半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラム
【課題】低温領域において適正な特性を有するSiC系の膜を形成できる半導体装置の製造方法、基板処理方法,基板処理装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】基板を処理室内に収容する工程と、加熱された処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して、有機シリコン系ガスを処理室内に封じ込める工程と、有機シリコン系ガスを処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、処理室内を排気する工程と、を含むサイクルを所定回数行う。
【解決手段】基板を処理室内に収容する工程と、加熱された処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して、有機シリコン系ガスを処理室内に封じ込める工程と、有機シリコン系ガスを処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、処理室内を排気する工程と、を含むサイクルを所定回数行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラムに関し、特に、SiC等のSiC系の膜を成膜する工程を備える半導体装置の製造方法、基板処理方法、当該処理に好適に使用される基板処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
SiC等のSiC系の膜は、エッチング耐性および酸化耐性の高い絶縁膜として、トランジスタのゲート電極周りや配線構造に適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−156664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体装置(デバイス)の微細化、高性能化の要求がますます高まってきており、この要求を満たすために、半導体装置の製造技術の低温化が求められている。これに伴い、SiC系の膜の成膜温度の低温化も求められている。
【0005】
しかしながら、低温領域においてSiC系の膜の成膜を行う場合、適正な特性を有するSiC系の膜を得るのが難しかった。
【0006】
従って、本発明の主な目的は、低温領域において適正な特性を有するSiC系の膜を形成できる半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う基板処理方法が提供される。
【0009】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内を加熱するヒータと、
前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給する有機シリコン系ガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
基板が収容された加熱された状態の前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する処理を行い、その際、前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める処理と、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する処理と、前記処理室内を排気する処理と、を含むサイクルを所定回数行うように、前記ヒータ、前記有機シリコン系ガス供給系および前記排気系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0010】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内に基板を収容する手順と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める手順と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する手順と、
前記処理室内を排気する手順と、
を含むサイクルを所定回数実行させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低温領域において適正な特性を有するSiC系の膜を形成できる半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【図2】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図1のA−A線断面図で示す図である。
【図3】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態の成膜シーケンスを説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態の成膜シーケンスの他の例を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態の成膜シーケンスのさらに他の例を説明するための図である。
【図7】本発明の実施形態の成膜シーケンスのさらに他の例を説明するための図である。
【図8】本発明の実施形態の成膜シーケンスのさらに他の例を説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態の成膜シーケンスのさらに他の例を説明するための図である。
【図10】本発明の実施形態の成膜シーケンスのさらに他の例を説明するための図である。
【図11】本発明の実施の形態で好適に用いられる他の基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【図12】本発明の実施形態で好適に用いられる他の基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図11のA−A線断面図で示す図であって、インナチューブと、ボートと、ウエハだけを抜き出して示す部分断面図である。
【図13】本発明の実施例1で形成したSiC膜中のシリコン(Si)、炭素(C)および酸素(O)の濃度の深さ方向プロファイルを示す図である。
【図14】本発明の実施例2で形成したSiC膜の断面TEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0014】
本発明者が、シリコン系ガスを使用してSiC等のSiC系の膜を低温で成膜することを鋭意研究した結果、炭素を含むシリコン系ガス、すなわち有機シリコン系ガスと水素含有ガスとを用いれば、低温領域においても、ノンプラズマでSiC系の膜を形成できることを見出した。すなわち、低温領域においても、有機シリコン系ガスを熱的に分解させてラジカル等の活性状態とし、気相中または基板上で適正に反応を生じさせることが可能であり、それにより適正な特性を有するSiC系の膜を形成できることを見出した。本発明の好ましい実施の形態は、本発明者が見出したこれらの知見に基づくものである。
【0015】
なお、本明細書では、SiC系の膜という用語は、少なくともシリコン(Si)と炭素(C)とを含む膜を意味しており、これには、シリコン炭化膜(SiC膜)の他、例えば、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)等も含まれる。
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について、より詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の好ましい実施の形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉を説明するための概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示している。図2は本発明の好ましい実施の形態で好適に用いられる縦型処理炉を説明するための概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA−A線横断面図で示している。
【0018】
図1に示されているように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。なお、ヒータ207は、後述するようにガスを熱で分解させて活性化させる活性化機構としても機能する。
【0019】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0020】
処理室201内には、第1ノズル249a、第2ノズル249b、第3ノズル249c、第4ノズル249dが配置されており、それぞれが反応管203の下部を貫通するように設けられている。第1ノズル249a、第2ノズル249b、第3ノズル249c、第4ノズル249dには、第1ガス供給管232a、第2ガス供給管232b、第3ガス供給管232c、第4ガス供給管232dが、それぞれ接続されている。このように、反応管203には4本のノズル249a、249b、249c、249dと、4本のガス供給管232a、232b、232c、232dが設けられており、処理室201内へ複数種類、ここでは4種類のガスを供給することができるように構成されている。なお、反応管203の下方に、反応管203を支持する金属製のマニホールドを設け、各ノズルを、この金属製のマニホールドの側壁を貫通するように設けるようにしてもよい。この場合、この金属製のマニホールドに、さらに後述する排気管231を設けるようにしてもよい。なお、この場合であっても、排気管231を金属製のマニホールドではなく、反応管203の下部に設けるようにしてもよい。このように、処理炉の炉口部を金属製とし、この金属製の炉口部にノズル等を取り付けるようにしてもよい。
【0021】
第1ガス供給管232aには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a、及び開閉弁であるバルブ243aが設けられている。また、第1ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、第1不活性ガス供給管232eが接続されている。この第1不活性ガス供給管232eには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241e、及び開閉弁であるバルブ243eが設けられている。また、第1ガス供給管232aの先端部には、上述の第1ノズル249aが接続されている。第1ノズル249aは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第1ノズル249aは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。第1ノズル249aはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部は反応管203の下部側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。第1ノズル249aの側面にはガスを供給するガス供給孔250aが設けられている。ガス供給孔250aは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第1ガス供給管232a、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル249aにより第1ガス供給系が構成される。また、主に、第1不活性ガス供給管232e、マスフローコントローラ241e、バルブ243eにより、第1不活性ガス供給系が構成される。
【0022】
第2ガス供給管232bには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241b、及び開閉弁であるバルブ243bが設けられている。また、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、第2不活性ガス供給管232fが接続されている。この第2不活性ガス供給管232fには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241f、及び開閉弁であるバルブ243fが設けられている。また、第2ガス供給管232bの先端部には、上述の第2ノズル249bが接続されている。第2ノズル249bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第1ノズル249aは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。第2ノズル249bはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部は反応管203の下部側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。第2ノズル249bの側面にはガスを供給するガス供給孔250bが設けられている。ガス供給孔250bは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第2ガス供給管232b、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル249bにより第2ガス供給系が構成される。また、主に、第2不活性ガス供給管232f、マスフローコントローラ241f、バルブ243fにより第2不活性ガス供給系が構成される。
【0023】
第3ガス供給管232cには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241c、及び開閉弁であるバルブ243cが設けられている。また、第3ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、第3不活性ガス供給管232gが接続されている。この第3不活性ガス供給管232gには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241g、及び開閉弁であるバルブ243gが設けられている。また、第3ガス供給管232cの先端部には、上述の第3ノズル249cが接続されている。第3ノズル249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第1ノズル249aは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。第3ノズル249cはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部は反応管203の下部側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。第3ノズル249cの側面にはガスを供給するガス供給孔250cが設けられている。ガス供給孔250cは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第3ガス供給管232c、マスフローコントローラ241c、バルブ243c、第3ノズル249cにより第3ガス供給系が構成される。また、主に、第3不活性ガス供給管232g、マスフローコントローラ241g、バルブ243gにより第3不活性ガス供給系が構成される。
【0024】
第4ガス供給管232dには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241d、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。また、第4ガス供給管232dのバルブ243dよりも下流側には、第4不活性ガス供給管232hが接続されている。この第4不活性ガス供給管232hには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241h、及び開閉弁であるバルブ243hが設けられている。また、第4ガス供給管232dの先端部には、上述の第4ノズル249dが接続されている。第4ノズル249dは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第1ノズル249aは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。第4ノズル249dはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部は反応管203の下部側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。第4ノズル249dの側面にはガスを供給するガス供給孔250dが設けられている。ガス供給孔250dは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250dは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第4ガス供給管232d、マスフローコントローラ241d、バルブ243d、第4ノズル249dにより第4ガス供給系が構成される。また、主に、第4不活性ガス供給管232h、マスフローコントローラ241h、バルブ243hにより第4不活性ガス供給系が構成される。
【0025】
このように、本実施形態におけるガス供給の方法は、反応管203の内壁と、積載された複数枚のウエハ200の端部とで定義される円弧状の縦長の空間内に配置したノズル249a、249b、249c、249dを経由してガスを搬送し、ノズル249a、249b、249c、249dにそれぞれ開口されたガス供給孔250a、250b、250c、250dからウエハ200の近傍で初めて反応管203内にガスを噴出させており、反応管203内におけるガスの主たる流れをウエハ200の表面と平行な方向、すなわち水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される薄膜の膜厚を均一にできる効果がある。なお、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れるが、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0026】
第1ガス供給管232aからは、原料ガスとしての有機シリコン系ガスが、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル249aを介して処理室201内に供給される。
【0027】
第2ガス供給管232bからは、還元ガスとしての水素含有ガスが、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル249bを介して処理室201内に供給される。
【0028】
第3ガス供給管232cからは、酸化ガスとしての酸素含有ガスが、マスフローコントローラ241c、バルブ243c、第3ノズル249cを介して処理室201内に供給される。
【0029】
第4ガス供給管232dからは、窒化ガスとしての窒素含有ガスが、マスフローコントローラ241d、バルブ243d、第4ノズル249dを介して処理室201内に供給される。
【0030】
不活性ガス供給管232e、232f、232g、232hからは、例えば窒素(N2)ガスが、それぞれマスフローコントローラ241e、241f、241g、241h、バルブ243e、243f、243g、243h、ガス供給管232a、232b、232c、232d、ガスノズル249a、249b、249c、249dを介して処理室201内に供給される。
【0031】
なお、例えば各ガス供給管から上述のようなガスをそれぞれ流す場合、第1ガス供給系により有機シリコン系ガス供給系が構成される。また、第2ガス供給系により水素含有ガス供給系が構成される。また、第3ガス供給系により酸素含有ガス供給系が構成される。また、第4ガス供給系により窒素含有ガス供給系が構成される。
【0032】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。図2に示すように、横断面視において、排気管231は、反応管203の第1ノズル249aのガス供給孔250a、第2ノズル249bのガス供給孔250b、第3ノズル249cのガス供給孔250c、および、第4ノズル249dのガス供給孔250dが設けられる側と対向する側、すなわちウエハ200を挟んでガス供給孔250a、250b、250c、250dとは反対側に設けられている。また、図1に示すように縦断面視において、排気管231は、ガス供給孔250a、250b、250c、250dが設けられる箇所よりも下方に設けられている。この構成により、ガス供給孔250a、250b、250c、250dから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向、すなわちウエハ200の表面と平行な方向に向かって流れた後、下方に向かって流れ、排気管231より排気されることとなる。処理室201内におけるガスの主たる流れが水平方向へ向かう流れとなるのは上述の通りである。排気管231には処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。なお、APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することにより、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することにより、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により排気系が構成される。なお、真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。排気系は、真空ポンプ246を作動させつつ、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ244の弁の開度を調節することにより、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。
【0033】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボートを回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255はシールキャップ219を貫通して、後述するボート217に接続されており、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート217を処理室201内に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0034】
基板支持具としてのボート217は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなり、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に支持するように構成されている。なおボート217の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる断熱部材218が設けられており、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなるよう構成されている。なお、断熱部材218は、石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる複数枚の断熱板と、これらを水平姿勢で多段に支持する断熱板ホルダとにより構成してもよい。
【0035】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル249a、249b、249c、249dと同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0036】
図3に示されているように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0037】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0038】
