半導体装置の製造方法
【課題】能動素子または受動素子が一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置およびその製造方法であって、両面電極素子についても絶縁分離と集積化が可能であり、安価に製造することのできる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板20が、当該半導体基板20を貫通する絶縁分離トレンチTに取り囲まれて、複数のフィールド領域F1〜F8に分割されてなり、複数個の能動素子31〜33,41〜43または受動素子51,52が、それぞれ異なるフィールド領域F1〜F8に分散して配置されてなり、二個以上の素子が、当該素子に通電するための一組の電極dr1,dr2が半導体基板20の両側の表面S1,S2に分散して配置されてなる、両面電極素子41〜43,51,52である半導体装置100とする。
【解決手段】半導体基板20が、当該半導体基板20を貫通する絶縁分離トレンチTに取り囲まれて、複数のフィールド領域F1〜F8に分割されてなり、複数個の能動素子31〜33,41〜43または受動素子51,52が、それぞれ異なるフィールド領域F1〜F8に分散して配置されてなり、二個以上の素子が、当該素子に通電するための一組の電極dr1,dr2が半導体基板20の両側の表面S1,S2に分散して配置されてなる、両面電極素子41〜43,51,52である半導体装置100とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動素子または受動素子が一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSトランジスタとバイポーラトランジスタが一つの半導体基板に形成されてなる半導体装置およびその製造方法が、例えば、特開2001−60634号公報(特許文献1)に開示されている。図15は、特許文献1に開示された従来の半導体装置で、半導体装置90の断面を模式的に示した図である。
【0003】
図15に示す半導体装置90は、能動素子と受動素子が一つの半導体基板1に形成された複合ICである。半導体装置90は、自動車用コントローラを構成する部材で、フューエルインジェクタ(電磁弁)等の負荷を駆動するためのものである。半導体装置90には、アップドレイン(UpDrain)MOSFET8、NPNトランジスタ9、CMOS10等が集積化されている。
【0004】
図15の半導体装置90では、半導体基板として、SOI(Silicon On Insulator)基板1が使用されている。SOI基板1は、基板貼り合わせによって製造され、p型シリコン基板2の上にシリコン酸化膜3を介して薄膜のシリコン層4を配置した構成となっている。シリコン層4にはトレンチ7が形成され、その内壁面にはシリコン酸化膜が形成されるとともに、同トレンチ7内にはポリシリコンが充填されている。このトレンチ7により多数の島が区画形成され、各島に、アップドレインMOSFET8、NPNトランジスタ9、CMOS10を構成するnMOS,pMOSがそれぞれ形成されている。半導体装置90における、アップドレイン(UpDrain)MOSFET8、NPNトランジスタ9およびCMOS10は、いずれも、これら素子を駆動するための一組の電極が半導体基板1のシリコン層4側表面にまとめて配置されてなる、片面電極素子である。
【0005】
図15に示す半導体装置90のように、基板貼り合わせを用いた埋め込みシリコン酸化膜3を有するSOI基板1は、そこに形成される半導体素子の高速化や高集積化等、種々の用途に用いられている。
【0006】
一方、基板貼り合わせによるSOI基板1を用いた半導体装置90は、ダイマウントしてパッケージに実装するまでの加工数が多くなる等が要因となって、製造コストが増大する。この貼り合わせ基板を用いた半導体装置の製造コストの増大を抑制する方法が、特開2001−144173号公報(特許文献2)に開示されている。特許文献2に開示された方法によれば、基板貼り合わせによるSOI基板を用いることなく素子分離構造を採用する半導体装置を製造することができ、製造工程を簡略化して、製造コストの増大を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−60634号公報
【特許文献2】特開2001−144173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
埋め込み酸化膜を有するSOI基板は、図15に示す半導体装置90のように、片面電極素子の形成に適しており、それらを埋め込み酸化膜に達する絶縁分離トレンチで絶縁分離することで高速化や高集積化が可能となる。一方、埋め込み酸化膜を有するSOI基板は、埋め込み酸化膜によって基板断面方向の電流が遮られる。このため、埋め込み酸化膜を有するSOI基板は、縦型MOSトランジスタ素子やIGBT素子のように、大電流の電力用途で用いられ、これら素子を駆動するための一組の電極が半導体基板の両側の表面に分散して配置されてなる両面電極素子の形成には適していない。従って、これら縦型MOSトランジスタ素子やIGBT素子の多くは、1チップで形成され、他の素子との集積化が困難で、製造コストが増大する。
【0009】
そこで本発明は、能動素子または受動素子が一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置の製造方法であって、両面電極素子についても絶縁分離と集積化が可能であり、安価に製造することのできる半導体装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
最初に、本発明の製造対象とする半導体装置について説明する。
【0011】
本発明の製造対象とする半導体装置は、半導体基板を用いた能動素子または受動素子が、一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置であって、前記半導体基板が、当該半導体基板を貫通する絶縁分離トレンチに取り囲まれて、複数のフィールド領域に分割されてなり、前記複数個の能動素子または受動素子が、それぞれ異なる前記フィールド領域に分散して配置されてなり、前記複数個の能動素子または受動素子のうち、二個以上の素子が、当該素子に通電するための一組の電極が前記半導体基板の両側の表面に分散して配置されてなる、両面電極素子であることを特徴としている。
【0012】
上記半導体装置では、複数個の能動素子または受動素子からなる集積構造を実現するにあたって、上記半導体装置に用いられる半導体基板は、埋め込み酸化膜を有するSOI基板ではなく、一般的で安価なバルク単結晶シリコン基板であってよい。また、上記半導体基板は、当該半導体基板を貫通する絶縁分離トレンチに取り囲まれて複数のフィールド領域に分割されており、これらの異なるフィールド領域に分散して、複数個の能動素子または受動素子がそれぞれ配置されている。これにより、上記半導体装置においては、複数個の能動素子または受動素子が、半導体基板を貫通する絶縁分離トレンチによって互いに絶縁分離され、集積化されることとなる。また、上記半導体基板は、埋め込み酸化膜のないバルク単結晶シリコン基板でよいため、上記半導体装置を構成する能動素子または受動素子が二個以上形成される上記両面電極素子である場合であっても、集積化が可能である。さらに、上記半導体装置は、後述する製造方法によって、安価に製造することが可能である。
【0013】
以上のようにして、上記半導体装置は、能動素子または受動素子が一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置であって、二個以上形成される上記両面電極素子についても絶縁分離と集積化が可能であり、安価な半導体装置とすることができる。
【0014】
上記半導体装置は、例えば、ハーフブリッジ回路が構成されてなる半導体装置とすることが可能で、該半導体装置に、前記両面電極素子として縦型MOSトランジスタ素子またはIGBT素子からなる2個の同一構造を有する縦型トランジスタ素子が含まれてなり、別の両面電極素子を介して直列接続された2個の前記縦型トランジスタ素子で、前記ハーフブリッジ回路が構成されてなり、前記直列接続された2個の縦型トランジスタ素子の接続点から、前記ハーフブリッジ回路の出力が取り出される構成とすることで実現することができる。
【0015】
従って、例えば、前記半導体装置を、3相インバータのパワーモジュールが構成されてなる半導体装置とする場合には、前記半導体装置に、前記ハーフブリッジ回路が3組構成されてなり、前記3組のハーフブリッジ回路におけるそれぞれの前記直列接続された2個の縦型トランジスタ素子の接続点から、前記3相インバータの各相の出力が取り出される構成とすればよい。
【0016】
あるいは、前記半導体装置を、Hブリッジ回路が構成されてなる半導体装置とする場合には、前記半導体装置に、前記ハーフブリッジ回路が2組構成されてなり、前記2組のハーフブリッジ回路におけるそれぞれの前記直列接続された2個の縦型トランジスタ素子の接続点から、前記Hブリッジ回路の出力が取り出される構成とすればよい。
【0017】
また、上記半導体装置は、例えば、2個一組でハーフブリッジ回路を構成するための半導体装置とすることが可能で、2個の該半導体装置に、それぞれ、前記両面電極素子として縦型MOSトランジスタ素子またはIGBT素子からなる同一構造を有する縦型トランジスタ素子が含まれてなり、2個の該半導体装置が、1本のリードを挟んで積層され、2個の該半導体装置における前記縦型トランジスタ素子同士が、前記リードを介して直列接続されて、前記ハーフブリッジ回路が構成され、前記リードから、前記ハーフブリッジ回路の出力が取り出される構成とすることで実現することができる。
【0018】
従って、例えば、前記半導体装置を、2個一組で3相インバータのパワーモジュールを構成するための半導体装置とする場合には、該半導体装置に、それぞれ、前記両面電極素子として3個の前記縦型トランジスタ素子が含まれてなり、2個の該半導体装置で、前記ハーフブリッジ回路が3組構成されてなり、3本の前記リードから、前記3相インバータの各相の出力が取り出される構成とすればよい。
【0019】
あるいは、前記半導体装置を、2個一組でHブリッジ回路を構成するための半導体装置とする場合には、該半導体装置に、それぞれ、前記両面電極素子として2個の前記縦型トランジスタ素子が含まれてなり、2個の該半導体装置で、前記ハーフブリッジ回路が2組構成されてなり、2本の前記リードから、前記Hブリッジ回路の出力が取り出される構成とすればよい。
【0020】
尚、上記半導体装置においては、前記縦型トランジスタ素子と並列に、別の両面電極素子からなるダイオード素子が接続されてなる構成とすることができる。これによれば、上記ダイオード素子を、フリーホイールダイオード(FWD)として利用することが可能である。
【0021】
上記半導体装置は、例えば、前記両面電極素子が、電力用途のパワー素子であり、前記半導体装置における能動素子または受動素子のうち、少なくとも一個の素子が、当該素子に通電するための一組の電極が前記半導体基板の片側の表面にまとめて配置されてなる、片面電極素子であり、前記片面電極素子が、前記両面電極素子の制御に用いられる構成とすることが可能である。これによれば、上記半導体装置を、電力用途のパワー素子と該パワー素子を制御するための片面電極素子が一つの半導体基板に形成された複合ICとすることができる。
【0022】
上記半導体装置は、例えば、前記両面電極素子の一組の電極が、前記半導体基板の両側で、それぞれ配線接続されてなる構成としてもよいし、前記両面電極素子の前記半導体基板における一方の側の電極が、回路基板に設けられた配線によって接続されてなる構成としてもよい。また、前記両面電極素子が、電力用途のパワー素子である場合には、前記両面電極素子の前記半導体基板における一方の側の電極が、回路基板に設けられたヒートシンクに接続されてなる構成とすることもできる。
【0023】
上記半導体装置は、半導体基板を貫通する絶縁分離トレンチにより絶縁分離された縦型MOSトランジスタ素子やIGBT素子のような両面電極素子が二個以上形成されるため、電力用途の半導体装置として好適である。後述するように、上記半導体装置は、バルク単結晶シリコン基板を用いることができるため、縦型MOSトランジスタ素子やIGBT素子のような両面電極素子を形成する場合、大電流化やESD等のサージに対する耐量増加が容易である。また、埋め込み酸化膜がないため、SOI基板を用いた半導体装置に較べて放熱性を高めることができる。
【0024】
上記半導体装置の電力用途として、例えば上述した3相インバータのパワーモジュールが構成されてなる半導体装置とした場合、上記半導体装置における両面電極素子は、当該素子を駆動するための一組の電極が半導体基板の両側の表面に分散して配置されているため、これらの電極をリードフレームやヒートシンクに直接接続することで、低損失で高い放熱性を有する3相インバータのパワーモジュールとすることができる。
【0025】
従って、上記半導体装置は、高耐圧かつ大電流駆動が必要な車載用の半導体装置として好適である。
【0026】
上記半導体装置における半導体基板は、例えば、バルク単結晶シリコン基板上にシリコンエピタキシャル層を形成した、エピタキシャル基板であってもよい。
【0027】
上記半導体装置における半導体基板は、取り扱う上で必要な所定の強度を確保するため、所定の基板厚さが必要である。また、例えば縦型MOSトランジスタ素子やIGBT素子のような電力用の両面電極素子を形成する場合、高耐圧とするためには、不純物濃度が低いキャリアのドリフト層が必要である。一方、低ON抵抗の素子とするためには、不純物濃度が高いドリフト層が必要である。
【0028】
上記エピタキシャル基板によれば、バルク単結晶シリコン基板を強度確保のための支持基板とし、厚さと不純物濃度を適宜設定したシリコンエピタキシャル層をキャリアのドリフト層として、高耐圧あるいは低ON抵抗の両面電極素子を形成することが可能となる。
【0029】
上記半導体装置における絶縁分離トレンチは、例えば、トレンチ内に絶縁体が埋め込まれてなる絶縁分離トレンチ、トレンチ内に側壁酸化膜を介して導電体が埋め込まれてなる絶縁分離トレンチおよびトレンチ内に空洞が形成されてなる絶縁分離トレンチのいずれかであってよい。
【0030】
上記半導体装置においては、前記半導体基板の少なくとも一方の面側に、前記半導体基板と異なる導電型または異なる濃度の不純物拡散層が形成されてなる構成とすることができる。これにより、不純物拡散層の導電型と濃度および厚さを適宜設定することにより、種々の特性を有する両面電極素子を形成することが可能となる。
