説明

半導体装置の製造方法及び半導体装置

【課題】ワイヤを被覆していた樹脂に起因して半導体装置の不良が発生することを抑制する。
【解決手段】半導体チップ10を配線基板20の上に配置する。次いで、半導体チップ10と配線基板20とをボンディングワイヤ30で接続する。次いで、ボンディングワイヤ30の少なくとも一部に絶縁膜32をコーティングする。次いで、半導体チップ10及び絶縁膜32を封止用樹脂で封止する。このように、絶縁膜32は、半導体チップ10と配線基板20とをボンディングワイヤ30で接続した後に形成される。従って、絶縁膜32が異物となってボンディング不良を生じさせることを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディングワイヤを用いて半導体チップと配線基板を接続する半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の一つの、インターポーザなどの配線基板上に半導体チップを配置し、半導体チップと配線基板をボンディングワイヤで接続するものがある。このような構造を有する半導体装置において、半導体チップ及びボンディングワイヤは、封止樹脂によって封止されている。この封止樹脂を形成する工程において、ボンディングワイヤが封止樹脂の流れによって変形し、隣り合うボンディングワイヤ同士が接触してしまう可能性がある。
【0003】
これに対して特許文献1には、樹脂で予め被覆されたボンディングワイヤを用いて半導体チップと配線基板を接続することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−316264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者が検討した結果、樹脂で予め被覆されたボンディングワイヤを用いて半導体チップと配線基板を接続する場合、以下の問題が生じうることが判明した。ボンディングワイヤは、ワイヤの先端を加熱して溶融させることにより、電極とワイヤを接続している。この工程において、ワイヤを被覆していた樹脂が異物となってボンディング不良を生じさせる可能性、及び、この樹脂が炭化したものが配線間に挟まってショートを生じさせる可能性がある。すなわち、ワイヤを被覆していた樹脂に起因して半導体装置の不良が発生する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、半導体チップを配線基板上に配置する配置工程と、
前記半導体チップと前記配線基板とをボンディングワイヤで接続する接続工程と、
前記ボンディングワイヤの少なくとも一部に絶縁物をコーティングするコーティング工程と、
前記半導体チップ及び前記ボンディングワイヤを封止用樹脂で封止する封止工程と、
を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【0007】
本発明によれば、半導体チップと配線基板とをボンディングワイヤで接続した後、このボンディングワイヤを絶縁物でコーティングしている。従って、ワイヤを被覆する樹脂が異物となってボンディング不良を生じさせること、及び、この樹脂が炭化したものが配線間に挟まってショートを生じさせることのそれぞれを抑制できる。
【0008】
本発明によれば、配線基板と、
前記配線基板上に配置された半導体チップと、
前記配線基板と前記半導体チップを接続するボンディングワイヤと、
前記ボンディングワイヤのうち両端を除いた領域の少なくとも一部をコーティングする絶縁膜と、
を備える半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ワイヤを被覆していた樹脂に起因して半導体装置の不良が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法に用いられるコーティング装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示したコーティング装置を用いてボンディングワイヤに絶縁膜をコーティングする方法を説明するための図である。
【図3】絶縁膜を塗布し終わった後の半導体装置の平面図である。
【図4】封止用樹脂を用いて半導体チップ及びボンディングワイヤを封止した構造を示す断面図である。
【図5】第2の実施形態に係るコーティング装置の構成を示す図である。
【図6】図5に示したコーティング装置を用いてボンディングワイヤに絶縁膜を形成する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
【0013】
まず、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の概略を説明する。この半導体装置の製造方法は、以下の工程を有している。まず、半導体チップ10を配線基板20の上に配置する。次いで、半導体チップ10と配線基板20とをボンディングワイヤ30で接続する。次いで、ボンディングワイヤ30の少なくとも一部に絶縁膜32をコーティングする。次いで、半導体チップ10及び絶縁膜32を封止用樹脂で封止する。
【0014】
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法に用いられるコーティング装置の構成を示す図である。このコーティング装置は、樹脂タンク110、空気圧制御装置115、塗布部120、移動機構130、及び制御部140を備えている。
【0015】
