体回路で発生する微弱光の波長によっては、Si基板を有する半導体チップ2にGaAs製の観察ステージ16を使用することもできるし、GaAs基板を有する半導体チップ2にSi製の観察ステージ16を使用することも可能である。
【0019】
さらに、観察ステージ16には、加熱用のヒータ25(加熱装置)と、1つの温度センサ26が貼り付けられている。図3Aに観察ステージ16の平面図の一例を示すように、ヒータ25は、半導体チップ2が載置される中央部分を囲むように等間隔に4つ配置されている。ヒータ25には、例えば、抵抗加熱型ヒータが用いられる。温度センサ26は、ヒータ25と半導体チップ2の間に配置されている。温度センサ26は、半導体チップ2の温度を精度良く測定するために、半導体チップ2の近くに配置することが好ましい。ヒータ25や温度センサ26は、例えばグリースなどを用いて観察ステージ16に取り付けられている。ここで、ヒータ25及び温度センサ26の数や配置は、図3Aに限定されない。例えば、図3Bに変形例の平面図を示すように、リング形状のヒータ25Aを観察ステージ16上に取り付けても良い。また、ヒータ25,25Aと温度センサ26の少なくとも1つを観察ステージ16の下面に取り付けても良い。
【0020】
また、図1に示すように、プローバ12の下方のベース10内には、撮像装置21が配置されている。撮像装置21は、撮像光学系37に撮像素子35と光源36とが接続されており、撮像光学系37の上端、即ち半導体チップ2側には対物レンズ38が取り付けられている。撮像素子35には、例えば冷却CCDカメラが用いられている。冷却CCD(Charge Coupled Device)カメラは、暗電流の発生を抑制できるので、解析の精度を向上できる。光源36には、例えばハロゲンランプが用いられている。撮像装置21は、光源36を有しない構成でも良い。撮像光学系37には、所定波長以上の赤外光を透過させる不図示の光学フィルタや、照射光と反射光を分けるハーフミラーなどが設けられている。対物レンズ38は、半導体チップ2の観察位置に併せた焦点距離を有する長焦点レンズから構成されている。
【0021】
処理部4は、測定部3の動作を制御する制御装置と、測定部3に入出力するデータを処理をする処理装置と、データを表示したり、他の装置に出力したりする入出力装置としての機能を有する。
【0022】
次に、検査装置1の作用について説明する。
最初に、検査対象となる半導体チップ2を観察ステージ16上に載置する。半導体チップ2は、例えば、Si基板の上にトランジスタなどの半導体素子と、多層の配線構造が形成されている。検査対象は、半導体装置が形成されたウェハや、ウェハ片であっても良い。この後、観察室11を閉じて外からの光を遮断すると暗室が形成される。さらに、処理部4が観察ステージ16のヒータ25に通電する。観察ステージ16は、半導体チップ2の基板2Bと同じ材料、若しくは同等の熱伝導率を有する材料を用いて製造されている。特に、このケースでは、観察ステージ16は低抵抗のSiから製造されている。このために、半導体チップ2は、速やかに加熱される。この際、処理部4は、温度センサ26の出力をモニタしながら、半導体チップ2が所定の温度に加熱されるようにヒータ25の出力を制御する。ここで、この実施の形態では、同等の熱伝導率を有する半導体チップ2を観察ステージ16に密着させているので、均一な温度分布が得られ、半導体チップ2に直接に温度センサ26を取り付ける場合と同様の温度制御が可能になる。
【0023】
続いて、支持ステージ18を駆動させて、プローブカード19のプローブ針19Bを半導体チップ2上の電極パッドの上方に配置したら、プローブカード19を支持ステージ18ごと降下させて、プローブ針19Bを半導体チップ2上の電極パッドに電気的に接触させる。
【0024】
この後、処理部4は、LSIテスタ20から信号パターンを出力する。信号パターンは、プローブ針19Bを通して半導体チップ2の半導体回路に入力される。このとき、半導体チップ2の所定の電極パッドから出力される信号(出力パターン)がプローブ針19Bを通してLSIテスタ20に入力される。処理部4は、テストパターンに対応して半導体チップ2から出力された出力パターンを調べ、半導体回路の故障などを判定する。
【0025】