I/Oポート121dは、上述のマスフローコントローラ241a、241b、241c、241d、241e、241f、241g、241h、バルブ243a、243b、243c、243d、243e、243f、243g、243h、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0039】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU121aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、マスフローコントローラ241a、241b、241c、241d、241e、241f、241g、241hによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a、243b、243c、243d、243e、243f、243g、243hの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作及び圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0040】
なお、コントローラ121は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123を用意し、係る外部記憶装置123を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ121を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置123を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置123を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0041】
次に、上記基板処理装置を使用して、処理室201内に有機シリコン系ガスと水素含有ガスとを供給して基板としてのウエハ200上にシリコンおよび炭素を含む膜(SiC系の膜)を形成する方法について説明する。本実施の形態では、有機シリコン系ガスとして1,4−ジシラブタン(Si2C2H10、略称:DSB)ガスを使用し、水素含有ガスとして水素(H2)ガスを使用して、ノンプラズマの雰囲気下で、シリコンおよび炭素を含む膜としてシリコン炭化膜(SiC膜)を形成する例について説明する。有機シリコン系ガスは、SiC膜を形成する際のシリコン源(シリコンソース)として作用すると共に炭素源(カーボンソース)としても作用する。本実施の形態において有機シリコン系原料として用いるDSBは有機シラン、すなわち、有機シラン化合物の一種であり、シリコン元素、炭素元素および水素元素の3元素のみで構成される原料ともいえる。DSBは有機シリコン系原料ということもでき、有機シラン原料もしくは有機シラン化合物原料ということもできる。なお、本実施の形態では、ウエハ200として半導体シリコンウエハを使用し、上記シリコンおよび炭素を含む膜(SiC系の膜)の形成は、半導体装置の製造工程の一工程として行われる。なお、SiC等のSiC系の膜は、エッチング耐性および酸化耐性の高い絶縁膜として、トランジスタのゲート電極周りや配線構造に好適に用いられる。
【0042】
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)され、複数枚のウエハ200は処理室201内に収容される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0043】
次に、真空ポンプ246を作動させた状態でAPCバルブ244を徐々に全開にし、真空ポンプ246によって処理室201内を真空排気して、処理室201内のベース圧力(真空度)を1Pa以下にする。なお、真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。回転機構267により、ボート217を回転させることで、ウエハ200を回転させ(ウエハ回転)、好ましくは、例えば、1rpmから10rpmの範囲内でその回転数を一定に維持する。なお、回転機構267によるボート217及びウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。ヒータ207によって処理室201内を加熱することで、処理室201内の温度を所望の温度として、ウエハ200の温度を、好ましくは、例えば、350℃〜500℃の範囲内の所望の温度に維持する。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への電力供給具合がフィードバック制御される(温度調整)。なお、ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0044】
その後、不活性ガス供給管232e、232fから、好ましくは、例えば、毎分数リットルの窒素(N2)ガスを、マスフローコントローラ241e、241f、バルブ243e、243f、ガス供給管232a、232b、ガスノズル249a、249bを介して処理室201内に供給して、任意の圧力にて窒素パージを数分間実施し、その後、窒素ガスの供給を止め、窒素パージを終える。
【0045】
その後、APCバルブ244を全開とした状態で、真空ポンプ246によって処理室201内を真空排気して、処理室201内のベース圧力を、好ましくは、例えば、1Pa以下にする。処理室201内の圧力が1Pa以下になったところで、APCバルブ244を完全に閉じて、閉じ込め状態を開始する。なお、このとき、APCバルブ244を完全に閉じることなく僅かに開いておくようにしてもよい。
【0046】
ウエハ200の温度を、好ましくは、例えば、350℃〜500℃の範囲内の所望の温度に維持し、好ましくは、例えば、1rpmから10rpmの範囲内の所望の回転数でウエハ200の回転を維持し、APCバルブ244を完全に閉じた状態で、有機シリコン系ガスとしてDSBガスを、第1ガス供給管232aから、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル249aを介して処理室201内に導入する。同時に、水素含有ガスとしてH2ガスを、第2ガス供給管232bから、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル249bを介して処理室201内に導入する。これらの操作により、DSBガスおよびH2ガスを処理室201内に封じ込める(工程A)。H2ガスは、好ましくは、例えば、0.1slm〜5slmの範囲内の所望の流量で導入し、DSBガスは、好ましくは、例えば、0.1slm〜1slmの範囲内の所望の流量で導入する。H2ガスの供給時間は、好ましくは、例えば、1秒〜60秒の範囲内の所望の時間とし、DSBガスの供給時間は、好ましくは、例えば、1秒〜60秒の範囲内の所望の時間とする。そして、DSBガスおよびH2ガスを、好ましくは、例えば、200Pa〜5000Paの範囲内の所望の圧力で処理室201内に封じ込める。
【0047】
その後、DSBガスおよびH2ガスの処理室201内への供給を停止して、APCバルブ244を完全に閉じた状態で、DSBガスおよびH2ガスの処理室201内への封じ込め状態を維持する(工程B)。DSBガスおよびH2ガスの供給を停止する時間、すなわち、DSBガスおよびH2ガスの処理室201内への封じ込め状態を維持する時間は、好ましくは、例えば、1分〜90分の範囲内の所望の時間とする。
【0048】
なお、工程A、または、工程Aおよび工程Bでは、APCバルブ244を完全に閉じることなく僅かに開いておくことで、各ガスを僅かに排気してガスの流れを僅かに形成するようにしてもよい。このとき、DSBガスおよびH2ガスの処理室201内への供給も、完全に停止させることなく継続させるようにしてもよい。この場合、例えば、工程A、または、工程Aおよび工程Bにおいて、各ガスを処理室201内へ供給しつつ処理室201内から排気し、その際、各ガスの処理室201内からの排気レートを各ガスの処理室201内への供給レートよりも小さくした状態を維持することで、各ガスを僅かに排気するようにしてもよい。すなわち、工程A、または、工程Aおよび工程Bにおいて、トータルでの処理室201内からのガス排気レート(所定の圧力における単位時間あたりのトータルでのガス排気量、すなわち、排気流量(体積流量))をトータルでの処理室201内へのガス供給レート(所定の圧力における単位時間あたりのトータルでのガス供給量、すなわち、供給流量(体積流量))よりも小さくした状態を維持することで、各ガスを僅かに排気するようにしてもよい。この場合、工程Aにおいて、各ガスを処理室201内へ供給しつつ処理室201内から排気し、各ガスの処理室201内からの排気レートを各ガスの処理室201内への供給レートよりも小さくした状態を形成し、工程Bにおいて、その状態を維持することとなる。
【0049】
このように各ガスを僅かに排気するようにしたり、各ガスを供給しつつ僅かに排気するようにしても、APCバルブ244を完全に閉じる場合と実質的に同様な封じ込め状態を形成することができる。よって本明細書ではこのように各ガスを僅かに排気するような状態や、各ガスを供給しつつ僅かに排気するような状態をも、封じ込めた状態に含めて考えることとしている。すなわち、本明細書において「封じ込め」という言葉を用いた場合は、APCバルブ244を完全に閉じて処理室201内の排気を停止する場合の他、APCバルブを完全に閉じることなく僅かに開き、各ガスの処理室201内からの排気レートを各ガスの処理室201内への供給レートよりも小さくした状態を維持し、各ガスを僅かに排気する場合をも含むこととしている。
【0050】
工程Aおよび工程Bを実施する過程において、ウエハ200上にSiCが成長し、その結果、ウエハ200上にSiC膜が形成されることとなる。そして、工程Aと工程Bとを所定回数実施した後、APCバルブ244を全開にして、処理室201内を速やかに排気する(工程C)。
【0051】
上記の工程A、工程B、工程Cを含むサイクル、すなわち、工程Aと工程Bとを所定回数実施する工程(工程D)と、工程Cとで構成されるサイクルを、ウエハ200上に形成されるSiC膜の膜厚が所望の膜厚になるまで所定回数実施する。このサイクルを1回行うことで所望の膜厚のSiC膜を形成するようにしてもよく、また、このサイクルを複数回行うことで所望の膜厚のSiC膜を形成するようにしてもよい。なお、所望の膜厚が比較的厚い場合は、このサイクルを複数回繰り返すのが好ましい。この場合、1サイクルあたりに比較的薄いSiC膜を形成し、この薄いSiC膜を積層するようにして所望の膜厚のSiC膜を成膜することができ、比較的厚い膜厚のSiC膜を形成する場合でも、良好なステップカバレッジ特性を得ることができる。本実施の形態のサイクル・シーケンスの一例を図4に示す。なお、図4は、工程Aと工程Bとを3回実施する工程(工程D)と、工程Cとで構成されるサイクルを、複数回繰り返す例を示している。
【0052】
その後、不活性ガス供給管232e、232fから、好ましくは、例えば、毎分数リットルの窒素(N2)ガスを、マスフローコントローラ241e、241f、バルブ243e、243f、ガス供給管232a、232b、ガスノズル249a、249bを介して処理室201内に供給して、任意の圧力にて窒素パージを、好ましくは、例えば、数分間実施し、その後、窒素ガスの供給を止め、窒素パージを終える。
【0053】
その後、回転機構267によるボート217の回転を止め、APCバルブ244を閉じて、不活性ガス供給管232e、232fから、好ましくは、例えば、毎分数リットルの窒素(N2)ガスを、マスフローコントローラ241e、241f、バルブ243e、243f、ガス供給管232a、232b、ガスノズル249a、249bを介して、処理室201内の圧力が大気圧になるまで、処理室201内に供給する(大気圧復帰)。
【0054】
成膜処理の終わったウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって処理室201内から搬出される(ボートアンロード)。その後、成膜処理後の複数枚のウエハ200がボート217から取り出される。
【0055】
上述した、本実施の形態では、図4に示すように、DSBガスおよびH2ガスを処理室201内へ供給して封じ込める工程(工程A)と、DSBガスおよびH2ガスを処理室201内に封じ込めた状態を維持する工程(工程B)と、を交互に複数回(一例として、3回)行う工程(工程D)と、処理室201内を排気する工程(工程C)と、を交互に複数回繰り返している。すなわち、本実施の形態では、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを複数サイクル(一例として、3サイクル)行う工程Dと、工程Cと、で構成されるサイクルを複数サイクル繰り返すようにしている。
【0056】
なお、本実施の形態では、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを3サイクル行う毎に工程Cを1回実施しているが、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを1サイクル行う毎に工程Cを行うようにしてもよい。すなわち、工程Aと工程Bとを交互に1回行う工程と、工程Cと、を交互に複数回繰り返すようにしてもよい。この場合、工程Aと工程Bと工程Cとで構成されるサイクルを複数回繰り返すこととなる。
【0057】
また、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを1回行う毎に工程Cを行うようにし、工程AにおけるDSBガスおよびH2ガスの1回の供給量を、本実施の形態におけるDSBガスおよびH2ガスの1回の供給量よりも多くする(例えば、本実施の形態の工程AにおけるDSBガスおよびH2ガスの1回の供給量の3倍の供給量とし、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを3サイクル行う際の供給量と同じ供給量とする)ようにしてもよい。但し、この場合、一回の供給により多量のガスが供給されるので、成膜速度は上がるが、処理室201内の圧力が急激に高くなり、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジ(段差被覆性)が悪くなる可能性がある。
【0058】
これに対して、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを1回行う毎に工程Cを行うようにし、工程AにおけるDSBガスおよびH2ガスの1回の供給量を少なくする(例えば、本実施の形態の工程AにおけるDSBガスおよびH2ガスの1回の供給量と同じにするか、あるいは、その1回の供給量よりも少なくする)と、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジは良好となるが、成膜速度が小さくなる。
【0059】
本実施の形態では、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを3サイクル行う毎に工程Cを1回実施している。すなわち、APCバルブ244を完全に閉じた状態で、DSBガスおよびH2ガスをそれぞれ複数回(3回)に分けて供給しており、処理室201内の圧力は、多段階(この場合は3段階)で、徐々に高くなる。第1段階(第1サイクル)は、3段階のうちで一番圧力が低く、成膜レートは一番低いが、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジは最も良好となる。逆に第3段階(第3サイクル)は3段階のうち一番圧力が高く、成膜レートは一番高いが、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジは悪くなる可能性がある。第2段階(第2サイクル)は、第1段階(第1サイクル)と第3段階(第3サイクル)の中間の特性となる。
【0060】
但し、本実施の形態のように、3段階等の多段階で圧力を増加させる場合、第1段階(第1サイクル)ではウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジが良好な膜が形成されることから、第2段階、第3段階等では、そのウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジが良好な膜を下地として膜が形成されることとなり、その際、その下地の影響を受け、その後も、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジが良好な膜が形成されることとなる。このように、多段階で圧力を増加させる場合には、初期段階において、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジが良好な初期層を形成することができ、その後、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジを確保しつつ、成膜レートを上げることが可能となる。
【0061】
なお、本実施の形態では、図4に示すように、H2ガスの供給時間をDSBガスの供給時間よりも長くしているが、H2ガスの供給時間とDSBガスの供給時間とを等しくしてもよく、H2ガスの供給時間をDSBガスの供給時間よりも短くしてもよい。その中でも、H2ガスの供給時間とDSBガスの供給時間とを等しくすることがより好ましい。
【0062】
ところで、本実施の形態におけるDSBガスおよびH2ガスを処理室201内へ供給して封じ込める工程Aでは、加熱された処理室201内へのDSBガスの供給により、処理室201内においてDSBガスを熱的に分解させるようにしている。すなわち、DSBガスの熱分解反応を気相中や物体の表面上で生じさせるようにしている。なお、工程Aだけでなく、工程Bにおいても、処理室201内に供給されたDSBガスの熱分解反応を同様に生じさせるようにしている。このとき、DSBガスと一緒に供給されるH2ガスの一部も熱的に分解され、それにより原子状水素(H)が僅かに生じ、気相中に僅かに原子状水素が含まれることとなる。
【0063】
気相中では、DSBガスの熱分解反応により、DSBガスにおいて水素(H)の脱離やC−C結合の解離が生じることとなる。しかしながら、このようにして生じた未結合手を持ったDSBガスがウエハ200の表面に化学吸着する前に、気相中に僅かに含まれる原子状水素が、先の未結合手を持ったDSBガスに結合して、気相中では熱平衡状態と見なすことができ、DSBガスの熱分解反応が抑制されることとなる。その結果、ウエハ200の表面へのDSBガスの物理吸着、および、ウエハ200の表面へ物理吸着したDSBガスの熱分解反応が支配的となる。すなわち、ウエハ200の表面に物理吸着して熱分解し、未結合手を持つこととなったDSBガスが、下地を構成する物質の結合手と結合して、SiCが形成される反応が支配的となる。このとき、類似した反応がDSBガス同士で気相中でも僅かに生じるが、ウエハ200の表面での反応が支配的となる。
【0064】
上述の作用は、H2ガスがDSBガスをウエハ200の表面に形成されるトレンチやビア等の凹部のボトムにまで均一に運ぶように支援することにもなり、上述のウエハ200表面での反応を、トレンチやビア等の凹部に対しても均一に生じさせることができる。また、気相中に僅かに含まれる原子状水素は、ウエハ200の最表面を常に水素終端の状態とするようにも作用し、この作用により、DSBガスはウエハ200の表面上をマイグレーションし易くなり、優れた平坦性や高いステップカバレッジを有するSiC膜が形成されるようになる。
【0065】
本実施形態の手法によれば、例えばアスペクト比が5以上である高アスペクト比のトレンチやビア等の凹部を有するウエハ200に対し、80〜95%のステップカバレッジを有するSiC膜を形成することができる。
【0066】
DSBガスを熱的に分解させるために、DSBガスおよびH2ガスを処理室201内へ供給して封じ込める工程Aでは、処理室201内の圧力を、処理室201内へのDSBガスおよびH2ガスの供給により、好ましくは、200〜5000Paの範囲内の圧力とする。また、ヒータ207の温度を、好ましくは、ウエハ200の温度が350〜500℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。なお、処理室201内に、不活性ガスとしてN2ガスを不活性ガス供給管232e、232fから供給するようにしてもよい。また、不活性ガスとしては、N2ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0067】
なお、ウエハ200の温度が350℃未満となるとDSBガスやH2ガスが熱分解しにくくなり、上述の反応が生じにくくなって、SiC膜が形成されなくなる。ウエハ200の温度が500℃を超えると気相反応が強くなり過ぎ、ウエハ面内膜厚均一性を確保するのが困難となる。よって、ウエハ200の温度は350〜500℃の範囲内の温度とするのが好ましい。
【0068】
また、処理室201内の圧力が200Pa未満となると、DSBガスやH2ガスによる上述の反応が生じにくくなる。処理室201内の圧力が5000Paを超えると、工程Cにおける処理室201内の排気に時間がかかってしまい、スループットに影響を及ぼすこととなる。また、気相反応が強くなり過ぎ、ウエハ面内膜厚均一性を確保するのが困難となる。よって、処理室201内の圧力は200〜5000Paの範囲内の圧力とするのが好ましい。
【0069】
このような雰囲気(条件)下における処理室201内において、DSBガスの供給流量が100sccm未満となると成膜レートが極端に悪くなる。また、DSBガスの供給流量が1000sccmを超えると膜厚の均一性が極端に悪くなってしまう。よって、DSBガスの供給流量は100〜1000sccm(0.1〜1slm)の範囲内の流量とするのが好ましい。
【0070】
また、DSBガスの供給時間を1秒未満とするのはバルブ制御上困難である。DSBガスの供給時間はできるだけ短くし、反応継続時間(DSBガスの供給停止時間)をできるだけ長くするのが望ましい。すなわち、適切な量のDSBガスを短時間に供給するのが好ましい。よって、DSBガスの供給時間は1〜60秒の範囲内の時間とするのが好ましい。
【0071】
また、このような雰囲気(条件)下における処理室201内において、H2ガスの供給流量が100sccm未満となると気相中に僅かに含まれる原子状水素の量が極端に少なくなってしまい、水素の脱離やC−C結合の解離により未結合手を持つこととなったDSBガスへの原子状水素の補給が十分に行われなくなり、原子状水素と未結合手を持ったDSBガスとの結合が生じにくくなる。また、H2ガスの供給流量が5000sccmを超えると、未結合手を持ったDSBガスへの原子状水素の補給、原子状水素と未結合手を持ったDSBガスとの結合に寄与しない原子状水素の量が多くなり、無駄となってしまう。よって、H2ガスの供給流量は100〜5000sccm(0.1〜5slm)の範囲内の流量とするのが好ましい。
【0072】
また、H2ガスの供給時間を1秒未満とするのはバルブ制御上困難である。H2ガスの供給時間はできるだけ短くし、反応継続時間をできるだけ長くするのが望ましい。すなわち、適切な量のH2ガスを短時間に供給するのが好ましい。よって、H2ガスの供給流時間は1〜60秒の範囲内の時間とするのが好ましい。
【0073】
処理室201内へのDSBガスおよびH2ガスの供給を停止して、DSBガスおよびH2ガスを処理室201内に封じ込めた状態を維持する工程Bでは、上述の工程Aで生じさせた反応を継続させることとなる。この反応を継続させることにより、ウエハ200上にSiC膜が成長することとなる。
【0074】
なお、DSBガスおよびH2ガスは反応しにくく、反応速度が非常に遅い(反応に時間がかかる)ので、DSBガスおよびH2ガスを処理室201内に封じ込めた状態を維持して、時間をかけることで、上述の反応を十分に生じさせ、SiC膜を形成することが可能となる。
【0075】
このとき、処理室201内の圧力は、好ましくは、200〜5000Paの範囲内の圧力を維持する。また、このときのヒータ207の温度は、好ましくは、ウエハ200の温度が350〜500℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。すなわち、工程Aと同様な圧力範囲内の圧力および温度範囲内の温度に維持する。
【0076】
なお、DSBガスの供給を停止する時間は、好ましくは、例えば1〜90分の範囲内の時間とする。DSBガスの供給停止時間を1分未満とすると、上述の反応が不十分となる。この反応がある程度進行すると、DSBガスや原子状水素の量が少なくなり、反応は生じるものの反応効率が低下してしまう。その状態を継続しても成膜レートが低下した状態での成膜を継続することとなる。すなわち、DSBガスの供給停止時間を長くしすぎるとスループットに影響を及ぼすこととなる。よって、DSBガスの供給停止時間は1分〜90分の範囲内の時間とするのが好ましい。
【0077】
