説明

半導体装置の製造方法

【課題】hp45nm以降のCMOS半導体装置のような微細構造において、LaO膜を高精度でエッチングして所定の領域にLaO膜を残すことができる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】high−kゲート絶縁膜/金属ゲート構造を有する半導体装置の製造方法において、半導体基板の上にhigh−k材料膜とLaO膜を順次形成する工程と、LaO膜の上に、所定の領域を覆うようにマスク層を形成する工程と、マスク層を用いて、LaO膜を選択的に除去するエッチング工程と、マスク層を除去した後に、LaO膜をhigh−k材料膜中に熱拡散させる工程とを含み、エッチング工程が、pH4〜6.8の酸性水溶液を用いてLaO膜を選択的にウエットエッチングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、high−kゲート絶縁膜/金属ゲート構造を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
hp45nm以降のCMOS半導体装置においては、high−k材料/金属材料をそれぞれゲート絶縁膜/ゲート電極に用いることが検討されているが、更に、NMOS領域のhigh−k材料の上にLaO膜を形成し、これをhigh−k材料中に熱拡散させて、NMOSの閾値電圧を制御することも検討されている。
【0003】
このため、半導体基板の上にhigh−k材料膜、LaO膜を順次形成した後NMOS領域のLaO膜上にレジストマスクを形成し、PMOS領域のLaO膜を選択的にウエットエッチングすることが必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のように、LaO膜のエッチングに塩酸溶液のような強酸溶液を用いた場合、エッチング速度が速く、エッチングの制御が困難であった。例え1000倍程度に希釈した塩酸溶液(エッチング速度は約4nm/秒)を用いても、hp45nm以降のCMOS半導体装置ではLaO膜の膜厚が1nm程度と非常に薄くなり、LaO膜が横方向にもサイドエッチされ、設計通りにLaO膜を残すことが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、hp45nm以降のCMOS半導体装置のような微細構造において、LaO膜を高精度でエッチングして所定の領域にLaO膜を残すことができる半導体装置の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、high−kゲート絶縁膜/金属ゲート構造を有する半導体装置の製造方法であって、半導体基板の上にhigh−k材料膜とLaO膜を順次形成する工程と、LaO膜の上に、所定の領域を覆うようにマスク層を形成する工程と、マスク層を用いて、LaO膜を選択的に除去するエッチング工程と、マスク層を除去した後に、LaO膜をhigh−k材料膜中に熱拡散させる工程とを含み、エッチング工程が、pH4〜6.8の酸性水溶液を用いてLaO膜を選択的にウエットエッチングする工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0007】
また、本発明は、high−kゲート絶縁膜/金属ゲート構造を有する半導体装置の製造方法であって、半導体基板の上にhigh−k材料膜を形成する工程と、high−k材料層の上に、所定の領域を覆うようにハードマスクを形成する工程と、high−k材料層およびハードマスクを覆うようにLaO膜を形成する工程と、LaO膜をhigh−k材料膜中に熱拡散させる工程と、high−k材料膜の上に残ったLaO膜を選択的に除去するエッチング工程と、ハードマスクを除去する工程とを含み、エッチング工程が、pH4〜6.8の酸性水溶液を用いてLaO膜を選択的にウエットエッチングする工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法でもある。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる製造方法では、高い精度でLaO膜のパターニングが可能となり、超微細化、高集積化された半導体装置の製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、「上」、「下」、「左」、「右」およびこれらの用語を含む名称を適宜使用するが、これらの方向は図面を参照した発明の理解を容易にするために用いるものであり、実施形態を上下反転、あるいは任意の方向に回転した形態も、当然に本願発明の技術的範囲に含まれる。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の製造工程の断面図を示す。かかる製造方法は、以下の工程1〜5を含む。
【0011】
工程1:図1(a)に示すように、半導体基板1を準備する。半導体基板1は、例えばシリコンからなり、PMOSが形成される領域(図1中「PMOS」と記載)と、NMOSが形成される領域(図1中「NMOS」と記載)とを有する。NMOS領域とPMOS領域の間に、埋め込み絶縁層のような絶縁領域が形成されても良い。
【0012】
次に、半導体基板1の上に、high−k(高誘電率)材料膜2、LaO膜3を順次形成する。high−k材料は、SiOより比誘電率が高い材料であり、例えばHfSiON、HfAlON、HfO等が用いられる。high−k材料膜2、LaO膜3は、スパッタ法やCVD法を用いて形成される。high−k材料膜2の膜厚は、例えば2〜3nmであり、LaO膜3の膜厚は、例えば1nm程度である。
