説明

半導体装置の生産管理方法

【課題】半導体装置の製造において、作業効率を向上させることのできる技術を提供する。
【解決手段】 半導体装置の製造工程のうち、ペレット選別工程や組立工程に作業者や製造ラインの管理者がみることができるコミュニケーションボード(表示部)を設ける。そして、このコミュニケーションボードに目標設定エリア4、優先処理エリア5および適正仕掛かりエリア6を設けて、生産目標を示す目標データ、優先して処理すべきロットを示す優先処理データおよび各工程における適正仕掛かり量からのずれを示す差分データを一画面上に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の生産管理技術に関し、特に、半導体装置の製造工程のうち、後工程における生産管理に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本特開平06−068102号公報(特許文献1)には、2つの以上の生産管理情報を、表示器の同一画面上にグラフ化して同時に映し出すことができる技術が開示されている。
【0003】
日本特開平05−290053号公報(特許文献2)には、多品種少量生産方式により半導体装置を製造する技術において、どのロットを優先して処理すると効率的であるかを提供する技術が開示されている。すなわち、ある作業工程に存在する未仕掛品について、稼働していないラインや製造設備を利用してどのように作業を進めるかを決定する際、コンピュータ画面を利用する。つまり、製造を開始したロットが、各工程を何時に通過すべきかをまとめた作業計画マスタと現実のロット進捗度との差異情報に基づいて、効率的な流し化情報を、コンピュータ画面を通じて提供する。
【特許文献1】特開平06−068102号公報
【特許文献2】特開平05−290053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置を製造する生産ラインには、半導体装置の生産を管理するため、生産管理システムが設けられている。作業者は、生産管理システムに接続された端末装置から生産管理システムにアクセスして情報を取得している。例えば、端末装置から製品名、作業工程コードを入力することにより、各作業工程の仕掛かり量がどのくらいあるか等について情報を取得している。
【0005】
しかし、上記した生産管理システムでは、端末を操作している作業管理者だけが情報を取得することになるため、生産ラインで作業する他の作業者には直接情報が伝わらない。例えば、作業管理者が優先して着工すべき製品について情報を取得し、取得した情報に基づいて、作業者に指示を出すことが行われている。しかし、このような状況下では、着工すべきロットの優先度が必ずしも守られていないという問題点がある。
【0006】
また、上記した生産管理システムでは、生産目標や各工程における適正な仕掛かり量からのずれを把握することができないという問題点がある。つまり、上記した生産管理システムでは、作業工程全体についての仕掛かり量のバランスを把握することができない。このことから、半導体装置の製造において、作業効率が低下する問題点がある。
【0007】
本願で開示される一つの発明の一つの目的は、半導体装置の製造において、作業効率を向上させることのできる技術を提供することにある。
【0008】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0010】
本願で開示される一つの発明は、(a)生産目標を示す目標データを生成する工程と、(b)生産管理システムに記憶されている情報に基づいて、優先して処理すべきロットを示す優先処理データおよび各工程での適正仕掛かり量からのずれ量を示す差分データを生成する工程と、(c)前記目標データ、前記優先処理データおよび前記差分データを画面上に表示する工程とを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0012】
本願で開示される一つの発明は、生産目標を示す目標データ、優先して処理すべきロットを示す優先処理データおよび各工程での適正仕掛かり量からのずれ量を示す差分データをコミュニケーションボードの一画面上に同時に表示するので、半導体装置の製造において作業効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、半導体装置の製造工程の流れを示したフローチャートであり、主に後工程についての流れを示している。図1を参照しながら半導体装置の製造工程について説明する。
【0015】
まず、半導体ウェハ(以下、単にウェハという)上にMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)および配線を形成する(S101)。この工程は、いわゆる前工程と呼ばれる。
