説明

半導体装置の製造方法、基板処理方法及び基板処理装置

【課題】気化器の液体原料流路内からの有機金属液体原料の除去を促進させ、液体原料流路内の閉塞を抑制する。
【解決手段】基板を収容した処理室内に反応物質を供給することにより基板を処理する工程を有し、反応物質は液体原料を気化部で気化させた原料ガスを含み、基板を処理する工程では、気化部に液体原料を溶解することのできる溶媒と液体原料を供給して気化させる気化動作を間欠的に行い、液体原料の気化動作時以外の時であって、液体原料の気化動作を所定回数行う毎に、気化部に溶媒を、液体原料の気化動作時に供給する溶媒の流量よりも大流量で流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体原料を気化させた原料ガスにより基板を処理する半導体装置の製造方法、及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハ等の基板上に原子層単位で薄膜を形成する方法として、いわゆるALD(Atomic Layer Deposition)法が使用されている。ALD法では、例えば、(1)基板を収容した処理室内に第1の処理ガスを供給して基板表面に吸着させる工程と、(2)処理室内に残留している第1の処理ガスを除去するために処理室内に不活性ガスを導入してパージする工程と、(3)第2の処理ガスを処理室内に供給して基板表面に吸着している第1の処理ガスと反応させて薄膜を形成する工程と、(4)処理室内に残留している第2の処理ガスや反応副生成物を除去するために処理室内に不活性ガスを導入してパージする工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを繰り返す工程を有している。
【0003】
ここで、上述した第1の処理ガスとしては、例えば、常温で液体である液体原料を気化させて得られるガスが用いられる場合がある。そして、液体原料を気化させる装置として、気化器が用いられる場合がある。気化器は、例えば、液体原料を気化させてガスを発生させる気化室と、この気化室へ液体原料を吐出するまでの流路である液体原料流路と、気化室にて発生させた原料ガスを外部に対して供給する供給口と、を有している。
【0004】
なお、液体原料流路には、液体原料の供給を制御する開閉バルブが設けられる。そして、上述の(1)の工程では、液体原料流路に設けられている開閉バルブを開けることにより、気化室への液体原料の供給を開始する。また、(1)以外の工程では、該開閉バルブを閉じることにより気化室への液体原料の供給を停止すると共に、液体原料流路内に残留した液体原料が変質して液体原料流路が閉塞されてしまうことを防ぐために、液体原料流路内に不活性ガスを供給してパージする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述の液体原料としては、例えば、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、La(ランタン)などの元素を含む有機金属液体原料が用いられる場合がある。これらの有機金属液体原料は蒸気圧が低く粘性が高いため、上述の有機金属液体原料を、例えばECH(エチルシクロヘキサン)やTHF(テトラヒドロフラン)などの溶媒(ソルベント)により希釈してから用いる場合が多い。
【0006】
しかしながら、上述した溶媒は、溶質である有機金属液体原料よりも蒸気圧が高い。そのため、上述の(1)以外の工程において、液体原料流路内に不活性ガスを供給してパージすると、溶媒だけが先に蒸発してしまい、有機金属液体原料だけが液体原料流路内に残留してしまう場合がある。そして、有機金属液体原料は高粘性であるため、液体原料流路内に不活性ガスを供給してパージしても除去することは困難であり、液体原料流路内が液体原料により閉塞されてしまう場合がある。
【0007】
本発明にかかる半導体装置の製造方法及び基板処理装置は、気化器の液体原料流路内からの有機金属液体原料の除去を促進させ、液体原料流路内の閉塞を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、処理室内に基板を搬入する工程と、前記処理室内に複数種類の反応物質を複数回供給することにより前記基板を処理する工程と、処理後の前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、を有し、前記複数種類の反応物質のうち少なくともいずれか一つは、液体原料を気化部で気化させた原料ガスを含み、前記基板を処理する工程では、前記気化部に前記液体原料を供給して気化させる気化動作を間欠的に行うと共に、少なくとも前記液体原料の前記気化動作時以外の時に、前記気化部に前記液体原料を溶解することのできる溶媒を第1の流量で流し、前記液体原料の前記気化動作時以外の時であって、前記液体原料の前記気化動作を所定回数行う毎に、前記気化部に前記溶媒を前記第1の流量よりも大きな第2の流量で流す半導体装置の製造方法が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、基板を処理する処理室と、液体原料を気化する気化部と、前記気化部に液体原料を供給する液体原料供給系と、前記気化部で前記液体原料を気化させた原料ガスを前記処理室内に供給する原料ガス供給系と、前記原料ガスとは異なる反応ガスを前記処理室内に供給する反応ガス供給系と、前記液体原料を溶解することのできる溶媒を前記気化部に供給する溶媒供給系と、前記処理室内への前記原料ガスの供給及び前記反応ガスの供給を複数回行い、その際、前記気化部に前記液体原料を供給して気化させる気化動作を間欠的に行うと共に、少なくとも前記液体原料の前記気化動作時以外の時に、前記気化部に前記溶媒を第1の流量で流し、前記液体原料の前記気化動作時以外の時であって、前記液体原料の前記気化動作を所定回数行う毎に、前記気化部に前記溶媒を前記第1の流量よりも大きな第2の流量で流すように、前記液体原料供給系、前記気化部、前記原料ガス供給系、前記溶媒供給系、および、前記反応ガス供給系を制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる半導体装置の製造方法及び基板処理装置によれば、気化器の液体原料流路内からの有機金属液体原料の除去を促進させ、液体原料流路内の閉塞を抑制させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置におけるガス供給系の構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置における各バルブの開閉タイミングを示すシーケンス図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置のウェハ処理時における断面構成図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置のウェハ搬送時における断面構成図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかる気化器の概略構成図である。
【図7】本発明の第3実施形態にかかる縦型ALD装置の縦型処理炉の概略構成図であり、(a)は、処理炉部分を縦断面で示し、(b)は、処理炉部分を(a)のA−A線断面図で示す。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる基板処理装置におけるガス供給系の構成図である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかる基板処理工程における気化器への原料供給、溶媒供給、フラッシング動作のタイミングを示すシーケンス図である。
【図10】図9に示すシーケンス図の変形例であり、フラッシング動作の開始タイミングを遅延させる場合の溶媒供給のタイミングを示している。
【図11】図10に示すシーケンス図の変形例であり、(a)は各気化サイクルにおいて溶媒を流さない場合の溶媒供給のタイミングを示し、(b)は気化サイクルでの溶媒の流量を洗浄サイクルでの溶媒の流量よりも少なくした場合の溶媒供給のタイミングを示している。
【図12】図10に示すシーケンス図の変形例であり、(a)は気化サイクルを行う毎に大流量のフラッシング動作を実施する場合の溶媒供給のタイミングを示し、(b)は気化サイクルを行う毎に小流量のフラッシング動作を実施しつつ、気化サイクルを所定回数行う毎にさらに大流量のフラッシング動作を実施する場合の溶媒供給のタイミングを示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施形態にかかる基板処理装置の構成について、図3,4を参照しながら説明する。図4は、本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置のウェハ搬送時における断面構成図であり、図3は、本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置のウェハ処理時における断面構成図である。
【0013】
<処理室>
図3,4に示すとおり、本実施形態にかかる基板処理装置は、処理容器202を備えている。処理容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、処理容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)など金属材料により構成されている。処理容器202内には、基板としてのウェハ200を処理する処理室201が構成されている。
【0014】
処理室201内には、ウェハ200を支持する支持台203が設けられている。ウェハ200が直接触れる支持台203の上面には、例えば、石英(SiO)、カーボン、セラミックス、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al)、又は窒化アルミニウム(AlN)などから構成された支持板としてのサセプタ217が設けられている。また、支持台203には、ウェハ200を加熱する加熱手段としてのヒータ206が内蔵されている。なお、支持台203の下端部は、処理容器202の底部を貫通している。
【0015】
処理室201の外部には、昇降機構207bが設けられている。この昇降機構207bを作動させることにより、サセプタ217上に支持されるウェハ200を昇降させることが可能となっている。支持台203は、ウェハ200の搬送時には図4で示される位置(ウェハ搬送位置)まで下降し、ウェハ200の処理時には図3で示される位置(ウェハ処理位置)まで上昇する。なお、支持台203の下端部、及び昇降機構207bの周囲は、ベローズ203aにより覆われており、処理室201内は気密に保持されている。
【0016】
また、処理室201の底面(床面)には、例えば3本のリフトピン208bが鉛直方向に設けられている。また、支持台203には、かかるリフトピン208bを貫通させるための貫通孔208aが、リフトピン208bに対応する位置にそれぞれ設けられている。そして、支持台203をウェハ搬送位置まで下降させた時には、リフトピン208bの上端部が支持台203の上面から突出して、リフトピン208bがウェハ200を下方から支持するように構成されている。また、支持台203をウェハ処理位置まで上昇させたときには、リフトピン208bは支持台203の上面から埋没して、支持台203上面に設けられたサセプタ217がウェハ200を下方から支持するように構成される。なお、リフトピン208bは、ウェハ200と直接触れるため、例えば、石英やアルミナなどの材質で形成することが望ましい。
【0017】
<ウェハ搬送口>
処理室201の内壁側面には、処理室201の内外にウェハ200を搬送するためのウェハ搬送口250が設けられている。ウェハ搬送口250にはゲートバルブ251が設けられており、ゲートバルブ251を開けることにより、処理室201内と搬送室(予備室)271内とが連通するように構成されている。搬送室271は密閉容器272内に形成されており、搬送室271内にはウェハ200を搬送する搬送ロボット273が設けられている。搬送ロボット273には、ウェハ200を搬送する際にウェハ200を支持する搬送アーム273aが備えられている。支持台203をウェハ搬送位置まで下降させた状態で、ゲートバルブ251を開くことにより、搬送ロボット273により処理室201内と搬送室271内との間でウェハ200を搬送することが可能なように構成されている。処理室201内に搬送されたウェハ200は、上述したようにリフトピン208b上に一時的に載置される。
【0018】
<排気系>
処理室201の内壁側面であって、ウェハ搬送口250の反対側には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口260が設けられている。排気口260には排気管261が接続されており、排気管261には、処理室201内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器262、原料回収トラップ263、及び真空ポンプ264が順に直列に接続されている。主に、排気口260、排気管261、圧力調整器262、原料回収トラップ263、真空ポンプ264により排気系(排気ライン)が構成される。
【0019】
<ガス導入口>
処理室201の上部に設けられる後述のシャワーヘッド240の上面(天井壁)には、処理室201内に各種ガスを供給するためのガス導入口210が設けられている。なお、ガス導入口210に接続されるガス供給系の構成については後述する。
【0020】
<シャワーヘッド>
ガス導入口210と、ウェハ処理位置におけるウェハ200との間には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド240が設けられている。シャワーヘッド240は、ガス導入口210から導入されるガスを分散させるための分散板240aと、分散板240aを通過したガスをさらに均一に分散させて支持台203上のウェハ200の表面に供給するためのシャワー板240bと、を備えている。分散板240aおよびシャワー板240bには、複数の通気孔が設けられている。分散板240aは、シャワーヘッド240の上面及びシャワー板240bと対向するように配置されており、シャワー板240bは、支持台203上のウェハ200と対向するように配置されている。なお、シャワーヘッド240の上面と分散板240aとの間、および分散板240aとシャワー板240bとの間には、それぞれ空間が設けられており、かかる空間は、ガス導入口210から供給されるガスを分散させるための分散室(第1バッファ空間)240c、および分散板240aを通過したガスを拡散させるための第2バッファ空間240dとしてそれぞれ機能する。
【0021】
<排気ダクト>