本実施の形態により形成されるSiC膜のサイクルレート(1サイクル(工程Aと工程Bとで構成されるサイクル)あたりの成膜レート)は、0.01〜1nm/サイクルとなることが確認されており、サイクル数を制御することで、任意の膜厚を得ることができる。例えば、SiC膜をエッチングストッパーに適用する場合におけるSiC膜の膜厚としては、100〜500Å(10〜50nm)が例示され、この場合、上述のサイクルを、例えば、10〜5000サイクル行うことで、この膜厚を実現できる。
【0078】
本実施の形態では、DSBガスおよびH2ガスを処理室201内に供給して封じ込めるようにしたので、低温領域において反応しにくいガスであるDSBガスおよびH2ガスを用いる場合であっても、反応効率を高めることが可能となり、成膜効率(DSBガスおよびH2ガスの消費、成膜レートなど)を向上させることが可能となる。
【0079】
また、この手法では、DSBガスおよびH2ガスを処理室201内に封じ込めた状態を維持する時間を制御することにより、SiC膜中の炭素(C)の原子濃度が、例えば、25〜35%となるように制御することができる。すなわち、DSBガスおよびH2ガスの供給を停止する時間、特に、DSBガスの供給停止時間を制御することにより、SiC膜中の炭素(C)の原子濃度を制御することができる。また、DSBガスおよびH2ガスの供給量やウエハ200の温度を制御することでもSiC膜中の炭素(C)の原子濃度を制御することができる。なお、本実施の形態のような低温領域におけるサーマルプロセスによる成膜においては、SiC膜中の炭素濃度は35%とするのが限界であり、それを超える濃度は実現できないことを確認している。なお、SiC膜中の炭素濃度を制御し、このSiC膜中の炭素濃度を高くすることにより、SiC膜の比誘電率(k値)を下げることが可能となり、また、エッチング耐性を高めることが可能となる。
【0080】
本実施の形態では、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを3サイクル行う毎に工程Cを1回実施する例について説明したが、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを1サイクル行う毎に工程Cを行うようにしてもよい。その際、図5に示すように、工程Bを行った後、工程Cを行う前に、処理室201内へ水素含有ガスを供給するようにしてもよい(工程E)。図5では、工程Eにおいて水素含有ガスとしてH2ガスを供給する例を示している。
【0081】
この場合、工程Aと工程Bと工程Eと工程Cとで構成されるサイクルを所定回数実施することでウエハ200上に所望の膜厚のSiC膜を形成することとなる。このサイクルを1回行うことで所望の膜厚のSiC膜を形成するようにしてもよく、また、このサイクルを複数回行うことで所望の膜厚のSiC膜を形成するようにしてもよい。なお、所望の膜厚が比較的厚い場合は、このサイクルを複数回繰り返すのが好ましい。この場合、1サイクルあたりに比較的薄いSiC膜を形成し、この薄いSiC膜を積層するようにして所望の膜厚のSiC膜を成膜することができ、比較的厚い膜厚のSiC膜を形成する場合でも、良好なステップカバレッジ特性を得ることができる。なお、図5は、工程Aと工程Bと工程Eと工程Cとで構成されるサイクルを、複数回繰り返す例を示している。また、図5では、工程AにおいてH2ガスの供給時間とDSBガスの供給時間とを等しくする例を示している。
【0082】
この場合、工程Eでは、工程BにおいてDSBガスとH2ガスとを封じ込めた状態を維持することで反応がある程度進行した処理室201内に、DSBガスの供給を停止した状態で、H2ガスを供給することとなる。H2ガスは、好ましくは、例えば、0.1slm〜5slmの範囲内の所望の流量で導入する。H2ガスの供給時間は、好ましくは、例えば、1秒〜60秒の所望の時間とする。それ以外の処理条件は、工程Bにおける処理条件と同様とする。
【0083】
これにより、ウエハ200の最表面、すなわち、工程Aおよび工程Bにおいてウエハ200上に形成されたSiC膜の最表面をH2ガスでパージすることができる。このとき、H2ガスの一部が熱的に分解され、それにより原子状水素(H)が僅かに生じ、H2ガス中には僅かに原子状水素が含まれることとなる。そして、このH2ガスによるパージにより、ウエハ200上に形成されたSiC膜の最表面に物理吸着し、それ以上反応しなくなった、もしくは、反応が進みにくくなったDSBガスを除去することができる。また、このH2ガスによるパージにより、DSBガス除去後のSiC膜の最表面を水素終端の状態とすることができる。これらの処理により、次のサイクルにおいて成膜の下地となるSiC膜の最表面を、次に形成されるSiC膜が成長し易い状態とすることができる。
【0084】
また、このとき、図6に示すように、工程Bにおいて、処理室201内へ水素含有ガスを供給するようにしてもよい。すなわち、工程Aから工程Eにかけて、連続的に水素含有ガスを供給するようにしてもよい。図6では、工程Bにおいて水素含有ガスとしてH2ガスを供給する例、すなわち、工程Aから工程Eにかけて、連続的にH2ガスを供給する例を示している。このように、工程Aから工程Eにかけて、連続的にH2ガスを供給することで、反応により消費される原子状水素を補給することができ、反応効率を高めることが可能となる。
【0085】
また、本実施の形態では、SiC系の膜として、シリコン炭化膜(SiC膜)を形成する例について説明したが、例えば、工程Bなど、DSBガスおよびH2ガスの供給を停止する期間に、窒素含有ガスを供給する工程および/または酸素含有ガスを供給する工程を設けることで、SiC系の膜として、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)およびシリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)のうち少なくとも1種類の膜を形成できる。
【0086】
例えば、図7のように、工程Bにおいて、窒素含有ガスとして例えばNH3ガスを供給する工程を設けることで、SiC系の膜として、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)を形成することができる。
【0087】
窒素含有ガスは、第4ガス供給管232dから、マスフローコントローラ241d、バルブ243d、第4ノズル249dを介して処理室201内に供給される。
【0088】
また、例えば、図8のように、工程Bにおいて、酸素含有ガスとして例えばO2ガスを供給する工程を設けることで、SiC系の膜として、SiOC膜を形成することができる。
【0089】
酸素含有ガスは、第3ガス供給管232cから、マスフローコントローラ241c、バルブ243c、第3ノズル249cを介して処理室201内に供給される。
【0090】
さらに、例えば、図9のように、工程Bにおいて、窒素含有ガスとして例えばNH3ガスを供給する工程と、酸素含有ガスとして例えばO2ガスを供給する工程と、を設けることで、SiC系の膜として、SiOCN膜を形成できる。
【0091】
なお、図9では、NH3ガスを供給する工程と、O2ガスを供給する工程とを、同時に行っているが、NH3ガスを供給する工程を、O2ガスを供給する工程よりも先行して行うようにしてもよいし、O2ガスを供給する工程を、NH3ガスを供給する工程よりも先行して行うようにしてもよい。
【0092】
なお、図7、図8、図9では、工程Bなど、DSBガスおよびH2ガスの供給を停止する期間に、窒素含有ガスを供給する工程および/または酸素含有ガスを供給する工程を設ける例について説明したが、工程Aなど、DSBガスおよびH2ガスの供給を継続する期間に、窒素含有ガスを供給する工程および/または酸素含有ガスを供給する工程を設けることで、SiC系の膜として、SiCN膜、SiOC膜およびSiOCN膜のうち少なくとも何れか1種類の膜を形成するようにしてもよい。
【0093】
なお、有機シリコン系原料としては、例えば、Si2C2H10、SiC2H8、Si2CH8、SiC3H10、Si3CH10、SiC4H12、Si2C3H12、Si3C2H12、Si4CH12、SiC2H6、SiC3H8、Si2C2H8、SiC4H10、Si2C3H10、Si3C2H10等の有機シラン原料のうち、少なくとも1種類の原料を好ましく用いることができる。すなわち、有機シリコン系原料としては、例えば、炭素元素が単結合の場合、SixCyH2(x+y+1)(式中、x、yは、それぞれ1以上の整数)で表される原料を好ましく用いることができ、また例えば、炭素元素が二重結合の場合、SixC(y+1)H2(x+y+1)(式中、x、yは、それぞれ1以上の整数)で表される原料を好ましく用いることができる。なお、これらの有機シラン原料は、シリコン(Si)、炭素(C)および水素(H)の3元素のみで構成され、塩素(Cl)を含まない原料であり、クロル非含有シラン系原料ともいえる。有機シリコン系原料は、SiC膜を形成する際のシリコン源(シリコンソース)として作用すると共に炭素源(カーボンソース)としても作用する。
【0094】
水素含有ガスとしては、例えば、水素(H2)ガス、アンモニア(NH3)ガスの他、メタン(CH4)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等の炭化水素系ガスや、SiH4、Si2H6等のシラン系ガス等を好ましく用いることができる。
【0095】
窒素含有ガスとしては、例えば、アンモニア(NH3)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等を好ましく用いることができる。窒素含有ガスは、SiCN膜を形成する際の窒素源(窒素ソース)として作用する。なお、窒素(N2)ガスは不活性ガスであり、SiC膜中に取り込まれないので、窒素源(窒素ソース)から除かれる。
【0096】
また、窒素含有ガスとしては、アミン系ガスを用いることもできる。なお、アミン系ガスとは、アミン基を含むガスのことであり、少なくとも炭素(C)、窒素(N)及び水素(H)を含むガスである。アミン系ガスは、エチルアミン、メチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン等のアミンを含む。ここで、アミンとは、アンモニア(NH3)の水素原子をアルキル基等の炭化水素基で置換した形の化合物の総称である。つまり、アミンは、アルキル基等の炭化水素基を含む。アミン系ガスは、シリコン(Si)を含んでいないことからシリコン非含有のガスとも言え、更には、シリコン及び金属を含んでいないことからシリコン及び金属非含有のガスとも言える。アミン系ガスとしては、例えば、トリエチルアミン((C2H5)3N、略称:TEA)、ジエチルアミン((C2H5)2NH、略称:DEA)、モノエチルアミン(C2H5NH2、略称:MEA)等のエチルアミン系ガス、トリメチルアミン((CH3)3N、略称:TMA)、ジメチルアミン((CH3)2NH、略称:DMA)、モノメチルアミン(CH3NH2、略称:MMA)等のメチルアミン系ガス、トリプロピルアミン((C3H7)3N、略称:TPA)、ジプロピルアミン((C3H7)2NH、略称:DPA)、モノプロピルアミン(C3H7NH2、略称:MPA)等のプロピルアミン系ガス、トリイソプロピルアミン([(CH3)2CH]3N、略称:TIPA)、ジイソプロピルアミン([(CH3)2CH]2NH、略称:DIPA)、モノイソプロピルアミン((CH3)2CHNH2、略称:MIPA)等のイソプロピルアミン系ガス、トリブチルアミン((C4H9)3N、略称:TBA)、ジブチルアミン((C4H9)2NH、略称:DBA)、モノブチルアミン(C4H9NH2、略称:MBA)等のブチルアミン系ガス、または、トリイソブチルアミン([(CH3)2CHCH2]3N、略称:TIBA)、ジイソブチルアミン([(CH3)2CHCH2]2NH、略称:DIBA)、モノイソブチルアミン((CH3)2CHCH2NH2、略称:MIBA)等のイソブチルアミン系ガスを好ましく用いることができる。すなわち、アミン系ガスとしては、例えば、(C2H5)xNH3−x、(CH3)xNH3−x、(C3H7)xNH3−x、[(CH3)2CH]xNH3−x、(C4H9)xNH3−x、[(CH3)2CHCH2]xNH3−x(式中、xは1〜3の整数)のうち少なくとも1種類のガスを好ましく用いることができる。アミン系ガスは、SiCN膜を形成する際の窒素源(窒素ソース)として作用すると共に炭素源(カーボンソース)としても作用する。窒素含有ガスとしてアミン系ガスを用いることで、SiCN膜の炭素成分の割合増加させる方向に制御することが容易となり、炭素成分が比較的多い、すなわち、カーボンリッチなSiCN膜を形成することが可能となる。
【0097】
酸素含有ガスとしては、例えば、酸素(O2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、オゾン(O3)ガス、水素(H2)ガス+O2ガス、H2ガス+O3ガス、水蒸気(H2O)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス等を好ましく用いることができる。
【0098】
また、本実施の形態では、DSBガスとH2ガスとを用いてSiC系の膜を形成する例について説明したが、H2ガスの使用を省略することもできる。すなわち、DSBガスを単独で用いることで、SiC系の膜を形成することもできる。また、N2等の不活性ガスで希釈したDSBガスを単独で用いることで、SiC系の膜を形成することもできる。
【0099】
例えば、図10のように、工程AにおいてDSBガスを単独で、もしくは、不活性ガスで希釈したDSBガスを単独で処理室内に供給して封じ込め、工程Bにおいてその状態を維持し、工程Cにおいて処理室内を排気し、工程A、工程B、工程Cを含むサイクルを所定回数実施することでSiC系の膜としてSiC膜を形成するようにしてもよい。この場合、工程Aと工程Bとを所定回数実施する工程(工程D)と、工程Cと、で構成されるサイクルを、所定回数実施するようにしてもよい。このときの処理条件は、DSBガスとH2ガスとを用いる場合と同様な処理条件とすることができる。なお、図10は、工程Aと工程Bとを1回実施する工程(工程D)と、工程Cと、で構成されるサイクルを、複数回実施する例を示している。
【0100】
このように、H2ガスの使用を省略し、DSBガスを単独で、もしくは、不活性ガスで希釈したDSBガスを単独で用いることでも、実用レベルの平坦性、膜厚均一性およびステップカバレッジを有するSiC膜を形成できることを確認した。ただし、DSBガスとH2ガスとを用いる場合の方が、特に、より深いトレンチやビア、すなわち、高アスペクト比のトレンチやビアに対して成膜する場合に、より高い平坦性、膜厚均一性およびステップカバレッジを有するSiC膜を形成することができる。
【0101】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。
【0102】
例えば、上述の実施の形態では、工程Bにおいて、各ガスの供給を停止する例について説明したが、工程Bにおいては、各ノズル内にN2ガス等の不活性ガスを連続的に流すようにしてもよい。その場合、処理室内に不活性ガスが供給され、処理室内の圧力が上昇することとなるが、各ノズル内に供給する不活性ガスの流量を制御することで、処理室内の圧力が処理圧力、すなわち、200〜5000Paの範囲内の所望の圧力を超えないようにすることとなる。工程Bにおいて、各ノズル内に不活性ガスを連続的に流すようにすることで、各ノズル内にシリコンや炭素を含む膜が形成されるのを防止することができる。
【0103】
また例えば、上述の実施形態では、一重反応管構造の処理室201を用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されず、二重反応管構造の処理室201を用いる場合にも好適に適用可能である。この場合、図11に示すように、反応管203を、外部反応管としてのアウタチューブ203aと、その内側に設けられた内部反応管としてのインナチューブ203bとで構成し、インナチューブ203b内部の筒中空部に形成される処理室201内に、有機シリコン系ガスを、もしくは、有機シリコン系ガスと水素含有ガスとを、例えば、インナチューブ203bの下端側から上端側に向けて流し、インナチューブ203bの上端側からインナチューブ203bとアウタチューブ203aとの間の筒状空間に流出させ、該筒状空間を流下させて排気管231から排気する。この場合も、上述の実施形態と同様に、排気管231に設けられたAPCバルブ244の開度を調整することで、上述の封じ込め状態を形成、維持することとなる。なお、図11において、図1で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0104】
このように、二重反応管構造の処理室201を用いることで、優れた平坦性および膜厚均一性を有するSiC系の膜を形成することが可能となる。
【0105】
なお、この場合、インナチューブ203bの上端部に、その内側に延出する延出部203cを設け、この延出部203cによりボート217の上端面(天板)217aの少なくとも一部を覆う構造とするのが好ましい。この延出部203cはウエハ200の表面の少なくとも一部を覆う構造ともいえる。また、この延出部203cは、ボート217の上端面217aと平行に、すなわち、ウエハ200の表面と平行に設けるのが好ましい。
【0106】
このように、インナチューブ203bの上端部に延出部203cを設け、この延出部203cによりボート217の上端面217aの少なくとも一部を覆う構造とすることにより、実質的な処理室201の体積を小さくすることができ、有機シリコン系ガスが熱分解して反応種が生成される領域を減らし、また、多種の反応種の生成を抑えることができる。また、ウエハ200の上部を覆う構造なので、ウエハ200の上部、もしくは、アウタチューブ203aとインナチューブ203bとの間で生成された反応種がウエハ200へ接触するのを抑制することができる。この構造により、反応種の膜厚、膜質への影響を抑制することができ、ウエハ面内および面間で均一な膜厚および膜質を実現することが可能となる。
【0107】
また、この場合、インナチューブ203bの内壁とウエハ200の端部との間の距離を小さくするのが好ましい。ただし、ボート217は、ウエハ200を支持する係止溝217bが設けられるボート柱217c有し、ボート柱217cはウエハ200よりも外側に位置している。そのため、インナチューブ203bの内壁とウエハ200の端部との間の距離を小さくしようとすると、インナチューブ203bの内壁とボート柱217cとが接触してしまい、それ以上は、インナチューブ203bの内壁とウエハ200の端部との間の距離を狭めることができない。つまり、ボート柱217cがインナチューブ203bの内壁とウエハ200の端部との間の距離を小さくするのを妨げることとなる。そこで、インナチューブ203bの内壁とウエハ200の端部との間の距離をより小さくするために、例えば、図12に示すように、インナチューブ203bの内壁のボート柱217cに対応する部分に、ボート柱217cの部分を避けるスペース(凹部)としてのボート柱溝203dを設けるようにするのが好ましい。なお、図12は、便宜上、インナチューブ203bと、ボート217と、ウエハ200だけを抜き出して示している。
【0108】
この構造、すなわち、インナチューブ203bの内壁にボート217を構成する部材を避けるように凹部を設けた構造により、インナチューブ203bの内壁とウエハ200の端部との間の距離を極限まで小さくすることが可能となる。
【0109】
このように、インナチューブ203bの内壁とウエハ200の端部との間の距離を小さくすることにより、実質的な処理室201の体積を小さくすることができ、反応種が生成される領域を減らし、また、多種の反応種の生成を抑えることができる。この構造により、反応種の膜厚、膜質への影響を抑制することができ、ウエハ面内および面間で均一な膜厚および膜質を実現することが可能となる。
【0110】
また、この場合、アウタチューブ203aの天井面(上端面)を平面とするのが好ましい。また、この天井面は、インナチューブ203bの上端部の延出部203cと平行に、すなわち、ボート217の上端面217aと平行に、すなわち、ウエハ200の表面と平行に設けるのが好ましい。なお、アウタチューブ203aの強度を保つため、アウタチューブ203aの天井面の厚さ(肉厚)は、他の部分、例えば、アウタチューブ203aの側壁部よりも厚くするのが好ましい。
【0111】
このように、アウタチューブ203aの天井面を平面とすることで、実質的な処理室201の体積を小さくすることができ、反応種が生成される領域を減らし、また、多種の反応種の生成を抑えることができる。この構造により、反応種の膜厚、膜質への影響を抑制することができ、ウエハ面内および面間で均一な膜厚および膜質を実現することが可能となる。
【0112】
また例えば、上述の実施形態では、基板を支持する基板支持具としてラダーボート(ボート支柱に係止溝を設けたタイプのボート)を用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されず、リングボートを用いる場合にも好適に適用可能である。この場合、例えば、リングボートは、周方向に適宜間隔を開けて立設した3〜4本のボート支柱と、ボート支柱に水平に多段に取り付けられ基板の外周を裏面から支持する支持板としてのリング状ホルダとから構成されるようにしてもよい。この場合、リング状ホルダは、外径が基板の径よりも大きく、内径が基板の径よりも小さいリング状プレートと、リング状プレート上の周方向に適宜間隔を置いて複数設けられ、基板の外周裏面を保持する基板保持用爪とから構成されるようにしてもよい。また、この場合、リング状ホルダは、外径および内径が基板の径よりも大きいリング状プレートと、リング状プレートの内側の周方向に適宜間隔を置いて複数設けられ、基板の外周裏面を保持する基板保持用爪とから構成されるようにしてもよい。リング状プレートが存在しない場合に比べて、リング状プレートがある分、各ノズルの孔から基板毎に分離された領域(この場合、リング状プレート間で区切られた領域)への距離が短くなるので、各ノズルから噴出したガスが基板領域に行き渡り易くなるという利点がある。これにより基板上へのガス供給量を十分に保つことが可能となり、成膜速度の低下や、均一性の悪化を防ぐことができる。リングボートを用いることで、優れた平坦性および膜厚均一性を有するSiC系の膜を形成することが可能となる。
【0113】
また、上述の実施形態では、半導体元素であるシリコンを含むシリコン系絶縁膜(SiC膜、SiCN膜、SiOCN膜、SiOC膜)を形成する例について説明したが、本発明は、例えばチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)等の金属元素を含む金属系薄膜を形成する場合にも適用することができる。
【0114】
例えば、本発明は、チタン炭化膜(TiC膜)、ジルコニウム炭化膜(ZrC膜)、ハフニウム炭化膜(HfC膜)、タンタル炭化膜(TaC膜)、アルミニウム炭化膜(AlC膜)、モリブデン炭化膜(MoC膜)等の金属炭化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0115】
また例えば、本発明は、チタン炭窒化膜(TiCN膜)、ジルコニウム炭窒化膜(ZrCN膜)、ハフニウム炭窒化膜(HfCN膜)、タンタル炭窒化膜(TaCN膜)、アルミニウム炭窒化膜(AlCN膜)、モリブデン炭窒化膜(MoCN膜)等の金属炭窒化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0116】
また例えば、本発明は、チタン酸炭窒化膜(TiOCN膜)、ジルコニウム酸炭窒化膜(ZrOCN膜)、ハフニウム酸炭窒化膜(HfOCN膜)、タンタル酸炭窒化膜(TaOCN膜)、アルミニウム酸炭窒化膜(AlOCN膜)、モリブデン酸炭窒化膜(MoOCN膜)等の金属酸炭窒化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0117】
また例えば、本発明は、チタン酸炭化膜(TiOC膜)、ジルコニウム酸炭化膜(ZrOC膜)、ハフニウム酸炭化膜(HfOC膜)、タンタル酸炭化膜(TaOC膜)、アルミニウム酸炭化膜(AlOC膜)、モリブデン酸炭化膜(MoOC膜)等の金属酸炭化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0118】
この場合、上述の実施形態における有機シリコン系原料ガスの代わりに、金属元素を含む有機金属系原料ガスを用い、上述の実施形態と同様なシーケンスにより成膜を行うことができる。有機金属系原料ガスは、金属元素、炭素元素および水素元素の3元素のみで構成される原料を用いるのが好ましい。水素含有ガス、窒素含有ガス、酸素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。なお、このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0119】