【0016】
続いて、前工程で回路素子を形成したウェハを受け入れる(受入工程S102)。この工程から、いわゆる後工程が開始される。次に、受け入れたウェハのチップ領域に形成されているボンディングパッド(電極)に探針(プローブ)を接触させて回路素子の電気的特性検査を実施する。この電気的特性検査は、ウェハ上にあるすべてのチップ領域で行われる。電気的特性検査の結果、回路素子が不良と判断されたチップ領域には、マーキングが施される。このようにして良品が形成されているチップ領域と不良品が形成されているチップ領域との選別が行われる(ペレット選別工程S103)。
【0017】
次に、ダイシングにより、ウェハを個々のチップに個片化した後、個片化したチップを一つずつリードフレーム上に配置する。すなわち、一体化した複数のリードフレームのそれぞれに一つずつチップを配置する。そして、チップ上に形成されているボンディングパッドとリードフレームにあるリードとを、例えば金線を用いて接続(ワイヤボンディング)する(組立工程S104)。
【0018】
続いて、リードフレーム上に配置されているチップを樹脂封止する(モールド工程S105)。そして、樹脂封止されたチップに接続しているリードに対してメッキ処理を施す(メッキ工程S106)。
【0019】
次に、一体化した複数のリードフレームを個々のリードフレームに切断してパッケージを形成する(切断工程S107)。そして、個々のパッケージについて電気的特性検査を実施して良品と不良品とを選別する(選別工程S108)。
【0020】
続いて、良品として選別されたパッケージは、テープに搭載された後(テーピング工程S109)、出荷される(出荷S110)。
【0021】
このようにして半導体装置を形成することができる。本実施の形態1における半導体装置の生産管理方法は、上述した後工程で実施されるものである。特に、本実施の形態1では、後工程のうち、ペレット選別工程または組立工程に適用する場合について説明する。ペレット選別工程または組立工程は、後工程の初段階で実施する工程であり、これらの工程の作業効率を向上させることが、後工程全体の作業効率を向上させる上で重要となるからである。つまり、前工程では、同じ装置を上流工程と下流工程で使用する。これに対し、後工程では、同じ装置を上流工程と下流工程で使用することはない。したがって、後工程では、初段階の工程に投入する製品の量を調整する(インプットコントロールという)ことが、後工程全体の作業効率を向上させる上で重要となる。
【0022】
図2は、本実施の形態1における半導体装置の生産管理方法を実現するためのシステム構成を示したものである。図2において、本実施の形態1のシステムは、生産管理システム1、描画用テキストデータ生成部2および描画用テキストデータ表示部3を有している。
【0023】
生産管理システム1は、データベースを有しており、後工程における生産実績情報、仕掛かり情報、遅延時間、ロットNo、着工状態などの情報を蓄積するように構成されている。
【0024】
描画用テキストデータ生成部2は、例えば、サーバから構成されている。この描画用テキストデータ生成部2は、生産目標を示す目標データを生成できるように構成されている。すなわち、キーボードなどの入力部から目標データが入力されると、描画用テキストデータ生成部2は、入力された目標データを例えばファイルとして管理するようになっている。また、生産管理システム1に蓄積されている情報を入力して、優先して処理すべきロットを示す優先処理データおよび各工程での適正仕掛かり量からのずれ量を示す差分データを生成することができるようになっている。
【0025】
描画用テキストデータ生成部2は、データ処理部21、タイマー処理部22および受信部23を有している。データ処理部21は、生産管理システム1に蓄積されている生産実績情報、仕掛情報、遅延時間、ロットNo、着工状態などの情報を入力し、優先して処理すべきロットを示す優先処理データおよび各工程での適正仕掛かり量からのずれ量を示す差分データを生成できるように構成されている。また、データ処理部21は、目標データをファイル形式で管理できるようになっている。なお、目標データは、キーボードなどの入力部から入力するように構成したが、生産管理システム1に蓄積されている情報に基づいて目標データを生成してもよい。
【0026】
タイマー処理部22は、一定間隔でデータ処理部21を動作させるようになっている。すなわち、このタイマー処理部22を設けることにより、データ処理部21で生成される目標データ、優先処理データおよび差分データを一定間隔で更新することができる。
【0027】
受信部23は、描画用テキストデータ表示部3からの更新要求を受信すると、データ処理部21を動作させるように構成されている。
