半導体装置の製造方法
【課題】Cu配線中のMnの残留量を減らすことができる、半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第2バリア膜13の形成後に、SiH4を含むガスを用いたPECVD法により、Cu層20上にSiおよびOを含む絶縁材料からなる犠牲層21が積層される。犠牲層21にSiおよびOが含まれるので、犠牲層21の積層過程で、Cu層20と犠牲層21との界面にMnSiOからなる反応生成膜22が生じる。この反応生成膜22の生成にMnが使用されることにより、Cu層20に含まれるMnの量が減少する。よって、Cu層20からなる第2Cu配線中のMnの残留量を減らすことができる。
【解決手段】第2バリア膜13の形成後に、SiH4を含むガスを用いたPECVD法により、Cu層20上にSiおよびOを含む絶縁材料からなる犠牲層21が積層される。犠牲層21にSiおよびOが含まれるので、犠牲層21の積層過程で、Cu層20と犠牲層21との界面にMnSiOからなる反応生成膜22が生じる。この反応生成膜22の生成にMnが使用されることにより、Cu層20に含まれるMnの量が減少する。よって、Cu層20からなる第2Cu配線中のMnの残留量を減らすことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Cu(銅)を主成分とする金属材料からなるCu配線を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高集積化された半導体装置において、配線の材料として、Al(アルミニウム)よりも導電性の高いCuを採用したものがある。Cuがドライエッチングによる微細なパターニングが困難であることから、Cuを材料に採用した配線(Cu配線)は、ダマシン法により、半導体基板上の絶縁層に形成された微細な溝に埋設される。
絶縁層の材料としては、通常、SiO2(酸化シリコン)が採用される。ところが、Cuは、SiO2への拡散性が高い。そのため、SiO2からなる絶縁層に形成された溝の内面とCu配線とが直に接すると、Cuが絶縁層中に拡散し、これにより絶縁層の絶縁耐圧が低下する。したがって、絶縁層とCu配線との間には、Cuの絶縁層への拡散を防止するためのバリア膜が必要となる。
【0003】
バリア膜を形成する手法として、CuおよびMnを含む合金材料(以下、単に「CuMn合金」という。)を用いた自己形成プロセスが知られている。この自己形成プロセスでは、スパッタ法により、溝の内面を含む絶縁層の表面上に、CuMn合金からなる合金膜が形成される。次いで、めっき法により、合金膜上に、Cuを主成分とする金属材料からなるCu層が積層される。その後、熱処理が行われることにより、合金膜に含まれるMnが絶縁層に含まれるSi(シリコン)およびO(酸素)と結合し、溝の内面上に、MnxSiyOz(x,y,z:零よりも大きい数。以下、単に「MnSiO」という。)からなるバリア膜が形成される。
【0004】
そして、バリア膜の形成後、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法により、Cu層の表面が溝外の絶縁層の表面と面一になるまで研磨される。これにより、溝にバリア膜を介して埋設されたCu配線が得られる。
【特許文献1】特開2005−277390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CuMn合金は、SiO2に対する密着性が高くない。そこで、溝の内面に対する合金膜の密着性を確保し、溝の側面上での合金膜の膜剥がれを防止するため、合金膜は、バリア膜の形成に必要な最小限の厚さよりも大きい厚さに形成される。また、CuMn合金は、Mn濃度が低いほどSiO2に対する密着性が低下するので、合金膜の材料には、Mn濃度がある程度高いCuMn合金が用いられる。そのため、合金膜には、Mnが過剰に含まれる。
【0006】
バリア膜の形成(SiおよびOとの結合)に寄与しない余剰なMnは、Cu層中に拡散する。MnのCu層中への拡散量が多いと、Cu配線中にMnが残留し、Cu配線の抵抗が増大する。純Cuの比抵抗は、約1.9〜2.0μΩ・cmであるのに対し、たとえば、原子数で1%(at%)のMnを含むCuの比抵抗は、約5〜6μΩ・cmである。幅60〜70nmの微細なCu配線では、比抵抗の微少な増大であっても、配線抵抗の大幅な増大を招く。
【0007】
本発明の目的は、Cu配線中のMnの残留量を減らすことができる、半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、SiおよびOを含む絶縁材料からなる絶縁層に溝を形成する工程と、前記溝の内面にCuMn合金からなる合金膜を被着させる工程と、前記溝が埋め尽くされるように、前記合金膜上にCuを主成分とする金属材料からなるCu層を積層する工程と、熱処理により、前記Cu層と前記絶縁層との間にMnSiOからなるバリア膜を形成する工程と、前記バリア膜の形成後に、前記Cu層上にSiおよびOを含む絶縁材料からなる犠牲層を積層し、前記Cu層上にMnSiOからなる反応生成膜を生成させる工程と、前記Cu層上から前記犠牲層および前記反応生成膜を除去する工程とを含む、半導体装置の製造方法である。
【0009】
この方法によれば、まず、SiおよびOを含む絶縁材料からなる絶縁層に、溝が形成される。次に、溝の内面(側面および底面)に、CuMn合金からなる合金膜が被着される。その後、合金膜上に、Cuを主成分とする金属材料からなるCu層が溝を埋め尽くすように形成される。Cu層の形成後、熱処理により、Cu層と絶縁層との間に、MnSiOからなるバリア膜が形成される。そして、バリア膜の形成後に、Cu層上に、SiおよびOを含む絶縁材料からなる犠牲層が積層される。
【0010】
犠牲層にSiおよびOが含まれるので、Cu層および犠牲層に熱が加えられると、Cu層と犠牲層との界面で、犠牲層に含まれるSiおよびOとCu層に含まれるMnとが結合し、MnSiOからなる反応生成膜が生じる。この反応生成膜の生成後、犠牲層および反応生成膜は、Cu層上から除去される。そして、犠牲層および反応生成膜の除去後に、たとえば、Cu層の表面が溝外の絶縁層の表面と面一になるように、溝外からCu層が除去されることにより、溝にバリア膜を介して埋設されたCu配線が得られる。
【0011】
反応生成膜の生成にMnが使用されることにより、Cu層に含まれるMnの量が減少する。よって、Cu層からなるCu配線中のMnの残留量を減らすことができる。
