説明

半導体装置の製造方法

【課題】レジスト形状の制限が無く、またステップカバレッジの悪い成膜方法を用いなくても良いリフトオフ工程が行えるようにする。
【解決手段】レジスト2の上に被パターニング膜3を成膜したのち、イオン照射によって被パターニング膜3のコーナ部を選択的にエッチングすることでレジスト2を露出させるようする。そして、レジスト2を除去することで、レジスト2の上の被パターニング膜3をリフトオフさせ、被パターニング膜3をパターニングする。このようにしてリフトオフ工程を行えば、レジスト2の側面において被パターニング膜3が厚く形成されていたとしても、イオン照射によってレジスト2を露出させることができる。このため、レジスト2の側面での被パターニング膜3の厚みの制限を受けないため、あえてステップカバレッジの悪い成膜方法を用いなくても良くなり、ステップカバレッジの良い成膜方法を選択することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフトオフ法によって被パターニング膜を所望形状にパターニングするリフトオフ工程を有する半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、リフトオフ法を用いて被パターニング膜を所望形状にパターニングすることが行われている。リフトオフ法では、所望形状に露光したレジストの上に被パターニング膜を配置し、レジストと共に被パターニング膜のうちのレジスト上に配置された部分を除去することで、レジストが形成されていなかった場所に被パターニング膜を残す。このようなリフトオフ法では、リフトオフ時にレジストの側面が被パターニング膜から露出させられる必要があるため、レジストの側面に被パターニング膜が付着していると良好なリフトオフが行えない。このため、特許文献1では、レジストの側面が逆テーパ形状、つまりレジストが配置される半導体基板などの表面に対してレジストの側面が成す角度が鋭角となるようにしている。
【0003】
また、リフトオフ法を用いた被パターニング膜のパターニングとして、特許文献2に示される方法もある。この方法では、レジスト側面において被パターニング膜をライトエッチングによって除去することでレジスト側面を露出させ、その後、レジストと共にレジスト上の被パターニング膜を除去することで、レジストが形成されていなかった場所に被パターニング膜を残すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−207904号公報
【特許文献2】特開平05−62948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、レジストの側面を逆テーパ形状にする手法では、レジストを露光する際に斜め方向の照射成分を用いるなどの方法が必要であり、露光条件、使用レジストが制限されるという問題がある。さらに、レジストの側面において被パターニング膜の成膜される量が少なくなるように、ステップカバレッジの悪い成膜方法を行わなければならない。また、ステップカバレッジの悪い成膜方法を用いても、ある程度はレジストの側面に被パターニング膜が成膜されることになるが、レジストの側面に成膜できる被パターニング膜の膜厚は薄くなければならないため、必然的に、レジスト上やレジストが配置されていない場所に配置できる被パターニング膜の膜厚についても限定されることになる。
【0006】
一方、特許文献2のように、ライトエッチングのような等方性エッチングによってレジストの側面において被パターニング膜を除去する場合、エッチングが等方的に行われるため、平坦部での膜減りも顕著になる。このため、レジストの側面において被パターニング膜の膜厚が薄い場合、つまりステップカバレッジの悪い成膜方法を用いる場合にしか適用できない。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、ステップカバレッジの悪い成膜方法を用いなくても良いリフトオフ工程を行うことができる半導体装置の製造方法を提供することを第1の目的とする。