説明

半導体装置の製造方法、クリーニング方法および基板処理装置

【課題】クリーニングガスによる腐食反応を低減する。
【解決手段】CVD装置の処理炉10におけるマニホールド17と排気管20とクリーニングガス導入ノズル51と原料ガス導入ノズル31とに第一加熱源61と第二加熱源62と第三加熱源63と第四加熱源64とを敷設し、加熱源61〜64は温度制御部60に接続する。温度制御部60はマニホールド17と排気管20とクリーニングガス導入ノズル51と原料ガス導入ノズル31との温度をクリーニングガスが多層吸着しない程度の温度となるように制御する。クリーニングガスによる腐食反応を低減できるので、マニホールド17と排気管20とクリーニングガス導入ノズル51と原料ガス導入ノズル31の定期的交換の頻度を減少でき、CVD装置のメンテナンス性能を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、クリーニング方法および基板処理装置に関し、例えば、半導体集積回路装置(以下、ICという)が作り込まれる基板としての半導体ウエハ(以下、ウエハという)に絶縁膜や金属膜および半導体膜を形成するCVD装置や酸化膜形成装置や拡散装置およびアニール装置等の半導体製造装置を使用するものに関する。
【背景技術】
【0002】
ICの製造方法において、ウエハに窒化シリコンやポリシリコン等のCVD膜をデポジションするのに、例えば、特許文献1に示されているようなバッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD装置が広く使用されている。
バッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD装置(以下、CVD装置という。)は、ウエハが搬入される処理室を形成するインナチューブおよびこのインナチューブを取り囲むアウタチューブから構成され縦形に設置されたプロセスチューブと、インナチューブ内に原料ガスを導入するガス導入管と、プロセスチューブ内を真空排気する排気管と、プロセスチューブ外に敷設されてプロセスチューブ内を加熱するヒータとを備えている。
そして、複数枚のウエハがボートによって垂直方向に整列されて保持された状態でインナチューブ内に下端の炉口から搬入され、インナチューブ内に原料ガスがガス導入管から導入されるとともに、ヒータによってプロセスチューブ内が加熱されることにより、ウエハにCVD膜がデポジションされる。
【0003】
このようなCVD装置においては、ウエハの表面に対するCVD膜の形成が本来の目的であるが、 実際にはウエハの表面以外、 例えば、プロセスチューブの内壁等にもCVD膜が堆積してしまう。
この堆積膜の厚さが一定以上に達すると、膜剥離が生じウエハ上での異物発生要因となってしまう。
このため、 プロセスチューブの内壁等に堆積した堆積膜を除去するクリーニングを実施することが必要となる。
そこで、堆積膜が一定以上付着すると、CVD装置からプロセスチューブ等を取外してHF(弗化水素)の水溶液の洗浄槽により除去するウエットクリーニングが、従来から実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−156065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ウエットクリーニングはメンテナンスがきわめて困難であるために、近年は、 メンテナンスが容易なドライクリーニングが採用され始めている。
このうち、シリコン酸化(SiO2 )膜に対するクリーニングガスの候補としてはHFガスが挙げられるが、 HFガスは蒸気圧が低く液化し易いガスであるため、ドライクリーニングの実施により、 クリーニングの際に75℃未満の温度となる低温部の部材の表面に対してHFガスが多層吸着してしまう。
この結果、低温部となる石英部材の表面のエッチングや排気管等の金属部材の表面の腐食のように、 HFガスに曝される部材に対して顕著な腐食反応を引き起こし、 それら部材の定期的交換が必要となるため、メンテナンス性が大きく低下するという問題が残る。
【0006】
本発明の目的は、 クリーニングガスによる腐食反応を低減することができる半導体装置の製造方法、クリーニング方法および基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願が開示する発明のうち代表的なものは、次の通りである。
基板を処理室内に搬入するステップと、
前記処理室内に原料ガスを供給して基板上に酸化膜を形成するステップと、
酸化膜形成後の基板を前記処理室内より搬出するステップと、
前記処理室内にHFガスを含むクリーニングガスを供給して前記処理室内に堆積した酸化膜をエッチング反応により除去することで前記処理室内をクリーニングするステップと、
を有し、