【0028】
次に、描画用テキストデータ表示部3は、例えば描画用テキストデータ生成部2を構成するサーバと接続されたクライアントコンピュータから構成される。この描画用テキストデータ表示部3は、表示処理部31、表示部32および送信部33を有している。
【0029】
表示処理部31は、描画用テキストデータ生成部2で生成された目標データ、優先処理データおよび差分データを描画用テキストデータ生成部2から入力して表示処理をするように構成されている。
【0030】
表示部32は、表示処理部31で処理された目標データ、優先処理データおよび差分データを表示するものであり、例えば大画面を有するコミュニケーションボードから構成されている。このコミュニケーションボードは、例えばペレット選別工程または組立工程の製造ラインに配置されている。したがって、ペレット選別工程または組立工程の製造ラインで作業をする作業者および製造ラインの管理者が容易に見ることができる。このため、作業者は、目標データおよび優先処理データを見ることにより、行わなければならない作業を把握することができる。また、管理者は、目標データおよび差分データを見ることにより、各工程の管理者間で払い出し計画の立案に利用することができ、各工程の仕掛かり量を適切にコントロールすることができる。このようにして、ペレット選別工程または組立工程の作業効率を向上させることができ、ひいては後工程全体の作業効率を向上させることができる。
【0031】
送信部33は、描画用テキストデータ表示部3を構成するクライアントコンピュータから描画用テキストデータ生成部2を構成するサーバに対して処理要求を送信できるように構成されている。
【0032】
本実施の形態1におけるシステムは上述したように、生産管理システム1、描画用テキストデータ生成部2および描画用テキストデータ表示部3よりなる3階層システムを構成している。したがって、データの処理を分散できるのでシステムの効率を向上させることができる。
【0033】
本実施の形態1におけるシステムは、上記のように構成されており、動作について説明する。図2中の実線の矢印は処理の流れを示しており、破線の矢印はデータの流れを示している。図2に示すように、まず、描画用テキストデータ表示部3にある表示処理部31からデータ抽出条件を示す描画用INIデータが描画用テキストデータ生成部2に送信される。
【0034】
次に、描画用テキストデータ生成部2にあるタイマー処理部22は、描画用INIデータからデータ更新間隔情報を読み込み、一定の時間間隔でデータ処理部21を動作させる。すると、データ処理部21は、生産管理システム1から生産実績情報、仕掛情報、遅延時間、ロットNo、着工状態などの情報を入力する。そして、入力した情報と、表示対象となる工程を特定する描画用INIデータ(データ抽出条件を示すデータ)に基づいて、特定した工程での優先処理すべきロットを示す優先処理データおよび後工程の各工程における適正仕掛かり量からのずれ量を示す差分データを生成する。また、描画用テキストデータ生成部2で管理されているファイルから目標データを取得する。
【0035】
そして、描画用テキストデータ生成部2は、生成した目標データ、優先処理データおよび差分データを描画用テキストデータ表示部3に出力する。描画用テキストデータ表示部3にある表示処理部31は、目標データ、優先処理データおよび差分データを入力すると、表示用に加工して例えば、コミュニケーションボードよりなる表示部32に表示する。このようにして、コミュニケーションボードに目標データ、優先処理データおよび差分データを表示できる。
【0036】
なお、一定間隔で上記した動作を行うことにより、コミュニケーションボードに表示される内容は更新される。また、描画用テキストデータ表示部(クライアントコンピュータ)3からの処理要求が送信部33から出力されると、描画用テキストデータ生成部(サーバ)2の受信部23で処理要求が受信される。その後、受信部23で処理要求が受信されると、データ処理部21が動作する。このように描画用テキストデータ表示部3からの処理要求によっても、コミュニケーションボードに表示される内容は更新される。
【0037】
図3は、表示処理部31の動作をさらに詳細に説明した図である。図3に示すように、描画用テキストデータ生成部2から出力された描画用INIデータ、目標データ、優先処理データおよび差分データは表示処理部31に入力される。すると、表示処理部31は、表示色や表示する文字形態などの表示形式を設定している描画設定ファイルを参照して、入力したデータの表示処理を行う。
【0038】
