説明

半導体装置の製造方法

【課題】有機シロキサン系絶縁膜を用いて電気的特性に優れた半導体装置を製造する方法を提供する。
【解決手段】下層配線の上にこの順で形成された第1〜第3の絶縁膜をドライエッチングして該下層配線に至る開口部を形成し、該開口部の内面と該第3の絶縁膜の上にバリアメタル膜を形成し、該バリアメタル膜の上に該開口部を埋める導電層を形成し、該第3の絶縁膜上の該導電層と該バリアメタル膜、及び該第2、第3の絶縁膜の一部を除去し該下層配線に電気的に接続する上層配線を形成し、露出した該第2の絶縁膜と該導電層の表面を還元性プラズマ処理し、
該第2の絶縁膜は下記式で表されるアルキルアルコキシシランと非酸化性ガスとを用い、500Pa以下でプラズマCVD法により形成する
RwSixOy(OR´)z
R及びR´はCH、wxzは正の整数、yは0または正の整数、(w/x)=2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、より詳しくは、低誘電率絶縁膜を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置の微細化・高速化に伴い、配線構造の多層化が進んでいる。しかし、このような微細化、高速化および多層化が進むにつれて、配線抵抗並びに配線間および配線層間の寄生容量の増大による信号遅延が問題となる。信号遅延Tは配線抵抗Rと寄生容量Cの積に比例することから、信号遅延Tを小さくするためには、配線層の低抵抗化とともに寄生容量を小さくすることが必要となる。
【0003】
配線抵抗Rを低減するには、配線材料としてより低抵抗のものを用いればよい。具体的には、従来のアルミニウム(Al)配線から銅(Cu)配線へ移行することなどが挙げられる。
【0004】
一方、配線層間の寄生容量Cは、配線層の間に設けられる層間絶縁膜の比誘電率ε、配線層の間隔dおよび配線層の側面積Sとの間にC=(ε・S)/dの関係がある。したがって、寄生容量Cを低減するには、層間絶縁膜の低誘電率化を図ることが必要となる。このため、従来用いられていたSiO膜(比誘電率3.9)より比誘電率の低い絶縁膜(以下、Low−k膜という。)の検討が行われている。特に、比誘電率3.1以下を実現する材料として有機シロキサン系絶縁膜が注目されている。
【0005】
有機シロキサン系絶縁膜には、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition Method,以下、CVD法という。)により成膜されたものの他、回転塗布法により成膜されたものがある。いずれの方法による絶縁膜であっても、その構造は、Si−O−Si結合からなる主骨格にSi−R(R:有機基)結合を側鎖に有するものである。ここで、Rとしては、耐熱性に優れるCHを用いるのが一般的である。また、他の成分としてSi−H結合やSi−C−Si結合などを含む場合もある。さらに、Cを含む未反応物や反応副生成物が、不純物の形で絶縁膜中に残存する場合もある。
【0006】
CVD法によるものとしては、有機シランと酸化性ガスを用いるものが代表的である。また、RSi(OR´)またはRSiO(OR´)(但し、R,R´はCHなど。)などのアルコキシシランと不活性ガスを用い、原料ガスが反応室内に長時間滞留する条件で成膜する方法も知られている(例えば、特許文献1参照。)。これらの方法で形成された有機シロキサン系絶縁膜の硬度は、通常2GPa以下である。
【0007】
また、アルコキシシランとしてRnSi(OR´)3−n(但し、RはCH、R´はCHまたはCであり、0.75≦n≦1.5である。)を用い、不活性ガスと混合し、反応室内での滞留時間が短い条件で成膜する方法も知られている(例えば、特許文献2参照。)。この方法によれば、1≦(C/Si)≦2で、硬度4.4GPaの有機シロキサン系絶縁膜が得られる。
【0008】
一方、塗布型の有機シロキサン系絶縁膜としては、比誘電率が3以下で、ヤング率が50GPa未満であるものが知られている(例えば、特許文献3参照。)。この場合、ワイヤボンディングの際の機械的ダメージから絶縁膜を保護するために、上層にヤング率50GPa以上の保護膜を積層することが必要になる。
【0009】
ところで、Low−k膜を用いた銅配線の形成方法としては、ダマシン法によるものがある。これは、銅がアルミニウムに比較してエッチングレートの制御が困難であることに鑑み、銅をエッチングせずに配線を形成する技術として知られている。
【0010】
ダマシン法は、具体的には、Low−k膜の上にSiO膜を形成した後、レジストパターンをマスクとしたこれらの膜のドライエッチングによって開口部を形成し、この開口部にバリアメタル膜を介して銅層を埋込んで銅配線層を形成する技術である。銅層の埋込みは、メッキ法により開口部を埋設するように銅層を形成した後、化学的機械研磨法(Chemical Mechanical Polishing Method,以下、CMP法という。)により開口部内にのみ銅層を残すように表面を研磨することによって実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−349083号公報
【特許文献2】特開2001−203200号公報
【特許文献3】特開2000−340569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
Low−k膜として有機シロキサン系絶縁膜を用いた場合、表面の平坦性を保つために、上記のCMP工程において、SiO膜の全てと有機シロキサン系絶縁膜の一部を研磨する。その後、アンモニアなどの還元性ガスを用いたプラズマ処理によって、銅層の表面を還元すると同時に、有機シロキサン系絶縁膜の表面を清浄化する。次いで、この上に、銅の拡散を防止するためのバリア絶縁膜を形成する。しかしながら、上記の還元性プラズマ処理工程において、有機シロキサン系絶縁膜中の炭素が還元されることによって、有機シロキサン系絶縁膜の表面に変質層が形成されるという問題があった。
【0013】
変質層は元の絶縁膜に比べて電気的特性に劣るので、変質層が形成されると隣接する配線間の絶縁特性が低下する。この問題は、配線間の間隔が狭いほど深刻なものとなる。
【0014】