前記処理室内をクリーニングするステップでは、前記処理室内の温度を、室温以上70℃以下の温度とするとともに、前記HFガスを含むクリーニングガスに晒される部材のうち酸化膜形成の際に酸化膜形成温度よりも低い温度となる低温部材の温度を、75℃以上100℃未満の温度とする半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クリーニングガスによる腐食反応を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態であるCVD装置の処理炉を示す正面断面図である。
【図2】その主要部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を図面に即して説明する。
本実施の形態において、本発明に係る半導体装置の製造方法は、ICの製造方法として構成されており、本実施の形態に係るICの製造方法は特徴工程として、ICが作り込まれる基板としてのウエハに例えば絶縁膜を成膜する成膜工程を備えている。
本実施の形態において、本発明に係る基板処理装置は、本実施の形態に係るICの製造方法における特徴工程である成膜工程を実施するCVD装置(バッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD装置)として構成されている。
本実施の形態に係るCVD装置について説明する。
【0011】
本実施の形態に係るCVD装置は、図1に示された処理炉10を備えている。
図1に示されているように、処理炉10は加熱機構としてのヒータ11を有する。
ヒータ11は円筒形状であり、支持板としてのヒータベース12に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0012】
ヒータ11の内側には反応管としてのプロセスチューブ13が、ヒータ11と同心円状に配設されている。プロセスチューブ13は外部反応管としてのアウタチューブ14と、その内側に設けられた内部反応管としてのインナチューブ15とから構成されている。
アウタチューブ14は、例えば石英(SiO2 )または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、内径がインナチューブ15の外径よりも大きく上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されており、インナチューブ15と同心円状に設けられている。
インナチューブ15は、例えば石英または炭化シリコン等の耐熱性材料からなり、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。インナチューブ15の筒中空部には処理室16が形成されており、基板としてのウエハ1を後述するボートによって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0013】
アウタチューブ14の下方にはマニホールド17が、アウタチューブ14と同心円状に配設されている。マニホールド17は例えばステンレス等からなり、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。
マニホールド17はインナチューブ15とアウタチューブ14とに係合しており、これらを支持するように設けられている。マニホールド17がヒータベース12に支持されることにより、プロセスチューブ13は垂直に据え付けられた状態となっている。
プロセスチューブ13とマニホールド17により反応容器が形成される。
なお、マニホールド17とアウタチューブ14との間には、シール部材としてのOリング18が設けられている。
【0014】
マニホールド17には処理室16内の雰囲気を排気するラインとしての排気管20が設けられている。排気管20は、インナチューブ15とアウタチューブ14との隙間によって形成される筒状空間19の下端部に配置されており、筒状空間19に連通している。
排気管20のマニホールド17との接続側と反対側である下流側には、圧力検出器としての圧力センサ21および圧力調整装置(可変コンダクタンスバルブ)22を介して真空ポンプ等の真空排気装置23が接続されており、処理室16内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。
圧力調整装置22および圧力センサ21には圧力制御部24が、電気配線Bによって電気的に接続されている。
圧力制御部24は圧力センサ21により検出された圧力に基づいて圧力調整装置22により処理室16内の圧力を所望の圧力とさせるべく所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0015】
