説明

半導体装置の製造方法、現像装置、及び半導体装置

【課題】有機反射防止膜の上に形成されたフォトレジストの現像処理において、フォトレジストと現像液との反応で生じる反応生成物を、短時間でレジストパターンを損傷することなく適切に除去する。
【解決手段】フォトレジストの現像処理は、現像液を用いた現像及び現像液の除去を行う第1工程と、第1工程後に、現像液を用いた現像及び現像液の除去を行う第2工程とを含み、第2の工程によって、上記レジストパターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法において、主に装置回路形成に用いられるフォトリソグラフィープロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末装置をはじめとして、電子機器の小型化、薄型化、軽量化の進展はめざましい。それに伴い、これらの電子機器へ搭載される半導体装置においても、より集積度の高いものが求められている。集積度の高い小型半導体装置は、通常、フォトリソグラフィー技術を用いて半導体基板上に回路パターンを転写し、被加工膜の除去(エッチング)及び不純物注入(イオン注入)を繰り返し行い製造される。
【0003】
半導体装置の製造では、配線の微細化に伴い、必要な半導体素子の寸法精度要求も厳しくなっている中、素子分離や多層配線による段差からの反射の影響や、被加工膜が露光光源波長に対し反射率が高い場合における定在波効果の影響が無視できない。そのため、被加工膜とフォトレジストとの間に反射防止膜を介在させて、光源からの入射波と反射波とを相殺することにより低反射化を実現させる方法が、広く利用されている。
【0004】
反射防止膜の材料としては、SiON膜,SiN膜,TiN膜のようにプラズマCVDやスパッター技術により成膜する無機系反射防止膜と、有機溶媒に熱硬化剤や光吸収材料を混入させた有機反射防止膜(以下、有機BARC)が使用されている。
【0005】
有機BARCは、その材料を露光設備における塗布型の現像装置に搭載できるので、反射防止膜を形成するにあたっての設備コストやスループットの面で有利である。しかしながら、有機BARCを使用する際にレジスト除去部に発生する欠陥が問題となっている。この欠陥について説明する。
【0006】
図4(a)〜(d)は、従来のフォトレジストの現像処理の過程を示す主要部の断面図である。露光によりフォトレジスト4に回路パターンの潜像が形成された後の現像処理における過程を示している。
【0007】
スピンチャック7により固定された半導体基板1の被エッチング膜2上に、有機BARC3から成る下層、その上にフォトレジスト4が設けられている。まず、半導体基板1を回転しながら、アルカリ性の現像液5を現像液ノズル6からフォトレジスト4へ吐出する(図4(a))。現像が進むとフォトレジスト4が溶解して(図4(b))、レジストパターンが形成される。半導体基板1を回転しながら、リンス液ノズル10から純水を吐出して、現像を止める(図4(c))。
【0008】
ここで、フォトレジスト4が溶解する過程では、現像液5とフォトレジスト4が反応して、高分子成分コロイドが形成されゲル化し、再固体化した反応生成物9が形成される(図4(b))。通常、反応生成物9は、図4(c)に示すように、純水8を用いた洗浄にて、半導体基板1から除去され、欠陥を引き起こすものにはならない。しかし、フォトレジスト4の下層に有機BARC3が用いられている場合、有機BARC3と反応生成物9との密着性が強く除去できず、図4(d)に示すように、有機BARC上の残留する。そのため、現像処理後の工程で行われるエッチングのマスク材となり、半導体装置の特性異常による歩留り低下の要因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−182826号公報
【特許文献2】特開2005−210059号公報
【特許文献3】特開2005−236106号公報
【特許文献4】特開2004−335654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、半導体基板1上に残留した反応生成物9を除去するために、純水によるリンスを10時間程度延長すると効果はある。しかしながら、リンスの延長は、スループットが長くなることによる生産性の悪化や、フォトレジスト4で形成さレジストパターンの倒壊を招く要因になっている。また、現像後のエッチング工程における有機BARC3のエッチングの時間延長も効果がある。しかし、同じく有機膜であるフォトレジスト4とのエッチングスピードが等価であるため、有機BARC3のエッチングの時間延長すると、被エッチング膜2のエッチング時にレジストパターンは、無くなる、あるいは形状が悪化する。これにより、例えば配線等である被エッチング膜2の形状異常や、不純物注入不足による特性異常が引き起こされ、半導体装置の特性異常の原因となる。