これに対しては、有機シロキサン系絶縁膜の上にSiO膜を厚く(100nm程度)堆積しておくことによって、CMP法による研磨終了後に露出する面が、有機シロキサン系絶縁膜ではなくSiO膜となるようにする方法がある。SiO膜は炭素を殆ど含まないので、この方法によれば、還元性プラズマ処理を行っても変質層が形成されることはない。しかしながら、SiO膜は比誘電率が高いので、実効的な配線間の寄生容量Cが低減しない。
【0015】
また、電気的特性の低下は変質層の膜厚に依存するので、変質層の膜厚は薄いほうがよい。還元性プラズマ処理の時間を短くすれば、変質層の膜厚を薄くすることができるが、銅層表面の還元および絶縁膜表面の清浄化が不十分なものとなって、かえって信頼性を低下させることとなり好ましくない。
【0016】
一方、変質層が形成されにくい絶縁膜であれば、上層にSiO膜を形成する必要がなくなる。例えば、上述のRnSi(OR´)3−nを用いて形成される絶縁膜では変質層が形成され難い。しかしながら、この場合、膜中に含まれる炭素の量が極端に多くなるために、レジストパターンを転写する際のエッチング選択比が確保できなくなる。
【0017】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、有機シロキサン系絶縁膜を用いて電気的特性に優れた半導体装置を製造する方法を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る半導体装置の製造方法の一つは、多層配線構造を有する半導体装置の製造方法において、半導体基板上に形成された下層配線の上に第1の絶縁膜を形成する工程と、該第1の絶縁膜の上に第2の絶縁膜を形成する工程と、該第2の絶縁膜の上に第3の絶縁膜を形成する工程と、該第3の絶縁膜、該第2の絶縁膜および該第1の絶縁膜をドライエッチングして、該下層配線に至る開口部を形成する工程と、該開口部の内面および該第3の絶縁膜の上にバリアメタル膜を形成する工程と、該開口部を埋め込むようにして、該バリアメタル膜の上に導電層を形成する工程と、該第3の絶縁膜の上の該導電層、該第3の絶縁膜の上の該バリアメタル膜および該第3の絶縁膜並びに該第2の絶縁膜の一部を化学的機械研磨法により除去し、該下層配線に電気的に接続する上層の配線を形成する工程と、露出した該第2の絶縁膜および該導電層の表面を還元性プラズマ処理する工程とを有する。そして、該第2の絶縁膜を形成する工程は、下記式で表されるアルキルアルコキシシランと非酸化性ガスとを原料ガスに用い、500Pa以下の圧力でプラズマCVD法により成膜する工程である、
RwSixOy(OR´)z
(但し、RおよびR´はCHであり、w,x,zは正の整数、yは0または正の整数であって、(w/x)=2である。)。
【発明の効果】
【0020】
本願の第1の発明によれば、多層配線構造が、比誘電率が3.1以下で硬度が2.7GPa以上である絶縁膜を少なくとも一部に備えた層間絶縁膜を有するとともに、この絶縁膜が、珪素、炭素および酸素を含み、(炭素原子数/珪素原子数)の比が0.5以上1.0以下であるので、変質層の膜質を緻密にして電気的特性の低下を防ぐことができる。また、レジストパターンを転写する際のエッチング選択比を確保することもできる。
【0021】
また、本願の第2の発明によれば、一般式:RwSixOy(OR´)zで表されるアルキルアルコキシシランと非酸化性ガスとを原料ガスに用い、500Pa以下の圧力でプラズマCVD法を用いて第2の絶縁膜を成膜するので、変質層の膜質を緻密にして電気的特性の低下を防ぐことができる。
【0022】
また、本願の第3の発明によれば、第2の絶縁膜を形成する工程は、一般式:RwSixOy(OR´)zで表されるアルキルアルコキシシランと非酸化性ガスとを原料ガスとして、プラズマCVD法を用いて650Pa以上の圧力で所定の膜厚に達するまで成膜した後、圧力を500Pa以下に変えてさらに成膜する工程であるので、変質層の膜質を緻密にして電気的特性の低下を防ぐとともに寄生容量を低くすることができる。
【0023】
さらに、本願の第4の発明によれば、第2の絶縁膜を形成する工程は、第3の絶縁膜より比誘電率の低い絶縁膜を形成する工程であり、第3の絶縁膜を形成する工程は、一般式:RwSixOy(OR´)zで表されるアルキルアルコキシシランと非酸化性ガスとを原料ガスに用い、500Pa以下の圧力でプラズマCVD法により成膜する工程であるので、変質層の膜質を緻密にして電気的特性の低下を防ぐとともに寄生容量を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の有機シロキサン系絶縁膜について、圧力を変えたときの硬度と比誘電率との関係を示す図である。
【図2】本発明の有機シロキサン系絶縁膜について、エッチング時間とエッチングにより除去される膜厚との関係を示す図である。
【図3】本発明の有機シロキサン系絶縁膜について、硬度を変えたときの変質層の膜厚とエッチングレートの初速度との関係を示す図である。
【図4】本発明において、有機シロキサン系絶縁膜の硬度と初期故障の発生率との関係を示す図である。
【図5】本発明による半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図6】本発明による半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図7】本発明による半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図8】本発明による半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図9】本発明による半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図10】本発明による半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図11】本発明による半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図12】本発明による半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図13】本発明による半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図14】本発明による半導体装置の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
実施の形態.