マニホールド17の下方には、マニホールド17の下端開口を気密に閉塞する炉口蓋体としてのシールキャップ25が設けられている。シールキャップ25はマニホールド17の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。
シールキャップ25は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ25の上面には、マニホールド17の下端と当接するシール部材としてのOリング26が設けられている。
【0016】
シールキャップ25はプロセスチューブ13の外部に垂直に設備された昇降機構としてのボートエレベータ27によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これにより後述するボートを処理室16に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0017】
シールキャップ25の処理室16と反対側には、ボートを回転させる回転機構28が設置されている。回転機構28の回転軸29はシールキャップ25を貫通して、後述するボートに接続されており、ボートを回転させることでウエハ1を回転させるように構成されている。
回転機構28およびボートエレベータ27には、駆動制御部30が電気配線Aによって電気的に接続されており、所望の動作をするよう所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0018】
マニホールド17には原料ガス導入ノズル31が処理室16内に連通するように接続されており、このノズル31には原料ガス導入ライン32が接続されている。
原料ガス導入ライン32のノズル31との接続側と反対側である上流側には、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)33を介して図示しない原料ガス供給源や不活性ガス供給源が接続されている。
MFC33にはガス流量制御部34が電気配線Cによって電気的に接続されている。
ガス流量制御部34は供給するガスの流量を所望の量とさせるべく所望のタイミングにて、MFC33を制御するように構成されている。
【0019】
プロセスチューブ13内には温度検出器としての温度センサ35が設置されている。
ヒータ11と温度センサ35とには温度制御部36が、それぞれ電気配線Dによって電気的に接続されている。
温度制御部36は温度センサ35により検出された温度情報に基づきヒータ11への通電具合を調整することにより、処理室16内の温度を所望の温度分布とさせるべく所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0020】
圧力制御部24、駆動制御部30、ガス流量制御部34、温度制御部36は、操作部、入出力部をも構成しており、CVD装置全体を制御する主制御部37に電気的に接続されている。
圧力制御部24、駆動制御部30、ガス流量制御部34、温度制御部36および主制御部37はコントローラ38として構成されている。
【0021】
基板保持具としてのボート40は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる上下の端板41、42や複数本の保持柱43が使用されて、全体的にみると長い円筒形状になるように構築されており、保持柱43には多数条のスロット(保持溝)44が長手方向(垂直方向)に等間隔に配列されている。
ウエハ1の周縁部が同一段の複数個のスロット44に同時に挿入されることにより、ボート40は複数枚のウエハ1を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。
なお、ボート40の下部には、断熱部材としての断熱板45が水平姿勢で多段に複数枚配置されている。断熱板45は例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料が使用されて、円板形状に形成されており、ヒータ11からの熱がマニホールド17側に伝わり難くなるよう構成されている。
【0022】
本実施の形態において、マニホールド17の原料ガス導入ノズル31と異なる位置には、図2に示されているように、クリーニングガス導入ノズル51が処理室16内に連通するように接続されており、クリーニングガス導入ノズル51にはクリーニングガス導入ライン52が接続されている。
クリーニングガス導入ライン52のノズル51との接続側と反対側である上流側には、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)53を介して図示しないクリーニングガス供給源や不活性ガス供給源が接続されている。
MFC53にはガス流量制御部54(図1参照)が電気配線Eによって電気的に接続されている。
ガス流量制御部54は供給するガス流量を所望量とさせるべく所望のタイミングにてMFC53を制御するように構成されており、コントローラ38の一部を構成している。