犠牲層および反応生成膜の除去は、請求項3に記載のように、CMP法により達成されることが好ましい。犠牲層および反応生成膜の除去にCMP法を採用することにより、1工程で犠牲層および反応生成膜を除去することができる。また、犠牲層および反応生成膜のCMP法による除去に引き続いて、CMP法によりCu層がCu配線に加工される場合に、スラリーとしてTa(タンタル)膜除去用のスラリーを用いることにより、犠牲層および反応生成膜を良好に除去することができるうえに、Cu層および絶縁層をほぼ同じ研磨レートで除去することができる。その結果、平坦性に優れた表面を有するCu配線を得ることができる。
【0012】
請求項4に記載のように、前記犠牲層は、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition:プラズマ化学気相成長)法により形成されることが好ましい。この場合、犠牲層がCu層上に積層される過程で、Cu層および積層途中の犠牲層に高熱(約400℃)が加えられるので、Cu層と犠牲層との界面に反応生成膜を生成させるための熱処理(犠牲層の積層後の熱処理)を不要とすることができる。その結果、半導体装置の製造工程を簡素化することができる。
【0013】
さらに、請求項5に記載のように、前記犠牲層がSiH4(シラン)を含むガスを用いたPECVD法により形成されることがとくに好ましい。TEOS(Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン)を用いたPECVD法(TEOS−CVD法)により前記犠牲層を形成することも可能である。しかし、TEOSを用いたPECVD法では、O2ガスが用いられ、高温(約400℃)のO2ガス雰囲気下にCu層などが曝されるので、そのCu層に含まれるCuが酸化しやすい。これに対し、SiH4を含むガスを用いたPECVD法では、O2ガスではなくN2Oガスが用いられるので、TEOSを用いたPECVD法よりもCuの酸化が生じにくい。
【0014】
請求項6に記載のように、前記バリア膜の形成後に、前記反応生成膜を生成させる工程(前記犠牲層を積層する工程)と前記犠牲層および前記反応生成膜を除去する工程とがこの順に複数回繰り返されてもよい。これらの工程を複数回繰り返すことにより、回数を重ねるごとに、Cu層に含まれるMnの量が減少する。よって、Cu配線中のMnの残留量を確実に減らすことができる。
【0015】
請求項2に記載のように、前記バリア膜の形成後であって前記犠牲層の積層前に、前記Cu層の表面をCMP法により研磨する工程をさらに含むことが好ましい。バリア膜の形成時に、合金膜に含まれるMnの一部は、Cu層中を移動し、Cu層の表面に出現する。Cu層の表面をCMP法により研磨し、Cu層の表面に出現したMnを除去した後に、Cu層上に犠牲層を積層することにより、Cu層の内部に残留するMnがSiおよびOとの反応に積極的に使用される。その結果、Cu層に含まれるMnの量を効率的に減少させることができ、ひいてはCu配線中のMnの残留量をより一層減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法により製造される半導体装置の模式的な断面図である。
半導体装置1は、図示しない半導体基板を備えている。半導体基板には、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの素子が作り込まれている。半導体基板上には、SiO2からなる第1絶縁層2が積層されている。
【0017】
第1絶縁層2の表層部には、第1溝3が所定のパターンで形成されている。第1溝3は、第1絶縁層2の上面から掘り下がった凹状をなしている。第1溝3の内面(側面および底面)には、MnSiOからなる第1バリア膜4が形成されている。そして、第1溝3には、第1バリア膜4を介して、Cuを主成分とする金属材料からなる第1Cu配線5が埋設されている。
【0018】
第1絶縁層2上には、第2絶縁層6が積層されている。第2絶縁層6は、拡散防止膜7、層間絶縁膜8、エッチングストッパ膜9および絶縁膜10を、第1絶縁層2側からこの順に積層した構造を有している。
拡散防止膜7は、たとえば、SiC(炭化シリコン)および/またはSiCN(炭窒化シリコン)からなる。
【0019】
層間絶縁膜8および絶縁膜10は、たとえば、SiおよびOを含む絶縁材料であるSiO2からなる。
エッチングストッパ膜9は、たとえば、SiCからなる。
第2絶縁層6の表層部には、第2溝11が形成されている。第2溝11は、絶縁膜10の上面から層間絶縁膜8の上面まで掘り下がった凹状をなしている。第2溝11の側面は、絶縁膜10およびエッチングストッパ膜9により形成され、第2溝11の底面は、層間絶縁膜8の上面により形成されている。
【0020】
また、第2溝11は、平面視で第1Cu配線5(第1溝3)と交差する部分を有するパターンに形成されている。そして、その平面視で第1Cu配線5と第2溝11とが交差する部分において、第1Cu配線5と第2溝11との間には、拡散防止膜7および層間絶縁膜8を貫通するビアホール12が形成されている。
第2溝11およびビアホール12の内面(第2溝11の側面および底面ならびにビアホール12の側面)には、MnSiOからなる第2バリア膜13が形成されている。そして、第2溝11およびビアホール12には、第2バリア膜13を介して、それぞれCuを主成分とする金属材料からなる第2Cu配線14およびビア15が埋設されている。第2Cu配線14およびビア15は、一体をなしている。
【0021】
図2A〜2Gは、本発明の一実施形態に係る製造方法を工程順に示す模式的な断面図である。
図2Aに示すように、第1バリア膜4および第1Cu配線5が埋設された第1絶縁層2上に、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法により、拡散防止膜7、層間絶縁膜8、エッチングストッパ膜9および絶縁膜10がこの順に積層される。これにより、第1絶縁層2上に、第2絶縁層6が形成される。
【0022】
その後、図2Bに示すように、第2絶縁層6に、第2溝11およびビアホール12が形成される。具体的には、まず、第2絶縁層6上に、ビアホール12が形成されるべき部分を選択的に露出させる開口を有するマスク(図示せず)が形成される。そして、ドライエッチングにより、絶縁膜10、エッチングストッパ膜9および層間絶縁膜8におけるマスクから露出する部分(開口に臨む部分)が順に除去される。このとき、適当なタイミングで反応ガス(エッチャント)を切り換えることにより、絶縁膜10、エッチングストッパ膜9および層間絶縁膜8が連続的にエッチングされる。その後、第2絶縁層6上からマスクが除去される。次に、第2絶縁層6上に、第2溝11が形成されるべき部分を選択的に露出させる開口を有する新たなマスク(図示せず)が形成される。そして、ドライエッチングにより、絶縁膜10におけるマスクから露出する部分(開口に臨む部分)が除去される。その後、第2絶縁層6上からマスクが除去される。そして、拡散防止膜7およびエッチングストッパ膜9における露出している部分が除去される。これにより、第2溝11およびビアホール12が形成される。