本発明において、変質層とは、還元性プラズマ処理によって有機シロキサン系絶縁膜から炭素が抜けて、膜中の(C原子数/Si原子数)の比が0.1以下になった層と定義する。尚、炭素が抜け出る際に、炭素以外の他の成分が一緒に抜けてもよい。
【0026】
上記の定義によれば、変質層の主成分はSiおよびOである。したがって、有機シロキサン系絶縁膜の上にSiO膜を厚く堆積しておき、CMP法による研磨終了後にSiO膜を露出させる方法によって形成された構造と見かけ上類似している。しかしながら、本発明における変質層は、有機シロキサン系絶縁膜の上に堆積されたSiO膜とは明確に異なるものである。すなわち、パターン密度に依存してCMPのエロージョン量は数十nm程度の範囲で変化するので、研磨終了後に残存するSiO膜の膜厚もそれにしたがって変化する。このため、SiO膜の膜厚の最大値と最小値との差は、平均値の50%以上にもなる。一方、変質層の膜厚はプラズマ処理の均一性で決まるので、その最大値と最小値との差は平均値の20%以下に過ぎない。
【0027】
また、本発明の変質層は、接着性を向上する目的で、酸素プラズマ処理やヘリウムプラズマ処理によって形成される変質層とも相違する。例えば、有機シロキサン系絶縁膜の表面にプラズマ処理を施した後にSiO膜を形成した場合、これらの膜の界面にはプラズマ処理による変質層が形成される。しかしながら、この変質層は、その後のCMP工程で全て研磨されてしまう。したがって、最終構造に残らない点で本発明における変質層とは明確に異なるものである。
【0028】
変質層の形成による電気的特性の低下を防ぐためには、変質層を緻密にすることによって、その膜質を良好なものとすることが効果的である。しかしながら、有機シロキサン系絶縁膜の場合、単位体積あたりに含まれるSi−CH結合または不純物としての反応副生成物の量が多くなると、還元性プラズマの作用でCおよびHが脱離して膜密度を大きく低下させるので、良好な膜質の変質層にすることはできない。尚、この場合、脱離後の膜密度が低くなるほど還元性プラズマが内部に浸透しやすくなるので、変質層の膜厚は厚くなり、変質層が電気的特性に及ぼす影響は大きくなる。
【0029】
一方、Si−O−Si結合は、還元性プラズマによって分解されない。また、Si−C−Si結合は、還元性プラズマによってSi−N−Si結合またはSi−O−Si結合に変化するので、変質層の密度を大きく低下させることがない。したがって、変質層を緻密なものとするには、Si−CH結合や反応生成物の量を少なくして、Si−O−Si結合やSi−C−Si結合の量を多くすればよい。但し、単に膜中の炭素を減らしてSi−O−Si結合を増やしただけでは、変質層は緻密になるものの、膜はSiO膜に近い構造となる。したがって、比誘電率が高くなり、Low−k膜としての役割を果たさなくなることは自明である。
【0030】
以上より、本発明者は、低誘電率化を図るのに必要な程度の炭素量を保ちつつ、Si−CH結合および反応副生成物の割合を減らして、Si−C−Si結合の割合を増やすことが有効であることを見出し、本発明に至った。
【0031】
ところで、有機シロキサン系絶縁膜中に含まれるSi−CH,Si−C−SiおよびSi−O−Siの各結合は、フーリエ変換法赤外吸収分光光度測定(以下、FTIRという。)などによりその存在を確認することができる。しかしながら、これらの結合を定量的に分析することは困難である。
【0032】
そこで、本発明では、膜の硬度を指標として用いることにする。膜の単位体積あたりにおける結合に寄与する成分の量が多くなると、有機シロキサン系絶縁膜の硬度は高くなる。ここで、結合に寄与する成分とは、Si−O−Si結合およびSi−C−Si結合をいう。一方、結合を終端するSi−CHや、不純物として含まれる反応副生成物は結合に寄与しないので、これらの量が多くなると膜の硬度は低下する。本発明においては、硬度が高くて比誘電率の低い絶縁膜であることが好ましい。
【0033】
また、本発明の有機シロキサン系絶縁膜は、炭素原子数が珪素原子数に対して0.5倍以上1.0倍以下(0.5≦(C/Si)≦1.0)であるとする。炭素が少なくなりすぎると比誘電率を3.1以下にすることができないため好ましくない。一方、炭素が多くなりすぎると、レジストパターンを転写する際のエッチング選択比が確保できなくなるため好ましくない。
【0034】
本発明の有機シロキサン系絶縁膜は、一般式(1)で表されるアルキルアルコキシシランの蒸気と、非酸化性ガスとの混合ガスを用いてプラズマCVD法により形成される。非酸化性ガスとしては、例えば、He(ヘリウム)、Ar(アルゴン)およびN(窒素)などの不活性ガスを用いることができる。これらは、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0035】
RwSixOy(OR´)z ・・・(1)
【0036】
式(1)において、RおよびR´はともにCHである。また、w,x,zはそれぞれ正の整数であり、yは0(ゼロ)または正の整数であって、(w/x)=2である。
【0037】
具体的には、Si−OR´結合同士が結合してSi−O−Si結合が形成される。また、Si−CH結合の一部が分解し、分解したもの同士が結合してSi−C−Si結合が形成される。
【0038】