処理室201の内壁側面には、段差部201aが設けられている。そして、この段差部201aは、コンダクタンスプレート204をウェハ処理位置近傍に保持するように構成されている。コンダクタンスプレート204は、内周部にウェハ200を収容する穴が設けられた1枚のドーナツ状(リング状)をした円板として構成されている。コンダクタンスプレート204の外周部には、所定間隔を開けて周方向に配列された複数の排出口204aが設けられている。排出口204aは、コンダクタンスプレート204の外周部がコンダクタンスプレート204の内周部を支えることができるよう、不連続に形成される。
【0022】
一方、支持台203の外周部には、ロワープレート205が係止している。ロワープレート205は、リング状の凹部205bと、凹部205bの内側上部に一体的に設けられたフランジ部205aとを備えている。凹部205bは、支持台203の外周部と、処理室201の内壁側面との隙間を塞ぐように設けられる。凹部205bの底部のうち排気口260付近の一部には、凹部205b内から排気口260側へガスを排出(流通)させるためのプレート排気口205cが設けられている。フランジ部205aは、支持台203の上部外周縁上に係止する係止部として機能する。フランジ部205aが支持台203の上部外周縁上に係止することにより、ロワープレート205が、支持台203の昇降に伴い、支持台203と共に昇降されるようになっている。
【0023】
支持台203がウェハ処理位置まで上昇したとき、ロワープレート205もウェハ処理位置まで上昇する。その結果、ウェハ処理位置近傍に保持されているコンダクタンスプレート204が、ロワープレート205の凹部205bの上面部分を塞ぎ、凹部205bの内部をガス流路領域とする排気ダクト259が形成されることとなる。なお、このとき、排気ダクト259(コンダクタンスプレート204及びロワープレート205)及び支持台203によって、処理室201内が、排気ダクト259よりも上方の処理室上部と、排気ダクト259よりも下方の処理室下部と、に仕切られることとなる。なお、コンダクタンスプレート204およびロワープレート205は、排気ダクト259の内壁に堆積する反応生成物をエッチングする場合を考慮して、高温保持が可能な材料、例えば、耐高温高負荷用石英で構成することが好ましい。
【0024】
ここで、ウェハ処理時における処理室201内のガスの流れについて説明する。まず、ガス導入口210からシャワーヘッド240の上部へと供給されたガスは、分散室(第1バッファ空間)240cを経て分散板240aの多数の孔から第2バッファ空間240dへと入り、さらにシャワー板240bの多数の孔を通過して処理室201内に供給され、ウェハ200上に均一に供給される。そして、ウェハ200上に供給されたガスは、ウェハ200の径方向外側に向かって放射状に流れる。そして、ウェハ200に接触した後の余剰なガスは、支持台203の外周に設けられた排気ダクト259上(すなわちコンダクタンスプレート204上)を、ウェハ200の径方向外側に向かって放射状に流れ、排気ダクト259上に設けられた排出口204aから、排気ダクト259内のガス流路領域内(凹部205b内)へと排出される。その後、ガスは排気ダクト259内を流れ、プレート排気口205cを経由して排気口260へと排気される。以上の通り、処理室201の下部への、すなわち支持台203の裏面や処理室201の底面側へのガスの回り込みが抑制される。
【0025】
続いて、上述したガス導入口210に接続されるガス供給系の構成について、図1,6を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系(ガス供給ライン)の構成図であり、図6は、本発明の第1実施形態にかかる気化器の概略構成図である。
【0026】
本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系は、液体原料を気化する気化部と、気化部に液体原料を供給する液体原料供給系と、気化部にて液体原料を気化させた原料ガスを処理室201内に供給する原料ガス供給系と、原料ガスとは異なる反応ガスを処理室201内に供給する反応ガス供給系と、気化部に洗浄液(溶媒)を供給する洗浄液供給系(溶媒供給系)と、を有している。さらに、本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置は、パージガス供給系と、ベント(バイパス)系とを有している。以下に、各部の構成について説明する。
【0027】
<液体原料供給系>
処理室201の外部には、液体原料としてのSr(ストロンチウム)元素を含む有機金属液体原料(以下第1液体原料という)を供給する第1液体原料供給源220s、Ba(バリウム)元素を含む有機金属液体原料(以下第2液体原料という)を供給する第2液体原料供給源220b、及びTi(チタニウム)元素を含む有機金属液体原料(以下第3液体原料という)を供給する第3液体原料供給源220tが設けられている。第1液体原料供給源220s、第2液体原料供給源220b、及び第3液体原料供給源220tは、内部に液体原料を収容(充填)可能なタンク(密閉容器)としてそれぞれ構成されている。なお、Sr,Ba,Ti元素を含む各有機金属液体原料は、例えば、ECH(エチルシクロヘキサン)やTHF(テトラヒドロフラン)などの溶媒(ソルベント)により0.05mol/L〜0.2mol/Lに希釈されてから、タンク内にそれぞれ収容される。
【0028】
ここで、第1液体原料供給源220s、第2液体原料供給源220b、及び第3液体原料供給源220tには、第1圧送ガス供給管237s、第2圧送ガス供給管237b、及び第3圧送ガス供給管237tがそれぞれ接続されている。第1圧送ガス供給管237s、第2圧送ガス供給管237b、及び第3圧送ガス供給管237tの上流側端部には、図示しない圧送ガス供給源が接続されている。また、第1圧送ガス供給管237s、第2圧送ガス供給管237b、及び第3圧送ガス供給管237tの下流側端部は、それぞれ第1液体原料供給源220s、第2液体原料供給源220b、及び第3液体原料供給源220t内の上部に存在する空間に連通しており、この空間内に圧送ガスを供給するように構成されている。なお、圧送ガスとしては、液体原料とは反応しないガスを用いることが好ましく、例えばArガス等の不活性ガスが好適に用いられる。
【0029】
また、第1液体原料供給源220s、第2液体原料供給源220b、及び第3液体原料供給源220tには、第1液体原料供給管211s、第2液体原料供給管211b、及び第3液体原料供給管211tがそれぞれ接続されている。ここで、第1液体原料供給管211s、第2液体原料供給管211b、及び第3液体原料供給管211tの上流側端部は、それぞれ第1液体原料供給源220s、第2液体原料供給源220b、及び第3液体原料供給源220t内に収容した液体原料内に浸されている。また、第1液体原料供給管211s、第2液体原料供給管211b、及び第3液体原料供給管211tの下流側端部は、液体原料を気化させる気化部としての気化器229s,229b,229tにそれぞれ接続されている。なお、第1液体原料供給管211s、第2液体原料供給管211b、及び第3液体原料供給管211tには、液体原料の供給流量を制御する流量制御手段としての液体流量コントローラ(LMFC)221s,221b,221tと、液体原料の供給を制御する開閉バルブvs1,vb1,vt1と、がそれぞれ設けられている。なお、開閉バルブvs1,vb1,vt1は、それぞれ気化器229s,229b,229tの内部に設けられている。
【0030】
上記構成により、開閉バルブvs1,vb1,vt1を開けるとともに、第1圧送ガス供給管237s、第2圧送ガス供給管237b、及び第3圧送ガス供給管237tから圧送ガスを供給することにより、第1液体原料供給源220s、第2液体原料供給源220b、及び第3液体原料供給源220tから気化器229s,229b,229tへと液体原料を圧送(供給)することが可能となる。主に、第1液体原料供給源220s、第2液体原料供給源220b、第3液体原料供給源220t、第1圧送ガス供給管237s、第2圧送ガス供給管237b、第3圧送ガス供給管237t、第1液体原料供給管211s、第2液体原料供給管211b、第3液体原料供給管211t、液体流量コントローラ221s,221b,221t、開閉バルブvs1,vb1,vt1により液体原料供給系(液体原料供給ライン)が構成される。
【0031】
<気化部>
液体原料を気化する気化部としての気化器229s,229b,229tは、図6にその詳細構造を示すように、液体原料をヒータ23s,23b,23tで加熱して気化させて原料ガスを発生させる気化室20s,20b,20tと、この気化室20s,20b,20tへ液体原料を吐出するまでの流路である液体原料流路21s,21b,21tと、液体原料の気化室20s,20b,20t内への供給を制御する上述の開閉バルブvs1,vb1,vt1と、気化室20s,20b,20tにて発生させた原料ガスを後述する第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213tへ供給するアウトレットとしての原料ガス供給口22s,22b,22tと、を有している。上述の第1液体原料供給管211s、第2液体原料供給管211b、及び第3液体原料供給管211tの下流側端部は、それぞれ開閉バルブvs1,vb1,vt1を介して液体原料流路21s,21b,21tの上流側端部に接続されている。液体原料流路21s,21b,21tには、それぞれキャリアガス供給系(キャリアガス供給ライン)としてのキャリアガス供給管24s,24b,24tが接続されており、気化室20s,20b,20t内にAr等のキャリアガスを供給するように構成されている。
【0032】
<原料ガス供給系>
上記の気化器229s,229b,229tの原料ガス供給口22s,22b,22tには、処理室201内に原料ガスを供給する第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、及び第3原料ガス供給管213tの上流側端部がそれぞれ接続されている。第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、及び第3原料ガス供給管213tの下流側端部は、合流するように一本化して原料ガス供給管213となり、一本化した原料ガス供給管213は、ガス導入口210に接続されている。なお、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、及び第3原料ガス供給管213tには、処理室201内への原料ガスの供給を制御する開閉バルブvs3,vb3,vt3がそれぞれ設けられている。
【0033】
上記構成により、気化器229s,229b,229tにて液体原料を気化させて原料ガスを発生させるとともに、開閉バルブvs3,vb3,vt3を開けることにより、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、及び第3原料ガス供給管213tから原料ガス供給管213を介して処理室201内へと原料ガスを供給することが可能となる。主に、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t、原料ガス供給管213、開閉バルブvs3,vb3,vt3により、原料ガス供給系(原料ガス供給ライン)が構成される。
【0034】
<洗浄液供給系(溶媒供給系)>
また、処理室201の外部には、洗浄液としての溶媒(ソルベント)であるECH(エチルシクロヘキサン)を供給する洗浄液供給源(溶媒供給源)220eが設けられている。洗浄液供給源220eは、内部に洗浄液を収容(充填)可能なタンク(密閉容器)として構成されている。なお、洗浄液としては、ECHに限定されず、THF(テトラヒドロフラン)などの溶媒を用いることが出来る。
【0035】
ここで、洗浄液供給源220eには、洗浄液圧送ガス供給管237eが接続されている。洗浄液圧送ガス供給管237eの上流側端部には、図示しない圧送ガス供給源が接続されている。また、洗浄液圧送ガス供給管237eの下流側端部は、洗浄液供給源220e内の上部に存在する空間に連通しており、この空間内に圧送ガスを供給するように構成されている。なお、圧送ガスとしては、Arガス等の不活性ガスが好適に用いられる。
【0036】
また、洗浄液供給源220eには洗浄液供給管(溶媒供給管)212が接続されている。洗浄液供給管212の上流側端部は洗浄液供給源220e内に収容した洗浄液内に浸されている。洗浄液供給管212の下流側端部は、3本のライン、すなわち、第1洗浄液供給管212s、第2洗浄液供給管212b、及び第3洗浄液供給管212tに分岐するように接続されている。第1洗浄液供給管212s、第2洗浄液供給管212b、及び第3洗浄液供給管212tの下流側端部は、気化器229s,229b,229tの液体原料流路21s,21b,21tにそれぞれ接続されている。なお、第1洗浄液供給管212s、第2洗浄液供給管212b、及び第3洗浄液供給管212tには、洗浄液の供給流量を制御する流量制御手段としての液体流量コントローラ222s,222b,222tと、洗浄液の供給を制御する開閉バルブvs2,vb2,vt2とが、それぞれ設けられている。なお、開閉バルブvs2,vb2,vt2は、それぞれ気化器229s,229b,229tの内部に設けられている。
【0037】
上記構成により、洗浄液圧送ガス供給管237eから圧送ガスを供給するとともに、開閉バルブvs1,vb1,vt1を閉じ、開閉バルブvs2,vb2,vt2を開けることにより、気化器229s,229b,229tの液体原料流路21s,21b,21t内に洗浄液を圧送(供給)して、液体原料流路21s,21b,21t内を洗浄することが可能となる。主に、洗浄液供給源220e、洗浄液圧送ガス供給管237e、洗浄液供給管212、第1洗浄液供給管212s、第2洗浄液供給管212b、第3洗浄液供給管212t、液体流量コントローラ222s,222b,222t、開閉バルブvs2,vb2,vt2により、洗浄液供給系(溶媒供給系)、すなわち洗浄液供給ライン(溶媒供給ライン)が構成される。
【0038】
<反応ガス供給系>
また、処理室201の外部には、酸素(O)ガスを供給する酸素ガス供給源230oが設けられている。酸素ガス供給源230oには、第1酸素ガス供給管211oの上流側端部が接続されている。第1酸素ガス供給管211oの下流側端部には、プラズマにより酸素ガスから反応ガス(反応物)すなわち酸化剤としてのオゾンガスを生成させるオゾナイザ229oが接続されている。なお、第1酸素ガス供給管211oには、酸素ガスの供給流量を制御する流量制御手段としての流量コントローラ221oが設けられている。
【0039】