なお、半導体基板1とhigh−k材料膜2との間に、シリコン酸化膜をインターフェイシャル(IF)層として形成しても構わない。
【0013】
工程2:図1(b)に示すように、通常のリソグラフィ法を用いて、LaO膜5の上にレジストマスク4を形成する。レジストマスク4は、半導体基板1のNMOS領域を覆うように形成される。
【0014】
工程3:図1(c)に示すように、レジストマスク4をエッチングマスクに用いて、LaO膜3をエッチングする。エッチング溶液には、例えば、pH4.89の二酸化炭素水溶液が用いられる。かかる二酸化炭素水溶液では、二酸化炭素の濃度は約16.8ppmであり、比抵抗は約0.2MΩ・cmである。二酸化炭素水溶液は、例えば純水に二酸化炭素(炭酸ガス)を溶解させ、所定のpHとなるように二酸化炭素の濃度を調整した溶液が用いられる。
【0015】
図2は、二酸化炭素水溶液を用いてLaO膜をエッチングする場合の、処理時間(エッチング時間)とLaOエッチング量の関係を示す。図2から分かるように、30秒間のエッチングでエッチング量が1.22nm、1分間のエッチングでエッチング量が2.56nm、2分間のエッチングでエッチング量が5.15nmとなり、エッチング時間とエッチング量の関係は、
y=2.615x−0.075
の関係となる。
但し、xは処理時間(分)、yはエッチング量(nm)を表す。
【0016】
かかる二酸化炭素水溶液を用いて、レジストマスク4で覆われていないLaO膜3を選択的に除去する。図1(c)に示すように、レジストマスク4の下のLaO膜3にはサイドエッチが入らず、レジストマスク4のパターンどおりにLaO膜3を残すことができる。
【0017】
なお、比較例として、エッチング溶液に1000倍に希釈した塩酸水溶液(pH約2)を用いた場合、エッチング速度は約、4nm/秒であり、エッチングの制御性が悪く、レジストマスク4の下のLaO膜3に対して大きなサイドエッチが入ることが確認されている。
【0018】
また、比較例として、エッチング溶液に純水(pH7)を用いた場合は、15分間のエッチング処理でLaO膜3のエッチング量は約0.5nmであり、殆どエッチングが進まないことが確認されている。
【0019】
以下の表1は、二酸化炭素水溶液の二酸化炭素の濃度と、比抵抗、pH、およびH、HCO濃度の関係(水溶液の温度:15℃)を示す。
【0020】
【表1】

【0021】
また、図3は、表2の関係をグラフに表したものであり、横軸がCO濃度(ppm)、縦軸が比抵抗(MΩ・cm)およびpHを示す。
【0022】
エッチング溶液としては、pH4〜6.8が好ましく、この場合の水溶液の抵抗率は、0.025〜13.8MΩ・cm、の範囲となり、水溶液中の二酸化炭素の濃度は、0.005〜850ppmの範囲となる。
【0023】
工程4:図1(d)に示すように、レジストマスク4を有機溶剤等で除去する。この結果、NMOS領域の上に、LaO膜3を残すことができる。
【0024】
工程5:図1(e)に示すように、熱処理を行うことにより、LaO膜3を、NMOS領域のhigh−k材料膜2中に拡散させるキャップ(cap)プロセスが行われる。このようにLaO膜3をhigh−k材料中に熱拡散させることにより、NMOSの閾値電圧をシフトさせることができる。
続いて、PMOS領域、NMOS領域のhigh−k材料膜2の上に、それぞれ金属ゲート(図示せず)を形成する。
更に、ソース/ゲート領域、層間絶縁層、引き出し配線等を通常の工程を用いて形成することにより、PMOS、NMOSを含むCMOS半導体装置を作製することができる。
【0025】
以上で説明したように、本実施の形態1にかかる製造方法では、サイドエッチの発生なく、レジストマスク4で覆われていないLaO膜3を選択的に除去できる。この結果、特にhp45nm以降のCMOS半導体装置のような超微細化、高集積化された半導体装置において、高い制御性でLaO膜3のパターニングが可能となる。
【0026】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の製造工程の断面図を示す。かかる製造方法は、以下の工程1〜8を含み、図1と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0027】
工程1:図4(a)に示すように、シリコン等の半導体基板1を準備する。次に、半導体基板1の上に、high−k材料膜2、ハードマスク6を順次形成する。ハードマスク6は、例えば、膜厚が15nm程度の窒化チタン(TiN)からなり、スパッタ法やCVD法で形成される。
【0028】
工程2:図4(b)に示すように、通常のリソグラフィ法を用いて、ハードマスク6の上にレジストマスク4を形成する。レジストマスク4は、半導体基板1のPMOS領域を覆うように形成される。
【0029】
工程3:図4(c)に示すように、レジストマスク4をエッチングマスクに用いてハードマスク6をパターニングする。
【0030】
工程4:図4(d)に示すように、有機溶剤等を用いてレジストマスク4を除去する。
【0031】
工程5:図4(e)に示すように、全面を覆うようにLaO膜3を形成する。LaO膜3は、例えばスパッタ法やCVD法を用いて形成され、膜厚は1nm程度である。
【0032】
工程6:図4(f)に示すように、熱処理を行い、high−k材料膜2、ハードマスク6中にLaO膜3を拡散させてLaO拡散層5を形成する。LaO膜3の一部は、high−k材料膜2、ハードマスク6中に拡散せず、これらの膜の上に余剰LaO膜13として残る。