有機シロキサン系絶縁膜を成膜する際に非酸化性ガスを用いるのは、酸化性ガスの存在化ではSi−CH結合やSi−C−Si結合が分解するためである。しかしながら、酸化性ガスを用いないことによって、不要な有機成分(R´)から生じた反応生成物が不純物として膜中に残りやすい。これを抑制するためには、R´のCおよびHの含有量を低くするとともに、R´の数も少なくすることが望ましい。具体的には、R´をCHとするとともに、その数をSi1個あたり2個以下((z/x)≦2)とすることが好ましい。
【0039】
例1として、(CHSi(OCH(ジメチルジメトキシシラン)のガスを流量200sccmで、Heガスを流量100sccmでそれぞれ成膜装置内に供給し、圧力を350Pa〜700Pa、基板温度を375℃、RFパワーを1,300Wとして成膜を行った。
【0040】
形成された膜中の結合をFTIRを用いて調べたところ、Si−O−Si結合およびSi−CH結合とともに、Si−CH結合が分解して生じたSi−C−Si結合が観察された。この場合、成膜時の圧力が低いほどSi−CH結合が減少し、代わってSi−C−Si結合が増大した。
【0041】
また、ラザフォード後方散乱(RBS)を用いて測定したところ、膜中の炭素と原子数の比(C/Si)は、条件にかかわらず0.84〜0.86で略一定であった。
【0042】
上記の例1により、膜厚の異なる2種類の有機シロキサン系絶縁膜を形成した。図1は、膜厚600nmの膜について、圧力を変えたときの硬度と比誘電率との関係を示したものである。図より、硬度が高くなると比誘電率も高くなることが分かる。また、圧力が低くなると、比誘電率および硬度は高くなる傾向にある。具体的には、圧力が500Pa以下になると硬度は2.7GPa以上になり、圧力が470Pa以下になると硬度は3.0GPa以上になる。一方、膜厚200nmの膜についても、圧力が低くなると比誘電率は高くなったが、350Pa〜700Paの範囲ではいずれも比誘電率は3.1以下であった。尚、比誘電率の測定は、膜厚200nmの試料について水銀プローブ法を用いて行った。また、硬度の測定は、膜厚600nmの試料についてナノインデンテーション法を用いて行った。
【0043】
例2として、(CHSiO(OCHとHeとの混合ガスを用いて、上記の例と同様にして有機シロキサン系絶縁膜を成膜した。この場合、圧力400Paでは、比誘電率が2.7で硬度が3.0GPaである膜が得られた。
【0044】
尚、反応ガスをHeガスからArガスまたはNガスに変更して、例1および例2と同様の成膜を行ったが、得られる膜の特性に有意差は見られなかった。
【0045】
以上より、本発明においては、珪素、炭素および酸素を含み、(炭素原子数/珪素原子数)の比が0.5以上1.0以下であるとともに、比誘電率が3.1以下で硬度が2.7GPa以上である絶縁膜を層間絶縁膜として用いる。この絶縁膜は、一般式RwSixOy(OR´)zで表されるアルキルアルコキシシランと非酸化性ガスとを原料ガスに用い、プラズマCVD法により500Pa以下の圧力で形成される。但し、変質層の膜質をより良好なものとするためには、比誘電率が3.1以下で硬度が3.0GPa以上である絶縁膜を層間絶縁膜として用いる方が好ましい。この絶縁膜は、上記の原料ガスを用いて、プラズマCVD法により470Pa以下の圧力で形成される。
【0046】
上述した特許文献3には、比誘電率が3以下で50GPa未満のヤング率を有する有機SOG膜が開示されている。しかしながら、特許文献3は、SOG膜の機械的強度が低いことによるクラックの発生を防止するために、SOG膜と電極パッドの間に50GPa以上のヤング率を有する絶縁層を設けるものである。一方、本発明は、変質層の膜質と硬度との関係を基に、硬度、比誘電率およびエッチング選択比を比較考量することによって、(炭素原子数/珪素原子数)の比が0.5以上1.0以下であるとともに、比誘電率が3.1以下で硬度が2.7GPa以上である絶縁膜を層間絶縁膜として用いることを特徴としている。したがって、本発明は、特許文献3に開示されている発明とは明確に異なるものである。尚、図1の関係から、本発明においては、硬度が2.7GPa以上4.0GPa以下、好ましくは3.0GPa以上4.0GPa以下である絶縁膜を層間絶縁膜として用いると言い換えることもできる。
【0047】
次に、例1により成膜した膜厚100nmの有機シロキサン系絶縁膜に対し、平行平板型プラズマCVD装置を用いてアンモニアプラズマ処理を施した。尚、処理条件は、CMP法による研磨の後に行う還元性プラズマ処理と同じにした。
【0048】
上記のプラズマ処理を30秒間行った後、濃度0.5%のフッ酸水溶液を用いて膜のエッチングレートを調べた。図2は、エッチング時間とエッチングにより除去される膜厚との関係を示したものである。図より、時間の経過とともにエッチングレートは低下することが分かる。除去膜厚がB点に達して変質層が全て除去されると、エッチングレートはゼロになった。エッチングレートがゼロになるのに要する典型的な時間は2分程度であった。また、エッチング前後で膜のFTIRスペクトルを測定し、その差から除去された変質層のスペクトルを求めたところ、膜中からSi−CHなどの有機成分は検出されなかった。
【0049】
図3は、変質層の膜厚(B)と、エッチングレートの初速度(B/A,但し、Aはエッチング時間を示す。)とを、膜の硬度に対してプロットしたものである。図より、硬度が高くなると、変質層の膜厚が薄くなることが分かる。また、同時に、エッチングレートも低下するので、変質層の膜質が緻密になっていることも分かる。
