説明

半導体装置の製造方法、半導体装置、接着フィルム、及び、接着フィルムの貼り合わせ方法

【課題】接着フィルムと半導体ウエハとを貼り合わせる際のボイドを抑制し、高い接合信頼性を実現することのできる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとを1cm以下のクリアランスで対向させる工程と、50〜100℃、10000Pa以下の加熱真空下、前記接着フィルムの接着剤層と前記半導体ウエハとを0.1〜1MPaの圧力で貼り合わせる工程と、接着剤層付きの半導体ウエハを得る工程と、前記接着剤層付きの半導体ウエハを接着剤層付きの半導体チップに個片化する工程と、前記接着剤層付きの半導体チップを実装する工程とを有し、前記接着フィルムの接着剤層は、半導体ウエハに貼り合わされる側の表面のプローブタック法で測定したタック値が、貼り合わせ温度において100gf/5mmφ以上である半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着フィルムと半導体ウエハとを貼り合わせる際のボイドを抑制し、高い接合信頼性を実現することのできる半導体装置の製造方法に関する。また、本発明は、該半導体装置の製造方法により製造される半導体装置、該半導体装置の製造方法に用いられる接着フィルム、及び、接着フィルムの貼り合わせ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の小型化及び高密度化に伴い、半導体チップを回路基板に実装する方法として、表面に多数のバンプ電極が形成された半導体チップを用いたフリップチップ実装が注目され、急速に広まってきている。
フリップチップ実装においては、接合部分の接続信頼性を確保するための方法として、半導体チップのバンプ電極と回路基板のパッド電極とを接合した後に、半導体チップと回路基板との隙間に液状封止接着剤(アンダーフィル)を注入し、硬化させることが一般的な方法として採られている。しかしながら、アンダーフィルを用いたフリップチップ実装は、製造コストが高い、アンダーフィル充填に時間がかかる、バンプ電極間の距離及び半導体チップと回路基板との距離を狭めるのに限界がある等の問題を抱えている。
【0003】
そこで、近年、回路基板上にペースト状接着剤(NCP)を塗布した後、半導体チップを加熱及び/又は加圧ボンディングする方法が提案されている。また、半導体ウエハ又は半導体チップ表面にフィルム状接着剤(NCF)を貼り合わせた後、半導体チップを加熱及び/又は加圧ボンディングする方法も提案されており、この場合には、ウエハレベルで接着剤を一括供給し、ダイシングによって半導体チップに個片化することもできるため、大幅なプロセス短縮が期待される。
【0004】
また、半導体ウエハを薄化するバックグラインド工程で使用されるバックグラインドテープと、フィルム状接着剤とを一体化した接着フィルム(BG−NCF)も提案されている。
例えば、特許文献1には、基材と、基材上に形成された層間接着用接着剤層とからなる粘着シートの層間接着用接着剤層とウエハとを貼り合わせる工程1、ウエハを、粘着シートに固定した状態で研削する工程2、研削後のウエハから、層間接着用接着剤層を残して基材を剥離して、層間接着用接着剤層が付着したウエハを得る工程3を有する半導体の製造方法が記載されている。特許文献1には、同文献に記載の方法によれば、極めて簡便に、薄研削された層間接着剤付きのウエハを得ることができ、得られたウエハを用いて半導体装置が得られることが記載されている。
【0005】
半導体ウエハ表面に接着フィルムを貼り合わせる際には、半導体ウエハ表面に存在するバンプ電極に追従性良く、ボイドを生じることなく貼り合わせることが重要となる。このため、真空ラミネート法が多く用いられている。
【0006】
真空ラミネート法の一般的な方法としては、接着フィルムと半導体ウエハとを対向させた状態で加熱及び真空引きを行い、加熱真空下、ロール、バルーン、プレス等で圧着させる方法がある。しかしながら、装置にもよるが、加熱及び真空引きを行う際に接着フィルムと半導体ウエハとが最初から接触している、又は、クリアランスが狭く、部分的に接触した状態となることがあり、このような場合、接着フィルムと半導体ウエハとの間に空気を巻き込み、巻き込んだ空気が加熱及び真空引きによって膨張し、ボイド(ラミボイド)を生じるという問題がある。加熱及び真空引きにより膨張したボイドは、その後の圧着工程又は大気圧開放時に押し潰され、クレーター状の模様となって残ることがあり、このような模様が残ると、接着剤層の厚みムラとなって最終的には半導体装置の歩留まりの低下、接合信頼性の低下等につながる。
【0007】
特にBG−NCFにおいては、接着フィルムと半導体ウエハとの密着性が不充分であると、バックグラインド工程で剥離、ウエハ割れ等の不良を生じたり、バックグラインド工程後、接着剤層を残して基材を剥離する際に基材側に接着剤が付着して、半導体ウエハから接着剤層が剥離(デラミネーション)したりしてしまうこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−016624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、接着フィルムと半導体ウエハとを貼り合わせる際のボイドを抑制し、高い接合信頼性を実現することのできる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、該半導体装置の製造方法により製造される半導体装置、該半導体装置の製造方法に用いられる接着フィルム、及び、接着フィルムの貼り合わせ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