【0031】
また、前記不純物拡散層が、前記複数のフィールド領域のうち、一部のフィールド領域に形成されてなる構成とすることも可能である。これにより、所定の導電型と濃度および厚さを有する不純物拡散層を適宜所定のフィールド領域に形成することにより、一つの半導体基板に種々の能動素子または受動素子を形成することが可能となる。
【0032】
次に、上記半導体装置を製造対象とした、本発明に係る半導体装置の製造方法について説明する。
【0033】
請求項1に記載の発明は、一つの半導体基板が、当該半導体基板を貫通する絶縁分離トレンチに取り囲まれて、複数のフィールド領域に分割されてなり、前記半導体基板を用いた能動素子または受動素子が、当該半導体基板に複数個形成され、それぞれ異なる前記フィールド領域に分散して配置されてなり、前記複数個の能動素子または受動素子のうち、二個以上の素子が、当該素子を駆動するための一組の電極が前記半導体基板の両側の表面に分散して配置されてなる、両面電極素子である半導体装置の製造方法であって、所定厚さの素子形成用半導体基板を準備する基板準備工程と、前記複数のフィールド領域となる各領域を取り囲むようにして、前記素子形成用半導体基板の第1面側表面から所定深さに、未貫通絶縁分離トレンチを形成する未貫通絶縁分離トレンチ形成工程と、前記素子形成用半導体基板の第2面側から、前記未貫通絶縁分離トレンチの先端が露出するまで研磨して、素子形成用半導体基板を前記半導体基板とすると共に未貫通絶縁分離トレンチを前記絶縁分離トレンチとする基板研磨工程と、前記素子形成用半導体基板の第1面側において、前記複数個の能動素子または受動素子を形成するための第1面側素子形成工程と、前記基板研磨工程後、前記半導体基板の前記第2面側において、前記複数個の能動素子または受動素子を形成するための第2面側素子形成工程とを有することを特徴としている。
【0034】
上記半導体装置の製造方法は、複数個の能動素子または受動素子を一つの半導体基板に形成するにあたって、特殊な工程を必要とせず、一般的なバルク単結晶シリコン基板への加工工程のみで構成されている。上記半導体装置の製造方法は、複数個の能動素子または受動素子を絶縁分離するにあたって、基板貼り合わせ工程が必要な埋め込み酸化膜を有するSOI基板を用いることなく、安価なバルク単結晶シリコン基板を用いて当該基板を貫通する絶縁分離トレンチを形成するだけでよいため、製造工程が簡略化されている。
【0035】
また、上記複数個の能動素子または受動素子のうちには、二個以上の両面電極素子が含まれるが、上記半導体装置の製造方法では、素子形成用半導体基板の第1面側において実施する第1面側素子形成工程と、基板研磨工程後の半導体基板の第2面側において実施する第2面側素子形成工程とに分けて、複数個の能動素子または受動素子を形成するようにしている。これによって、両面電極素子を含んだ半導体装置であっても、製造が可能となる。
【0036】
以上のようにして、上記半導体装置の製造方法は、二個以上の両面電極素子を含む能動素子または受動素子が一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置の製造方法であって、両面電極素子についても絶縁分離と集積化が可能であり、安価に製造することのできる半導体装置の製造方法とすることができる。
【0037】
上記半導体装置の製造方法においては、前記第1面側素子形成工程を、前記未貫通絶縁分離トレンチ形成工程と前記基板研磨工程の間で実施することが好ましい。
【0038】
上記半導体装置の製造方法における第1面側素子形成工程は、未貫通絶縁分離トレンチ形成工程の前、あるいは基板研磨工程後に実施することも可能である。しかしながら、第1面側素子形成工程を未貫通絶縁分離トレンチ形成工程後に実施することで、未貫通絶縁分離トレンチ形成工程の実施に伴う素子形成への悪影響を防止することができ、第1面側素子形成工程を基板研磨工程前に実施することで、基板厚さが薄くなる前の取り扱いが容易状態で第1面側素子形成工程を実施することが可能である。
【0039】
上記半導体装置の製造方法において、前記素子形成用半導体基板を、バルク単結晶シリコン基板上にシリコンエピタキシャル層を形成した、エピタキシャル基板とする場合には、前記素子形成用半導体基板の第1面側表面を、前記シリコンエピタキシャル層とする。
【0040】
上記半導体装置の製造方法における前記未貫通絶縁分離トレンチは、例えば、トレンチ内に絶縁体が埋め込まれてなる未貫通絶縁分離トレンチ、トレンチ内に側壁酸化膜を介して導電体が埋め込まれてなる未貫通絶縁分離トレンチおよびトレンチ内が空洞である未貫通絶縁分離トレンチのいずれかであってよい。
【0041】
上記半導体装置の製造方法において、前記半導体基板の少なくとも一方の面側に、当該半導体基板と異なる導電型または異なる濃度の不純物拡散層が形成されてなる場合、また、前記不純物拡散層が、前記複数のフィールド領域のうち、一部のフィールド領域に形成されてなる場合には、前記基板研磨工程後において、前記不純物拡散層を形成するためのイオン注入工程を実施する。
【0042】
尚、以上の製造方法により製造される半導体装置の効果については、上記したとおりであり、その説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の製造対象とする半導体装置の一例で、半導体装置100の模式的な断面を示す図である。
【図2】別の半導体装置の例で、半導体装置101の模式的な断面を示す図である。
【図3】(a)〜(e)は、半導体装置102の製造方法を示す工程別の断面図である。
【図4】半導体装置103の模式的な断面図で、半導体装置103に形成されている各両面電極素子の接続配線の一例を示す図である。
【図5】(a),(b)は、それぞれ、回路基板Pへの半導体装置104の実装状態を示した模式的な断面図である。
【図6】ハーフブリッジ回路が構成されてなる半導体装置110を示す図で、(a)は、半導体装置110の等価回路図であり、(b)は、半導体装置110の模式的な断面図である。
【図7】ハーフブリッジ回路が構成されてなる別の半導体装置111を示す図で、(a)は、半導体装置111の等価回路図であり、(b)は、半導体装置111の模式的な断面図である。
【図8】Hブリッジ回路が構成されてなる半導体装置112を示す図で、(a)は、半導体装置112の等価回路図であり、(b)は、半導体装置112の模式的な断面図である。
【図9】Hブリッジ回路が構成されてなる別の半導体装置113を示す図で、(a)は、半導体装置113の等価回路図であり、(b)は、半導体装置113の模式的な断面図である。
【図10】Hブリッジ回路が構成されてなる別の半導体装置114を示す図で、(a)は、半導体装置114の等価回路図であり、(b)は、半導体装置114の模式的な断面図である。
【図11】Hブリッジ回路が構成されてなる別の半導体装置115を示す図で、(a)は、半導体装置115の等価回路図であり、(b)は、半導体装置115の模式的な断面図である。
【図12】3相インバータのパワーモジュール(IPM)の回路図である。
【図13】3相インバータのパワーモジュール(IPM)が構成されてなる半導体装置の一例で、半導体装置105の模式的な断面図である。
【図14】3相インバータのパワーモジュール(IPM)が構成されてなる半導体装置の別の例で、半導体装置106の模式的な断面図である。
【図15】従来の半導体装置90の断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明を実施するための形態を、図に基づいて説明する。
【0045】
図1は、本発明の製造対象とする半導体装置の一例で、半導体装置100の模式的な断面を示す図である。
【0046】
図1の半導体装置100は、能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52が、一つの半導体基板20に複数個形成されてなる半導体装置である。半導体装置100では、能動素子の代表例として、バイポーラトランジスタ素子31、相補型MOS(CMOS、Complementary Metal OxideSemiconductor)トランジスタ素子32、横型MOSトランジスタ素子33、縦型MOSトランジスタ素子41、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子42およびダイオード素子43が例示されている。また、半導体装置100では、受動素子の代表例として、抵抗素子として利用するN導電型(n−)の低不純物濃度素子51および配線素子として利用するN導電型(n+)の高不純物濃度素子52が例示されている。
【0047】
半導体装置100に用いられている半導体基板20は、N導電型(n−)のバルク単結晶シリコン基板からなる。図1に示す能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52は、いずれも、薄膜素子ではなく、N導電型(n−)のバルク単結晶シリコン基板からなる半導体基板20を用いた素子である。
【0048】
図1の半導体装置100では、半導体基板20が、当該半導体基板20を貫通する絶縁分離トレンチTに取り囲まれて、複数のフィールド領域F1〜F8に分割されている。絶縁分離トレンチTは、例えば、トレンチ内に酸化シリコン等の絶縁体が埋め込まれてなる絶縁分離トレンチ、トレンチ内に側壁酸化膜を介して多結晶シリコン等の導電体が埋め込まれてなる絶縁分離トレンチ、およびトレンチ内に空洞が形成され両表面が酸化シリコン等で蓋されてなる絶縁分離トレンチのいずれであってもよい。
【0049】
半導体装置100における複数個の能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52は、それぞれ異なるフィールド領域F1〜F8に分散して配置されている。また、上記複数個の能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52のうち、縦型MOSトランジスタ素子41、IGBT素子42およびダイオード素子43で例示されている能動素子41〜43と抵抗素子としての低不純物濃度素子51および配線素子としての高不純物濃度素子52で例示されて受動素子51,52は、当該素子41〜43,51,52に通電するための図1においてハッチングを施した一組の電極dr1,dr2が半導体基板20の第1面S1側と第2面S2側の両側の表面に分散して配置されてなる、両面電極素子である。このように、半導体装置100は、二個以上の両面電極素子41〜43,51,52を有している。従って、半導体基板20の第2面S2側には、少なくとも該両面電極素子41〜43,51,52以上の数の電極が形成されている。また、バイポーラトランジスタ素子31、CMOSトランジスタ素子32、横型MOSトランジスタ素子33で例示されている能動素子31〜33は、当該素子31〜33に通電するための図1においてハッチングを施した一組の電極ds1が半導体基板20における第1面S1側の一方の表面にまとめて配置されてなる、片面電極素子である。
【0050】
半導体装置100においては、半導体基板20の少なくとも一方の第2面S2側に、N導電型(n−)の半導体基板20と異なるP導電型(p)の不純物拡散層21や同じN導電型で異なる濃度(n+)の不純物拡散層22が形成されている。これらの不純物拡散層21,22は、複数のフィールド領域F1〜F8のうち、それぞれ、一部のフィールド領域F5およびフィールド領域F1〜F4,F8に形成されている。半導体装置100では、所定の導電型と濃度および厚さを有する不純物拡散層21,22を適宜所定のフィールド領域F1〜F4,F5,F8に形成することにより、一つの半導体基板20に種々の特性を有する両面電極素子当該素子41〜43,51,52や種々の能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52を形成することが可能となる。
【0051】
図1の半導体装置100には、縦型MOSトランジスタ素41やIGBT素子42のような両面電極素子が形成されるため、電力用途の半導体装置として好適である。半導体装置100は、バルク単結晶シリコン基板20が用いられているため、縦型MOSトランジスタ素子41やIGBT素子42のような両面電極素子を形成する場合、大電流化やESD等のサージに対する耐量増加が容易である。また、埋め込み酸化膜がないため、SOI基板を用いた半導体装置に較べて放熱性を高めることができる。
【0052】
また、上記絶縁分離構造によれば、図1に示す半導体装置100のように、縦型MOSトランジスタ素子41やIGBT素子42のような両面電極素子当該素子とバイポーラトランジスタ素子31や横型MOSトランジスタ素子33のような片面電極素子を組み合わせた、複合ICとすることができる。
【0053】
図1の半導体装置100では、複数個の能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52からなる集積構造を実現するにあたって、半導体装置100に用いられる半導体基板20は、図15に示した半導体装置90のような埋め込み酸化膜3を有するSOI基板1ではなく、一般的で安価なバルク単結晶シリコン基板であってよい。また、図1に示す半導体基板20は、当該半導体基板20を貫通する絶縁分離トレンチTに取り囲まれて複数のフィールド領域F1〜F8に分割されており、これらの異なるフィールド領域F1〜F8に分散して、複数個の能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52がそれぞれ配置されている。これにより、半導体装置100においては、複数個の能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52が、半導体基板20を貫通する絶縁分離トレンチTによって互いに絶縁分離され、集積化されることとなる。また、半導体基板20は、埋め込み酸化膜のないバルク単結晶シリコン基板でよいため、半導体装置100を構成する能動素子41〜43および受動素子51,52が前述したような両面電極素子である場合であっても、集積化が可能である。さらに、半導体装置100は、後述する製造方法によって、安価に製造することが可能である。
【0054】