すなわち、本発明は、半導体元素や金属元素等の所定元素を含む薄膜を形成する場合に好適に適用することができる。
【0120】
また、上述の実施の形態では、ノンプラズマでSiC系の膜を形成する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、プラズマを用いてSiC系の膜を形成する場合にも、好適に適用できる。この場合、有機シリコン系ガスおよび水素含有ガスのうち少なくとも何れか一方をプラズマで励起(活性化)させることとなる。有機シリコン系ガスおよび水素含有ガスのうち少なくとも何れか一方のガスのプラズマによる励起は、ダイレクトプラズマにより処理室201内で行うようにしてもよいし、リモートプラズマにより処理室201外で行うようにしてもよい。
【0121】
また、上述の実施の形態では、主に、7通りの成膜シーケンスによりSiC系の膜をそれぞれ形成する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、7通りの成膜シーケンスを適宜組み合わせて用いてもよい。例えば、図4、5、6、10の成膜シーケンスのそれぞれと、図7、8、9の成膜シーケンスのそれぞれとを、組み合わせて用いてもよい。
【0122】
また例えば、上述の実施の形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて成膜する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜する場合にも、好適に適用できる。
【0123】
また、上述の実施形態の各成膜例や各応用例等は、適宜組み合わせて用いることができる。
【0124】
また、本発明は、例えば、既存の基板処理装置のプロセスレシピを変更することでも実現できる。プロセスレシピを変更する場合は、本発明に係るプロセスレシピを電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体を介して既存の基板処理装置にインストールしたり、また、既存の基板処理装置の入出力装置を操作し、そのプロセスレシピ自体を本発明に係るプロセスレシピに変更することも可能である。
【実施例】
【0125】
(実施例1)
上述の図4を参照して説明した、本発明の実施の形態における成膜シーケンスにより、ウエハ200上に評価サンプルとしてSiC膜を形成した。そのときの処理室201とウエハ200の温度は425℃とし、材料の供給量、すなわち、材料の供給流量、供給時間は、処理室201の容積100Lに対してそれぞれ次のように設定した。すなわち、H2ガスの供給流量、供給時間を、それぞれ0.20slm、40秒とし、DSBガスの供給流量、供給時間を、それぞれ0.10slm、20秒とした。各工程におけるそれら以外の処理条件は上述の実施の形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。そして、その評価サンプルにおけるSiC膜中のシリコン(Si)、炭素(C)および酸素(O)の濃度をX線光電子分光(XPS)により測定した。
【0126】
その結果を図13に示す。図13は、各原子の濃度の深さ方向プロファイルを示す図であり、横軸はスパッタ時間(分)(深さと同義)を、縦軸は膜中の各原子の濃度(%)を示している。
【0127】
図13より、本実施例によれば、炭素の原子濃度が30%程度のSiC膜が形成されることが分かる。また、SiC膜中の酸素の原子濃度は3%未満であり、不純物レベルであることも分かる。なお、発明者が行った他の実験では、本発明の実施の形態における成膜シーケンスによれば、SiC膜中の炭素の原子濃度が、例えば、25〜35%となるように制御できることを確認した。
【0128】
(実施例2)
上述の図4を参照して説明した、本発明の実施の形態における成膜シーケンスにより、表面にアスペクト比が4〜5程度のトレンチを有するウエハ200上に、評価サンプルとしてSiC膜を形成した。そのときの処理室201とウエハ200の温度は425℃とし、材料の供給量、すなわち、材料の供給流量、供給時間は、処理室201の容積100Lに対してそれぞれ次のように設定した。すなわち、H2ガスの供給流量、供給時間を、それぞれ0.20slm、40秒とし、DSBガスの供給流量、供給時間を、それぞれ0.10slm、20秒とした。各工程におけるそれら以外の処理条件は上述の実施の形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。そして、その評価サンプルにおけるSiC膜の断面TEM画像を観察するとともに、ステップカバレッジを測定した。
【0129】
そのTEM画像を図14に示す。図14より、本実施例によれば、表面にトレンチを有するウエハ200に対して、優れた平坦性および膜厚均一性を有し、高いステップカバレッジを有するSiC膜が形成されることが分かる。このときのSiC膜のステップカバレッジは85%程度であった。なお、本発明者が行った他の実験では、本発明の実施の形態における成膜シーケンスによれば、例えば、80〜95%程度のステップカバレッジを有するSiC膜を形成できることを確認した。
【0130】
(実施例3)
上述の図4を参照して説明した、本発明の実施の形態における成膜シーケンスにより、ウエハ200上に評価サンプルとしてSiC膜を形成した。そのときの各工程における処理条件は上述の実施の形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。なお、評価サンプルとしては、実施例1と同様なサンプルを準備した。その評価サンプルにおけるSiC膜に対し、1%HF溶液によるウェットエッチング評価を行った。その結果、ウェットエッチングレートが1Å/min以下の耐性が得られることを確認した。
【0131】
(実施例4)
上述の図4を参照して説明した、本発明の実施の形態における成膜シーケンスにより、ウエハ200上に評価サンプルとしてSiC膜を形成した。そのときの各ステップにおける処理条件は上述の実施の形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。なお、評価サンプルとしては、実施例1と同様な評価サンプルを準備した。その評価サンプルにおけるSiC膜に対し、プラズマ酸化を行い、その前後におけるSiC膜のシリコン(Si)、炭素(C)および酸素(O)の濃度を蛍光エックス線分析(XRF)により測定した。その結果、SiC膜の最表面が自然酸化されるレベルの耐性を確認した。
【0132】
(実施例5)
上述の図10を参照して説明した成膜シーケンスにより、すなわち、H2ガスの使用を省略し、DSBガスを単独で用いることにより、表面にアスペクト比が4〜5程度のトレンチを有するウエハ200上に、評価サンプルとしてSiC膜を形成した。そのときの処理室201とウエハ200の温度は400〜420℃とし、工程Bにおける封じ込め時の処理室内の圧力を200〜500Paとした。各工程におけるそれら以外の処理条件は上述の実施の形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。そして、その評価サンプルにおけるSiC膜の断面TEM画像を観察するとともに、ステップカバレッジを測定した。
【0133】
その結果、本実施例によれば、表面にトレンチを有するウエハ200に対して、優れた平坦性および膜厚均一性を有し、高いステップカバレッジを有するSiC膜が形成されることを確認した。このときのSiC膜のステップカバレッジは80〜90%程度であった。なお、本発明者が行った他の実験では、本発明の実施の形態における成膜シーケンスによれば、例えば、80〜95%程度のステップカバレッジを有するSiC膜を形成できることを確認した。
【0134】
(本発明の好ましい態様)
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0135】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0136】
(付記2)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、前記処理室内が、前記有機シリコン系ガスが熱的に分解するような温度に加熱される。
【0137】
(付記3)
付記1または2の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、ノンプラズマの雰囲気下で行われる。
【0138】
(付記4)
付記1乃至3のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に所定回数行う工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を交互に所定回数行う。
【0139】
ここで、「(A)前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、(B)前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に所定回数行う」とは、(A)前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、(B)前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を1サイクルとした場合、このサイクルを1回行う場合と、このサイクルを複数回行う(複数回繰り返す)場合の、両方を含む、すなわち、このサイクルを1回以上(1回もしくは複数回)行うことを意味する。同様に、「(A)前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、(B)前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に所定回数行う工程と、(C)前記処理室内を排気する工程と、を交互に所定回数行う」とは、(A)前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、(B)前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に所定回数行う工程と、(C)前記処理室内を排気する工程と、を1サイクルとした場合、このサイクルを1回行う場合と、このサイクルを複数回行う(複数回繰り返す)場合の、両方を含む、すなわち、このサイクルを1回以上(1回もしくは複数回)行うことを意味する。
【0140】
(付記5)
付記1乃至3のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返す。
【0141】
(付記6)
付記1乃至3のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に複数回繰り返す工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返す。
【0142】
(付記7)
付記1乃至6のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程では、前記有機シリコン系ガスと水素含有ガスとを前記処理室内に封じ込め、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程では、前記有機シリコン系ガスと前記水素含有ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する。
【0143】
(付記8)
本発明の他の態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスと水素含有ガスとを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスと前記水素含有ガスとを供給して、前記有機シリコン系ガスと前記水素含有ガスとを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記有機シリコン系ガスと前記水素含有ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0144】
(付記9)
付記1乃至8のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記サイクルは、更に、前記処理室内へ水素含有ガスを供給する工程を有する。
【0145】
(付記10)
付記1乃至9のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記各ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記各ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内へ水素含有ガスを供給する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行う。
【0146】
(付記11)
付記1乃至9のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記各ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記各ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内へ水素含有ガスを供給する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返す。
【0147】
(付記12)
付記9乃至11のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記処理室内へ水素含有ガスを供給する工程では、前記各ガスを封じ込めた状態を維持した後の前記処理室内へ水素含有ガスを供給する。
【0148】
(付記13)
付記1乃至12のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記有機シリコン系ガスは、シリコン元素、炭素元素および水素元素で構成される。
【0149】
(付記14)
付記1乃至12のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記有機シリコン系ガスは、SixCyH2(x+y+1)およびSixC(y+1)H2(x+y+1)(式中、x、yは、それぞれ1以上の整数)のうち少なくとも何れか1種類のガスである。
【0150】
(付記15)
付記1乃至12のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記有機シリコン系ガスは、Si2C2H10、SiC2H8、Si2CH8、SiC3H10、Si3CH10、SiC4H12、Si2C3H12、Si3C2H12、Si4CH12、SiC2H6、SiC3H8、Si2C2H8、SiC4H10、Si2C3H10、Si3C2H10のうち少なくとも何れか1種類のガスである。
【0151】
(付記16)
付記1乃至15のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、前記基板の温度を350℃以上500℃以下とする。
【0152】
(付記17)
付記1乃至16のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、前記各ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する時間、前記各ガスの供給量および前記基板の温度のうち少なくとも何れかを制御することにより、前記シリコンおよび炭素を含む膜中の炭素の原子濃度を制御する。
【0153】
(付記18)
付記17の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、前記各ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する時間、前記各ガスの供給量および前記基板の温度のうち少なくとも何れかを制御することにより、前記シリコンおよび炭素を含む膜中の炭素の原子濃度が25〜35%となるように制御する。
【0154】
(付記19)
付記1乃至18のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記各ガスを前記処理室内に封じ込める工程および前記各ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程では、前記処理室内の排気を停止する。
【0155】
(付記20)
付記1乃至18のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記各ガスを前記処理室内に封じ込める工程および前記各ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程では、前記各ガスを前記処理室内へ供給しつつ排気し、その際、前記各ガスの前記処理室内からの排気レートを前記各ガスの前記処理室内への供給レートよりも小さくした状態を維持する。
【0156】
(付記21)
付記1乃至20のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜は、シリコン炭化膜(SiC膜)を含む。
【0157】
(付記22)
付記1乃至20のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、更に、窒素含有ガスを供給する工程および/または酸素含有ガスを供給する工程を有し、前記シリコンおよび炭素を含む膜として、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)およびシリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)のうち少なくとも何れか1種類の膜を形成する。
【0158】
(付記23)
付記1乃至20のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、更に、窒素含有ガスを供給する工程を有し、前記シリコンおよび炭素を含む膜として、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)を形成する。
【0159】
(付記24)
付記1乃至20のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、更に、酸素含有ガスを供給する工程を有し、前記シリコンおよび炭素を含む膜として、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)を形成する。
【0160】
(付記25)
付記1乃至20のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、更に、窒素含有ガスを供給する工程と、酸素含有ガスを供給する工程とを有し、前記シリコンおよび炭素を含む膜として、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)およびシリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)を形成する。
【0161】
(付記26)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内へ供給しつつ排気し、前記有機シリコン系ガスの前記処理室内からの排気レートを前記有機シリコン系ガスの前記処理室内への供給レートよりも小さくした状態を形成する工程と、
その状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0162】
(付記27)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う基板処理方法が提供される。
【0163】
(付記28)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内を加熱するヒータと、
前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給する有機シリコン系ガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
基板が収容された加熱された状態の前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する処理を行い、その際、前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める処理と、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する処理と、前記処理室内を排気する処理と、を含むサイクルを所定回数行うように、前記ヒータ、前記有機シリコン系ガス供給系および前記排気系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0164】
(付記29)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内に基板を収容する手順と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める手順と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する手順と、
前記処理室内を排気する手順と、
を含むサイクルを所定回数実行させるプログラムが提供される。
【0165】
(付記30)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内に基板を収容する手順と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める手順と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する手順と、
前記処理室内を排気する手順と、
を含むサイクルを所定回数実行させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0166】
121 コントローラ
200 ウエハ
201 処理室
202 処理炉
203 反応管
207 ヒータ
231 ガス排気管
232a 第1ガス供給管
232b 第2ガス供給管
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラムに関し、特に、SiC等のSiC系の膜を成膜する工程を備える半導体装置の製造方法、基板処理方法、当該処理に好適に使用される基板処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
SiC等のSiC系の膜は、エッチング耐性および酸化耐性の高い絶縁膜として、トランジスタのゲート電極周りや配線構造に適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−156664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体装置(デバイス)の微細化、高性能化の要求がますます高まってきており、この要求を満たすために、半導体装置の製造技術の低温化が求められている。これに伴い、SiC系の膜の成膜温度の低温化も求められている。
【0005】
しかしながら、低温領域においてSiC系の膜の成膜を行う場合、適正な特性を有するSiC系の膜を得るのが難しかった。
【0006】
従って、本発明の主な目的は、低温領域において適正な特性を有するSiC系の膜を形成できる半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う基板処理方法が提供される。
【0009】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内を加熱するヒータと、
前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給する有機シリコン系ガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