コミュニケーションボードの画面領域のうち目標設定エリアでは、画面サイズの調整が行われ、目標データの読み込みが行われる。その後、目標データの表示が行われる。同様に、優先処理エリアでは、画面サイズの調整が行われ、優先処理データの読み込みが行われる。そして、優先処理データが表示される。さらに、適正仕掛かりエリアでも画面サイズの調整が行われ、差分データの読み込みが行われる。そして、差分データが表示される。
【0039】
次に、実際に目標データ、優先処理データおよび差分データがコミュニケーションボードに表示される一例を図4に示す。図4に示すように、コミュニケーションボードの画面領域は、3つの領域に分けられている。すなわち、コミュニケーションボードの画面領域は、目標設定エリア4と優先処理エリア5と適正仕掛かりエリア6とに分割されている。
【0040】
目標設定エリア4には、生産目標を示す目標データが表示される。このようにコミュニケーションボードに目標データを表示することにより、製造ラインで作業する作業者と作業者を管理する管理者との間で生産目標の共有化を図ることができる。
【0041】
図4では、目標データが文字によって表示される例を示している。例えば、図4に示すように、「本日15時から、A装置メンテナンスを行います。以下の特急ロットは、メンテナンス前に下流工程に流す様、お願いします。」といった内容が記載される。この記載を作業者が見ると、A装置のメンテナンスを行う前に所定の特急ロットを処理しなければならないことを容易に把握することができる。すなわち、目標データを文字で表示することにより、ポイントを絞り込んで指示を出すことができるので、指示を把握しやすくなる。このため、的確に指示が守られる。
【0042】
目標データを文字で表示するのに適している場合としては、上述したように装置のメンテナンス計画を表示する場合の他に、装置トラブルの対応策や装置別の段取り指示を表示する場合に適している。例えば、装置トラブルの対応策を表示した場合には、トラブルの発生した装置以外の装置へ作業を振り分けることができる。また、数値目標よりも言葉で指示してほしいという場合にも本実施の形態1によれば対応することができる。
【0043】
なお、目標設定エリア4に表示される内容は、工程毎に異なる内容を表示することができるようになっている。例えば、ペレット選別工程の製造ラインに置かれているコミュニケーションボードには、ペレット選別工程での生産目標が表示される。一方、組立工程の製造ラインに置かれているコミュニケーションボードには組立工程での生産目標が表示される。表示内容は管理者などによって決定される。
【0044】
優先処理エリア5には、優先して処理すべきロットを示す優先処理データが表示される。図4に示すように、各優先処理データには、「優先」、「品名」、「ロットNo」、「場所」、「受入日時」、「遅延時間」、「着工状態」などの項目が記載されており、例えば、遅延時間が大きい順にリストアップされている。したがって、作業者が優先処理エリア5に表示されている優先処理データを見ることで、どのロットを早急に処理しなければならないかを的確に把握できる。そして、遅延時間の大きいロットを優先的に処理することにより、後工程全体のサイクルタイム(TAT:Turn Around Time)を改善することができ、作業時間の短縮化を図ることができる。また、遅延時間の大きいロットを優先的に処理するので、製品毎のサイクルタイムのバラツキも抑制することができる。この優先処理エリア5は、主に作業者によって利用される。
【0045】
適正仕掛かりエリア6には、図4に示すように、後工程の各工程について、適正仕掛かり量、現状の仕掛かり量および適正仕掛かり量と現状の仕掛かり量との差分などが表示されている。例えば、モールド工程においては、適正仕掛かり量は「2500」であり、現状の仕掛かり量が「5642」である。そして、現状の仕掛かり量と適正仕掛かり量との差分が「3142」である。したがって、モールド工程では、現状の仕掛かり量が適正仕掛かり量を超えていることがわかる。一方、メッキ工程においては、適正仕掛かり量は「2500」であり、現状の仕掛かり量が「7」である。そして、現状の仕掛かり量と適正仕掛かり量との差分が「−2493」である。したがって、メッキ工程では、現状の仕掛かり量が適正仕掛かり量を下回っていることがわかる。そこで、各製造ラインの管理者は、適正仕掛かりエリア6に表示されている内容を見て、仕掛かり量の多い工程から仕掛かり量の少ない工程へ速やかに仕掛かりを移動するように連絡を取りあう。これにより、各工程の仕掛かり量を適正化するようにコントロールでき、後工程における作業効率の向上を図ることができる。この適正仕掛かりエリア6は、主に製造ラインの管理者によって利用される。
【0046】