図2は、別の半導体装置の例で、半導体装置101の模式的な断面を示す図である。尚、図2の半導体装置101において、図1の半導体装置100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0055】
図1の半導体装置100は、N導電型(n−)のバルク単結晶シリコン基板からなる半導体基板20に形成されていた。これに対して、図2の半導体装置101は、N導電型(n+)のバルク単結晶シリコン基板61上にN導電型(n−)のシリコンエピタキシャル層62を形成した、エピタキシャル基板からなる半導体基板60に形成されている。
【0056】
図1と図2の半導体装置100,101における半導体基板20,60は、取り扱う上で必要な所定の強度を確保するため、所定の基板厚さが必要である。また、例えば縦型MOSトランジスタ素子41やIGBT素子42のような電力用の両面電極素子を形成する場合、高耐圧とするためには、不純物濃度が低い(n−)キャリアのドリフト層が必要である。一方、低ON抵抗の素子とするためには、不純物濃度が高い(n+)ドリフト層が必要である。図2の半導体装置101におけるエピタキシャル基板60によれば、N導電型(n+)のバルク単結晶シリコン基板61を強度確保のための支持基板とし、厚さと不純物濃度を適宜設定したN導電型(n−)のシリコンエピタキシャル層62をキャリアのドリフト層として、高耐圧あるいは低ON抵抗の両面電極素子を形成することが可能となる。
【0057】
尚、図2の半導体装置101においても、図1の半導体装置100と同様の複数個の能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52が、それぞれ異なるフィールド領域に分散して配置されている。また、図2の半導体装置101も、二個以上の両面電極素子41〜43,51,52を有しており、半導体基板60の第2面S2側には、少なくとも該両面電極素子41〜43,51,52以上の数の電極が形成されている。
【0058】
以上のようにして、図1と図2に示す半導体装置100,101は、いずれも、能動素子または受動素子が一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置であって、二個以上ある両面電極素子についても絶縁分離と集積化が可能であり、安価な半導体装置となっている。
【0059】
次に、図1,図2に示した半導体装置100,101の製造方法について説明する。
【0060】
図3(a)〜(e)は、図1の半導体装置100を簡略化した半導体装置102の製造方法を示す工程別の断面図である。図3(e)に示す半導体装置102には、両面電極素子である縦型MOSトランジスタ素子41とIGBT素子42が形成されている。尚、図3(e)の半導体装置102において、図1の半導体装置100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0061】
半導体装置102を製造するにあたって、最初に、図3(a)に示す基板準備工程において、所定厚さ(例えば400μm)の素子形成用半導体基板20aを準備する。
【0062】
次に、図3(b)に示す未貫通絶縁分離トレンチ形成工程において、フィールド領域F4,F5となる各領域を取り囲むようにして、素子形成用半導体基板の第1面S1側表面から所定深さ(例えば150μm)に、未貫通絶縁分離トレンチTaを形成する。未貫通絶縁分離トレンチTaは、トレンチ内に絶縁体が埋め込まれてなる未貫通絶縁分離トレンチ、トレンチ内に側壁酸化膜を介して導電体が埋め込まれてなる未貫通絶縁分離トレンチおよびトレンチ内が空洞である未貫通絶縁分離トレンチのいずれかであってよい。尚、トレンチ内が空洞である未貫通絶縁分離トレンチTaを形成する場合には、次の図3(c)に示す第1面側素子形成工程において、未貫通絶縁分離トレンチTaの第1面S1側表面にある開口部を絶縁体で蓋する。
【0063】
次に、図3(c)に示す第1面側素子形成工程において、素子形成用半導体基板20aの第1面S1側で、両面電極素子である縦型MOSトランジスタ素子41とIGBT素子42の第1面S1側の各部を形成するために必要な各工程を実施する。
【0064】
次に、図3(d)に示す基板研磨工程において、素子形成用半導体基板20aの第2面S2側から、未貫通絶縁分離トレンチTaの先端が露出する(例えば120μmの基板厚さになる)まで研磨する。尚、機械的な研磨の後で、ダメージ層を除去するため、研磨面をウェットエッチングするのが望ましい。これにより、素子形成用半導体基板20aを所定厚さの半導体基板20とすると共に、未貫通絶縁分離トレンチTaが半導体基板20を貫通する絶縁分離トレンチTとなる。
【0065】
最後に、基板研磨工程後の図3(e)に示す第2面側素子形成工程において、半導体基板20の第2面S2側で、不純物拡散層21,22を形成するためのイオン注入工程を実施すると共に、両面電極素子である縦型MOSトランジスタ素子41とIGBT素子42の第2面S2側の各部を形成するために必要な各工程を実施する。
【0066】
以上で、半導体装置102が完成する。
【0067】
尚、図3(a)〜(e)に示す半導体装置102の製造方法においては、図3(c)に示した第1面側素子形成工程を、図3(b)の未貫通絶縁分離トレンチ形成工程と図3(d)の基板研磨工程の間で実施している。上記半導体装置102の製造方法における第1面側素子形成工程は、例えば図3(b)の未貫通絶縁分離トレンチ形成工程の前、あるいは図3(d)の基板研磨工程後に実施することも可能である。しかしながら、第1面側素子形成工程を図3(b)の未貫通絶縁分離トレンチ形成工程後に実施することで、図3(b)の未貫通絶縁分離トレンチ形成工程の実施に伴う素子形成への悪影響を防止することができ、第1面側素子形成工程を図3(d)の基板研磨工程前に実施することで、基板厚さが薄くなる前の取り扱いが容易状態で第1面側素子形成工程を実施することが可能となる。
【0068】
図3(a)〜(e)に示す半導体装置102の製造方法は、縦型MOSトランジスタ素子41とIGBT素子42を一つの半導体基板20に形成するにあたって、特殊な工程を必要とせず、一般的なバルク単結晶シリコン基板への加工工程のみで構成されている。また、図3(a)〜(e)に示す半導体装置102の製造方法は、縦型MOSトランジスタ素子41とIGBT素子42を絶縁分離するにあたって、図15の半導体装置90において説明した基板貼り合わせ工程が必要な埋め込み酸化膜を有するSOI基板を用いることなく、安価なバルク単結晶シリコン基板を用いて当該基板を貫通する絶縁分離トレンチを形成するだけでよいため、製造工程が簡略化されている。
【0069】
また、縦型MOSトランジスタ素子41とIGBT素子42は両面電極素子であるが、図3(a)〜(e)に示す半導体装置102の製造方法では、素子形成用半導体基板20aの第1面S1側において実施する図3(c)の第1面側素子形成工程と、基板研磨工程後の半導体基板20の第2面S2側において実施する図3(e)の第2面側素子形成工程とに分けて、縦型MOSトランジスタ素子41とIGBT素子42を形成するようにしている。これによって、両面電極素子を含んだ半導体装置102であっても、製造が可能となる。
【0070】
以上のようにして、図3(a)〜(e)に示す半導体装置102の製造方法は、二個以上の両面電極素子を含む能動素子または受動素子が一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置の製造方法であって、両面電極素子についても絶縁分離と集積化が可能であり、安価に製造することのできる半導体装置の製造方法となっている。
【0071】
尚、図3(a)〜(e)に示した半導体装置102の製造方法では、素子形成用半導体基板20aとしてバルク単結晶シリコン基板が用いられ、半導体装置102は、図1に示した半導体装置100と同様に、バルク単結晶シリコン基板に形成されてなる半導体装置である。一方、図2に示した半導体装置101と同様のエピタキシャル基板に形成されてなる半導体装置についても、図3(a)〜(e)に示した製造方法で、同じように製造することができる。この場合には、図3(a)に示す基板準備工程において、素子形成用半導体基板としてバルク単結晶シリコン基板上にシリコンエピタキシャル層を形成したエピタキシャル基板を準備し、図3(b)〜(e)に示した各工程において、素子形成用半導体基板の第1面S1側表面をシリコンエピタキシャル層となるようにして、各工程を実施すればよい。
【0072】
次に、図1〜図3に示した半導体装置100〜102と同様の半導体装置について、接続配線や回路基板への実装等の適用形態を説明する。
【0073】
図4は、半導体装置103の模式的な断面図で、半導体装置103に形成されている各両面電極素子の接続配線の一例を示す図である。尚、図4の半導体装置103において、図1の半導体装置100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0074】
図4の半導体装置103における両面電極素子41〜44,51,52は、前述したように、当該素子41〜43,51,52を駆動するための図4においてハッチングを施した一組の電極dr1,dr2が半導体基板20の第1面S1側と第2面S2側の両側の表面に分散して配置されてなる素子である。このため、二個以上の両面電極素子41〜44,51,52を有する半導体装置103では、半導体基板の第1面S1側と第2面S2側の両面において、それぞれ、層間絶縁膜Z1,Z2を介して配線L1,L2が形成されている。また、配線素子である高不純物濃度素子52は、半導体基板20の第1面S1側と第2面S2側を接続する配線として用いられている。
【0075】
図5(a),(b)は、それぞれ、回路基板Pへの半導体装置104の実装状態を示した模式的な断面図である。尚、図5の半導体装置104において、図1の半導体装置100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0076】
図5(a)では、半導体装置104に形成された両面電極素子41の第2面S2側の電極dr2同士が、回路基板Pに設けられた配線PLによって接続されている。このように、本発明の半導体装置に形成される両面電極素子の第2面側の電極は、回路基板側の配線を用いて、当該半導体装置を回路基板へ実装する際に接続するようにしてもよい。
【0077】
図5(b)では、半導体装置104に形成された両面電極素子41の第2面S2側の電極dr2が、回路基板Pに設けられたヒートシンクPhに接続されている。このように、本発明の半導体装置に形成される両面電極素子の第2面側の電極は、回路基板側のヒートシンクに接続して、放熱に利用することができる。
【0078】
次に、図1〜図5に示した半導体装置100〜104と同様の半導体装置について、より具体的な応用形態を説明する。
【0079】
図6は、ハーフブリッジ回路が構成されてなる半導体装置110を示す図で、図6(a)は、半導体装置110の等価回路図であり、図6(b)は、半導体装置110の模式的な断面図である。尚、以下の図6〜図11に示す半導体装置110〜115において、図1〜図5に示した半導体装置100〜104と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0080】
図6に示す半導体装置110においては、半導体基板20に、両面電極素子として2個の同一構造を有する縦型MOSトランジスタ素子41a,41bが形成されている。この2個の縦型MOSトランジスタ素子41a,41bは、図6(b)に示すように、半導体基板20を貫通する埋め込み金属Mkが形成された配線素子として機能する両面電極素子52aを介して直列接続されている。この直列接続された2個の縦型MOSトランジスタ素子41a,41bで図6(a)に示すハーフブリッジ回路が構成されており、このハーフブリッジ回路の出力が、直列接続された2個の縦型MOSトランジスタ素子41a,41bの接続点から取り出される。尚、ハーフブリッジ回路が構成されてなる半導体装置110の出力取り差し端子Lは、図6(b)では縦型MOSトランジスタ素子41aのソース側である第1面S1側に配置されているが、縦型MOSトランジスタ素子41bのドレイン側である第2面S2側に配置することも可能である。
【0081】
図7は、ハーフブリッジ回路が構成されてなる別の半導体装置111を示す図で、図7(a)は、半導体装置111の等価回路図であり、図7(b)は、半導体装置111の模式的な断面図である。
【0082】
図7に示す半導体装置111においては、半導体基板20に、両面電極素子として2個の同一構造を有するIGBT素子42a,42bが形成されている。また、半導体装置111では、各IGBT素子42a,42bに対して、別の両面電極素子であるダイオード素子43a,43bが並列接続されている。この各IGBT素子42a,42bに対して並列接続されているダイオード素子43a,43bは、例えば後述する3相インバータのパワーモジュールにおいて、所謂フリーホイールダイオード(FWD)として利用することが可能である。尚、図6に示した半導体装置110においても、同様にダイオード素子43a,43bを接続することが可能である。
【0083】
図7の半導体装置111における2個のIGBT素子42a,42bは、図6の半導体装置110と同様に、図7(b)に示すように、配線素子として機能する両面電極素子52aを介して直列接続されている。この直列接続された2個のIGBT素子42a,42bで図7(a)に示すハーフブリッジ回路が構成されており、このハーフブリッジ回路の出力が直列接続された2個のIGBT素子42a,42bの接続点から取り出される。尚、図7の半導体装置111においても、ハーフブリッジ回路の出力取り差し端子Lは、IGBT素子42aのエミッタ側である第1面S1側とIGBT素子42bのコレクタ側である第2面S2側のどちらに配置することも可能である。
【0084】
図8は、Hブリッジ回路が構成されてなる半導体装置112を示す図で、図8(a)は、半導体装置112の等価回路図であり、図8(b)は、半導体装置112の模式的な断面図である。
【0085】