、樹脂基材層、粘着層及び接着剤層をこの順で有する接着フィルムを用いた半導体装置の製造方法であって、接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとを1cm以下のクリアランスで対向させる工程と、50〜100℃、10000Pa以下の加熱真空下、前記接着フィルムの接着剤層と前記半導体ウエハとを0.1〜1MPaの圧力で貼り合わせる工程と、接着剤層のみを残して前記接着フィルムの樹脂基材層と粘着層とを剥離し、接着剤層付きの半導体ウエハを得る工程と、前記接着剤層付きの半導体ウエハを接着剤層ごとダイシングして接着剤層付きの半導体チップに個片化する工程と、前記接着剤層付きの半導体チップを、接着剤層を介して基板又は他の半導体チップに熱圧着により実装する工程とを有し、前記接着フィルムの接着剤層は、半導体ウエハに貼り合わされる側の表面のプローブタック法で測定したタック値が、貼り合わせ温度において100gf/5mmφ以上である半導体装置の製造方法である。
以下、本発明を詳述する。
【0011】
本発明者は、樹脂基材層、粘着層及び接着剤層をこの順で有する接着フィルムにおいて、貼り合わせ温度における接着剤層のタック値を所定値以上とすることにより、接着フィルムと半導体ウエハとを貼り合わせる際のボイドを抑制できることを見出した。貼り合わせ温度における接着剤層のタック値を所定値以上とすることにより、仮に接着フィルムと半導体ウエハとを対向させた際に空気を巻き込んでしまったとしても、一旦接触した接着フィルムと半導体ウエハとの密着性が高いため、加熱真空下で接着フィルムと半導体ウエハとを剥離しながら空気層が膨張することを抑制できるものと推測される。
本発明者は、このような貼り合わせを行った後、樹脂基材層と粘着層とを剥離して接着剤層付きの半導体ウエハとし、その後、ダイシングによって得られる接着剤層付きの半導体チップを基板等に実装することにより、接合信頼性の高い半導体装置を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の半導体装置の製造方法では、まず、樹脂基材層、粘着層及び接着剤層をこの順で有する接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとを1cm以下のクリアランスで対向させる工程を行い、次いで、50〜100℃、10000Pa以下の加熱真空下、上記接着フィルムの接着剤層と上記半導体ウエハとを0.1〜1MPaの圧力で貼り合わせる工程を行う。
これらの工程は、真空ラミネーター(例えば、名機製作所社製の商品名「MVLP―500/600II」、ニチゴーモートン社製の商品名「V130」、タカトリ社製の商品名「ATM−812M」等)を用いて行われることが好ましい。上記のような加熱真空下、接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとを上記範囲の圧力で貼り合わせることにより、半導体ウエハ表面に存在するバンプ電極に追従性良く、ボイドを抑制しながら貼り合わせを行うことができる。
【0013】
なお、接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとを1cm以下のクリアランスで対向させるとは、接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとの間にクリアランスが存在していてもよいし、クリアランスが1cm以下と狭いことから、接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとが接触又は部分的に接触していてもよいことを意味する。
【0014】
上記接着フィルムは、樹脂基材層、粘着層及び接着剤層をこの順で有するが、接着剤層を保護する目的で、接着剤層の粘着層と接する側とは逆の面に、更に離型剤付き基材を有していてもよい。このような離型剤付き基材は、接着フィルムの使用前に剥離される。
上記離型剤付き基材は特に限定されないが、例えば、シリコン離型剤付PET基材等を用いることができる。
【0015】
上記接着フィルムは、樹脂基材層を有する。上記樹脂基材層として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなる層が挙げられる。なかでも、PETからなる層が好ましい。
【0016】
上記樹脂基材層の厚みの好ましい下限は5μm、好ましい上限は200μmである。厚みが5μm未満であると、接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとを貼り合わせた後、半導体ウエハを裏面から研削して薄化する際に半導体ウエハを保護する効果が低下することがある。厚みが200μmを超えると、接着剤層のみを残して樹脂基材層と粘着層とを剥離する際に半導体ウエハに過剰の応力を発生させることがある。厚みのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は50μmである。
【0017】
上記接着フィルムにおいては、上記樹脂基材層上に粘着層が積層されている。上記粘着層は、アクリルポリマーからなる層であることが好ましい。
上記アクリルポリマーとして、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを重合又は共重合してなる一般的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとこれと共重合することのできる他のビニルモノマーとの共重合体等からなる層が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとこれと共重合することのできる他のビニルモノマーとの共重合体が好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸との両方を意味する。
