説明

半導体装置の製造方法

【課題】レジストマスクを用いたウエットエッチングにより、下地のゲート絶縁膜にダメージを与えることなく、寸法精度良く金属膜を加工する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、半導体基板100上に金属薄膜102を形成する工程(a)と、金属薄膜102の上にアルカリ水溶液可溶有機膜103を形成する工程(b)と、アルカリ水溶液可溶有機膜103の上にフォトレジスト膜104を形成する工程(c)と、フォトレジスト膜104に開口部を設けてレジストパターン105を形成する工程(d)と、薬液を用いて、開口部に露出するアルカリ水溶液可溶有機膜103を除去する工程(e)と、工程(e)の後に、ウエットエッチングにより、開口部に露出する金属薄膜102を除去する工程(f)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に開示する技術は、半導体装置の製造方法に関するものであり、特に、金属膜の加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法において、半導体基板上に形成された絶縁膜及び金属膜を所望の形状にパターニングしたり、層間絶縁膜に多層配線形成用のコンタクトホールを穿設するために、種々のエッチング技術が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2873759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金属膜を加工するためのマスク膜としてフォトレジスト膜を用いて、金属膜のウエットエッチングを行う場合は、フォトレジスト膜と金属膜との密着性が悪いため、フォトレジスト膜と金属膜との界面へエッチング液が沁み込む。このため、フォトレジスト膜の下部における本来エッチングされるべきでない領域の金属膜までエッチングによって消失し、アンダーカットが形成される。その結果、金属膜上のフォトレジスト膜の剥離が生じ得る。これらにより、金属膜の加工寸法精度が悪化するという問題がある。
【0005】
最近では、トランジスタの性能を向上させるため、ゲート材料に使用されている金属膜の加工において、ウエットエッチングが使用される場合があるが、これは以下の理由からである。すなわち、ドライエッチングのようなプラズマ又はラジカルを用いるエッチングによると、金属膜の加工の際に、金属膜の下部のゲート絶縁膜にダメージを生じさせることになる結果、所望のトランジスタ特性が得られないからである。さらに、金属膜の加工の際にマスクとして用いたレジスト膜を除去する際にも、金属膜へのダメージを回避するためには、アッシングなどのドライエッチングを用いない方が良いからである。
【0006】
このように、金属膜の加工においてウエットエッチングを用いる場合において、金属膜とレジスト膜との密着性を確保するために、金属膜の上にレジスト膜を塗布する前に酸化膜を形成する技術も提案されているが(例えば特許文献1参照)、該酸化膜の除去にドライエッチングを用いることになり、金属膜及びゲート絶縁膜にダメージが生じる場合がある。
【0007】
前記に鑑み、本発明の目的は、下地のゲート絶縁膜にダメージを与えることなく、寸法精度良く金属膜を加工することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一形態の半導体装置の製造方法は、基板上に金属膜を形成する工程(a)と、金属膜の上に有機膜を形成する工程(b)と、有機膜の上にフォトレジスト膜を形成する工程(c)と、フォトレジスト膜に有機膜を露出する開口部を設けることにより、レジストパターンを形成する工程(d)と、薬液を用いて、開口部に露出する有機膜を除去する工程(e)と、工程(e)の後に、ウエットエッチングにより、開口部に露出する金属膜を除去する工程(f)とを備える。
【0009】
本発明の一形態の半導体装置の製造方法において、工程(d)と工程(e)とは、同一の薬液を用いて、単一の工程で行われてもよい。
【0010】
本発明の一形態の半導体装置の製造方法において、工程(d)は、フォトレジスト膜に対してパターン露光及び現像を行うことにより、レジストパターンを形成する工程であってもよく、工程(e)で用いる薬液は、工程(d)における現像に用いる現像液であってもよい。
【0011】
この場合、現像液はアルカリ性水溶液であってもよい。
【0012】
この場合、現像液は、2.38wt%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドであってもよい。
【0013】
本発明の一形態の半導体装置の製造方法において、有機膜の膜厚は、10nm以上であって且つ80nm以下であってもよい。
【0014】
本発明の一形態の半導体装置の製造方法において、有機膜は反射防止膜であってもよい。
【0015】
本発明の一形態の半導体装置の製造方法において、工程(f)は、酸性の薬液を用いて、ウエットエッチングを行う工程であってもよい。
【0016】
本発明の一形態の半導体装置の製造方法において、金属膜は、酸化チタン、酸化ランタン、窒化チタン、窒化タンタル、又は酸化アルミニウムであってもよい。
【0017】
本発明の一形態の半導体装置の製造方法において、工程(f)の後に、シンナーを用いて、レジストパターンを除去する工程(g)と、工程(g)の後に、現像液を用いて、有機膜を除去する工程(h)とを備えてもよい。
【0018】