また、半導体チップ2に故障があるときには、その場所から微弱な光が発生することがある。そこで、故障を有する半導体チップ2に対しては、処理部4が半導体回路の故障を再現するような信号パターンを半導体チップ2に入力させる。これによって、半導体チップ2に故障状態が再現される。この状態における半導体チップ2からの発光は、Si製の基板2Bを通過し、観察ステージ16に入力する。観察ステージ16は、Siで製造されているので、半導体チップ2から出力された光は、観察ステージ16を通過して、撮像装置21の対物レンズ38に入射する。さらに、対物レンズ38から撮像光学系37を通って撮像素子35に入力する。
【0026】
ここで、観察ステージ16及び半導体チップ2の基板2BがSiで製造されるケースでは、撮像素子35は、Siの透過波長である1100nm〜1200nmの光に感度を有するものが使用される。例えば、低電圧で駆動する半導体回路に対しては、撮像素子35にInGaAsが用いられる。InGaAsは、900nm〜1600nmの波長領域の光を撮像できる。また、高電圧で駆動するパワーデバイスに対しては、400nm〜1100nmの波長領域の光を撮像できる冷却CCDを使用する。これは、低電圧で作動するデバイスからの発光波長は、長波長側にシフトするためである。
【0027】
撮像素子35からは、発光量に応じた信号が、発光位置を示すデータと共に出力される。処理部4は、画像処理によって分光像である発光情報と発光位置をマッピングして透過パターン像を形成する。さらに、処理部4は、透過パターン像を不図示のモニタに出力させる。作業者は、透過パターン像をモニタで確認することによって、半導体チップ2上の故障箇所を確認する。
【0028】
また、検査装置1は、撮像装置21からの観察光を半導体チップ2の半導体回路に照射し、半導体回路から出力される微弱な光を検出することもできる。このケースでは、処理部4は、撮像装置21の光源36から観察光、例えばレーザ光や赤外線等を出力させる。観察光は、撮像光学系37から対物レンズ38を通って、半導体チップ2に向けて出射される。ここで、観察光は、観察ステージ16及び半導体チップ2の基板2Bを透過する波長の光、例えば、一般的な半導体材料を透過可能な波長である1100nm〜1200nmの光が用いられる。このために、観察光は、観察ステージ16及び半導体チップ2の基板2Bを透過して半導体チップ2の半導体回路に照射される。入射光は、対物レンズ38によって収束させられているので、半導体チップ2のトランジスタなどの小さい領域に光を照射することができる。
【0029】
半導体回路から発生する微弱な光は、半導体チップ2、観察ステージ16を通過して対物レンズ38から撮像光学系37に入射し、撮像素子35によって撮像される。撮像素子35によって撮像されたデータは、処理部4において画像処理され、発光と発光位置を関連付けた透過パターン像として出力される。
【0030】
以上、説明したように、この実施の形態では、検査対象物を載置する観察ステージ16を、光を透過可能なSiから製造した。金属でステージを製造すると透過光を検出できないが、Siは特定の光を透過するので、裏面観察が行える。
また、検査装置1は、観察ステージ16を熱伝導率が良好なSiから製造した。Siは、熱伝導率が168W/mKで、従来のガラスの熱伝導率(1W/mK)に比べて非常に
大きい。このために、従来のガラス製のステージに比べて検査対象物を速やかに加熱できる。
【0031】
ここで、観察ステージ16を単結晶の半導体ウェハから製造する場合には、結晶構造や不純物などを選択することによって透過特性を変化させることができる。低抵抗のSiウェハから観察ステージ16を製造すると、透過率が高くなる。また、観察ステージ16を製造する際に、Siに所定の処理をして抵抗値を変化させたり、表面に膜をコーティングしたりすることで観察ステージ16の透過特性を変化させても良い。例えば、単結晶Siに所定の処理を行って透過率を意図的に下げた場合には、不良部位に発生する大電流発生に伴う強い発光反応を緩和することが可能になる。例えば、ラッチアップの不良解析などにおいて、数百mA〜数Aの大電流が発生した場合には、大電流に伴って発生する強い光が直接に撮像素子35に入射すると、撮像素子35が飽和してしまい、透過パターン像が得られなくなることがある。このような場合に備えて、観察ステージ16の透過率を調整しておくことによって、観察ステージ16を強発光に対するフィルタとして機能させることが可能になる。
【0032】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。第1の実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。また、第1の実施の形態と重複する説明は省略する。