【0018】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、アルキル基の炭素数が2〜12であることが好ましく、具体的には例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記アクリルポリマーの重量平均分子量は、通常、20万〜200万程度である。
【0020】
また、上記粘着層は、架橋アクリルポリマーからなる層であることが好ましい。架橋アクリルポリマーとは、上述したようなアクリルポリマーの主鎖間に架橋構造が形成されたポリマーをいう。
上記架橋アクリルポリマーを得る方法として、例えば、架橋可能な官能基を有するアクリルポリマー(以下、官能基含有アクリルポリマーともいう)に架橋剤を配合する方法が挙げられる。
【0021】
上記官能基含有アクリルポリマーは、上述したようなアクリルポリマーの場合と同様にアルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にある(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを主モノマーとし、このような主モノマーと、官能基含有モノマーと、必要に応じてこれらと共重合することのできる他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られる、常温で粘着性を有するポリマーであることが好ましい。
【0022】
上記官能基含有モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー、(メタ)アクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
上記他の改質用モノマーとして、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般的にアクリルポリマーに用いられる各種モノマーが挙げられる。
【0023】
上記架橋剤として、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基と、官能基含有アクリルポリマーにおけるアルコール性水酸基とが反応して部分的な3次元構造を形成することにより、接着剤層のみを残して樹脂基材層と粘着層とを剥離する際に糊残りが生じにくいことから、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0024】
更に、上記粘着層は、架橋可能な官能基としてラジカル重合性不飽和基を有するアクリルポリマーからなる層であってもよい。
上記ラジカル重合性不飽和結合を有するアクリルポリマーを得る方法として、例えば、分子内に官能基を有する官能基含有アクリルポリマーを予め合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性不飽和基とを有する化合物を反応させる方法が挙げられる。
なお、粘着層がラジカル重合性不飽和基を有するアクリルポリマーを含有する場合、粘着層は、光重合開始剤又は熱重合開始剤を含有することが好ましい。
【0025】
上記粘着層の厚みの好ましい下限は2μm、好ましい上限は100μmである。厚みが2μm未満であると、接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとを貼り合わせた後、半導体ウエハを裏面から研削して薄化する際に半導体ウエハのバンプ電極を保護する効果が低下することがあり、貼り合わせ時及び研削時にバンプ電極の頂部が押し潰されてしまうことがある。厚みが100μmを超えると、接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとを貼り合わせた後、半導体ウエハを裏面から研削して薄化する際に半導体ウエハを保護する効果が低下し、半導体ウエハの厚みムラ、亀裂等を発生させることがある。厚みのより好ましい下限は4μm、更に好ましい下限は5μm、より好ましい上限は60μm、更に好ましい上限は50μmである。
【0026】
上記接着フィルムにおいては、上記粘着層上に接着剤層が積層されている。
上記接着剤層は、半導体ウエハに貼り合わされる側の表面のプローブタック法で測定したタック値が、貼り合わせ温度において100gf/5mmφ以上である。貼り合わせ温度における接着剤層のタック値をこのような範囲とすることにより、接着フィルムと半導体ウエハとを貼り合わせる際のボイドを抑制することができる。これは、貼り合わせ温度における接着剤層のタック値を上記範囲とすることにより、仮に接着フィルムと半導体ウエハとを対向させた際に空気を巻き込んでしまったとしても、一旦接触した接着フィルムと半導体ウエハとの密着性が高いため、加熱真空下で接着フィルムと半導体ウエハとを剥離しながら空気層が膨張することを抑制できるためと推測される。
【0027】
なお、貼り合わせ温度とは、接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとを貼り合わせる際の温度を意味する。即ち、貼り合わせ温度は、50〜100℃の範囲内の温度である。
【0028】
貼り合わせ温度におけるタック値が100gf/5mmφ未満であると、接着フィルムと半導体ウエハとを貼り合わせる際のボイドの抑制が不充分となる。これにより、接着剤層の厚みムラが生じたり、バックグラインド工程で不良を生じたり、バックグラインド工程後、接着剤層のみを残して樹脂基材層と粘着層とを剥離する際に半導体ウエハから接着剤層が剥離したりすることがある。貼り合わせ温度におけるタック値の好ましい下限は120gf/5mmφである。
