説明

半導体装置の製造方法

【課題】パワー系半導体のメタル電極製造工程に於いて、薄膜化されたウエハの熱処理等の反りによる搬送ミスやウエハクラックを防止する製造方法を提供する。
【解決手段】半導体ウエハ1の裏面研削後に、ウエハを予熱した状態でスパッタリング成膜によりメタル膜を成膜するに際して、ウエハを円環状のサセプタに収容して処理するものであって、その円環の放射状垂直断面は、半導体ウエハの表面の周辺部を重力に対して保持する水平に近い第1の上側表面41と、第1の上側表面に続いて、その外側にあって、半導体ウエハの側面を横ずれに対して保持する垂直に近い第2の上側表面42を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置(または半導体集積回路装置)の製造方法におけるスパッタリング成膜技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
日本特開2007−266347号公報(特許文献1)には、表面のダイオード等のデバイス形成処理が完了したウエハの裏面に対して、グラインディング等により、薄膜化した後のウエハの裏面に対して、スパッタリング成膜および熱処理を実行するプロセスおよび装置が開示されている。ここで、そのウエハホールダは、下からウエハの表面を支えるリング状の石英製下部保持体と、ウエハの周辺を上から押さえる複数のウエハ押さえ爪から構成されており、ウエハの上方にスパッタリングターゲットが配置され、石英製下部保持体の円形開口の下方に熱処理用ランプが配置されている。
【0003】
日本特開2006−5271号公報(特許文献2)および、これに対応する国際公開第2005/124848号パンフレット(特許文献3)には、ウエハの熱処理等に用いる円環状のSiC製サセプタが開示されている。ここで、このサセプタのウエハを指示する部分の断面は、上に凸の局面形状を呈している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−266347号公報
【特許文献2】特開2006−5271号公報
【特許文献3】国際公開第2005/124848号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パワーMOSFET、IGBT等のパワー系半導体装置の製造工程に於いて、半導体ウエハの裏面にメタル電極をスパッタリング成膜等により形成する際に、ガラス補強板等の補強部材をウエハに貼り付けることなく、円環状のサセプタにウエハを収容し、そのウエハをその自重により安定保持して予熱処理、成膜処理等の一連の処理を実行するプロセスが実行されている。
【0006】
しかし、これらの連続処理について、本願発明者らが検討したところによると、薄膜化されたウエハは、熱処理等により反りやすく、反りによりウエハが振動して、サセプタ上でずれて、一連の処理の過程で、搬送ミスやウエハクラックを惹起する可能性が高いことが明らかとなった。
【0007】
本願発明は、これらの課題を解決するためになされたものである。
【0008】
本発明の目的は、信頼性の高い半導体装置の製造プロセスを提供することにある。
【0009】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0011】
すなわち、本願の一つの発明は、半導体ウエハの裏面研削後に、ウエハを予熱した状態でスパッタリング成膜によりメタル膜を成膜するに際して、ウエハを円環状のサセプタに非束縛状態で収容して処理するものであって、その円環の放射状垂直断面は、半導体ウエハの表面の周辺部を重力に対して保持する第1の上側表面と、第1の上側表面に続いて、その外側にあって、第1の上側表面よりも垂直に近い傾きを有し、半導体ウエハの側面を横ずれに対して保持する第2の上側表面を有し、この第2の上側表面と垂直面のなす角度は、0度以上、且つ、20度以下とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0013】
すなわち、半導体ウエハの裏面研削後に、ウエハを予熱した状態でスパッタリング成膜によりメタル膜を成膜するに際して、ウエハを円環状のサセプタに非束縛状態で収容して処理するものであって、その円環の放射状垂直断面は、半導体ウエハの表面の周辺部を重力に対して保持する第1の上側表面と、第1の上側表面に続いて、その外側にあって、第1の上側表面よりも垂直に近い傾きを有し、半導体ウエハの側面を横ずれに対して保持する第2の上側表面を有し、この第2の上側表面と垂直面のなす角度は、0度以上、且つ、20度以下とするので、処理中におけるウエハのずれを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本願の一実施の形態の半導体装置の製造方法に使用するウエハ裏面多層メタル成膜装置の上面図である。
【図2】本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法に使用するウエハ裏面多層メタル成膜装置の上面図(図1においてターゲット切替機構を透明化して、その下の部分を見やすくしたもの)である。
【図3】図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置におけるウエハの移動の仕方を説明するための内部搬送ロボット、各ウエハステージ、ステージ上のウエハ、およびウエハサセプタの斜視図である。
【図4】図3のウエハサセプタの上面図である。
【図5】図4のX−X’断面に対応するウエハサセプタの断面図(内部搬送ロボットに保持されているとき)である。
【図6】図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置の冷却ウエハステージ63b、63cの正断面構造図である。
【図7】図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置のランプ加熱ウエハステージ63aの正断面構造図である。
【図8】図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置のロードロック室61の正断面構造図(脱ガス処理中)である。
【図9】図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置を見やすいように横長に展開したときの模式断面図である。
【図10】図9のウエハ裏面多層メタル成膜装置におけるマルチターゲット成膜処理領域62b部分周辺の拡大断面図である。
【図11】図9および図10に示すマグネトロン用マグネット群の下面拡大図である。
【図12】図9および図10に示すターゲット切替機構59の拡大断面図である。
【図13】本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセスのプロセスブロックフロー図である。
【図14】本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法により製造されたパワーMOSFETの一例を示すデバイス上面図である。
【図15】本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(ソースコンタクト溝形成用レジストパターン形成工程)である。
【図16】本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(ソースコンタクト溝形成工程)である。
【図17】本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(ソースコンタクト溝形成用レジストパターン除去工程)である。
【図18】本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(ソースコンタクト溝延長工程)である。
【図19】本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス上面図(p+ボディコンタクト領域導入工程)である。
【図20】本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部(図19のX−X’断面に対応する)のデバイス断面フロー図(p+ボディコンタクト領域導入工程)である。
【図21】本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(バリアメタル膜成膜工程)である。
【図22】本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(アルミニウム系メタル膜成膜工程)である。
【図23】本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(バックグラインディング工程)である。
【図24】本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(裏面多層メタル膜成膜工程)である。
【図25】図7のランプ加熱ウエハステージ63aおよびその周辺の更に詳細を説明するための装置断面図である。
【図26】図25の加熱用ステージ端部切り出し部Cの拡大断面図である。
【図27】ランプ加熱ウエハステージ63a上におけるウエハとウエハサセプタの各部の関係を説明するためのウエハおよびその周辺のサセプタの平面図である。
【図28】本願の前記前記一実施の形態の半導体装置の製造方法における成膜および加熱プロセスに使用するリング状ウエハサセプタの放射状垂直断面(図26のサセプタ周辺切り出し部Pおよび図27のA−A’断面すなわち放射状垂直断面に対応する)の主要角度および主要寸法の一例を示すサセプタ部分断面図(一部に平坦なウエハをその自重によって保持した状態を示す。ここでは、エッジトリミングしたウエハを示す)である。
【図29】本願の前記前記一実施の形態の半導体装置の製造方法における成膜および加熱プロセスに使用するリング状ウエハサセプタの放射状垂直断面(図26のサセプタ周辺切り出し部Pおよび図27のA−A’断面すなわち放射状垂直断面に対応する)の断面構造の一例を示すサセプタ部分断面図(一部に平坦なウエハをその自重によって保持した状態を示す。ここでは、エッジトリミングしていないウエハを示す)である。
【図30】ウエハのずれによって起こる問題を説明するための図27のA−F断面に対応する冷却ウエハステージ63c上におけるサセプタ等の全体断面図である。
【図31】本願の前記前記一実施の形態の半導体装置の製造方法における成膜および加熱プロセスに使用するリング状ウエハサセプタの放射状垂直断面(図26のサセプタ周辺切り出し部Pおよび図27のA−A’断面すなわち放射状垂直断面に対応する)の断面構造の一例を示すサセプタ部分断面図(一部に湾曲したウエハをその自重によって保持した状態を示す。ここでは、エッジトリミングしていないウエハを示す)である。
【図32】ベンド量が6ミリメートルの200Φウエハを例にとり、側方内面(第2の上側表面)と垂直面のなす角Θ1(テーパ角度)と湾曲したウエハ端部とサセプタ内面のクリアランスCBの関係を例示した説明図である。