図8に示す半導体装置112は、図6に示した半導体装置110のハーフブリッジ回路が2組構成されてなる半導体装置に相当する。半導体装置112においては、半導体基板20に両面電極素子として4個の同一構造を有する縦型MOSトランジスタ素子41a〜41dが形成されており、各組の2個の縦型MOSトランジスタ素子41a,41bと41c,41dとが、それぞれ、図8(b)に示すように、配線素子として機能する両面電極素子52a,52bを介して直列接続されている。この直列接続された各組の2個の縦型MOSトランジスタ素子41a,41bと41c,41dとがさらに並列接続されて、図8(a)に示すHブリッジ回路が構成されており、このHブリッジ回路の出力が直列接続された各組の2個の縦型MOSトランジスタ素子41a,41bと41c,41dの各接続点から取り出される。尚、半導体装置112においても、Hブリッジ回路の出力取り差し端子L1,L2が、図8(b)ではそれぞれ縦型MOSトランジスタ素子41a,41cのソース側である第1面S1側に配置されているが、縦型MOSトランジスタ素子41b,41dのドレイン側である第2面S2側に配置することも可能である。
【0086】
図9は、Hブリッジ回路が構成されてなる別の半導体装置113を示す図で、図9(a)は、半導体装置113の等価回路図であり、図9(b)は、半導体装置113の模式的な断面図である。
【0087】
図9に示す半導体装置113は、図7に示した半導体装置111のハーフブリッジ回路が2組構成されてなる半導体装置に相当する。半導体装置113においては、半導体基板20に両面電極素子として4個の同一構造を有するIGBT素子42a〜42dが形成されている。また、各IGBT素子42a〜42dに対して、別の両面電極素子であるダイオード素子43a〜43dが並列接続されている。尚、半導体装置113においても、Hブリッジ回路の出力取り差し端子L1,L2が、図9(b)ではそれぞれIGBT素子42a,42cのエミッタ側である第1面S1側に配置されているが、IGBT素子42b,42dのコレクタ側である第2面S2側に配置することも可能である。
【0088】
同様にして、3相インバータのパワーモジュールが構成されてなる半導体装置とすることも可能である。この場合には、図6や図7に示した半導体装置110,111のハーフブリッジ回路が3組構成されてなる半導体装置とすればよい。この3組のハーフブリッジ回路におけるそれぞれの直列接続された2個の縦型MOSトランジスタ素子やIGBT素子の接続点から、3相インバータの各相の出力が取り出される構成とする。この3相インバータのパワーモジュールが構成されてなる半導体装置については、後で詳述する。
【0089】
図8(a)や図9(a)に示したHブリッジ回路は、図1〜図5に示した半導体装置100〜104と同様の半導体装置を利用して、別構成の半導体装置とすることも可能である。
【0090】
図10は、Hブリッジ回路が構成されてなる別の半導体装置114を示す図で、図10(a)は、半導体装置114の等価回路図であり、図10(b)は、半導体装置114の模式的な断面図である。
【0091】
図10(a)に示すように、半導体装置114の等価回路図は、図8(a)に示した半導体装置112の等価回路図と基本的に同じものとなっている。一方、図8に示した半導体装置112では一枚の半導体基板20にHブリッジ回路が形成されていたのに対し、図10に示す半導体装置114は、2個一組でHブリッジ回路を構成するため、それぞれ、半導体基板22,23に形成された半導体装置114H,114Lで構成されている。
【0092】
半導体装置114H,114Lにおいては、それぞれ、半導体基板22,23に両面電極素子として2個ずつの同一構造を有する縦型MOSトランジスタ素子41Ha,41Hbと41La,41Lbが形成されている。2個の半導体装置114H,114Lは、図10(b)に示すように、2本のリードM1,M2を挟んで積層されている。そして、半導体装置114H,114Lの縦型MOSトランジスタ素子41Ha,41La同士および縦型MOSトランジスタ素子41Hb,41Lb同士が、それぞれ、リードM1,M2を介して直列接続されて、Hブリッジ回路が構成されている。このリードM1,M2から、Hブリッジ回路の出力が取り出される。
【0093】
図11は、Hブリッジ回路が構成されてなる別の半導体装置115を示す図で、図11(a)は、半導体装置115の等価回路図であり、図11(b)は、半導体装置115の模式的な断面図である。
【0094】
図11(a)に示すように、半導体装置115の等価回路図は、図9(a)に示した半導体装置113の等価回路図と基本的に同じものとなっている。一方、図9に示した半導体装置113では一枚の半導体基板20にHブリッジ回路が形成されていたのに対し、図11に示す半導体装置115は、2個一組でHブリッジ回路を構成するため、それぞれ、半導体基板22,23に形成された半導体装置115H,115Lで構成されている。
【0095】
半導体装置115H,115Lにおいては、それぞれ、半導体基板22,23に両面電極素子として2個ずつの同一構造を有するIGBT素子42Ha,42Hbと42La,42Lbが形成されている。また、各IGBT素子42Ha,42Hb,42La,42Lbに対して、別の両面電極素子であるダイオード素子43Ha,43Hb,43La,43Lbが並列接続されている。2個の半導体装置115H,115Lは、図11(b)に示すように、2本のリードM1,M2を挟んで積層されている。そして、半導体装置115H,115LのIGBT素子42Ha,42La同士およびIGBT素子42Hb,42Lb同士が、それぞれ、リードM1,M2を介して直列接続されて、Hブリッジ回路が構成されている。このリードM1,M2から、Hブリッジ回路の出力が取り出される。
【0096】
尚、図10や図11に示した半導体装置114,115と同様にして、ハーフブリッジ回路が形成されてなる半導体装置や3相インバータのパワーモジュールを構成するための半導体装置を、2個一組の半導体装置で構成できることはいうまでもない。
【0097】
また、図6〜図11では半導体装置110〜115の要部のみ図示したが、図1〜図5に示した半導体装置100〜104のように、半導体基板20,22,23の別位置に、別の両面電極素子や片面電極素子が形成されていてもよい。図6〜図11に示す半導体装置110〜115のように、両面電極素子が電力用途のパワー素子である場合には、半導体基板の別位置に例えば片面電極素子を形成すれば、該片面電極素子を両面電極素子の制御に用いることができる。これによれば、該半導体装置を、電力用途のパワー素子と該パワー素子を制御するための片面電極素子が一つの半導体基板に形成された複合ICとすることができる。
【0098】
次に、図1〜図5に示した半導体装置100〜104と同様の半導体装置について、電力用途の3相インバータのパワーモジュールへの適用形態を説明する。
【0099】
図12は、3相インバータのパワーモジュール(IPM)の回路図である。
【0100】
図12に示すように、点線で囲った3相インバータのパワーモジュール(IPM)は、3相交流の各相u,v,wに対応して、3組の直列接続された電力用トランジスタ(HTu,LTu),(HTv,LTv),(HTw,LTw)で構成される。3相交流の各相u,v,wの出力は、それぞれ、高電位側の3個の電力用トランジスタHTu,HTv,HTwのソースと低電位側の3個の電力用トランジスタLTu,LTv,LTwのドレインの接続点から取り出される。また、各電力用トランジスタHTu,HTv,HTw,LTu,LTv,LTwは、ドライバ回路からのゲートへの入力信号によって駆動される。
【0101】
図13は、図12の3相インバータのパワーモジュール(IPM)が構成されてなる半導体装置の一例で、半導体装置105の模式的な断面図である。尚、図13の半導体装置105において、図1の半導体装置100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0102】
図13の半導体装置105は、一つの半導体基板20に、図12の各電力用トランジスタHTu,HTv,HTw,LTu,LTv,LTwが両面電極素子として形成されてなる半導体装置である。半導体装置105では、高電位側の3個の電力用トランジスタHTu,HTv,HTwと低電位側の3個の電力用トランジスタLTu,LTv,LTwは、それぞれ、第1面S1側の配線L1,高不純物濃度素子52および第2面S2側の配線L2によって、直列接続されている。また、図12に示すドライバ回路は、片面電極素子等を用いて、同じ半導体基板20の別位置に形成することができる。
【0103】
図14は、図12の3相インバータのパワーモジュール(IPM)が構成されてなる半導体装置の別の例で、半導体装置106の模式的な断面図である。尚、図14の半導体装置106においても、図1の半導体装置100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0104】
図14の半導体装置106は、2つの半導体装置106H,106Lで構成され、樹脂Mによってモールドされてなる半導体装置である。半導体装置106Hでは、半導体基板22に、図12に示す高電位側の3個の電力用トランジスタHTu,HTv,HTwが、両面電極素子として形成されている。半導体装置106Lでは、半導体基板23に、図12に示す低電位側の3個の電力用トランジスタLTu,LTv,LTwが、両面電極素子として形成されている。半導体装置106Hの各電力用トランジスタHTu,HTv,HTwのソース電極dr1Hと半導体装置106Lの各電力用トランジスタLTu,LTv,LTwのドレイン電極dr2Lは、それぞれ、3相交流の各相u,v,wの出力を取り出すリードピンMu,Mv,Mwに直接接続されている。半導体装置106Hの各電力用トランジスタHTu,HTv,HTwのドレイン電極dr2Hは、電源に接続されるリードピンMdおよびヒートシンクMdhに共通接続されている。半導体装置106Lの各電力用トランジスタLTu,LTv,LTwのソース電極dr1Lは、グランドに接続されるリードピンMgおよびヒートシンクMghに共通接続されている。このように、各半導体装置106H,106Lは、電極dr1H,dr2H,dr1L,dr2LがリードピンMu,Mv,Mw,Md,Mgに直接接続されると共に、ヒートシンクMdh,Mghにも接続されている。このため、図12に示す半導体装置106は、低損失で高い放熱性を有する3相インバータのパワーモジュール(IPM)とすることができる。
【0105】
図12に示す半導体装置106のように、上記した半導体装置100〜106および110〜115における両面電極素子は、当該素子を駆動するための一組の電極が半導体基板の両側の表面に分散して配置されているため、これらの電極をリードフレームやヒートシンクに直接接続することで、低損失で高い放熱性を有する半導体装置とすることができる。従って、高耐圧かつ大電流駆動が必要な車載用の半導体装置として、特に好適である。
【0106】
以上示したように、本発明の半導体装置の製造方法は、いずれも、能動素子または受動素子が一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置の製造方法であって、両面電極素子についても絶縁分離と集積化が可能であり、安価に製造することのできる半導体装置の製造方法となっている。
【符号の説明】
【0107】
90,100〜106,110〜113,106H,106L,114H,114L,115H,115L 半導体装置
20〜23,60 半導体基板
20a 素子形成用半導体基板
S1 第1面
S2 第2面
T 絶縁分離トレンチ
Ta 未貫通絶縁分離トレンチ
F1〜F8 フィールド領域
31〜33 能動素子(片面電極素子)
41〜43,41a〜41d,41Ha,41Hb,41La,41Lb,42a〜42d,42Ha,42Hb,42La,42Lb,43a〜43d,43Ha,43Hb,43La,43Lb,HTu,HTv,HTw,LTu,LTv,LTw 能動素子(両面電極素子)
51,52,52a,52b 受動素子(両面電極素子)
ds1 電極(片面電極素子)
dr1,dr1H,dr1L 電極(両面電極素子の第1面側)
dr2,dr2H,dr2L 電極(両面電極素子の第2面側)
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動素子または受動素子が一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSトランジスタとバイポーラトランジスタが一つの半導体基板に形成されてなる半導体装置およびその製造方法が、例えば、特開2001−60634号公報(特許文献1)に開示されている。図15は、特許文献1に開示された従来の半導体装置で、半導体装置90の断面を模式的に示した図である。
【0003】
図15に示す半導体装置90は、能動素子と受動素子が一つの半導体基板1に形成された複合ICである。半導体装置90は、自動車用コントローラを構成する部材で、フューエルインジェクタ(電磁弁)等の負荷を駆動するためのものである。半導体装置90には、アップドレイン(UpDrain)MOSFET8、NPNトランジスタ9、CMOS10等が集積化されている。
【0004】
図15の半導体装置90では、半導体基板として、SOI(Silicon On Insulator)基板1が使用されている。SOI基板1は、基板貼り合わせによって製造され、p型シリコン基板2の上にシリコン酸化膜3を介して薄膜のシリコン層4を配置した構成となっている。シリコン層4にはトレンチ7が形成され、その内壁面にはシリコン酸化膜が形成されるとともに、同トレンチ7内にはポリシリコンが充填されている。このトレンチ7により多数の島が区画形成され、各島に、アップドレインMOSFET8、NPNトランジスタ9、CMOS10を構成するnMOS,pMOSがそれぞれ形成されている。半導体装置90における、アップドレイン(UpDrain)MOSFET8、NPNトランジスタ9およびCMOS10は、いずれも、これら素子を駆動するための一組の電極が半導体基板1のシリコン層4側表面にまとめて配置されてなる、片面電極素子である。
【0005】
図15に示す半導体装置90のように、基板貼り合わせを用いた埋め込みシリコン酸化膜3を有するSOI基板1は、そこに形成される半導体素子の高速化や高集積化等、種々の用途に用いられている。
【0006】
一方、基板貼り合わせによるSOI基板1を用いた半導体装置90は、ダイマウントしてパッケージに実装するまでの加工数が多くなる等が要因となって、製造コストが増大する。この貼り合わせ基板を用いた半導体装置の製造コストの増大を抑制する方法が、特開2001−144173号公報(特許文献2)に開示されている。特許文献2に開示された方法によれば、基板貼り合わせによるSOI基板を用いることなく素子分離構造を採用する半導体装置を製造することができ、製造工程を簡略化して、製造コストの増大を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−60634号公報