【0050】
図より、硬度3.6GPaでのエッチングレートは9.2nm/分である。これは、プラズマCVD法により成膜したSiO膜のエッチングレート(11nm/分)と同程度である。また、硬度2.7GPa以上では変質層の膜厚は14nm以下となり、硬度が3.0GPa以上になると変質層の膜厚は12nm以下になる。さらに、変質層の膜厚の面内均一性を調べたところ、その最大値と最小値との差は平均値の20%以内であった。すなわち、本発明によれば、硬度が2.7GPa以上の絶縁膜を用いることによって、概ね5nm以上15nm以下の膜厚を有する変質層が形成される。
【0051】
尚、図2および図3の傾向は、上記の例2の条件で形成した膜であっても同様であった。
【0052】
次に、シリコン基板の上に、例1の条件で膜厚500nmの有機シロキサン系絶縁膜を形成した。続いて、この上にSiO膜を30nmの膜厚で形成した後、レジストパターンをマスクとして開口部を形成した。そして、レジストパターンを除去してから、バリアメタル膜としての窒化タンタル膜およびタンタル膜を合わせて20nm積層し、さらにこの上に銅層を形成した。その後、SiO膜の全てと、有機シロキサン系絶縁膜の一部とをCMP法で研磨して銅配線層を形成した。次いで、露出した有機シロキサン系絶縁膜と銅層の表面をアンモニアプラズマ処理し、これらの上にバリア絶縁膜としてのSiCN膜を形成した。
【0053】
得られた基板を140℃に加熱し、絶縁された隣接配線間に電界をかけながらリーク電流の経時変化を調べた。尚、この場合の隣接する配線間の距離は140nmであった。絶縁破壊が生じる時間を測定して統計解析を行ったところ、初期故障と真性故障の2種類の故障モードがあった。ここで、真性故障は十分な寿命があるので、初期故障を不良と判定して硬度との関係を求めた。結果を図4に示す。図より、硬度が大きくなるほど不良発生率が減少することが分かる。具体的には、硬度が2.7Gpa以上では歩留まりは97%以上になり、実用上問題のないレベルとなる。また、硬度が3.0GPa以上になると歩留まりは100%になり、さらに好ましい信頼度が得られることが分かる。
【0054】
尚、図4の傾向は、上記の例2の条件で形成した膜であっても同様であった。
【0055】
次に、図5〜図14を参照して、本発明による半導体装置の製造方法について説明する。尚、トランジスタ、拡散層およびプラグ形成などの通常のLSI製造工程については便宜上割愛し、金属配線の形成工程について説明する。
【0056】
まず、下層配線1が形成された半導体基板を準備する(図5)。半導体基板としては、例えばシリコン基板を用いることができる。尚、簡便のために、図では下層配線1の構造を省略している。
【0057】
次に、下層配線1の上に、第1の絶縁膜2、第2の絶縁膜3および第3の絶縁膜4をこの順に形成する(図5)。ここで、第1の絶縁膜2はバリア絶縁膜であり、例えば、SiN膜またはSiCN膜などのN(窒素)を含む絶縁膜とすることができる。また、第2の絶縁膜3は本発明による有機シロキサン系絶縁膜である。さらに、第3の絶縁膜4は、SiO膜とすることができる。
【0058】
第3の絶縁膜4を形成した後は、所定のパターンを有するレジスト膜5を形成する(図6)。具体的には、第3の絶縁膜4の全面にフォトレジスト(図示せず)を塗布した後、所定のパターンを有するマスク(図示せず)を介してフォトレジストに露光光を照射する。次に、適当な現像液を用いてフォトレジストを現像することによって、所定のパターンを有するレジスト膜5を形成することができる。
【0059】
露光光の種類は、半導体装置のデザイン・ルールに応じて適宜選択することができる。例えば、0.25μm〜0.13μmのデザイン・ルールではKrF(フッ化クリプトン)エキシマレーザ(波長:248nm)が、90nm〜65nmのデザイン・ルールではArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザ(波長:193nm)が、それぞれ露光装置の光源として用いられる。
【0060】
次に、レジスト膜5をマスクとし、第3の絶縁膜4および第2の絶縁膜3に対して第1のドライエッチングを行う。この第1のドライエッチングは、第1の絶縁膜2に達した時点で自動的に終了し、第1の絶縁膜2に至る開口部6が形成される(図7)。
【0061】
続いて、低圧酸素プラズマでレジスト膜5を除去した後、第3の絶縁膜4および第2の絶縁膜3をマスクとして、第1の絶縁膜2に対し第2のドライエッチングを行う。これにより、下層配線1に至る開口部7が形成される(図8)。ここで、開口部7は、配線溝および配線孔のいずれであってもよい。
【0062】
尚、低圧酸素プラズマ処理を行うことによって、開口部7の内面には変質層が形成されが、この変質層は、本発明で対象とする「有機シロキサン系絶縁膜から炭素が抜けて、(炭素原子数/珪素原子数)の比が0.1以下になった絶縁層」とは異なるものである。
【0063】
次に、開口部7の内面にバリアメタル膜を形成し、さらに、バリアメタル膜を介して配線溝の内部に銅層の埋込みを行うことによって銅配線を形成する。この工程は、具体的には、次のようにして行うことができる。
【0064】
まず、開口部7の内面および第3の絶縁膜4の上に、バリアメタル膜8として、窒化タンタル膜とタンタル膜からなる積層膜を形成する。バリアメタル膜8の膜厚は、例えば20nm程度とすることができる。続いて、バリアメタル膜8の上に、導電層としての銅層9を開口部7を埋め込むようにして成膜する。これにより、図9に示す構造が得られる。