【0023】
次いで、図2Cに示すように、スパッタ法により、第2溝11およびビアホール12の内面および第2絶縁層6(絶縁膜10)の上面全域に、CuMn合金からなる合金膜18が被着される。
その後、図2Dに示すように、スパッタ法により、合金膜18の表面全域を被覆するように、Cuを主成分とする金属材料からなるシード膜19が形成される。
【0024】
次いで、図2Eに示すように、めっき法により、シード膜19上に、Cuを主成分とする金属材料のCu層20が積層される。このCu層20は、第2溝11およびビアホール12を埋め尽くす厚さに形成される。
その後、熱処理が行われる。第2絶縁層6および合金膜18に高熱が加えられることににより、第2絶縁層6と合金膜18との界面において、第2絶縁層6に含まれるSiおよびOと合金膜18に含まれるMnとが反応(結合)する。その結果、図2Fに示すように、第2絶縁層6とCu層20との間に、MnSiOからなる第2バリア膜13が形成される。このとき、第2バリア膜13の形成に寄与しない余剰のMnは、Cu層20中に拡散し、その一部がCu層20の表面に出現する。また、熱処理が行われることにより、Cu層20の結晶構造が均一化され、Cu層20(第2Cu配線14)の比抵抗が低減する。合金膜18は、第2バリア膜13の形成に伴って消失する。
【0025】
第2バリア膜13の形成後、CMP法により、Cu層20の表面が研磨される。この研磨により、図2Gに示すように、Cu層20の表面上のMnがCu層20の表層部とともに除去される。
次いで、図2Hに示すように、SiH4を含むガスを用いたPECVD法により、Cu層20上に、SiおよびOを含む絶縁材料であるSiO2からなる犠牲層21が積層される。すなわち、Cu層20上に、シラン系シリコン酸化膜からなる犠牲層21が積層される。この犠牲層21が積層される過程で、Cu層20および積層途中の犠牲層21に高熱(約400℃)が加えられることにより、Cu層20と犠牲層21との界面で、犠牲層21に含まれるSiおよびOとCu層20に含まれるMnとが結合し、MnSiOからなる反応生成膜22が生じる。この反応生成膜22の生成にMnが使用されることにより、Cu層20に含まれるMnの量が減少する。犠牲層21の厚さは、反応生成膜22の生成に必要十分な厚さ(たとえば、100nm)でよい。
【0026】
その後、図2Iに示すように、CMP法により、犠牲層21および反応生成膜22が除去される。
図2Jに示すように、犠牲層21および反応生成膜22の除去により露出したCu層20上に、犠牲層21と同じ材料からなる犠牲層23が積層される。すなわち、SiH4を含むガスを用いたPECVD法により、SiO2からなる犠牲層23が積層される。犠牲層23が積層される過程で、Cu層20および積層途中の犠牲層23に高熱(約400℃)が加えられることにより、Cu層20と犠牲層23との界面で、犠牲層23に含まれるSiおよびOとCu層20に含まれるMnとが結合し、MnSiOからなる反応生成膜24が生じる。この反応生成膜24の生成にMnが使用されることにより、Cu層20に含まれるMnの量がさらに減少する。犠牲層23の厚さは、反応生成膜24の生成に必要十分な厚さ(たとえば、100nm)でよい。
【0027】
その後、CMP法により、犠牲層23および反応生成膜24が除去される。つづいて、CMP法により、Cu層20および第2バリア膜13が研磨される。この研磨は、Cu層20および第2バリア膜13における第2溝11外に形成されている不要部分がすべて除去されて、第2絶縁層6(絶縁膜10)の上面が露出し、その第2絶縁層6の上面とCu層20の上面とが面一になるまで続けられる。これにより、第2溝11に埋設された第2Cu配線14が形成され、図1に示す半導体装置1が得られる。
【0028】
以上のように、SiH4を含むガスを用いたPECVD法により、Cu層20上にSiおよびOを含む絶縁材料からなる犠牲層21が積層される。犠牲層21にSiおよびOが含まれるので、犠牲層21の積層過程で、Cu層20と犠牲層21との界面にMnSiOからなる反応生成膜22が生じる。この反応生成膜22の生成にMnが使用されることにより、Cu層20に含まれるMnの量が減少する。よって、Cu層20からなる第2Cu配線14中のMnの残留量を減らすことができる。
【0029】
また、犠牲層21および反応生成膜22の除去後に、SiH4を含むガスを用いたPECVD法により、Cu層20上に犠牲層23が積層され、Cu層20と犠牲層23との界面にMnSiOからなる反応生成膜24が生成される。これにより、Cu層20に含まれるMnの量がさらに減少する。よって、Cu層20からなる第2Cu配線14中のMnの残留量を一層減らすことができる。
【0030】
PECVD法では、Cu層20および積層途中の犠牲層21,23に高熱が加えられ、反応生成膜22,24が自然に生じる。したがって、反応生成膜22,24を生成させるための熱処理(犠牲層21,23の積層後の熱処理)が不要である。よって、PECVD法以外の方法により犠牲層21,23を形成する場合と比較して、半導体装置1の製造工程を簡素化することができる。
【0031】
また、TEOSを用いたPECVD法により犠牲層21,23を形成することも可能である。しかし、TEOSを用いたPECVD法では、O2ガスが用いられ、高温(約400℃)のO2ガス雰囲気下にCu層20などが曝されるので、そのCu層20に含まれるCuが酸化しやすい。これに対し、SiH4を含むガスを用いたPECVD法では、O2ガスではなくN2Oガスが用いられるので、TEOSを用いたPECVD法よりもCuの酸化が生じにくい。
【0032】
犠牲層21,23および反応生成膜22,24の除去は、CMP法により達成される。これにより、1工程で犠牲層21,23および反応生成膜22,24を除去することができる。また、Ta膜除去用のスラリーを用いたCMP法であれば、犠牲層21および反応生成膜22を良好に除去することができるうえに、その除去に引き続いて、Cu層20および第2絶縁層6をほぼ同じ研磨レートで除去することができる。その結果、平坦性に優れた表面を有する第2Cu配線14を得ることができる。
【0033】