【図33】各ベンド量および側方内面(第2の上側表面)と垂直面のなす角Θ1(テーパ角度)に対するサセプタ内面のクリアランスCBの関係を整理した相互関係説明図である。
【図34】ベンド量が6ミリメートルの200Φウエハを例にとり、側方内面(第2の上側表面)と垂直面のなす角Θ1(テーパ角度)と湾曲したウエハ端部とサセプタ内面のクリアランスCBの関係をプロットしたデータプロット図(図32に対応)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施の形態の概要〕
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。
【0016】
1.以下の工程を含む半導体装置の製造方法:
(a)表面側のデバイス形成処理が完了した半導体ウエハの裏面に対して、研削処理を実行することにより、前記半導体ウエハを薄膜化する工程;
(b)前記工程(a)の後、サセプタ上に、前記半導体ウエハをその表面が下を向いて、その自重によって保持した状態で、前記半導体ウエハに対して予熱処理を実行することにより、室温よりも高い温度に昇温する工程;
(c)前記工程(b)の後、前記昇温状態を維持し、前記サセプタ上に、前記半導体ウエハをその表面が下を向いて、その自重によって保持した状態で、前記半導体ウエハの裏面に対して、スパッタリング成膜により、第1のメタル膜を成膜する工程、
ここで、前記サセプタは円環状の形状を呈し、その円環の放射状垂直断面は、以下の各上側表面を有する:
(x1)前記半導体ウエハの前記表面の周辺部を重力に対して保持する第1の上側表面;
(x2)前記第1の上側表面に続いて、その外側にあって、前記第1の上側表面よりも垂直に近い傾きを有し、前記半導体ウエハの側面を横ずれに対して保持する第2の上側表面、
ここで更に、前記第2の上側表面と垂直面のなす第1の角度は、0度以上、且つ、20度以下である。
【0017】
2.前記1項の半導体装置の製造方法において、前記第1の角度は、5度以上、且つ、15度以下である。
【0018】
3.前記1または2項の半導体装置の製造方法において、前記サセプタは、石英製である。
【0019】
4.前記1から3項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記半導体装置は、パワー系半導体装置である。
【0020】
5.前記1から4項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記半導体ウエハは、シリコン系ウエハである。
【0021】
6.前記5項の半導体装置の製造方法において、更に以下の工程を含む:
(d)前記工程(c)の後、前記サセプタ上に、前記半導体ウエハをその表面が下を向いて、その自重によって保持した状態で、熱処理を施すことによって、前記第1のメタル膜をシリサイド化する工程。
【0022】
7.前記6項の半導体装置の製造方法において、更に以下の工程を含む:
(e)前記工程(d)の後、前記半導体ウエハを前記サセプタ内に収容した状態において、前記半導体ウエハの前記表面を吸着ステージに吸着させる工程;
(f)前記工程(e)の後、前記半導体ウエハを前記サセプタ内に収容し、前記半導体ウエハの前記表面を吸着ステージに吸着させた状態で、前記半導体ウエハの前記裏面に対して、スパッタリング成膜により、第2のメタル膜を成膜する工程。
【0023】
8.前記1から7項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記工程(a)の後の前記半導体ウエハの厚さは、280マイクロメートル以下である。
【0024】
9.前記7または8項の半導体装置の製造方法において、前記工程(b)から(f)においては、前記半導体ウエハは、補強板に貼り付けられていない。
【0025】
10.前記1から9項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記サセプタの円環の放射状垂直断面は、以下の上側表面を有する:
(x3)前記第2の上側表面に続いて、その外側にあって、前記第2の上側表面よりも水平に近い傾きを有する第3の上側表面。
【0026】
11.前記1から8および10項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記工程(b)から(c)においては、前記半導体ウエハは、補強板に貼り付けられていない。
【0027】
12.前記1から11項のいずれか一つの半導体装置の製造方法において、前記予熱処理により昇温された温度は、摂氏250度以上である。
【0028】
〔本願における記載形式、基本的用語、用法の説明〕
1.本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクションに分けて記載する場合もあるが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しを省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0029】
更に、本願において、「半導体装置」というときは、主に、各種トランジスタ(能動素子)などの単体デバイスや、これらを中心に、抵抗、コンデンサ等を半導体チップ等(たとえば単結晶シリコン基板)上に集積したものをいう。なお、単体といっても、実際は、微小な素子を複数集積したものもある。ここで、各種トランジスタの代表的なものとしては、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)に代表されるMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)や、IGBT(Insulated gate Bipolar Transistor)を例示することができる。また、「MOS」といっても、絶縁膜を酸化物に限定しているわけではない。
【0030】
2.同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかに、そうでない場合を除き、A以外の要素を主要な構成要素のひとつとするものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。同様に、「酸化シリコン膜」、「酸化シリコン系絶縁膜」等と言っても、比較的純粋な非ドープ酸化シリコン(Undoped Silicon Dioxide)だけでなく、FSG(Fluorosilicate Glass)、TEOSベース酸化シリコン(TEOS-based silicon oxide)、SiOC(Silicon Oxicarbide)またはカーボンドープ酸化シリコン(Carbon-doped Silicon oxide)またはOSG(Organosilicate glass)、PSG(Phosphorus Silicate Glass)、BPSG(Borophosphosilicate Glass)等の熱酸化膜、CVD酸化膜、SOG(Spin ON Glass)、ナノクラスタリングシリカ(Nano-Clustering Silica:NSC)等の塗布系酸化シリコン、これらと同様な部材に空孔を導入したシリカ系Low-k絶縁膜(ポーラス系絶縁膜)、およびこれらを主要な構成要素とする他のシリコン系絶縁膜との複合膜等を含むことは言うまでもない。
【0031】
また、酸化シリコン系絶縁膜と並んで、半導体分野で常用されているシリコン系絶縁膜としては、窒化シリコン系絶縁膜がある。この系統の属する材料としては、SiN,SiCN,SiNH,SiCNH等がある。ここで、「窒化シリコン」というときは、特にそうでない旨明示したときを除き、SiNおよびSiNHの両方を含む。同様に、「SiCN」というときは、特にそうでない旨明示したときを除き、SiCNおよびSiCNHの両方を含む。
【0032】
なお、SiCは、SiNと類似の性質を有するが、SiONは、むしろ、酸化シリコン系絶縁膜に分類すべき場合が多い。
【0033】
3.同様に、図形、位置、属性等に関して、好適な例示をするが、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、厳密にそれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0034】
4.さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0035】
5.「ウエハ」というときは、通常は半導体装置(半導体集積回路装置、電子装置も同じ)をその上に形成する単結晶シリコンウエハを指すが、エピタキシャルウエハ、SOI基板、LCDガラス基板等の絶縁基板と半導体層等の複合ウエハ等も含むことは言うまでもない。
【0036】
6.本願において、ウエハに対する処理を「連続的に実行する」とは、たとえば、バッチを25枚として、バッチ単位で処理するとすれば、第1番目のウエハがロードロック室からスパッタリング成膜室へ移動すると同時又はその後続いて、第2番目のウエハがロードロック室に導入され、第2番目のウエハがロードロック室からスパッタリング成膜室へ移動すると同時又はその後続いて、第3番目のウエハがロードロック室に導入される言う具合に、できるだけロードロック室やスパッタリング成膜室の各成膜領域の利用率を高めるように連続的又は断続的に処理することを言う。なお、種々の都合で適宜、処理の間隙や待機時間等を設けてもよい。
【0037】
7.本願において、処理チャンバ、ロードロック室等に関して、「空間的に独立」とは、真空室としたときに独立していることであり、幾何学的には、当該チャンバ(空間領域1)とそれ以外の領域(空間領域2)間にマクロな断面積を有する空間通路(「マクロ空間通路」という)がないことを言う。また、「空間的に一体」とは、真空室としたときに、実質的に連結した一つの真空室を成し、全体の気圧が定常状態ではほぼ均一であることをいい、幾何学的には、当該空間領域内の任意の2点がその内部のみを通過するマクロ空間通路により連結可能なことを言う。ただし、これらの場合において、マクロ空間通路の途中には、真空ポンプ等の両端に顕著な圧力差を生ずる要素がないことを条件とする。
【0038】
8.本願において、「パワー系半導体装置」とは、たとえば、パワーMOSFET,IGBT,LDMOSFET(Laterally Diffused MOSFET)等、および、これらのうち少なくとも一つを有する集積回路を指す。「パワーMOS系半導体装置」、「IGBT系半導体装置」、「LDMOS系半導体装置」等についても同様である。
【0039】
9.本願において、「ウエハをサセプタ内に収容した状態」とは、ウエハがサセプタに接触して保持されている状態及びウエハがサセプタに接触していないが、ウエハがサセプタ内にある状態を言う。すなわち、ウエハの主要部がサセプタのウエハ載置部と上端部の間にあることをいう。すなわち、「サセプタへの収容状態」である。なお、サセプタに接触して収容されている状態を特に「サセプタへの載置状態」という。