本発明の一形態の半導体装置の製造方法において、工程(a)の前に、基板の上にゲート絶縁膜を形成する工程をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一形態の半導体装置の製造方法によると、ゲート絶縁膜上の金属膜を寸法精度よく、且つ、ゲート絶縁膜にダメージを与えることなく加工することができる。このため、良好な性能を有する半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るパターン形成方法を工程順に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、図面及び詳細な説明をもって本発明の技術的思想を明確に説明するものであり、当該技術分野におけるいずれの当業者であれば、本発明の好ましい実施例を理解した後に、本発明が開示する技術により、変更及び付加を加えることが可能であり、これは本発明の技術的思想及び範囲を逸脱するものではない。また、本発明の趣旨を逸脱しない限り、下記の複数の実施形態を組み合わせることも可能である。
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法としてのパターン形成方法について図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1(a)〜(d)は、本発明の一実施形態に係るパターン形成方法を工程順に示す断面図である。
【0024】
まず、図1(a)に示すように、例えば単結晶シリコン等からなる半導体基板100の上に、例えばHfからなる膜厚1.8nmのゲート絶縁膜101を形成する。続いて、ゲート絶縁膜101の上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、例えばTiN(窒化チタン)等からなる膜厚15nmの金属薄膜102を形成する。続いて、例えばスピン塗布法等を用いて、金属薄膜102の上に、アルカリ水溶液可溶有機膜を塗布する。続いて、例えばホットプレートを用いて、180℃の温度下で60秒間熱処理を行うことにより、例えば膜厚20nmのアルカリ水溶液可溶有機膜103を形成する。その後、アルカリ水溶液可溶有機膜103の上にレジスト膜104を塗布する。ここで、アルカリ水溶液可溶有機膜103は、例えば現像液可溶型BARC(Bottom Anti Reflective Coating)からなる。また、レジスト膜104は、例えば化学増幅型レジストからなる。
【0025】
次に、図1(b)に示すように、フォトマスクを介して、レジスト膜104に対して例えばKrFエキシマーレーザーよりなる露光光を照射して、パターン露光を行う。続いて、パターン露光が行われたレジスト膜104に対して、例えばホットプレートを用いて、110℃の温度下で60秒間加熱を行う。その後、レジスト膜104の感光部を例えば2.38wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液(アルカリ現像液)を用いて現像することにより、開口部を有する寸法260nmのレジストパターン105を形成する。さらに、該アルカリ現像液を用いて、レジストパターン105の開口部下に位置するアルカリ水溶液可溶有機膜103も連続的に溶解除去し、開口部に金属薄膜102表面を露出させる。
【0026】
本工程では、金属薄膜102とレジスト膜104との間にアルカリ水溶液可溶有機膜103を設けることにより、レジスト膜104の現像工程に引き続いて、該現像工程において用いた現像液により、レジスト膜104の下に形成されたアルカリ水溶液可溶有機膜103を溶解除去することができる。このように、アルカリ水溶液可溶有機膜103の除去工程を特別に設けることなく、次工程における金属薄膜102のエッチング時におけるマスク膜となるレジストパターン105及びアルカリ水溶液可溶有機膜103を形成することができる。すなわち、レジスト膜104の現像工程(レジストパターン105の形成工程)とアルカリ水溶液可溶有機膜103の除去工程とは単一の工程で実現される。但し、単一の工程で実現される必要はない。
【0027】
次に、図1(c)に示すように、レジストパターン105をマスクに用いたウエットエッチングにより、金属薄膜102を除去する。例えばSPM(1:50)を用い、30℃の温度にて1200秒間、ウエットエッチングすることにより、例えばTiN等からなる金属薄膜102を所望のパターンに形成する。
【0028】
本工程では、ウエットエッチングによって金属薄膜102を所望のパターンに形成する際、金属薄膜102上のアルカリ水溶液可溶有機膜103は、膜厚20nmと薄膜であるため、密着性低下の原因と考えられるレジストパターン105の熱収縮ストレスによるアルカリ水溶液可溶有機膜103へ与える影響は抑制され、アルカリ水溶液可溶有機膜103の熱収縮は小さい。また、アルカリ水溶液可溶有機膜103は、金属薄膜102上に形成する際に最も高温の180℃に晒された後は、その高温よりも低い温度にしか晒されないため、アルカリ水溶液可溶有機膜103上に形成されたレジスト膜104(レジストパターン105)による熱収縮ストレスの影響は殆ど受けない。このため、アルカリ水溶液可溶有機膜103と金属薄膜102との密着性は優れている。したがって、エッチング液がアルカリ水溶液可溶有機膜103と金属薄膜102との界面へ沁み込むことが抑制され、従来のようなアンダーカットの形成、金属膜の消失、レジスト膜の剥離が防止される。また、アルカリ水溶液可溶有機膜103と金属薄膜102との密着性に優れるため、金属薄膜102のウエットエッチングによる寸法シフト(金属薄膜102におけるレジストパターン105の開口部に面する側の側面から内部に向かって除去される量)を15nm程度(つまり、金属薄膜102の膜厚分程度)に抑えることがでる。その結果、寸法精度が向上する。
【0029】
次に、図1(d)に示すように、例えばシンナーを用いてレジストパターン105を除去した後、例えば現像液を用いてアルカリ水溶液可溶有機膜103を除去する。本工程では、シンナーと現像液が用いられるため、アッシング及びエッチング等を用いる場合によるような下地膜(ゲート絶縁膜101、金属薄膜102)へのダメージを防止できる。
【0030】