さらに、第2バリア膜13の形成後、犠牲層21の積層前に、Cu層20の表面がCMP法により研磨される。第2バリア膜13の形成時に、合金膜18に含まれるMnの一部は、Cu層20中を移動し、Cu層20の表面に出現する。Cu層20の表面をCMP法により研磨し、Cu層20の表面に出現したMnを除去した後に、Cu層20上に犠牲層21を積層することにより、Cu層20の内部に残留するMnがSiおよびOとの反応に積極的に使用される。その結果、Cu層20に含まれるMnの量を効率的に減少させることができ、ひいては第2Cu配線14中のMnの残留量をより一層減らすことができる。
【0034】
なお、犠牲層21の積層および反応生成膜22の生成により、Cu層20に残留するMnの量を十分に減少させることができる場合、犠牲層23の積層および反応生成膜24の生成が省略されてもよい。
また、反応生成膜24の生成後に、犠牲層23および反応生成膜24が除去されて、Cu層20上にSiおよびOを含む絶縁材料からなる犠牲層が形成されることにより、その犠牲層とCu層20との界面にMnSiOからなる反応生成膜が形成されてもよい。すなわち、第2バリア膜13の形成後に、反応生成膜を生成させる工程(犠牲層を積層する工程)と犠牲層および反応生成膜を除去する工程とがこの順に3回以上繰り返されてもよい。これらの工程を複数回繰り返すことにより、回数を重ねるごとに、Cu層20に含まれるMnの量が減少する。よって、第2Cu配線14中のMnの残留量を確実に減らすことができる。
【0035】
第1バリア膜4および第1Cu配線5の形成手法については、その説明を省略したが、第1バリア膜4および第1Cu配線5は、第2バリア膜13および第2Cu配線14の形成方法と同様な方法で形成することができる。すなわち、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、第1絶縁層2にその表面から掘り下がった形状の第1溝3が形成された後、スパッタ法により、CuMn合金からなる合金膜が第1溝3の側面および底面に被着される。次いで、めっき法により、Cuを主成分とする金属材料からなるシード膜およびCu層が順に形成される。そして、Cu層上にSiおよびOを含む絶縁材料からなる犠牲層が積層され、その犠牲層とCu層との界面にMnSiOからなる反応生成膜が形成された後、犠牲層および反応生成膜が除去される。その後、Cu層の表面が第1溝3外の第1絶縁層2の表面と面一になるように、第1溝3外からCu層および第1バリア膜4が除去されることにより、第1溝3に第1バリア膜4を介して埋設された第1Cu配線5が得られる。
【0036】
層間絶縁膜8および絶縁膜10の材料は、SiおよびOを含む絶縁材料であればよく、SiO2以外に、たとえば、SiOC(炭素が添加された酸化シリコン)、SiOF(フッ素が添加された酸化シリコン)、SiON(窒素が添加された酸化シリコン)などを例示することができる。
また、本発明がCuを主成分とする金属材料からなる第1Cu配線5および第2Cu配線14を有する半導体装置の製造方法に適用された場合を例にとったが、本発明は、SiおよびOを含む絶縁層にCuを主成分とする金属材料からなる電極を有するキャパシタの製造方法に適用することもできる。
【0037】
本発明は、他の形態で実施することもでき、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法により製造される半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の一実施形態に係る製造方法を説明するための模式的な断面図である。
【図2B】図2Bは、図2Aの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図2C】図2Cは、図2Bの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図2D】図2Dは、図2Cの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図2E】図2Eは、図2Dの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図2F】図2Fは、図2Eの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図2G】図2Gは、図2Fの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図2H】図2Hは、図2Gの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図2I】図2Iは、図2Hの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図2J】図2Jは、図2Iの次の工程を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 半導体装置
6 第2絶縁層(絶縁層)
11 第2溝(溝)
13 第2バリア膜(バリア膜)
14 第2Cu配線(Cu配線)
18 合金膜
20 Cu層
21 犠牲層
22 反応生成膜
23 犠牲層
24 反応生成膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、Cu(銅)を主成分とする金属材料からなるCu配線を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高集積化された半導体装置において、配線の材料として、Al(アルミニウム)よりも導電性の高いCuを採用したものがある。Cuがドライエッチングによる微細なパターニングが困難であることから、Cuを材料に採用した配線(Cu配線)は、ダマシン法により、半導体基板上の絶縁層に形成された微細な溝に埋設される。
絶縁層の材料としては、通常、SiO2(酸化シリコン)が採用される。ところが、Cuは、SiO2への拡散性が高い。そのため、SiO2からなる絶縁層に形成された溝の内面とCu配線とが直に接すると、Cuが絶縁層中に拡散し、これにより絶縁層の絶縁耐圧が低下する。したがって、絶縁層とCu配線との間には、Cuの絶縁層への拡散を防止するためのバリア膜が必要となる。
【0003】
バリア膜を形成する手法として、CuおよびMnを含む合金材料(以下、単に「CuMn合金」という。)を用いた自己形成プロセスが知られている。この自己形成プロセスでは、スパッタ法により、溝の内面を含む絶縁層の表面上に、CuMn合金からなる合金膜が形成される。次いで、めっき法により、合金膜上に、Cuを主成分とする金属材料からなるCu層が積層される。その後、熱処理が行われることにより、合金膜に含まれるMnが絶縁層に含まれるSi(シリコン)およびO(酸素)と結合し、溝の内面上に、MnxSiyOz(x,y,z:零よりも大きい数。以下、単に「MnSiO」という。)からなるバリア膜が形成される。
