説明

半導体装置の製造方法

【課題】EUVリソグラフィ用マスクの搬送時やマスクステージへの装着・脱離時に異物が発生する不具合を抑制することにより、半導体装置の製造歩留まりを向上させる。
【解決手段】マスク10をハンドラー30で保持して露光装置のマスクステージに搬送する際、予めマスク10の側面に永久磁石20、21を取り付けておく。また、ハンドラー30のアーム部32、33には、マスク10の永久磁石20、21との間に斥力が作用するように配置された電磁石34、35を取り付けておく。これにより、マスク10を搬送する際、ハンドラー30のアーム部32、33に挟まれたマスク10は、アーム部32、33と非接触状態となり、浮遊状態でハンドラー30に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造技術に関し、特に、露光光源として極端紫外線(Extreme Ultra-Violet:以下、EUVという)を用いる光リソグラフィ工程を有する半導体装置の製造に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路装置などの半導体デバイスは、回路パターンが描かれた原版であるマスクに露光光を照射し、前記回路パターンを、縮小光学系を介して半導体基板(以下、「ウエハ」と称する)上に転写する光リソグラフィ工程を繰り返し用いることで大量生産されている。
【0003】
近年、半導体デバイスの微細化が進み、光リソグラフィの露光波長をより短くして解像度を上げる方法が検討されている。すなわち、これまでは波長193nmのフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザ光を光源に用いるArFリソグラフィが開発されてきたが、最近では、それよりも遙かに波長の短いEUV光(波長=13.5nm)を用いるリソグラフィの開発が進められている。
【0004】
上記EUV光の波長域では、物質の光吸収の関係で、従来の光リソグラフィ用透過マスクが使用できない。そのため、EUVリソグラフィ用のマスクブランクとしては、例えばMo(モリブデン)膜とSi(シリコン)膜とを交互に積層した多層膜による反射を利用した多層膜反射基板が使用される。この多層膜による反射は、一種の干渉を利用した反射である。
【0005】
また、最近では、Siメンブレンなどを用いたEUVペリクルの研究も一部でなされている。しかしながら、ペリクル膜に適した膜厚でEUV光を充分に透過させる膜が殆どないことから、EUVリソグラフィ工程では、基本的にペリクルレスの状態でマスクの運用がなされている。
【0006】
そのため、EUVリソグラフィ用マスクは、搬送時や露光装置のマスクステージへの装着・脱離時に発生するパーティクルなどの異物に対して極めてセンシティブであり、この異物が転写欠陥に直結する確率が極めて高い。
【0007】
また、EUV光は、空気などのガス下でも大幅に減衰するため、真空またはそれに近い減圧状態で露光が行われる。このため、EUVリソグラフィ用マスクを露光装置のマスクステージに設置、固定する際には、静電チャック吸着方式が用いられている。
【0008】
特許文献1(特開平11−95414号公報)は、磁石の引力を利用して、マスク搬送系と露光装置のマスクテーブルとの間のマスクの受け渡しを行う技術を開示している。この文献に記載されたマスクは、パターンが形成された所定領域外に磁性体部材が設けられている。また、露光装置のマスクテーブルには、マスクの磁性体部材に対応した位置に電磁石を備えた吸着パッドが設けられている。従って、この吸着パッドの電磁石でマスクの磁性体部材を吸着することにより、マスクをマスクテーブルに固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−95414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したように、EUVリソグラフィ用マスクは、マスク面への異物付着を防止するペリクルが装着されないペリクルレスの状態でマスクの運用がなされている。そのため、搬送時やマスクステージへの装着・脱離時に発生する異物がマスク表面に付着することによって引き起こされる転写欠陥が製造歩留まりに直結する大きな問題となっている。
【0011】
また、EUVリソグラフィ用マスクを露光装置のマスクステージに装着する際には、静電チャック吸着方式が用いられる。ところが、マスクを静電チャックに吸着させて一定以上の時間が経過すると、静電状態を解除してもマスクが静電チャックから容易に取り外せなくなるという問題が発生する。
【0012】
その場合は、マスクの裏面をピンで機械的に押すなどして強制的に剥がそうとしても、マスクが傷ついて異物が発生する程の力を掛けないと剥がれない。そのため、このマスク脱離工程で異物が発生し、それがマスク表面に付着することによって、前述したような転写欠陥、ひいては製造歩留まりの低下を引き起こすという問題もある。
【0013】
本発明の目的は、EUVリソグラフィ用マスクの搬送時やマスクステージへの装着・脱離時に異物が発生する不具合を抑制することによって、半導体装置の製造歩留まりを向上させる技術を提供することにある。
【0014】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一態様を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0016】