基板が収容された加熱された状態の前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する処理を行い、その際、前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める処理と、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する処理と、前記処理室内を排気する処理と、を含むサイクルを所定回数行うように、前記ヒータ、前記有機シリコン系ガス供給系および前記排気系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0010】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内に基板を収容する手順と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める手順と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する手順と、
前記処理室内を排気する手順と、
を含むサイクルを所定回数実行させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低温領域において適正な特性を有するSiC系の膜を形成できる半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【図2】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図1のA−A線断面図で示す図である。
【図3】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態の成膜シーケンスを説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態の成膜シーケンスの他の例を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態の成膜シーケンスのさらに他の例を説明するための図である。
【図7】本発明の実施形態の成膜シーケンスのさらに他の例を説明するための図である。
【図8】本発明の実施形態の成膜シーケンスのさらに他の例を説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態の成膜シーケンスのさらに他の例を説明するための図である。
【図10】本発明の実施形態の成膜シーケンスのさらに他の例を説明するための図である。
【図11】本発明の実施の形態で好適に用いられる他の基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【図12】本発明の実施形態で好適に用いられる他の基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図11のA−A線断面図で示す図であって、インナチューブと、ボートと、ウエハだけを抜き出して示す部分断面図である。
【図13】本発明の実施例1で形成したSiC膜中のシリコン(Si)、炭素(C)および酸素(O)の濃度の深さ方向プロファイルを示す図である。
【図14】本発明の実施例2で形成したSiC膜の断面TEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0014】
本発明者が、シリコン系ガスを使用してSiC等のSiC系の膜を低温で成膜することを鋭意研究した結果、炭素を含むシリコン系ガス、すなわち有機シリコン系ガスと水素含有ガスとを用いれば、低温領域においても、ノンプラズマでSiC系の膜を形成できることを見出した。すなわち、低温領域においても、有機シリコン系ガスを熱的に分解させてラジカル等の活性状態とし、気相中または基板上で適正に反応を生じさせることが可能であり、それにより適正な特性を有するSiC系の膜を形成できることを見出した。本発明の好ましい実施の形態は、本発明者が見出したこれらの知見に基づくものである。
【0015】
なお、本明細書では、SiC系の膜という用語は、少なくともシリコン(Si)と炭素(C)とを含む膜を意味しており、これには、シリコン炭化膜(SiC膜)の他、例えば、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)等も含まれる。
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について、より詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の好ましい実施の形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉を説明するための概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示している。図2は本発明の好ましい実施の形態で好適に用いられる縦型処理炉を説明するための概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA−A線横断面図で示している。
【0018】
図1に示されているように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。なお、ヒータ207は、後述するようにガスを熱で分解させて活性化させる活性化機構としても機能する。
【0019】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0020】
処理室201内には、第1ノズル249a、第2ノズル249b、第3ノズル249c、第4ノズル249dが配置されており、それぞれが反応管203の下部を貫通するように設けられている。第1ノズル249a、第2ノズル249b、第3ノズル249c、第4ノズル249dには、第1ガス供給管232a、第2ガス供給管232b、第3ガス供給管232c、第4ガス供給管232dが、それぞれ接続されている。このように、反応管203には4本のノズル249a、249b、249c、249dと、4本のガス供給管232a、232b、232c、232dが設けられており、処理室201内へ複数種類、ここでは4種類のガスを供給することができるように構成されている。なお、反応管203の下方に、反応管203を支持する金属製のマニホールドを設け、各ノズルを、この金属製のマニホールドの側壁を貫通するように設けるようにしてもよい。この場合、この金属製のマニホールドに、さらに後述する排気管231を設けるようにしてもよい。なお、この場合であっても、排気管231を金属製のマニホールドではなく、反応管203の下部に設けるようにしてもよい。このように、処理炉の炉口部を金属製とし、この金属製の炉口部にノズル等を取り付けるようにしてもよい。
【0021】
第1ガス供給管232aには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a、及び開閉弁であるバルブ243aが設けられている。また、第1ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、第1不活性ガス供給管232eが接続されている。この第1不活性ガス供給管232eには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241e、及び開閉弁であるバルブ243eが設けられている。また、第1ガス供給管232aの先端部には、上述の第1ノズル249aが接続されている。第1ノズル249aは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第1ノズル249aは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。第1ノズル249aはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部は反応管203の下部側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。第1ノズル249aの側面にはガスを供給するガス供給孔250aが設けられている。ガス供給孔250aは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第1ガス供給管232a、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル249aにより第1ガス供給系が構成される。また、主に、第1不活性ガス供給管232e、マスフローコントローラ241e、バルブ243eにより、第1不活性ガス供給系が構成される。
【0022】
第2ガス供給管232bには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241b、及び開閉弁であるバルブ243bが設けられている。また、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、第2不活性ガス供給管232fが接続されている。この第2不活性ガス供給管232fには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241f、及び開閉弁であるバルブ243fが設けられている。また、第2ガス供給管232bの先端部には、上述の第2ノズル249bが接続されている。第2ノズル249bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第1ノズル249aは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。第2ノズル249bはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部は反応管203の下部側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。第2ノズル249bの側面にはガスを供給するガス供給孔250bが設けられている。ガス供給孔250bは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第2ガス供給管232b、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル249bにより第2ガス供給系が構成される。また、主に、第2不活性ガス供給管232f、マスフローコントローラ241f、バルブ243fにより第2不活性ガス供給系が構成される。
【0023】
第3ガス供給管232cには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241c、及び開閉弁であるバルブ243cが設けられている。また、第3ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、第3不活性ガス供給管232gが接続されている。この第3不活性ガス供給管232gには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241g、及び開閉弁であるバルブ243gが設けられている。また、第3ガス供給管232cの先端部には、上述の第3ノズル249cが接続されている。第3ノズル249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第1ノズル249aは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。第3ノズル249cはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部は反応管203の下部側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。第3ノズル249cの側面にはガスを供給するガス供給孔250cが設けられている。ガス供給孔250cは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第3ガス供給管232c、マスフローコントローラ241c、バルブ243c、第3ノズル249cにより第3ガス供給系が構成される。また、主に、第3不活性ガス供給管232g、マスフローコントローラ241g、バルブ243gにより第3不活性ガス供給系が構成される。
【0024】
第4ガス供給管232dには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241d、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。また、第4ガス供給管232dのバルブ243dよりも下流側には、第4不活性ガス供給管232hが接続されている。この第4不活性ガス供給管232hには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241h、及び開閉弁であるバルブ243hが設けられている。また、第4ガス供給管232dの先端部には、上述の第4ノズル249dが接続されている。第4ノズル249dは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第1ノズル249aは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。第4ノズル249dはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部は反応管203の下部側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。第4ノズル249dの側面にはガスを供給するガス供給孔250dが設けられている。ガス供給孔250dは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250dは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第4ガス供給管232d、マスフローコントローラ241d、バルブ243d、第4ノズル249dにより第4ガス供給系が構成される。また、主に、第4不活性ガス供給管232h、マスフローコントローラ241h、バルブ243hにより第4不活性ガス供給系が構成される。
【0025】
このように、本実施形態におけるガス供給の方法は、反応管203の内壁と、積載された複数枚のウエハ200の端部とで定義される円弧状の縦長の空間内に配置したノズル249a、249b、249c、249dを経由してガスを搬送し、ノズル249a、249b、249c、249dにそれぞれ開口されたガス供給孔250a、250b、250c、250dからウエハ200の近傍で初めて反応管203内にガスを噴出させており、反応管203内におけるガスの主たる流れをウエハ200の表面と平行な方向、すなわち水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される薄膜の膜厚を均一にできる効果がある。なお、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れるが、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0026】
第1ガス供給管232aからは、原料ガスとしての有機シリコン系ガスが、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル249aを介して処理室201内に供給される。
【0027】
第2ガス供給管232bからは、還元ガスとしての水素含有ガスが、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル249bを介して処理室201内に供給される。
【0028】
第3ガス供給管232cからは、酸化ガスとしての酸素含有ガスが、マスフローコントローラ241c、バルブ243c、第3ノズル249cを介して処理室201内に供給される。
【0029】
第4ガス供給管232dからは、窒化ガスとしての窒素含有ガスが、マスフローコントローラ241d、バルブ243d、第4ノズル249dを介して処理室201内に供給される。
【0030】
不活性ガス供給管232e、232f、232g、232hからは、例えば窒素(N2)ガスが、それぞれマスフローコントローラ241e、241f、241g、241h、バルブ243e、243f、243g、243h、ガス供給管232a、232b、232c、232d、ガスノズル249a、249b、249c、249dを介して処理室201内に供給される。
【0031】
なお、例えば各ガス供給管から上述のようなガスをそれぞれ流す場合、第1ガス供給系により有機シリコン系ガス供給系が構成される。また、第2ガス供給系により水素含有ガス供給系が構成される。また、第3ガス供給系により酸素含有ガス供給系が構成される。また、第4ガス供給系により窒素含有ガス供給系が構成される。
【0032】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。図2に示すように、横断面視において、排気管231は、反応管203の第1ノズル249aのガス供給孔250a、第2ノズル249bのガス供給孔250b、第3ノズル249cのガス供給孔250c、および、第4ノズル249dのガス供給孔250dが設けられる側と対向する側、すなわちウエハ200を挟んでガス供給孔250a、250b、250c、250dとは反対側に設けられている。また、図1に示すように縦断面視において、排気管231は、ガス供給孔250a、250b、250c、250dが設けられる箇所よりも下方に設けられている。この構成により、ガス供給孔250a、250b、250c、250dから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向、すなわちウエハ200の表面と平行な方向に向かって流れた後、下方に向かって流れ、排気管231より排気されることとなる。処理室201内におけるガスの主たる流れが水平方向へ向かう流れとなるのは上述の通りである。排気管231には処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。なお、APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することにより、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することにより、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により排気系が構成される。なお、真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。排気系は、真空ポンプ246を作動させつつ、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ244の弁の開度を調節することにより、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。
【0033】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボートを回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255はシールキャップ219を貫通して、後述するボート217に接続されており、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート217を処理室201内に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0034】
基板支持具としてのボート217は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなり、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に支持するように構成されている。なおボート217の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる断熱部材218が設けられており、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなるよう構成されている。なお、断熱部材218は、石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる複数枚の断熱板と、これらを水平姿勢で多段に支持する断熱板ホルダとにより構成してもよい。
【0035】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル249a、249b、249c、249dと同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0036】
図3に示されているように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0037】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0038】
I/Oポート121dは、上述のマスフローコントローラ241a、241b、241c、241d、241e、241f、241g、241h、バルブ243a、243b、243c、243d、243e、243f、243g、243h、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0039】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU121aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、マスフローコントローラ241a、241b、241c、241d、241e、241f、241g、241hによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a、243b、243c、243d、243e、243f、243g、243hの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作及び圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0040】
なお、コントローラ121は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123を用意し、係る外部記憶装置123を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ121を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置123を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置123を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0041】
次に、上記基板処理装置を使用して、処理室201内に有機シリコン系ガスと水素含有ガスとを供給して基板としてのウエハ200上にシリコンおよび炭素を含む膜(SiC系の膜)を形成する方法について説明する。本実施の形態では、有機シリコン系ガスとして1,4−ジシラブタン(Si2C2H10、略称:DSB)ガスを使用し、水素含有ガスとして水素(H2)ガスを使用して、ノンプラズマの雰囲気下で、シリコンおよび炭素を含む膜としてシリコン炭化膜(SiC膜)を形成する例について説明する。有機シリコン系ガスは、SiC膜を形成する際のシリコン源(シリコンソース)として作用すると共に炭素源(カーボンソース)としても作用する。本実施の形態において有機シリコン系原料として用いるDSBは有機シラン、すなわち、有機シラン化合物の一種であり、シリコン元素、炭素元素および水素元素の3元素のみで構成される原料ともいえる。DSBは有機シリコン系原料ということもでき、有機シラン原料もしくは有機シラン化合物原料ということもできる。なお、本実施の形態では、ウエハ200として半導体シリコンウエハを使用し、上記シリコンおよび炭素を含む膜(SiC系の膜)の形成は、半導体装置の製造工程の一工程として行われる。なお、SiC等のSiC系の膜は、エッチング耐性および酸化耐性の高い絶縁膜として、トランジスタのゲート電極周りや配線構造に好適に用いられる。
【0042】
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)され、複数枚のウエハ200は処理室201内に収容される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0043】