【0029】
貼り合わせ温度におけるタック値の上限は特に限定されないが、好ましい上限は300gf/5mmφである。貼り合わせ温度におけるタック値が300gf/5mmφを超えると、25℃におけるタック値も高くなり、使用時まで接着剤層を保護するために接着剤層に積層された離型剤付き基材を剥離する際に不具合が生じることがある。また、個片化された接着剤層付きの半導体チップをピックアップして基板又は他の半導体チップに実装する際のピックアップ工程において、接着剤層がステージ上に付着してしまい、ピックアップ不良を招くことがある。貼り合わせ温度におけるタック値のより好ましい上限は250gf/5mmφである。
【0030】
また、上記接着剤層は、半導体ウエハに貼り合わされる側の表面のプローブタック法で測定したタック値が、25℃において10gf/5mmφ以下であることが好ましい。25℃におけるタック値が10gf/5mmφを超えると、使用時まで接着剤層を保護するために接着剤層に積層された離型剤付き基材を剥離する際に、離型剤付き基材側に接着剤が付着して、接着剤層が凝集破壊したり、粘着層と接着剤層との間で界面剥離したりすることがある。
【0031】
なお、プローブタック法で測定したタック値とは、プローブタック測定装置(例えば、タッキング試験機TAC−2(RHESCA社製))を用い、プローブ径5mm、接触速さ120mm/分、テストスピード600mm/分、接触荷重10mN/mm、接触時間10秒の測定条件で測定したタック値を意味する。
【0032】
貼り合わせ温度における接着剤層のタック値を上記範囲とするためには、接着剤層の溶融粘度を下げることが有効である。ただし、溶融粘度が低すぎると、接着剤層付きの半導体チップを基板又は他の半導体チップに熱圧着により実装する際に、接着剤層と基板又は他の半導体チップとの間にボイド(ボンディングボイド)を生じやすくなる。
このため、上記接着剤層は、最低溶融粘度が3000Pa・s以上30000Pa・s以下であることが好ましい。最低溶融粘度が3000Pa・s未満であると、接着剤層付きの半導体チップを基板又は他の半導体チップに熱圧着により実装する際に、接着剤層と基板又は他の半導体チップとの間にボイドを生じることがある。最低溶融粘度が30000Pa・sを超えると、貼り合わせ温度における接着剤層のタック値を上記範囲とすることができないことがある。また、接着剤層付きの半導体チップを基板又は他の半導体チップに熱圧着により実装する際に、充分な接着力が得られず、接合信頼性の低下につながることがある。最低溶融粘度のより好ましい下限は5000Pa・s、より好ましい上限は25000Pa・sである。
【0033】
なお、最低溶融粘度とは、溶融粘度測定装置(例えば、回転式レオメーターVAR−100(レオロジカ社製))を用い、昇温速度5℃/分、周波数1Hz、測定温度30〜180℃の測定条件で測定した最低溶融粘度を意味する。
【0034】
タック値及び最低溶融粘度を調整する方法としては、上記接着剤層に含まれる各成分の種類及び配合量を調整する方法が好ましい。なかでも、上記接着剤層は、エポキシ樹脂、側鎖にエポキシ基を有するアクリルポリマー、エポキシ硬化剤及び無機充填剤を含有することが好ましい。
【0035】
上記エポキシ樹脂は、多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂であることが好ましい。多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂を含有することにより、接着剤層の硬化物は、剛直で分子の運動が阻害されるため優れた機械的強度及び耐熱性を発現することができ、また、吸水性が低くなるため優れた耐湿性を発現することができる。
【0036】
上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂として、例えば、ジシクロペンタジエンジオキシド、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシ樹脂等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(以下、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂ともいう)、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリジジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(以下、ナフタレン型エポキシ樹脂ともいう)、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボネート等が挙げられる。なかでも、ジシクロペンタジエンジオキシドが好ましい。これらの多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂の重量平均分子量の好ましい下限は500、好ましい上限は2000である。重量平均分子量が500未満であると、接着剤層の硬化物の機械的強度、耐熱性、耐湿性等が充分に向上しないことがある。重量平均分子量が2000を超えると、接着剤層の硬化物が剛直になりすぎて、脆くなることがある。
【0038】