【0011】
また、例えば、現像液の滴下及び純水による洗浄を複数回行うものがあるが(例えば特許文献1,2)、従来の技術において、反応生成物9を適切に効果的に除去できるものはない。
【0012】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、有機反射防止膜上のフォトレジストのリソグラフィー工程において、フォトレジストと現像液との反応で生じる反応生成物を、短時間でレジストパターンを損傷することなく適切に除去する方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、上記課題を解決するために、半導体基板上の有機材料からなる下層の上に形成されたフォトレジストに、露光処理及び現像処理を行ってレジストパターンを形成する半導体装置の製造方法において、前記現像処理は、現像液を用いた現像及び現像液の除去を行う第1工程と、当該第1工程の後に、現像液を用いた現像及び現像液の除去を行う第2工程と、を含み、前記第2の工程によって、上記レジストパターンを形成することを特徴としている。
【0014】
上記方法によると、第1工程により、レジストパターンとなる部分以外のフォトレジストの大部分を取り除くことができる。そして、第2工程により、有機材料に付着されるフォトレジストと現像液との反応で生じた反応生成物を含む、レジストパターンとなる部分部の微細な不要部分を取り除くことができ、線幅を安定させて、レジストパターンを形成することができる。
【0015】
このように、現像液を用いた現像及び現像液の除去を、第1工程と第2工程とで2回行い、それぞれの工程での条件を適宜調整することで、短時間で、半導体装置の回路の寸法制御に不可欠である有機材料(有機反射防止膜)上のフォトレジストからなるレジストパターンを、高精細に形成することができる。また、レジストパターンを高精細に形成できるため、レジストパターン形成後の加工における形状異常を抑止することができる。よって、現像処理後のパターン精度が向上する。
【0016】
よって、上記方法によると、フォトレジストと現像液との反応で生じる反応生成物を、短時間でレジストパターンを損傷することなく適切に除去することができる。引いては、特性異常が抑制された高性能の半導体装置を、生産能力を落とさず、歩留まりよく製造することができる。
【0017】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、上記方法に加え、前記第1工程での現像時間は、前記フォトレジストの溶解が開始されてから溶解が当該フォトレジストと前記有機材料との界面に到達するまでの時間である到達時間に、当該到達時間の−50%から100%の範囲であるオーバー時間を、加えた時間であってもよい。
【0018】
現像時間が多いとフォトレジストの溶解が進み過ぎ、精度のよいレジストパターンが形成できない。反対に現像時間が足りなくても、精度のよいレジストパターンを形成できない。しかし、上記方法によると、第1工程での現像時間が、上記到達時間に、到達時間の−50%から100%の範囲であるオーバー時間を、加えた時間であるため、過不足の少ない現像を行うことができる。よって、精度のよいレジストパターンを形成することができる。
【0019】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、上記方法に加え、前記第1工程での前記現像液の除去を、前記半導体基板を500rpm以上の回転数で回転させながら前記フォトレジスト上に純水を10秒以上吐出することで行ってもよい。
【0020】
上記方法によると、現像液の除去を、半導体基板を500rpm以上の回転数で回転させながらフォトレジスト上に純水を10秒以上吐出することで、純水を半導体基板全体に満遍なく行渡らせることができ、効果的に現像液による溶解を止めることができる。そのため、効果的に第1工程での現像を行うことができ、反応生成物に起因する不具合の抑制に寄与できる。
【0021】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、上記方法に加え、第1工程での現像では、前記半導体基板を1000rpm以上の回転数で回転させながら前記フォトレジスト上に前記現像液を吐出し、その後、前記現像液が前記フォトレジスト上に保持される回転数以下で前記半導体基板を回転させる、あるいは回転を停止させてもよい。
【0022】
上記方法によると、1000rpm以上の回転数で回転させながらフォトレジスト上に現像液を吐出することで、現像液をフォトレジスト上に満遍なく行渡らせることができる。その後回転数を下げる、または回転を停止することで、現像を進行させる。そのため、効果的に第1工程での現像を行うことができ、反応生成物に起因する不具合の抑制に寄与できる。