【0040】
また、「ウエハをサセプタ上に、その自重によって保持した状態」とは、ウエハがサセプタ内に収容され、そのウエハがサセプタに接触して保持され、且つ、上方からのウエハ押さえ爪、ウエハ押さえ治具等の機械的固定手段や、下方からの真空チャック、静電チャック等の吸着手段によって強制的に固定されていない状態を言う。すなわち、「自由載置状態」である。
【0041】
更に、サセプタへの載置状態か、単なるサセプタへの収容状態かに係らず、機械的固定手段や吸着手段によってウエハが束縛されている状態を「束縛状態」という。ここで、機械的固定手段による束縛を「機械束縛」と、吸着手段による束縛を「吸着束縛」という。
【0042】
従って、「自由載置状態」は、「サセプタへの非束縛載置状態」ということができる。
【0043】
10.本願に於いて、円環状又はリング状ウエハサセプタ(または単にサセプタ)について、「円環の放射状垂直断面」というときは、図4のX−O断面をいう。すなわち、円環の中心から放射状に延びる直線を含む半平面で円環を切断したときに断面をいう。なお、円環状又はリング状といっても、完全性を要求しないのはいうまでもない。
【0044】
11.本願に於いて、「薄膜化されたウエハ」または「薄膜ウエハ」というときのウエハの厚さは、280マイクロメートル以下である。また、薄膜ウエハについて、「補強板」というときは、ウエハと同様な面積と形状を有する板状部材であって、薄膜化された時点のウエハの厚さよりも厚いものをいう。
【0045】
〔実施の形態の詳細〕
実施の形態について更に詳述する。各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0046】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するために、ハッチングを付すことがある。
【0047】
なお、ウエハの裏面に対するメタル成膜技術について開示した先行特許出願としては、たとえば日本特願第2009−299072号(日本出願日:2009年12月29日)がある。
【0048】
1.本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法により製造したパワーMOSFETの一例の説明(主に図14)
ここでは、パワー系半導体装置の一例としてパワーMOSFET(用途の一例を挙げるとすれば、たとえば、PC電源用DC−DCコンバータのハイサイドスイッチ)を例に取り具体的に説明するが、本願の発明はそれに限定されることなく、たとえば、IGBT等にも適用できることは言うまでもない。
【0049】
ここでは、チップサイズが、縦2ミリメートル、横3ミリメートル程度のデバイスを例にとり具体的に説明するが、本願発明はそれに限定されるものではなく、正方形又は長方形等の各種のサイズのチップ形状のデバイスに適用できることは言うまでもない。
【0050】
図14は、本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法により製造されたパワーMOSFETの一例を示すデバイス上面図である。これに基づいて、本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法により製造したパワーMOSFETの一例を説明する。
【0051】
図14に示すように、正方形又は長方形の板状のシリコン系半導体基板(個々のチップに分割する前はウエハである)上に素子を形成したパワーMOSFET素子チップ8(トレンチゲートパワーMOS型半導体装置)は中央部にあるソースパッド領域11(アルミニウム系パッド)が主要な面積を占めている。その下には、それらの幅(またはピッチ)よりも十分長く延びる帯状ゲート電極(柱状トレンチゲート電極に対応)と帯状ソースコンタクト領域が交互に多数形成された帯状繰り返しデバイスパターン領域R(リニアセル領域)がある。より正確には、リニアセル領域Rは、ソースパッド領域11の下方のほぼ全体に広がっており、破線で囲った部分はその一部である。このリニアセル領域Rの周辺には、ゲート電極を周辺から外部に引き出すゲートパッド領域13がある。更にその周りには、アルミニウムガードリング19が設けられている。そして、チップ8の最外周部はウエハをダイシング等により分割する際の領域、すなわち、スクライブ領域14である。
【0052】
2.本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法における関連するデバイス断面プロセスフローの概要説明(主に図15から図24)
このセクションでは、0.15マイクロメートルプロセスのリニアトレンチゲート型パワーMOSFETの例について、図15から図24に基づいて、セクション1における図14の帯状繰り返しデバイスパターン領域切り出し部分(リニアセル領域)Rに対応するデバイス断面等について、プロセスフローを説明する。
【0053】
以下では、パワーMOSFETの一例として、トレンチゲート型パワーMOSFETを例に取り具体的に説明するが、本願の発明はそれに限定されることなく、たとえば、プレーナ型Vertical−MOSFET、LD−MOSFET(用途の一例を挙げるとすれば、たとえば、携帯電話等のアンテナモジュール等のハイパワーアンプ)等にも適用できることは言うまでもない。
【0054】
図15は、本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(ソースコンタクト溝形成用レジストパターン形成工程)である。図16は本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(ソースコンタクト溝形成工程)である。図17は本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(ソースコンタクト溝形成用レジストパターン除去工程)である。図18は本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(ソースコンタクト溝延長工程)である。図19は本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス上面図(p+ボディコンタクト領域導入工程)である。図20は本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部(図19のX−X’断面に対応する)のデバイス断面フロー図(p+ボディコンタクト領域導入工程)である。図21は本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(バリアメタル膜成膜工程)である。図22は本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(アルミニウム系メタル膜成膜工程)である。図23は本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(バックグラインディング工程)である。図24は本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるトレンチゲートセル部のデバイス断面フロー図(裏面多層メタル膜成膜工程)である。
【0055】
ここでは、200ファイのn+型シリコン単結晶ウエハ(シリコン系ウエハ)にn型エピタキシャル層(たとえばエピタキシャル層の厚さは、4マイクロメートル程度)を形成したn型エピタキシャルウエハ1を原材料ウエハとして使用する例を説明するが、ウエハの径は300ファイでも450ファイでも、その他(たとえば、n型シリコン単結晶ウエハにバックグラインディング後に裏面にn+型を形成してもよい)でもよい。また、ウエハの導電型はp型等でもよい。更に、ウエハの形式はエピタキシャルウエハに限らず、他の半導体基板や絶縁性基板等であってもよい。また、必要があれば、シリコン系以外の半導体ウエハ又は基板であってもよい。
【0056】
図15に示すように、半導体ウエハ1は、主にn+シリコン基板部1sとエピタキシャル層1eからなり、エピタキシャル層1e内には、もともとのn型エピタキシャル層であるn型ドリフト領域2があり、その上部には、p型チャネル領域(p型ベース領域)3、n+ソース領域4等が形成されている。エピタキシャル層1eから上部が突出するように、複数のトレンチゲート電極(ポリシリコン電極)6が周期的に設けられており、各トレンチゲート電極6の中下部周辺には、ゲート絶縁膜7が設けられている。半導体ウエハ1のデバイス面側1aには、層間絶縁膜21が形成されており、各トレンチゲート電極6を完全にカバーしている。この層間絶縁膜21としては、下層から、たとえば60nm程度の厚さを有する窒化シリコン膜(窒化シリコン系絶縁膜)、300nm程度の厚さを有するPSG膜(酸化シリコン系絶縁膜)、95nm程度の厚さを有するSOG膜(酸化シリコン系絶縁膜)等からなる多層絶縁膜を例示することができる。
【0057】
層間絶縁膜21上には、加工のためのレジスト膜9が形成されている。このレジスト膜9をエッチングマスクとして、ドライエッチングを実行すると、図16に示すように、凹部(ソースコンタクト溝)22が形成される。次に、不要になったレジスト膜9を除去すると図17に示すように状態となる。
【0058】
次に、パターニングされた層間絶縁膜21をエッチングマスクとして、更にドライエッチングを実行すると、図18に示すように、凹部(ソースコンタクト溝)22がp型チャネル領域3の上端まで延長される。
【0059】
この時点の図18に対応する(図20にも対応している)デバイス上面(ウエハ上面)を図19に示す。図19において、セル繰り返し単位領域Gを図20にも対応して示す。
【0060】
図18に続き、図20に示すように、ソースコンタクト溝22(たとえば溝底幅300nm程度、深さ850nm程度、アスペクト比2以上、5以下程度であり、平均的には、2.8程度である)を通して、イオン注入により、p型チャネル領域3の表面領域に、p+ボディコンタクト領域5を導入する。
【0061】
次に、図21に示すように、半導体ウエハ1のデバイス面側1aのほぼ全面に、バリアメタル膜23を形成する。なお、バリアメタル膜23は、たとえば、下層バリアメタル膜、上層バリアメタル膜等で構成され、下層バリアメタル膜(一部はシリサイド化メタル)としては、チタンのほか、TiW,Ta,W,WSi等が使用可能である。また、上層バリアメタル膜としては、窒化チタンのほか、TiW,TaN等が使用可能である。
【0062】
続いて、シリサイデーションアニールを実施する。シリサイデーションアニールを実施すると、シリコン部材と接しているチタン膜部分が、その全厚にわたりチタンシリサイド化するが、図示が煩雑になるので、これらの変化は表示しない。
【0063】
次に、図22に示すように、バリアメタル膜23上のほぼ全面に、ソース電極となるアルミニウム系メタル膜24を成膜する。なお、ソース電極材料としては、ここで説明するシリコン添加アルミニウム系メタル(AlSi)のほか、AlCu,純Al、銅系メタル部材等が使用可能である。