【0004】
そして、バリア膜の形成後、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法により、Cu層の表面が溝外の絶縁層の表面と面一になるまで研磨される。これにより、溝にバリア膜を介して埋設されたCu配線が得られる。
【特許文献1】特開2005−277390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CuMn合金は、SiO2に対する密着性が高くない。そこで、溝の内面に対する合金膜の密着性を確保し、溝の側面上での合金膜の膜剥がれを防止するため、合金膜は、バリア膜の形成に必要な最小限の厚さよりも大きい厚さに形成される。また、CuMn合金は、Mn濃度が低いほどSiO2に対する密着性が低下するので、合金膜の材料には、Mn濃度がある程度高いCuMn合金が用いられる。そのため、合金膜には、Mnが過剰に含まれる。
【0006】
バリア膜の形成(SiおよびOとの結合)に寄与しない余剰なMnは、Cu層中に拡散する。MnのCu層中への拡散量が多いと、Cu配線中にMnが残留し、Cu配線の抵抗が増大する。純Cuの比抵抗は、約1.9〜2.0μΩ・cmであるのに対し、たとえば、原子数で1%(at%)のMnを含むCuの比抵抗は、約5〜6μΩ・cmである。幅60〜70nmの微細なCu配線では、比抵抗の微少な増大であっても、配線抵抗の大幅な増大を招く。
【0007】
本発明の目的は、Cu配線中のMnの残留量を減らすことができる、半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、SiおよびOを含む絶縁材料からなる絶縁層に溝を形成する工程と、前記溝の内面にCuMn合金からなる合金膜を被着させる工程と、前記溝が埋め尽くされるように、前記合金膜上にCuを主成分とする金属材料からなるCu層を積層する工程と、熱処理により、前記Cu層と前記絶縁層との間にMnSiOからなるバリア膜を形成する工程と、前記バリア膜の形成後に、前記Cu層上にSiおよびOを含む絶縁材料からなる犠牲層を積層し、前記Cu層上にMnSiOからなる反応生成膜を生成させる工程と、前記Cu層上から前記犠牲層および前記反応生成膜を除去する工程とを含む、半導体装置の製造方法である。
【0009】
この方法によれば、まず、SiおよびOを含む絶縁材料からなる絶縁層に、溝が形成される。次に、溝の内面(側面および底面)に、CuMn合金からなる合金膜が被着される。その後、合金膜上に、Cuを主成分とする金属材料からなるCu層が溝を埋め尽くすように形成される。Cu層の形成後、熱処理により、Cu層と絶縁層との間に、MnSiOからなるバリア膜が形成される。そして、バリア膜の形成後に、Cu層上に、SiおよびOを含む絶縁材料からなる犠牲層が積層される。
【0010】
犠牲層にSiおよびOが含まれるので、Cu層および犠牲層に熱が加えられると、Cu層と犠牲層との界面で、犠牲層に含まれるSiおよびOとCu層に含まれるMnとが結合し、MnSiOからなる反応生成膜が生じる。この反応生成膜の生成後、犠牲層および反応生成膜は、Cu層上から除去される。そして、犠牲層および反応生成膜の除去後に、たとえば、Cu層の表面が溝外の絶縁層の表面と面一になるように、溝外からCu層が除去されることにより、溝にバリア膜を介して埋設されたCu配線が得られる。
【0011】
反応生成膜の生成にMnが使用されることにより、Cu層に含まれるMnの量が減少する。よって、Cu層からなるCu配線中のMnの残留量を減らすことができる。
犠牲層および反応生成膜の除去は、請求項3に記載のように、CMP法により達成されることが好ましい。犠牲層および反応生成膜の除去にCMP法を採用することにより、1工程で犠牲層および反応生成膜を除去することができる。また、犠牲層および反応生成膜のCMP法による除去に引き続いて、CMP法によりCu層がCu配線に加工される場合に、スラリーとしてTa(タンタル)膜除去用のスラリーを用いることにより、犠牲層および反応生成膜を良好に除去することができるうえに、Cu層および絶縁層をほぼ同じ研磨レートで除去することができる。その結果、平坦性に優れた表面を有するCu配線を得ることができる。
【0012】
請求項4に記載のように、前記犠牲層は、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition:プラズマ化学気相成長)法により形成されることが好ましい。この場合、犠牲層がCu層上に積層される過程で、Cu層および積層途中の犠牲層に高熱(約400℃)が加えられるので、Cu層と犠牲層との界面に反応生成膜を生成させるための熱処理(犠牲層の積層後の熱処理)を不要とすることができる。その結果、半導体装置の製造工程を簡素化することができる。
【0013】
さらに、請求項5に記載のように、前記犠牲層がSiH4(シラン)を含むガスを用いたPECVD法により形成されることがとくに好ましい。TEOS(Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン)を用いたPECVD法(TEOS−CVD法)により前記犠牲層を形成することも可能である。しかし、TEOSを用いたPECVD法では、O2ガスが用いられ、高温(約400℃)のO2ガス雰囲気下にCu層などが曝されるので、そのCu層に含まれるCuが酸化しやすい。これに対し、SiH4を含むガスを用いたPECVD法では、O2ガスではなくN2Oガスが用いられるので、TEOSを用いたPECVD法よりもCuの酸化が生じにくい。
【0014】
請求項6に記載のように、前記バリア膜の形成後に、前記反応生成膜を生成させる工程(前記犠牲層を積層する工程)と前記犠牲層および前記反応生成膜を除去する工程とがこの順に複数回繰り返されてもよい。これらの工程を複数回繰り返すことにより、回数を重ねるごとに、Cu層に含まれるMnの量が減少する。よって、Cu配線中のMnの残留量を確実に減らすことができる。
【0015】
請求項2に記載のように、前記バリア膜の形成後であって前記犠牲層の積層前に、前記Cu層の表面をCMP法により研磨する工程をさらに含むことが好ましい。バリア膜の形成時に、合金膜に含まれるMnの一部は、Cu層中を移動し、Cu層の表面に出現する。Cu層の表面をCMP法により研磨し、Cu層の表面に出現したMnを除去した後に、Cu層上に犠牲層を積層することにより、Cu層の内部に残留するMnがSiおよびOとの反応に積極的に使用される。その結果、Cu層に含まれるMnの量を効率的に減少させることができ、ひいてはCu配線中のMnの残留量をより一層減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法により製造される半導体装置の模式的な断面図である。