【0023】
図1および図2に示されているように、マニホールド17と排気管20とクリーニングガス導入ノズル51と原料ガス導入ノズル31とには、第一加熱源61と第二加熱源62と第三加熱源63と第四加熱源64とがそれぞれ敷設されている。
マニホールド17と排気管20とクリーニングガス導入ノズル51と原料ガス導入ノズル31とは、後述する薄膜形成の際に薄膜形成温度よりも低い温度となる低温部材である。
これらの加熱源61、62、63、64は温度制御部60にそれぞれ電気配線Fによって接続されている。温度制御部60はコントローラ38の一部を構成しており、マニホールド17と排気管20とクリーニングガス導入ノズル51と原料ガス導入ノズル31との温度を、 クリーニングガスが多層吸着しない程度の温度とさせるべく制御するように構成されている。
【0024】
次に、以上の構成に係る処理炉10を用いて、半導体装置の製造工程の一工程としてCVD法によりウエハ1の上に薄膜を形成する方法について説明する。
なお、以下の説明において、CVD装置を構成する各部の動作はコントローラ38により制御される。
【0025】
複数枚のウエハ1がボート40に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ1を保持したボート40は、ボートエレベータ27によって持ち上げられて処理室16に搬入(ボートローディング)される。
この状態で、シールキャップ25はOリング26を介してマニホールド17の下端をシールした状態となる。
【0026】
処理室16内が所望の圧力(真空度)となるように真空排気装置23によって真空排気される。この際、処理室16内の圧力は圧力センサ21で測定され、この測定された圧力に基づき、圧力調整装置22がフィードバック制御される。
また、処理室16内が所望の温度となるようにヒータ11によって加熱される。
この際、処理室16内が所望の温度分布となるように温度センサ35が検出した温度情報に基づきヒータ11への通電具合がフィードバック制御される。
続いて、回転機構28によってボート40が回転されることにより、ウエハ1が回転される。
【0027】
次いで、処理ガス供給源から処理ガスが供給される。MFC33にて所望の流量となるように制御されたガスは、原料ガス導入ライン32を流通してノズル31から処理室16内に導入される。
導入されたガスは処理室16内を上昇し、インナチューブ15の上端開口から筒状空間19に流出して排気管20から排気される。
ガスは処理室16内を通過する際にウエハ1の表面と接触し、この際に熱CVD反応によってウエハ1の表面上に薄膜が堆積(デポジション)される。
【0028】
予め設定された処理時間が経過すると、不活性ガス供給源から不活性ガスが供給され、処理室16内が不活性ガスに置換されるとともに、処理室16内の圧力が常圧に復帰される。
【0029】
その後、ボートエレベータ27によりシールキャップ25が下降されて、マニホールド17の下端が開口されるとともに、処理済ウエハ1がボート40に保持された状態でマニホールド17の下端からプロセスチューブ13の外部に搬出(ボートアンローディング)される。
その後、処理済ウエハ1はボート40より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0030】
なお、本実施の形態の処理炉にてウエハに成膜する際の処理条件としては、例えば、シリコン酸化膜(DCS−HTO(SiO2 )膜)の成膜においては、処理温度:700〜850℃、処理圧力:10〜200Pa、ガス種:DCSおよびN2 O、ガス供給流量:DCS0.01〜0.5slm、N2 O0.01〜0.5slmが例示される。
なお、DCSとはジクロロシラン(SiH2 Cl2 )、HTOとはHigh Temperature Oxideの略称である。
また、例えば、シリコン窒化膜(DCS−Si3 4 膜)の成膜においては、処理温度:650〜800℃、処理圧力:10〜200Pa、ガス種:DCSおよびNH3 、ガス供給流量:DCS0.01〜0.2slm、NH3 0.05〜2.0slm、が例示される。
これらの処理条件を、それぞれの範囲内のある値で一定に維持することでウエハに成膜がなされる。
【0031】
ところで、以上のような成膜ステップの実施に際しては、プロセスチューブ13の内壁やボート40の表面等にもCVD膜が堆積してしまう。
このプロセスチューブ13の内壁等に付着した堆積膜の厚さが一定以上に達すると、膜剥離が生じるために、ウエハ1上での異物発生要因となってしまう。
そこで、本実施の形態に係るICの製造方法においては、堆積膜が剥離する厚さになる前に、ドライクリーニングステップを実施する。
【0032】
以下に、HFガスを処理炉10内に直接導入し、 付着した堆積膜を除去するドライクリーニングステップについて説明する。