【特許文献2】特開2001−144173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
埋め込み酸化膜を有するSOI基板は、図15に示す半導体装置90のように、片面電極素子の形成に適しており、それらを埋め込み酸化膜に達する絶縁分離トレンチで絶縁分離することで高速化や高集積化が可能となる。一方、埋め込み酸化膜を有するSOI基板は、埋め込み酸化膜によって基板断面方向の電流が遮られる。このため、埋め込み酸化膜を有するSOI基板は、縦型MOSトランジスタ素子やIGBT素子のように、大電流の電力用途で用いられ、これら素子を駆動するための一組の電極が半導体基板の両側の表面に分散して配置されてなる両面電極素子の形成には適していない。従って、これら縦型MOSトランジスタ素子やIGBT素子の多くは、1チップで形成され、他の素子との集積化が困難で、製造コストが増大する。
【0009】
そこで本発明は、能動素子または受動素子が一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置の製造方法であって、両面電極素子についても絶縁分離と集積化が可能であり、安価に製造することのできる半導体装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
最初に、本発明の製造対象とする半導体装置について説明する。
【0011】
本発明の製造対象とする半導体装置は、半導体基板を用いた能動素子または受動素子が、一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置であって、前記半導体基板が、当該半導体基板を貫通する絶縁分離トレンチに取り囲まれて、複数のフィールド領域に分割されてなり、前記複数個の能動素子または受動素子が、それぞれ異なる前記フィールド領域に分散して配置されてなり、前記複数個の能動素子または受動素子のうち、二個以上の素子が、当該素子に通電するための一組の電極が前記半導体基板の両側の表面に分散して配置されてなる、両面電極素子であることを特徴としている。
【0012】
上記半導体装置では、複数個の能動素子または受動素子からなる集積構造を実現するにあたって、上記半導体装置に用いられる半導体基板は、埋め込み酸化膜を有するSOI基板ではなく、一般的で安価なバルク単結晶シリコン基板であってよい。また、上記半導体基板は、当該半導体基板を貫通する絶縁分離トレンチに取り囲まれて複数のフィールド領域に分割されており、これらの異なるフィールド領域に分散して、複数個の能動素子または受動素子がそれぞれ配置されている。これにより、上記半導体装置においては、複数個の能動素子または受動素子が、半導体基板を貫通する絶縁分離トレンチによって互いに絶縁分離され、集積化されることとなる。また、上記半導体基板は、埋め込み酸化膜のないバルク単結晶シリコン基板でよいため、上記半導体装置を構成する能動素子または受動素子が二個以上形成される上記両面電極素子である場合であっても、集積化が可能である。さらに、上記半導体装置は、後述する製造方法によって、安価に製造することが可能である。
【0013】
以上のようにして、上記半導体装置は、能動素子または受動素子が一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置であって、二個以上形成される上記両面電極素子についても絶縁分離と集積化が可能であり、安価な半導体装置とすることができる。
【0014】
上記半導体装置は、例えば、ハーフブリッジ回路が構成されてなる半導体装置とすることが可能で、該半導体装置に、前記両面電極素子として縦型MOSトランジスタ素子またはIGBT素子からなる2個の同一構造を有する縦型トランジスタ素子が含まれてなり、別の両面電極素子を介して直列接続された2個の前記縦型トランジスタ素子で、前記ハーフブリッジ回路が構成されてなり、前記直列接続された2個の縦型トランジスタ素子の接続点から、前記ハーフブリッジ回路の出力が取り出される構成とすることで実現することができる。
【0015】
従って、例えば、前記半導体装置を、3相インバータのパワーモジュールが構成されてなる半導体装置とする場合には、前記半導体装置に、前記ハーフブリッジ回路が3組構成されてなり、前記3組のハーフブリッジ回路におけるそれぞれの前記直列接続された2個の縦型トランジスタ素子の接続点から、前記3相インバータの各相の出力が取り出される構成とすればよい。
【0016】
あるいは、前記半導体装置を、Hブリッジ回路が構成されてなる半導体装置とする場合には、前記半導体装置に、前記ハーフブリッジ回路が2組構成されてなり、前記2組のハーフブリッジ回路におけるそれぞれの前記直列接続された2個の縦型トランジスタ素子の接続点から、前記Hブリッジ回路の出力が取り出される構成とすればよい。
【0017】
また、上記半導体装置は、例えば、2個一組でハーフブリッジ回路を構成するための半導体装置とすることが可能で、2個の該半導体装置に、それぞれ、前記両面電極素子として縦型MOSトランジスタ素子またはIGBT素子からなる同一構造を有する縦型トランジスタ素子が含まれてなり、2個の該半導体装置が、1本のリードを挟んで積層され、2個の該半導体装置における前記縦型トランジスタ素子同士が、前記リードを介して直列接続されて、前記ハーフブリッジ回路が構成され、前記リードから、前記ハーフブリッジ回路の出力が取り出される構成とすることで実現することができる。
【0018】
従って、例えば、前記半導体装置を、2個一組で3相インバータのパワーモジュールを構成するための半導体装置とする場合には、該半導体装置に、それぞれ、前記両面電極素子として3個の前記縦型トランジスタ素子が含まれてなり、2個の該半導体装置で、前記ハーフブリッジ回路が3組構成されてなり、3本の前記リードから、前記3相インバータの各相の出力が取り出される構成とすればよい。
【0019】
あるいは、前記半導体装置を、2個一組でHブリッジ回路を構成するための半導体装置とする場合には、該半導体装置に、それぞれ、前記両面電極素子として2個の前記縦型トランジスタ素子が含まれてなり、2個の該半導体装置で、前記ハーフブリッジ回路が2組構成されてなり、2本の前記リードから、前記Hブリッジ回路の出力が取り出される構成とすればよい。
【0020】
尚、上記半導体装置においては、前記縦型トランジスタ素子と並列に、別の両面電極素子からなるダイオード素子が接続されてなる構成とすることができる。これによれば、上記ダイオード素子を、フリーホイールダイオード(FWD)として利用することが可能である。
【0021】
上記半導体装置は、例えば、前記両面電極素子が、電力用途のパワー素子であり、前記半導体装置における能動素子または受動素子のうち、少なくとも一個の素子が、当該素子に通電するための一組の電極が前記半導体基板の片側の表面にまとめて配置されてなる、片面電極素子であり、前記片面電極素子が、前記両面電極素子の制御に用いられる構成とすることが可能である。これによれば、上記半導体装置を、電力用途のパワー素子と該パワー素子を制御するための片面電極素子が一つの半導体基板に形成された複合ICとすることができる。
【0022】
上記半導体装置は、例えば、前記両面電極素子の一組の電極が、前記半導体基板の両側で、それぞれ配線接続されてなる構成としてもよいし、前記両面電極素子の前記半導体基板における一方の側の電極が、回路基板に設けられた配線によって接続されてなる構成としてもよい。また、前記両面電極素子が、電力用途のパワー素子である場合には、前記両面電極素子の前記半導体基板における一方の側の電極が、回路基板に設けられたヒートシンクに接続されてなる構成とすることもできる。
【0023】
上記半導体装置は、半導体基板を貫通する絶縁分離トレンチにより絶縁分離された縦型MOSトランジスタ素子やIGBT素子のような両面電極素子が二個以上形成されるため、電力用途の半導体装置として好適である。後述するように、上記半導体装置は、バルク単結晶シリコン基板を用いることができるため、縦型MOSトランジスタ素子やIGBT素子のような両面電極素子を形成する場合、大電流化やESD等のサージに対する耐量増加が容易である。また、埋め込み酸化膜がないため、SOI基板を用いた半導体装置に較べて放熱性を高めることができる。
【0024】
上記半導体装置の電力用途として、例えば上述した3相インバータのパワーモジュールが構成されてなる半導体装置とした場合、上記半導体装置における両面電極素子は、当該素子を駆動するための一組の電極が半導体基板の両側の表面に分散して配置されているため、これらの電極をリードフレームやヒートシンクに直接接続することで、低損失で高い放熱性を有する3相インバータのパワーモジュールとすることができる。
【0025】
従って、上記半導体装置は、高耐圧かつ大電流駆動が必要な車載用の半導体装置として好適である。
【0026】
上記半導体装置における半導体基板は、例えば、バルク単結晶シリコン基板上にシリコンエピタキシャル層を形成した、エピタキシャル基板であってもよい。
【0027】
上記半導体装置における半導体基板は、取り扱う上で必要な所定の強度を確保するため、所定の基板厚さが必要である。また、例えば縦型MOSトランジスタ素子やIGBT素子のような電力用の両面電極素子を形成する場合、高耐圧とするためには、不純物濃度が低いキャリアのドリフト層が必要である。一方、低ON抵抗の素子とするためには、不純物濃度が高いドリフト層が必要である。
【0028】
上記エピタキシャル基板によれば、バルク単結晶シリコン基板を強度確保のための支持基板とし、厚さと不純物濃度を適宜設定したシリコンエピタキシャル層をキャリアのドリフト層として、高耐圧あるいは低ON抵抗の両面電極素子を形成することが可能となる。
【0029】
上記半導体装置における絶縁分離トレンチは、例えば、トレンチ内に絶縁体が埋め込まれてなる絶縁分離トレンチ、トレンチ内に側壁酸化膜を介して導電体が埋め込まれてなる絶縁分離トレンチおよびトレンチ内に空洞が形成されてなる絶縁分離トレンチのいずれかであってよい。
【0030】
上記半導体装置においては、前記半導体基板の少なくとも一方の面側に、前記半導体基板と異なる導電型または異なる濃度の不純物拡散層が形成されてなる構成とすることができる。これにより、不純物拡散層の導電型と濃度および厚さを適宜設定することにより、種々の特性を有する両面電極素子を形成することが可能となる。
【0031】
また、前記不純物拡散層が、前記複数のフィールド領域のうち、一部のフィールド領域に形成されてなる構成とすることも可能である。これにより、所定の導電型と濃度および厚さを有する不純物拡散層を適宜所定のフィールド領域に形成することにより、一つの半導体基板に種々の能動素子または受動素子を形成することが可能となる。
【0032】
次に、上記半導体装置を製造対象とした、本発明に係る半導体装置の製造方法について説明する。
【0033】
請求項1に記載の発明は、一つの半導体基板が、当該半導体基板を貫通する絶縁分離トレンチに取り囲まれて、複数のフィールド領域に分割されてなり、前記半導体基板を用いた能動素子または受動素子が、当該半導体基板に複数個形成され、それぞれ異なる前記フィールド領域に分散して配置されてなり、前記複数個の能動素子または受動素子のうち、二個以上の素子が、当該素子を駆動するための一組の電極が前記半導体基板の両側の表面に分散して配置されてなる、両面電極素子である半導体装置の製造方法であって、所定厚さの素子形成用半導体基板を準備する基板準備工程と、前記複数のフィールド領域となる各領域を取り囲むようにして、前記素子形成用半導体基板の第1面側表面から所定深さに、未貫通絶縁分離トレンチを形成する未貫通絶縁分離トレンチ形成工程と、前記素子形成用半導体基板の第2面側から、前記未貫通絶縁分離トレンチの先端が露出するまで研磨して、素子形成用半導体基板を前記半導体基板とすると共に未貫通絶縁分離トレンチを前記絶縁分離トレンチとする基板研磨工程と、前記素子形成用半導体基板の第1面側において、前記複数個の能動素子または受動素子を形成するための第1面側素子形成工程と、前記基板研磨工程後、前記半導体基板の前記第2面側において、前記複数個の能動素子または受動素子を形成するための第2面側素子形成工程とを有することを特徴としている。
【0034】
上記半導体装置の製造方法は、複数個の能動素子または受動素子を一つの半導体基板に形成するにあたって、特殊な工程を必要とせず、一般的なバルク単結晶シリコン基板への加工工程のみで構成されている。上記半導体装置の製造方法は、複数個の能動素子または受動素子を絶縁分離するにあたって、基板貼り合わせ工程が必要な埋め込み酸化膜を有するSOI基板を用いることなく、安価なバルク単結晶シリコン基板を用いて当該基板を貫通する絶縁分離トレンチを形成するだけでよいため、製造工程が簡略化されている。
【0035】
また、上記複数個の能動素子または受動素子のうちには、二個以上の両面電極素子が含まれるが、上記半導体装置の製造方法では、素子形成用半導体基板の第1面側において実施する第1面側素子形成工程と、基板研磨工程後の半導体基板の第2面側において実施する第2面側素子形成工程とに分けて、複数個の能動素子または受動素子を形成するようにしている。これによって、両面電極素子を含んだ半導体装置であっても、製造が可能となる。
【0036】
以上のようにして、上記半導体装置の製造方法は、二個以上の両面電極素子を含む能動素子または受動素子が一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置の製造方法であって、両面電極素子についても絶縁分離と集積化が可能であり、安価に製造することのできる半導体装置の製造方法とすることができる。
【0037】
上記半導体装置の製造方法においては、前記第1面側素子形成工程を、前記未貫通絶縁分離トレンチ形成工程と前記基板研磨工程の間で実施することが好ましい。
【0038】
上記半導体装置の製造方法における第1面側素子形成工程は、未貫通絶縁分離トレンチ形成工程の前、あるいは基板研磨工程後に実施することも可能である。しかしながら、第1面側素子形成工程を未貫通絶縁分離トレンチ形成工程後に実施することで、未貫通絶縁分離トレンチ形成工程の実施に伴う素子形成への悪影響を防止することができ、第1面側素子形成工程を基板研磨工程前に実施することで、基板厚さが薄くなる前の取り扱いが容易状態で第1面側素子形成工程を実施することが可能である。