半導体装置1は、図示しない半導体基板を備えている。半導体基板には、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの素子が作り込まれている。半導体基板上には、SiO2からなる第1絶縁層2が積層されている。
【0017】
第1絶縁層2の表層部には、第1溝3が所定のパターンで形成されている。第1溝3は、第1絶縁層2の上面から掘り下がった凹状をなしている。第1溝3の内面(側面および底面)には、MnSiOからなる第1バリア膜4が形成されている。そして、第1溝3には、第1バリア膜4を介して、Cuを主成分とする金属材料からなる第1Cu配線5が埋設されている。
【0018】
第1絶縁層2上には、第2絶縁層6が積層されている。第2絶縁層6は、拡散防止膜7、層間絶縁膜8、エッチングストッパ膜9および絶縁膜10を、第1絶縁層2側からこの順に積層した構造を有している。
拡散防止膜7は、たとえば、SiC(炭化シリコン)および/またはSiCN(炭窒化シリコン)からなる。
【0019】
層間絶縁膜8および絶縁膜10は、たとえば、SiおよびOを含む絶縁材料であるSiO2からなる。
エッチングストッパ膜9は、たとえば、SiCからなる。
第2絶縁層6の表層部には、第2溝11が形成されている。第2溝11は、絶縁膜10の上面から層間絶縁膜8の上面まで掘り下がった凹状をなしている。第2溝11の側面は、絶縁膜10およびエッチングストッパ膜9により形成され、第2溝11の底面は、層間絶縁膜8の上面により形成されている。
【0020】
また、第2溝11は、平面視で第1Cu配線5(第1溝3)と交差する部分を有するパターンに形成されている。そして、その平面視で第1Cu配線5と第2溝11とが交差する部分において、第1Cu配線5と第2溝11との間には、拡散防止膜7および層間絶縁膜8を貫通するビアホール12が形成されている。
第2溝11およびビアホール12の内面(第2溝11の側面および底面ならびにビアホール12の側面)には、MnSiOからなる第2バリア膜13が形成されている。そして、第2溝11およびビアホール12には、第2バリア膜13を介して、それぞれCuを主成分とする金属材料からなる第2Cu配線14およびビア15が埋設されている。第2Cu配線14およびビア15は、一体をなしている。
【0021】
図2A〜2Gは、本発明の一実施形態に係る製造方法を工程順に示す模式的な断面図である。
図2Aに示すように、第1バリア膜4および第1Cu配線5が埋設された第1絶縁層2上に、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法により、拡散防止膜7、層間絶縁膜8、エッチングストッパ膜9および絶縁膜10がこの順に積層される。これにより、第1絶縁層2上に、第2絶縁層6が形成される。
【0022】
その後、図2Bに示すように、第2絶縁層6に、第2溝11およびビアホール12が形成される。具体的には、まず、第2絶縁層6上に、ビアホール12が形成されるべき部分を選択的に露出させる開口を有するマスク(図示せず)が形成される。そして、ドライエッチングにより、絶縁膜10、エッチングストッパ膜9および層間絶縁膜8におけるマスクから露出する部分(開口に臨む部分)が順に除去される。このとき、適当なタイミングで反応ガス(エッチャント)を切り換えることにより、絶縁膜10、エッチングストッパ膜9および層間絶縁膜8が連続的にエッチングされる。その後、第2絶縁層6上からマスクが除去される。次に、第2絶縁層6上に、第2溝11が形成されるべき部分を選択的に露出させる開口を有する新たなマスク(図示せず)が形成される。そして、ドライエッチングにより、絶縁膜10におけるマスクから露出する部分(開口に臨む部分)が除去される。その後、第2絶縁層6上からマスクが除去される。そして、拡散防止膜7およびエッチングストッパ膜9における露出している部分が除去される。これにより、第2溝11およびビアホール12が形成される。
【0023】
次いで、図2Cに示すように、スパッタ法により、第2溝11およびビアホール12の内面および第2絶縁層6(絶縁膜10)の上面全域に、CuMn合金からなる合金膜18が被着される。
その後、図2Dに示すように、スパッタ法により、合金膜18の表面全域を被覆するように、Cuを主成分とする金属材料からなるシード膜19が形成される。
【0024】
次いで、図2Eに示すように、めっき法により、シード膜19上に、Cuを主成分とする金属材料のCu層20が積層される。このCu層20は、第2溝11およびビアホール12を埋め尽くす厚さに形成される。
その後、熱処理が行われる。第2絶縁層6および合金膜18に高熱が加えられることににより、第2絶縁層6と合金膜18との界面において、第2絶縁層6に含まれるSiおよびOと合金膜18に含まれるMnとが反応(結合)する。その結果、図2Fに示すように、第2絶縁層6とCu層20との間に、MnSiOからなる第2バリア膜13が形成される。このとき、第2バリア膜13の形成に寄与しない余剰のMnは、Cu層20中に拡散し、その一部がCu層20の表面に出現する。また、熱処理が行われることにより、Cu層20の結晶構造が均一化され、Cu層20(第2Cu配線14)の比抵抗が低減する。合金膜18は、第2バリア膜13の形成に伴って消失する。
【0025】
第2バリア膜13の形成後、CMP法により、Cu層20の表面が研磨される。この研磨により、図2Gに示すように、Cu層20の表面上のMnがCu層20の表層部とともに除去される。
次いで、図2Hに示すように、SiH4を含むガスを用いたPECVD法により、Cu層20上に、SiおよびOを含む絶縁材料であるSiO2からなる犠牲層21が積層される。すなわち、Cu層20上に、シラン系シリコン酸化膜からなる犠牲層21が積層される。この犠牲層21が積層される過程で、Cu層20および積層途中の犠牲層21に高熱(約400℃)が加えられることにより、Cu層20と犠牲層21との界面で、犠牲層21に含まれるSiおよびOとCu層20に含まれるMnとが結合し、MnSiOからなる反応生成膜22が生じる。この反応生成膜22の生成にMnが使用されることにより、Cu層20に含まれるMnの量が減少する。犠牲層21の厚さは、反応生成膜22の生成に必要十分な厚さ(たとえば、100nm)でよい。
【0026】
その後、図2Iに示すように、CMP法により、犠牲層21および反応生成膜22が除去される。