堆積膜が付着したプロセスチューブ13内に、堆積膜が付着した空のボート40をボートエレベータ27によって搬入する。この状態で、シールキャップ25はOリング26を介してマニホールド17の下端をシールした状態となる。
処理室16内をヒータ11によって所定の温度まで加熱する。 この際、処理室16内が所望の温度分布となるように温度センサ35が検出した温度情報に基づきヒータ11への通電具合がフィードバック制御される。
この後、クリーニングガスとしてのHFガスをMFC53にて所望の流量となるように制御しつつクリーニングガス導入ライン52を介してクリーニングガス導入ノズル51から処理室16内に導入する。
導入されたHFガスは処理室16内を上昇し、インナチューブ15の上端開口から筒状空間16に流出して排気管20から排気される。
HFガスは処理室16内を通過する際にプロセスチューブ13の内壁やボート40の表面等に付着した堆積膜と接触する。この際、HFガスのエッチング反応によって堆積膜が除去される。
このとき、 排気管20に設けられた圧力調整装置(可変コンダクタンスバルブ)22によって処理室16内の圧力を一定に保つよう圧力調整し、 排気管20および真空ポンプ等の真空排気装置23を経てクリーニングガスを排出する。この際、処理室16内の圧力は圧力センサ21で測定され、この測定された圧力に基づき圧力調整装置22がフィードバック制御される。
なお、このとき回転機構28によってボート40を回転させるようにしてもよい。
【0033】
予め設定された時間が経過し、堆積膜が除去されたら、 直ちに、クリーニングガス導入ノズル51からのクリーニングガス供給を止め、 処理室16内を不活性ガスでパージし、その後、処理室16内のシーズニングを行ない、 成膜ステップに移行することができる状態に復帰させる。
【0034】
以上のクリーニングステップにおいて、HFガスは蒸気圧が低く液化し易いガスであるために、従来、ドライクリーニングステップの実施により、 クリーニングの際に、75℃未満の低温部となるマニホールド17や排気管20やクリーニングガス導入ノズル51および原料ガス導入ノズル31の表面に対してHFガスが多層吸着してしまう。
このHFガスの多層吸着が発生すると、排気管20やクリーニングガス導入ノズル51および原料ガス導入ノズル31の石英表面でのエッチング、 マニホールド17の金属表面での腐食のように、 HFガスに曝される表面に対して顕著な腐食反応が起こる。
また、石英部材のエッチングや金属部材の腐食が発生する際には、顕著な熱反応が起こる。
なお、ガスの多層吸着とは、ガス処理時における低温部の表面にガス分子が吸着し、表面全体がガス分子で覆われた後に、ガス分子の上にガス分子が重なり、ガスが何層にもわたり表面に吸着して低温部の表面が濡れたようになる現象であり、HFガスで顕著に生じる現象である。
ちなみに、弗化塩素(ClF3 )でも同様な現象が生じると考えられる。
【0035】
そこで、本実施の形態に係るICの製造方法においては、前述したドライクリーニングステップの実施に際して、第一加熱源61と第二加熱源62と第三加熱源63と第四加熱源64とを温度制御部60によって制御することにより、マニホールド17や排気管20やクリーニングガス導入ノズル51および原料ガス導入ノズル31の温度をHFガスが多層吸着しない温度である75℃以上100℃未満にさせるべく制御する。
【0036】
ここで、HFガスの場合においては、75℃以上となる温度であれば多層吸着しないことが、次の実験によって究明された。
<実験条件>
圧力:13330Pa、温度:25℃、35℃、50℃、75℃、95℃。
<判定>

<実験結果>

【0037】
他方、高温ほど金属部材の腐食が生じ、このとき顕著な熱反応が生じる。
しかし、少なくとも100℃未満であれば、金属部材の腐食が生じないことが確認されている。
【0038】
以上のことから、マニホールド17や排気管20やクリーニングガス導入ノズル51および原料ガス導入ノズル31の温度を75℃以上100℃未満にさせるべく制御することにより、クリーニングガスとしてのHFガスがこれらの表面に多層吸着せず、顕著な熱反応も生じず、石英部材のエッチング、金属部材の腐食の発生を防止することができる。
【0039】
なお、HFガスを含むクリーニングガスの例としては、次のものが挙げられる。
HFガス単独、HFガス+窒素(N2 )ガス、HFガス+アルゴン(Ar)ガス、HFガス+ヘリウム(He)ガス、HFガス+F2 ガス。
【0040】
HFガス以外のクリーニングガスの例としては、弗化塩素(ClF3 )ガス等の蒸気圧の低いガスが挙げられる。
【0041】
なお、クリーニングステップの処理条件としては、例えば、クリーニングガス:HFガス、処理温度:常温〜70℃、処理圧力:133〜50000Pa、ガス供給流量:HFガス0.5〜5.0slm、マニホールド17や排気管20やクリーニングガス導入ノズル51および原料ガス導入ノズル31等の低温部材の温度は、75〜95℃、好ましくは、80〜95℃が例示される。