【0039】
上記半導体装置の製造方法において、前記素子形成用半導体基板を、バルク単結晶シリコン基板上にシリコンエピタキシャル層を形成した、エピタキシャル基板とする場合には、前記素子形成用半導体基板の第1面側表面を、前記シリコンエピタキシャル層とする。
【0040】
上記半導体装置の製造方法における前記未貫通絶縁分離トレンチは、例えば、トレンチ内に絶縁体が埋め込まれてなる未貫通絶縁分離トレンチ、トレンチ内に側壁酸化膜を介して導電体が埋め込まれてなる未貫通絶縁分離トレンチおよびトレンチ内が空洞である未貫通絶縁分離トレンチのいずれかであってよい。
【0041】
上記半導体装置の製造方法において、前記半導体基板の少なくとも一方の面側に、当該半導体基板と異なる導電型または異なる濃度の不純物拡散層が形成されてなる場合、また、前記不純物拡散層が、前記複数のフィールド領域のうち、一部のフィールド領域に形成されてなる場合には、前記基板研磨工程後において、前記不純物拡散層を形成するためのイオン注入工程を実施する。
【0042】
尚、以上の製造方法により製造される半導体装置の効果については、上記したとおりであり、その説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の製造対象とする半導体装置の一例で、半導体装置100の模式的な断面を示す図である。
【図2】別の半導体装置の例で、半導体装置101の模式的な断面を示す図である。
【図3】(a)〜(e)は、半導体装置102の製造方法を示す工程別の断面図である。
【図4】半導体装置103の模式的な断面図で、半導体装置103に形成されている各両面電極素子の接続配線の一例を示す図である。
【図5】(a),(b)は、それぞれ、回路基板Pへの半導体装置104の実装状態を示した模式的な断面図である。
【図6】ハーフブリッジ回路が構成されてなる半導体装置110を示す図で、(a)は、半導体装置110の等価回路図であり、(b)は、半導体装置110の模式的な断面図である。
【図7】ハーフブリッジ回路が構成されてなる別の半導体装置111を示す図で、(a)は、半導体装置111の等価回路図であり、(b)は、半導体装置111の模式的な断面図である。
【図8】Hブリッジ回路が構成されてなる半導体装置112を示す図で、(a)は、半導体装置112の等価回路図であり、(b)は、半導体装置112の模式的な断面図である。
【図9】Hブリッジ回路が構成されてなる別の半導体装置113を示す図で、(a)は、半導体装置113の等価回路図であり、(b)は、半導体装置113の模式的な断面図である。
【図10】Hブリッジ回路が構成されてなる別の半導体装置114を示す図で、(a)は、半導体装置114の等価回路図であり、(b)は、半導体装置114の模式的な断面図である。
【図11】Hブリッジ回路が構成されてなる別の半導体装置115を示す図で、(a)は、半導体装置115の等価回路図であり、(b)は、半導体装置115の模式的な断面図である。
【図12】3相インバータのパワーモジュール(IPM)の回路図である。
【図13】3相インバータのパワーモジュール(IPM)が構成されてなる半導体装置の一例で、半導体装置105の模式的な断面図である。
【図14】3相インバータのパワーモジュール(IPM)が構成されてなる半導体装置の別の例で、半導体装置106の模式的な断面図である。
【図15】従来の半導体装置90の断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明を実施するための形態を、図に基づいて説明する。
【0045】
図1は、本発明の製造対象とする半導体装置の一例で、半導体装置100の模式的な断面を示す図である。
【0046】
図1の半導体装置100は、能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52が、一つの半導体基板20に複数個形成されてなる半導体装置である。半導体装置100では、能動素子の代表例として、バイポーラトランジスタ素子31、相補型MOS(CMOS、Complementary Metal OxideSemiconductor)トランジスタ素子32、横型MOSトランジスタ素子33、縦型MOSトランジスタ素子41、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子42およびダイオード素子43が例示されている。また、半導体装置100では、受動素子の代表例として、抵抗素子として利用するN導電型(n−)の低不純物濃度素子51および配線素子として利用するN導電型(n+)の高不純物濃度素子52が例示されている。
【0047】
半導体装置100に用いられている半導体基板20は、N導電型(n−)のバルク単結晶シリコン基板からなる。図1に示す能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52は、いずれも、薄膜素子ではなく、N導電型(n−)のバルク単結晶シリコン基板からなる半導体基板20を用いた素子である。
【0048】
図1の半導体装置100では、半導体基板20が、当該半導体基板20を貫通する絶縁分離トレンチTに取り囲まれて、複数のフィールド領域F1〜F8に分割されている。絶縁分離トレンチTは、例えば、トレンチ内に酸化シリコン等の絶縁体が埋め込まれてなる絶縁分離トレンチ、トレンチ内に側壁酸化膜を介して多結晶シリコン等の導電体が埋め込まれてなる絶縁分離トレンチ、およびトレンチ内に空洞が形成され両表面が酸化シリコン等で蓋されてなる絶縁分離トレンチのいずれであってもよい。
【0049】
半導体装置100における複数個の能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52は、それぞれ異なるフィールド領域F1〜F8に分散して配置されている。また、上記複数個の能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52のうち、縦型MOSトランジスタ素子41、IGBT素子42およびダイオード素子43で例示されている能動素子41〜43と抵抗素子としての低不純物濃度素子51および配線素子としての高不純物濃度素子52で例示されて受動素子51,52は、当該素子41〜43,51,52に通電するための図1においてハッチングを施した一組の電極dr1,dr2が半導体基板20の第1面S1側と第2面S2側の両側の表面に分散して配置されてなる、両面電極素子である。このように、半導体装置100は、二個以上の両面電極素子41〜43,51,52を有している。従って、半導体基板20の第2面S2側には、少なくとも該両面電極素子41〜43,51,52以上の数の電極が形成されている。また、バイポーラトランジスタ素子31、CMOSトランジスタ素子32、横型MOSトランジスタ素子33で例示されている能動素子31〜33は、当該素子31〜33に通電するための図1においてハッチングを施した一組の電極ds1が半導体基板20における第1面S1側の一方の表面にまとめて配置されてなる、片面電極素子である。
【0050】
半導体装置100においては、半導体基板20の少なくとも一方の第2面S2側に、N導電型(n−)の半導体基板20と異なるP導電型(p)の不純物拡散層21や同じN導電型で異なる濃度(n+)の不純物拡散層22が形成されている。これらの不純物拡散層21,22は、複数のフィールド領域F1〜F8のうち、それぞれ、一部のフィールド領域F5およびフィールド領域F1〜F4,F8に形成されている。半導体装置100では、所定の導電型と濃度および厚さを有する不純物拡散層21,22を適宜所定のフィールド領域F1〜F4,F5,F8に形成することにより、一つの半導体基板20に種々の特性を有する両面電極素子当該素子41〜43,51,52や種々の能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52を形成することが可能となる。
【0051】
図1の半導体装置100には、縦型MOSトランジスタ素41やIGBT素子42のような両面電極素子が形成されるため、電力用途の半導体装置として好適である。半導体装置100は、バルク単結晶シリコン基板20が用いられているため、縦型MOSトランジスタ素子41やIGBT素子42のような両面電極素子を形成する場合、大電流化やESD等のサージに対する耐量増加が容易である。また、埋め込み酸化膜がないため、SOI基板を用いた半導体装置に較べて放熱性を高めることができる。
【0052】
また、上記絶縁分離構造によれば、図1に示す半導体装置100のように、縦型MOSトランジスタ素子41やIGBT素子42のような両面電極素子当該素子とバイポーラトランジスタ素子31や横型MOSトランジスタ素子33のような片面電極素子を組み合わせた、複合ICとすることができる。
【0053】
図1の半導体装置100では、複数個の能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52からなる集積構造を実現するにあたって、半導体装置100に用いられる半導体基板20は、図15に示した半導体装置90のような埋め込み酸化膜3を有するSOI基板1ではなく、一般的で安価なバルク単結晶シリコン基板であってよい。また、図1に示す半導体基板20は、当該半導体基板20を貫通する絶縁分離トレンチTに取り囲まれて複数のフィールド領域F1〜F8に分割されており、これらの異なるフィールド領域F1〜F8に分散して、複数個の能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52がそれぞれ配置されている。これにより、半導体装置100においては、複数個の能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52が、半導体基板20を貫通する絶縁分離トレンチTによって互いに絶縁分離され、集積化されることとなる。また、半導体基板20は、埋め込み酸化膜のないバルク単結晶シリコン基板でよいため、半導体装置100を構成する能動素子41〜43および受動素子51,52が前述したような両面電極素子である場合であっても、集積化が可能である。さらに、半導体装置100は、後述する製造方法によって、安価に製造することが可能である。
【0054】
図2は、別の半導体装置の例で、半導体装置101の模式的な断面を示す図である。尚、図2の半導体装置101において、図1の半導体装置100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0055】
図1の半導体装置100は、N導電型(n−)のバルク単結晶シリコン基板からなる半導体基板20に形成されていた。これに対して、図2の半導体装置101は、N導電型(n+)のバルク単結晶シリコン基板61上にN導電型(n−)のシリコンエピタキシャル層62を形成した、エピタキシャル基板からなる半導体基板60に形成されている。
【0056】
図1と図2の半導体装置100,101における半導体基板20,60は、取り扱う上で必要な所定の強度を確保するため、所定の基板厚さが必要である。また、例えば縦型MOSトランジスタ素子41やIGBT素子42のような電力用の両面電極素子を形成する場合、高耐圧とするためには、不純物濃度が低い(n−)キャリアのドリフト層が必要である。一方、低ON抵抗の素子とするためには、不純物濃度が高い(n+)ドリフト層が必要である。図2の半導体装置101におけるエピタキシャル基板60によれば、N導電型(n+)のバルク単結晶シリコン基板61を強度確保のための支持基板とし、厚さと不純物濃度を適宜設定したN導電型(n−)のシリコンエピタキシャル層62をキャリアのドリフト層として、高耐圧あるいは低ON抵抗の両面電極素子を形成することが可能となる。
【0057】
尚、図2の半導体装置101においても、図1の半導体装置100と同様の複数個の能動素子31〜33,41〜43および受動素子51,52が、それぞれ異なるフィールド領域に分散して配置されている。また、図2の半導体装置101も、二個以上の両面電極素子41〜43,51,52を有しており、半導体基板60の第2面S2側には、少なくとも該両面電極素子41〜43,51,52以上の数の電極が形成されている。
【0058】
以上のようにして、図1と図2に示す半導体装置100,101は、いずれも、能動素子または受動素子が一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置であって、二個以上ある両面電極素子についても絶縁分離と集積化が可能であり、安価な半導体装置となっている。
【0059】
次に、図1,図2に示した半導体装置100,101の製造方法について説明する。
【0060】
図3(a)〜(e)は、図1の半導体装置100を簡略化した半導体装置102の製造方法を示す工程別の断面図である。図3(e)に示す半導体装置102には、両面電極素子である縦型MOSトランジスタ素子41とIGBT素子42が形成されている。尚、図3(e)の半導体装置102において、図1の半導体装置100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0061】
半導体装置102を製造するにあたって、最初に、図3(a)に示す基板準備工程において、所定厚さ(例えば400μm)の素子形成用半導体基板20aを準備する。
【0062】
次に、図3(b)に示す未貫通絶縁分離トレンチ形成工程において、フィールド領域F4,F5となる各領域を取り囲むようにして、素子形成用半導体基板の第1面S1側表面から所定深さ(例えば150μm)に、未貫通絶縁分離トレンチTaを形成する。未貫通絶縁分離トレンチTaは、トレンチ内に絶縁体が埋め込まれてなる未貫通絶縁分離トレンチ、トレンチ内に側壁酸化膜を介して導電体が埋め込まれてなる未貫通絶縁分離トレンチおよびトレンチ内が空洞である未貫通絶縁分離トレンチのいずれかであってよい。尚、トレンチ内が空洞である未貫通絶縁分離トレンチTaを形成する場合には、次の図3(c)に示す第1面側素子形成工程において、未貫通絶縁分離トレンチTaの第1面S1側表面にある開口部を絶縁体で蓋する。
【0063】
次に、図3(c)に示す第1面側素子形成工程において、素子形成用半導体基板20aの第1面S1側で、両面電極素子である縦型MOSトランジスタ素子41とIGBT素子42の第1面S1側の各部を形成するために必要な各工程を実施する。
【0064】