次に、真空ポンプ246を作動させた状態でAPCバルブ244を徐々に全開にし、真空ポンプ246によって処理室201内を真空排気して、処理室201内のベース圧力(真空度)を1Pa以下にする。なお、真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。回転機構267により、ボート217を回転させることで、ウエハ200を回転させ(ウエハ回転)、好ましくは、例えば、1rpmから10rpmの範囲内でその回転数を一定に維持する。なお、回転機構267によるボート217及びウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。ヒータ207によって処理室201内を加熱することで、処理室201内の温度を所望の温度として、ウエハ200の温度を、好ましくは、例えば、350℃〜500℃の範囲内の所望の温度に維持する。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への電力供給具合がフィードバック制御される(温度調整)。なお、ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0044】
その後、不活性ガス供給管232e、232fから、好ましくは、例えば、毎分数リットルの窒素(N2)ガスを、マスフローコントローラ241e、241f、バルブ243e、243f、ガス供給管232a、232b、ガスノズル249a、249bを介して処理室201内に供給して、任意の圧力にて窒素パージを数分間実施し、その後、窒素ガスの供給を止め、窒素パージを終える。
【0045】
その後、APCバルブ244を全開とした状態で、真空ポンプ246によって処理室201内を真空排気して、処理室201内のベース圧力を、好ましくは、例えば、1Pa以下にする。処理室201内の圧力が1Pa以下になったところで、APCバルブ244を完全に閉じて、閉じ込め状態を開始する。なお、このとき、APCバルブ244を完全に閉じることなく僅かに開いておくようにしてもよい。
【0046】
ウエハ200の温度を、好ましくは、例えば、350℃〜500℃の範囲内の所望の温度に維持し、好ましくは、例えば、1rpmから10rpmの範囲内の所望の回転数でウエハ200の回転を維持し、APCバルブ244を完全に閉じた状態で、有機シリコン系ガスとしてDSBガスを、第1ガス供給管232aから、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル249aを介して処理室201内に導入する。同時に、水素含有ガスとしてH2ガスを、第2ガス供給管232bから、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル249bを介して処理室201内に導入する。これらの操作により、DSBガスおよびH2ガスを処理室201内に封じ込める(工程A)。H2ガスは、好ましくは、例えば、0.1slm〜5slmの範囲内の所望の流量で導入し、DSBガスは、好ましくは、例えば、0.1slm〜1slmの範囲内の所望の流量で導入する。H2ガスの供給時間は、好ましくは、例えば、1秒〜60秒の範囲内の所望の時間とし、DSBガスの供給時間は、好ましくは、例えば、1秒〜60秒の範囲内の所望の時間とする。そして、DSBガスおよびH2ガスを、好ましくは、例えば、200Pa〜5000Paの範囲内の所望の圧力で処理室201内に封じ込める。
【0047】
その後、DSBガスおよびH2ガスの処理室201内への供給を停止して、APCバルブ244を完全に閉じた状態で、DSBガスおよびH2ガスの処理室201内への封じ込め状態を維持する(工程B)。DSBガスおよびH2ガスの供給を停止する時間、すなわち、DSBガスおよびH2ガスの処理室201内への封じ込め状態を維持する時間は、好ましくは、例えば、1分〜90分の範囲内の所望の時間とする。
【0048】
なお、工程A、または、工程Aおよび工程Bでは、APCバルブ244を完全に閉じることなく僅かに開いておくことで、各ガスを僅かに排気してガスの流れを僅かに形成するようにしてもよい。このとき、DSBガスおよびH2ガスの処理室201内への供給も、完全に停止させることなく継続させるようにしてもよい。この場合、例えば、工程A、または、工程Aおよび工程Bにおいて、各ガスを処理室201内へ供給しつつ処理室201内から排気し、その際、各ガスの処理室201内からの排気レートを各ガスの処理室201内への供給レートよりも小さくした状態を維持することで、各ガスを僅かに排気するようにしてもよい。すなわち、工程A、または、工程Aおよび工程Bにおいて、トータルでの処理室201内からのガス排気レート(所定の圧力における単位時間あたりのトータルでのガス排気量、すなわち、排気流量(体積流量))をトータルでの処理室201内へのガス供給レート(所定の圧力における単位時間あたりのトータルでのガス供給量、すなわち、供給流量(体積流量))よりも小さくした状態を維持することで、各ガスを僅かに排気するようにしてもよい。この場合、工程Aにおいて、各ガスを処理室201内へ供給しつつ処理室201内から排気し、各ガスの処理室201内からの排気レートを各ガスの処理室201内への供給レートよりも小さくした状態を形成し、工程Bにおいて、その状態を維持することとなる。
【0049】
このように各ガスを僅かに排気するようにしたり、各ガスを供給しつつ僅かに排気するようにしても、APCバルブ244を完全に閉じる場合と実質的に同様な封じ込め状態を形成することができる。よって本明細書ではこのように各ガスを僅かに排気するような状態や、各ガスを供給しつつ僅かに排気するような状態をも、封じ込めた状態に含めて考えることとしている。すなわち、本明細書において「封じ込め」という言葉を用いた場合は、APCバルブ244を完全に閉じて処理室201内の排気を停止する場合の他、APCバルブを完全に閉じることなく僅かに開き、各ガスの処理室201内からの排気レートを各ガスの処理室201内への供給レートよりも小さくした状態を維持し、各ガスを僅かに排気する場合をも含むこととしている。
【0050】
工程Aおよび工程Bを実施する過程において、ウエハ200上にSiCが成長し、その結果、ウエハ200上にSiC膜が形成されることとなる。そして、工程Aと工程Bとを所定回数実施した後、APCバルブ244を全開にして、処理室201内を速やかに排気する(工程C)。
【0051】
上記の工程A、工程B、工程Cを含むサイクル、すなわち、工程Aと工程Bとを所定回数実施する工程(工程D)と、工程Cとで構成されるサイクルを、ウエハ200上に形成されるSiC膜の膜厚が所望の膜厚になるまで所定回数実施する。このサイクルを1回行うことで所望の膜厚のSiC膜を形成するようにしてもよく、また、このサイクルを複数回行うことで所望の膜厚のSiC膜を形成するようにしてもよい。なお、所望の膜厚が比較的厚い場合は、このサイクルを複数回繰り返すのが好ましい。この場合、1サイクルあたりに比較的薄いSiC膜を形成し、この薄いSiC膜を積層するようにして所望の膜厚のSiC膜を成膜することができ、比較的厚い膜厚のSiC膜を形成する場合でも、良好なステップカバレッジ特性を得ることができる。本実施の形態のサイクル・シーケンスの一例を図4に示す。なお、図4は、工程Aと工程Bとを3回実施する工程(工程D)と、工程Cとで構成されるサイクルを、複数回繰り返す例を示している。
【0052】
その後、不活性ガス供給管232e、232fから、好ましくは、例えば、毎分数リットルの窒素(N2)ガスを、マスフローコントローラ241e、241f、バルブ243e、243f、ガス供給管232a、232b、ガスノズル249a、249bを介して処理室201内に供給して、任意の圧力にて窒素パージを、好ましくは、例えば、数分間実施し、その後、窒素ガスの供給を止め、窒素パージを終える。
【0053】
その後、回転機構267によるボート217の回転を止め、APCバルブ244を閉じて、不活性ガス供給管232e、232fから、好ましくは、例えば、毎分数リットルの窒素(N2)ガスを、マスフローコントローラ241e、241f、バルブ243e、243f、ガス供給管232a、232b、ガスノズル249a、249bを介して、処理室201内の圧力が大気圧になるまで、処理室201内に供給する(大気圧復帰)。
【0054】
成膜処理の終わったウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって処理室201内から搬出される(ボートアンロード)。その後、成膜処理後の複数枚のウエハ200がボート217から取り出される。
【0055】
上述した、本実施の形態では、図4に示すように、DSBガスおよびH2ガスを処理室201内へ供給して封じ込める工程(工程A)と、DSBガスおよびH2ガスを処理室201内に封じ込めた状態を維持する工程(工程B)と、を交互に複数回(一例として、3回)行う工程(工程D)と、処理室201内を排気する工程(工程C)と、を交互に複数回繰り返している。すなわち、本実施の形態では、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを複数サイクル(一例として、3サイクル)行う工程Dと、工程Cと、で構成されるサイクルを複数サイクル繰り返すようにしている。
【0056】
なお、本実施の形態では、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを3サイクル行う毎に工程Cを1回実施しているが、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを1サイクル行う毎に工程Cを行うようにしてもよい。すなわち、工程Aと工程Bとを交互に1回行う工程と、工程Cと、を交互に複数回繰り返すようにしてもよい。この場合、工程Aと工程Bと工程Cとで構成されるサイクルを複数回繰り返すこととなる。
【0057】
また、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを1回行う毎に工程Cを行うようにし、工程AにおけるDSBガスおよびH2ガスの1回の供給量を、本実施の形態におけるDSBガスおよびH2ガスの1回の供給量よりも多くする(例えば、本実施の形態の工程AにおけるDSBガスおよびH2ガスの1回の供給量の3倍の供給量とし、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを3サイクル行う際の供給量と同じ供給量とする)ようにしてもよい。但し、この場合、一回の供給により多量のガスが供給されるので、成膜速度は上がるが、処理室201内の圧力が急激に高くなり、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジ(段差被覆性)が悪くなる可能性がある。
【0058】
これに対して、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを1回行う毎に工程Cを行うようにし、工程AにおけるDSBガスおよびH2ガスの1回の供給量を少なくする(例えば、本実施の形態の工程AにおけるDSBガスおよびH2ガスの1回の供給量と同じにするか、あるいは、その1回の供給量よりも少なくする)と、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジは良好となるが、成膜速度が小さくなる。
【0059】
本実施の形態では、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを3サイクル行う毎に工程Cを1回実施している。すなわち、APCバルブ244を完全に閉じた状態で、DSBガスおよびH2ガスをそれぞれ複数回(3回)に分けて供給しており、処理室201内の圧力は、多段階(この場合は3段階)で、徐々に高くなる。第1段階(第1サイクル)は、3段階のうちで一番圧力が低く、成膜レートは一番低いが、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジは最も良好となる。逆に第3段階(第3サイクル)は3段階のうち一番圧力が高く、成膜レートは一番高いが、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジは悪くなる可能性がある。第2段階(第2サイクル)は、第1段階(第1サイクル)と第3段階(第3サイクル)の中間の特性となる。
【0060】
但し、本実施の形態のように、3段階等の多段階で圧力を増加させる場合、第1段階(第1サイクル)ではウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジが良好な膜が形成されることから、第2段階、第3段階等では、そのウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジが良好な膜を下地として膜が形成されることとなり、その際、その下地の影響を受け、その後も、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジが良好な膜が形成されることとなる。このように、多段階で圧力を増加させる場合には、初期段階において、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジが良好な初期層を形成することができ、その後、ウエハ面内膜厚均一性やステップカバレッジを確保しつつ、成膜レートを上げることが可能となる。
【0061】
なお、本実施の形態では、図4に示すように、H2ガスの供給時間をDSBガスの供給時間よりも長くしているが、H2ガスの供給時間とDSBガスの供給時間とを等しくしてもよく、H2ガスの供給時間をDSBガスの供給時間よりも短くしてもよい。その中でも、H2ガスの供給時間とDSBガスの供給時間とを等しくすることがより好ましい。
【0062】
ところで、本実施の形態におけるDSBガスおよびH2ガスを処理室201内へ供給して封じ込める工程Aでは、加熱された処理室201内へのDSBガスの供給により、処理室201内においてDSBガスを熱的に分解させるようにしている。すなわち、DSBガスの熱分解反応を気相中や物体の表面上で生じさせるようにしている。なお、工程Aだけでなく、工程Bにおいても、処理室201内に供給されたDSBガスの熱分解反応を同様に生じさせるようにしている。このとき、DSBガスと一緒に供給されるH2ガスの一部も熱的に分解され、それにより原子状水素(H)が僅かに生じ、気相中に僅かに原子状水素が含まれることとなる。
【0063】
気相中では、DSBガスの熱分解反応により、DSBガスにおいて水素(H)の脱離やC−C結合の解離が生じることとなる。しかしながら、このようにして生じた未結合手を持ったDSBガスがウエハ200の表面に化学吸着する前に、気相中に僅かに含まれる原子状水素が、先の未結合手を持ったDSBガスに結合して、気相中では熱平衡状態と見なすことができ、DSBガスの熱分解反応が抑制されることとなる。その結果、ウエハ200の表面へのDSBガスの物理吸着、および、ウエハ200の表面へ物理吸着したDSBガスの熱分解反応が支配的となる。すなわち、ウエハ200の表面に物理吸着して熱分解し、未結合手を持つこととなったDSBガスが、下地を構成する物質の結合手と結合して、SiCが形成される反応が支配的となる。このとき、類似した反応がDSBガス同士で気相中でも僅かに生じるが、ウエハ200の表面での反応が支配的となる。
【0064】
上述の作用は、H2ガスがDSBガスをウエハ200の表面に形成されるトレンチやビア等の凹部のボトムにまで均一に運ぶように支援することにもなり、上述のウエハ200表面での反応を、トレンチやビア等の凹部に対しても均一に生じさせることができる。また、気相中に僅かに含まれる原子状水素は、ウエハ200の最表面を常に水素終端の状態とするようにも作用し、この作用により、DSBガスはウエハ200の表面上をマイグレーションし易くなり、優れた平坦性や高いステップカバレッジを有するSiC膜が形成されるようになる。
【0065】
本実施形態の手法によれば、例えばアスペクト比が5以上である高アスペクト比のトレンチやビア等の凹部を有するウエハ200に対し、80〜95%のステップカバレッジを有するSiC膜を形成することができる。
【0066】
DSBガスを熱的に分解させるために、DSBガスおよびH2ガスを処理室201内へ供給して封じ込める工程Aでは、処理室201内の圧力を、処理室201内へのDSBガスおよびH2ガスの供給により、好ましくは、200〜5000Paの範囲内の圧力とする。また、ヒータ207の温度を、好ましくは、ウエハ200の温度が350〜500℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。なお、処理室201内に、不活性ガスとしてN2ガスを不活性ガス供給管232e、232fから供給するようにしてもよい。また、不活性ガスとしては、N2ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0067】
なお、ウエハ200の温度が350℃未満となるとDSBガスやH2ガスが熱分解しにくくなり、上述の反応が生じにくくなって、SiC膜が形成されなくなる。ウエハ200の温度が500℃を超えると気相反応が強くなり過ぎ、ウエハ面内膜厚均一性を確保するのが困難となる。よって、ウエハ200の温度は350〜500℃の範囲内の温度とするのが好ましい。
【0068】
また、処理室201内の圧力が200Pa未満となると、DSBガスやH2ガスによる上述の反応が生じにくくなる。処理室201内の圧力が5000Paを超えると、工程Cにおける処理室201内の排気に時間がかかってしまい、スループットに影響を及ぼすこととなる。また、気相反応が強くなり過ぎ、ウエハ面内膜厚均一性を確保するのが困難となる。よって、処理室201内の圧力は200〜5000Paの範囲内の圧力とするのが好ましい。
【0069】
このような雰囲気(条件)下における処理室201内において、DSBガスの供給流量が100sccm未満となると成膜レートが極端に悪くなる。また、DSBガスの供給流量が1000sccmを超えると膜厚の均一性が極端に悪くなってしまう。よって、DSBガスの供給流量は100〜1000sccm(0.1〜1slm)の範囲内の流量とするのが好ましい。
【0070】
また、DSBガスの供給時間を1秒未満とするのはバルブ制御上困難である。DSBガスの供給時間はできるだけ短くし、反応継続時間(DSBガスの供給停止時間)をできるだけ長くするのが望ましい。すなわち、適切な量のDSBガスを短時間に供給するのが好ましい。よって、DSBガスの供給時間は1〜60秒の範囲内の時間とするのが好ましい。
【0071】
また、このような雰囲気(条件)下における処理室201内において、H2ガスの供給流量が100sccm未満となると気相中に僅かに含まれる原子状水素の量が極端に少なくなってしまい、水素の脱離やC−C結合の解離により未結合手を持つこととなったDSBガスへの原子状水素の補給が十分に行われなくなり、原子状水素と未結合手を持ったDSBガスとの結合が生じにくくなる。また、H2ガスの供給流量が5000sccmを超えると、未結合手を持ったDSBガスへの原子状水素の補給、原子状水素と未結合手を持ったDSBガスとの結合に寄与しない原子状水素の量が多くなり、無駄となってしまう。よって、H2ガスの供給流量は100〜5000sccm(0.1〜5slm)の範囲内の流量とするのが好ましい。
【0072】
また、H2ガスの供給時間を1秒未満とするのはバルブ制御上困難である。H2ガスの供給時間はできるだけ短くし、反応継続時間をできるだけ長くするのが望ましい。すなわち、適切な量のH2ガスを短時間に供給するのが好ましい。よって、H2ガスの供給流時間は1〜60秒の範囲内の時間とするのが好ましい。
【0073】
処理室201内へのDSBガスおよびH2ガスの供給を停止して、DSBガスおよびH2ガスを処理室201内に封じ込めた状態を維持する工程Bでは、上述の工程Aで生じさせた反応を継続させることとなる。この反応を継続させることにより、ウエハ200上にSiC膜が成長することとなる。
【0074】
なお、DSBガスおよびH2ガスは反応しにくく、反応速度が非常に遅い(反応に時間がかかる)ので、DSBガスおよびH2ガスを処理室201内に封じ込めた状態を維持して、時間をかけることで、上述の反応を十分に生じさせ、SiC膜を形成することが可能となる。
【0075】
このとき、処理室201内の圧力は、好ましくは、200〜5000Paの範囲内の圧力を維持する。また、このときのヒータ207の温度は、好ましくは、ウエハ200の温度が350〜500℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。すなわち、工程Aと同様な圧力範囲内の圧力および温度範囲内の温度に維持する。
【0076】
なお、DSBガスの供給を停止する時間は、好ましくは、例えば1〜90分の範囲内の時間とする。DSBガスの供給停止時間を1分未満とすると、上述の反応が不十分となる。この反応がある程度進行すると、DSBガスや原子状水素の量が少なくなり、反応は生じるものの反応効率が低下してしまう。その状態を継続しても成膜レートが低下した状態での成膜を継続することとなる。すなわち、DSBガスの供給停止時間を長くしすぎるとスループットに影響を及ぼすこととなる。よって、DSBガスの供給停止時間は1分〜90分の範囲内の時間とするのが好ましい。
【0077】
本実施の形態により形成されるSiC膜のサイクルレート(1サイクル(工程Aと工程Bとで構成されるサイクル)あたりの成膜レート)は、0.01〜1nm/サイクルとなることが確認されており、サイクル数を制御することで、任意の膜厚を得ることができる。例えば、SiC膜をエッチングストッパーに適用する場合におけるSiC膜の膜厚としては、100〜500Å(10〜50nm)が例示され、この場合、上述のサイクルを、例えば、10〜5000サイクル行うことで、この膜厚を実現できる。
【0078】
本実施の形態では、DSBガスおよびH2ガスを処理室201内に供給して封じ込めるようにしたので、低温領域において反応しにくいガスであるDSBガスおよびH2ガスを用いる場合であっても、反応効率を高めることが可能となり、成膜効率(DSBガスおよびH2ガスの消費、成膜レートなど)を向上させることが可能となる。
【0079】
また、この手法では、DSBガスおよびH2ガスを処理室201内に封じ込めた状態を維持する時間を制御することにより、SiC膜中の炭素(C)の原子濃度が、例えば、25〜35%となるように制御することができる。すなわち、DSBガスおよびH2ガスの供給を停止する時間、特に、DSBガスの供給停止時間を制御することにより、SiC膜中の炭素(C)の原子濃度を制御することができる。また、DSBガスおよびH2ガスの供給量やウエハ200の温度を制御することでもSiC膜中の炭素(C)の原子濃度を制御することができる。なお、本実施の形態のような低温領域におけるサーマルプロセスによる成膜においては、SiC膜中の炭素濃度は35%とするのが限界であり、それを超える濃度は実現できないことを確認している。なお、SiC膜中の炭素濃度を制御し、このSiC膜中の炭素濃度を高くすることにより、SiC膜の比誘電率(k値)を下げることが可能となり、また、エッチング耐性を高めることが可能となる。
【0080】
本実施の形態では、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを3サイクル行う毎に工程Cを1回実施する例について説明したが、工程Aと工程Bとで構成されるサイクルを1サイクル行う毎に工程Cを行うようにしてもよい。その際、図5に示すように、工程Bを行った後、工程Cを行う前に、処理室201内へ水素含有ガスを供給するようにしてもよい(工程E)。図5では、工程Eにおいて水素含有ガスとしてH2ガスを供給する例を示している。
【0081】
この場合、工程Aと工程Bと工程Eと工程Cとで構成されるサイクルを所定回数実施することでウエハ200上に所望の膜厚のSiC膜を形成することとなる。このサイクルを1回行うことで所望の膜厚のSiC膜を形成するようにしてもよく、また、このサイクルを複数回行うことで所望の膜厚のSiC膜を形成するようにしてもよい。なお、所望の膜厚が比較的厚い場合は、このサイクルを複数回繰り返すのが好ましい。この場合、1サイクルあたりに比較的薄いSiC膜を形成し、この薄いSiC膜を積層するようにして所望の膜厚のSiC膜を成膜することができ、比較的厚い膜厚のSiC膜を形成する場合でも、良好なステップカバレッジ特性を得ることができる。なお、図5は、工程Aと工程Bと工程Eと工程Cとで構成されるサイクルを、複数回繰り返す例を示している。また、図5では、工程AにおいてH2ガスの供給時間とDSBガスの供給時間とを等しくする例を示している。
【0082】