また、例えば、クリーニングガス:HFガスおよびN2 ガス、処理温度:常温〜70℃、処理圧力:133〜50000Pa、ガス供給流量:HFガス0.5〜5.0slm、N2 ガス0.1〜10.0slm、マニホールド17や排気管20やクリーニングガス導入ノズル51および原料ガス導入ノズル31等の低温部材の温度は、75〜95℃、好ましくは、80〜95℃が例示される。
これらの処理条件を、それぞれの範囲内のある値で一定に維持することで、クリーニングがなされる。
【0042】
前記実施の形態によれば、次の効果が得られる。
【0043】
1)HFガスのような表面に吸着し易いガスを含んだクリーニングガスを使用してドライクリーニングを実施した際に、低温部に配置されてクリーニングガスに曝されるマニホールドや排気管やクリーニングガス導入ノズルおよび原料ガス導入ノズル等のCVD装置構成部材の多層吸着による腐食反応を低減することができる。
【0044】
2)多層吸着による腐食反応を低減することにより、マニホールドや排気管やクリーニングガス導入ノズルおよび原料ガス導入ノズル等のCVD装置構成部材の定期的交換の頻度を減少することができるので、メンテナンス性能を向上させることができる。
【0045】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0046】
成膜処理はシリコン酸化膜やシリコン窒化膜を形成する処理に限らず、他の酸化膜や窒化膜、さらには、金属膜および半導体膜(例えば、ポリシリコン膜)等の他のCVD膜を形成する処理であってもよい。
【0047】
CVD装置はバッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD装置に限らず、横形ホットウオール形減圧CVD装置等の他のCVD装置であってもよい。
【0048】
本発明に係る半導体装置の製造方法はCVD装置を使用する場合に限らず、酸化膜形成装置や拡散装置およびアニール装置等を使用する場合にも適用することができる。
【0049】
前記実施の形態ではウエハに処理が施される場合について説明したが、処理対象はホトマスクやプリント配線基板、液晶パネル、コンパクトディスクおよび磁気ディスク等であってもよい。
【0050】
本発明の好ましい態様を付記する。
(1)基板を処理室内に搬入するステップと、
前記処理室内に原料ガスを供給して基板上に薄膜を形成するステップと、
薄膜形成後の基板を前記処理室内より搬出するステップと、
前記処理室内にクリーニングガスを供給して前記処理室内に堆積した膜をエッチング反応により除去することで前記処理室内をクリーニングするステップと、を有し、
前記処理室内をクリーニングするステップでは、前記処理室内を前記エッチング反応が生じる程度の第一の温度に加熱するとともに、前記クリーニングガスに晒される部材のうち前記薄膜形成の際に薄膜形成温度よりも低い温度となる低温部材の温度を、前記クリーニングガスが多層吸着しない程度の第二の温度となるようにする半導体装置の製造方法。
(2)基板を処理する処理室と、
前記処理室内を加熱するヒータと、
前記処理室内に薄膜を形成するための原料ガスを導入する原料ガス導入ラインと、
前記処理室内に堆積した膜をエッチング反応により除去するためのクリーニングガスを前記処理室内に導入するクリーニングガス導入ラインと、
前記処理室内を排気する排気ラインと、
前記クリーニングガスに晒される部材のうち前記薄膜形成の際に薄膜形成温度よりも低い温度となる低温部材を加熱する加熱源と、
前記処理室内にクリーニングガスを導入しつつ前記処理室内を前記エッチング反応が生じる程度の第一の温度に加熱するよう前記ヒータを制御するとともに、
前記低温部材の温度が、前記クリーニングガスが多層吸着しない程度の第二の温度となるように前記加熱源を制御するコントローラと、
を有する基板処理装置。
(3)前記(1)(2)において、前記低温部材の温度を、前記クリーニングガスが多層吸着せず、かつ、顕著な熱反応が生じない程度の温度となるように制御する。
(4)前記(1)(2)において、前記クリーニングガスはHFガスを含むガスである。(5)前記(1)(2)において、前記薄膜はシリコン酸化膜であり、前記クリーニングガスはHFガスを含むガスである。
(6)前記(1)(2)において、前記クリーニングガスはHFガスを含むガスであり、前記低温部材の温度を、75℃以上100℃未満の温度となるように制御する。
(7)前記(1)(2)において、前記低温部材は、少なくとも前記処理室を形成したプロセスチューブを支持するマニホールド、前記処理室内に前記原料ガスを導入するガスノズルおよび/または前記処理室内を排気する排気管である。
【符号の説明】
【0051】