オゾナイザ229oのアウトレットとしてのオゾンガス供給口22oには、反応ガス供給管としてのオゾンガス供給管213oの上流側端部が接続されている。また、オゾンガス供給管213oの下流側端部は、原料ガス供給管213に合流するように接続されている。すなわち、オゾンガス供給管213oは、反応ガスとしてのオゾンガスを処理室201内に供給するように構成されている。なお、オゾンガス供給管213oには、処理室201内へのオゾンガスの供給を制御する開閉バルブvo3が設けられている。
【0040】
なお、第1酸素ガス供給管211oの流量コントローラ221oよりも上流側には、第2酸素ガス供給管212oの上流側端部が接続されている。また、第2酸素ガス供給管212oの下流側端部は、オゾンガス供給管213oの開閉バルブvo3よりも上流側に接続されている。なお、第2酸素ガス供給管212oには、酸素ガスの供給流量を制御する流量制御手段としての流量コントローラ222oが設けられている。
【0041】
上記構成により、オゾナイザ229oに酸素ガスを供給してオゾンガスを発生させるとともに、開閉バルブvo3を開けることにより、処理室201内へオゾンガスを供給することが可能となる。なお、処理室201内へのオゾンガスの供給中に、第2酸素ガス供給管212oから酸素ガスを供給するようにすれば、処理室201内へ供給するオゾンガスを酸素ガスにより希釈して、オゾンガス濃度を調整することが可能となる。主に、酸素ガス供給源230o、第1酸素ガス供給管211o、オゾナイザ229o、流量コントローラ221o、オゾンガス供給管213o、開閉バルブvo3、第2酸素ガス供給管212o、流量コントローラ222oにより反応ガス供給系(反応ガス供給ライン)が構成される。
【0042】
<パージガス供給系>
また、処理室201の外部には、パージガスとしてのArガスを供給するためのArガス供給源230aが設けられている。Arガス供給源230aには、パージガス供給管214の上流側端部が接続されている。パージガス供給管214の下流側端部は、4本のライン、すなわち、第1パージガス供給管214s、第2パージガス供給管214b、第3パージガス供給管214t、及び第4パージガス供給管214oに分岐するように接続されている。第1パージガス供給管214s、第2パージガス供給管214b、第3パージガス供給管214t、及び第4パージガス供給管214oの下流側端部は、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t、及びオゾンガス供給管213oの開閉バルブvs3,vb3,vt3,vo3の下流側にそれぞれ接続されている。なお、第1パージガス供給管214s、第2パージガス供給管214b、第3パージガス供給管214t、及び第4パージガス供給管214oには、Arガスの供給流量を制御する流量制御手段としての流量コントローラ224s,224b,224t,224oと、Arガスの供給を制御する開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4とが、それぞれ設けられている。主に、Arガス供給源230a、パージガス供給管214、第1パージガス供給管214s、第2パージガス供給管214b、第3パージガス供給管214t、及び第4パージガス供給管214o、流量コントローラ224s,224b,224t,224o、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4によりパージガス供給系(パージガス供給ライン)が構成される。
【0043】
<ベント(バイパス)系>
また、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t、及びオゾンガス供給管213oの開閉バルブvs3,vb3,vt3,vo3の上流側には、第1ベント管215s、第2ベント管215b、第3ベント管215t、第4ベント管215oの上流側端部がそれぞれ接続されている。また、第1ベント管215s、第2ベント管215b、第3ベント管215t、第4ベント管215oの下流側端部は合流するように一本化してベント管215となり、ベント管215は排気管261の原料回収トラップ263よりも上流側に接続されている。第1ベント管215s、第2ベント管215b、第3ベント管215t、第4ベント管215oには、ガスの供給を制御するための開閉バルブvs5,vb5,vt5,vo5がそれぞれ設けられている。
【0044】
上記構成により、開閉バルブvs3,vb3,vt3,vo3を閉め、開閉バルブvs5,vb5,vt5,vo5を開けることで、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t、及びオゾンガス供給管213o内を流れるガスを、処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスさせ、処理室201外へとそれぞれ排気することが可能となる。
【0045】
また、第1パージガス供給管214s、第2パージガス供給管214b、第3パージガス供給管214t、及び第4パージガス供給管214oの開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4よりも上流側であって流量コントローラ224s,224b,224t,224oよりも下流側には、第5ベント管216s、第6ベント管216b、第7ベント管216t、第8ベント管216oがそれぞれ接続されている。また、第5ベント管216s、第6ベント管216b、第7ベント管216t、第8ベント管216oの下流側端部は合流するように一本化してベント管216となり、ベント管216は排気管261の原料回収トラップ263よりも下流側であって真空ポンプ264よりも上流側に接続されている。第5ベント管216s、第6ベント管216b、第7ベント管216t、第8ベント管216oには、ガスの供給を制御するための開閉バルブvs6,vb6,vt6,vo6がそれぞれ設けられている。
【0046】
上記構成により、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4を閉め、開閉バルブvs6,vb6,vt6,vo6を開けることで、第1パージガス供給管214s、第2パージガス供給管214b、第3パージガス供給管214t、及び第4パージガス供給管214o内を流れるArガスを、処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスさせ、処理室201外へとそれぞれ排気することが可能となる。なお、開閉バルブvs3,vb3,vt3,vo3を閉め、開閉バルブvs5,vb5,vt5,vo5を開けることで、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t、及びオゾンガス供給管213o内を流れるガスを、処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスさせ、処理室201外へとそれぞれ排気する場合には、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4を開けることにより、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t、及びオゾンガス供給管213o内にArガスを導入して、各原料ガス供給管内をパージするように設定されている。また、開閉バルブvs6,vb6,vt6,vo6は、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4と逆動作を行うように設定されており、Arガスを各原料ガス供給管内に供給しない場合には、処理室201をバイパスしてArガスを排気するようになっている。主に、第1ベント管215s、第2ベント管215b、第3ベント管215t、第4ベント管215o、ベント管215、第5ベント管216s、第6ベント管216b、第7ベント管216t、第8ベント管216o、ベント管216、開閉バルブvs5,vb5,vt5,vo5、開閉バルブvs6,vb6,vt6,vo6によりベント系(バイパス系)、すなわちベントライン(バイパスライン)が構成される。
【0047】
<コントローラ>
なお、本実施形態にかかる基板処理装置は、基板処理装置の各部の動作を制御するコントローラ280を有している。コントローラ280は、ゲートバルブ251、昇降機構207b、搬送ロボット273、ヒータ206、圧力調整器(APC)262、気化器229s,229b,229t、オゾナイザ229o、真空ポンプ264、開閉バルブvs1〜vs6,vb1〜vb6,vt1〜vt6,vo3〜vo6、液体流量コントローラ221s,221b,221t、222s、222b、222t、流量コントローラ224s,224b,224t,221o,222o,224o等の動作を制御する。
【0048】
以上、述べたように、本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置が構成される。
【0049】
(2)基板処理工程
続いて、本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造工程の一工程として、上述の基板処理装置を用いてALD法によりウェハ上に薄膜を形成する基板処理工程について、図5及び図2を参照しながら説明する。図5は、本発明の第1実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。また、図2は、本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置が有する各バルブの開閉タイミングを示すタイミングチャートとしてのシーケンス図である。このタイミングチャートにおいて、Highレベルはバルブ開を、Lowレベルはバルブ閉を示している。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ280によって制御される。
【0050】
<基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)>
まず、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図4に示すウェハ搬送位置まで下降させる。そして、ゲートバルブ251を開き、処理室201と搬送室271とを連通させる。そして、搬送ロボット273により搬送室271内から処理室201内へ処理対象のウェハ200を搬送アーム273aで支持した状態で搬入する(S1)。処理室201内に搬入したウェハ200は、支持台203の上面から突出しているリフトピン208b上に一時的に載置される。搬送ロボット273の搬送アーム273aが処理室201内から搬送室271内へ戻ると、ゲートバルブ251が閉じられる。
【0051】
続いて、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図3に示すウェハ処理位置まで上昇させる。その結果、リフトピン208bは支持台203の上面から埋没し、ウェハ200は、支持台203上面のサセプタ217上に載置される(S2)。
【0052】
<圧力調整工程(S3)、昇温工程(S4)>
続いて、圧力調整器(APC)262により、処理室201内の圧力が所定の処理圧力となるように制御する(S3)。また、ヒータ206に供給する電力を調整し、ウェハ200の表面温度が所定の処理温度となるように制御する(S4)。
【0053】
なお、基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)、圧力調整工程(S3)、及び昇温工程(S4)においては、真空ポンプ264を作動させつつ、開閉バルブvs3,vb3,vt3,vo3を閉じ、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4を開けることで、処理室201内にArガスを常に流しておく(idle)。これにより、ウェハ200上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。
【0054】
工程S1〜S4と並行して、第1液体原料(Sr元素を含む有機金属液体原料)を気化させた原料ガス(以下、第1原料ガスという)を生成(予備気化)させておく(Set up)。すなわち、開閉バルブvs2を閉めたまま、開閉バルブvs1を開けるとともに、第1圧送ガス供給管237sから圧送ガスを供給して、第1液体原料供給源220sから気化器229sへと第1液体原料を圧送(供給)させ、気化器229sにて第1液体原料を気化させて第1原料ガスを生成させておく。この予備気化工程では、真空ポンプ264を作動させつつ、開閉バルブvs3を閉めたまま、開閉バルブvs5を開けることにより、第1原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。
【0055】
また、工程S1〜S4と並行して、反応物としてのオゾンガスを生成させておく(Set up)ことが好ましい。すなわち、酸素ガス供給源230oからオゾナイザ229oへと酸素ガスを供給して、オゾナイザ229oにてオゾンガスを生成させておく。この際、真空ポンプ264を作動させつつ、開閉バルブvo3を閉めたまま、開閉バルブvo5を開けることにより、オゾンガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。
【0056】
気化器229sにて第1原料ガスを安定して生成させたり、あるいはオゾナイザ229oにてオゾンガスを安定して生成させたりするには所定の時間を要する。このため、本実施形態では、第1原料ガスあるいはオゾンガスを予め生成させておき、開閉バルブvs3,vs5,vo3,vo5の開閉を切り替えることにより、第1原料ガスやオゾンガスの流路を切り替える。その結果、開閉バルブの切り替えにより、処理室201内への第1原料ガスやオゾンガスの安定した供給を迅速に開始あるいは停止できるようになり、好ましい。この予備気化工程の実施と同時に、開閉バルブvb2,vt2を開き、気化器229b、229tの液体原料流路21b,21t内の洗浄を開始する。なお、洗浄方法の詳細については後述する。
【0057】
<第1原料ガスを用いたALD工程(S6)>
続いて、真空ポンプ264を作動させたまま、開閉バルブvs4,vs5を閉じ、開閉バルブvs3を開けて、処理室201内への第1原料ガスの供給を開始する(Sr)。第1原料ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給されて、ウェハ200表面に第1原料ガスのガス分子が吸着する。余剰な第1原料ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内への第1原料ガスの供給時には、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t、オゾンガス供給管213o内への第1原料ガスの侵入を防止するように、また、処理室201内における第1原料ガスの拡散を促すように、開閉バルブvb4,vt4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておくことが好ましい。