図4の断面図と、図5の一部拡大図に示すように、検査装置51は、観察室11内に検査対象物であるウェハ52を保持する移動ステージ53を有する。移動ステージ53は、支持部材17に3方向に移動可能に支持されたベース部材54を有し、ベース部材54の先端にはウェハ52を保持するホルダ55が取り付けられている。ホルダ55は、ウェハ52の外形に合わせた開口部55Aが形成されている。例えば、円形のウェハ52に形成された複数の半導体チップ2が解析対象の場合、ホルダ55の中央にはウェハ52の外径より小さい径の開口部55Aが形成される。ホルダ55の裏面には、ウェハ52の外縁部分を吸着する不図示の吸着孔が複数形成されており、不図示の真空ポンプなどに接続されている。
【0033】
観察ステージ16Aは、Siから製造されており、裏面には複数の固浸レンズ(固浸レンズ)61,62,63,64が観察ステージ16の裏面を削ることで一体に形成されている。即ち、各固浸レンズ61〜64もSiから製造されている。このような固浸レンズ61〜64は、ほぼ半球状のレンズから形成されており、所定の間隔で一列に並んでいる。
【0034】
図6に拡大して示すように、固浸レンズ61は、撮像装置21から入射される光の集光角を増大させつつ、観察ステージ16Aに入射させる。これによって、この検査装置51では、回折限界を超える解像度が得られる。観察ステージ16Aの裏面には、焦点距離が異なる複数の固浸レンズ61〜64が配置されている。例えば、図5及び図7に示すように、第1の固浸レンズ61は、第1の半径r1の球体で、100nm〜300nmの範囲N1の焦点距離を有する。第2の固浸レンズ62は、第2の半径r2の球体で、275nm〜475nmの範囲N2の焦点距離を有する。また、第3の固浸レンズ63は、第3の半径r3の球体で、450nm〜650nmの範囲N3の焦点距離を有する。第4の固浸レンズ64は、第4の半径r4の球体で、625nm〜775nmの範囲N4の焦点距離を有する。各固浸レンズ61〜64の半径は、r1<r2<r3<r4である。固浸レンズ61〜64の数及び焦点距離の範囲N1〜N4は、図7に限定されない。
【0035】
ウェハ52の検査時には、観察ステージ16Aの上面から検査対象部位、例えばトランジスタまでの高さに従って、固浸レンズ61〜64を選択する。通常は、検査対象部位ま
での高さが既知なので、処理部4は、移動ステージ53を移動させて適切な固浸レンズ61〜64の上方にウェハ52の検査対象部位を配置する。
【0036】
図6に示すように、観察光は、対物レンズ38で集光され、例えば、第1の固浸レンズ61に入射する。固浸レンズ61によってさらに集光された観察光が、観察ステージ16A、ウェハ52を通過し、半導体回路の検査対象部位に入射する。このときに発生する光が、ウェハ52、観察ステージ16A、固浸レンズ61、対物レンズ38Aを順番に透過して、撮像光学系37に入射し、撮像素子35で撮像される。LSIテスタ20からの信号によって故障状態を再現させたときに発生する微弱な発光を観察する場合も、同様にして撮像素子35で撮影される。
【0037】
ここで、観察ステージ16Aの上面から解析対象部位までの高さが既知でない場合には、いずれかの固浸レンズ61〜64から順番に観察する。作業者は、透過パターン像を確認しながら、最適な浸レンズ61〜64を選択する。
【0038】
以上、説明したように、この実施の形態では、観察ステージ16Aの裏面に固浸レンズ61〜64を形成したので、高い解像度の透過パターン像が得られる。固浸レンズ61〜64は、観察ステージ16Aと同じ材料で一体に形成したので、観察光やウェハ52からの微弱な光を透過できる。複数の固浸レンズ61〜64を配置したので、検査対象部位の高さに応じて最適な焦点距離を有する固浸レンズ61〜64を選択できるので、検査効率が向上する。また、撮像装置21に固浸レンズを取り付ける必要がなくなる。その他の作用及び効果は第1の実施の形態と同様である。
【0039】
ここで、検査対象物は、ウェハ52から切り離した個々の半導体チップ2やウェハ片でも良い。この場合の移動ステージ53のホルダ55は、1つの半導体チップ2又はウェハ片を保持可能な形状になる。
【0040】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。第1、第2の実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付している。また、第1、第2の実施の形態と重複する説明は省略する。