次に、図3(d)に示す基板研磨工程において、素子形成用半導体基板20aの第2面S2側から、未貫通絶縁分離トレンチTaの先端が露出する(例えば120μmの基板厚さになる)まで研磨する。尚、機械的な研磨の後で、ダメージ層を除去するため、研磨面をウェットエッチングするのが望ましい。これにより、素子形成用半導体基板20aを所定厚さの半導体基板20とすると共に、未貫通絶縁分離トレンチTaが半導体基板20を貫通する絶縁分離トレンチTとなる。
【0065】
最後に、基板研磨工程後の図3(e)に示す第2面側素子形成工程において、半導体基板20の第2面S2側で、不純物拡散層21,22を形成するためのイオン注入工程を実施すると共に、両面電極素子である縦型MOSトランジスタ素子41とIGBT素子42の第2面S2側の各部を形成するために必要な各工程を実施する。
【0066】
以上で、半導体装置102が完成する。
【0067】
尚、図3(a)〜(e)に示す半導体装置102の製造方法においては、図3(c)に示した第1面側素子形成工程を、図3(b)の未貫通絶縁分離トレンチ形成工程と図3(d)の基板研磨工程の間で実施している。上記半導体装置102の製造方法における第1面側素子形成工程は、例えば図3(b)の未貫通絶縁分離トレンチ形成工程の前、あるいは図3(d)の基板研磨工程後に実施することも可能である。しかしながら、第1面側素子形成工程を図3(b)の未貫通絶縁分離トレンチ形成工程後に実施することで、図3(b)の未貫通絶縁分離トレンチ形成工程の実施に伴う素子形成への悪影響を防止することができ、第1面側素子形成工程を図3(d)の基板研磨工程前に実施することで、基板厚さが薄くなる前の取り扱いが容易状態で第1面側素子形成工程を実施することが可能となる。
【0068】
図3(a)〜(e)に示す半導体装置102の製造方法は、縦型MOSトランジスタ素子41とIGBT素子42を一つの半導体基板20に形成するにあたって、特殊な工程を必要とせず、一般的なバルク単結晶シリコン基板への加工工程のみで構成されている。また、図3(a)〜(e)に示す半導体装置102の製造方法は、縦型MOSトランジスタ素子41とIGBT素子42を絶縁分離するにあたって、図15の半導体装置90において説明した基板貼り合わせ工程が必要な埋め込み酸化膜を有するSOI基板を用いることなく、安価なバルク単結晶シリコン基板を用いて当該基板を貫通する絶縁分離トレンチを形成するだけでよいため、製造工程が簡略化されている。
【0069】
また、縦型MOSトランジスタ素子41とIGBT素子42は両面電極素子であるが、図3(a)〜(e)に示す半導体装置102の製造方法では、素子形成用半導体基板20aの第1面S1側において実施する図3(c)の第1面側素子形成工程と、基板研磨工程後の半導体基板20の第2面S2側において実施する図3(e)の第2面側素子形成工程とに分けて、縦型MOSトランジスタ素子41とIGBT素子42を形成するようにしている。これによって、両面電極素子を含んだ半導体装置102であっても、製造が可能となる。
【0070】
以上のようにして、図3(a)〜(e)に示す半導体装置102の製造方法は、二個以上の両面電極素子を含む能動素子または受動素子が一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置の製造方法であって、両面電極素子についても絶縁分離と集積化が可能であり、安価に製造することのできる半導体装置の製造方法となっている。
【0071】
尚、図3(a)〜(e)に示した半導体装置102の製造方法では、素子形成用半導体基板20aとしてバルク単結晶シリコン基板が用いられ、半導体装置102は、図1に示した半導体装置100と同様に、バルク単結晶シリコン基板に形成されてなる半導体装置である。一方、図2に示した半導体装置101と同様のエピタキシャル基板に形成されてなる半導体装置についても、図3(a)〜(e)に示した製造方法で、同じように製造することができる。この場合には、図3(a)に示す基板準備工程において、素子形成用半導体基板としてバルク単結晶シリコン基板上にシリコンエピタキシャル層を形成したエピタキシャル基板を準備し、図3(b)〜(e)に示した各工程において、素子形成用半導体基板の第1面S1側表面をシリコンエピタキシャル層となるようにして、各工程を実施すればよい。
【0072】
次に、図1〜図3に示した半導体装置100〜102と同様の半導体装置について、接続配線や回路基板への実装等の適用形態を説明する。
【0073】
図4は、半導体装置103の模式的な断面図で、半導体装置103に形成されている各両面電極素子の接続配線の一例を示す図である。尚、図4の半導体装置103において、図1の半導体装置100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0074】
図4の半導体装置103における両面電極素子41〜44,51,52は、前述したように、当該素子41〜43,51,52を駆動するための図4においてハッチングを施した一組の電極dr1,dr2が半導体基板20の第1面S1側と第2面S2側の両側の表面に分散して配置されてなる素子である。このため、二個以上の両面電極素子41〜44,51,52を有する半導体装置103では、半導体基板の第1面S1側と第2面S2側の両面において、それぞれ、層間絶縁膜Z1,Z2を介して配線L1,L2が形成されている。また、配線素子である高不純物濃度素子52は、半導体基板20の第1面S1側と第2面S2側を接続する配線として用いられている。
【0075】
図5(a),(b)は、それぞれ、回路基板Pへの半導体装置104の実装状態を示した模式的な断面図である。尚、図5の半導体装置104において、図1の半導体装置100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0076】
図5(a)では、半導体装置104に形成された両面電極素子41の第2面S2側の電極dr2同士が、回路基板Pに設けられた配線PLによって接続されている。このように、本発明の半導体装置に形成される両面電極素子の第2面側の電極は、回路基板側の配線を用いて、当該半導体装置を回路基板へ実装する際に接続するようにしてもよい。
【0077】
図5(b)では、半導体装置104に形成された両面電極素子41の第2面S2側の電極dr2が、回路基板Pに設けられたヒートシンクPhに接続されている。このように、本発明の半導体装置に形成される両面電極素子の第2面側の電極は、回路基板側のヒートシンクに接続して、放熱に利用することができる。
【0078】
次に、図1〜図5に示した半導体装置100〜104と同様の半導体装置について、より具体的な応用形態を説明する。
【0079】
図6は、ハーフブリッジ回路が構成されてなる半導体装置110を示す図で、図6(a)は、半導体装置110の等価回路図であり、図6(b)は、半導体装置110の模式的な断面図である。尚、以下の図6〜図11に示す半導体装置110〜115において、図1〜図5に示した半導体装置100〜104と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0080】
図6に示す半導体装置110においては、半導体基板20に、両面電極素子として2個の同一構造を有する縦型MOSトランジスタ素子41a,41bが形成されている。この2個の縦型MOSトランジスタ素子41a,41bは、図6(b)に示すように、半導体基板20を貫通する埋め込み金属Mkが形成された配線素子として機能する両面電極素子52aを介して直列接続されている。この直列接続された2個の縦型MOSトランジスタ素子41a,41bで図6(a)に示すハーフブリッジ回路が構成されており、このハーフブリッジ回路の出力が、直列接続された2個の縦型MOSトランジスタ素子41a,41bの接続点から取り出される。尚、ハーフブリッジ回路が構成されてなる半導体装置110の出力取り差し端子Lは、図6(b)では縦型MOSトランジスタ素子41aのソース側である第1面S1側に配置されているが、縦型MOSトランジスタ素子41bのドレイン側である第2面S2側に配置することも可能である。
【0081】
図7は、ハーフブリッジ回路が構成されてなる別の半導体装置111を示す図で、図7(a)は、半導体装置111の等価回路図であり、図7(b)は、半導体装置111の模式的な断面図である。
【0082】
図7に示す半導体装置111においては、半導体基板20に、両面電極素子として2個の同一構造を有するIGBT素子42a,42bが形成されている。また、半導体装置111では、各IGBT素子42a,42bに対して、別の両面電極素子であるダイオード素子43a,43bが並列接続されている。この各IGBT素子42a,42bに対して並列接続されているダイオード素子43a,43bは、例えば後述する3相インバータのパワーモジュールにおいて、所謂フリーホイールダイオード(FWD)として利用することが可能である。尚、図6に示した半導体装置110においても、同様にダイオード素子43a,43bを接続することが可能である。
【0083】
図7の半導体装置111における2個のIGBT素子42a,42bは、図6の半導体装置110と同様に、図7(b)に示すように、配線素子として機能する両面電極素子52aを介して直列接続されている。この直列接続された2個のIGBT素子42a,42bで図7(a)に示すハーフブリッジ回路が構成されており、このハーフブリッジ回路の出力が直列接続された2個のIGBT素子42a,42bの接続点から取り出される。尚、図7の半導体装置111においても、ハーフブリッジ回路の出力取り差し端子Lは、IGBT素子42aのエミッタ側である第1面S1側とIGBT素子42bのコレクタ側である第2面S2側のどちらに配置することも可能である。
【0084】
図8は、Hブリッジ回路が構成されてなる半導体装置112を示す図で、図8(a)は、半導体装置112の等価回路図であり、図8(b)は、半導体装置112の模式的な断面図である。
【0085】
図8に示す半導体装置112は、図6に示した半導体装置110のハーフブリッジ回路が2組構成されてなる半導体装置に相当する。半導体装置112においては、半導体基板20に両面電極素子として4個の同一構造を有する縦型MOSトランジスタ素子41a〜41dが形成されており、各組の2個の縦型MOSトランジスタ素子41a,41bと41c,41dとが、それぞれ、図8(b)に示すように、配線素子として機能する両面電極素子52a,52bを介して直列接続されている。この直列接続された各組の2個の縦型MOSトランジスタ素子41a,41bと41c,41dとがさらに並列接続されて、図8(a)に示すHブリッジ回路が構成されており、このHブリッジ回路の出力が直列接続された各組の2個の縦型MOSトランジスタ素子41a,41bと41c,41dの各接続点から取り出される。尚、半導体装置112においても、Hブリッジ回路の出力取り差し端子L1,L2が、図8(b)ではそれぞれ縦型MOSトランジスタ素子41a,41cのソース側である第1面S1側に配置されているが、縦型MOSトランジスタ素子41b,41dのドレイン側である第2面S2側に配置することも可能である。
【0086】
図9は、Hブリッジ回路が構成されてなる別の半導体装置113を示す図で、図9(a)は、半導体装置113の等価回路図であり、図9(b)は、半導体装置113の模式的な断面図である。
【0087】
図9に示す半導体装置113は、図7に示した半導体装置111のハーフブリッジ回路が2組構成されてなる半導体装置に相当する。半導体装置113においては、半導体基板20に両面電極素子として4個の同一構造を有するIGBT素子42a〜42dが形成されている。また、各IGBT素子42a〜42dに対して、別の両面電極素子であるダイオード素子43a〜43dが並列接続されている。尚、半導体装置113においても、Hブリッジ回路の出力取り差し端子L1,L2が、図9(b)ではそれぞれIGBT素子42a,42cのエミッタ側である第1面S1側に配置されているが、IGBT素子42b,42dのコレクタ側である第2面S2側に配置することも可能である。
【0088】
同様にして、3相インバータのパワーモジュールが構成されてなる半導体装置とすることも可能である。この場合には、図6や図7に示した半導体装置110,111のハーフブリッジ回路が3組構成されてなる半導体装置とすればよい。この3組のハーフブリッジ回路におけるそれぞれの直列接続された2個の縦型MOSトランジスタ素子やIGBT素子の接続点から、3相インバータの各相の出力が取り出される構成とする。この3相インバータのパワーモジュールが構成されてなる半導体装置については、後で詳述する。
【0089】
図8(a)や図9(a)に示したHブリッジ回路は、図1〜図5に示した半導体装置100〜104と同様の半導体装置を利用して、別構成の半導体装置とすることも可能である。
【0090】
図10は、Hブリッジ回路が構成されてなる別の半導体装置114を示す図で、図10(a)は、半導体装置114の等価回路図であり、図10(b)は、半導体装置114の模式的な断面図である。
【0091】
図10(a)に示すように、半導体装置114の等価回路図は、図8(a)に示した半導体装置112の等価回路図と基本的に同じものとなっている。一方、図8に示した半導体装置112では一枚の半導体基板20にHブリッジ回路が形成されていたのに対し、図10に示す半導体装置114は、2個一組でHブリッジ回路を構成するため、それぞれ、半導体基板22,23に形成された半導体装置114H,114Lで構成されている。
【0092】
半導体装置114H,114Lにおいては、それぞれ、半導体基板22,23に両面電極素子として2個ずつの同一構造を有する縦型MOSトランジスタ素子41Ha,41Hbと41La,41Lbが形成されている。2個の半導体装置114H,114Lは、図10(b)に示すように、2本のリードM1,M2を挟んで積層されている。そして、半導体装置114H,114Lの縦型MOSトランジスタ素子41Ha,41La同士および縦型MOSトランジスタ素子41Hb,41Lb同士が、それぞれ、リードM1,M2を介して直列接続されて、Hブリッジ回路が構成されている。このリードM1,M2から、Hブリッジ回路の出力が取り出される。
【0093】
図11は、Hブリッジ回路が構成されてなる別の半導体装置115を示す図で、図11(a)は、半導体装置115の等価回路図であり、図11(b)は、半導体装置115の模式的な断面図である。
【0094】