【0065】
次に、CMP法によって、銅層9およびバリアメタル膜8の研磨を行う。この際、表面の平坦性を高めるために、第3の絶縁膜4の全てと第2の絶縁膜3の一部も研磨する。これにより、開口部7の内部にのみ銅層9およびバリアメタル膜8が残るようにして、下層配線1に電気的に接続する第1の配線10を形成することができる。また、研磨後の表面には第2の絶縁膜3が露出する(図10)。
【0066】
次に、アンモニアを用いた還元性プラズマ処理を行い、銅層9の表面を還元するとともに第2の絶縁膜3の表面を清浄化する。これにより、図12に示すように、第2の絶縁膜3中の炭素が還元されて変質層3´が形成される。変質層3´の膜厚は、例えば12nm程度である。尚、アンモニアの代わりに水素を用いてもよいし、アンモニアおよび水素の両方を用いてもよい。
【0067】
以上の工程によって、本発明による有機シロキサン絶縁膜を用いた配線層を形成することができる(図11)。
【0068】
次いで、ビア先方式デュアルシングルダマシン法を用い、図5〜図11と同様の工程を繰り返すことによって、第1の配線10に電気的に接続する第2の配線11を形成する(図12)。さらに、同様の工程を繰り返すことによって多層配線構造を形成することができる。
【0069】
図12において、第2の絶縁膜3には、配線溝13と、配線溝13に対応するビアホール12とが設けられている。そして、配線溝13およびビアホール12に銅層9が充填されて第2の配線11が形成される。
【0070】
本実施の形態においては、硬度および比誘電率の異なる複数の有機シロキサン系絶縁膜を組み合わせて配線層を形成してもよい。具体的には、本発明における有機シロキサン系絶縁膜の下層にこの絶縁膜に接して、この絶縁膜より比誘電率の低い他の絶縁膜(以下、単に低誘電率絶縁膜と称す。)が形成されていてもよい。
【0071】
例えば、第2の絶縁膜を形成する工程を、式(1)で表されるアルキルアルコキシシランと非酸化性ガスとを原料ガスに用い、プラズマCVD法を用いて650Pa以上の圧力で所定の膜厚に達するまで成膜した後、圧力を500Pa以下に変えてさらに成膜する工程とすることができる。これにより、珪素、炭素および酸素を含み、(炭素原子数/珪素原子数)の比が0.5以上1.0以下である絶縁膜であって、下層を比誘電率が2.8以下で硬度が1.8GPa以下である絶縁膜とし、上層を比誘電率が3.1以下で硬度が2.7GPa以上である絶縁膜とすることができる(図1)。この場合、隣接する配線間の容量を低減するためには、下層の絶縁膜の比誘電率は2.6以下であることが好ましい。
【0072】
例3として、第1の配線層においては、(CHSiO(OCHを原料として硬度が3.0GPaである有機シロキサン系絶縁膜を250nmの膜厚で形成する。次に、第2の配線層においては、硬度0.9GPaの有機シロキサン系絶縁膜を400nmの膜厚で形成した後、硬度3.0GPaの有機シロキサン系絶縁膜を100nmの膜厚で形成する。尚、原料ガスは、第1の絶縁膜と同様とすることができる。同様に、第2の配線層の上層の配線層についても、第2の配線層と同じようにして形成する。
【0073】
この様子を図13に示す。図13が図12と異なる点は、第2の配線層11における第2の絶縁膜3が、第1の有機シロキサン系絶縁膜3aと第2の有機シロキサン系絶縁膜3bとからなっている点である。尚、第1の配線層10における第2の絶縁膜3は、第1の有機シロキサン系絶縁膜3aからのみなっている。ここで、第1の有機シロキサン系絶縁膜3aとは硬度が3.0GPaの絶縁膜であり、第2の有機シロキサン系絶縁膜3bとは硬度が0.9GPaの絶縁膜である。変質層3´は、還元性プラズマに晒される第1の有機シロキサン系絶縁膜3aの表面にのみ形成される。そして、第2の配線層11のさらに上層に形成される配線層(図示せず)も、第2の配線層と同様の構造を有するものとすることができる。
【0074】
図13の構造によれば、配線溝13に対応するビアホール12は、低誘電率絶縁膜としての第2の有機シロキサン系絶縁膜3bの一部に設けられている。また、配線溝13は、第2の有機シロキサン系絶縁膜3bの一部と、第1の有機シロキサン系絶縁膜3aとに設けられている。そして、配線溝13およびビアホール12に銅層9が充填されて、第2の配線11が形成されている。このような構造とすることによって、以下に述べるように、隣接する配線間の容量を低くすることが可能となる。
【0075】
図1より、硬度3.0GPaでの比誘電率は2.93であり、硬度0.9GPaでの比誘電率は2.52である。したがって、これらの膜厚を上記のように設定することによって、各配線層を単一の硬度の有機シロキサン系絶縁膜のみで形成した場合と比較して、10%程度低い寄生容量を実現することができる。尚、この場合、(CHSi(OCHに代わって(CHSiO(OCHを用いた場合も同様である。
【0076】