【0064】
その後、アルミニウム系メタル膜24をパターニングし、その上に、ファイナルパッシベーション絶縁膜(たとえば2マイクロメータ程度の厚さを有する塗布系ポリイミド樹脂膜等の有機系絶縁膜)を形成して、必要な開口を形成する。
【0065】
次に、図23に示すように、バックグラインディング処理(研削処理)を施し、元のウエハ厚さ(たとえば750マイクロメートル程度)をたとえば100から280マイクロメートル程度(すなわち、300マイクロメートル未満)まで薄くする。なお、薄膜化するウエハの厚さは、後の処理が可能であれば、更に薄くすることができる。
【0066】
次に、図24に示すように、ウエハ1の裏面1bに多層メタル膜15(裏面メタル電極膜)をスパッタリング成膜により、成膜する。裏面メタル電極膜15は、ウエハ1に近い側から、たとえば、ニッケルシリサイド膜15s(たとえば、組立工程でも強度確保等のために形成される)、裏面チタン膜15a(金およびニッケルの拡散防止層)、裏面ニッケル膜15b(チップボンディング材との接着層)、裏面金膜15c(ニッケルの酸化防止層)等からなる。その後、個々のチップに分割すると、図14に示すようなデバイスとなる。
【0067】
このウエハ裏面多層メタル成膜プロセスは、次セクションにおいて、詳しく説明する。
【0068】
3.本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法に使用するメタル成膜装置等の説明(主に図1から図12)
このセクションでは、前セクションの図24で説明したウエハ裏面多層メタル成膜プロセスに使用するウエハ処理装置(多層スパッタリング成膜装置)について更に説明する。なお、200φウエハ用の市販の好適な装置としては、株式会社アルバック(ULVAC,Inc.)の多層スパッタリング成膜装置SRH−420等を例示することができる。
【0069】
以下に説明する装置の特徴は、通常、薄膜ウエハ(厚さ280マイクロメートル程度以下のウエハ)の処理で使用するウエハを貼り付けて補強するための薄膜化されたウエハよりも厚いガラス板等の補強板を使用せず、多層金属膜形成プロセス等を実行できるところにある。また、加熱処理等を非束縛状態で処理できるため、押さえ爪や押さえ治具等の仕様による温度分布の不均一を回避できるメリットもある。
【0070】
図1は本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法に使用するウエハ裏面多層メタル成膜装置の上面図である。図2は本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法に使用するウエハ裏面多層メタル成膜装置の上面図(図1においてターゲット切替機構を透明化して、その下の部分を見やすくしたもの)である。図3は図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置におけるウエハの移動の仕方を説明するための内部搬送ロボット、各ウエハステージ、ステージ上のウエハ、およびウエハサセプタの斜視図である。図4は図3のウエハサセプタの上面図である。図5は図4のX−X’断面に対応するウエハサセプタの断面図(内部搬送ロボットに保持されているとき)である。図6は図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置の冷却ウエハステージ63b、63cの正断面構造図である。図7は図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置のランプ加熱ウエハステージ63aの正断面構造図である。図8は図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置のロードロック室61の正断面構造図(脱ガス処理中)である。図9は図1および図2に示すウエハ裏面多層メタル成膜装置を見やすいように横長に展開したときの模式断面図である。図10は図9のウエハ裏面多層メタル成膜装置におけるマルチターゲット成膜処理領域62b部分周辺の拡大断面図である。図11は図9および図10に示すマグネトロン用マグネット群の下面拡大図である。図12は図9および図10に示すターゲット切替機構59の拡大断面図である。図13は本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセスのプロセスブロックフロー図である。これらに基づいて、本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法に使用するメタル成膜装置およびそれを用いたウエハ裏面多層メタル層成膜プロセス等を説明する。
【0071】
まず、図1から図12により、ウエハ裏面多層メタル成膜プロセスに使用する単一チャンバ型多層スパッタリング成膜装置51の構造等を説明する。図1または図2に示すように、単一チャンバ型多層スパッタリング成膜装置51は、ロードポート部52と成膜処理部53から構成されている。このロードポート部52には、被処理ウエハ1を収容したウエハ搬送容器またはウエハカセット54が置けるようになっており、被処理ウエハ1は、外部ロボット56の先端部56a(上面は弾性体パッドとなっている)によって、そのデバイス面1aを保持されて、リフトステージ50上に置かれ、その後、リフトステージ50が降下して、ウエハ1をウエハサセプタ65(金属または耐熱性無機材料)にセットする。ここで、必要であれば、ウエハ1の方位(ノッチまたはオリエンテーションフラットの方向)を合わせる。なお、サセプタ65の材質については、ステンレス等の金属または、石英、シリコン、SiC等の耐熱性無機材料が可能であるが、セクション4のような摂氏250度以上の加熱を伴うプロセスに於いては、ウエハ状の熱分布の均一化等の観点から耐熱性無機材料が好適である。また、耐熱性無機材料の中では、石英(耐熱性絶縁体)が、熱伝導率が低い点で特に有効である。従って、本願に於いては、特に、そうでない旨記載した場合を除き、サセプタ65は石英製である。
【0072】
成膜処理部53内には、ロードロック室61とスパッタリング成膜処理室57が設けられており、ロードロック室61は、その外部と空間的に独立可能となっている。スパッタリング成膜処理室57内には、単一ターゲット成膜処理領域62a、62cおよびマルチターゲット成膜処理領域62bが設けられており、これらに対応して、ランプ加熱ウエハステージ63aおよび冷却ウエハステージ63b、63cが設けられている。また、スパッタリング成膜処理室57内には、ロードロック室61に対応して、真空フランジ付きウエハステージ63dが設けられており、この真空フランジ付きウエハステージ63dおよびウエハステージ63a、63b、63c間でウエハ1をウエハサセプタ65とともに移送する内部搬送ロボット58が設けられている。
【0073】
更に、成膜処理部53には、マルチターゲット成膜処理領域62bのターゲットを切り替えるターゲット切替機構59(上部電極又はカソード)が設けられており、そこには、たとえば、チタンターゲット64t(非磁性ターゲット)、ニッケルターゲット64n(磁性ターゲット)等がセットされている。通常、このターゲット切替機構59、すなわち、ターゲット保持回転テーブルには、3枚のターゲットがセット可能となっており、ここでは、一つの空きポジション64xがある。
【0074】
次に、図3により、内部搬送ロボット58、ウエハサセプタ65、ウエハステージ63a、63b、63c等を更に説明する。図3に示すように、内部搬送ロボット58は、上下移動および両方向に回転可能となっており、4つのウエハサセプタ65(ウエハ1がセットされた)を同時に搬送可能となっている。このとき、ウエハ1は、その裏面1bを上にして、ウエハサセプタ65内に収容されている。各ステージ支持台55上のウエハステージ63a、63b、63cは、必要に応じて種々の構造をしており、たとえば、ロードロック室61(脱ガス室)用のウエハステージ63dには、Oリング60をセットできるフランジ部があり、ウエハ1の高さを上げるための金属ステージ99等が設けられている。
【0075】
次に、図4および図5(図4のX−X’断面)により、ウエハサセプタ65の詳細構造等を説明する。図4に示すように、ウエハサセプタ65は円環状の金属(たとえば、ステンレススチール)または耐熱性無機材料(たとえば、石英)で構成され、周辺に位置ずれ防止ノッチ65nが設けられており、搬送時および成膜処理時の位置ずれを防止している。ここでは、多層成膜プロセスが、全体として摂氏250度以上の処理を伴う場合には、たとえば石英ウエハ製のサセプタ65を用い、摂氏250度以上の処理を伴わない場合には、たとえばステンレススチール製(たとえばオーステナイト系非磁性ステンレススティール製)のサセプタ65を用いている。
【0076】
図5に内部搬送ロボット58によって保持された状態のウエハ1を保持したウエハサセプタ65の断面を示す。図5に示すように、ウエハ1はその裏面1bを上にむけた状態でウエハサセプタ65の内部平坦部により、その周辺部を保持されており、ウエハサセプタ65はその周辺部を内部搬送ロボット58の先端部によって保持されている。
【0077】
次に、非加熱ステージ63b、63cの断面構造を図6により説明する。図6に示すように、たとえば銅製の水冷ホルダ部66(冷却用ベース金属板)上の同じくたとえば銅製の金属スペーサ67を介して、内部に電極を有するセラミック製の静電チャック(Electrostatic chuck)68が設けられており、その上に、ウエハ1のデバイス面1aを傷つけないように、たとえばポリイミドフィルム等のウエハ表面保護層70が設けられている。ウエハサセプタ65はサセプタ位置決め用絶縁リング69aを介して冷却用ベース金属板66上に保持されており、その状態では、ウエハ1はウエハサセプタ65から離れて、ウエハ表面保護層70によって支えられている。
【0078】
次に、ランプ加熱ウエハステージ63aの断面構造を図7により説明する。図7に示すように、ステージ支持台55上に反射板73があり、この周辺には金属製のウエハホルダベース71があり、このウエハホルダベース71の開口部の上に石英窓98が設けられている。この石英窓98と反射板73の間には、ランプヒータ72が設けられている。ウエハホルダベース71上にはサセプタ位置決め用絶縁リング69bを介してウエハサセプタ65が置かれており、その中にウエハ1がその裏面1bを上に向けて保持されている。
【0079】
次に、ロードロック室61の断面構造(外部と遮断されている状態)を図8(図3参照)により説明する。図8に示すように、ロードロック室61は、それ以外の部分とOリング60を有するウエハゲート77と同様にOリング60を有する真空フランジ付きウエハステージ63dによって、遮断されている。ロードロック室61の上方には、ガス供給ライン76(ガス供給ノズル)が設けられており、その直下には反射板73、ランプヒータ72、石英窓98等から構成されたウエハ裏面加熱機構80も設けられている。真空フランジ付きウエハステージ63d上には、金属ステージ99を介して、ウエハサセプタ65が置かれている。このとき、ウエハ1はウエハサセプタ65に保持されており、ウエハ1と金属ステージ99は離れている。