【0058】
開閉バルブvs3を開け、第1原料ガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、開閉バルブvs3を閉じ、開閉バルブvs4,vs5を開けて、処理室201内への第1原料ガスの供給を停止する。また、同時に、開閉バルブvs1を閉めて、気化器229sへの第1液体原料の供給も停止する。
【0059】
ここで、開閉バルブvs3を閉め、第1原料ガスの供給を停止した後は、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておく。これにより、処理室201内に残留している第1原料ガスを除去し、処理室201内をArガスによりパージする(PS1)。
【0060】
また、開閉バルブvs1を閉め、第1液体原料の供給を停止した後は、気化器229s内の洗浄を開始する(PS1〜)。すなわち、洗浄液圧送ガス供給管237eから圧送ガスを供給するとともに、開閉バルブvs1を閉じたまま、開閉バルブvs2を開け、気化器229sの液体原料流路21s内に洗浄液を供給して、液体原料流路21s内を洗浄する。このとき開閉バルブvs1,vs3は閉、開閉バルブvs2,vs5は開とされるので、液体原料流路21s内に供給された洗浄液は、液体原料流路21s内を洗浄した後、気化室20s内へ供給されて気化される。このとき、液体原料流路21s内に残留していた第1液体原料及び溶媒も一緒に気化室20s内へ供給されて気化される。そして、気化された洗浄液、第1液体原料、及び溶媒は、第1原料ガス供給管213sを通り、処理室201内へ供給されることなく、ベント管215sより処理室201をバイパスして排気される。なお、気化器229sの液体原料流路21s内の洗浄は、例えば、次回の気化器229sへの第1液体原料の供給開始時まで(S9のTiまで)継続させる。
【0061】
処理室201内のパージが完了したら、開閉バルブvo4,vo5を閉じ、開閉バルブvo3を開けて、処理室201内へのオゾンガスの供給を開始する(OxS)。オゾンガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給され、ウェハ200表面に吸着している第1原料ガスのガス分子と反応して、ウェハ200上にSr元素を含む薄膜としてSrO膜を生成する。余剰なオゾンガスや反応副生成物は、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内へのオゾンガスの供給時には、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t内へのオゾンガスの侵入を防止するように、また、処理室201内におけるオゾンガスの拡散を促すように、開閉バルブvs4,vb4,vt4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておくことが好ましい。
【0062】
開閉バルブvo3を開け、オゾンガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、開閉バルブvo3を閉じ、開閉バルブvo4,vo5を開けて、処理室201内へのオゾンガスの供給を停止する。
【0063】
開閉バルブvo3を閉め、オゾンガスの供給を停止した後は、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておく。これにより、処理室201内に残留しているオゾンガスや反応副生成物を除去し、処理室201内をArガスによりパージする(PS2)。
【0064】
なお、第1原料ガスを用いたALD工程(S6)においては、第3液体原料(Ti元素を含む有機金属液体原料)を気化させた原料ガス(以下、第3原料ガスという)を予め生成(予備気化)させておく(PS1〜)。すなわち、開閉バルブvt2を閉じ、開閉バルブvt1を開けるとともに、第3圧送ガス供給管237tから圧送ガスを供給して、第3液体原料供給源220tから気化器229tへと第3液体原料を供給させ、気化器229tにて第3液体原料を気化させて、第3原料ガスを生成させておく。第1原料ガスを用いたALD工程(S6)では、真空ポンプ264を作動させつつ、開閉バルブvt3を閉めたまま、開閉バルブvt5を開けることにより、第3原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。このように、第3原料ガスを予め生成させておき、後述の第3原料ガスを用いたALD工程(S7)において開閉バルブvt3,vt5の開閉を切り替えることで、第3原料ガスの流路を切り替える。これにより、第3原料ガスを用いたALD工程(S7)において処理室201内への第3原料ガスの安定した供給を迅速に開始あるいは停止できるようになり、好ましい。
【0065】
<第3原料ガスを用いたALD工程(S7)>
続いて、真空ポンプ264を作動させたまま、開閉バルブvt4,vt5を閉じ、開閉バルブvt3を開けて、処理室201内への第3原料ガスの供給を開始する(Ti)。第3原料ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給されて、ウェハ200表面に第3原料ガスのガス分子が吸着する。余剰な第3原料ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内への第3原料ガスの供給時には、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、オゾンガス供給管213o内への第3原料ガスの侵入を防止するように、また、処理室201内における第3原料ガスの拡散を促すように、開閉バルブvs4,vb4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておくことが好ましい。
【0066】
開閉バルブvt3を開け、第3原料ガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、開閉バルブvt3を閉じ、開閉バルブvt4,vt5を開けて、処理室201内への第3原料ガスの供給を停止する。また、同時に、開閉バルブvt1を閉めて、気化器229tへの第3液体原料の供給も停止する。
【0067】
ここで、開閉バルブvt3を閉め、第3原料ガスの供給を停止した後は、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておく。これにより、処理室201内に残留している第3原料ガスを除去し、処理室201内をArガスによりパージする(PT1)。
【0068】
また、開閉バルブvt1を閉め、第3液体原料の供給を停止した後は、気化器229t内の洗浄を開始する(PT1〜)。すなわち、洗浄液圧送ガス供給管237eから圧送ガスを供給するとともに、開閉バルブvt1を閉じたまま、開閉バルブvt2を開け、気化器229tの液体原料流路21t内に洗浄液を供給して、液体原料流路21t内を洗浄する。このとき開閉バルブvt1,vt3は閉、開閉バルブvt2,vt5は開とされるので、液体原料流路21t内に供給された洗浄液は、液体原料流路21t内を洗浄した後、気化室20t内へ供給されて気化される。このとき、液体原料流路21t内に残留していた第3液体原料及び溶媒も一緒に気化室20s内へ供給されて気化される。そして、気化された洗浄液、第3液体原料、及び溶媒は、第3原料ガス供給管213tを通り、処理室201内へ供給されることなく、ベント管215tより処理室201をバイパスして排気される。なお、気化器229tの液体原料流路21t内の洗浄は、例えば、次回の気化器229tへの第3液体原料の供給開始時まで(S8のBaまで)継続させる。
【0069】
処理室201内のパージが完了したら、開閉バルブvo4,vo5を閉じ、開閉バルブvo3を開けて、処理室201内へのオゾンガスの供給を開始する(OxT)。オゾンガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給され、ウェハ200表面に吸着している第3原料ガスのガス分子と反応して、ウェハ200上にTi元素を含む薄膜としてTiO膜を生成する。余剰なオゾンガスや反応副生成物は、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内へのオゾンガスの供給時には、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t内へのオゾンガスの侵入を防止するように、また、処理室201内におけるオゾンガスの拡散を促すように、開閉バルブvs4,vb4,vt4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておくことが好ましい。
【0070】
開閉バルブvo3を開け、オゾンガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、開閉バルブvo3を閉じ、開閉バルブvo4,vo5を開けて、処理室201内へのオゾンガスの供給を停止する。
【0071】
開閉バルブvo3を閉め、オゾンガスの供給を停止した後は、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておく。これにより、処理室201内に残留しているオゾンガスや反応副生成物を除去し、処理室201内をArガスによりパージする(PT2)。
【0072】
なお、第3原料ガスを用いたALD工程(S7)においては、第2液体原料(Ba元素を含む有機金属液体原料)を気化させた原料ガス(以下、第2原料ガスという)を予め生成(予備気化)させておく(PT1〜)。すなわち、開閉バルブvb2を閉じ、開閉バルブvb1を開けるとともに、第2圧送ガス供給管237bから圧送ガスを供給して、第2液体原料供給源220bから気化器229bへと第2液体原料を供給させ、気化器229bにて第2液体原料を気化させて、第2原料ガスを生成させておく。第3原料ガスを用いたALD工程(S7)では、真空ポンプ264を作動させつつ、開閉バルブvb3を閉めたまま、開閉バルブvb5を開けることにより、第2原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。このように、第2原料ガスを予め生成させておき、後述の第2原料ガスを用いたALD工程(S8)において開閉バルブvb3,vb5の開閉を切り替えることにより、第2原料ガスの流路を切り替える。これにより、第2原料ガスを用いたALD工程(S8)において処理室201内への第2原料ガスの安定した供給を迅速に開始あるいは停止できるようになり、好ましい。
【0073】
<第2原料ガスを用いたALD工程(S8)>
続いて、真空ポンプ264を作動させたまま、開閉バルブvb4,vb5を閉じ、開閉バルブvb3を開けて、処理室201内への第2原料ガスの供給を開始する(Ba)。第2原料ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給されて、ウェハ200表面に第2原料ガスのガス分子が吸着する。余剰な第2原料ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内への第2原料ガスの供給時には、第1原料ガス供給管213s、第3原料ガス供給管213t、オゾンガス供給管213oへの第2原料ガスの侵入を防止するように、また、処理室201内における第2原料ガスの拡散を促すように、開閉バルブvs4,vt4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておくことが好ましい。
【0074】
開閉バルブvb3を開け、第2原料ガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、開閉バルブvb3を閉じ、開閉バルブvb4,vb5を開けて、処理室201内への第2原料ガスの供給を停止する。また、同時に、開閉バルブvb1を閉めて、気化器229bへの第2液体原料の供給も停止する。
【0075】
ここで、開閉バルブvb3を閉め、第2原料ガスの供給を停止した後は、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておく。これにより、処理室201内に残留している第2原料ガスを除去し、処理室201内をArガスによりパージする(PB1)。
【0076】
また、開閉バルブvb1を閉め、第2液体原料の供給を停止した後は、気化器229b内の洗浄を開始する(PB1〜)。すなわち、洗浄液圧送ガス供給管237eから圧送ガスを供給するとともに、開閉バルブvb1を閉じたまま、開閉バルブvb2を開け、気化器229bの液体原料流路21b内に洗浄液を供給して、液体原料流路21b内を洗浄する。このとき開閉バルブvb1,vb3は閉、開閉バルブvb2,vb5は開とされるので、液体原料流路21b内に供給された洗浄液は、液体原料流路21b内を洗浄した後、気化室20b内へ供給されて気化される。このとき、液体原料流路21b内に残留していた第2液体原料及び溶媒も一緒に気化室20b内へ供給されて気化される。そして、気化された洗浄液、第2液体原料、及び溶媒は、第2原料ガス供給管213bを通り、処理室201内へ供給されることなく、ベント管215bより処理室201をバイパスして排気される。なお、気化器229bの液体原料流路21b内の洗浄は、例えば、次回の気化器229bへの第2液体原料の供給開始時まで(次回のS7のTiまで)継続させる。
【0077】
処理室201内のパージが完了したら、開閉バルブvo4,vo5を閉じ、開閉バルブvo3を開けて、処理室201内へのオゾンガスの供給を開始する(OxB)。オゾンガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給され、ウェハ200表面に吸着している第2原料ガスのガス分子と反応して、ウェハ200上にBa元素を含む薄膜としてBaO膜を生成する。余剰なオゾンガスや反応副生成物は、排気ダクト259内を流れ、排気口260へと排気される。なお、処理室201内へのオゾンガスの供給時には、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、第3原料ガス供給管213t内へのオゾンガスの侵入を防止するように、また、処理室201内におけるオゾンガスの拡散を促すように、開閉バルブvs4,vb4,vt4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておくことが好ましい。
【0078】
開閉バルブvo3を開け、オゾンガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、開閉バルブvo3を閉じ、開閉バルブvo4,vo5を開けて、処理室201内へのオゾンガスの供給を停止する。