また、露光条件、使用レジストが制限されることなく、かつ、ステップカバレッジの悪い成膜方法を用いなくても良いリフトオフ工程を行うことができる半導体装置の製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、リフトオフ工程では、犠牲層(2)を所望形状にパターニングしたのち、犠牲層(2)の表面を含む基板(1)の表面に被パターニング膜(3)を形成する工程と、基板(1)の表面に対する法線方向からイオン照射を行うことにより、犠牲層(2)のパターンエッジ部に形成される被パターニング膜(3)の段差部の上方側コーナ部を選択的に除去することで、該コーナ部において犠牲層(2)を露出させる工程と、犠牲層(2)の露出部分から犠牲層(2)を除去することで、被パターニング膜(3)のうち犠牲層(2)の上に形成されていた部分を除去し、犠牲層(2)が形成されていなかった部分において被パターニング膜(3)を残す工程と、を行うことを特徴としている。
【0009】
このように、イオン照射によって被パターニング膜(3)のコーナ部を除去することで犠牲層(2)を露出させるようにし、この犠牲層(2)の露出部分から犠牲層(2)を除去するようにしている。このため、犠牲層(2)の側面において被パターニング膜(3)が厚く形成されていたとしても、イオン照射によって犠牲層(2)を露出させることができる。このため、犠牲層(2)の側面での被パターニング膜(3)の厚みの制限を受けないため、あえてステップカバレッジの悪い成膜方法を用いなくても良くなる。したがって、ステップカバレッジの悪い成膜方法を用いなくても良いリフトオフ工程を行うことが可能となる。
【0010】
また、この場合には、ステップカバレッジの良い成膜方法を選択することもできる。ステップカバレッジの悪い成膜方法として蒸着が用いられることが多いが、蒸着膜は膜質が悪い、あるいは、高融点材料への適用に限界があることから、ステップカバレッジの良い成膜方法、例えばスパッタやCVDを適用することで、膜質を良くできると共に高融点材料への適用限界をより高くすることが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、イオン照射では、該イオン照射に用いる原料ガスとして、被パターニング膜(3)を構成する材料を化学的にエッチングする元素を含まないものを用いることを特徴としている。
【0012】
このようにすれば、被パターニング膜(3)の等方性エッチングが同時に行われることを抑制でき、平坦部での膜減りを抑制できる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、犠牲層はレジスト(2)であり、イオン照射の原料ガスとして酸素を含むガスを用いることを特徴としている。
【0014】
このように、イオン照射に用いる原料ガスに酸素を含むガスを混ぜるようにすれば、酸素プラズマが生成され、これが被パターニング膜(3)に付着したレジスト材料と反応し、揮発性化合物を形成し除去するというアッシング作用を奏することができる。そして、請求項1に記載の製造方法によれば、レジスト(2)を露光してパターニングする際に、レジスト(2)の側面が順テーパ形状、つまりレジスト(2)の側面のうち基板(1)側の端部の方が基板(1)と反対側の端部よりも突き出た状態となっていても、イオン照射によってレジスト(2)を露出させられる。このため、露光条件、使用レジストが制限されないようにできる。なお、このようなイオン照射の原料ガスとして酸素を含むガスを用いることは、請求項4に記載したように、イオン照射終了前の一定時間、もしくは、イオン照射の終了後に行うようにしても良い。
【0015】
請求項5に記載の発明では、犠牲層(2)を露出させる工程では、被パターニング膜(3)のうち基板(1)の表面に形成された部分となる平坦部の表面が平坦になるまでイオン照射を行うことを特徴としている。
【0016】
このようにすれば、最終的に残される被パターニング膜(3)のパターン端にバリ形状が残らないようにすることが可能となる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、リフトオフ工程では、犠牲層(2)を所望形状にパターニングしたのち、犠牲層(2)の表面を含む基板(1)の表面に被パターニング膜(3)を形成する工程と、被パターニング膜(3)の表面に、該被パターニング膜(3)とは異なる材料で構成される保護膜(4)を成膜する工程と、基板(1)の表面に対する法線方向からイオン照射を行うことにより、犠牲層(2)のパターンエッジに形成される保護膜(4)の段差部の上方側コーナ部を選択的に除去することで、該コーナ部において被パターニング膜(3)を露出させる工程と、被パターニング膜(3)の露出部分から、犠牲層(2)の段差によって構成される被パターニング膜(3)のコーナ部を選択的に除去することで、該コーナ部において犠牲層(2)を露出させる工程と、犠牲層(2)の露出部分から犠牲層(2)を除去することで、被パターニング膜(3)のうち犠牲層(2)の上に形成されていた部分を除去し、犠牲層(2)が形成されていなかった部分において被パターニング膜(3)および保護膜(4)を残す工程と、被パターニング膜(3)の上に残った保護膜(4)を除去する工程と、を行うことを特徴としている。