【0080】
次に、図9により、ウエハ処理装置51(多層スパッタリング成膜装置)の真空系、ロードロック室(脱ガス室)61、各スパッタリング成膜処理室57、成膜処理領域62a、62b、62c等を更に説明する。図9に示すように、各ウエハステージ63a、63b、63c、63dの主要部はスパッタリング成膜処理室57内にあり、昇降可能となっており、ロードロック室61はウエハステージ63dの上昇によって、成膜処理室57と空間的に独立になるようにされている。一方、成膜処理領域62a、62b、62cもそれぞれ各ウエハステージ63a、63b、63cが上昇することによって、ウエハ1に対する処理が実施可能な状態になるが、各成膜処理領域62a、62b、62cと成膜処理室57のその他の部分は、空間的に独立ではなく、基本的にほぼ同一の気圧となっている。
【0081】
次に真空系について説明する。図9(なお、図9及び図10においては、図示の都合上、ウエハサセプタ65を省略している)に示すように、ロードロック室61はターボ分子ポンプ81、ドライ粗引きポンプ78等で構成された真空系(ロードロック真空系)で真空引きされる。このロードロック真空系が動作中は、ロードロック排気バルブ87および分子ポンプバルブ82が開状態である。このとき、通常、成膜処理室57の真空系(成膜処理室真空系)も動作状態である。成膜処理室真空系は主にクライオポンプ79で構成されており、このポンプの動作中は、メイン排気バルブ86が開状態であり、粗引きバルブ84、クライオポンプ排気バルブ85、ドライポンプバルブ83等は閉状態である。なお、クライオポンプ79による排気開始時の粗引きにおいては、メイン排気バルブ86およびクライオポンプ排気バルブ85を閉状態として、粗引きバルブ84、ドライポンプバルブ83等を開状態として、排気管88(真空排気系)を介してドライ粗引きポンプ78により粗引きを実行する。ここで、通常の状態では、分子ポンプバルブ82とドライポンプバルブ83は同時に開状態としない。
【0082】
次に、各成膜処理領域62a、62b、62cの構造を説明する。図9に示すように、成膜処理領域62a、62cは、成膜処理室57の内壁91が外部に向けて一部突出して円筒状の下方が開放された部屋状の区画(部屋状区画または円筒状区画)をその主要部としている。この円筒状区画内には、膜付着防止シールド75(使用時は接地電位にされる)が設けられており、円筒状区画の上部内側には、たとえばシリサイド膜形成用ニッケルターゲット64s(磁性ターゲット)、金ターゲット64a(非磁性ターゲット)、またはそれを取り付ける上部電極(カソード電極)が、それぞれ設けられている。更に、円筒状区画の上部外側には、マグネトロン用マグネット群(マグネット搭載回転板)74がそれぞれ設けられている。
【0083】
これと同様に、図9に示すように、成膜処理領域62bは、成膜処理室57の内壁91が外部に向けて一部突出して円筒状の下方が開放された部屋状の区画(部屋状区画または円筒状区画)をその主要部としている。この円筒状区画内には、同様に膜付着防止シールド75(使用時は接地電位にされる)が設けられている。ここで、成膜処理領域62bは、複数のターゲットを切り替えて使用するため、円筒状区画に空間的に連結して、ターゲット切替機構59(上部電極又はカソード)を収容するための拡張区画90が設けられている。ここには、先と同様に、マグネトロン用マグネット群(マグネット搭載回転板)74や、カソードを構成するチタンターゲット64t(非磁性ターゲット)、ニッケルターゲット(磁性ターゲット)64nが設置されているが、構造が複雑であるので、拡大した図10により説明する。
【0084】
図10に示すように、この部分の成膜処理室57の壁面(たとえばアルミニウム系金属製)は、内壁91と外壁89の2重構造となっており、その間にターゲット切替機構59が収容され、水平に回転可能となっている。ターゲット切替機構59は、複数のターゲットをその下面に保持して回転可能なターゲット保持板、その回転機構等から構成されている。外壁89の外側には、マグネット-ターゲット間隔壁92を介して、マグネトロン用マグネット群74(マグネット搭載回転板)が設けられており、ウエハ処理時には回転機構により回転するようになっている。マルチターゲット成膜処理領域62bの円筒状区画の上方側面側には、ガス供給用のノズル76(ガス供給ライン)が設けられている。
【0085】
なお、他の成膜処理領域62a、62cの構造も図10の単一ターゲット成膜処理領域周辺部Lとほぼ同様の構造をしている。ただし、他の成膜処理領域62a、62cの場合は、ターゲットは移動せず、固定されている。その他の部分、すなわち、膜付着防止シールド75、ガス供給用のノズル76、マグネトロン用マグネット群74、マグネット-ターゲット間隔壁92(たとえばオーステナイト系非磁性ステンレススティール製)等はほぼ同様の構造をしている。
【0086】
次に、図10その他のマグネトロン用マグネット群74(図9の各マグネトロン用マグネット群74について同じ)の詳細構造を図11(マグネット搭載回転板の下面拡大図)により説明する。図11に示すように、金属板74(たとえばオーステナイト系非磁性ステンレススティール製)上に円形の永久磁石94n,94nが、たとえば回転中心93を共有する2つの同心円上に”C”の字状に配列されている。このとき、永久磁石94n,94nは、同心円の円周に沿って、表面が交互にN極、S極となることによって封じ込め磁場を形成するように配列されている。
【0087】
次に、図10のターゲット切替機構59の主要部であるターゲット搭載回転板の詳細断面構造を図12により説明する。図12に示すように、ターゲット搭載回転板59(たとえば銅製)には、たとえば3個の円形開口が設けられており、必要に応じて、そこにターゲットを取り付ける。ここでは、磁性ターゲットとしてニッケルターゲット64n(たとえば直径290ミリメートル程度、厚さ5ミリメートル程度)を、非磁性ターゲットとしてチタンターゲット64t(たとえば直径304ミリメートル程度、厚さ12ミリメートル程度)を取り付けている。各ターゲットはバッキングメタルプレート95(第1及び第2のバッキングプレートであり、たとえば銅製、直径360ミリメートル程度、厚さ5ミリメートル程度)を介して、取り付けられている。マグネットターゲット間距離D(マグネトロン用マグネット群の下端からターゲットの下面までの距離)は、ニッケルターゲット64n(磁性ターゲット)については、たとえば22ミリメートル程度、チタンターゲット64t(非磁性ターゲット)については、たとえば29ミリメートル程度を例示することができる。
【0088】
なお、磁性ターゲット64nにおいては、周辺で磁場が弱くなる場合があるので、その場合はターゲットの径をバッキングプレートの径よりも小さめにするとそのような問題を回避することができる。また、そのように径を小さくしたターゲットの周辺には、不所望な膜が付着する場合があるので、その場合は膜付着防止のため付着防止リング97(たとえばオーステナイト系非磁性ステンレススティール製)を設けるとそのような問題を回避することができる。もちろん、これらの対策は必須ではない。
【0089】
また、磁性ターゲット64n側の下面において、磁場を十分に確保しようとすると、非磁性ターゲット64t側の下面において、磁場が強くなりすぎる場合があるので、その場合はバッキングプレート95と非磁性ターゲット64tの間にスペーサ板96(スペーサプレートであり、たとえば銅製、直径304ミリメートル程度、厚さ0.5ミリメートル程度)を介在させるとそのような問題を回避することができる。もちろん、これらの対策は必須ではない。
【0090】
4.本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセス(パワーMOS系デバイスの例)等の説明(主に図13により、図1から図12、図23および図24を参照)
このセクションでは、セクション3で説明した多層スパッタリング成膜装置51を使用したウエハ裏面多層メタル層成膜プロセスについて、パワーMOS系デバイス(裏面電極構造は図24に示す)を例にとり説明する。
【0091】
図13は本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセスのプロセスブロックフロー図である。これに基づいて、本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセス等を説明する。
【0092】
図13および図1に示すように、図23の状態の被処理ウエハ1がウエハ搬送容器54(たとえば、ウエハ1の裏面1bを上に向けて収容されている)に収容された状態で、多層スパッタリング成膜装置51のロードポート部52に受け入れられると、処理対象ウエハ1は外部ロボット56によって、ウエハ搬送容器54から取り出されて、その裏面を上に向けた状態でリフトステージ50上に置かれる。その後、リフトステージ50が降下して、ウエハ1をウエハサセプタ65内に収容する(サセプタへの搭載工程101)。この時点のウエハ1のサセプタ65への収容状態は、自由載置状態である。
【0093】
次に、図8に示すように、ウエハ1を載せたウエハサセプタ65は、ウエハゲート77を介して、外部ロボット56によって、ロードロック室61内に導入され、ウエハ1の裏面1bを上にむけた状態で、ウエハステージ63d上に置かれる(ロードロック室への導入工程102)。この時点のウエハ1のサセプタ65への収容状態も、自由載置状態である。このとき、ロードロック室61内に先行して処理された別のウエハがあるときは、その別のウエハの取出しを先に行う。以上のサセプタおよびロードロック室へのセット並びにサセプタおよびロードロック室からの取り出しに要する時間は、たとえば、1分40秒程度である。
【0094】
次に、ウエハゲート77が閉じて、ロードロック室61の真空引きが開始されることにより、脱ガス処理103が実行される。具体的には、先ず、真空引きにより、真空度を、たとえば5x10−3パスカル程度以上に上昇させる(所要時間30秒程度)。続いて、ランプ72が点灯して、ウエハ1の温度を摂氏200度程度まで上昇させる。この状態(ランプ加熱および真空引きは継続)で脱ガス処理(ウエハ上の水分を除去する処理)をたとえば50秒程度実行する。脱ガス処理103が終了すると、ランプ72が消灯する。以上より、ロードロック室61に関する処理時間は、ウエハ当たり、たとえば3分程度(「ロードロック関連単位処理時間」という)である。
【0095】
次に、図8において、ウエハステージ63dが降下して(このとき他のステージ63a、63b、63cも同時に降下する)、図3に示す要領で、内部搬送ロボット58によって、ウエハ1を載せたウエハサセプタ65は、ウエハステージ63a(この場合は待機ステージ)に移送される。このとき、各ウエハステージ63a、63b、63cに他のウエハを載せたウエハサセプタ65がある場合は、それらも同時に次のステージに移送される。
【0096】