側鎖にエポキシ基を有するアクリルポリマーを含有することにより、接着剤層の硬化物は、優れた可撓性を発現することができる。従って、例えば、多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂と、側鎖にエポキシ基を有するアクリルポリマーとを併用する場合、接着剤層の硬化物は、多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂に由来する優れた機械的強度、耐熱性及び耐湿性と、側鎖にエポキシ基を有するアクリルポリマーに由来する優れた可撓性とを有することとなり、優れた耐冷熱サイクル性、耐ハンダリフロー性、寸法安定性及び接合信頼性等を実現することができる。
【0039】
上記側鎖にエポキシ基を有するアクリルポリマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートとからなる共重合体等が挙げられる。なかでも、グリシジル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートとからなり、エポキシ当量が約300g/eqである共重合体が好ましい。
【0040】
上記側鎖にエポキシ基を有するアクリルポリマーの重量平均分子量の好ましい下限は1万、好ましい上限は100万である。重量平均分子量が1万未満であると、接着剤層を形成することが困難となったり、接着剤層の硬化物の接着力が不足したりすることがある。重量平均分子量が100万を超えると、一定の厚みを有する接着剤層を形成することが困難となることがある。
【0041】
上記側鎖にエポキシ基を有するアクリルポリマーの配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対する好ましい下限が20重量部、好ましい上限が200重量部である。配合量が20重量部未満であると、接着剤層の硬化物の可撓性が低下することがある。配合量が200重量部を超えると、接着剤層の硬化物の機械的強度、耐熱性、耐湿性等が低下することがある。
【0042】
上記エポキシ硬化剤として、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、カチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。これらのエポキシ硬化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、熱硬化型酸無水物系硬化剤が好ましい。熱硬化型酸無水物系硬化剤は熱硬化速度が速いため、このような硬化剤を用いることにより、接着剤層付きの半導体チップを基板又は他の半導体チップに熱圧着により実装する際のボイドを効果的に抑制することができる。
【0043】
上記エポキシ硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂の官能基と等量反応するエポキシ硬化剤を用いる場合には、エポキシ樹脂の官能基量に対する好ましい下限が0.8当量、好ましい上限が1.2当量である。配合量が0.8当量未満であると、接着剤層を加熱しても、充分に硬化させることができないことがある。配合量が1.2当量を超えても、特に接着剤層の熱硬化性に寄与せず、過剰なエポキシ硬化剤が揮発することによってボイドの原因となることがある。
【0044】
上記接着剤層は、硬化速度又は硬化物の物性等を調整する目的で、更に、硬化促進剤を含有してもよい。
上記硬化促進剤として、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、硬化速度又は硬化物の物性等の調整をするための反応系の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。
【0045】
上記イミダゾール系硬化促進剤として、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール系硬化促進剤(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)、液状イミダゾール(商品名「FUJICURE 7000」、T&K TOKA社製)、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1―メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル、1−ベンジル−2−メチルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾ−ル、1−ベンジル−2−エチルイミダゾ−ル、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ−(シアノエトキシメチル)イミダゾ−ル、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等のイミダゾール化合物、及び、これらの誘導体等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記硬化促進剤の配合量は、エポキシ硬化剤100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が50重量部である。配合量が5重量部未満であると、接着剤層を加熱しても、充分に硬化させることができないことがある。配合量が50重量部を超えても、特に接着剤層の熱硬化性に寄与しない。
【0047】
上記無機充填剤として、例えば、シリカ粒子、ガラス粒子、アルミナ等が挙げられる。接着剤層に無機充填剤を配合することにより、接着剤層の硬化物の機械的強度を確保することができ、また、硬化物の線膨張率を低下させて、高い接合信頼性を実現することができる。なかでも、シリカ粒子が好ましく、特に、流動性、接合信頼性等の点から球状シリカが好ましい。
【0048】