【0018】
このように、犠牲層(2)の上に成膜した被パターニング膜(3)の上にさらに保護膜(4)を成膜し、イオン照射によって保護膜(4)のコーナ部を選択的にエッチングすることで被パターニング膜(3)を露出させるようにしている。そして、露出部分から被パターニング膜(3)のコーナ部を除去することで犠牲層(2)を露出させたのち、その露出部分から犠牲層(2)を除去することで、犠牲層(2)の上の被パターニング膜(3)および保護膜(4)をリフトオフさせ、被パターニング膜(3)をパターニングしている。このようにしても、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0019】
また、この場合にも、請求項7に記載したように、イオン照射の際に、原料ガスとして、保護膜(4)を構成する材料を化学的にエッチングする元素を含まないものを用いることにより、請求項2と同様の効果を得ることができる。
【0020】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法のうちのリフトオフ工程時の様子を示した断面図である。
【図2】第1実施形態の変形例において説明するリフトオフ工程時の様子を示した断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる半導体装置の製造方法のうちのリフトオフ工程時の様子を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。ここでは、半導体装置の製造方法の一工程として行われるリフトオフ工程、具体的には、被パターニング膜をリフトオフ法によって所望形状にパターニングする工程について説明する。例えば、リフトオフ工程は、被パターニング膜としてAl配線をパターニングしたりする場合に用いられる。図1に、リフトオフ工程時の断面図を示し、この図を参照してリフトオフ工程について説明する。
【0024】
〔図1(a)に示す工程〕
まず、リフトオフ工程の前工程を行うことで、被パターニング膜が形成される下地となる基板1を用意する。例えば、半導体基板に対してデバイスを形成したのち、その半導体基板の上に層間絶縁膜を形成したものを下地となる基板1として用意する。そして、下地となる基板1の表面に、レジスト2を塗布し、フォトリソグラフィ工程、つまり露光および現像を行うことで、所定形状にレジスト2をパターニングする。このとき、レジスト2の端部断面形状は逆テーパ形状にする必要はなく、垂直あるいは順テーパ形状でよい。
【0025】
続いて、基板1およびレジスト2の表面全面に被パターニング膜3を成膜する。このとき、被パターニング膜3を単層膜としても良いが、複数層が積層された多層膜としても良い。
【0026】
〔図1(b)に示す工程〕
被パターニング膜3の表面に対して、基板1の法線方向からイオン照射する工程を行う。これにより、被パターニング膜3がスパッタエッチングされる。このとき、スパッタエッチングの効率が被スパッタ面に対するイオンの入射角度に依存しており、入射角度が40〜50度程度の場合が最もレートが高くなる。したがって、図中に示したように、被パターニング膜3のコーナ部、つまりレジスト2の段差によって構成される被パターニング膜3の段差部でのコーナ部の最も先端位置においてイオンの入射角度が上記角度となることから、コーナ部が優先的にスパッタエッチングが為され、イオンの入射角度が上記角度となるようなコーナ部形状を保ちながらスパッタエッチングが進んでいく。これにより、被パターニング膜3のコーナ部においてテーパ量が大きくなる。このとき同時に、被パターニング膜3の平坦部もスパッタエッチングが為されるが、コーナ部と比較すると十分に少ない。
【0027】