図7および図9に示すように、ウエハサセプタ65上に載せられたウエハ1がランプ加熱ウエハステージ63a上に置かれると、ウエハステージ63aが上昇して、ランプヒータ72が点灯して、予備過熱工程(ウエハ温度は、たとえば摂氏350度程度(摂氏250度より高い温度)、予備加熱時間60秒程度)が実行される。なお、通常、この時点でウエハ1の反りが最大となる。この時点のウエハ1のサセプタ65への収容状態は、自由載置状態である。
【0097】
続いて、そのままの状態でシリサイド形成用のニッケル膜(第1のメタル膜)をスパッタリング成膜するNi成膜工程111(図13)が実行される。成膜条件としては、たとえば、膜厚50nm程度,処理時間10秒程度、DCパワー4キロワット程度、アルゴン流量10sccm程度、ガス圧0.4パスカル程度、ウエハ温度摂氏350度程度を例示することができる。
【0098】
続いて、DCパワーがオフされる外はそのままの状態で、アロイ処理112(図13)すなわち、ニッケルシリサイド膜15s(図24)のシリサイド化処理が実行される。アロイ処理条件としては、たとえば、処理時間60秒程度、アルゴン流量10sccm程度、ガス圧0.4パスカル程度、ウエハ温度摂氏350度程度を例示することができる。
【0099】
アロイ処理112が終了すると、ランプヒータ72が消灯され、その状態で他のウエハの処理が完了するのを待つ(「予備待機工程」という)。この予備待機工程の間、アルゴンガス等のプロセスガスを停止すると、スパッタリング成膜処理室57の全体としての真空度が上昇することがある。このような場合は、必須ではないが、成膜プロセス中と同程度のアルゴンガス等のプロセスガス(たとえば、この場合は、アルゴン流量10sccm程度)を流し続けると、そのような問題を回避することができる。予備待機工程が終了すると、先と同様に、他の処理中のウエハの移送と同時に、ウエハサセプタ65に載せられた状態でウエハ1は、内部搬送ロボット58によって、冷却ウエハステージ63b上へ移送される。
【0100】
次に、図9に示す冷却ウエハステージ63bが上昇して、マルチターゲット成膜処理領域62bでのスパッタリング成膜によるチタン膜の成膜が実行される(図13のチタン成膜工程105)。成膜条件としては、たとえば、膜厚100nm程度,処理時間15秒程度、DCパワー8キロワット程度、アルゴン流量15sccm程度、ガス圧0.3パスカル程度を例示することができる。ここで、ウエハステージ等の設定は、静電チャックオフ、室温で水冷状態である。チタン成膜工程105が終了すると、DCパワーは一度オフされる。
【0101】
続いて、ウエハステージ等の設定を室温で水冷状態のまま、静電チャックをオン状態(印加電圧はたとえば2キロボルト程度)にするとともに、ターゲットをニッケルターゲット64nに切り替えて、スパッタリング成膜によるニッケル膜(第2のメタル膜)の成膜を実行する(図13のニッケル成膜工程106)。成膜条件としては、たとえば、膜厚200nm程度,処理時間35秒程度、DCパワー4キロワット程度、アルゴン流量10sccm程度、ガス圧0.4パスカル程度を例示することができる。この時点のウエハ1のサセプタ65への収容状態は、束縛状態である。
【0102】
このニッケル成膜工程106においては、図6に示すように、正常であれば、サセプタ65から、少し浮き上がった状態で(ウエハ1はサセプタ65に収容されている)、冷却ウエハステージ63bの静電チャックにより、吸着される。このとき、サセプタ65におけるウエハ1の配置が正常でないと、この吸着動作によって、ウエハが破壊される恐れがある(図30参照)。
【0103】
ニッケル成膜工程106が終了すると、DCパワー、静電チャックの印加電圧はオフされ、その状態で他のウエハの処理が完了するのを待つ(「予備待機工程」という)。この予備待機工程の間、アルゴンガス等のプロセスガスを停止すると、スパッタリング成膜処理室57の全体としての真空度が上昇することがある。このような場合は、必須ではないが、成膜プロセス中と同程度のアルゴンガス等のプロセスガス(たとえば、この場合は、アルゴン流量15sccm程度)を流し続けると、そのような問題を回避することができる。なお、この点は、先の単一ターゲット成膜処理領域62a(待機領域)における待機工程104でも同じで、たとえばアルゴン流量10sccm程度を流し続けると、同様にそのような問題を回避することができる。マルチターゲット成膜処理領域62bにおける予備待機工程が終了すると、先と同様に、他の処理中のウエハの移送と同時に、ウエハサセプタ65に載せられた状態でウエハ1は、内部搬送ロボット58によって、冷却ウエハステージ63c上へ移送される。
【0104】
次に、図9に示すように、冷却ウエハステージ63cが上昇して、単一ターゲット成膜処理領域62cにおけるスパッタリング成膜による金成膜工程107(図13)が実行される。成膜条件としては、たとえば、膜厚100nm程度,処理時間15秒程度、DCパワー2キロワット程度、アルゴン流量15sccm程度、ガス圧0.6パスカル程度を例示することができる。金成膜工程107が終了すると、DCパワーはオフされ、その状態で他のウエハの処理が完了するのを待つ(「予備待機工程」という)。この予備待機工程の間、アルゴンガス等のプロセスガスを停止すると、スパッタリング成膜処理室57の全体としての真空度が上昇することがある。このような場合は、必須ではないが、先と同様に、成膜プロセス中と同程度のアルゴンガス等のプロセスガス(たとえば、この場合は、アルゴン流量15sccm程度)を流し続けると、そのような問題を回避することができる。単一ターゲット成膜処理領域62cにおける予備待機工程が終了すると、先と同様に、他の処理中のウエハの移送と同時に、ウエハサセプタ65に載せられた状態でウエハ1は、内部搬送ロボット58によって、ロードロック室61で使用するウエハステージ63d上へ移送される。
【0105】
次に、図8に示すように、ウエハステージ63dが上昇して、ロードロック室61が外部から空間的に独立した状態になると、ガス供給ライン76からエアが供給されて、外気と同一気圧になる。そこで、ウエハゲート77が開き、図1に示す外部ロボット56がウエハ1を載せたウエハサセプタ65をロードポート部52上へ排出する(図13のロードロック室からの排出工程108)。そこで、リフトステージ50が上昇して、ウエハ1を持ち上げた状態で、外部ロボット56がウエハ1をウエハ搬送容器54へ移送する(図13のサセプタからの取り出し工程109)。これで、多層メッキ単位サイクル100(図13)を一巡して、サセプタへ搭載工程101の開始前に戻ったことになる。
【0106】
通常の量産工程では、このようなサイクルを順次繰り返して、多数のウエハの処理をできるだけ各ステージ63a、63b、63c、63dの空き時間が短くなるように、連続的に実行する。
【0107】
5.本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセス等に使用する装置構造の詳細説明(主に図25から図34)
このセクションでは、セクション4のプロセスを実行するに当たり、ウエハ1のベンドによる各種トラブルを回避するためのセクション3で説明した成膜等装置、特に図4および図5のウエハサセプタ65(サセプタ)の断面形状の工夫について説明する。
【0108】
なお、以下では、主に200Φ(径が200ミリメートル程度)ウエハついて、説明するが、ベンド量の管理は、ウエハの径に依存せず管理すべきものであるので、以下の論議は、ウエハの径に係らず当てはまると考えられる。
【0109】
このセクションでは、主にナイフエッジウエハ(エッジトリミングしていないウエハ)を主に扱うが、エッジトリミングしたウエハでもよいことは言うまでもない。
【0110】
図25は図7のランプ加熱ウエハステージ63aおよびその周辺の更に詳細を説明するための装置断面図である。図26は図25の加熱用ステージ端部切り出し部Cの拡大断面図である。図27はランプ加熱ウエハステージ63a上におけるウエハとウエハサセプタの各部の関係を説明するためのウエハおよびその周辺のサセプタの平面図である。図28は本願の前記前記一実施の形態の半導体装置の製造方法における成膜および加熱プロセスに使用するリング状ウエハサセプタの放射状垂直断面(図26のサセプタ周辺切り出し部Pおよび図27のA−A’断面すなわち放射状垂直断面に対応する)の主要角度および主要寸法の一例を示すサセプタ部分断面図(一部に平坦なウエハをその自重によって保持した状態を示す。ここでは、エッジトリミングしたウエハを示す)である。なお、長さの単位はミリメートルで、角度の単位は度で表示する。図29は本願の前記前記一実施の形態の半導体装置の製造方法における成膜および加熱プロセスに使用するリング状ウエハサセプタの放射状垂直断面(図26のサセプタ周辺切り出し部Pおよび図27のA−A’断面すなわち放射状垂直断面に対応する)の断面構造の一例を示すサセプタ部分断面図(一部に平坦なウエハをその自重によって保持した状態を示す。ここでは、エッジトリミングしていないウエハを示す)である。図30はウエハのずれによって起こる問題を説明するための図27のA−F断面に対応する冷却ウエハステージ63c上におけるサセプタ等の全体断面図である。図31は本願の前記前記一実施の形態の半導体装置の製造方法における成膜および加熱プロセスに使用するリング状ウエハサセプタの放射状垂直断面(図26のサセプタ周辺切り出し部Pおよび図27のA−A’断面すなわち放射状垂直断面に対応する)の断面構造の一例を示すサセプタ部分断面図(一部に湾曲したウエハをその自重によって保持した状態を示す。ここでは、エッジトリミングしていないウエハを示す)である。図32はベンド量が6ミリメートルの200Φウエハを例にとり、側方内面(第2の上側表面)と垂直面のなす角Θ1(テーパ角度)と湾曲したウエハ端部とサセプタ内面のクリアランスCBの関係を例示した説明図である。図33は各ベンド量および側方内面(第2の上側表面)と垂直面のなす角Θ1(テーパ角度)に対するサセプタ内面のクリアランスCBの関係を整理した相互関係説明図である。図34はベンド量が6ミリメートルの200Φウエハを例にとり、側方内面(第2の上側表面)と垂直面のなす角Θ1(テーパ角度)と湾曲したウエハ端部とサセプタ内面のクリアランスCBの関係をプロットしたデータプロット図(図32に対応)である。これらに基づいて、本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法におけるウエハ裏面多層メタル層成膜プロセス等に使用する装置構造の詳細を説明する。
【0111】
図7のランプ加熱ウエハステージ63aおよびその周辺の更に詳細構造を図25に示す。図25に示すように、ステージ支持台55上に反射板73があり、この周辺には金属製のウエハホルダベース71があり、このウエハホルダベース71の開口部の上に石英窓98が設けられている。この石英窓98と反射板73の間には、ランプヒータ72が設けられている。ウエハホルダベース71上にはサセプタ位置決め用絶縁リング69bを介してウエハサセプタ65が置かれており、その中にウエハ1がその裏面1bを上に向けて保持されている。すなわち、ウエハ1はサセプタ65上において、自由載置状態にある。