樹脂タンク110には、絶縁膜32を形成するための材料、例えばコーティング用の樹脂が保持されている。この樹脂は、例えば熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂である。ここで用いられる光硬化性樹脂は、例えば紫外線硬化型の樹脂である。
【0016】
樹脂タンク110と塗布部120は、柔軟性を有する配管、例えば樹脂チューブを介して互いに接続している。そして空気圧制御装置115は、樹脂タンク110内の気圧を調節することにより、樹脂タンク110が保持している樹脂を塗布部120に向けて送り出す。
【0017】
塗布部120は、樹脂タンク110から送られてきた樹脂を、ボンディングワイヤ30に塗布する。詳細には、塗布部120は、ボンディングワイヤ30と対向する面に凹部122を有している。凹部122は、塗布部120の第1の側面から、この第1の側面とは反対側の第2の側面まで貫通している。凹部122の内部には、塗布ブラシ124が設けられている。塗布ブラシ124は、凹部122の2つの内側面それぞれに埋め込まれている。樹脂タンク110から送られてきた樹脂は、凹部122の内側面に押し出される。そして塗布ブラシ124がボンディングワイヤ30に接することにより、凹部122の内部に押し出された樹脂は、ボンディングワイヤ30に塗布される。
【0018】
塗布ブラシ124は、一つの内側面につき複数列埋め込まれている。また、塗布ブラシ124は、開放端が、凹部122の開口側から奥側に向けて延伸する方向に埋め込まれている。これにより、凹部122に供給された樹脂が凹部122から垂れることを抑制できる。また、ボンディングワイヤ30のうち配線基板20側の部分に樹脂塗布斑が形成されることを抑制できる。
【0019】
なお、図1において、ボンディングワイヤ30を凹部122の内部に入り込まない向きにしているが、塗布のときには、凹部122は、ボンディングワイヤ30を受け入れる方向を向く。
【0020】
移動機構130は、塗布部120の位置を、X方向、Y方向、及びZ方向それぞれに移動させる。
【0021】
制御部140は、空気圧制御装置115及び移動機構130を制御する。制御部140は、例えばコンピュータにソフトウェアをインストールすることにより、構築される。
【0022】
なお、半導体チップ10は、このコーティング装置が用いられる前に、配線基板20上に搭載される。配線基板20は、例えばインターポーザであるが、リードフレームであっても良い。そして半導体チップ10の電極パッド12は、ボンディングワイヤ30を介して配線基板20の電極22に接続されている。
【0023】
図2は、図1に示したコーティング装置を用いてボンディングワイヤ30に絶縁膜32をコーティングする方法を説明するための図である。絶縁膜32をコーティングする前に、ボンディングワイヤ30の一端は電極パッド12に接続されており、かつボンディングワイヤ30の他端は電極22に固定されている。この状態で、ボンディングワイヤ30には絶縁膜(樹脂膜)は形成されていない。
【0024】
そしてコーティング装置の制御部140は、移動機構130を制御することにより、塗布部120の凹部122の向きを、ボンディングワイヤ30が延伸する方向と一致させる。そして制御部140は、塗布部120を移動させ、凹部122の内部にボンディングワイヤ30を位置させる。この状態で、凹部122の内側の塗布ブラシ124は、ボンディングワイヤ30に接している。そして制御部140は、空気圧制御装置115を制御して塗布部120の凹部122内に樹脂を送りながら、塗布部120をボンディングワイヤ30に沿って移動させる。これにより、ボンディングワイヤ30のうち両端を除いた領域の少なくとも一部には、絶縁膜32が形成される。なお、樹脂の塗布が終了した後、制御部140は、空気圧制御装置115を制御して、凹部122に樹脂を送ることを終了させる。なお、ボンディングワイヤ30のうち絶縁膜32が形成される範囲には、ボンディングワイヤ30の長手方向の中央部が含まれている。
【0025】
全てのボンディングワイヤ30に対して絶縁膜32を形成した後、絶縁膜32を硬化させる。絶縁膜32が熱硬化性の樹脂である場合、絶縁膜32を熱処理することにより、絶縁膜32は硬化する。また絶縁膜32が光硬化性の樹脂である場合、絶縁膜32に光を照射することにより、絶縁膜32は硬化する。
【0026】
図3は、絶縁膜32を塗布し終わった後の半導体装置の平面図である。本図に示す例では、半導体チップ10のうち対向する2辺それぞれに、複数のボンディングワイヤ30が設けられている。そして、後述する封止用樹脂40は、ボンディングワイヤ30と交わる方向(例えば図中矢印で示す方向)に流れ込んでくる。このため、ボンディングワイヤ30が封止用樹脂40の流れに沿ってたわみ、その隣に位置するボンディングワイヤ30と接触する可能性が出てくる。しかし本実施形態では、ボンディングワイヤ30には絶縁膜32が形成されている。このため、隣り合うボンディングワイヤ30が互いに接しても、これら2つのボンディングワイヤ30がショートすることはない。
【0027】
なお、図3に示す例では、全てのボンディングワイヤ30に絶縁膜32を設けている。ただし、一つおきにボンディングワイヤ30に対して絶縁膜32を設けても良い。また、半導体チップ10の4辺全てにボンディングワイヤ30が設けられている場合にも、図3を用いて説明したことは適用される。
【0028】