以上述べたように、コミュニケーションボードの画面を目標設定エリア4、優先処理エリア5および適正仕掛かりエリア6の3つの領域に分けて、目標データ、優先処理データおよび差分データを同時に表示させるようにしたので、後工程の作業効率を向上させることができる。つまり、目標設定エリア4に表示される内容を作業者と管理者が見ることにより、生産目標を共有化が行われ、この生産目標を達成するように作業者と管理者が行動する。このため、作業効率が向上する。また、作業者は、優先処理エリア5に表示されている内容を見ることにより、優先的に処理すべきロットを的確に把握できるので、製品のサイクルタイムの改善を図ることができる。さらに、製造ラインの管理者は、適正仕掛かりエリア6に表示される内容を見ることにより、各工程における適正仕掛かり量からのずれ量を取得することができる。このため、各製造ラインの管理者間で連絡を取りあって仕掛かり量の多い工程から仕掛かり量の少ない工程へ速やかに仕掛かりを移動することができる。すなわち、製造ラインの管理者は、各工程の仕掛かり量を適正化するようにコントロールできる。このように本実施の形態1の一つの特徴は、目標データを表示する目標設定エリア4、優先処理データを表示する優先処理エリア5および差分データを表示する適正仕掛かりエリア6を組み合わせて一つの画面上に表示することにある。
【0047】
ここで、認知心理学的に考えると、人間の短期記憶が可能な情報の個数は、「ミラーの法則」から7±2といわれる。本実施の形態1の生産管理方法において、コミュニケーションボードに表示される情報は、目標設定エリア4、優先処理エリア5および適正仕掛かりエリア6の3つのエリアに絞り込まれている。したがって、コミュニケーションボードに表示される情報はミラーの法則で示される値より小さくなっている。このため、作業者および管理者は、コミュニケーションボードに表示される内容を即座に把握できるようになっている。つまり、コミュニケーションボードへの表示方法は、作業者および管理者にとって理解しやすくなっているため、作業効率の向上を図ることができる。
【0048】
本実施の形態1では、コミュニケーションボードをペレット選別工程や組立工程の製造ラインに設置している。ペレット選別工程や組立工程は、後工程の初段階で行われる工程であり、これらの工程に投入する製品の量を調整する(インプットコントロール)ことが、後工程全体の作業効率を向上させる上で重要となる。したがって、インプットコントロール工程にだけ本実施の形態1における生産管理方法を適用することにより、製造ライン全体の仕掛かり量や工程別の仕掛かり量の最適化を最小限のリソースで実現することができる。なお、最小限のリソースとするため、インプットコントロール工程(ペレット選別工程や組立工程)にだけ、コミュニケーションボードを設置する例を示したが、後工程の他の工程にもコミュニケーションボードを導入することにより、さらなる作業効率の向上を図ることができる。
【0049】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、目標設定エリア4に表示する目標データを文章で表示する例について説明した。本実施の形態2では、目標データを生産計画数に対して実際に処理した実績数を示す分数で表示する例について説明する。
【0050】
図5は、本実施の形態2における目標設定エリア4を示したものである。図5に示すように、目標設定エリア4には、生産計画数(当月生産計画)に対して実際に処理した実績数(当月累計実績)が分数として表示される。例えば、図5では、当月生産計画「50000」に対して、当月累計実績が「15000」であることが示されている。そして、当月生産計画に達するまでに、あと「35000」必要であることが示されている。
【0051】
このように、目標データを分数表示することにより、一目で生産状況全体を把握することができる。図4に示す文章表示から図5に示す分数表示への切り替えは、例えば図2に示す描画用テキストデータ生成部2にある描画用INIデータの設定により切り替えることができる。なお、図5において、文章も一緒に表示するのは、指示の綿密化を図るためである。
【0052】
(実施の形態3)
本実施の形態3では、製品を示すグループコード毎に、生産計画数と実際に処理した実績数を目標設定エリア4に表示する例について説明する。
【0053】
図6は、本実施の形態3における目標設定エリア4を示したものである。図6に示すように、目標設定エリア4にはグループコード毎に生産計画数と実績数が表示されている。例えば、グループコード「A00001」の生産計画数は「2500000」であり、実績数が「15624」である。同様に、グループコード「A00002」の生産計画数は「2500000」であり、実績数が「3000」である。
【0054】