【0041】
図8に一部を拡大して示すように、検査装置71は、Si製の観察ステージ72が固定プレート15に交換可能に支持されている。観察ステージ72は両面が鏡面研磨されており、上面には半導体チップ2を囲むにようにヒータ25が少なくとも1つ配置されると共に、温度制御用の温度センサ26が1つ設けられている。さらに、観察ステージ72の下面には、固浸レンズ73が取り付けられている。
【0042】
固浸レンズ73は、観察ステージ72に密着させられるプレート81を有し、プレート81の下面にほぼ半球体のレンズ部82が一体に形成されている。固浸レンズ73は、観察ステージ72と同様の透過特性及び熱伝導率を有する材料、例えば観察ステージ72と同じ材料のSiから製造されている。レンズ部82の半径は、例えば、焦点距離が長い第4の半径r4(図7参照)とする。
【0043】
プレート81の表面は、鏡面仕上げにはなっていない。このために、レーザ光は、プレート81の表面で散乱し、観察ステージ72側には入射しない。また、撮像光学系37への反射光も殆ど観測されなくなる。このために、撮像素子35には、検査対象からの光のみが入射される。プレート81の表面は、レーザ光を吸収したり、反射を防止したりする膜を形成しても良い。
【0044】
ここで、この検査装置71は、1種類の固浸レンズ73を有し、検査対象部位までの距離に併せて厚さの異なる観察ステージ72を適宜交換しながら半導体チップ2を検査することを特徴とする。
【0045】
例えば、図9(a)に示すように、第1の厚さt1の観察ステージ72Aと固浸レンズ73を組み合わせると、観察ステージ72Aの上面から検査対象までの距離がh1となる半導体チップ85Aの観察が可能になる。第1の厚さt1と距離h1の合計値は、固浸レンズ73の焦点距離の範囲内であり、固浸レンズ73を用いて半導体チップ85Aの検査対象部位の透過パターン像を取得できる。
【0046】
また、図9(b)に示すように、第2の厚さt2の観察ステージ72Bと固浸レンズ73を組み合わせると、観察ステージ72Bの上面から検査対象までの距離がh2となる半導体チップ85Bの観察が可能になる。第2の厚さt2と距離h2の合計値は、固浸レンズ73の焦点距離の範囲内であり、固浸レンズ73を用いて半導体チップ85Bの検査対象部位の透過パターン像を取得できる。
【0047】
図9(c)に示すように、第3の厚さt3の観察ステージ72Cと固浸レンズ73を組み合わせると、観察ステージ72Cの上面から検査対象までの距離がh3となる半導体チップ85Cの観察が可能になる。第3の厚さt3と距離h3の合計値は、固浸レンズ73の焦点距離の範囲内であり、固浸レンズ73を用いて半導体チップ85Cの検査対象部位の透過パターン像を取得できる。
【0048】
図9(d)に示すように、第4の厚さt4の観察ステージ72Dと固浸レンズ73を組み合わせると、観察ステージ72Dの上面から検査対象までの距離がh4となる半導体チップ85Dの観察が可能になる。第4の厚さt4と距離h4の合計値は、固浸レンズ73の焦点距離の範囲内であり、固浸レンズ73を用いて半導体チップ85Dの検査対象部位の透過パターン像を取得できる。
【0049】
ここで、各観察ステージ72A〜72Dの上面から検査対象部位までの距離h1〜h4は、h1>h2>h3>h4である。また、各観察ステージ72A〜72Dの板厚は、t1<t2<t3<t4である。即ち、観察ステージ72の上面から検査対象部位までの距離が短いときは厚い観察ステージ72を使用し、観察ステージ72の上面から検査対象部位までの距離が長いときは薄い観察ステージ72を使用する。即ち、観察ステージ72を固浸レンズ73の焦点距離を調整するスペーサとして使用することで、1種類の固浸レンズ73で異なる厚さの半導体チップ2の検査が可能になる。また、観察ステージ72がフィルタとなって発光強度が大きすぎる光が撮像素子35に入力することを防止する。
【0050】
半導体チップ2の観察時には、適切な厚さの観察ステージ72に交換した後、半導体チップ2を載置する。また、半導体チップ2を移動ステージ53で持ち上げた状態で観察ステージ72を交換しても良い。観察ステージ72の厚さは、検査対象部位の位置に併せて研削しても良い。観察ステージ72をSiで製造した場合には、研削作業によって簡単に板厚調整できる。ここで、検査対象は、半導体チップ2や、半導体装置が形成されたウェハ、ウェハ片であっても良い。