以上のように、本発明の一実施形態に係るパターン形成方法によると、金属薄膜102及びゲート絶縁膜101に対するダメージをほとんど与えることなく、金属薄膜102の加工を行うことができる。
【0031】
なお、以上において、金属薄膜102として、上記TiN(窒化チタン)の代わりに、TiO(酸化チタン)、LaO(酸化ランタン)、TaN(窒化タンタル)、TaN(窒化タンタル)、AlO(酸化アルミニウム)などの膜を用いることもできる。
【0032】
また、以上において、ウエットエッチング液として、上記SPM(硫酸/過酸化水素水)の代わりに、H(過酸化水素)、HCl(塩化水素)、HSO(硫酸)、又はHF(フッ化水素)などの酸性の薬液を用いることもできる。
【0033】
また、以上において、アルカリ水溶液可溶有機膜103として、反射防止機能は本発明において必須ではないため、上記現像液可溶型BARCの代わりに、ノボラック系、PHS、又はアクリル系などからなる現像液に溶解するポリマーからなる膜を用いることもできる。
【0034】
また、以上において、露光光として、上記KrFエキシマーレーザーを用いたが、g線、i線、ArFエキシマーレーザー、EUV(Extreme Ultra Violet)、又はX線を用いることもできる。
【0035】
また、以上において、アルカリ水溶液可溶有機膜103の膜厚として20nmである場合について説明したがこれに限定されるものではない。アルカリ現像液がレジストパターン105に影響を与えない処理時間で除去可能であって、膜厚が100nmを超える場合にはレジストパターン105による熱収縮による影響が無視できないため、その膜厚として、10nm以上であって且つ100nm以下であればよく、10nm以上であって且つ80nm以下であることが好ましく、特には、10nm以上であって且つ40nm以下であることがさらに好ましい。
【0036】
さらに、本発明は、上記一実施形態に示した半導体装置の製造プロセスに限定して適用されるものではなく、ウエットエッチングを用いて金属加工をする工程を含む種々の製造プロセスにも当然に適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明したように、本発明の半導体装置の製造方法は、ウエットエッチングを用いて金属加工をする工程を含む半導体製造プロセスにとって有用である。
【符号の説明】
【0038】
100 半導体基板
101 ゲート絶縁膜
102 金属薄膜
103 アルカリ水溶液可溶有機膜
104 レジスト膜
105 レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に金属膜を形成する工程(a)と、
前記金属膜の上に有機膜を形成する工程(b)と、
前記有機膜の上にフォトレジスト膜を形成する工程(c)と、
前記フォトレジスト膜に前記有機膜を露出する開口部を設けることにより、レジストパターンを形成する工程(d)と、
薬液を用いて、前記開口部に露出する前記有機膜を除去する工程(e)と、
前記工程(e)の後に、ウエットエッチングにより、前記開口部に露出する前記金属膜を除去する工程(f)とを備える、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記工程(d)と前記工程(e)とは、同一の前記薬液を用いて、単一の工程で行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記工程(d)は、前記フォトレジスト膜に対してパターン露光及び現像を行うことにより、前記レジストパターンを形成する工程であり、
前記工程(e)で用いる前記薬液は、前記工程(d)における前記現像に用いる現像液である、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記現像液はアルカリ性水溶液である、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記現像液は、2.38wt%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドである、請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記有機膜の膜厚は、10nm以上であって且つ80nm以下である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記有機膜は反射防止膜である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記工程(f)は、酸性の薬液を用いて、前記ウエットエッチングを行う工程である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記金属膜は、酸化チタン、酸化ランタン、窒化チタン、窒化タンタル、又は酸化アルミニウムである、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記工程(f)の後に、シンナーを用いて、前記レジストパターンを除去する工程(g)と、
前記工程(g)の後に、現像液を用いて、前記有機膜を除去する工程(h)とを備える、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記工程(a)の前に、
前記基板の上にゲート絶縁膜を形成する工程をさらに備える、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−245243(P2010−245243A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91768(P2009−91768)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】