また、例4として、第1の配線層においては、(CHSiO(OCHを原料として硬度が3.0GPaである有機シロキサン系絶縁膜を250nmの膜厚で形成する。次に、第2の配線層においては、硬度3.0GPaの有機シロキサン系絶縁膜を200nmの膜厚で形成した後、硬度0.9GPaの有機シロキサン系絶縁膜を200nmの膜厚で形成し、さらに、硬度が3.0GPaの有機シロキサン系絶縁膜を100nmの膜厚で形成する。尚、原料ガスは、第1の絶縁膜と同様とすることができる。同様に、第2の配線層の上層の配線層についても、第2の配線層と同じようにして形成する。このようにすることによって、各配線層を単一の硬度の有機シロキサン系絶縁膜のみで形成した場合と比較して、5%程度低い寄生容量を実現することができる。尚、この場合、(CHSi(OCHに代わって(CHSiO(OCHを用いた場合も同様である。
【0077】
この様子を図14に示す。図14が図13と異なる点は、第2の配線層11における第2の絶縁膜3が、第1の有機シロキサン系絶縁膜3a、第2の有機シロキサン系絶縁膜3bおよび第1の有機シロキサン系絶縁膜3aの3層構造からなっている点である。ここで、第1の有機シロキサン系絶縁膜3aとは硬度が3.0GPaの絶縁膜であり、第2の有機シロキサン系絶縁膜3bとは硬度が0.9GPaの絶縁膜である。第1の配線層10における第2の絶縁膜3は、第1の有機シロキサン系絶縁膜3aからのみなっている。また、変質層3´は、還元性プラズマに晒される第1の有機シロキサン系絶縁膜3aの表面にのみ形成される。尚、第2の配線層11のさらに上層に形成される配線層(図示せず)も、第2の配線層と同様の構造を有するものとすることができる。
【0078】
図14の構造によれば、配線溝13に対応するビアホール12は、第1の有機シロキサン系絶縁膜3aに設けられている。また、配線溝13は、低誘電率絶縁膜としての第2の有機シロキサン系絶縁膜3bと、第1の有機シロキサン系絶縁膜3aとに設けられている。そして、配線溝13およびビアホール12に銅層9が充填されて、第2の配線11が形成されている。このような構造とすることによって、以下に述べるように、抵抗値の上昇を抑制しつつ隣接する配線間の容量を低くすることが可能となる。
【0079】
上記の例1〜例4にしたがって、5層からなる配線構造を有する半導体装置を製造した。尚、例1および例2は、図12の構造に対応する。また、例3は図13の構造に対応し、例4は図14の構造に対応する。そして、200℃の温度で500時間のストレスマイグレーション試験を行い、試験前後での層間接続抵抗の変化を調べたところ、例4による半導体装置の抵抗上昇率は、例1および例2における抵抗上昇率と同程度であった。一方、例3における抵抗上昇率は例4の2倍程度であったが、実用上は問題のないレベルであった。
【0080】
また、本発明においては、下層配線の上に、第1の絶縁膜、第2の絶縁膜、第3の絶縁膜および第4の絶縁膜を形成した後、これらの絶縁膜をドライエッチングして下層配線に至る開口部を形成し、開口部の内部および第4の絶縁膜の上にバリアメタル膜および導電層を形成してから、開口部の内部を除いて導電層、バリアメタル膜および第4の絶縁膜並びに第3の絶縁膜の一部を化学的機械研磨法により除去し、下層配線に電気的に接続する上層の配線を形成することもできる。この場合、露出した第3の絶縁膜および導電層の表面に還元性プラズマ処理がなされる。尚、第1の絶縁膜はバリア絶縁膜であり、第3の絶縁膜は本発明における有機シロキサン系絶縁膜であり、第4の絶縁膜はSiO膜である。
【0081】
上記の場合、第2の絶縁膜を形成する工程は、第3の絶縁膜より比誘電率の低い絶縁膜を形成する工程とする。すなわち、第2の絶縁膜は、第3の絶縁膜より比誘電率の低い膜であればよく、有機シロキサン系絶縁膜に限られるものではない。一方、第3の絶縁膜を形成する工程は、式(1)で表されるアルキルアルコキシシランと非酸化性ガスとを原料ガスに用い、500Pa以下の圧力でプラズマCVD法により成膜する工程とする。これにより、硬度が2.7GPa以上である第3の絶縁膜が得られる。尚、第3の絶縁膜の硬度を3.0GPa以上とすることによって、変質層の膜質をより良好なものとすることができる。この場合、成膜時の圧力は470Pa以下とすることが好ましい。
【0082】
この方法によれば、図14において、第2の有機シロキサン系絶縁膜3bを第2の絶縁膜に変えた構造が得られる。したがって、還元性プラズマ処理によって形成される変質層の膜質を緻密にすることができるので、半導体装置の電気的特性が低下するのを防ぐことが可能となる。また、配線層を単一の有機シロキサン系絶縁膜のみで形成した場合に比べて、より低い寄生容量とすることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 下層配線
2 第1の絶縁膜
3 第2の絶縁膜
4 第3の絶縁膜
5 レジスト膜
6,7 開口部
8 バリアメタル膜
9 銅層
10 第1の配線
11 第2の配線
12 ビアホール
13 配線溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層配線構造を有する半導体装置の製造方法において、
半導体基板上に形成された下層配線の上に第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜の上に第2の絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の絶縁膜の上に第3の絶縁膜を形成する工程と、
前記第3の絶縁膜、前記第2の絶縁膜および前記第1の絶縁膜をドライエッチングして、前記下層配線に至る開口部を形成する工程と、
前記開口部の内面および前記第3の絶縁膜の上にバリアメタル膜を形成する工程と、