上記無機充填剤の平均粒子径の好ましい下限は0.01μm、好ましい上限は1μmである。平均粒子径が0.01μm未満であると、接着剤層を形成するための接着剤溶液の粘度が増大し、流動性及び塗工性が低下することがある。また、接着剤溶液の粘度が増大すると、接着フィルムの半導体ウエハ表面に対する追従性が低下し、接着フィルムと半導体ウエハとを貼り合わせる際のボイドの抑制が不充分となることがある。平均粒子径が1μmを超えると、接着剤層の透明性が損なわれ、接着剤層付きの半導体チップを基板又は他の半導体チップに熱圧着により実装する際に、半導体チップ上のバンプ電極及びアライメントマークを認識できないことがある。平均粒子径のより好ましい下限は0.02μm、より好ましい上限は0.5μm、更に好ましい下限は0.05μm、更に好ましい上限は0.3μmである。
なお、接着剤溶液の塗工性の向上と、接着剤層の透明性の向上とを共に達成するために、異なる平均粒子径を有する2種類以上の無機充填剤を併用してもよい。
【0049】
上記接着剤層の厚みは、バンプ電極の高さに応じて調整することが好ましく、バンプ電極の高さと同等又はそれ以下の厚みであることが好ましいが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は100μmである。厚みが5μm未満であると、接着剤層の硬化物の接着力が不足することがある。厚みが100μmを超えると、接着剤層付きの半導体チップを基板又は他の半導体チップに熱圧着により実装したときの実装体が厚くなりすぎることがある。
【0050】
上記接着フィルムを製造する方法として、例えば、樹脂基材層と粘着層とからなるフィルムを製造した後、接着剤層となる接着剤組成物を適当な溶媒で希釈して得られた接着剤溶液を粘着層上に塗工し、乾燥させる方法や、樹脂基材層と粘着層とからなるフィルムを製造した後、接着剤層となる接着剤組成物を適当な溶媒で希釈して得られた接着剤溶液を離型剤付き基材上に塗工して乾燥させ、その後、粘着層と接着剤層とを貼り合わせる方法等が挙げられる。
このような本発明の半導体装置の製造方法に用いられる接着フィルムもまた、本発明の1つである。
【0051】
上記樹脂基材層と粘着層とからなるフィルムを製造する方法として、例えば、樹脂基材層となるフィルムの少なくとも一方の面にラミネーターを用いて粘着層となるフィルムを積層する方法、共押出装置を利用した成形による方法、樹脂基材層上に粘着層となる樹脂の塗液を塗布し、乾燥する方法等が挙げられる。
上記接着剤溶液を粘着層上に塗工する方法として、例えば、コンマコート、グラビアコート、ダイコート等のコーティング法や、キャスティング法が挙げられる。
【0052】
上記半導体ウエハは特に限定されず、例えば、シリコン、ガリウム砒素等の半導体からなり、金、銅、銀−錫ハンダ、アルミニウム、ニッケル等からなるバンプ電極を表面に有する半導体ウエハが挙げられる。
【0053】
本発明の半導体装置の製造方法では、上記接着フィルムの接着剤層と上記半導体ウエハとを貼り合わせる工程の後、更に、半導体ウエハを裏面から研削して薄化する工程を行ってもよい。
上記半導体ウエハを研削する方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、市販の研削装置(例えば、DFG8540(Disco社製))を用いて2400rpmの回転で10〜0.1μm/sの研削量の条件にて研削を行い、最終的にはCMPで仕上げる方法等が挙げられる。
【0054】
本発明の半導体装置の製造方法では、次いで、接着剤層のみを残して上記接着フィルムの樹脂基材層と粘着層とを剥離し、接着剤層付きの半導体ウエハを得る工程を行う。
接着剤層のみを残して樹脂基材層と粘着層とを剥離する方法として、例えば、上記半導体ウエハの上記接着フィルムが貼り合わされていない側の表面にダイシングテープを貼り合わせた後、接着剤層のみを残して樹脂基材層と粘着層とを剥離する方法等が挙げられる。
【0055】
本発明の半導体装置の製造方法では、次いで、上記接着剤層付きの半導体ウエハを接着剤層ごとダイシングして接着剤層付きの半導体チップに個片化する工程を行う。
上記接着剤層付きの半導体ウエハを接着剤層ごとダイシングする方法として、例えば、従来公知の砥石、レーザー等を用いて切断分離する方法等が挙げられる。
【0056】
本発明の半導体装置の製造方法では、次いで、上記接着剤層付きの半導体チップを、接着剤層を介して基板又は他の半導体チップに熱圧着により実装する工程を行う。
なお、本発明の半導体装置の製造方法では、基板上に半導体チップを実装する場合と、基板上に実装されている1以上の半導体チップ上に更に半導体チップを実装する場合との両方を含む。
【0057】
本発明の半導体装置の製造方法では、上記接着剤層付きの半導体チップを基板又は他の半導体チップに熱圧着により実装した後、更に、接着剤層をより完全に硬化させるために加熱を行ってもよく、これにより、より安定した接合状態を実現し、接合信頼性に優れた半導体装置を得ることができる。
【0058】
なお、上記の説明においては、接着剤層付きの半導体ウエハを接着剤層ごとダイシングして接着剤層付きの半導体チップに個片化した後、接着剤層付きの半導体チップを基板又は他の半導体チップに熱圧着により実装したが、その他の態様として、接着剤層付きの半導体ウエハを、接着剤層を介して他の半導体ウエハに積層し、得られた積層体をダイシングすることで半導体チップの実装体を得てもよい。
【0059】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、接着フィルムと半導体ウエハとを貼り合わせる際のボイドを抑制し、接合信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
このような本発明の半導体装置の製造方法により得られた半導体装置もまた、本発明の1つである。