【0079】
開閉バルブvo3を閉め、オゾンガスの供給を停止した後は、開閉バルブvs4,vb4,vt4,vo4は開けたままとし、処理室201内にArガスを常に流しておく。これにより、処理室201内に残留しているオゾンガスや反応副生成物を除去し、処理室201内をArガスによりパージする(PB2)。
【0080】
なお、第2原料ガスを用いたALD工程(S8)においては、第3液体原料(Ti元素を含む有機金属液体原料)を気化させた原料ガス(以下、第3原料ガスという)を予め生成(予備気化)させておく(PB1〜)。すなわち、開閉バルブvt2を閉じ、開閉バルブvt1を開けるとともに、第3圧送ガス供給管237tから圧送ガスを供給して、第3液体原料供給源220tから気化器229tへと第3液体原料を供給させ、気化器229tにて第3液体原料を気化させて、第3原料ガスを生成させておく。第2原料ガスを用いたALD工程(S8)では、真空ポンプ264を作動させつつ、開閉バルブvt3を閉めたまま、開閉バルブvt5を開けることにより、第3原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。このように、第3原料ガスを予め生成させておき、後述の第3原料ガスを用いたALD工程(S9)において開閉バルブvt3,vt5の開閉を切り替えることにより、第3原料ガスの流路を切り替える。これにより、第3原料ガスを用いたALD工程(S9)において処理室201内への第3原料ガスの安定した供給を迅速に開始あるいは停止できるようになり、好ましい。
【0081】
<第3原料ガスを用いたALD工程(S9)>
続いて、上述した第3原料ガスを用いたALD工程(S7)と同様の工程を再度実施して、ウェハ200上にTi元素を含む薄膜としてTiO膜を生成する。
【0082】
<繰り返し工程(S10)>
第3原料ガスを用いたALD工程(S9)の後、工程S6〜S9までを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返すことにより、ウェハ200上に所望の膜厚のBST(チタン酸バリウムストロンチウム)薄膜、すなわち(Ba,Sr)TiO薄膜を形成する。
【0083】
<基板搬出工程(S11)>
その後、上述した基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)に示した手順とは逆の手順により、所望膜厚の薄膜を形成した後のウェハ200を処理室201内から搬送室271内へ搬出して、本実施形態にかかる基板処理工程を完了する。
【0084】
なお、薄膜形成工程をALD法により行う場合、処理温度を原料ガスが自己分解しない程度の温度帯となるように制御する。この場合、各原料ガスを用いたALD工程(S6〜S9)において各原料ガスを供給する際には、原料ガスは熱分解することなくウェハ200上に吸着する。また、オゾンガスを供給する際には、ウェハ200上に吸着している原料ガス分子とオゾンガスとが反応することにより、ウェハ200上に1原子層未満(1Å未満)程度の薄膜が形成される。なお、このとき、オゾンガスにより薄膜中に混入するC,H等の不純物を脱離させることが出来る。
【0085】
なお、本実施の形態におけるウェハ200の処理条件としては、例えば(Ba,Sr)TiOの薄膜を形成する場合、
処理温度:250〜450℃、
処理圧力:10〜200Pa、
第1液体原料Sr(C1425(略称;Sr(METHD)) 0.1mol/L ECH希釈)供給流量:0.01〜0.5cc/min、
第2液体原料Ba(C1425(略称;Ba(METHD)) 0.1mol/L ECH希釈)供給流量:0.01〜0.5cc/min、
第3液体原料Ti(C11)(C1119(略称;Ti(MPD)(THD)) 0.1mol/L ECH希釈)供給流量:0.01〜0.5cc/min、
反応物(オゾンガス)供給流量:500〜2000sccm(オゾン濃度20〜200g/Nm)、
洗浄液(ECH)供給流量:0.05〜0.5cc/min、
気化器(気化室)内温度:250℃程度、
気化器(気化室)内圧力:数〜10Torr、
が例示される。なお、本実施形態では、各液体原料を希釈する溶媒、および洗浄液として、同一の物質(ECH)を用いている。
【0086】
(3)第1実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、気化器229s,229b,229tで液体原料を気化して得た原料ガスを処理室201内へ供給する時以外の時に、気化器229s,229b,229tの液体原料流路21s,21b,21t内に不活性ガスを供給してパージするのではなく、液体原料を希釈する溶媒(ECH等)を供給することにより、気化器229s,229b,229t内の洗浄を実施している。これにより、液体原料を溶媒で希釈したままの粘性の低い状態で、液体原料流路21s,21b,21t内を洗浄することが出来る。すなわち、液体原料流路21s,21b,21t内において溶媒だけが先に蒸発してしまい、有機金属液体原料だけが残留してしまうことを抑制することが出来る。
【0087】
また、本実施形態によれば、開閉バルブvs1,vb1,vt1を閉めた直後、すなわち、気化器229s,229b,229tへの液体原料の供給を停止した直後に、気化器229s,229b,229t内の洗浄を開始している。そのため、気化器229s,229b,229tへの液体原料の供給停止後、液体原料流路21s,21b,21t内に有機金属液体原料が残留し、液体原料流路21s,21b,21t内が有機金属液体原料により閉塞されてしまうことを抑制することが可能となる。
【0088】
以上のとおり、本実施形態によれば、気化器229s,229b,229tへの液体原料の供給停止時に気化器229s,229b,229tの液体原料流路21s,21b,21t内からの有機金属液体原料の除去が促進され、有機金属液体原料による液体原料流路21s,21b,21t内の閉塞が抑制される。
【0089】
<本発明の他の実施態様>
上述の実施形態では、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、及び第3原料ガス供給管213tの下流側端部は、合流するように一本化して原料ガス供給管213となり、一本化した原料ガス供給管213が、ガス導入口210に接続されているが、本発明は上述の実施形態に限定されない。すなわち、第1原料ガス供給管213s、第2原料ガス供給管213b、及び第3原料ガス供給管213tの下流側端部が、シャワーヘッド240の上面(天井壁)にそれぞれ直接に接続されていても良い。
【0090】
また、上述の実施形態では、オゾンガス供給管213oの下流側端部は、原料ガス供給管213に合流するように接続されているが、本発明は上述の実施形態に限定されない。すなわち、オゾンガス供給管213oの下流側端部が、シャワーヘッド240の上面(天井壁)に直接に接続されていても良い。
【0091】
また、上述の実施形態では、各原料ガスの処理室201への1回の供給動作毎に(気化器229s,229b,229tへの各液体原料の1回の吐出動作毎に)、各気化器229s,229b,229tの液体原料流路21s,21b,21t内を洗浄する場合について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。すなわち、気化器229s,229b,229tの液体原料流路21s,21b,21t内の洗浄は、各原料ガスの複数回の供給動作毎に、例えば、2回の供給動作毎に行うこととしても良い。ただし、上述の実施形態のように1回の供給動作毎に洗浄を行う方が、各気化器229s,229b,229tの液体原料流路21s,21b,21t内の洗浄が促され、液体原料の気化動作がより安定するため好ましい。
【0092】
また、上述の実施形態では、各気化器229s,229b,229tの液体原料流路21s,21b,21t内の洗浄動作を、気化動作を行う時以外の時は常に行うようにしているが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、各気化器229s,229b,229tの液体原料流路21s,21b,21t内の洗浄動作は、液体原料流路21s,21b,21t内の有機金属液体原料が除去されれば、気化動作を行う時以外の時であっても停止してよい。
【0093】
また、逆に、各気化器229s,229b,229tの液体原料流路21s,21b,21t内の洗浄動作は、液体原料の気化動作を行う時以外の時だけでなく、液体原料の気化動作を行う時にも行うようにしてもよい。すなわち、液体原料の気化動作を行う時やそれ以外の時にかかわらず、常時、各気化器229s,229b,229tの液体原料流路21s,21b,21t内に洗浄液を供給し続けるようにしてもよい。その場合、液体原料の気化動作を行う時に、液体原料流路21s,21b,21t内に供給する洗浄液は、液体原料を希釈する溶媒の一部としても機能することとなる。この場合、上述の実施形態のように、液体原料を希釈する溶媒と洗浄液とは同一の物質とするのが好ましい。なお、液体原料の気化動作中に洗浄液を供給する場合には、処理室201内へ供給される原料ガスの供給流量や濃度が所望の値になるように、液体原料、希釈溶媒、洗浄液の分量比率を適宜調整することが好ましい。その場合、例えば、液体原料の気化動作時に供給する洗浄液の流量よりも、液体原料の気化動作時以外の時に供給する洗浄液の流量の方が多くなるようにし、液体原料の気化動作時以外の時に積極的に洗浄を行うようにしてもよい。また、液体原料の気化動作時に供給する洗浄液の流量と液体原料の気化動作時以外の時に供給する洗浄液の流量を一定とし、液体原料の気化動作時以外の時であって、液体原料の気化動作を所定回数行う毎に、洗浄液の流量を液体原料の気化動作時に供給する洗浄液の流量よりも大流量とするフラッシング動作を行うようにしてもよい。
【0094】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、主に上述のフラッシング動作等について説明する。
【0095】
上述のように、半導体製造過程において金属元素を含んだ薄膜を作成する場合、金属原子に炭素、水素、窒素などを化学的に付加させた有機金属材料を原料として用いる場合がある。有機金属とすることで蒸気圧が上がり、常温近傍の温度で液体として原料を取り扱うことができる。また常温で固体の有機金属や粘性の非常に高い液体原料であっても、有機溶媒に可溶であれば溶媒に希釈(溶解)して液体化した原料(以下、液体化原料と称す)とすることで低粘性の液体として取り扱うことができる。このような液体原料、液体化原料(本明細書では、これらを総称して、単に液体原料という場合もある。)は気化器によって気化された後、半導体製造装置の反応室内に供給されて成膜に寄与するが、これまでの気化器には以下のような問題点があった。
【0096】
スプレーのような噴霧機構で気化を行う気化器の場合、液体原料を細い配管(ノズル)を通して気化室内に噴霧することで原料を霧化して気化させる。したがって粘性のある原料を気化する場合は噴霧器の細い配管内に原料が吸着、残留して配管閉塞を起こす場合があった。また気化室内は通常霧化した原料を気化させるために高温に保持されているが、粘性の低い液体であってもその熱輻射により噴霧機構近傍の液体原料が分解し、分解生成物が配管を閉塞させる場合もあった。分解生成物は溶媒に溶解しない場合が多く、除去には分解清掃等の手段をとるしかない。
【0097】
また液体化原料においてもいわゆる「先飛び」現象による配管閉塞が起こることが多かった。これは通常気化室内が減圧に保たれているのに対し、原料は常圧で供給されるため、噴霧器の細い配管の内部は気化室に近づくにつれて減圧となり、気化しやすい溶媒が先に気化室内に蒸発してしまい、溶質である固体原料や粘性の高い液体原料が細い配管内に残ってしまうことによる。この固体や粘性の強い液体が配管の閉塞をもたらしていた。
【0098】
本実施形態では、特に気化器の噴霧機構部に閉塞が発生しやすい原料を長期間安定的に気化させるための気化器の運用方法、すなわち、フラッシング動作等により、液体原料流路内の閉塞を、より一層抑制する方法について説明する。
【0099】
図8に第2実施形態における基板処理装置のガス供給系の構成例を示す。なお、図8に示す第2実施形態における基板処理装置のガス供給系は、図1に示す第1実施形態における基板処理装置のガス供給系のうち2つの原料供給ライン、すなわちSr原料(第1原料)を供給するラインと、Ti原料(第3原料)を供給するラインと、更にオゾンガス(反応ガス)を供給するラインの一部分を抜き出したものである。第2実施形態における各供給ライン及び基板処理装置の構成は、第1実施形態における各供給ライン及び基板処理装置の構成と同様である。なお、図8において、図1で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0100】
本実施形態における気化器には、液体原料を供給する配管(液体原料供給管)と、その原料を溶解することのできる溶媒を供給する配管(溶媒供給管)と、キャリアガス配管(キャリアガス供給管)が、それぞれ流量調節器を介して接続されている。本実施形態では本構成をもつ気化器を2つ使用する。すなわち、本実施形態における気化器229t、229sには、液体原料供給管211t、211sと、溶媒供給管(洗浄液供給管)212t、212sと、キャリアガス供給管218t、218sが、それぞれ流量調節器221t、221s、222t、222s、225t、225sを介して接続されている。
【0101】
以下、上述の第2実施形態の基板処理装置を用いて、半導体装置の製造工程の一工程として、2種類の原料を使用して、ALD法によりウェハ上に薄膜を形成する基板処理工程について、図9を参照しながら説明する。図9は、本発明の第2実施形態にかかる基板処理工程における気化器229t、229sへの原料供給による気化動作、溶媒供給による洗浄動作、溶媒大流量供給によるフラッシング動作のタイミングを示すタイミングチャートとしてのシーケンス図である。このタイミングチャートにおいて、横軸は時間、縦軸は原料、溶媒の流量を示している。なお、図9では、キャリアガス供給のタイミングについては省略してある。また、この図では、処理室201内で行われる各ステップ(A、B、P)の流れも示している。処理室201内で行われる各ステップを示すA、B、Pは、それぞれ、原料A(Ti原料)の供給、原料B(Sr原料)の供給、パージ及び酸化剤の供給(パージ/酸化剤の供給/パージ)を示している。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ280によって制御される。
【0102】
第2実施形態おける基板処理工程が、第1実施形態における基板処理工程と異なるのは、第1実施形態の基板処理工程のうちS6〜S10の工程、すなわち、実質的に薄膜を形成する工程である成膜工程だけであり、その他の工程は同様である。以下、成膜工程について説明する。