図2Jに示すように、犠牲層21および反応生成膜22の除去により露出したCu層20上に、犠牲層21と同じ材料からなる犠牲層23が積層される。すなわち、SiH4を含むガスを用いたPECVD法により、SiO2からなる犠牲層23が積層される。犠牲層23が積層される過程で、Cu層20および積層途中の犠牲層23に高熱(約400℃)が加えられることにより、Cu層20と犠牲層23との界面で、犠牲層23に含まれるSiおよびOとCu層20に含まれるMnとが結合し、MnSiOからなる反応生成膜24が生じる。この反応生成膜24の生成にMnが使用されることにより、Cu層20に含まれるMnの量がさらに減少する。犠牲層23の厚さは、反応生成膜24の生成に必要十分な厚さ(たとえば、100nm)でよい。
【0027】
その後、CMP法により、犠牲層23および反応生成膜24が除去される。つづいて、CMP法により、Cu層20および第2バリア膜13が研磨される。この研磨は、Cu層20および第2バリア膜13における第2溝11外に形成されている不要部分がすべて除去されて、第2絶縁層6(絶縁膜10)の上面が露出し、その第2絶縁層6の上面とCu層20の上面とが面一になるまで続けられる。これにより、第2溝11に埋設された第2Cu配線14が形成され、図1に示す半導体装置1が得られる。
【0028】
以上のように、SiH4を含むガスを用いたPECVD法により、Cu層20上にSiおよびOを含む絶縁材料からなる犠牲層21が積層される。犠牲層21にSiおよびOが含まれるので、犠牲層21の積層過程で、Cu層20と犠牲層21との界面にMnSiOからなる反応生成膜22が生じる。この反応生成膜22の生成にMnが使用されることにより、Cu層20に含まれるMnの量が減少する。よって、Cu層20からなる第2Cu配線14中のMnの残留量を減らすことができる。
【0029】
また、犠牲層21および反応生成膜22の除去後に、SiH4を含むガスを用いたPECVD法により、Cu層20上に犠牲層23が積層され、Cu層20と犠牲層23との界面にMnSiOからなる反応生成膜24が生成される。これにより、Cu層20に含まれるMnの量がさらに減少する。よって、Cu層20からなる第2Cu配線14中のMnの残留量を一層減らすことができる。
【0030】
PECVD法では、Cu層20および積層途中の犠牲層21,23に高熱が加えられ、反応生成膜22,24が自然に生じる。したがって、反応生成膜22,24を生成させるための熱処理(犠牲層21,23の積層後の熱処理)が不要である。よって、PECVD法以外の方法により犠牲層21,23を形成する場合と比較して、半導体装置1の製造工程を簡素化することができる。
【0031】
また、TEOSを用いたPECVD法により犠牲層21,23を形成することも可能である。しかし、TEOSを用いたPECVD法では、O2ガスが用いられ、高温(約400℃)のO2ガス雰囲気下にCu層20などが曝されるので、そのCu層20に含まれるCuが酸化しやすい。これに対し、SiH4を含むガスを用いたPECVD法では、O2ガスではなくN2Oガスが用いられるので、TEOSを用いたPECVD法よりもCuの酸化が生じにくい。
【0032】
犠牲層21,23および反応生成膜22,24の除去は、CMP法により達成される。これにより、1工程で犠牲層21,23および反応生成膜22,24を除去することができる。また、Ta膜除去用のスラリーを用いたCMP法であれば、犠牲層21および反応生成膜22を良好に除去することができるうえに、その除去に引き続いて、Cu層20および第2絶縁層6をほぼ同じ研磨レートで除去することができる。その結果、平坦性に優れた表面を有する第2Cu配線14を得ることができる。
【0033】
さらに、第2バリア膜13の形成後、犠牲層21の積層前に、Cu層20の表面がCMP法により研磨される。第2バリア膜13の形成時に、合金膜18に含まれるMnの一部は、Cu層20中を移動し、Cu層20の表面に出現する。Cu層20の表面をCMP法により研磨し、Cu層20の表面に出現したMnを除去した後に、Cu層20上に犠牲層21を積層することにより、Cu層20の内部に残留するMnがSiおよびOとの反応に積極的に使用される。その結果、Cu層20に含まれるMnの量を効率的に減少させることができ、ひいては第2Cu配線14中のMnの残留量をより一層減らすことができる。
【0034】
なお、犠牲層21の積層および反応生成膜22の生成により、Cu層20に残留するMnの量を十分に減少させることができる場合、犠牲層23の積層および反応生成膜24の生成が省略されてもよい。
また、反応生成膜24の生成後に、犠牲層23および反応生成膜24が除去されて、Cu層20上にSiおよびOを含む絶縁材料からなる犠牲層が形成されることにより、その犠牲層とCu層20との界面にMnSiOからなる反応生成膜が形成されてもよい。すなわち、第2バリア膜13の形成後に、反応生成膜を生成させる工程(犠牲層を積層する工程)と犠牲層および反応生成膜を除去する工程とがこの順に3回以上繰り返されてもよい。これらの工程を複数回繰り返すことにより、回数を重ねるごとに、Cu層20に含まれるMnの量が減少する。よって、第2Cu配線14中のMnの残留量を確実に減らすことができる。
【0035】
第1バリア膜4および第1Cu配線5の形成手法については、その説明を省略したが、第1バリア膜4および第1Cu配線5は、第2バリア膜13および第2Cu配線14の形成方法と同様な方法で形成することができる。すなわち、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、第1絶縁層2にその表面から掘り下がった形状の第1溝3が形成された後、スパッタ法により、CuMn合金からなる合金膜が第1溝3の側面および底面に被着される。次いで、めっき法により、Cuを主成分とする金属材料からなるシード膜およびCu層が順に形成される。そして、Cu層上にSiおよびOを含む絶縁材料からなる犠牲層が積層され、その犠牲層とCu層との界面にMnSiOからなる反応生成膜が形成された後、犠牲層および反応生成膜が除去される。その後、Cu層の表面が第1溝3外の第1絶縁層2の表面と面一になるように、第1溝3外からCu層および第1バリア膜4が除去されることにより、第1溝3に第1バリア膜4を介して埋設された第1Cu配線5が得られる。
【0036】
層間絶縁膜8および絶縁膜10の材料は、SiおよびOを含む絶縁材料であればよく、SiO2以外に、たとえば、SiOC(炭素が添加された酸化シリコン)、SiOF(フッ素が添加された酸化シリコン)、SiON(窒素が添加された酸化シリコン)などを例示することができる。