【0112】
ウエハ1の側方は、一定の距離を置いて成膜処理室の内壁91で取り巻かれており、ウエハ1の上方は、一定の距離を置いて成膜処理室の外壁89で覆われている。成膜処理室の外壁89の内側には、バッキングメタルプレート95を介して、シリサイド膜形成用ニッケルターゲット64sが取り付けられており、バッキングメタルプレート95と成膜処理室の外壁89の間には、マグネトロン用マグネット群74が取り付けられている。シリサイド膜形成用ニッケルターゲット64sの周辺に取り付けられた膜付着防止シールド75は、リング状サセプタ65の全域外周近傍にまで延びている。更に図25の加熱用ステージ端部切り出し部Cの詳細を図26に示す。図26に示すように、リング状サセプタ65は、その下半部内側が、リング状のサセプタ位置決め用絶縁リング69bの上半部外側面とかみ合うことにより、リング状サセプタ65等の自重により固定される。
【0113】
次に、サセプタ65上において、自由載置状態にあるウエハ1とサセプタ65との平面的関係を図27(サセプタ65上に裏向きに置かれたウエハ1を下から、すなわち、表面1a側から見たもの)に示す。図27に示すように、ウエハ1には、通常、方位を確認するためにノッチ20が設けられており、ウエハ1(たとえば200Φウエハ)の表面1aの周辺から、たとえば2ミリメートル程度の領域は、周辺デバイス非形成領域16とよばれ、この領域にはチップ領域8は、形成されない。一方、ウエハ1の内部領域、すなわちデバイス形成領域10には、マトリクス状にチップ領域8がはみ出さない範囲で敷き詰められる。この図では、図を見やすくするために、一部にものチップ領域8を描いた。このデバイス形成領域10と周辺デバイス非形成領域16の境界17を一点鎖線で示す。ここで、最外部の一点鎖線は、サセプタ65のウエハ保持部41(第1の上側表面またはウエハ載置部)の最外周41pであり、正常な場合、ウエハ保持部最内周41iは、デバイス形成領域10と周辺デバイス非形成領域16の境界17よりも外側にある。また、通常、リング状のサセプタ65の中心とウエハ1の中心を一致させて載置した場合、ウエハ1の外周とサセプタ65のウエハ保持部41の最外周41pとの間には、たとえば、0.25ミリメートル程度(図28参照)の余裕CF(平坦なウエハ端部とサセプタ内面のクリアランス)が設けられている。
【0114】
次に、本願の前記一実施の形態の半導体装置の製造方法における多層メタル成膜プロセスに使用するリング状サセプタ65の図4のX−O断面に対応する断面、すなわち、円環の放射状垂直断面(図26のサセプタ周辺切り出し部Pにほぼ対応する)を図28に示し、その寸法、主要部の角度等の一例を示す。ここでは、ウエハの厚さを、たとえば、120マイクロメートル程度(0.12ミリメートル程度)とした。他の図では、主にエッジトリミングしていないウエハを図示したが、この図に於いては、参考として、エッジトリミングしたウエハを図示した。
【0115】
次に、図28にほぼ対応する図26のサセプタ周辺切り出し部Pの拡大断面図を図29(図示したのは、エッジトリミングしていないウエハである)に示す。なお、リング状サセプタ65の円環の放射状垂直断面は、この回転角で切っても、外周の一部(図4の位置ずれ防止ノッチ65n)を除いて、基本的に同一である。図29に示すように、リング状サセプタ65の内、ウエハ1と必ず接触する部分は、ウエハ保持部またはウエハ載置部41(第1の上側表面)であり、通常、水平に近い面を構成している。
【0116】
このウエハ載置部41(第1の上側表面)に続いて、この外側にある上側表面が側方内面42(第2の上側表面)であり、ウエハ載置部41よりも垂直に近い傾斜を持っている。この側方内面42(第2の上側表面)と垂直面のなす角をテーパ角度Θ1(または第1の角度)という。
【0117】
この側方内面42(第2の上側表面)は、サセプタ65の上端部65t(上端水平面)まで続いても良い。その場合は、上方内面がない場合の輪郭Tのようになる。
【0118】
一方、中間に、上方内面43(第3の上側表面)のように、側方内面42(第2の上側表面)よりも水平に近い付加的な面を介在させることもできる。このような付加的な面を介在させると、ウエハ1の周辺部におけるスパッタリング成膜時の膜厚の低下を防止することができる。また、この場合に於いて、更に、側方内面42(第2の上側表面)と上方内面43(第3の上側表面)の間に、側方内面と上方内面に面取りがある場合の輪郭Sで示すようにラウンド部(面取り部)を設けても良い。このような、上方内面43(第3の上側表面)と水平面のなす角を上方切り取り角度Θ2という。上方切り取り角度Θ2は、たとえば、13度程度(範囲としては、8度から40度程度)とすることができるが、上記の効果を達成するには、上端部65t(上端水平面)と上方内面43(第3の上側表面)の境界を膜付着防止シールド75の内端75i付近に位置させることが有効である。一方、側方内面42(第2の上側表面)と上方内面43(第3の上側表面)の境界の高さと、上端部65t(上端水平面)の高さの差は、最大ベンド量を6ミリメートルとすると、ウエハ載置部41(第1の上側表面)を基準とする側方内面42(第2の上側表面)と上方内面43(第3の上側表面)の境界の高さを最大ベンド量以上に確保する必要から、1ミリメートル程度(上限値は、2ミリメートル程度)とするのが好適である。
【0119】
なお、ウエハ載置部41(第1の上側表面)の下方の下方内側面44は、ウエハ載置部41の強度を確保(強度確保)するために、下からの加熱光の分布を乱さない範囲(加熱光強度分布)で、ウエハ載置部41(第1の上側表面)の下方を厚くすることが有効である。ここでは、たとえば下方内側面44の上半部をほぼ垂直として、下半部を後退するようにテーパを付けている。しかし、この部分は、強度確保と加熱光強度分布を考慮して種々変更可能である。
【0120】
次に、図27のA−F断面に対応した断面図を図30に示し、ベンドしたウエハ1のサセプタ上位置シフトの様子を説明する。これは例えば、以下のような状況を想定している。すなわち、図24に示した多層メタル膜形成プロセスに於いて、ウエハ湾曲に起因するサセプタ上位置シフトが発生するのは、ほぼ第1のメタル膜の成膜工程111(シリサイド形成用ニッケル膜成膜工程又はそのための予熱工程)に於いてであると考えられる。このサセプタ上位置シフトが発生したウエハは、そのサセプタに収容されたまま、次々にその工程に移送される。そのようにして、たとえば、冷却ウエハステージ63bによる第2のメタル膜成膜工程106(図13)に来ると、静電チャックによるチャッキング、すなわち、束縛状態となる。このとき、ウエハにサセプタ上位置シフトがあると問題が発生する可能性が高くなる。これを以下に説明する。
【0121】
まず、このようにシリサイド形成用ニッケル膜成膜工程又はそのための予熱工程で発生したウエハのサセプタ上位置シフトの態様を図30に例示する。図30に示すように、第1のメタル膜の成膜工程111(ランプ加熱ウエハステージ63a)において、ウエハ1のベンド量が大きく、且つテーパ角度Θ1が比較的なだらかであると、側方内面42(第2の上側表面)とウエハ1との接触角Θ3が小さくなり、滑りやすくなる。このとき、機械的振動等が加わるとウエハ1は容易にずれて側方内面42(第2の上側表面)を這い上がることとなる。
【0122】
この這い上がった状態で、冷却ウエハステージ63bにおいて第2のメタル膜成膜工程106に移行すると、ウエハ1は、図30に示すように、冷却ウエハステージ63bによってウエハ載置部41(第1の上側表面)より若干、上に持ち上げられた状態で、静電チャックによって吸着束縛されることとなる(このときウエハ1は、まだ、サセプタに収容された状態である)。しかし、ウエハ1の一方の端部は、サセプタ65の側方内面42(第2の上側表面)に乗り上げたままなので、吸着時に、機械的に破壊される結果となる。
【0123】
次に、ベンドしているが、サセプタ上でシフトしていないウエハ1についての図27のA−A’断面を図31および図32に示して、ウエハのベンド量、湾曲したウエハ端部とサセプタ内面のクリアランスCB、テーパ角度Θ1(第1の角度)、サセプタ上位置シフト等の関係を説明する。図31に示すように、湾曲したウエハ端部とサセプタ内面のクリアランスCBは、平坦なウエハ端部とサセプタ内面のクリアランスCFにウエハ反り量Bに対応して増加する側方内面42(第2の上側表面)の後退分とウエハのベンドによる後退分を加えたものということになる。
【0124】
図32には、テーパ角度Θ1(第1の角度)を0度、5度、10度、15度、20度、25度、30度、37度(従来の標準仕様)の各値に対するクリアランスCBを平坦ウエハからベンド量Bが、6ミリメートルのウエハまで、1ミリメートル刻みに図式的に表示したものである。各テーパ角度Θ1に対するクリアランスCB(Θ1)をミリメートル単位で示すと以下の通りである。すなわち、CB(0)=0.42、CB(5)=0.98、CB(10)=1.5、CB(15)=2.06、CB(20)=2.65、CB(25)=3.29、CB(30)=3.98、CB(37)=5.06である。
【0125】
このクリアランスCBは、機械的振動がウエハ1に作用した場合のウエハの初期振幅とほぼ等しいと考えられる。この初期振幅が大きいと、ウエハは、容易に図30のような状態になると考えられる。図29に示すように、平坦ウエハ1(シフトしていない場合)の周辺部とウエハ載置部41(第1の上側表面)の「重なり長さ」は、図28から、1.5ミリメートル程度であるが、初期振幅が重なり長さを超えるとサセプタ上位置シフトが発生する可能性が出てくる。そして、初期振幅が重なり長さの2倍(3ミリメートル程度)を超えると、サセプタ上位置シフトの発生が急速に増加すると考えられる。
【0126】
従って、図34に示すように、テーパ角度Θ1(第1の角度)は、0度以上で且つ20度程度以下に設定するのが好適である。しかし、下限については、0度程度でも良いが、0度程度の場合は、ウエハ周辺の成膜厚さが減少する恐れがあるので、ウエハの周辺近傍までデバイス形成領域10(図27)としたい場合は、下限を5度程度とするのが特に好適である。また、図33に示すように、上限についても、20度程度でも良いが、量産プロセスの安定性を特に重視する場合は、15度程度とするのが特に好適である。
【0127】
6.本願の全般に関する考察並びに各実施の形態に関する補足的説明
薄膜ウエハの処理は、ハンドリングの容易さから、ウエハの被処理対象面と逆の面に硝子板やシリコンウエハ等の補強板を貼り付けた状態で実行されることがある。しかし、このような補強板方式は、比較的高価なプロセスとして知られている。そこで、前記実施の形態では、このような補強板を使用せず、比較的ベンド量が大きい場合であっても、薄膜ウエハをリング状のサセプタ上に自由載置状態で保持して、加熱および成膜処理が可能な方法を検討したものである。
【0128】