【0023】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、上記方法に加え、前記第2工程での前記現像液の除去を、前記半導体基板を500rpm以上の回転数で回転させながら前記フォトレジスト上に純水を30秒以上吐出することで行ってもよい。この条件にて第2工程での現像液の除去を行うのが、反応生成物を、短時間でレジストパターンを損傷することなく除去するのに好ましい。
【0024】
また、本発明に係る現像装置は、上記課題を解決するために、当該フォトレジストを現像する現像装置において、現像液を吐出する現像液ノズルと、前記現像液ノズルを前記フォトレジスト上に移動させる移動アームと、前記現像液を除去するためのリンス液を吐出するリンス液ノズルと、を備え、前記リンス液ノズルは、前記移動アームに設置され、前記現像液ノズルと共に前記フォトレジスト上に移動されることを特徴としている。
【0025】
フォトレジストと現像液との反応で生じる反応生成物を除去するには、現像液を用いた現像及び現像液の除去を、2回行うことが効果的であり、現像と現像液の除去の時間制御を細かく行うのが好ましい。そこで、上記構成によれば、現像液ノズル移動アームにて、現像液ノズルとリンス液ノズルとを共にフォトレジスト上に移動できるため、現像後のリンス液による洗浄をすばやく行う、つまり現像時間を細かく制御できる。よって、上記構成によると、本発明に係る半導体装置の製造方法に用いることのできる現像装置を提供することができる。つまり、上記構成の現像装置を用いることで、フォトレジストと現像液との反応で生じる反応生成物を、短時間でレジストパターンを損傷することなく適切に除去することができる。
【0026】
本発明に係る半導体装置は、上記本発明に係る半導体装置の製造方法によって製造されたことを特徴としている。
【0027】
上記構成によると、特性異常が抑制された高性能の半導体装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の半導体装置の製造方法では、以上のように、前記現像処理は、現像液を用いた現像及び現像液の除去を行う第1工程と、当該第1工程の後に、現像液を用いた現像及び現像液の除去を行う第2工程と、を含み、前記第2の工程によって、上記レジストパターンを形成する。
【0029】
上記方法によると、第1工程により、レジストパターンとなる部分以外のフォトレジストの大部分を取り除くことができる。そして、第2工程により、有機材料に付着されるフォトレジストと現像液との反応で生じた反応生成物を含む、レジストパターンとなる部分部の微細な不要部分を取り除くことができ、線幅を安定させて、レジストパターンを形成することができる。
【0030】
このように、現像液を用いた現像及び現像液の除去を、第1工程と第2工程とで2回行い、それぞれの工程での条件を適宜調整することで、短時間で、半導体装置の回路の寸法制御に不可欠である有機材料上のフォトレジストからなるレジストパターンを、高精細に形成することができる。また、レジストパターンを高精細に形成できるため、レジストパターン形成後の加工における形状異常を抑止することができる。よって、現像処理後のパターン精度が向上する。
【0031】
よって、上記方法によると、フォトレジストと現像液との反応で生じる反応生成物を、短時間でレジストパターンを損傷することなく適切に除去することができる。引いては、特性異常が抑制された高性能の半導体装置を、生産能力を落とさず、歩留まりよく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態の半導体装置の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【図2】(a)は、本実施形態の現像装置の概略を示す平面図であり、(b)は、本実施形態の現像装置の有する現像液移動アームおよび各ノズルの概略を示す断面図である。
【図3】(a)は、レジストパターンのスペース幅と欠陥数との関係を示すグラフであり、(b)は、現像時間と、反応生成物9が起因となる欠陥数の関係を示すグラフであり、(c)は、現像時間のオーバー量と欠陥数の関係を示すグラフであり、(d)は、液もり時の半導体基板の回転数と欠陥数の関係を示すグラフであり、(e)半導体基板の回転数を変化させた場合の、純水の吐出時間と欠陥数との関係を示すグラフである。
【図4】(a)〜(d)は、従来のフォトレジストの現像処理の過程を示す主要部の断面図である。
【図5】従来の現像装置の概略を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態について図1〜図4に基づいて説明すれば以下の通りである。
【0034】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態の半導体装置の製造方法における現像処理フローを図1に示す。SiやGaAs等からなる半導体基板1上に、有機BARC(有機材料)3を下層にして形成されたフォトレジスト4の、露光処理後、まず、ステップ1(S1)では、フォトレジスト4上に現像液を塗布する現像液もりを行う(図4(a)参照)。S1は1回目の現像液もりである。