また、本発明がCuを主成分とする金属材料からなる第1Cu配線5および第2Cu配線14を有する半導体装置の製造方法に適用された場合を例にとったが、本発明は、SiおよびOを含む絶縁層にCuを主成分とする金属材料からなる電極を有するキャパシタの製造方法に適用することもできる。
【0037】
本発明は、他の形態で実施することもでき、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法により製造される半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の一実施形態に係る製造方法を説明するための模式的な断面図である。
【図2B】図2Bは、図2Aの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図2C】図2Cは、図2Bの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図2D】図2Dは、図2Cの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図2E】図2Eは、図2Dの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図2F】図2Fは、図2Eの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図2G】図2Gは、図2Fの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図2H】図2Hは、図2Gの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図2I】図2Iは、図2Hの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図2J】図2Jは、図2Iの次の工程を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 半導体装置
6 第2絶縁層(絶縁層)
11 第2溝(溝)
13 第2バリア膜(バリア膜)
14 第2Cu配線(Cu配線)
18 合金膜
20 Cu層
21 犠牲層
22 反応生成膜
23 犠牲層
24 反応生成膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiおよびOを含む絶縁材料からなる絶縁層に溝を形成する工程と、
前記溝の内面にCuおよびMnを含む合金材料からなる合金膜を被着させる工程と、
前記溝が埋め尽くされるように、前記合金膜上にCuを主成分とする金属材料からなるCu層を積層する工程と、
熱処理により、前記Cu層と前記絶縁層との間にMnxSiyOz(x,y,z:零よりも大きい数)からなるバリア膜を形成する工程と、
前記バリア膜の形成後に、前記Cu層上にSiおよびOを含む絶縁材料からなる犠牲層を積層し、前記Cu層上にMnxSiyOzからなる反応生成膜を生成させる工程と、
前記Cu層上から前記犠牲層および前記反応生成膜を除去する工程とを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記バリア膜の形成後であって前記犠牲層の積層前に、前記Cu層の表面を化学的機械的研磨法により研磨する工程をさらに含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記犠牲層および前記反応生成膜は、化学的機械的研磨法により除去される、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記犠牲層は、プラズマ化学気相成長法により積層される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記犠牲層は、SiH4を含むガスを用いたプラズマ化学気相成長法により積層される請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記バリア膜の形成後に、前記反応生成膜を生成させる工程と前記犠牲層および前記反応生成膜を除去する工程とがこの順に複数回繰り返される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
SiおよびOを含む絶縁材料からなる絶縁層に溝を形成する工程と、
前記溝の内面にCuおよびMnを含む合金材料からなる合金膜を被着させる工程と、
前記溝が埋め尽くされるように、前記合金膜上にCuを主成分とする金属材料からなるCu層を積層する工程と、
熱処理により、前記Cu層と前記絶縁層との間にMnxSiyOz(x,y,z:零よりも大きい数)からなるバリア膜を形成する工程と、
前記バリア膜の形成後に、前記Cu層上にSiおよびOを含む絶縁材料からなる犠牲層を積層し、前記Cu層上にMnxSiyOzからなる反応生成膜を生成させる工程と、
前記Cu層上から前記犠牲層および前記反応生成膜を除去する工程とを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記バリア膜の形成後であって前記犠牲層の積層前に、前記Cu層の表面を化学的機械的研磨法により研磨する工程をさらに含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記犠牲層および前記反応生成膜は、化学的機械的研磨法により除去される、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記犠牲層は、プラズマ化学気相成長法により積層される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記犠牲層は、SiH4を含むガスを用いたプラズマ化学気相成長法により積層される請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記バリア膜の形成後に、前記反応生成膜を生成させる工程と前記犠牲層および前記反応生成膜を除去する工程とがこの順に複数回繰り返される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【公開番号】特開2010−73736(P2010−73736A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236649(P2008−236649)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
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