これによって、前記各説明に示したように、主にサセプタのウエハの横方向の移動を制限する側壁の傾斜を適正化(急峻化)することで、サセプタ上位置シフトの発生が有効に防止できることが明らかとなった。
【0129】
前記説明では、サセプタ上位置シフトに起因する搬送ミスやウエハ割れについては、主に加熱成膜プロセスの後に行われるサセプタに収容した状態での吸着束縛等の過程で発生するものを例に取り具体的に説明したが、搬送ミスやウエハ割れは、ウエハの主要部はサセプタに収容されているが、ウエハの一部が外部にはみ出している場合等では、搬送時に他の構造物に触れて破壊する等の問題が発生する。また、トリミングしていないウエハでは、僅かのずれであっても、サセプタや他の構造物、ハンドリング装置との接触等によって、クラックが発生する恐れがある。
【0130】
7.サマリ
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本願の発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0131】
例えば、前記実施の形態では、パワーMOSFETを例にとり具体的に説明したが、本願の発明はそれに限定されるものではなく、IGBT,LDMOSFET等のその他の単体や、それらを含む集積回路素子その他に広く適用できることは言うまでもない。
【0132】
また、前記実施の形態では、Nチャネル型パワーMOSFET等のNチャネル型デバイスについて具体的に説明したが、本願の発明はそれに限定されるものではなく、Pチャネル型パワーMOSFET等のPチャネル型デバイスにも適用できることは言うまでもない。その場合には、前記実施の形態において、PとNを総入れ替えするPN反転操作を実行すればよい。
【0133】
更に、前記実施の形態では、ウエハ等の基板の裏面の多層金属膜の形成に適用した例を具体的に説明したが、本願の発明はそれに限定されるものではなく、ウエハ等の基板の裏面の絶縁膜と金属膜から構成された多層膜、ウエハ等の基板のデバイス面(第1主面)の多層金属膜および絶縁膜と金属膜から構成された多層膜の形成にも適用できることは言うまでもない。
また、前記実施の形態では、主にシリコン系基板を用いたパワー系MOSFETおよびIGBTを具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、SiC系基板、GaN基板、GaAs基板、InP基板等を用いたものにも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0134】
1 半導体ウエハ(エピタキシャルウエハ)
1a ウエハのデバイス面(第1の主面)
1b ウエハの裏面
1e エピタキシャル層(n型エピタキシャル層)
1s n+シリコン基板部
2 n型ドリフト領域
3 p型チャネル領域(p型ベース領域)
4 n+ソース領域
5 p+ボディコンタクト領域
6 トレンチゲート電極(ポリシリコン電極)
7 ゲート絶縁膜
8 チップ又はチップ領域
9 レジスト膜
10 デバイス形成領域
11 ソースパッド
13 ゲートパッド
14 スクライブ領域(ダイシング領域)
15 裏面メタル電極膜
15a 裏面チタン膜
15b 裏面ニッケル膜(第2のメタル膜)
15c 裏面金膜
15s ニッケルシリサイド膜
16 周辺デバイス非形成領域
17 デバイス形成領域と周辺デバイス非形成領域の境界
19 ガードリング
20 ノッチ
21 層間絶縁膜
22 凹部(ソースコンタクト溝)
23 バリアメタル膜
24 アルミニウム系メタル膜(ソース電極)
41 ウエハ保持部またはウエハ載置部(第1の上側表面)
41i ウエハ保持部最内周
41p ウエハ保持部最外周
42 側方内面(第2の上側表面)
43 上方内面(第3の上側表面)
44 下方内側面
50 リフトステージ
51 ウエハ処理装置(多層スパッタリング成膜装置)
52 ロードポート部
53 成膜処理部
54 ウエハカセット(ウエハ搬送容器)
55 ステージ支持台
56 外部ロボット
56a 外部ロボット先端部
57 スパッタリング成膜処理室
58 内部搬送ロボット
59 ターゲット切替機構(上部電極又はカソード)
60 Oリング
61 ロードロック室(脱ガス室)
62a 単一ターゲット成膜処理領域
62b マルチターゲット成膜処理領域
62c 単一ターゲット成膜処理領域
63a ランプ加熱ウエハステージ
63b 冷却ウエハステージ
63c 冷却ウエハステージ
63d 真空フランジ付きウエハステージ
64a 金ターゲット(非磁性ターゲット)
64n ニッケルターゲット(磁性ターゲット)
64s シリサイド膜形成用ニッケルターゲット(磁性ターゲット)
64t チタンターゲット(非磁性ターゲット)
64x ターゲット切替機構の空きポジション
65 ウエハサセプタ
65n (ウエハサセプタの)位置ずれ防止ノッチ
65t (ウエハサセプタの)上端部(上端水平面)
66 水冷ホルダ部(冷却用ベース金属板)
67 金属スペーサ
68 ESCセラミック板(内部に電極あり)
69a,69b サセプタ位置決め用絶縁リング
70 ウエハ表面保護層(ポリイミドフィルム)
71 ウエハホルダベース
72 ランプヒータ
73 反射板
74 マグネトロン用マグネット群(マグネット搭載回転板)
75 膜付着防止シールド
75i 膜付着防止シールドの内端
76 ガス供給ライン(ガス供給ノズル)
77 ウエハゲート
78 ドライ粗引きポンプ
79 クライオポンプ
80 ウエハ裏面加熱機構
81 ターボ分子ポンプ
82 分子ポンプバルブ
83 ドライポンプバルブ
84 粗引きバルブ
85 クライオポンプ排気バルブ
86 メイン排気バルブ
87 ロードロック排気バルブ
88 排気管(真空排気系)
89 成膜処理室の外壁
90 ターゲット切替機構収納用拡張区画
91 成膜処理室の内壁
92 マグネット-ターゲット間隔壁
93 マグネットの回転中心
94n 磁石のN極
94s 磁石のS極
95 バッキングメタルプレート
96 スペーサ板
97 付着防止リング
98 石英窓
99 金属ステージ
100 多層メッキ単位サイクル
101 サセプタへ搭載工程
102 ロードロック室への導入工程
103 脱ガス処理工程(真空処理)
105 Ti/Ni成膜領域でのTi成膜工程
106 Ti/Ni成膜領域でのNi成膜工程(第2のメタル膜成膜工程)
107 金成膜工程
108 ロードロック室からの排出工程
109 サセプタからの取り出し工程
111 Ni成膜領域でのNi成膜工程(第1のメタル膜の成膜工程)
112 アロイ処理工程(シリサイド化工程)
B ウエハ反り量
C 加熱用ステージ端部切り出し部
CB 湾曲したウエハ端部とサセプタ内面のクリアランス
CF 平坦なウエハ端部とサセプタ内面のクリアランス
D マグネットターゲット間距離
L 単一ターゲット成膜処理領域周辺部
G セル繰り返し単位領域
P サセプタ周辺切り出し部
R 帯状繰り返しデバイスパターン領域切り出し部分
S 側方内面と上方内面に面取りがある場合の輪郭
T 上方内面がない場合の輪郭
Θ1 側方内面(第2の上側表面)と垂直面のなす角(テーパ角度、第1の角度)
Θ2 上方内面(第3の上側表面)と水平面のなす角(上方切り取り角度)
Θ3 ベンドしたウエハと側方内面(第2の上側表面)の接触角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む半導体装置の製造方法:
(a)表面側のデバイス形成処理が完了した半導体ウエハの裏面に対して、研削処理を実行することにより、前記半導体ウエハを薄膜化する工程;
(b)前記工程(a)の後、サセプタ上に、前記半導体ウエハをその表面が下を向いて、その自重によって保持した状態で、前記半導体ウエハに対して予熱処理を実行することにより、室温よりも高い温度に昇温する工程;
(c)前記工程(b)の後、前記昇温状態を維持し、前記サセプタ上に、前記半導体ウエハをその表面が下を向いて、その自重によって保持した状態で、前記半導体ウエハの裏面に対して、スパッタリング成膜により、第1のメタル膜を成膜する工程、
ここで、前記サセプタは円環状の形状を呈し、その円環の放射状垂直断面は、以下の各上側表面を有する:
(x1)前記半導体ウエハの前記表面の周辺部を重力に対して保持する第1の上側表面;
(x2)前記第1の上側表面に続いて、その外側にあって、前記第1の上側表面よりも垂直に近い傾きを有し、前記半導体ウエハの側面を横ずれに対して保持する第2の上側表面、
ここで更に、前記第2の上側表面と垂直面のなす第1の角度は、0度以上、且つ、20度以下である。
【請求項2】
前記1項の半導体装置の製造方法において、前記第1の角度は、5度以上、且つ、15度以下である。
【請求項3】
前記2項の半導体装置の製造方法において、前記サセプタは、石英製である。
【請求項4】
前記3項の半導体装置の製造方法において、前記半導体装置は、パワー系半導体装置である。
【請求項5】
前記4項の半導体装置の製造方法において、前記半導体ウエハは、シリコン系ウエハである。
【請求項6】
前記5項の半導体装置の製造方法において、更に以下の工程を含む:
(d)前記工程(c)の後、前記サセプタ上に、前記半導体ウエハをその表面が下を向いて、その自重によって保持した状態で、熱処理を施すことによって、前記第1のメタル膜をシリサイド化する工程。
【請求項7】
前記6項の半導体装置の製造方法において、更に以下の工程を含む:
(e)前記工程(d)の後、前記半導体ウエハを前記サセプタ内に収容した状態において、前記半導体ウエハの前記表面を吸着ステージに吸着させる工程;
(f)前記工程(e)の後、前記半導体ウエハを前記サセプタ内に収容し、前記半導体ウエハの前記表面を吸着ステージに吸着させた状態で、前記半導体ウエハの前記裏面に対して、スパッタリング成膜により、第2のメタル膜を成膜する工程。
【請求項8】
前記7項の半導体装置の製造方法において、前記工程(a)の後の前記半導体ウエハの厚さは、280マイクロメートル以下である。
【請求項9】
前記8項の半導体装置の製造方法において、前記工程(b)から(f)においては、前記半導体ウエハは、補強板に貼り付けられていない。
【請求項10】
前記9項の半導体装置の製造方法において、前記サセプタの円環の放射状垂直断面は、以下の上側表面を有する:
(x3)前記第2の上側表面に続いて、その外側にあって、前記第2の上側表面よりも水平に近い傾きを有する第3の上側表面。
【請求項11】
前記1項の半導体装置の製造方法において、前記工程(b)から(c)においては、前記半導体ウエハは、補強板に貼り付けられていない。
【請求項12】
前記1項の半導体装置の製造方法において、前記予熱処理により昇温された温度は、摂氏250度以上である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2012−251214(P2012−251214A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124801(P2011−124801)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】