【0033】
工程7:図4(g)に示すように、実施の形態1の工程3で用いたエッチング溶液と同じ、二酸化炭素水溶液からなりエッチング溶液で、余剰LaO膜13を選択的に除去する。かかるエッチング溶液を用いることにより、LaO拡散層5をエッチングすることなく、high−k材料膜2、ハードマスク6上の余剰LaO膜13のみを選択的除去できる。
【0034】
工程8:工程4(h)に示すように、例えば、HSOとHの混合液を用いて、ハードマスク6を選択的に除去する。以上の工程で、図4(g)に示すように、high−k材料膜2のNMOS領域にのみLaO拡散層5を形成することができる。
続いて、PMOS領域、NMOS領域のhigh−k材料膜2の上に、それぞれ金属ゲート(図示せず)を形成する。
更に、ソース/ゲート領域、層間絶縁層、引き出し配線等を通常の工程を用いて形成することにより、PMOS、NMOSを含むCMOS半導体装置を作製することができる。
【0035】
以上で説明したように、本実施の形態2にかかる製造方法では、high−k材料膜2中に拡散させたLaO拡散層5をエッチングすることなく余剰LaO膜13のみを選択的に除去できる。この結果、特にhp45nm以降のCMOS半導体装置のような超微細化、高集積化された半導体装置において、高い制御性でLaO拡散層5の形成が可能となる。
【0036】
なお、実施の形態1、2では、LaO膜3、余剰LaO膜13のエッチング溶液として、pH4〜6.8の二酸化炭素水溶液を用いる場合について説明したが、これに代えて、酢酸水溶液、蟻酸水溶液、HCl等の酸性水溶液にアンモニア水等のアルカリ水溶液を添加してpHを調整した水溶液等を用いても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、半導体装置の製造プロセス、特に、capプロセス(LaOの拡散プロセス)を使用してhigh−kゲート絶縁膜/金属ゲート構造のゲート電極を形成する半導体装置の製造プロセスに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の製造工程の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる二酸化炭素水溶液を用いたエッチング特性を示す。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる二酸化炭素水溶液の、濃度と比抵抗およびpHとの関係を示す。
【図4】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の製造工程の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 半導体基板、2 high−k材料膜、3 LaO膜、4 レジストマスク、5 LaO拡散層、6 ハードマスク、13 余剰LaO膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
high−kゲート絶縁膜/金属ゲート構造を有する半導体装置の製造方法であって、
半導体基板の上にhigh−k材料膜とLaO膜を順次形成する工程と、
該LaO膜の上に、所定の領域を覆うようにマスク層を形成する工程と、
該マスク層を用いて、該LaO膜を選択的に除去するエッチング工程と、
該マスク層を除去した後に、該LaO膜を該high−k材料膜中に熱拡散させる工程とを含み、
該エッチング工程が、pH4〜6.8の酸性水溶液を用いて該LaO膜を選択的にウエットエッチングする工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
high−kゲート絶縁膜/金属ゲート構造を有する半導体装置の製造方法であって、
半導体基板の上にhigh−k材料膜を形成する工程と、
該high−k材料層の上に、所定の領域を覆うようにハードマスクを形成する工程と、
該high−k材料層および該ハードマスクを覆うようにLaO膜を形成する工程と、
該LaO膜を該high−k材料膜中に熱拡散させる工程と、
該high−k材料膜の上に残った該LaO膜を選択的に除去するエッチング工程と、
該ハードマスクを除去する工程とを含み、
該エッチング工程が、pH4〜6.8の酸性水溶液を用いて該LaO膜を選択的にウエットエッチングする工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
上記酸性水溶液は、二酸化炭素を溶解させた水溶液、酢酸水溶液、および蟻酸水溶液から選択される水溶液であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記二酸化炭素を溶解させた水溶液の抵抗率は、0.025〜13.8MΩ・cmの範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
上記二酸化炭素を溶解させた水溶液中の二酸化炭素の濃度は、0.005〜850ppmの範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−141129(P2010−141129A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315944(P2008−315944)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】