【0035】
次に、S2では、現像液5をフォトレジスト4上に保持させて現像を行う(図4(b)参照)。S2は、1回目の現像である。そしてS3では、フォトレジスト4上の現像液5をリンス液を用いて除去する。リンス液には純水8を用いるのが好ましい。S3は1回目の現像液除去である。これら、S1からS3の処理を第1工程とする。
【0036】
第1工程の後、S4で、さらにフォトレジスト4上に、現像液を塗布する現像液もりを行う。S4は2回目の現像液もりである。そして、S5で現像を行い、S6で現像液5をリンス液を用いて除去する。リンス液には純水8を用いるのが好ましい。S5は2回目の現像であり、S6は2回目の現像液除去である。これら、S4からS6の処理を第2工程とする。第2工程の後、S7で半導体基板1を回転して乾燥させる。
【0037】
このように、本実施形態では、現像液を用いた現像(S1及びS2)及び現像液除去(S3)を行う第1工程と、第1工程の後に、現像液を用いた現像(S1及びS5)及び現像液除去(S6)を行う第2工程と、を含んでいる。
【0038】
ここで、フォトレジストは、ポジ型あるいはネガ型どちらであってもよい。また、例えば、KrFエキシマレーザ用フォトレジストであっても、ArFエキシマレーザ用フォトレジストであってよい。露光光源に応じたものを用意すればよい。
【0039】
有機BARCは、現像液に溶解しない性質であり、有機溶媒に熱硬化剤や光吸収材料を混入させて形成されている。
【0040】
ここで、第1工程で用いる現像液と第2工程で用いる現像液は、同じアルカリ性現像液で、同じ温度で用いるのがよい。ただし、異なるアルカリ性現像液を用いてもよい。
【0041】
本実施形態では、第1工程により、レジストパターンになる部分以外のフォトレジスト4の大部分を取り除くことができる。そして、第2工程により、有機BARC3に付着されるフォトレジスト4と現像液5との反応で生じた反応生成物9を含む、レジストパターンにおける微細な不要部分を取り除くことができ、線幅を安定させて、レジストパターンを形成することができる。なお、従来は現像及び現像液除去(純水洗浄)は1回行って、レジストパターンを形成していた。
【0042】
上記のように、本実施形態では、現像液5を用いた現像及び現像液5の除去を、第1工程と第2工程とで2回行うことにより、短時間で、半導体装置の回路の寸法制御に不可欠である有機BARC3上のフォトレジスト4からなるレジストパターンを、高精細に形成することができる。また、フォトレジスト4を高精細に形成できるため、レジストパターン形成後の加工における形状異常を抑止することができる。よって、現像処理後のパターン精度が向上する。
【0043】
よって、本実施形態の半導体装置の製造方法によると、フォトレジスト4と現像液5との反応で生じる反応生成物9を、短時間でレジストパターンを損傷することなく適切に除去することができる。引いては、特性異常が抑制された高性能の半導体装置を、生産能力を落とさず、歩留まりよく製造することができる。
【0044】
また、後述の実施例から分かるように、第1工程での現像時間、つまり、S1およびS2に要する時間は、現像液5の液もりを行うことでフォトレジスト4の溶解が開始されてから、溶解がフォトレジスト4と有機BARC3との界面に到達するまでの時間である到達時間に、到達時間の−50%から100%の範囲であるオーバー時間を、加えた時間であるのが好ましい。
【0045】
現像時間が多いとフォトレジスト4の溶解が進み過ぎ、精度のよいレジストパターンが形成できない。反対に現像時間が足りなくても、精度のよいレジストパターンを形成できない。しかし、第1工程での現像時間が、到達時間に、到達時間の−50%から100%の範囲であるオーバー時間を、加えた時間であると、過不足の少ない現像を行うことができる。よって、精度のよいレジストパターンを形成することができる。
【0046】
また、後述の実施例から分かるように、第1工程での現像液5の除去(S3)を、半導体基板1を500rpm以上の回転数で回転させながらフォトレジスト4上に純水を10秒以上吐出することで行うのが好ましい。
【0047】
S3をこのように行うことで、純水を半導体基板1全体に満遍なく行渡らせることができ、効果的に現像液5による現像(溶解)を止めることができる。そのため、効果的に1回目の現像を行うことができ、反応生成物9に起因する不具合の抑制に寄与できる。
【0048】