このときのイオン照射の方法としては、原料ガスをイオン化して加速電極によって加速する方式であっても良いし、RFプラズマ発生装置などの陰極側に基板1を配し、プラズマ発生と同時に自己バイアス電圧を発生させるRFエッチング方式であっても良い。また、照射を行うイオンとしては、被パターニング膜3を構成する元素と結合して揮発性化合物を形成する元素を含まなければどのようなイオンを用いても良いが、例えばArイオンなどのように比較的重い粒子を照射すると好ましい。
【0028】
例えば、被パターニング膜3がAlの場合、原料ガスに塩素系ガス(Cl、BClなどのようにClを含むガス)を用いてRFエッチング方式でのイオン照射を行うと、Clを含むイオン種が形成される。この場合にも、上記したように、被パターニング膜3のコーナ部が優先的にスパッタエッチングされることになるが、塩素系ガスは物理的(スパッタ)エッチング効果以外に化学的なエッチング効果もあるため、Al膜の等方性エッチングも同時に進む。つまり、被パターニング膜3のうちコーナ部のテーパ形状部分のエッチングレートに対する平坦部のエッチングレートの比が小さくなり、平坦部での膜減りが顕著になるという問題が生じる。このため、Alの場合には、塩素系ガスを用いないようにし、化学的エッチング効果がほとんどなく、かつ、重いイオンを含むガス、例えばArガスを用いると好ましい。また、Alの場合、フッ素系ガスを用いることもできる。このように、イオン照射の原料ガスとして、被パターニング膜3を構成する材料を科学的にエッチングする元素を含まないものを用いることで、被パターニング膜3の等方性エッチングが同時に行われることを抑制でき、平坦部での膜減りを抑制することが可能となる。
【0029】
〔図1(c)に示す工程〕
上記図1(b)に示したイオン照射を継続すると、被パターニング膜3のうちコーナ部が平坦部よりも優先して除去される。そして、被パターニング膜3のコーナ部では、厚み方向だけでなく横方向にもスパッタエッチングが進むため、平坦部が十分に残された状態でコーナ部が除去され、レジスト2が露出される。この時点でイオン照射を終了する。終了ポイントの検出には、例えば、レジスト2の構成材料の発光に着目して、一般的なプラズマ分光分析を用いることができる。
【0030】
終了ポイントでは、レジスト2が露出しさえすれば良く、露出量の多寡については問わない。ただし、あまりに露出量が少な過ぎると後工程で行うレジスト2の剥離時に薬液が浸透し難く時間が掛かり、逆に露出量を多くしようとするとイオン照射時間が長くなるため、これらを考慮してイオン照射時間を決定するのが好ましい。
【0031】
また、イオン照射の終盤では、レジスト2が露出し、スパッタエッチングされるため、スパッタエッチングされたレジスト材料が被パターニング膜3の残り部分の上部に再付着し、工程完了後に残留する可能性がある。このため、イオン照射に用いる原料ガスに酸素を含むガス(酸素ガスや酸素と他の元素が混合されたガス)を混ぜるようにすれば、酸素プラズマが生成され、これが被パターニング膜3に付着したレジスト材料と反応し、揮発性化合物を形成し除去するというアッシング作用を奏することができる。このため、イオン照射に用いる原料ガスに酸素を含むガスを混ぜると好ましい。このようにイオン照射に用いる原料ガスに酸素を含むガスを混ぜるのは、イオン照射の終盤だけでも良い。また、原料ガスの導入を止めてから、酸素を含むガスをイオン照射することによっても、同様の効果を得ることができる。
【0032】
〔図1(d)に示す工程〕
レジスト2を除去する工程を行う。例えば、レジスト2の専用剥離液、有機溶剤などを薬液として用いた一般的なレジスト剥離工程を行う。これにより、レジスト2の露出部分から薬液が浸透することで、レジスト2が溶解・除去されると共に、リフトオフによりレジスト2の上に形成されていた被パターニング膜3が同時に除去され、レジスト2が形成されていなかった位置において被パターニング膜3が残り、被パターニング膜3が所望形状にパターニングされる。
【0033】
この後、必要に応じて被パターニング膜3の上に層間絶縁膜の形成工程や保護膜の形成工程等を行うことにより、半導体装置が完成する。
【0034】
以上説明したように、本実施形態では、レジスト2の上に被パターニング膜3を成膜したのち、イオン照射によって被パターニング膜3のコーナ部を選択的にエッチングすることでレジスト2を露出させるようにしている。そして、レジスト2を除去することで、レジスト2の上の被パターニング膜3をリフトオフさせ、被パターニング膜3をパターニングしている。