【0051】
以上、説明したように、この実施の形態では、1つの固浸レンズ73と複数の観察ステージ72A〜72Dを組み合わせることで、半導体チップ2の高精度な裏面観察が可能になる。その他の作用及び効果は第1、第2の実施の形態と同様である。
【0052】
ここで、この実施の形態の変形例について説明する。
まず、図10に示す観察ステージ91は、裏面を中心側が凸となる階段形状にし、各段
階に1つずつ固浸レンズ73を配置している。例えば、最も厚い中央部分の観察ステージ91Aの板厚はt4とし、その外側の2番目の厚い部分の観察ステージ91Bの板厚はt3とする。さらに外側の3番目の厚い部分の観察ステージ91Cの板厚はt2とする。最も外側で、最も薄い部分の観察ステージ92Dの板厚はt1とする。各固浸レンズ73のレンズ部82は、例えば、焦点距離が長い第4の半径r4とする。
【0053】
この観察ステージ91を有する検査装置では、1つの観察ステージ91の異なる板厚の領域のそれぞれに、1種類の固浸レンズ73が取り付けているので、検査対象部位の位置に応じて最適な板厚の領域を選択することで高精度の裏面観察が可能になる。半導体チップ2の移動には、図5に示すような移動ステージ53を使用できる。
【0054】
また、図11に別の変形例を示すように、観察ステージ101では、裏面の全体に固浸レンズ102を形成しても良い。
【0055】
ここで挙げた全ての例及び条件的表現は、発明者が技術促進に貢献した発明及び概念を読者が理解するのを助けるためのものであり、ここで具体的に挙げたそのような例及び条件に限定することなく解釈するものであり、また、明細書におけるそのような例の編成は本発明の優劣を示すこととは関係ない。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換及び変形を施すことができる。
【0056】
以下に、前記の実施の形態の特徴を付記する。
(付記1)基板上に半導体回路が形成された半導体装置を下方から支持し、前記基板と同じ材料を用いた観察ステージと、前記観察ステージの下方に配置され、前記半導体装置で発生した光を撮像する撮像装置と、前記観察ステージに取り付けられ、前記半導体装置を加熱する加熱装置と、を含むことを特徴とする半導体装置の検査装置。
(付記2) 前記観察ステージがシリコンを含むことを特徴とする付記1に記載の半導体装置の検査装置。
(付記3) 基板上に半導体回路が形成された半導体装置を下方から支持し、シリコンで製造された観察ステージと、前記観察ステージの下方に配置され、前記半導体装置で発生した光を撮像する撮像装置と、前記観察ステージに取り付けられ、前記半導体装置を加熱する加熱装置と、を含むことを特徴とする半導体装置の検査装置。
(付記4) 前記観察ステージの上方に配置され、前記半導体装置の回路に電気的に接続されるプローブカードを有することを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか一項に記載の半導体装置の検査装置。
(付記5) 前記観察ステージの裏面に固浸レンズが一体に形成されていることを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか一項に記載の半導体装置の検査装置。
(付記6) 焦点距離が異なる複数の固浸レンズが前記観察ステージの裏面に形成され、いずれかの前記固浸レンズの上方に前記半導体装置を移動させる移動ステージを有することを特徴とする付記1又は付記2に記載の半導体装置の検査装置。
(付記7) 厚さの異なる複数の前記観察ステージと、前記半導体装置を支持する前記観察ステージの裏面に取り付け可能な1種類の固浸レンズと、を含むことを特徴とする付記1乃至付記5のいずれか一項に記載の半導体装置の検査装置。
(付記8) 半導体装置の基板上の検査対象部位の位置に応じて観察ステージの厚さを変更する工程と、前記観察ステージの下面に固浸レンズを取り付ける工程と、前記観察ステージの上に前記半導体装置を載置する工程と、前記検査対象部位で発生した光を前記観察ステージ及び前記固浸レンズを通して取得する工程と、を含み、前記観察ステージは、前記基板と同じ材料から製造されており、前記観察ステージの厚さは、前記観察ステージから前記検査対象部位までの距離と、前記観察ステージの厚さの合計が前記固浸レンズの焦点距離内に収まるように変更することを特徴とする半導体装置の検査方法。
【符号の説明】
【0057】
1,51,71 検査装置