また、後述の実施例から分かるように、第1工程では、S1において、半導体基板1を1000rpm以上の回転数で回転させながらフォトレジスト4上に現像液5を吐出し、その後、0.5秒から2秒の間、半導体基板1を30rpmから200rpmの回転数で回転させながらフォトレジスト4上に現像液5を吐出するのが好ましい。S2では、現像液5がフォトレジスト4上に保持される回転数以下で半導体基板1を回転(あるいは回転を停止)するのが好ましい。S1を上記のように行うことで、現像液5をフォトレジスト4上に満遍なく行渡らせることができる。そして、S2では回転数を下げる、または回転を停止することで、現像を進行させる。そのため、効果的に第1工程での現像を行うことができ、反応生成物9に起因する不具合の抑制に寄与できる。
【0049】
第1工程および第2工程での総現像時間は30秒以上が望ましい。この総現像時間であると線幅制御を好適に行うことができる。現像時間とは、本実施形態では、液もりの開始から現像液5の除去(純水洗浄)の開始直前までの時間を指す。よって、上記総現像時間とは、S1+S2+S4+S5に要する時間である。
【0050】
また、第2工程での現像時の回転数は500rpmが好ましい。また、第2工程での純水リンスの時間は、例えば、回転数500rpmで、60秒以上行えば、反応生成物9が好適に除去できる。
【0051】
また後述の実施例から分かるように、S4では、半導体基板1を、60rpm以上の回転数で回転させながら、例えば1秒(0.7秒でもよい)前記フォトレジスト4上に現像液5を吐出するのが好ましい。そして、S5では、現像液5がフォトレジスト4上に保持される回転数以下で半導体基板1を回転させる、あるいは回転を停止させるのが好ましい。さらに、S6の、現像液の除去を、半導体基板1を500rpm以上の回転数で回転させながらフォトレジスト4上に純水を30秒以上吐出するのが好ましい。これらの条件にて第2工程(S4〜S6)を行うのが、反応生成物を、短時間でレジストパターンを損傷することなく除去するのに好ましい。
【0052】
本実施形態の半導体装置の製造方法により製造された半導体装置は、高精細のレジストパターンを用いて形成されるため、特性異常が抑制された高性能の半導体装置となる。
【0053】
(現像装置の構成)
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法で用いる現像装置の構成について説明する。
【0054】
図2(a)に示すように、本実施形態の現像装置20は、現像液を吐出する現像液ノズル6と、現像液を洗浄するリンス液を吐出するリンス液ノズル16とが、同じ現像液ノズル移動アーム15に設置され、共に、現像液ノズル移動アーム15によって半導体基板12(半導体基板1)上に移動される。なお、現像液ノズル移動アーム15の固定位置(半導体基板12上に移動する前の位置)には、図2(b)に示すように、各液体のドレインである現像液ドレイン部17、リンスドレイン部18が備えられている。
【0055】
また、現像装置20は、半導体基板12の下に設置され、排出液を受け取る現像処理カップ11を有している。現像処理カップ11内で、半導体基板12は、スピンチャックにより回転可能に固定される。スピンチャックは、回転軸、そして回転軸を回転させるモータに接続されている。制御部によりこのモータを制御して、回転軸の回転数、すなわち、半導体基板12の回転数を調整できるようになっている。
【0056】
先に記したように本実施形態の現像処理(S1〜S6)を実現するためには1回目の現
像と現像に用いた現像液を除去する為の純水洗浄の時間制御が必須である。それは、微細化に伴うレジスト性能向上やレジストの薄膜化により、1回目の現像時間は数秒程度となる場合があるからである。ここで、従来の現像装置30では、図5に示すように、現像液ノズル6とリンス液ノズル10とを個々の移動アーム(現像液ノズル移動アーム15およびリンス液ノズル移動アーム13)で制御し、お互い干渉しないように半導体基板上で各液体を吐出していた。そのため、数秒間隔での純水処理が機構上困難である。
【0057】
しかしながら、本実施形態の現像装置20では、現像液ノズル6とリンス液ノズル16とは、同じ現像液ノズル移動アーム15に設置されている。よって、現像液ノズル移動アーム15にて、現像液ノズル6とリンス液ノズル16とを共に半導体基板12のフォトレジスト上に移動させることができる。つまり、リンス液ノズルの移動時間を短縮できる。よって、現像後のリンス液による洗浄をすばやく行う、つまり現像時間を細かく制御することができる。従って、現像装置20を用いることで、フォトレジスト4と現像液5との反応で生じる反応生成物9を、短時間でレジストパターンを損傷することなく適切に除去することができる。
【0058】
(実施例および比較例)
以下の各実施例および各比較例では、露光光源にKrFエキシマレーザ(249nm)、フォトレジスト4の材料は、アセタール系ポジ型レジストを使用した。現像液5はテトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)を使用し、0.35μmの配線加工を行った。
【0059】
(比較例1)