【0103】
成膜のための気化動作を始める場合は、まずバルブvt2、vs2、vt7、vs7を開け、原料A、B双方の系統における溶媒供給管212t、212sの流量調節器222t、222sでそれぞれ流量調整された溶媒を、キャリアガス供給管218t、218sの流量調整器225t、225sでそれぞれ流量調整されたキャリアガスと共に、気化器229t、229sの気化室20t、20s内に供給して気化させる。このときバルブvt3、vs3は閉じ、バルブvt5、vs5は開けた状態とするので、気化された溶媒はベントライン215t、215sに排気される。なお、このとき、溶媒は気化室20t,20s内に第1の流量で流すようにする。
【0104】
次に原料Aを供給する液体原料供給管211tのバルブvt1を開け、流量調節器221tで流量調整された原料Aを気化器229tの気化室20t内に導入して気化させる(気化サイクル)。この際にバルブvt2は開けたままとし、溶媒供給管212tから気化室20t内へ供給する溶媒は止めることなく流し続け、気化室20t内で原料Aと溶媒の混合気体を生成させる。なお、この際、バルブvt7も開けたままとする。このときバルブvt3、vs3は閉じ、バルブvt5、vs5は開けたままの状態とするので、原料Aと溶媒の混合気体はベントライン215tに排気される。なお、このときも、溶媒は気化室20t内に第1の流量で流すようにする。ただし液体原料が固体や粘性のある液体を溶媒に溶かした液体化原料である場合、原料中には既に溶媒が含まれているため、気化サイクルでの溶媒供給管212tから気化室20t内への溶媒供給は必須ではなく、省略しても良い。
【0105】
次にベントライン215tと原料ガス供給管213tのバルブvt5、vt3を切り替える。すなわち、ベントライン215tのバルブvt5を閉じ、原料ガス供給管213tのバルブvt3を開くことで、処理室201内に原料Aと溶媒の混合気体を導入する(A)。
【0106】
所定時間が経過したら、原料ガス供給管213tとベントライン215tのバルブvt3、vt5を切り替える。すなわち、原料ガス供給管213tのバルブvt3を閉じ、ベントライン215tのバルブvt5を開くことで、処理室201内への原料Aと溶媒の混合気体の導入を停止する。同時に、パージガス供給管214tのバルブvt4を開け処理室201内にパージガスを導入する。気化器229t側ではバルブvt1を閉じて原料Aの気化室20t内への供給を停止し、バルブvt2、vt7を開けたままとして溶媒とキャリアガスのみを気化室20t内へ供給することで、気化器229t、特に噴霧機構としての噴霧管(液体原料流路21t)付近に残留した原料を洗い流す(洗浄サイクル)。なお、このときも、溶媒は気化室20t内に第1の流量で流すようにする。なお、洗浄サイクルは、次の気化サイクル、すなわち、次に原料Aを気化器229tの気化室20t内へ供給する時まで継続して行われる。この間に処理室201内の原料Aの残留ガスはパージガスによってパージされ、パージがなされた後、処理室201内に酸化剤(オゾンガス)が供給され、所定時間が経過したら、再び処理室201内がパージガスによりパージされる(P)。
【0107】
次に原料Bを供給する液体原料供給管211sのバルブvs1を開け、流量調節器221sで流量調整された原料Bを気化器229sの気化室20s内に導入して気化させる(気化サイクル)。この際にバルブvs2は開けたままとし、溶媒供給管212sから気化室20s内へ供給する溶媒は止めることなく流し続け、気化室20s内で原料Bと溶媒の混合気体を生成させる。なお、この際、バルブvs7も開けたままとする。このときバルブvt3、vs3は閉じ、バルブvt5、vs5は開けたままの状態とするので、原料Bと溶媒の混合気体はベントライン215sに排気される。なお、このときも、溶媒は気化室20s内に第1の流量で流すようにする。ただし液体原料が固体や粘性のある液体を溶媒に溶かした液体化原料である場合、原料中には既に溶媒が含まれているため、気化サイクルでの溶媒供給管212sから気化室20s内への溶媒供給は必須ではなく、省略しても良い。
【0108】
次にベントライン215sと原料ガス供給管213sのバルブvs5、vs3を切り替える。すなわち、ベントライン215sのバルブvs5を閉じ、原料ガス供給管213sのバルブvs3を開くことで、処理室201内に原料Bと溶媒の混合気体を導入する(B)。
【0109】
所定時間が経過したら、原料ガス供給管213sとベントライン215sのバルブvs3、vs5を切り替える。すなわち、原料ガス供給管213sのバルブvs3を閉じ、ベントライン215sのバルブvs5を開くことで、処理室201内への原料Bと溶媒の混合気体の導入を停止する。同時に、パージガス供給管214sのバルブvs4を開け処理室201内にパージガスを導入する。気化器229s側ではバルブvs1を閉じて原料Bの気化室20s内への供給を停止し、バルブvs2、vs7を開けたままとして溶媒とキャリアガスのみを気化室20s内へ供給することで、気化器229s、特に噴霧機構としての噴霧管(液体原料流路21s)付近に残留した原料を洗い流す(洗浄サイクル)。なお、このときも、溶媒は気化室20s内に第1の流量で流すようにする。なお、洗浄サイクルは、次の気化サイクル、すなわち、次に原料Bを気化器229sの気化室20s内へ供給する時まで継続して行われる。この間に処理室201内の原料Bの残留ガスはパージガスによってパージされ、パージがなされた後、処理室201内に酸化剤(オゾンガス)が供給され、所定時間が経過したら、再び処理室201内がパージガスによりパージされる(P)。
【0110】
図9に示すように、処理室201内では、原料Aの供給(A)、パージ、酸化剤の供給、パージ(P)、原料Bの供給(B)、パージ、酸化剤の供給、パージ(P)を1サイクル(成膜サイクル)として、このサイクルを所定回数繰り返す。これにより、ウェハ200上に所望の膜厚のSTO(チタン酸ストロンチウム)薄膜、すなわちSrTiO薄膜が形成される。この間、気化器229t、229sでは、気化サイクルと洗浄サイクルが交互に繰り返される。なお、成膜サイクルでは、原料Aの供給(A)、パージ、酸化剤の供給、パージ(P)、原料Bの供給(B)、パージ、酸化剤の供給、パージ(P)、を1サイクル(成膜サイクル)として、このサイクルを所定回数繰り返すようにしたが、例えば、原料Aの供給(A)、パージ、原料Bの供給(B)、パージ、酸化剤の供給、パージ、を1サイクル(成膜サイクル)として、このサイクルを所定回数繰り返すようにしてもよい。これらの場合も、気化器229t、229sでは、気化サイクルと洗浄サイクルが交互に繰り返される。なお、図9の場合、気化サイクルにおいても気化器229t、229sには溶媒が連続的に流れるので、気化サイクルでは、原料の気化と同時に気化器229t、229sの洗浄も行われることとなる。すなわち、気化サイクル、洗浄サイクルにかかわらず、気化器229t、229sの洗浄は連続的に行われることとなる。
【0111】
これまで述べた通り、気化サイクル後の洗浄サイクルにより気化器229t、229sの閉塞を抑制できるが、原料の性質によっては、気化サイクル中も気化器229t、229sに対し溶媒を流し続ける場合、あるいは溶媒を流さないで閉止する場合や流量を変更する場合もあることは先に述べたとおりである。
【0112】
以下、気化器229t、229sの閉塞を更に抑制するためのフラッシング動作について述べる。フラッシング動作とは、気化サイクル時以外の時すなわち洗浄サイクル時であって、気化サイクルを所定回数行う毎に、気化器229t、229sに供給する溶媒の流量を、通常の洗浄サイクル時や気化サイクル時に供給する溶媒の流量すなわち第1の流量よりも大流量である第2の流量として、気化器229t、229sを洗浄する動作のことである。図9では、フラッシング動作を、処理室201内での成膜サイクル(4)で実施する例、すなわち気化サイクルを4回行う毎に実施する例を示している。図9では、成膜サイクル(4)での気化サイクル後の洗浄サイクルで、溶媒の流量を通常の洗浄サイクル時や気化サイクル時の少なくとも2倍以上として、気化器229t、229sに一時的に供給している。この際キャリアガスの流量も変化させてもよい。
【0113】
気化サイクル毎に通常の洗浄サイクルを実施するのみでは、気化器229t,229s内に付着したり残留したりしている原料残渣を完全に除去することは困難な場合がある。そして、原料残渣を完全に除去することなく気化サイクルと洗浄サイクルとを定常的に繰り返すこととすれば、繰り返しに伴って気化器229t,229s内の原料残渣が累積的に増加してしまう場合がある。これに対し、所定回数の気化サイクルを実施する毎に気化器229t、229sの噴霧機構部分(液体原料流路21t、21s)に通常より多量の溶媒を高速度で流すことにより、洗浄効果は通常の洗浄サイクルでの洗浄効果より非常に大きいものとなり、通常の洗浄サイクルで除去しきれなかった原料残渣などを除去できる。すなわち、所定回数の気化サイクルを実施する毎にフラッシング動作を実施することとすれば、気化サイクルと洗浄サイクルとの定常的な繰り返しに変化を与えることができ、累積的に増加してしまった気化器229t,229s内の原料残渣を除去することができる。そして、気化器229t、229sのメンテナンス周期を長くすることができる。
【0114】
この動作サイクルをフラッシングサイクルと呼ぶ。通常の洗浄サイクルに対するフラッシングサイクルの実施頻度、および時間、溶媒流量は原料物性により異なるため、実験的に決められるが、実施頻度については、概ね数十回の気化サイクル毎に実施することが効果的である。
【0115】
なお、本実施形態の気化サイクル及び通常の洗浄サイクルのそれぞれにおける気化器229t、229s(気化室20t、20s)内の温度、圧力、溶媒(ECH)流量、キャリアガス流量としては、
気化器(気化室)内温度:250℃程度、
気化器(気化室)内圧力:数〜10Torr、
溶媒供給流量(第1の流量):0.05〜0.5cc/min、
キャリアガス供給流量:1〜4slm、
が例示される。
【0116】
また、本実施の形態のフラッシングサイクルにおける気化器229t、229s(気化室20t、20s)内の温度、圧力、溶媒(ECH)流量、キャリアガス流量としては、
気化器(気化室)内温度:250℃程度、
気化器(気化室)内圧力:数〜10Torr以上、
溶媒供給流量(第2の流量):第1の流量の2〜20倍、好ましくは2〜10倍、
キャリアガス供給流量:1〜10slm、
が例示される。なお、フラッシングサイクルにおいては、気化器229t,229sへ供給する溶媒の流量を増やすため、気化サイクルや洗浄サイクルよりも気化器229t,229s内の圧力は高くなる。
【0117】
本実施形態によれば、気化器に対し溶媒を常に流すことにより、原料に起因する気化器の、特に噴霧機構部分の閉塞をより抑制することができる。また気化器に対し定期的にフラッシング動作を行うことにより、通常の配管洗浄サイクルを実施しているにもかかわらず噴霧機構部分に残留、堆積してしまう原料を効果的に除去することができ、噴霧機構部分の閉塞をより一層抑制することができる。上記効果により、配管閉塞に達する時間を大幅に延長することができるため、気化器閉塞時のメンテナンスによる装置の不稼働時間(ダウンタイム)を大幅に縮小することができる。
【0118】
なお、図9に示す基板処理工程において、気化サイクル終了直後は、気化器229t,229sの液体原料流路21t,21s内に原料が残留している場合がある。このような場合、フラッシングサイクル開始直後(気化サイクル終了直後)にフラッシング動作を行うと、液体原料流路21t,21s内に残留している原料が、第1の流量よりも流量の大きな第2の流量の溶媒によって一気に気化室20t、20s内へ押し流されてしまい、気化室20t,20s内の原料濃度が一時的に増大してしまうこととなる。そして、気化室20t,20s内の原料濃度が気化器229t,229sの気化能力を超えてしまい、原料を完全に気化させることができず、気化不良が発生してしまう場合がある。
【0119】
そこで本実施形態では、気化器229t,229sに第2の流量で溶媒を流す際(成膜サイクル(4)でフラッシングサイクルを実施する際)、一旦、気化器229t,229sに溶媒を第2の流量よりも小さな流量で流し、その後、気化器229t,229sへの第2の流量での溶媒の供給を開始するようにしてもよい。この場合、一旦、気化器229t,229sに、少なくとも開閉バルブvt1,vs1から気化室20t,20sに至るまでの液体原料流路21t,21s内の配管容量に匹敵する容量の溶媒を第2の流量よりも小さな流量で流した後に、気化器229t,229sへの第2の流量での溶媒の供給を開始するのが好ましい。
【0120】
図10は、図9に示すシーケンス図の変形例であり、フラッシング動作の開始タイミングを遅延させる場合の溶媒供給のタイミングを示している。図10によれば、気化器229t,229sに第2の流量で溶媒を流す際、一旦、気化器229t,229sに溶媒を第1の流量で流し、その後、気化器229t,229sに供給する溶媒の流量を第1の流量から第2の流量に変更してフラッシング動作を開始するようにしている。このように、フラッシングサイクルの開始直後(気化サイクルの終了直後)、通常の洗浄サイクルと同様に気化室229t,229s内に第1の流量で溶媒を供給し、液体原料流路21t,21s内に残留している原料を気化室20t,20s内に押し出して溶媒に置換しておくことにより、気化室20t,20s内の原料濃度が気化器229t,229sの気化能力を超えてしまうことを抑制でき、気化不良の発生を抑制でき、液体原料流路21t,21s内の閉塞を抑制できる。
【0121】
フラッシング動作の開始タイミングの遅延時間、すなわちフラッシングサイクルの開始時(気化サイクルの終了時)からフラッシング動作を開始するまでの時間は、例えば、開閉バルブvt1,vs1から気化室20t,20sに至るまでの液体原料流路21t,21s内の配管容量に匹敵する容量の溶媒を流すのに要する時間を基準として算定することができる。また、図10において、フラッシングサイクル開始直後(気化サイクル終了直後)に気化器229t,229sに供給する溶媒の流量(フラッシング動作を開始するまでの間に気化器229t,229sに供給する溶媒の流量)は、気化室20t,20s内の原料濃度の増大を緩やかにし、気化不良の発生を抑制することができる流量であれば、必ずしも第1の流量に限定されない。
【0122】