【0035】
このようにしてリフトオフ工程を行っているため、レジスト2の側面において被パターニング膜3が厚く形成されていたとしても、イオン照射によってレジスト2を露出させることができる。このため、レジスト2の側面での被パターニング膜3の厚みの制限を受けないため、あえてステップカバレッジの悪い成膜方法を用いなくても良くなり、ステップカバレッジの良い成膜方法を選択することもできる。ステップカバレッジの悪い成膜方法として蒸着が用いられることが多いが、蒸着膜は膜質が悪い、あるいは、高融点材料への適用に限界があることから、ステップカバレッジの良い成膜方法、例えばスパッタやCVDを適用することで、膜質を良くできると共に高融点材料への適用限界をより高くすることが可能となる。
【0036】
また、レジスト2の側面において被パターニング膜3が付着しても問題ないため、レジスト2の側面を逆テーパ形状にする必要がない。したがって、レジスト2の側面を逆テーパ形状にするために特殊なレジストや照射条件を用いる必要がない。逆に、レジスト2の側面が順テーパ形状、つまりレジスト2の側面のうち基板1側の端部の方が基板1と反対側の端部よりも突き出た状態となっていても、イオン照射によってレジスト2を露出させられる。このため、露光条件が制限されることもない。
【0037】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態では、イオン照射の終点ポイントについて、レジスト2が露出されたときとしているが、最終的に残される被パターニング膜3の端にバリ形状、つまり厚み方向において部分的に厚く残った形状となることがある。このようなバリ形状が残ると、後工程において、被パターニング膜3の上にさらに他の膜を成膜するようなときに、好ましくない場合がある。
【0038】
このため、図2(a)に示すように、図1(c)に示した工程で説明したイオン照射を長めに設定し、被パターニング膜3の横方向でのスパッタエッチング量を多めに取り、被パターニング膜3の平坦部の端が平坦になるまでイオン照射を行う。つまり、被パターニング膜3のうちレジスト2の側面に付着した部分(のバリ形状)が消失するまでイオン照射を行う。このような終点ポイントに限定することで、図2(b)に示すように、図1(d)に示した工程で説明したレジスト2を除去する工程を行うと、残った被パターニング膜3の平坦部の表面はすべて平坦な状態となる。したがって、最終的に残される被パターニング膜3の端にバリ形状が残らないようにすることが可能となる。
【0039】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態に対してリフトオフ工程を部分的に変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0040】
図3に、本実施形態にかかるリフトオフ工程時の断面図を示し、この図を参照してリフトオフ工程について説明する。
【0041】
〔図3(a)に示す工程〕
まず、第1実施形態の図1(a)の工程と同様に、基板1を用意したのち、その上にレジスト2を配置して露光により所望形状にパターニングする。続いて、基板1およびレジスト2の表面全面に被パターニング膜3を成膜したのち、その上に被パターニング膜3とは異なる材料で構成される保護膜4を成膜する。このとき、保護膜4の膜厚を被パターニング膜3の膜厚よりも薄くしておくと好ましい。保護膜4としては、被パターニング膜3に対してエッチング選択性が高く、被パターニング膜3のエッチング時にエッチングされ難い材料であれば良く、例えば被パターニング膜3をAlにて構成する場合にはSiOなどを用いることができる。
【0042】
〔図3(b)に示す工程〕
第1実施形態の図1(b)の工程と同様に、保護膜4の表面に対して、基板1の法線方向からイオン照射する工程を行う。これにより、保護膜4がスパッタエッチングされる。この場合にも、スパッタエッチングの効率がイオンの入射角度に依存していることから、保護膜4のコーナ部が優先的にスパッタエッチングされ、イオンの入射角度が45度の角度でスパッタエッチングが進んでいく。これにより、保護膜4のコーナ部においてテーパ量が大きくなる。このとき同時に、保護膜4の平坦部もスパッタエッチングが為されるが、コーナ部と比較すると十分に少ない。