図11(a)に示すように、半導体装置115の等価回路図は、図9(a)に示した半導体装置113の等価回路図と基本的に同じものとなっている。一方、図9に示した半導体装置113では一枚の半導体基板20にHブリッジ回路が形成されていたのに対し、図11に示す半導体装置115は、2個一組でHブリッジ回路を構成するため、それぞれ、半導体基板22,23に形成された半導体装置115H,115Lで構成されている。
【0095】
半導体装置115H,115Lにおいては、それぞれ、半導体基板22,23に両面電極素子として2個ずつの同一構造を有するIGBT素子42Ha,42Hbと42La,42Lbが形成されている。また、各IGBT素子42Ha,42Hb,42La,42Lbに対して、別の両面電極素子であるダイオード素子43Ha,43Hb,43La,43Lbが並列接続されている。2個の半導体装置115H,115Lは、図11(b)に示すように、2本のリードM1,M2を挟んで積層されている。そして、半導体装置115H,115LのIGBT素子42Ha,42La同士およびIGBT素子42Hb,42Lb同士が、それぞれ、リードM1,M2を介して直列接続されて、Hブリッジ回路が構成されている。このリードM1,M2から、Hブリッジ回路の出力が取り出される。
【0096】
尚、図10や図11に示した半導体装置114,115と同様にして、ハーフブリッジ回路が形成されてなる半導体装置や3相インバータのパワーモジュールを構成するための半導体装置を、2個一組の半導体装置で構成できることはいうまでもない。
【0097】
また、図6〜図11では半導体装置110〜115の要部のみ図示したが、図1〜図5に示した半導体装置100〜104のように、半導体基板20,22,23の別位置に、別の両面電極素子や片面電極素子が形成されていてもよい。図6〜図11に示す半導体装置110〜115のように、両面電極素子が電力用途のパワー素子である場合には、半導体基板の別位置に例えば片面電極素子を形成すれば、該片面電極素子を両面電極素子の制御に用いることができる。これによれば、該半導体装置を、電力用途のパワー素子と該パワー素子を制御するための片面電極素子が一つの半導体基板に形成された複合ICとすることができる。
【0098】
次に、図1〜図5に示した半導体装置100〜104と同様の半導体装置について、電力用途の3相インバータのパワーモジュールへの適用形態を説明する。
【0099】
図12は、3相インバータのパワーモジュール(IPM)の回路図である。
【0100】
図12に示すように、点線で囲った3相インバータのパワーモジュール(IPM)は、3相交流の各相u,v,wに対応して、3組の直列接続された電力用トランジスタ(HTu,LTu),(HTv,LTv),(HTw,LTw)で構成される。3相交流の各相u,v,wの出力は、それぞれ、高電位側の3個の電力用トランジスタHTu,HTv,HTwのソースと低電位側の3個の電力用トランジスタLTu,LTv,LTwのドレインの接続点から取り出される。また、各電力用トランジスタHTu,HTv,HTw,LTu,LTv,LTwは、ドライバ回路からのゲートへの入力信号によって駆動される。
【0101】
図13は、図12の3相インバータのパワーモジュール(IPM)が構成されてなる半導体装置の一例で、半導体装置105の模式的な断面図である。尚、図13の半導体装置105において、図1の半導体装置100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0102】
図13の半導体装置105は、一つの半導体基板20に、図12の各電力用トランジスタHTu,HTv,HTw,LTu,LTv,LTwが両面電極素子として形成されてなる半導体装置である。半導体装置105では、高電位側の3個の電力用トランジスタHTu,HTv,HTwと低電位側の3個の電力用トランジスタLTu,LTv,LTwは、それぞれ、第1面S1側の配線L1,高不純物濃度素子52および第2面S2側の配線L2によって、直列接続されている。また、図12に示すドライバ回路は、片面電極素子等を用いて、同じ半導体基板20の別位置に形成することができる。
【0103】
図14は、図12の3相インバータのパワーモジュール(IPM)が構成されてなる半導体装置の別の例で、半導体装置106の模式的な断面図である。尚、図14の半導体装置106においても、図1の半導体装置100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0104】
図14の半導体装置106は、2つの半導体装置106H,106Lで構成され、樹脂Mによってモールドされてなる半導体装置である。半導体装置106Hでは、半導体基板22に、図12に示す高電位側の3個の電力用トランジスタHTu,HTv,HTwが、両面電極素子として形成されている。半導体装置106Lでは、半導体基板23に、図12に示す低電位側の3個の電力用トランジスタLTu,LTv,LTwが、両面電極素子として形成されている。半導体装置106Hの各電力用トランジスタHTu,HTv,HTwのソース電極dr1Hと半導体装置106Lの各電力用トランジスタLTu,LTv,LTwのドレイン電極dr2Lは、それぞれ、3相交流の各相u,v,wの出力を取り出すリードピンMu,Mv,Mwに直接接続されている。半導体装置106Hの各電力用トランジスタHTu,HTv,HTwのドレイン電極dr2Hは、電源に接続されるリードピンMdおよびヒートシンクMdhに共通接続されている。半導体装置106Lの各電力用トランジスタLTu,LTv,LTwのソース電極dr1Lは、グランドに接続されるリードピンMgおよびヒートシンクMghに共通接続されている。このように、各半導体装置106H,106Lは、電極dr1H,dr2H,dr1L,dr2LがリードピンMu,Mv,Mw,Md,Mgに直接接続されると共に、ヒートシンクMdh,Mghにも接続されている。このため、図12に示す半導体装置106は、低損失で高い放熱性を有する3相インバータのパワーモジュール(IPM)とすることができる。
【0105】
図12に示す半導体装置106のように、上記した半導体装置100〜106および110〜115における両面電極素子は、当該素子を駆動するための一組の電極が半導体基板の両側の表面に分散して配置されているため、これらの電極をリードフレームやヒートシンクに直接接続することで、低損失で高い放熱性を有する半導体装置とすることができる。従って、高耐圧かつ大電流駆動が必要な車載用の半導体装置として、特に好適である。
【0106】
以上示したように、本発明の半導体装置の製造方法は、いずれも、能動素子または受動素子が一つの半導体基板に複数個形成されてなる半導体装置の製造方法であって、両面電極素子についても絶縁分離と集積化が可能であり、安価に製造することのできる半導体装置の製造方法となっている。
【符号の説明】
【0107】
90,100〜106,110〜113,106H,106L,114H,114L,115H,115L 半導体装置
20〜23,60 半導体基板
20a 素子形成用半導体基板
S1 第1面
S2 第2面
T 絶縁分離トレンチ
Ta 未貫通絶縁分離トレンチ
F1〜F8 フィールド領域
31〜33 能動素子(片面電極素子)
41〜43,41a〜41d,41Ha,41Hb,41La,41Lb,42a〜42d,42Ha,42Hb,42La,42Lb,43a〜43d,43Ha,43Hb,43La,43Lb,HTu,HTv,HTw,LTu,LTv,LTw 能動素子(両面電極素子)
51,52,52a,52b 受動素子(両面電極素子)
ds1 電極(片面電極素子)
dr1,dr1H,dr1L 電極(両面電極素子の第1面側)
dr2,dr2H,dr2L 電極(両面電極素子の第2面側)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの半導体基板が、当該半導体基板を貫通する絶縁分離トレンチに取り囲まれて、複数のフィールド領域に分割されてなり、
前記半導体基板を用いた能動素子または受動素子が、当該半導体基板に複数個形成され、それぞれ異なる前記フィールド領域に分散して配置されてなり、
前記複数個の能動素子または受動素子のうち、二個以上の素子が、
当該素子を駆動するための一組の電極が前記半導体基板の両側の表面に分散して配置されてなる、両面電極素子である半導体装置の製造方法であって、
所定厚さの素子形成用半導体基板を準備する基板準備工程と、
前記複数のフィールド領域となる各領域を取り囲むようにして、前記素子形成用半導体基板の第1面側表面から所定深さに、未貫通絶縁分離トレンチを形成する未貫通絶縁分離トレンチ形成工程と、
前記素子形成用半導体基板の第2面側から、前記未貫通絶縁分離トレンチの先端が露出するまで研磨して、素子形成用半導体基板を前記半導体基板とすると共に未貫通絶縁分離トレンチを前記絶縁分離トレンチとする基板研磨工程と、
前記素子形成用半導体基板の第1面側において、前記複数個の能動素子または受動素子を形成するための第1面側素子形成工程と、
前記基板研磨工程後、前記半導体基板の前記第2面側において、前記複数個の能動素子または受動素子を形成するための第2面側素子形成工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1面側素子形成工程を、
前記未貫通絶縁分離トレンチ形成工程と前記基板研磨工程の間で実施することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記素子形成用半導体基板が、
バルク単結晶シリコン基板上にシリコンエピタキシャル層を形成した、エピタキシャル基板であり、
前記素子形成用半導体基板の第1面側表面が、前記シリコンエピタキシャル層であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記未貫通絶縁分離トレンチが、
トレンチ内に絶縁体が埋め込まれてなる未貫通絶縁分離トレンチ、トレンチ内に側壁酸化膜を介して導電体が埋め込まれてなる未貫通絶縁分離トレンチおよびトレンチ内が空洞である未貫通絶縁分離トレンチのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体基板の少なくとも一方の面側に、当該半導体基板と異なる導電型または異なる濃度の不純物拡散層が形成されてなり、
前記基板研磨工程後において、前記不純物拡散層を形成するためのイオン注入工程を実施することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記不純物拡散層が、
前記複数のフィールド領域のうち、一部のフィールド領域に形成されてなることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
一つの半導体基板が、当該半導体基板を貫通する絶縁分離トレンチに取り囲まれて、複数のフィールド領域に分割されてなり、
前記半導体基板を用いた能動素子または受動素子が、当該半導体基板に複数個形成され、それぞれ異なる前記フィールド領域に分散して配置されてなり、
前記複数個の能動素子または受動素子のうち、二個以上の素子が、
当該素子を駆動するための一組の電極が前記半導体基板の両側の表面に分散して配置されてなる、両面電極素子である半導体装置の製造方法であって、
所定厚さの素子形成用半導体基板を準備する基板準備工程と、
前記複数のフィールド領域となる各領域を取り囲むようにして、前記素子形成用半導体基板の第1面側表面から所定深さに、未貫通絶縁分離トレンチを形成する未貫通絶縁分離トレンチ形成工程と、
前記素子形成用半導体基板の第2面側から、前記未貫通絶縁分離トレンチの先端が露出するまで研磨して、素子形成用半導体基板を前記半導体基板とすると共に未貫通絶縁分離トレンチを前記絶縁分離トレンチとする基板研磨工程と、
前記素子形成用半導体基板の第1面側において、前記複数個の能動素子または受動素子を形成するための第1面側素子形成工程と、
前記基板研磨工程後、前記半導体基板の前記第2面側において、前記複数個の能動素子または受動素子を形成するための第2面側素子形成工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1面側素子形成工程を、
前記未貫通絶縁分離トレンチ形成工程と前記基板研磨工程の間で実施することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記素子形成用半導体基板が、
バルク単結晶シリコン基板上にシリコンエピタキシャル層を形成した、エピタキシャル基板であり、
前記素子形成用半導体基板の第1面側表面が、前記シリコンエピタキシャル層であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記未貫通絶縁分離トレンチが、
トレンチ内に絶縁体が埋め込まれてなる未貫通絶縁分離トレンチ、トレンチ内に側壁酸化膜を介して導電体が埋め込まれてなる未貫通絶縁分離トレンチおよびトレンチ内が空洞である未貫通絶縁分離トレンチのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体基板の少なくとも一方の面側に、当該半導体基板と異なる導電型または異なる濃度の不純物拡散層が形成されてなり、
前記基板研磨工程後において、前記不純物拡散層を形成するためのイオン注入工程を実施することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記不純物拡散層が、
前記複数のフィールド領域のうち、一部のフィールド領域に形成されてなることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−110429(P2013−110429A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−2720(P2013−2720)
【出願日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【分割の表示】特願2007−265766(P2007−265766)の分割
【原出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【分割の表示】特願2007−265766(P2007−265766)の分割
【原出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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