この一態様は、(a)マスクをハンドラーで保持した状態で露光装置に搬送する工程と、(b)前記ハンドラーに保持された前記マスクを前記露光装置のマスクステージに装着する工程と、(c)前記マスクステージに装着された前記マスクに露光光を照射することにより、前記マスクに形成されたパターンを半導体ウエハに転写する工程と、
(d)前記工程(c)の後、前記マスクを前記ハンドラーで保持することにより、前記マスクを前記マスクステージから脱離させる工程とを含む半導体装置の製造方法であって、
前記マスクの側面には、第1の磁石が設けられており、
前記ハンドラーの前記マスクの側面と対向する領域には、前記第1の磁石に対して斥力を及ぼすように配置された第2の磁石が設けられており、
前記マスクを前記ハンドラーで保持する際には、前記第1の磁石と前記第2の磁石との間に働く斥力により、前記マスクが前記ハンドラーに対して非接触状態で保持されるものである。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
マスクをハンドラーで保持する際、磁石の斥力を利用することにより、マスクとハンドラーを非接触状態に保つことができる。これにより、マスクの搬送時やマスクステージへの装着・脱離時に異物がマスクの表面に付着することを抑制できるので、異物に起因する転写欠陥を抑制し、半導体装置の製造歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態で用いるEUVリソグラフィ用マスクの上面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】(a)は、EUVリソグラフィ用露光装置に設けられたハンドラーの要部を示す上面図、(b)は、(a)のC−C線断面図である。
【図5】本発明の実施の形態である露光工程のフロー図である。
【図6】(a)は、ハンドラーに保持されたマスクをマスクステージに吸着させる方法を示す断面図、(b)は、マスクをマスクステージから脱離させる方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。さらに、実施の形態を説明する図面においては、構成を分かり易くするために、平面図であってもハッチングを付す場合や、断面図であってもハッチングを省略する場合がある。
【0021】
まず最初に、本実施の形態で用いるEUVリソグラフィ用マスクの構成について説明する。図1は、EUVリソグラフィ用マスクの上面図、図2は、図1のA−A線断面図、図3は、図1のB−B線断面図である。
【0022】
図1に示すように、EUVリソグラフィ用マスク(以下、単にマスクという)10の上面(パターン面)の中央部には、デバイスパターンエリア11が配置されている。図示は省略するが、このデバイスパターンエリア11には、半導体ウエハに転写すべき半導体集積回路パターンが形成されている。また、このデバイスパターンエリア11の外側には、マスク10の位置合わせのためのマークやウエハアライメントマークなどが形成されたアライメントマークエリア12a、12b、12c、12dが配置されている。
【0023】
図2に示すように、マスク10のマスクブランクは、石英ガラスまたは低熱膨張ガラスからなる厚さ6〜8mm程度の基板13と、基板13の主面に形成され、Mo膜とSi膜とを交互に40層程度積層した厚さ300nm程度の多層膜14と、多層膜14の上部に形成されたキャッピング層15と、基板13の裏面に形成され、マスク10を静電吸着方式でマスクステージ(後述)に吸着させるためのメタル膜16とによって構成されている。
【0024】
また、マスクブランクの最上層(キャッピング層15)の上部には、バッファ層17を介して厚さ50〜70nm程度の吸収体パターン18が形成されている。前述したデバイスパターンエリア11内の集積回路パターンと、アライメントマークエリア12a、12b、12c、12d内の各種マークは、吸収体パターン18によって構成されている。
【0025】
上記バッファ層17は、FIB(Focus Ion Beam)を用いた吸収体パターン18の修正などを行う際に、下層の多層膜14などにダメージを与えたり、コンタミネーションを付着させたりするのを防ぐバリア層であり、吸収体パターン18が形成されていない反射面上のバッファ層17は、マスク製造工程の最終段階で除去される。但し、EB(Electron Beam)修正などが用いられる場合は、このバッファ層17(バリア層)を省略することもできる。
【0026】
図示は省略するが、吸収体パターン18の表面には、酸化処理などによって半導体欠陥検査が高感度にできるよう、波長が250nm付近あるいは193nm付近の欠陥検査光に対する反射率を抑えた膜が形成されている。
【0027】
図1および図3に示すように、マスク10の対向する二つの側面のそれぞれには、永久磁石20、21が取り付けられている。
【0028】
上記2つの永久磁石20、21は、N極とS極の配置が互いに逆になっている。すなわち、マスク10の一方の側面に取り付けられた永久磁石20は、N極がマスク10の上面側に配置され、S極がマスク10の裏面側に配置されている。これに対し、マスク10のもう一方の側面に取り付けられた永久磁石21は、S極がマスク10の上面側に配置され、N極がマスク10の裏面側に配置されている。なお、これとは逆に、永久磁石20のN極をマスク10の裏面側に配置し、永久磁石21のN極をマスク10の上面側に配置してもよい。