【0060】
また、樹脂基材層、粘着層及び接着剤層をこの順で有する接着フィルムの貼り合わせ方法であって、接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとを1cm以下のクリアランスで対向させる工程と、50〜100℃、10000Pa以下の加熱真空下、前記接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとを0.1〜1MPaの圧力で貼り合わせる工程とを有し、前記接着フィルムの接着剤層は、半導体ウエハに貼り合わされる側の表面のプローブタック法で測定したタック値が、貼り合わせ温度において100gf/5mmφ以上である接着フィルムの貼り合わせ方法もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0061】
本発明によれば、接着フィルムと半導体ウエハとを貼り合わせる際のボイドを抑制し、高い接合信頼性を実現することのできる半導体装置の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、該半導体装置の製造方法により製造される半導体装置、該半導体装置の製造方法に用いられる接着フィルム、及び、接着フィルムの貼り合わせ方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0063】
以下に実施例及び比較例で接着剤層に使用した材料を示す。
(エポキシ樹脂)
エピクロンHP−7200(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、DIC社製)
エピクロンHP−4710(ナフタレン型エポキシ樹脂、DIC社製)
(側鎖にエポキシ基を有するアクリルポリマー)
マープルーフG−2050(日油社製)
(エポキシ硬化剤)
YH−309(酸無水物、三菱化学社製)
(硬化促進剤)
FUJICURE 7000(液状イミダゾール化合物、T&K TOKA社製)
(無機充填剤)
SE1050−SPE(球状シリカ、平均粒径0.3μm、アドマテックス社製)
YA050C−MJF(球状シリカ、平均粒径0.05μm、アドマテックス社製)
(シランカップリング剤)
KBM−573(フェニルアミノシランカップリング剤、信越化学工業社製)
(その他)
AC−4030(応力緩和ゴム系高分子、ガンツ化成社製)
【0064】
(実施例1)
(1)接着フィルムの製造
樹脂基材層としてのPETフィルム(テイジンテトロンフィルムHPE、厚さ50μm、帝人デュポンフィルム社製)の片側に、アクリルポリマー(SKダイン1495C、綜研化学社製)100重量部に架橋剤としてコロネートL−45(イソシアネート系架橋剤、日本ポリウレタン社製)を1.6重量部配合した塗液を、コンマコーターを用いて塗布し、厚さ30μmの粘着層を形成した。
次いで、表1の組成に従って、各材料をMEKと混合し、ホモディスパーを用いて攪拌混合して接着剤組成物の50重量%溶液を調製した。シリコン離型剤付PETフィルム(A−31、厚さ50μm、帝人デュポン社製)のシリコン離型剤側に、コンマコート法により、得られた接着剤組成物の50重量%溶液を乾燥後の厚さが60μmとなるように塗工し、100℃で5分間乾燥させて接着剤層を形成した。
得られた粘着層と接着剤層とを貼り合せることにより、接着フィルムを得た。
【0065】
貼り合わせ温度及び25℃における接着剤層のタック値と、接着剤層の最低溶融粘度とを表1に示した。
なお、タック値は、プローブタック測定装置(タッキング試験機TAC−2(RHESCA社製))を用い、プローブ径5mm、接触速さ120mm/分、テストスピード600mm/分、接触荷重10mN/mm、接触時間10秒の測定条件で測定した。また、最低溶融粘度は、溶融粘度測定装置(回転式レオメーターVAR−100(レオロジカ社製))を用い、昇温速度5℃/分、周波数1Hz、測定温度30〜180℃の測定条件で測定した。
【0066】
(2)半導体装置の製造
直径20cm、厚み750μmであり、表面に平均高さ80μm、直径110μmの球形のAg−Snハンダボールを250μmピッチで多数有する半導体ウエハを用意した。接着フィルムの接着剤層を保護するシリコン離型剤付PETフィルムを剥がし、真空ラミネーター(商品名「MVLP−500/600II」、名機製作所社製)を用いて、接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハのハンダボールが形成された面とを4mmのクリアランスで対向させ、80℃、200Pa(真空到達時間30秒)の加熱真空下、0.5MPaの圧力、30秒間の条件で接着剤層と半導体ウエハとを貼り合わせた。
次いで、これを研削装置に取りつけ、半導体ウエハをウエハ厚さが約100μmになるまで裏面から研削した。このとき、研削の摩擦熱により半導体ウエハの温度が上昇しないように、半導体ウエハに水を散布しながら作業を行った。研削後は、CMPプロセスによりアルカリのシリカ分散水溶液による研磨を行うことにより、鏡面化加工を行った。
【0067】
研磨装置から研削後の半導体ウエハを取り外し、半導体ウエハの接着フィルムが貼り合わされていない側の表面にダイシングテープ(商品名「PEテープ♯6318−B」、積水化学工業社製)を貼り合わせ、ダイシングフレームにマウントした。次いで、接着剤層のみを残して接着フィルムの樹脂基材層と粘着層とを剥離し、接着剤層付きの半導体ウエハを得た。ダイシング装置(商品名「DFD651」、ディスコ社製)を用いて、送り速度50mm/秒で、接着剤層付きの半導体ウエハを接着剤層ごと10mm×10mmのチップサイズにダイシングして、接着剤層付きの半導体チップに個片化した。得られた接着剤層付きの半導体チップを、熱風乾燥炉内にて80℃で10分間乾燥後、ボンディング装置(商品名「DB−100」、澁谷工業社製)を用いて圧力0.15MPa、温度230℃で10秒間圧着して基板上に実装し、半導体装置を得た。