この場合、工程Eでは、工程BにおいてDSBガスとH2ガスとを封じ込めた状態を維持することで反応がある程度進行した処理室201内に、DSBガスの供給を停止した状態で、H2ガスを供給することとなる。H2ガスは、好ましくは、例えば、0.1slm〜5slmの範囲内の所望の流量で導入する。H2ガスの供給時間は、好ましくは、例えば、1秒〜60秒の所望の時間とする。それ以外の処理条件は、工程Bにおける処理条件と同様とする。
【0083】
これにより、ウエハ200の最表面、すなわち、工程Aおよび工程Bにおいてウエハ200上に形成されたSiC膜の最表面をH2ガスでパージすることができる。このとき、H2ガスの一部が熱的に分解され、それにより原子状水素(H)が僅かに生じ、H2ガス中には僅かに原子状水素が含まれることとなる。そして、このH2ガスによるパージにより、ウエハ200上に形成されたSiC膜の最表面に物理吸着し、それ以上反応しなくなった、もしくは、反応が進みにくくなったDSBガスを除去することができる。また、このH2ガスによるパージにより、DSBガス除去後のSiC膜の最表面を水素終端の状態とすることができる。これらの処理により、次のサイクルにおいて成膜の下地となるSiC膜の最表面を、次に形成されるSiC膜が成長し易い状態とすることができる。
【0084】
また、このとき、図6に示すように、工程Bにおいて、処理室201内へ水素含有ガスを供給するようにしてもよい。すなわち、工程Aから工程Eにかけて、連続的に水素含有ガスを供給するようにしてもよい。図6では、工程Bにおいて水素含有ガスとしてH2ガスを供給する例、すなわち、工程Aから工程Eにかけて、連続的にH2ガスを供給する例を示している。このように、工程Aから工程Eにかけて、連続的にH2ガスを供給することで、反応により消費される原子状水素を補給することができ、反応効率を高めることが可能となる。
【0085】
また、本実施の形態では、SiC系の膜として、シリコン炭化膜(SiC膜)を形成する例について説明したが、例えば、工程Bなど、DSBガスおよびH2ガスの供給を停止する期間に、窒素含有ガスを供給する工程および/または酸素含有ガスを供給する工程を設けることで、SiC系の膜として、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)およびシリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)のうち少なくとも1種類の膜を形成できる。
【0086】
例えば、図7のように、工程Bにおいて、窒素含有ガスとして例えばNH3ガスを供給する工程を設けることで、SiC系の膜として、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)を形成することができる。
【0087】
窒素含有ガスは、第4ガス供給管232dから、マスフローコントローラ241d、バルブ243d、第4ノズル249dを介して処理室201内に供給される。
【0088】
また、例えば、図8のように、工程Bにおいて、酸素含有ガスとして例えばO2ガスを供給する工程を設けることで、SiC系の膜として、SiOC膜を形成することができる。
【0089】
酸素含有ガスは、第3ガス供給管232cから、マスフローコントローラ241c、バルブ243c、第3ノズル249cを介して処理室201内に供給される。
【0090】
さらに、例えば、図9のように、工程Bにおいて、窒素含有ガスとして例えばNH3ガスを供給する工程と、酸素含有ガスとして例えばO2ガスを供給する工程と、を設けることで、SiC系の膜として、SiOCN膜を形成できる。
【0091】
なお、図9では、NH3ガスを供給する工程と、O2ガスを供給する工程とを、同時に行っているが、NH3ガスを供給する工程を、O2ガスを供給する工程よりも先行して行うようにしてもよいし、O2ガスを供給する工程を、NH3ガスを供給する工程よりも先行して行うようにしてもよい。
【0092】
なお、図7、図8、図9では、工程Bなど、DSBガスおよびH2ガスの供給を停止する期間に、窒素含有ガスを供給する工程および/または酸素含有ガスを供給する工程を設ける例について説明したが、工程Aなど、DSBガスおよびH2ガスの供給を継続する期間に、窒素含有ガスを供給する工程および/または酸素含有ガスを供給する工程を設けることで、SiC系の膜として、SiCN膜、SiOC膜およびSiOCN膜のうち少なくとも何れか1種類の膜を形成するようにしてもよい。
【0093】
なお、有機シリコン系原料としては、例えば、Si2C2H10、SiC2H8、Si2CH8、SiC3H10、Si3CH10、SiC4H12、Si2C3H12、Si3C2H12、Si4CH12、SiC2H6、SiC3H8、Si2C2H8、SiC4H10、Si2C3H10、Si3C2H10等の有機シラン原料のうち、少なくとも1種類の原料を好ましく用いることができる。すなわち、有機シリコン系原料としては、例えば、炭素元素が単結合の場合、SixCyH2(x+y+1)(式中、x、yは、それぞれ1以上の整数)で表される原料を好ましく用いることができ、また例えば、炭素元素が二重結合の場合、SixC(y+1)H2(x+y+1)(式中、x、yは、それぞれ1以上の整数)で表される原料を好ましく用いることができる。なお、これらの有機シラン原料は、シリコン(Si)、炭素(C)および水素(H)の3元素のみで構成され、塩素(Cl)を含まない原料であり、クロル非含有シラン系原料ともいえる。有機シリコン系原料は、SiC膜を形成する際のシリコン源(シリコンソース)として作用すると共に炭素源(カーボンソース)としても作用する。
【0094】
水素含有ガスとしては、例えば、水素(H2)ガス、アンモニア(NH3)ガスの他、メタン(CH4)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等の炭化水素系ガスや、SiH4、Si2H6等のシラン系ガス等を好ましく用いることができる。
【0095】
窒素含有ガスとしては、例えば、アンモニア(NH3)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等を好ましく用いることができる。窒素含有ガスは、SiCN膜を形成する際の窒素源(窒素ソース)として作用する。なお、窒素(N2)ガスは不活性ガスであり、SiC膜中に取り込まれないので、窒素源(窒素ソース)から除かれる。
【0096】
また、窒素含有ガスとしては、アミン系ガスを用いることもできる。なお、アミン系ガスとは、アミン基を含むガスのことであり、少なくとも炭素(C)、窒素(N)及び水素(H)を含むガスである。アミン系ガスは、エチルアミン、メチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン等のアミンを含む。ここで、アミンとは、アンモニア(NH3)の水素原子をアルキル基等の炭化水素基で置換した形の化合物の総称である。つまり、アミンは、アルキル基等の炭化水素基を含む。アミン系ガスは、シリコン(Si)を含んでいないことからシリコン非含有のガスとも言え、更には、シリコン及び金属を含んでいないことからシリコン及び金属非含有のガスとも言える。アミン系ガスとしては、例えば、トリエチルアミン((C2H5)3N、略称:TEA)、ジエチルアミン((C2H5)2NH、略称:DEA)、モノエチルアミン(C2H5NH2、略称:MEA)等のエチルアミン系ガス、トリメチルアミン((CH3)3N、略称:TMA)、ジメチルアミン((CH3)2NH、略称:DMA)、モノメチルアミン(CH3NH2、略称:MMA)等のメチルアミン系ガス、トリプロピルアミン((C3H7)3N、略称:TPA)、ジプロピルアミン((C3H7)2NH、略称:DPA)、モノプロピルアミン(C3H7NH2、略称:MPA)等のプロピルアミン系ガス、トリイソプロピルアミン([(CH3)2CH]3N、略称:TIPA)、ジイソプロピルアミン([(CH3)2CH]2NH、略称:DIPA)、モノイソプロピルアミン((CH3)2CHNH2、略称:MIPA)等のイソプロピルアミン系ガス、トリブチルアミン((C4H9)3N、略称:TBA)、ジブチルアミン((C4H9)2NH、略称:DBA)、モノブチルアミン(C4H9NH2、略称:MBA)等のブチルアミン系ガス、または、トリイソブチルアミン([(CH3)2CHCH2]3N、略称:TIBA)、ジイソブチルアミン([(CH3)2CHCH2]2NH、略称:DIBA)、モノイソブチルアミン((CH3)2CHCH2NH2、略称:MIBA)等のイソブチルアミン系ガスを好ましく用いることができる。すなわち、アミン系ガスとしては、例えば、(C2H5)xNH3−x、(CH3)xNH3−x、(C3H7)xNH3−x、[(CH3)2CH]xNH3−x、(C4H9)xNH3−x、[(CH3)2CHCH2]xNH3−x(式中、xは1〜3の整数)のうち少なくとも1種類のガスを好ましく用いることができる。アミン系ガスは、SiCN膜を形成する際の窒素源(窒素ソース)として作用すると共に炭素源(カーボンソース)としても作用する。窒素含有ガスとしてアミン系ガスを用いることで、SiCN膜の炭素成分の割合増加させる方向に制御することが容易となり、炭素成分が比較的多い、すなわち、カーボンリッチなSiCN膜を形成することが可能となる。
【0097】
酸素含有ガスとしては、例えば、酸素(O2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、オゾン(O3)ガス、水素(H2)ガス+O2ガス、H2ガス+O3ガス、水蒸気(H2O)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス等を好ましく用いることができる。
【0098】
また、本実施の形態では、DSBガスとH2ガスとを用いてSiC系の膜を形成する例について説明したが、H2ガスの使用を省略することもできる。すなわち、DSBガスを単独で用いることで、SiC系の膜を形成することもできる。また、N2等の不活性ガスで希釈したDSBガスを単独で用いることで、SiC系の膜を形成することもできる。
【0099】
例えば、図10のように、工程AにおいてDSBガスを単独で、もしくは、不活性ガスで希釈したDSBガスを単独で処理室内に供給して封じ込め、工程Bにおいてその状態を維持し、工程Cにおいて処理室内を排気し、工程A、工程B、工程Cを含むサイクルを所定回数実施することでSiC系の膜としてSiC膜を形成するようにしてもよい。この場合、工程Aと工程Bとを所定回数実施する工程(工程D)と、工程Cと、で構成されるサイクルを、所定回数実施するようにしてもよい。このときの処理条件は、DSBガスとH2ガスとを用いる場合と同様な処理条件とすることができる。なお、図10は、工程Aと工程Bとを1回実施する工程(工程D)と、工程Cと、で構成されるサイクルを、複数回実施する例を示している。
【0100】
このように、H2ガスの使用を省略し、DSBガスを単独で、もしくは、不活性ガスで希釈したDSBガスを単独で用いることでも、実用レベルの平坦性、膜厚均一性およびステップカバレッジを有するSiC膜を形成できることを確認した。ただし、DSBガスとH2ガスとを用いる場合の方が、特に、より深いトレンチやビア、すなわち、高アスペクト比のトレンチやビアに対して成膜する場合に、より高い平坦性、膜厚均一性およびステップカバレッジを有するSiC膜を形成することができる。
【0101】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。
【0102】
例えば、上述の実施の形態では、工程Bにおいて、各ガスの供給を停止する例について説明したが、工程Bにおいては、各ノズル内にN2ガス等の不活性ガスを連続的に流すようにしてもよい。その場合、処理室内に不活性ガスが供給され、処理室内の圧力が上昇することとなるが、各ノズル内に供給する不活性ガスの流量を制御することで、処理室内の圧力が処理圧力、すなわち、200〜5000Paの範囲内の所望の圧力を超えないようにすることとなる。工程Bにおいて、各ノズル内に不活性ガスを連続的に流すようにすることで、各ノズル内にシリコンや炭素を含む膜が形成されるのを防止することができる。
【0103】
また例えば、上述の実施形態では、一重反応管構造の処理室201を用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されず、二重反応管構造の処理室201を用いる場合にも好適に適用可能である。この場合、図11に示すように、反応管203を、外部反応管としてのアウタチューブ203aと、その内側に設けられた内部反応管としてのインナチューブ203bとで構成し、インナチューブ203b内部の筒中空部に形成される処理室201内に、有機シリコン系ガスを、もしくは、有機シリコン系ガスと水素含有ガスとを、例えば、インナチューブ203bの下端側から上端側に向けて流し、インナチューブ203bの上端側からインナチューブ203bとアウタチューブ203aとの間の筒状空間に流出させ、該筒状空間を流下させて排気管231から排気する。この場合も、上述の実施形態と同様に、排気管231に設けられたAPCバルブ244の開度を調整することで、上述の封じ込め状態を形成、維持することとなる。なお、図11において、図1で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0104】
このように、二重反応管構造の処理室201を用いることで、優れた平坦性および膜厚均一性を有するSiC系の膜を形成することが可能となる。
【0105】
なお、この場合、インナチューブ203bの上端部に、その内側に延出する延出部203cを設け、この延出部203cによりボート217の上端面(天板)217aの少なくとも一部を覆う構造とするのが好ましい。この延出部203cはウエハ200の表面の少なくとも一部を覆う構造ともいえる。また、この延出部203cは、ボート217の上端面217aと平行に、すなわち、ウエハ200の表面と平行に設けるのが好ましい。
【0106】
このように、インナチューブ203bの上端部に延出部203cを設け、この延出部203cによりボート217の上端面217aの少なくとも一部を覆う構造とすることにより、実質的な処理室201の体積を小さくすることができ、有機シリコン系ガスが熱分解して反応種が生成される領域を減らし、また、多種の反応種の生成を抑えることができる。また、ウエハ200の上部を覆う構造なので、ウエハ200の上部、もしくは、アウタチューブ203aとインナチューブ203bとの間で生成された反応種がウエハ200へ接触するのを抑制することができる。この構造により、反応種の膜厚、膜質への影響を抑制することができ、ウエハ面内および面間で均一な膜厚および膜質を実現することが可能となる。
【0107】
また、この場合、インナチューブ203bの内壁とウエハ200の端部との間の距離を小さくするのが好ましい。ただし、ボート217は、ウエハ200を支持する係止溝217bが設けられるボート柱217c有し、ボート柱217cはウエハ200よりも外側に位置している。そのため、インナチューブ203bの内壁とウエハ200の端部との間の距離を小さくしようとすると、インナチューブ203bの内壁とボート柱217cとが接触してしまい、それ以上は、インナチューブ203bの内壁とウエハ200の端部との間の距離を狭めることができない。つまり、ボート柱217cがインナチューブ203bの内壁とウエハ200の端部との間の距離を小さくするのを妨げることとなる。そこで、インナチューブ203bの内壁とウエハ200の端部との間の距離をより小さくするために、例えば、図12に示すように、インナチューブ203bの内壁のボート柱217cに対応する部分に、ボート柱217cの部分を避けるスペース(凹部)としてのボート柱溝203dを設けるようにするのが好ましい。なお、図12は、便宜上、インナチューブ203bと、ボート217と、ウエハ200だけを抜き出して示している。
【0108】
この構造、すなわち、インナチューブ203bの内壁にボート217を構成する部材を避けるように凹部を設けた構造により、インナチューブ203bの内壁とウエハ200の端部との間の距離を極限まで小さくすることが可能となる。
【0109】
このように、インナチューブ203bの内壁とウエハ200の端部との間の距離を小さくすることにより、実質的な処理室201の体積を小さくすることができ、反応種が生成される領域を減らし、また、多種の反応種の生成を抑えることができる。この構造により、反応種の膜厚、膜質への影響を抑制することができ、ウエハ面内および面間で均一な膜厚および膜質を実現することが可能となる。
【0110】
また、この場合、アウタチューブ203aの天井面(上端面)を平面とするのが好ましい。また、この天井面は、インナチューブ203bの上端部の延出部203cと平行に、すなわち、ボート217の上端面217aと平行に、すなわち、ウエハ200の表面と平行に設けるのが好ましい。なお、アウタチューブ203aの強度を保つため、アウタチューブ203aの天井面の厚さ(肉厚)は、他の部分、例えば、アウタチューブ203aの側壁部よりも厚くするのが好ましい。
【0111】
このように、アウタチューブ203aの天井面を平面とすることで、実質的な処理室201の体積を小さくすることができ、反応種が生成される領域を減らし、また、多種の反応種の生成を抑えることができる。この構造により、反応種の膜厚、膜質への影響を抑制することができ、ウエハ面内および面間で均一な膜厚および膜質を実現することが可能となる。
【0112】
また例えば、上述の実施形態では、基板を支持する基板支持具としてラダーボート(ボート支柱に係止溝を設けたタイプのボート)を用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されず、リングボートを用いる場合にも好適に適用可能である。この場合、例えば、リングボートは、周方向に適宜間隔を開けて立設した3〜4本のボート支柱と、ボート支柱に水平に多段に取り付けられ基板の外周を裏面から支持する支持板としてのリング状ホルダとから構成されるようにしてもよい。この場合、リング状ホルダは、外径が基板の径よりも大きく、内径が基板の径よりも小さいリング状プレートと、リング状プレート上の周方向に適宜間隔を置いて複数設けられ、基板の外周裏面を保持する基板保持用爪とから構成されるようにしてもよい。また、この場合、リング状ホルダは、外径および内径が基板の径よりも大きいリング状プレートと、リング状プレートの内側の周方向に適宜間隔を置いて複数設けられ、基板の外周裏面を保持する基板保持用爪とから構成されるようにしてもよい。リング状プレートが存在しない場合に比べて、リング状プレートがある分、各ノズルの孔から基板毎に分離された領域(この場合、リング状プレート間で区切られた領域)への距離が短くなるので、各ノズルから噴出したガスが基板領域に行き渡り易くなるという利点がある。これにより基板上へのガス供給量を十分に保つことが可能となり、成膜速度の低下や、均一性の悪化を防ぐことができる。リングボートを用いることで、優れた平坦性および膜厚均一性を有するSiC系の膜を形成することが可能となる。
【0113】
また、上述の実施形態では、半導体元素であるシリコンを含むシリコン系絶縁膜(SiC膜、SiCN膜、SiOCN膜、SiOC膜)を形成する例について説明したが、本発明は、例えばチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)等の金属元素を含む金属系薄膜を形成する場合にも適用することができる。
【0114】
例えば、本発明は、チタン炭化膜(TiC膜)、ジルコニウム炭化膜(ZrC膜)、ハフニウム炭化膜(HfC膜)、タンタル炭化膜(TaC膜)、アルミニウム炭化膜(AlC膜)、モリブデン炭化膜(MoC膜)等の金属炭化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0115】
また例えば、本発明は、チタン炭窒化膜(TiCN膜)、ジルコニウム炭窒化膜(ZrCN膜)、ハフニウム炭窒化膜(HfCN膜)、タンタル炭窒化膜(TaCN膜)、アルミニウム炭窒化膜(AlCN膜)、モリブデン炭窒化膜(MoCN膜)等の金属炭窒化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0116】
また例えば、本発明は、チタン酸炭窒化膜(TiOCN膜)、ジルコニウム酸炭窒化膜(ZrOCN膜)、ハフニウム酸炭窒化膜(HfOCN膜)、タンタル酸炭窒化膜(TaOCN膜)、アルミニウム酸炭窒化膜(AlOCN膜)、モリブデン酸炭窒化膜(MoOCN膜)等の金属酸炭窒化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0117】
また例えば、本発明は、チタン酸炭化膜(TiOC膜)、ジルコニウム酸炭化膜(ZrOC膜)、ハフニウム酸炭化膜(HfOC膜)、タンタル酸炭化膜(TaOC膜)、アルミニウム酸炭化膜(AlOC膜)、モリブデン酸炭化膜(MoOC膜)等の金属酸炭化膜を形成する場合にも好適に適用することができる。
【0118】
この場合、上述の実施形態における有機シリコン系原料ガスの代わりに、金属元素を含む有機金属系原料ガスを用い、上述の実施形態と同様なシーケンスにより成膜を行うことができる。有機金属系原料ガスは、金属元素、炭素元素および水素元素の3元素のみで構成される原料を用いるのが好ましい。水素含有ガス、窒素含有ガス、酸素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様なガスを用いることができる。なお、このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【0119】
すなわち、本発明は、半導体元素や金属元素等の所定元素を含む薄膜を形成する場合に好適に適用することができる。
【0120】
また、上述の実施の形態では、ノンプラズマでSiC系の膜を形成する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、プラズマを用いてSiC系の膜を形成する場合にも、好適に適用できる。この場合、有機シリコン系ガスおよび水素含有ガスのうち少なくとも何れか一方をプラズマで励起(活性化)させることとなる。有機シリコン系ガスおよび水素含有ガスのうち少なくとも何れか一方のガスのプラズマによる励起は、ダイレクトプラズマにより処理室201内で行うようにしてもよいし、リモートプラズマにより処理室201外で行うようにしてもよい。
【0121】
また、上述の実施の形態では、主に、7通りの成膜シーケンスによりSiC系の膜をそれぞれ形成する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、7通りの成膜シーケンスを適宜組み合わせて用いてもよい。例えば、図4、5、6、10の成膜シーケンスのそれぞれと、図7、8、9の成膜シーケンスのそれぞれとを、組み合わせて用いてもよい。
【0122】
また例えば、上述の実施の形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて成膜する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜する場合にも、好適に適用できる。
【0123】
また、上述の実施形態の各成膜例や各応用例等は、適宜組み合わせて用いることができる。
【0124】
また、本発明は、例えば、既存の基板処理装置のプロセスレシピを変更することでも実現できる。プロセスレシピを変更する場合は、本発明に係るプロセスレシピを電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体を介して既存の基板処理装置にインストールしたり、また、既存の基板処理装置の入出力装置を操作し、そのプロセスレシピ自体を本発明に係るプロセスレシピに変更することも可能である。
【実施例】
【0125】
(実施例1)
上述の図4を参照して説明した、本発明の実施の形態における成膜シーケンスにより、ウエハ200上に評価サンプルとしてSiC膜を形成した。そのときの処理室201とウエハ200の温度は425℃とし、材料の供給量、すなわち、材料の供給流量、供給時間は、処理室201の容積100Lに対してそれぞれ次のように設定した。すなわち、H2ガスの供給流量、供給時間を、それぞれ0.20slm、40秒とし、DSBガスの供給流量、供給時間を、それぞれ0.10slm、20秒とした。各工程におけるそれら以外の処理条件は上述の実施の形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。そして、その評価サンプルにおけるSiC膜中のシリコン(Si)、炭素(C)および酸素(O)の濃度をX線光電子分光(XPS)により測定した。
【0126】