【0043】
そして、イオン照射を継続し、保護膜4のコーナ部では、厚み方向だけでなく横方向にもスパッタエッチングが進むため、平坦部が十分に残された状態でコーナ部が除去され、被パターニング膜3が露出される。この時点でイオン照射を終了する。このとき、上記したように保護膜4の膜厚を被パターニング膜3の膜厚よりも薄くしておくと、より早く保護膜4のコーナ部を除去することができる。
【0044】
〔図3(c)に示す工程〕
保護膜4をマスクとして、保護膜4のコーナ部の開口部を通じて被パターニング膜3のコーナ部を除去する工程を行う。例えば、被パターニング膜3をAlで構成する場合には、塩素系ガスのプラズマを用いたドライエッチングを適用できる。等方性のエッチング条件であれば、開口部を中心に等方的にエッチングが進み、図示したように被パターニング膜3のコーナ部が除去されてレジスト2を露出することが可能となる。また、被パターニング膜3をAlで構成する場合には、リン酸などを用いたウェットエッチングを適用することも可能であるが、ドライエッチングの方が制御性が良いことから、好ましいと言える。
【0045】
〔図3(d)に示す工程〕
第1実施形態の図1(d)の工程と同様に、レジスト2を除去する工程を行う。これにより、レジスト2の露出部分から薬液が浸透することで、レジスト2が溶解・除去されると共に、レジスト2の上に形成されていた被パターニング膜3および保護膜4が同時に除去され、レジスト2が形成されていなかった位置において被パターニング膜3および保護膜4が残る。
【0046】
〔図3(e)に示す工程〕
被パターニング膜3の上に残っている保護膜4を除去する工程を行う。保護膜4の除去には、被パターニング膜3との選択性が高いエッチング方法であればどのようなものでも良く、例えば、保護膜4をSiOで構成している場合には、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによって保護膜4を除去できる。また、HFなどのウェットエッチングでも良い。ただし、被パターニング膜3については残すことになるため、被パターニング膜3に対する選択性を高くするために、グリセリンを混合する必要がある。
【0047】
この後、必要に応じて被パターニング膜3の上に層間絶縁膜の形成工程や保護膜の形成工程等を行うことにより、半導体装置が完成する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態では、レジスト2の上に成膜した被パターニング膜3の上にさらに保護膜4を成膜し、イオン照射によって保護膜4のコーナ部を選択的にエッチングすることで被パターニング膜3を露出させるようにしている。そして、露出部分から被パターニング膜3のコーナ部を除去することでレジスト2を露出させたのち、その露出部分からレジスト2を除去することで、レジスト2の上の被パターニング膜3および保護膜4をリフトオフさせ、被パターニング膜3をパターニングしている。このようにしても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
(他の実施形態)
上記実施形態では、リフトオフを行う犠牲膜としてレジスト2を例に挙げたが、レジスト2を用いる場合に限るものではない。例えば、加熱時に変質がない材料を犠牲膜として用いれば、被パターニング膜3の成膜方法として高温プロセスの適用も可能になり、被パターニング膜3の材料、成膜方法に関して選択肢を広げることが可能となる。
【0050】
なお、上記各実施形態では、被パターニング膜3が形成される下地として半導体基板にデバイスが形成された基板1を例に挙げたが、基板1としては必ずしもデバイスが形成された半導体基板でなくても良いし、半導体基板の表面に他の層が形成されているものであっても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 基板
2 レジスト
3 被パターニング膜
4 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地となる表面を構成する基板(1)の表面に犠牲層(2)を成膜してから該犠牲層(2)を所望形状にパターニングしたのち、この犠牲層(2)の表面に被パターニング膜(3)を成膜し、前記犠牲層(2)を除去することにより、前記被パターニング膜(3)を前記犠牲層(2)が形成されていなかった部分に残すことでパターニングするリフトオフ工程を含む半導体装置の製造方法であって、