図3(a)は、現像液を用いた現像及び現像液の除去を1回のみ行った場合の、レジストパターンのスペース幅と、反応生成物9が起因となる欠陥の個数(欠陥数)と、の関係を示すグラフである。この場合、液もりは、半導体基板1の回転数60rpmで、1秒間行い、現像は、半導体基板1の回転数0rpm、オーバー現像時間は52秒間にて行った。その後、現像液の除去は、半導体基板1の回転数500rpmで、純水を60秒吐出して行った。
【0060】
図3(a)から、レジスト除去面積の大きい、粗パターンで欠陥数が多くなっているのが分かる。
【0061】
(比較例2)
図3(b)は、現像液を用いた現像及び現像液の除去を1回のみ行った場合の、現像時間と、反応生成物9が起因となる欠陥数と、の関係を示すグラフである。液盛りにおける条件および現像液の除去における条件は、上記比較例1と同様である。
【0062】
図3(b)から、現像時間が長いほど欠陥数が増えており反応生成物9の沈下が進んでいるのが分かる。他方で、レジストパターンの線幅安定性や、溶解不足による欠陥発生を抑えるためには一般的に30秒以上の現像が必要となる。そのため、本発明に係る半導体装置の製造方法の効果を評価するにあたり、以下の実施例では、1回目と2回目の現像時間は総計で60秒に固定した。そして、評価するパターンはライン幅が0.35μm、スペース幅は350μmとした。
【0063】
以下の実施例では、1回目の現像液を用いた現像及び現像液の除去の後に、2回目の現像液を用いた現像及び現像液の除去を行った。
【0064】
(実施例1)
図3(c)は、現像時間のオーバー量と、反応生成物9が起因となる欠陥数と、の関係を示すグラフである。X軸は、露光部のレジストが1回目の現像(S2)により、フォトレジスト4の溶解が開始されてから溶解がフォトレジスト4と有機BARC3との界面に到達するまでの到達時間に対する、オーバー量(%)である。つまり、到達時間では、オーバー量が0%となる。図3(c)のグラフにおいて、X軸のオーバー量が50%での現像時間は、到達時間に到達時間の50%の時間(オーバー時間)を加えた時間になる。つまり、到達時間が10秒である場合、図3(c)のX軸のオーバー量が100%での現像時間は、10+10×100%=20秒である。また、X軸のオーバー量が−50%(アンダー量が50%と言い換えることができる)での現像時間は、10+10×(−50%)=5秒である。
【0065】
図3(c)から、1回目の現像における現像時間は、到達時間に、当該到達時間の−50%から100%の範囲であるオーバー時間を、加えた時間とすることが効果的であることがわかる。つまり、到達時間に上記範囲のオーバー時間を加えた時間に、1回目の現像液の除去(S3)を開始することが効果的であることが分かる。
【0066】
なお、本実施例1では、1回目の液盛り(S1)では、半導体基板1の回転数60rpmで、1秒、現像液5の吐出を行った後、半導体基板1の回転数60rpmで、0,7秒、現像液5の吐出を行った。その後、1回目の現像(S2)は、半導体基板1の回転数0rpmにて行った。また、1回目の純水よるリンス時間は10秒、処理時回転数は1000rpmを適用した。なお、本実施例1におけるオーバー現像量0%は8秒であった。
【0067】
また、2回目の液盛りは、半導体基板1の回転数60rpmで、1秒間行い、2回目の現像は、半導体基板1の回転数0rpmで、現像時間は、1回目の現像との総現像時間が60秒となるように、行った。また、2回目の現像液の除去は、半導体基板1の回転数500rpmで、純水を30秒吐出して行った。
【0068】
(実施例2)
図3(d)は、1回目の液もり(S1)時の半導体基板1の回転数と、反応生成物9が起因となる欠陥数の関係を示す図である。1回目の現像の液もりは、約1秒前後、現像液を吐出させながら回転し、その後に静止あるいは半導体基板1上に現像液5が保持できる程度の低回転で現像を進行させた。
【0069】
図3(d)から、回転数を上げることにより、反応生成物9を含む溶解溶液が除去され欠陥数の低下に寄与していることが分かる。
【0070】
本実施例2では、1回目のオーバー現像時間は100%、1回目のリンス処理時間は10秒、処理回転数は1000rpmを適用した。その他の条件は、上記実施例1と同様とした。また、2回目の液盛り、現像、現像液の除去、における条件は、上記実施例1と同様とした。
【0071】
(実施例3)
図3(e)は、1回目の現像液の除去(S3)での、半導体基板1の回転数、純水の吐出時間(洗浄時間、リンス時間)と、反応生成物9が起因となる欠陥数との関係を示すグラフである。図3(e)より回転数は500rpm以上、純水の吐出時間は10秒以上で安定していることが分かる。なお、本実施例3は、1回目の液もり時の回転数は1000rpm、1回目のオーバー現像時間は100%の条件を適用した。その他の条件は、上記実施例1と同様とした。
【0072】