その結果を図13に示す。図13は、各原子の濃度の深さ方向プロファイルを示す図であり、横軸はスパッタ時間(分)(深さと同義)を、縦軸は膜中の各原子の濃度(%)を示している。
【0127】
図13より、本実施例によれば、炭素の原子濃度が30%程度のSiC膜が形成されることが分かる。また、SiC膜中の酸素の原子濃度は3%未満であり、不純物レベルであることも分かる。なお、発明者が行った他の実験では、本発明の実施の形態における成膜シーケンスによれば、SiC膜中の炭素の原子濃度が、例えば、25〜35%となるように制御できることを確認した。
【0128】
(実施例2)
上述の図4を参照して説明した、本発明の実施の形態における成膜シーケンスにより、表面にアスペクト比が4〜5程度のトレンチを有するウエハ200上に、評価サンプルとしてSiC膜を形成した。そのときの処理室201とウエハ200の温度は425℃とし、材料の供給量、すなわち、材料の供給流量、供給時間は、処理室201の容積100Lに対してそれぞれ次のように設定した。すなわち、H2ガスの供給流量、供給時間を、それぞれ0.20slm、40秒とし、DSBガスの供給流量、供給時間を、それぞれ0.10slm、20秒とした。各工程におけるそれら以外の処理条件は上述の実施の形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。そして、その評価サンプルにおけるSiC膜の断面TEM画像を観察するとともに、ステップカバレッジを測定した。
【0129】
そのTEM画像を図14に示す。図14より、本実施例によれば、表面にトレンチを有するウエハ200に対して、優れた平坦性および膜厚均一性を有し、高いステップカバレッジを有するSiC膜が形成されることが分かる。このときのSiC膜のステップカバレッジは85%程度であった。なお、本発明者が行った他の実験では、本発明の実施の形態における成膜シーケンスによれば、例えば、80〜95%程度のステップカバレッジを有するSiC膜を形成できることを確認した。
【0130】
(実施例3)
上述の図4を参照して説明した、本発明の実施の形態における成膜シーケンスにより、ウエハ200上に評価サンプルとしてSiC膜を形成した。そのときの各工程における処理条件は上述の実施の形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。なお、評価サンプルとしては、実施例1と同様なサンプルを準備した。その評価サンプルにおけるSiC膜に対し、1%HF溶液によるウェットエッチング評価を行った。その結果、ウェットエッチングレートが1Å/min以下の耐性が得られることを確認した。
【0131】
(実施例4)
上述の図4を参照して説明した、本発明の実施の形態における成膜シーケンスにより、ウエハ200上に評価サンプルとしてSiC膜を形成した。そのときの各ステップにおける処理条件は上述の実施の形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。なお、評価サンプルとしては、実施例1と同様な評価サンプルを準備した。その評価サンプルにおけるSiC膜に対し、プラズマ酸化を行い、その前後におけるSiC膜のシリコン(Si)、炭素(C)および酸素(O)の濃度を蛍光エックス線分析(XRF)により測定した。その結果、SiC膜の最表面が自然酸化されるレベルの耐性を確認した。
【0132】
(実施例5)
上述の図10を参照して説明した成膜シーケンスにより、すなわち、H2ガスの使用を省略し、DSBガスを単独で用いることにより、表面にアスペクト比が4〜5程度のトレンチを有するウエハ200上に、評価サンプルとしてSiC膜を形成した。そのときの処理室201とウエハ200の温度は400〜420℃とし、工程Bにおける封じ込め時の処理室内の圧力を200〜500Paとした。各工程におけるそれら以外の処理条件は上述の実施の形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。そして、その評価サンプルにおけるSiC膜の断面TEM画像を観察するとともに、ステップカバレッジを測定した。
【0133】
その結果、本実施例によれば、表面にトレンチを有するウエハ200に対して、優れた平坦性および膜厚均一性を有し、高いステップカバレッジを有するSiC膜が形成されることを確認した。このときのSiC膜のステップカバレッジは80〜90%程度であった。なお、本発明者が行った他の実験では、本発明の実施の形態における成膜シーケンスによれば、例えば、80〜95%程度のステップカバレッジを有するSiC膜を形成できることを確認した。
【0134】
(本発明の好ましい態様)
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0135】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0136】
(付記2)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、前記処理室内が、前記有機シリコン系ガスが熱的に分解するような温度に加熱される。
【0137】
(付記3)
付記1または2の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、ノンプラズマの雰囲気下で行われる。
【0138】
(付記4)
付記1乃至3のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に所定回数行う工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を交互に所定回数行う。
【0139】
ここで、「(A)前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、(B)前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に所定回数行う」とは、(A)前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、(B)前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を1サイクルとした場合、このサイクルを1回行う場合と、このサイクルを複数回行う(複数回繰り返す)場合の、両方を含む、すなわち、このサイクルを1回以上(1回もしくは複数回)行うことを意味する。同様に、「(A)前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、(B)前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に所定回数行う工程と、(C)前記処理室内を排気する工程と、を交互に所定回数行う」とは、(A)前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、(B)前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に所定回数行う工程と、(C)前記処理室内を排気する工程と、を1サイクルとした場合、このサイクルを1回行う場合と、このサイクルを複数回行う(複数回繰り返す)場合の、両方を含む、すなわち、このサイクルを1回以上(1回もしくは複数回)行うことを意味する。
【0140】
(付記5)
付記1乃至3のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返す。
【0141】
(付記6)
付記1乃至3のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に複数回繰り返す工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返す。
【0142】
(付記7)
付記1乃至6のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程では、前記有機シリコン系ガスと水素含有ガスとを前記処理室内に封じ込め、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程では、前記有機シリコン系ガスと前記水素含有ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する。
【0143】
(付記8)
本発明の他の態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスと水素含有ガスとを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスと前記水素含有ガスとを供給して、前記有機シリコン系ガスと前記水素含有ガスとを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記有機シリコン系ガスと前記水素含有ガスとを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0144】
(付記9)
付記1乃至8のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記サイクルは、更に、前記処理室内へ水素含有ガスを供給する工程を有する。
【0145】
(付記10)
付記1乃至9のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記各ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記各ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内へ水素含有ガスを供給する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行う。
【0146】
(付記11)
付記1乃至9のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記各ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記各ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内へ水素含有ガスを供給する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返す。
【0147】
(付記12)
付記9乃至11のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記処理室内へ水素含有ガスを供給する工程では、前記各ガスを封じ込めた状態を維持した後の前記処理室内へ水素含有ガスを供給する。
【0148】
(付記13)
付記1乃至12のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記有機シリコン系ガスは、シリコン元素、炭素元素および水素元素で構成される。
【0149】
(付記14)
付記1乃至12のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記有機シリコン系ガスは、SixCyH2(x+y+1)およびSixC(y+1)H2(x+y+1)(式中、x、yは、それぞれ1以上の整数)のうち少なくとも何れか1種類のガスである。
【0150】
(付記15)
付記1乃至12のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記有機シリコン系ガスは、Si2C2H10、SiC2H8、Si2CH8、SiC3H10、Si3CH10、SiC4H12、Si2C3H12、Si3C2H12、Si4CH12、SiC2H6、SiC3H8、Si2C2H8、SiC4H10、Si2C3H10、Si3C2H10のうち少なくとも何れか1種類のガスである。
【0151】
(付記16)
付記1乃至15のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、前記基板の温度を350℃以上500℃以下とする。
【0152】
(付記17)
付記1乃至16のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、前記各ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する時間、前記各ガスの供給量および前記基板の温度のうち少なくとも何れかを制御することにより、前記シリコンおよび炭素を含む膜中の炭素の原子濃度を制御する。
【0153】
(付記18)
付記17の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、前記各ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する時間、前記各ガスの供給量および前記基板の温度のうち少なくとも何れかを制御することにより、前記シリコンおよび炭素を含む膜中の炭素の原子濃度が25〜35%となるように制御する。
【0154】
(付記19)
付記1乃至18のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記各ガスを前記処理室内に封じ込める工程および前記各ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程では、前記処理室内の排気を停止する。
【0155】
(付記20)
付記1乃至18のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記各ガスを前記処理室内に封じ込める工程および前記各ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程では、前記各ガスを前記処理室内へ供給しつつ排気し、その際、前記各ガスの前記処理室内からの排気レートを前記各ガスの前記処理室内への供給レートよりも小さくした状態を維持する。
【0156】
(付記21)
付記1乃至20のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜は、シリコン炭化膜(SiC膜)を含む。
【0157】
(付記22)
付記1乃至20のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、更に、窒素含有ガスを供給する工程および/または酸素含有ガスを供給する工程を有し、前記シリコンおよび炭素を含む膜として、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)およびシリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)のうち少なくとも何れか1種類の膜を形成する。
【0158】
(付記23)
付記1乃至20のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、更に、窒素含有ガスを供給する工程を有し、前記シリコンおよび炭素を含む膜として、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)を形成する。
【0159】
(付記24)
付記1乃至20のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、更に、酸素含有ガスを供給する工程を有し、前記シリコンおよび炭素を含む膜として、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)を形成する。
【0160】
(付記25)
付記1乃至20のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、更に、窒素含有ガスを供給する工程と、酸素含有ガスを供給する工程とを有し、前記シリコンおよび炭素を含む膜として、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)およびシリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)を形成する。
【0161】
(付記26)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程は、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内へ供給しつつ排気し、前記有機シリコン系ガスの前記処理室内からの排気レートを前記有機シリコン系ガスの前記処理室内への供給レートよりも小さくした状態を形成する工程と、
その状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0162】
(付記27)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う基板処理方法が提供される。
【0163】
(付記28)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内を加熱するヒータと、
前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給する有機シリコン系ガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
基板が収容された加熱された状態の前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する処理を行い、その際、前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める処理と、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する処理と、前記処理室内を排気する処理と、を含むサイクルを所定回数行うように、前記ヒータ、前記有機シリコン系ガス供給系および前記排気系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0164】
(付記29)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内に基板を収容する手順と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める手順と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する手順と、
前記処理室内を排気する手順と、
を含むサイクルを所定回数実行させるプログラムが提供される。
【0165】
(付記30)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内に基板を収容する手順と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める手順と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する手順と、
前記処理室内を排気する手順と、
を含むサイクルを所定回数実行させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0166】
121 コントローラ
200 ウエハ
201 処理室
202 処理炉
203 反応管
207 ヒータ
231 ガス排気管
232a 第1ガス供給管
232b 第2ガス供給管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に所定回数行う工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を交互に所定回数行う請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う基板処理方法。
【請求項4】
基板を収容する処理室と、
前記処理室内を加熱するヒータと、
前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給する有機シリコン系ガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
基板が収容された加熱された状態の前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する処理を行い、その際、前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める処理と、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する処理と、前記処理室内を排気する処理と、を含むサイクルを所定回数行うように、前記ヒータ、前記有機シリコン系ガス供給系および前記排気系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項5】
基板処理装置の処理室内に基板を収容する手順と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める手順と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する手順と、
前記処理室内を排気する手順と、
を含むサイクルを所定回数実行させるプログラム。
【請求項1】
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、を交互に所定回数行う工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を交互に所定回数行う請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
基板を処理室内に収容する工程と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程と、を有し、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する工程では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める工程と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する工程と、
前記処理室内を排気する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う基板処理方法。
【請求項4】
基板を収容する処理室と、
前記処理室内を加熱するヒータと、
前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給する有機シリコン系ガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
基板が収容された加熱された状態の前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する処理を行い、その際、前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める処理と、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する処理と、前記処理室内を排気する処理と、を含むサイクルを所定回数行うように、前記ヒータ、前記有機シリコン系ガス供給系および前記排気系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項5】
基板処理装置の処理室内に基板を収容する手順と、
加熱された前記処理室内へ有機シリコン系ガスを供給して前記基板上にシリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記シリコンおよび炭素を含む膜を形成する手順では、
前記処理室内へ前記有機シリコン系ガスを供給して、前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込める手順と、
前記有機シリコン系ガスを前記処理室内に封じ込めた状態を維持する手順と、
前記処理室内を排気する手順と、
を含むサイクルを所定回数実行させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−102130(P2013−102130A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−186394(P2012−186394)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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