1…ウエハ(基板)、10…処理炉、11…ヒータ(加熱機構)、12…ヒータベース、13…プロセスチューブ(反応管)、14…アウタチューブ(外部反応管)、15…インナチューブ(内部反応管)、16…処理室、17…マニホールド、18…Oリング(シール部材)、19…筒状空間、20…排気管、21…圧力センサ(圧力検出器)、22…圧力調整装置、23…真空排気装置、24…圧力制御部、25…シールキャップ(炉口蓋体)、26…Oリング(シール部材)、27…ボートエレベータ、28…回転機構、29…回転軸、30…駆動制御部、31…ノズル(ガス導入部)、32…原料ガス導入ライン、33…MFC(ガス流量制御器)、34…ガス流量制御部、35…温度センサ(温度検出器)、36…温度制御部、37…主制御部、38…コントローラ、40…ボート(基板保持具)、41、42…端板、43…保持柱、44…スロット(保持溝)、45…断熱板(断熱部材)、51…クリーニングガス導入ノズル、52…クリーニングガス導入ライン、53…MFC(ガス流量制御器)、54…ガス流量制御部、60…温度制御部、61〜64…加熱源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理室内に搬入するステップと、
前記処理室内に原料ガスを供給して基板上に酸化膜を形成するステップと、
酸化膜形成後の基板を前記処理室内より搬出するステップと、
前記処理室内にHFガスを含むクリーニングガスを供給して前記処理室内に堆積した酸化膜をエッチング反応により除去することで前記処理室内をクリーニングするステップと、
を有し、
前記処理室内をクリーニングするステップでは、前記処理室内の温度を、室温以上70℃以下の温度とするとともに、前記HFガスを含むクリーニングガスに晒される部材のうち酸化膜形成の際に酸化膜形成温度よりも低い温度となる低温部材の温度を、75℃以上100℃未満の温度とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記処理室内をクリーニングするステップでは、前記低温部材の温度を、75℃以上95℃以下の温度とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記低温部材は、金属部材を含む請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記低温部材は、金属部材および石英部材を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記低温部材は、前記処理室を形成するプロセスチューブを支持するマニホールド、前記処理室内に前記原料ガスを導入するガスノズルおよび前記処理室内のガスを排気する排気管のうち少なくともいずれかを含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
基板上に酸化膜を形成する処理を行った後の処理室内にHFガスを含むクリーニングガスを供給して前記処理室内に堆積した酸化膜をエッチング反応により除去することで前記処理室内をクリーニングするステップを有し、
前記処理室内をクリーニングするステップでは、前記処理室内の温度を、室温以上70℃以下の温度とするとともに、前記HFガスを含むクリーニングガスに晒される部材のうち酸化膜形成の際に酸化膜形成温度よりも低い温度となる低温部材の温度を、75℃以上100℃未満の温度とするクリーニング方法。
【請求項7】
基板上に酸化膜を形成する処理を行う処理室と、
前記処理室内にHFガスを含むクリーニングガスを導入するクリーニングガス導入ラインと、
前記HFガスを含むクリーニングガスに晒される部材のうち酸化膜形成の際に酸化膜形成温度よりも低い温度となる低温部材を加熱する加熱源と、
基板上に酸化膜を形成する処理を行った後の前記処理室内に前記HFガスを含むクリーニングガスを供給して前記処理室内に堆積した酸化膜をエッチング反応により除去することで前記処理室内をクリーニングする際に、前記処理室内の温度を、室温以上70℃以下の温度とするとともに、前記HFガスを含むクリーニングガスに晒される部材のうち酸化膜形成の際に酸化膜形成温度よりも低い温度となる低温部材の温度を、75℃以上100℃未満の温度とするように制御するコントローラと、
を有する基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−84966(P2013−84966A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−259669(P2012−259669)
【出願日】平成24年11月28日(2012.11.28)
【分割の表示】特願2007−173930(P2007−173930)の分割
【原出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】