前記開口部を埋め込むようにして、前記バリアメタル膜の上に導電層を形成する工程と、
前記第3の絶縁膜の上の前記導電層、前記第3の絶縁膜の上の前記バリアメタル膜および前記第3の絶縁膜並びに前記第2の絶縁膜の一部を化学的機械研磨法により除去し、前記下層配線に電気的に接続する上層の配線を形成する工程と、
露出した前記第2の絶縁膜および前記導電層の表面を還元性プラズマ処理する工程とを有し、
前記第2の絶縁膜を形成する工程は、下記式で表されるアルキルアルコキシシランと非酸化性ガスとを原料ガスに用い、500Pa以下の圧力でプラズマCVD法により成膜する工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法
RwSixOy(OR´)z
(但し、RおよびR´はCHであり、w,x,zは正の整数、yは0または正の整数であって、(w/x)=2である。)。
【請求項2】
多層配線構造を有する半導体装置の製造方法において、
半導体基板上に形成された下層配線の上に第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜の上に第2の絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の絶縁膜の上に第3の絶縁膜を形成する工程と、
前記第3の絶縁膜、前記第2の絶縁膜および前記第1の絶縁膜をドライエッチング して、前記下層配線に至る開口部を形成する工程と、
前記開口部の内面および前記第3の絶縁膜の上にバリアメタル膜を形成する工程と、
前記開口部を埋め込むようにして、前記バリアメタル膜の上に導電層を形成する工程と、
前記第3の絶縁膜の上の前記導電層、前記第3の絶縁膜の上の前記バリアメタル膜および前記第3の絶縁膜並びに前記第2の絶縁膜の一部を化学的機械研磨法により除去し、前記下層配線に電気的に接続する上層の配線を形成する工程と、
露出した前記第2の絶縁膜および前記導電層の表面を還元性プラズマ処理する工程とを有し、
前記第2の絶縁膜を形成する工程は、下記式で表されるアルキルアルコキシシランと非酸化性ガスとを原料ガスとして、プラズマCVD法により650Pa以上の圧力で所定の膜厚に達するまで成膜した後、圧力を500Pa以下に変えてさらに成膜する工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法
RwSixOy(OR´)z
(但し、RおよびR´はCHであり、w,x,zは正の整数、yは0または正の整数であって、(w/x)=2である。)。
【請求項3】
多層配線構造を有する半導体装置の製造方法において、
半導体基板上に形成された下層配線の上に第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜の上に第2の絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の絶縁膜の上に第3の絶縁膜を形成する工程と、
前記第3の絶縁膜の上に第4の絶縁膜を形成する工程と、
前記第4の絶縁膜、前記第3の絶縁膜、前記第2の絶縁膜および前記第1の絶縁膜をドライエッチングして、前記下層配線に至る開口部を形成する工程と、
前記開口部の内面および前記第4の絶縁膜の上にバリアメタル膜を形成する工程と、
前記開口部を埋め込むようにして、前記バリアメタル膜の上に導電層を形成する工程と、
前記第4の絶縁膜の上の前記導電層、前記第4の絶縁膜の上の前記バリアメタル膜および前記第4の絶縁膜並びに前記第3の絶縁膜の一部を化学的機械研磨法により除去し、前記下層配線に電気的に接続する上層の配線を形成する工程と、
露出した前記第3の絶縁膜および前記導電層の表面を還元性プラズマ処理する工程とを有し、
前記第2の絶縁膜を形成する工程は、前記第3の絶縁膜より比誘電率の低い絶縁膜を形成する工程であり、
前記第3の絶縁膜を形成する工程は、下記式で表されるアルキルアルコキシシランと非酸化性ガスとを原料ガスに用い、500Pa以下の圧力でプラズマCVD法により成膜する工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法
RwSixOy(OR´)z
(但し、RおよびR´はCHであり、w,x,zは正の整数、yは0または正の整数であって、(w/x)=2である。)。
【請求項4】
前記非酸化性ガスは、ヘリウムガス、アルゴンガスおよび窒素ガスよりなる群から選ばれる少なくとも1種のガスである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記還元性プラズマ処理は、アンモニアおよび水素の少なくとも一方を含むプラズマに晒す工程である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−233925(P2011−233925A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165657(P2011−165657)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【分割の表示】特願2004−199709(P2004−199709)の分割
【原出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】