このように、製品を示すグループコード毎に生産計画数と実績数が表示されるので、製品毎の実績が把握できる。すなわち、本実施の形態3によれば、数値的に目標を明確化することができる。図4に示す文章表示から図6に示すグループコード表示への切り替えも、例えば図2に示す描画用テキストデータ生成部2にある描画用INIデータの設定により切り替えることができる。
【0055】
なお、本実施の形態3では、グループコード毎に生産計画数と実績数とを表示する例を示したが、図7に示すように文章も一緒に表示するように構成してもよい。これにより、指示の綿密化を図ることができる。
【0056】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の半導体装置の生産管理方法は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】半導体装置の製造工程の流れを示したフローチャートである。
【図2】本発明における半導体装置の生産管理方法を実現するためのシステム構成を示した図である。
【図3】表示処理部の動作をさらに詳細に説明した図である。
【図4】コミュニケーションボードに表示される画像の一例を示した図である。
【図5】実施の形態2において、目標設定エリアに表示される内容の一例を示した図である。
【図6】実施の形態3において、目標設定エリアに表示される内容の一例を示した図である。
【図7】実施の形態3の変形例において、目標設定エリアに表示される内容の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0059】
1 生産管理システム
2 描画用テキストデータ生成部
3 描画用テキストデータ表示部
4 目標設定エリア
5 優先処理エリア
6 適正仕掛かりエリア
21 データ処理部
22 タイマー処理部
23 受信部
31 表示処理部
32 表示部
33 送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)生産目標を示す目標データを生成する工程と、
(b)生産管理システムに記憶されている情報に基づいて、優先して処理すべきロットを示す優先処理データおよび各工程での適正仕掛かり量からのずれ量を示す差分データを生成する工程と、
(c)前記目標データ、前記優先処理データおよび前記差分データを画面上に表示する工程とを備える半導体装置の生産管理方法。
【請求項2】
(a)生産目標を示す目標データを生成する工程と、
(b)生産管理システムに記憶されている情報に基づいて、優先して処理すべきロットを示す優先処理データおよび各工程での適正仕掛かり量からのずれ量を示す差分データを生成する工程と、
(c)前記目標データ、前記優先処理データおよび前記差分データを一画面上に表示する工程とを備え、
前記目標データ、前記優先処理データおよび前記差分データを一定時間毎または要求により更新する半導体装置の生産管理方法。
【請求項3】
(a)生産目標を示す目標データを生成する工程と、
(b)生産管理システムに記憶されている情報に基づいて、優先して処理すべきロットを示す優先処理データおよび各工程での適正仕掛かり量からのずれ量を示す差分データを生成する工程と、
(c)前記目標データ、前記優先処理データおよび前記差分データを一画面上に表示する工程とを備え、
前記目標データは、文章として表示される半導体装置の生産管理方法。
【請求項4】
(a)生産目標を示す目標データを生成する工程と、
(b)生産管理システムに記憶されている情報に基づいて、優先して処理すべきロットを示す優先処理データおよび各工程での適正仕掛かり量からのずれ量を示す差分データを生成する工程と、
(c)前記目標データ、前記優先処理データおよび前記差分データを一画面上に表示する工程とを備え、
前記目標データは、生産計画数に対して実際に処理した実績数を示す分数を含むように表示される半導体装置の生産管理方法。
【請求項5】
(a)生産目標を示す目標データを生成する工程と、
(b)生産管理システムに記憶されている情報に基づいて、優先して処理すべきロットを示す優先処理データおよび各工程での適正仕掛かり量からのずれ量を示す差分データを生成する工程と、
(c)前記目標データ、前記優先処理データおよび前記差分データを一画面上に表示する工程とを備え、
前記目標データは、製品毎に生産計画数と実際に処理した実績数を含むように表示される半導体装置の生産管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−114647(P2006−114647A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299686(P2004−299686)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)