2 半導体チップ(半導体装置)
16,16A,72,72A,72B,72C,72D 観察ステージ
19 プローブカード
21 撮像装置
25 ヒータ(加熱装置)
53 移動ステージ
61,62,63,64,73 固浸レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に半導体回路が形成された半導体装置を下方から支持し、前記基板と同じ材料を用いた観察ステージと、
前記観察ステージの下方に配置され、前記半導体装置で発生した光を撮像する撮像装置と、
前記観察ステージに取り付けられ、前記半導体装置を加熱する加熱装置と、
を含むことを特徴とする半導体装置の検査装置。
【請求項2】
前記観察ステージがシリコンを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の検査装置。
【請求項3】
焦点距離が異なる複数の固浸レンズが前記観察ステージの裏面に形成され、いずれかの前記固浸レンズの上方に前記半導体装置を移動させる移動ステージを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の検査装置。
【請求項4】
厚さの異なる複数の前記観察ステージと、
前記半導体装置を支持する前記観察ステージの裏面に取り付け可能な1種類の固浸レンズと、
を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の検査装置。
【請求項5】
半導体装置の基板上の検査対象部位の位置に応じて観察ステージの厚さを変更する工程と、
前記観察ステージの下面に固浸レンズを取り付ける工程と、
前記観察ステージの上に前記半導体装置を載置する工程と、
前記検査対象部位で発生した光を前記観察ステージ及び前記固浸レンズを通して取得する工程と、
を含み、前記観察ステージは、前記基板と同じ材料から製造されており、前記観察ステージの厚さは、前記観察ステージから前記検査対象部位までの距離と、前記観察ステージの厚さの合計が前記固浸レンズの焦点距離内に収まるように変更することを特徴とする半導体装置の検査方法。
【請求項1】
基板上に半導体回路が形成された半導体装置を下方から支持し、前記基板と同じ材料を用いた観察ステージと、
前記観察ステージの下方に配置され、前記半導体装置で発生した光を撮像する撮像装置と、
前記観察ステージに取り付けられ、前記半導体装置を加熱する加熱装置と、
を含むことを特徴とする半導体装置の検査装置。
【請求項2】
前記観察ステージがシリコンを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の検査装置。
【請求項3】
焦点距離が異なる複数の固浸レンズが前記観察ステージの裏面に形成され、いずれかの前記固浸レンズの上方に前記半導体装置を移動させる移動ステージを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の検査装置。
【請求項4】
厚さの異なる複数の前記観察ステージと、
前記半導体装置を支持する前記観察ステージの裏面に取り付け可能な1種類の固浸レンズと、
を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の検査装置。
【請求項5】
半導体装置の基板上の検査対象部位の位置に応じて観察ステージの厚さを変更する工程と、
前記観察ステージの下面に固浸レンズを取り付ける工程と、
前記観察ステージの上に前記半導体装置を載置する工程と、
前記検査対象部位で発生した光を前記観察ステージ及び前記固浸レンズを通して取得する工程と、
を含み、前記観察ステージは、前記基板と同じ材料から製造されており、前記観察ステージの厚さは、前記観察ステージから前記検査対象部位までの距離と、前記観察ステージの厚さの合計が前記固浸レンズの焦点距離内に収まるように変更することを特徴とする半導体装置の検査方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−104667(P2013−104667A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246249(P2011−246249)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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