また、2回目の液もり、現像、現像液の除去、における条件は、上記実施例1と同様とした。
【0073】
上記実施例1〜3で用いた純水の吐出量は、1L/minの設定とした。定性的には多い方が有利であるが、レジストパターンの倒壊が懸念されることから、限定はされないが、例えば、0.8〜1.2L/minが好ましい。
【0074】
(実施例4)
図3(f)は、2回目の現像液の除去(S6)での、半導体基板1の回転数、純水の吐出時間(洗浄時間、リンス時間)と、反応生成物9が起因となる欠陥数との関係を示すグラフである。図3(f)より回転数は500rpm以上、純水の吐出時間は30秒以上であると効果が高い(欠陥が減る)ことが分かる。
【0075】
本実施例4では、1回目の現像ではオーバー量100%とした。これ以外の、1回目の液盛り、現像、現像液の除去の条件は、上記実施例1の条件と同様にした。
【0076】
また、2回目の液盛り、現像、現像液の除去の条件は、2回目の純水の吐出時間と回転数以外は、上記実施例1と同様とした。
【0077】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、フォトレジストに露光処理及び現像処理を行ってレジストパターンを形成する半導体装置の製造方法に有用である。
【符号の説明】
【0079】
1 半導体基板
2 被エッチング膜
3 有機反射防止膜(有機BARC,有機材料)
4 フォトレジスト
5 現像液
6 現像液ノズル
7 スピンチャック
8 純水
9 反応生成物
10 リンス液ノズル
11 処理カップ
12 半導体基板
13 リンス液ノズル移動アーム
15 現像液ノズル移動アーム(移動アーム)
16 リンス液ノズル(リンス液ノズル)
17 現像液ドレイン部
18 リンスドレイン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上の有機材料からなる下層の上に形成されたフォトレジストに、露光処理及び現像処理を行ってレジストパターンを形成する半導体装置の製造方法において、
前記現像処理は、現像液を用いた現像及び現像液の除去を行う第1工程と、当該第1工程の後に、現像液を用いた現像及び現像液の除去を行う第2工程と、を含み、
前記第2工程によって、上記レジストパターンを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程での現像時間は、前記フォトレジストの溶解が開始されてから溶解が当該フォトレジストと前記有機材料との界面に到達するまでの時間である到達時間に、当該到達時間の−50%から100%の範囲であるオーバー時間を、加えた時間であることすることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程での前記現像液の除去を、前記半導体基板を500rpm以上の回転数で回転させながら前記フォトレジスト上に純水を10秒以上吐出することで行う、ことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1工程での現像では、前記半導体基板を1000rpm以上の回転数で回転させながら前記フォトレジスト上に前記現像液を吐出し、その後、0.5秒から2秒の間、前記半導体基板を30rpmから200rpmの回転数で回転させながら前記フォトレジスト上に前記現像液を吐出し、前記現像液が前記フォトレジスト上に保持される回転数以下で前記半導体基板を回転させる、あるいは回転を停止させる、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程での前記現像液の除去を、前記半導体基板を500rpm以上の回転数で回転させながら前記フォトレジスト上に純水を30秒以上吐出することで行う、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
半導体基板上に形成されたフォトレジストを現像する現像装置において、
現像液を吐出する現像液ノズルと、
前記現像液ノズルを前記フォトレジスト上に移動させる移動アームと、
前記現像液を除去するためのリンス液を吐出するリンス液ノズルと、を備え、
前記リンス液ノズルは、前記移動アームに設置され、前記現像液ノズルと共に前記フォトレジスト上に移動されることを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項1から5に記載の製造方法にて製造されたことを特徴とする半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−115274(P2013−115274A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260935(P2011−260935)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】