【0068】
(実施例2〜5及び比較例1〜2)
表1の組成に従って接着剤組成物の調製を行った以外は実施例1と同様にして、接着フィルム及び半導体装置の製造を行った。
【0069】
<評価>
実施例及び比較例で得られた半導体装置等について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0070】
(1)ラミボイド評価
接着フィルムと半導体ウエハとを貼り合わせた後の状態を、目視で観察した。ラミボイドによるクレーター状の模様が発生していた場合を×、クレーター状の模様がなく、接着フィルムが半導体ウエハ全面に均一に貼り合わされていた場合を○とした。
【0071】
(2)ボンディングボイド評価
得られた半導体装置について、超音波映像装置(日立建機社製)によりボイド観察を行った。半導体チップ面積に対するボイド発生部分の面積が5%未満であった場合を○、5%以上10%未満であった場合を△、10%以上であった場合を×とした。
【0072】
(3)温度サイクル試験
得られた半導体装置について、−55℃、9分間と、125℃、9分間とを1サイクルとする温度サイクル試験(30分で1サイクル)を行い、1000サイクル後の半導体装置について、超音波探傷装置(商品名「SAT」、SONOSCAN社製)を用いて層間が剥離しているか否かについて観察を行った。その後、半導体装置の接着剤層を混酸で除去し、半導体チップ表面の窒化シリコン保護膜に割れが生じているか否かについて観察を行った。
層間の剥離及び保護膜の割れが観察されなかった場合を○と、層間の剥離又は保護膜の割れがわずかに観察された場合を△と、層間に目立った剥離が認められるか、又は、保護膜に目立った割れが観察された場合を×とした。
【0073】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、接着フィルムと半導体ウエハとを貼り合わせる際のボイドを抑制し、高い接合信頼性を実現することのできる半導体装置の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、該半導体装置の製造方法により製造される半導体装置、該半導体装置の製造方法に用いられる接着フィルム、及び、接着フィルムの貼り合わせ方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材層、粘着層及び接着剤層をこの順で有する接着フィルムを用いた半導体装置の製造方法であって、
接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとを1cm以下のクリアランスで対向させる工程と、
50〜100℃、10000Pa以下の加熱真空下、前記接着フィルムの接着剤層と前記半導体ウエハとを0.1〜1MPaの圧力で貼り合わせる工程と、
接着剤層のみを残して前記接着フィルムの樹脂基材層と粘着層とを剥離し、接着剤層付きの半導体ウエハを得る工程と、
前記接着剤層付きの半導体ウエハを接着剤層ごとダイシングして接着剤層付きの半導体チップに個片化する工程と、
前記接着剤層付きの半導体チップを、接着剤層を介して基板又は他の半導体チップに熱圧着により実装する工程とを有し、
前記接着フィルムの接着剤層は、半導体ウエハに貼り合わされる側の表面のプローブタック法で測定したタック値が、貼り合わせ温度において100gf/5mmφ以上である
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
接着フィルムの接着剤層は、最低溶融粘度が3000Pa・s以上30000Pa・s以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
接着フィルムの接着剤層は、エポキシ樹脂、側鎖にエポキシ基を有するアクリルポリマー、エポキシ硬化剤及び無機充填剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとを貼り合わせる工程の後、更に、半導体ウエハを裏面から研削して薄化する工程を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の半導体装置の製造方法により製造されることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4記載の半導体装置の製造方法に用いられることを特徴とする接着フィルム。
【請求項7】
樹脂基材層、粘着層及び接着剤層をこの順で有する接着フィルムの貼り合わせ方法であって、
接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとを1cm以下のクリアランスで対向させる工程と、
50〜100℃、10000Pa以下の加熱真空下、前記接着フィルムの接着剤層と半導体ウエハとを0.1〜1MPaの圧力で貼り合わせる工程とを有し、
前記接着フィルムの接着剤層は、半導体ウエハに貼り合わされる側の表面のプローブタック法で測定したタック値が、貼り合わせ温度において100gf/5mmφ以上である
ことを特徴とする接着フィルムの貼り合わせ方法。

【公開番号】特開2013−98403(P2013−98403A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240904(P2011−240904)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】