なお、第2実施形態では、気化サイクル及び通常の洗浄サイクルにおいて気化室20t,20s内に溶媒を常に第1の流量で流すこととしていたが、本発明はかかる形態に限定されない。すなわち、気化サイクルにおいて気化室20t,20s内に溶媒を流さない場合や、気化サイクルにおいて気化室20t,20s内に第1の流量よりも少ない流量で溶媒を流す場合にも、フラッシングサイクルは好適に実施可能である。図11は、図10に示すシーケンス図の変形例であり、図10における気化器229t,229sのうち1つの気化器に対する気化サイクル、洗浄サイクル、フラッシングサイクルのタイミングを抜き出したものである。図11の(a)は各気化サイクルにおいて溶媒を流さない場合の溶媒供給のタイミングを示し、(b)は気化サイクルでの溶媒の流量を洗浄サイクルでの溶媒の流量よりも少なくした場合の溶媒供給のタイミングを示している。いずれの場合においても、図11に示すようにフラッシング動作の開始タイミングを遅延させることができる。
【0123】
第2実施形態では、気化サイクルを所定回数行う毎にフラッシングサイクルを実施することとしていたが、本発明はかかる形態に限定されない。すなわち、本発明は、気化サイクルを行う毎にフラッシングサイクルを実施することとしてもよい。このとき、各フラッシング動作で流す溶媒の流量は、一定量である場合に限らず変化させてもよい。例えば、気化サイクル行う毎に大流量のフラッシング動作を実施することとしてもよく、気化サイクル行う毎に小流量のフラッシング動作を実施しつつ、気化サイクルを所定回数行う毎に大流量のフラッシング動作を実施することとしてもよい。図12は、図10に示すシーケンス図の変形例であり、図10における気化器229t,229sのうち1つの気化器に対する気化サイクル、洗浄サイクル、フラッシングサイクルのタイミングを抜き出したものである。図12の(a)は気化サイクルを行う毎に大流量のフラッシング動作を実施する場合の溶媒供給のタイミングを示し、(b)は気化サイクルを行う毎に小流量のフラッシング動作を実施しつつ、気化サイクルを所定回数行う毎にさらに大流量のフラッシング動作を実施する場合の溶媒供給のタイミングを示している。いずれの場合においても、図12に示すようにフラッシング動作の開始タイミングを遅らせることができる。
【0124】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態について説明する。上述の第1実施形態、第2実施形態では、基板処理装置として1度に1枚の基板を処理する枚葉式のALD装置を用いて成膜する例について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、基板処理装置として1度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型ALD装置を用いて成膜するようにしてもよい。以下、この縦型ALD装置について説明する。
【0125】
図7は、第3実施形態で好適に用いられる縦型ALD装置の縦型処理炉の概略構成図であり、(a)は、処理炉302部分を縦断面で示し、(b)は、処理炉302部分を図7(a)のA−A線断面図で示す。
【0126】
図7(a)に示されるように、処理炉302は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ307を有する。ヒータ307は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0127】
ヒータ307の内側には、ヒータ307と同心円状に反応管としてのプロセスチューブ303が配設されている。プロセスチューブ303は、例えば石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。プロセスチューブ303の筒中空部には処理室301が形成されており、基板としてのウェハ200を、後述するボート317によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0128】
プロセスチューブ303の下方には、プロセスチューブ303と同心円状にマニホールド309が配設されている。マニホールド309は、例えばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド309は、プロセスチューブ303に係合しており、プロセスチューブ303を支持するように設けられている。なお、マニホールド309とプロセスチューブ303との間には、シール部材としてのOリング320aが設けられている。マニホールド309がヒータベースに支持されることにより、プロセスチューブ303は垂直に据え付けられた状態となっている。プロセスチューブ303とマニホールド309とにより反応容器が形成される。
【0129】
マニホールド309には、第1ガス導入部としての第1ノズル333aと、第2ガス導入部としての第2ノズル333bとが、マニホールド309の側壁を貫通するように、また、その一部が処理室301内に連通するように接続されている。第1ノズル333aと第2ノズル333bは、それぞれ水平部と垂直部とを有するL字形状であり、水平部がマニホールド309に接続され、垂直部が処理室301を構成している反応管303の内壁とウェハ200との間における円弧状の空間に、反応管303の下部より上部の内壁にウェハ200の積載方向に沿って設けられている。第1ノズル333a、第2ノズル333bの垂直部の側面には、ガスを供給する供給孔である第1ガス供給孔348a、第2ガス供給孔348bがそれぞれ設けられている。この第1ガス供給孔348a、第2ガス供給孔348bは、それぞれ下部から上部にわたって同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0130】
第1ノズル333a、第2ノズル333bに接続されるガス供給系は、上述の実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、第1ノズル333aに原料ガス供給管213が接続され、第2ノズル333bにオゾンガス供給管213oが接続される点が、上述の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、原料ガス(第1原料ガス、第2原料ガス、第3原料ガス)と、オゾンガスとを、別々のノズルにより供給する。なお、さらに各原料ガスを別々のノズルにより供給するようにしてもよい。
【0131】
マニホールド309には、処理室301内の雰囲気を排気する排気管331が設けられている。排気管331のマニホールド309との接続側と反対側である下流側には、圧力検出器としての圧力センサ345及び圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ342を介して、真空排気装置としての真空ポンプ346が接続されており、処理室301内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。なお、APCバルブ342は弁を開閉して処理室301の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調整して処理室301内の圧力を調整することができるよう構成されている開閉弁である。
【0132】
マニホールド309の下方には、マニホールド309の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ319が設けられている。シールキャップ319は、マニホールド309の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ319は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ319の上面には、マニホールド309の下端と当接するシール部材としてのOリング320bが設けられる。シールキャップ319の処理室301と反対側には、後述するボート317を回転させる回転機構367が設置されている。回転機構367の回転軸355は、シールキャップ319を貫通して、ボート317に接続されており、ボート317を回転させることでウェハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ319は、プロセスチューブ303の外部に垂直に配置された昇降機構としてのボートエレベータ315によって、垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート317を処理室301に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0133】
基板保持具としてのボート317は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなり、複数枚のウェハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。なお、ボート317の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなる断熱部材318が設けられており、ヒータ307からの熱がシールキャップ319側に伝わりにくくなるよう構成されている。なお、断熱部材318は、石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる複数枚の断熱板と、これら断熱板を水平姿勢で多段に保持する断熱板ホルダとにより構成してもよい。プロセスチューブ303内には、温度検出器としての温度センサ363が設置されており、温度センサ363により検出された温度情報に基づきヒータ307への通電具合を調整することにより、処理室301内の温度が所定の温度分布となるように構成されている。温度センサ363は、第1ノズル333a及び第2ノズル333bと同様に、プロセスチューブ303の内壁に沿って設けられている。
【0134】
制御部(制御手段)であるコントローラ380は、APCバルブ342、ヒータ307、温度センサ363、真空ポンプ346、ボート回転機構367、ボートエレベータ315、開閉バルブvs1〜vs6、vb1〜vb6、vt1〜vt6、vo3〜vo6、液体流量コントローラ221s,221b,221t,222s,222b,222t、流量コントローラ224s,224b,224t,221o,222o,224o等の動作を制御する。
【0135】
次に、上記構成にかかる縦型ALD装置の処理炉302を用いて、半導体装置の製造工程の一工程として、ALD法によりウェハ200上に薄膜を形成する基板処理工程について説明する。なお、以下の説明において、縦型ALD装置を構成する各部の動作は、コントローラ380により制御される。
【0136】
複数枚のウェハ200をボート317に装填(ウェハチャージ)する。そして、図7(a)に示すように、複数枚のウェハ200を保持したボート317を、ボートエレベータ315によって持ち上げて処理室301内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ319はOリング320bを介してマニホールド309の下端をシールした状態となる。
【0137】
処理室301内が所望の圧力(真空度)となるように、真空排気装置346によって真空排気する。この際、処理室301内の圧力を圧力センサ345で測定して、この測定された圧力に基づき、圧力調節器342をフィードバック制御する。また、処理室301内が所望の温度となるように、ヒータ307によって加熱する。この際、処理室301内が所望の温度分布となるように、温度センサ363が検出した温度情報に基づきヒータ307への通電具合をフィードバック制御する。続いて、回転機構367によりボート317を回転させることで、ウェハ200を回転させる。
【0138】
その後、上述の第1実施形態と同様に、第1原料ガスを用いたALD工程(S6)、第3原料ガスを用いたALD工程(S7)、第2原料ガスを用いたALD工程(S8)、第3原料ガスを用いたALD工程(S9)を1サイクルとして、このサイクルを所定回数繰り返すことにより(S10)、ウェハ200上に所望の膜厚の(Ba,Sr)TiO薄膜を形成する。もしくは、上述の第2実施形態と同様に、原料Aの供給(A)、パージ、酸化剤の供給、パージ(P)、原料Bの供給(B)、パージ、酸化剤の供給、パージ(P)を1サイクルとして、このサイクルを所定回数繰り返すことにより、ウェハ200上に所望の膜厚のSrTiO薄膜を形成する。
【0139】
その後、ボートエレベータ315によりシールキャップ319を下降させて、マニホールド309の下端を開口させるとともに、所望膜厚の薄膜が形成された後のウェハ200を、ボート317に保持させた状態でマニホールド309の下端からプロセスチューブ303の外部に搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済ウェハ200をボート317より取り出す(ウエハディスチャージ)。
【0140】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0141】
本発明の一態様によれば、処理室内に基板を搬入する工程と、前記処理室内に複数種類の反応物質を複数回供給することにより前記基板を処理する工程と、処理後の前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、を有し、前記複数種類の反応物質のうち少なくともいずれか一つは、液体原料を気化部で気化させた原料ガスを含み、前記基板を処理する工程では、前記気化部に前記液体原料を供給して気化させる気化動作を間欠的に行うと共に、少なくとも前記液体原料の前記気化動作時以外の時に、前記気化部に前記液体原料を溶解することのできる溶媒を第1の流量で流し、前記液体原料の前記気化動作時以外の時であって、前記液体原料の前記気化動作を所定回数行う毎に、前記気化部に前記溶媒を前記第1の流量よりも大きな第2の流量で流す半導体装置の製造方法が提供される。
【0142】
好ましくは、前記基板を処理する工程では、前記液体原料の1回の前記気化動作後、その次に前記気化動作を行うまでの間は、前記気化部に前記溶媒を連続的に流す。
【0143】
また好ましくは、前記基板を処理する工程では、前記液体原料の前記気化動作にかかわらず、前記気化部に前記溶媒を連続的に流す。
【0144】
また好ましくは、前記液体原料の前記気化動作時以外の時に、前記気化部に流した溶媒は、前記処理室内に供給することなく排気する。
【0145】
また好ましくは、前記第2の流量は前記第1の流量の倍以上である。
【0146】
また好ましくは、前記気化部に前記溶媒を前記第2の流量で流す際、一旦、前記気化部に前記溶媒を前記第1の流量で流した後に、前記気化部に供給する前記溶媒の流量を前記第1の流量から前記第2の流量に変更する。
【0147】
また好ましくは、前記気化部に前記溶媒を前記第2の流量で流す際、一旦、前記気化部に前記溶媒を前記第2の流量よりも小さな流量で流し、その後、前記気化部への前記第2の流量での前記溶媒の供給を開始する。
【0148】