前記リフトオフ工程では、
前記犠牲層(2)を所望形状にパターニングしたのち、前記犠牲層(2)の表面を含む前記基板(1)の表面に前記被パターニング膜(3)を形成する工程と、
前記基板(1)の表面に対する法線方向からイオン照射を行うことにより、前記犠牲層(2)のパターンエッジ部に形成される前記被パターニング膜(3)の段差部の上方側コーナ部を選択的に除去することで、該コーナ部において前記犠牲層(2)を露出させる工程と、
前記犠牲層(2)の露出部分から前記犠牲層(2)を除去することで、前記被パターニング膜(3)のうち前記犠牲層(2)の上に形成されていた部分を除去し、前記犠牲層(2)が形成されていなかった部分において前記被パターニング膜(3)を残す工程と、を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記イオン照射では、該イオン照射に用いる原料ガスとして、前記被パターニング膜(3)を構成する材料を化学的にエッチングする元素を含まないものを用いることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記犠牲層はレジスト(2)であり、前記イオン照射の原料ガスとして酸素を含むガスを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記犠牲層はレジスト(2)であり、前記イオン照射の終了前の一定時間もしくは、前記イオン照射の終了後に、該イオン照射の原料ガスとして酸素を含むガスを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記犠牲層(2)を露出させる工程では、前記被パターニング膜(3)のうち前記基板(1)の表面に形成された部分となる平坦部の表面が平坦になるまで前記イオン照射を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
下地となる表面を構成する基板(1)の表面に犠牲層(2)を成膜してから該犠牲層(2)を所望形状にパターニングしたのち、この犠牲層(2)の表面に被パターニング膜(3)を成膜し、前記犠牲層(2)を除去することにより、前記被パターニング膜(3)を前記犠牲層(2)が形成されていなかった部分に残すことでパターニングするリフトオフ工程を含む半導体装置の製造方法であって、
前記リフトオフ工程では、
前記犠牲層(2)を所望形状にパターニングしたのち、前記犠牲層(2)の表面を含む前記基板(1)の表面に前記被パターニング膜(3)を形成する工程と、
前記被パターニング膜(3)の表面に、該被パターニング膜(3)とは異なる材料で構成される保護膜(4)を成膜する工程と、
前記基板(1)の表面に対する法線方向からイオン照射を行うことにより、前記犠牲層(2)のパターンエッジ部に形成される前記保護膜(4)の段差部の上方側コーナ部を選択的に除去することで、該コーナ部において前記被パターニング膜(3)を露出させる工程と、
前記被パターニング膜(3)の露出部分から、前記犠牲層(2)の段差によって構成される前記被パターニング膜(3)のコーナ部を選択的に除去することで、該コーナ部において前記犠牲層(2)を露出させる工程と、
前記犠牲層(2)の露出部分から前記犠牲層(2)を除去することで、前記被パターニング膜(3)のうち前記犠牲層(2)の上に形成されていた部分を除去し、前記犠牲層(2)が形成されていなかった部分において前記被パターニング膜(3)および前記保護膜(4)を残す工程と、
前記被パターニング膜(3)の上に残った前記保護膜(4)を除去する工程と、を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記イオン照射では、該イオン照射に用いる原料ガスとして、保護膜(4)を構成する材料を化学的にエッチングする元素を含まないものを用いることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−29670(P2013−29670A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165720(P2011−165720)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】