図4は、封止用樹脂40を用いて半導体チップ10及びボンディングワイヤ30を封止した構造を示す断面図である。本図に示す例において、封止用樹脂40は配線基板20のうち半導体チップ10が設けられている面の上に形成されている。封止用樹脂40は、半導体チップ10及びボンディングワイヤ30を覆っている。本図に示す例において、封止用樹脂40の端面は配線基板20の端面と一致している。ただし封止用樹脂40の端面は、配線基板20の端面よりも内側、すなわち半導体チップ10の近くに位置していても良い。
【0029】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態によれば、封止用樹脂40を形成するとき、ボンディングワイヤ30のうち両端を除いた部分の少なくとも一部は、絶縁膜32によってコーティングされている。従って、ボンディングワイヤ30が封止用樹脂40の流れに沿ってたわみ、その隣に位置するボンディングワイヤ30と接触しても、これらボンディングワイヤ30が短絡することを抑制できる。
【0030】
また、絶縁膜32は、半導体チップ10と配線基板20とをボンディングワイヤ30で接続した後に形成される。従って、絶縁膜32が異物となってボンディング不良を生じさせることを抑制できる。また、絶縁膜32がボンディング時の熱により炭化し、配線間をショートさせることも抑制できる。
【0031】
また、絶縁膜32を硬化させてから封止用樹脂40を形成しているため、封止用樹脂40内に気泡が発生することを抑制できる。なお、封止用樹脂40内に気泡が形成された場合、この気泡を起点として封止用樹脂40は割れやすくなる。
【0032】
(第2の実施形態)
【0033】
図5は、第2の実施形態に係るコーティング装置の構成を示す図である。このコーティング装置は、以下の点を除いて、第1の実施形態に係るコーティング装置と同様の構成である。
【0034】
まず、塗布部120がノズルタイプであり、樹脂は、塗布部120から吐出される。また塗布部120と樹脂タンク110を結ぶ配管(例えば樹脂チューブ)には、空気圧制御装置116が接続されている。そして空気圧制御装置116が配管に供給する空気圧を制御することにより、塗布部120から吐出される樹脂の量が制御される。なお、空気圧制御装置116は、制御部140によって制御されている。
【0035】
図6は、図5に示したコーティング装置を用いてボンディングワイヤ30に絶縁膜32を形成する方法を説明するための図である。本図に示す例において、まず制御部140は、塗布部120を、ボンディングワイヤ30の中央部の上方に位置させる。そして制御部140は、空気圧制御装置115,116を制御することにより、塗布部120のノズルから樹脂を吐出させる。これにより、ボンディングワイヤ30には絶縁膜32が形成される。この際、必要に応じて塗布部120をボンディングワイヤ30に沿って動かしても良い。そして塗布部120を次のボンディングワイヤ30の上方に移動させ、上記した動作を繰り返す。
【0036】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0037】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0038】
10 半導体チップ
12 電極パッド
20 配線基板
22 電極
30 ボンディングワイヤ
32 絶縁膜
40 封止用樹脂
110 樹脂タンク
115 空気圧制御装置
116 空気圧制御装置
120 塗布部
122 凹部
124 塗布ブラシ
130 移動機構
140 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを配線基板上に配置する配置工程と、
前記半導体チップと前記配線基板とをボンディングワイヤで接続する接続工程と、
前記ボンディングワイヤの少なくとも一部に絶縁物をコーティングするコーティング工程と、
前記半導体チップ及び前記ボンディングワイヤを封止用樹脂で封止する封止工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記絶縁物はコーティング用樹脂であり、
前記コーティング工程において、前記コーティング用樹脂を前記ボンディングワイヤに塗布する半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記コーティング用樹脂は熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂であり、
前記コーティング工程と、前記封止工程の間に、前記コーティング用樹脂を硬化させる工程を有する半導体装置の製造方法。
【請求項4】
配線基板と、
前記配線基板上に配置された半導体チップと、
前記配線基板と前記半導体チップを接続するボンディングワイヤと、
前記ボンディングワイヤのうち両端を除いた領域の少なくとも一部をコーティングする絶縁膜と、
を備える半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記絶縁膜は、熱硬化性又は光硬化性の樹脂である半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−222292(P2012−222292A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89304(P2011−89304)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】