本発明の他の態様によれば、基板を処理する処理室と、液体原料を気化する気化部と、前記気化部に液体原料を供給する液体原料供給系と、前記気化部で前記液体原料を気化させた原料ガスを前記処理室内に供給する原料ガス供給系と、前記原料ガスとは異なる反応ガスを前記処理室内に供給する反応ガス供給系と、前記液体原料を溶解することのできる溶媒を前記気化部に供給する溶媒供給系と、前記処理室内への前記原料ガスの供給及び前記反応ガスの供給を複数回行い、その際、前記気化部に前記液体原料を供給して気化させる気化動作を間欠的に行うと共に、少なくとも前記液体原料の前記気化動作時以外の時に、前記気化部に前記溶媒を第1の流量で流し、前記液体原料の前記気化動作時以外の時であって、前記液体原料の前記気化動作を所定回数行う毎に、前記気化部に前記溶媒を前記第1の流量よりも大きな第2の流量で流すように、前記液体原料供給系、前記気化部、前記原料ガス供給系、前記溶媒供給系、および、前記反応ガス供給系を制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
【0149】
本発明の更に他の態様によれば、基板を収容した処理室内に複数種類の反応物を複数回供給することにより基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法であって、前記複数種類の反応物のうち少なくともいずれか一つは、液体原料を気化部で気化させた原料ガスを含み、前記基板を処理する工程では、前記気化部に、前記液体原料を間欠的に供給して気化すると共に、前記液体原料を溶解することのできる溶媒を連続的に供給して気化し、前記気化部に前記液体原料を供給する時以外の時であって、前記液体原料の供給を所定回数行う毎に、前記気化部に前記溶媒を、前記液体原料を供給する時に供給する前記溶媒の流量よりも大きな流量で流すフラッシング動作を行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0150】
本発明の更に他の態様によれば、基板を処理する処理室と、液体原料を気化する気化部と、前記気化部に前記液体原料を供給する液体原料供給管と、前記気化部にて前記液体原料を気化させた原料ガスを前記処理室内に供給する原料ガス供給管と、前記原料ガスとは異なる反応ガスを前記処理室内に供給する反応ガス供給管と、前記気化部に前記液体原料を溶解することのできる溶媒を供給する溶媒供給管と、前記処理室内への前記原料ガスの供給及び前記反応ガスの供給を複数回行うことで基板を処理するように制御し、その際、前記気化部に、前記液体原料を間欠的に供給して気化すると共に、前記溶媒を連続的に供給して気化し、前記気化部に前記液体原料を供給する時以外の時であって、前記液体原料の供給を所定回数行う毎に、前記気化部に前記溶媒を、前記液体原料を供給する時に供給する前記溶媒の流量よりも大きな流量で流すフラッシング動作を行うように制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
【0151】
本発明の更に他の態様によれば、半導体製造装置に使用され、内部に噴霧機構を有する液体原料の気化器で、液体原料と、原料を溶解することのできる溶媒を混合して供給、または別系統で供給して内部で混合し気化する運用において、原料の供給は半導体製造装置側の必要に応じて間欠的に行い、一方で溶媒は原料の供給サイクルに関わらず連続して供給、気化し続けることで噴霧機構近傍に残留した原料やその分解物による噴霧機構部の閉塞を抑制する気化器の運用方法が提供される。
【0152】
ここで、原料が固体原料や粘性の高い液体原料を溶媒に溶解して液体化した液体化原料である場合は原料自体に溶媒が含まれるため、溶媒は原料の供給・気化サイクルに関わらず連続して供給、気化し続ける以外に、液体化原料を供給していないサイクルでのみ溶媒を供給・気化することで噴霧機構近傍に残留した原料やその分解物による噴霧機構部の閉塞を抑制することもできる。
【0153】
好ましくは、溶媒のみを流すサイクルにおいて、原料気化サイクルでの溶媒流量に比べて少なくとも2倍以上の流量の溶媒を流して気化ノズル近傍の原料流速や圧力を変化させ、効果的にノズル近傍に残留する原料を洗浄するフラッシング動作をさせる。さらに好ましくは、溶媒に窒素などのパージガスを混合して流すことで洗浄効率を向上させる。さらに好ましくは、フラッシング洗浄動作を、原料気化サイクル毎、あるいは噴霧機構部を閉塞させない範囲で原料気化サイクルを数回繰り返す毎に実施する。
【0154】
本発明の更に他の態様によれば、基板を収容した処理室内に複数種類の反応物を複数回供給することにより基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法であって、前記複数種類の反応物のうち少なくともいずれか一つは、液体原料を気化部で気化させた原料ガスを含み、前記気化部で気化させた前記原料ガスの前記処理室内への少なくとも1回の供給動作後、その次に前記液体原料を前記気化部で気化させるまでの間に、前記気化部を洗浄液で洗浄する半導体装置の製造方法が提供される。
【0155】
好ましくは、前記気化器の洗浄は前記原料ガスの1回の供給動作毎に行う。また、好ましくは、前記液体原料は溶媒で希釈されており、前記洗浄液は前記液体原料を希釈する前記溶媒である。また、好ましくは、前記溶媒は、エチルシクロヘキサンまたはテトラヒドロフランである。また、好ましくは、前記気化部を洗浄する際、前記気化部で前記洗浄液を気化して、前記気化した洗浄液を前記処理室外に排気する。また、好ましくは、前記液体原料は、Sr、Ba、Tiのうち少なくとも何れか一つを含む液体原料である。また、好ましくは、前記液体原料は、Sr液体原料、Ba液体原料、及びTi液体原料を含む。
【0156】
本発明の更に他の態様によれば、基板を処理する処理室と、液体原料を気化する気化部と、前記気化部に液体原料を供給する液体原料供給管と、前記気化部にて液体原料を気化させた原料ガスを前記処理室内に供給する原料ガス供給管と、前記原料ガスとは異なる反応物を前記処理室内に供給する反応物供給管と、前記気化部に洗浄液を供給する洗浄液供給管と、前記処理室内への前記原料ガスの供給及び前記処理室内への前記反応物の供給を複数回行うことで基板を処理するように制御すると共に、前記原料ガスの少なくとも1回の供給動作後、その次に前記液体原料を前記気化部で気化させるまでの間に、前記気化部に前記洗浄液を供給することで前記気化部を洗浄するように制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
【0157】
好ましくは、前記コントローラは、前記気化器の洗浄を前記原料ガスの1回の供給動作毎に行うように制御する。また、好ましくは、前記液体原料は溶媒で希釈されており、前記洗浄液は前記液体原料を希釈する前記溶媒である。また、好ましくは、前記溶媒は、エチルシクロヘキサンまたはテトラヒドロフランである。また、好ましくは、前記コントローラは、前記気化部を洗浄する際、前記気化部で前記洗浄液を気化して、前記気化した洗浄液を前記処理室外に排気するように制御する。また、好ましくは、前記液体原料は、Sr、Ba、Tiのうち少なくとも何れか一つを含む液体原料である。また、好ましくは、前記液体原料は、Sr液体原料、Ba液体原料、及びTi液体原料を含む。
【0158】
本発明の更に他の態様によれば、一つの反応物を基板上に供給する工程と、他の反応物
を前記基板上に供給する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すことにより前記基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法であって、前記反応物のうち少なくとも何れか一つが液体原料を気化部で気化させた原料ガスを含み、前記液体原料の前記気化部への少なくとも1回の供給動作後、他の液体で前記気化部を洗浄する半導体装置の製造方法が提供される。
【0159】
本発明の更に他の態様によれば、基板を処理する処理室と、液体原料を気化する気化部と、前記気化部に液体原料を供給する液体原料供給管と、前記気化部にて液体原料を気化させた原料ガスを前記処理室内に供給する原料ガス供給管と、前記原料ガスとは異なる反応物を前記処理室内に供給する反応物供給管と、前記気化部に洗浄液を供給する洗浄液供給管と、を有し、前記処理室内への前記原料ガスの供給と前記反応物の供給を複数回行うことで基板を処理するように制御すると共に、前記液体原料の前記気化部への少なくとも1回の供給動作後、前記気化部に前記洗浄液を供給することで前記気化部を洗浄するように制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
【0160】
本発明の更に他の態様によれば、基板を収容した処理室内に液体原料を気化部で気化させた原料ガスを供給する工程と、前記処理室内に酸化剤を供給する工程と、を複数回繰り返すことにより前記基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法であって、前記気化部で気化させた前記原料ガスの前記処理室内への少なくとも1回の供給動作後、その次に前記液体原料を前記気化部で気化させるまでの間に、前記気化部を洗浄液で洗浄する半導体装置の製造方法が提供される。
【0161】
本発明の更に他の態様によれば、基板を収容した処理室内に複数種類の液体原料をそれぞれ異なる気化部で別々に気化させて得た複数種類の原料ガスを供給する工程と、前記処理室内に酸化剤を供給する工程と、を複数回繰り返すことにより前記基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法であって、前記それぞれの原料ガスの前記処理室内への少なくとも1回の供給動作後、その次に前記それぞれの液体原料を前記それぞれの気化部で気化させるまでの間に、前記それぞれの気化部を洗浄液で洗浄する半導体装置の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0162】
200 ウェハ(基板)
201 処理室
211s 第1液体原料供給管
211b 第2液体原料供給管
211t 第3液体原料供給管
212s 第1洗浄液供給管
212b 第2洗浄液供給管
212t 第3洗浄液供給管
213s 第1原料ガス供給管
213b 第2原料ガス供給管
213t 第3原料ガス供給管
213o オゾンガス供給管(反応物供給管)
229s 気化器
229b 気化器
229t 気化器
280 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容した処理室内に反応物質を供給することにより基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記反応物質は液体原料を気化部で気化させた原料ガスを含み、
前記基板を処理する工程では、前記気化部に前記液体原料を溶解することのできる溶媒と前記液体原料を供給して気化させる気化動作を間欠的に行い、
前記液体原料の前記気化動作時以外の時であって、前記液体原料の前記気化動作を所定回数行う毎に、前記気化部に前記溶媒を、前記液体原料の前記気化動作時に供給する前記溶媒の流量よりも大流量で流すことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記気化部に前記大流量で流す前記溶媒の流量を、前記気化動作時に前記気化部に供給する前記溶媒の流量の倍以上とすることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記気化部に前記大流量で流す前記溶媒の流量を、前記気化動作時に前記気化部に供給する前記溶媒の流量の2〜20倍とすることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記気化部に前記大流量で流した前記溶媒を、前記処理室内に供給することなく排気することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記気化部に前記溶媒を前記大流量で流す際、一旦、前記気化部に前記溶媒を前記気化動作時に供給する前記溶媒の流量で流し、その後、前記気化部に供給する前記溶媒の流量を前記大流量に変更することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記気化部に前記溶媒を前記大流量で流す際、一旦、それよりも小さな流量で前記溶媒を前記気化部に流し、その後、前記気化部に供給する前記溶媒の流量を前記大流量に変更することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記気化部に前記溶媒を前記大流量で流す際、一旦、それよりも小さな流量で前記溶媒を前記気化部に流し、その後、前記大流量での前記溶媒の前記気化部への供給を開始することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
基板を収容した処理室内に反応物質を供給することにより基板を処理する工程を有する基板処理方法であって、
前記反応物質は液体原料を気化部で気化させた原料ガスを含み、
前記基板を処理する工程では、前記気化部に前記液体原料を溶解することのできる溶媒と前記液体原料を供給して気化させる気化動作を間欠的に行い、
前記液体原料の前記気化動作時以外の時であって、前記液体原料の前記気化動作を所定回数行う毎に、前記気化部に前記溶媒を、前記液体原料の前記気化動作時に供給する前記溶媒の流量よりも大流量で流すことを特徴とする基板処理方法。
【請求項9】
基板を処理する処理室と、
液体原料を気化する気化部と、
前記気化部に前記液体原料を供給する液体原料供給系と、
前記気化部で前記液体原料を気化させた原料ガスを前記処理室内に供給する原料ガス供給系と、
前記液体原料を溶解することのできる溶媒を前記気化部に供給する溶媒供給系と、
前記処理室内へ前記原料ガスを供給することにより基板を処理し、その際、前記気化部に前記溶媒と前記液体原料を供給して気化させる気化動作を間欠的に行い、前記液体原料の前記気化動作時以外の時であって、前記液体原料の前記気化動作を所定回数行う毎に、前記気化部に前記溶媒を、前記液体原料の前記気化動作時に供給する前記溶媒の流量よりも大流量で流すように、前記液体原料供給系、前記気化部、前記原料ガス供給系、および、前記溶媒供給系を制御するコントローラと、
を有することを特徴とする基板処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−55359(P2013−55359A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−266800(P2012−266800)
【出願日】平成24年12月5日(2012.12.5)
【分割の表示】特願2010−44940(P2010−44940)の分割
【原出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】