【0029】
図3に示すように、マスク10の側面に取り付けられた永久磁石20、21のそれぞれの表面は、マスク10の上面および裏面に対して斜めに傾いた状態で配置されている。
【0030】
図4(a)は、EUVリソグラフィ用露光装置に設けられたハンドラーの要部を示す上面図、図4(b)は、同図(a)のC−C線断面図である。
【0031】
図4(a)に示すように、ハンドラー30は、コの字状の平面形状を有しており、駆動装置31によって、上下(Z)方向、左右(X)方向および前後(Y)方向への移動と、X軸(θ)回転およびY軸(φ)回転が可能になっている。
【0032】
ハンドラー30の一対のアーム部32、33のそれぞれには、電磁石34、35が取り付けられている。そして、図1〜図3に示したEUVリソグラフィ用のマスク10を搬送する際には、マスク10の一方の側面に取り付けられた永久磁石20のN極とアーム部32の電磁石34のN極とが対向し、永久磁石20のS極と電磁石34のS極とが対向する。また、マスク10のもう一方の側面に取り付けられた永久磁石21のN極とアーム部33の電磁石35のN極とが対向し、永久磁石21のS極と電磁石35のS極とが対向する。
【0033】
すなわち、マスク10を搬送する際、マスク10の永久磁石20とアーム部32の電磁石34は、互いに斥力を及ぼす配置になり、マスク10の永久磁石21とアーム部33の電磁石35も、互いに斥力を及ぼす配置になる。また、マスク10の側面に取り付けられた永久磁石20、21のそれぞれの表面は、マスク10の上面および裏面に対して斜めに傾いた状態で配置されている(図3参照)ので、永久磁石20と電磁石34との間の斥力、および永久磁石21と電磁石35との斥力は、図4(a)の左右(X)方向に作用するだけでなく、上下(Z)方向にも作用する。
【0034】
従って、マスク10を搬送する際、ハンドラー30のアーム部32、33に挟まれたマスク10は、アーム部32、33と非接触状態となり、浮遊状態でハンドラー30に保持される。
【0035】
図4(a)に示すように、ハンドラー30には、応力検知器36が取り付けられている。この応力検知器36は、上記したマスク10の永久磁石20、21とアーム部32、33の電磁石34、35との間に働く斥力の左右(X)方向、上下(Z)方向、および回転(θ、φ)方向のバランスを検知する。そして、電磁石34、35の磁力や駆動装置31を調整することによって、永久磁石20、21と電磁石34、35との間に働く斥力を最適化し、マスク10をハンドラー30で安定に保持できるようにする。
【0036】
上記応力検知器36によるバランス検知は、特に、マスク10をマスクステージやマスクケースから脱離させる際に有用である。例えば、マスクステージに静電吸着されているマスク10を取り外す際に、斥力のバランスが崩れた状態で静電吸着を解除すると、マスク10がマスクステージ上で滑ったり、横ずれを起こしたりするため、異物が発生し易くなる。従って、応力検知器36によるバランス検知と調整とを行った後、静電吸着を解除するようにすれば、このような問題の発生を回避することができる。
【0037】
次に、図5のフロー図を参照しながら、半導体装置を製造する際の露光工程について説明する。
【0038】
半導体装置の製造に使用されるリソグラフィ技術は、要求される寸法の微細性や寸法精度に応じてファイン、ミドル、およびラフに分類され、それぞれに応じた露光が行われる。
【0039】
EUVリソグラフィを用いて製造される半導体装置の場合、通常は、ファイン層の形成にEUVリソグラフィが適用されるが、一層のみならず、例えばゲート層、コンタクト層、第1層メタル配線というように、複数層すなわち複数枚のマスクを用いたEUVリソグラフィが行われる。従って、マスクを入れ替えながら、1台の露光装置を用いて繰り返し露光を行うのが一般的である。
【0040】
そこで、実際の露光工程では、複数枚のマスクをマスクストッカーに保管し、その中から適宜必要なマスクを取り出して露光装置のマスクステージに装着し、露光を行う。そして、露光後は、そのマスクをマスクステージから取り外してマスクストッカーに保管した後、マスクストッカーから新たなマスクを取り出して露光装置のマスクステージに装着し、次の露光を行う。
【0041】
この一連の工程をより詳細に説明すると、まず、マスクケースに収納されたEUVリソグラフィ用のマスク10をマスクケースごとマスクストッカーに保管する(工程S1)。次に、最初に露光を行うマスク10をマスクケースごと取り出して搬送し(工程S2)、図4に示したハンドラー30が待機している場所でマスクケースの蓋を開放する(工程S3)。
【0042】
次に、ハンドラー30をマスク10の近傍に移動させ(工程S4)、アーム部32、33に取り付けられた電磁石34、35に通電して起動させる(工程S5)。そして、マスク10をハンドラー30で保持しながら、マスクステージの静電チャック部に移動させる(工程S6)。このとき、ハンドラー30のアーム部32、33とマスク10は、互いに非接触状態になっているので、マスク10は浮遊状態でマスクステージに搬送される。
【0043】
また、このとき、マスク10に付着する異物の量を最小限にするために、マスク10の上面(パターン面)をカバーで覆っておくことが好ましい。すなわち、マスク10を収納するマスクケースをアウターケースとインナーケースの二重構造とし、前述した工程S2でアウターケースからインナーケースごとマスク10を取り出して搬送することが好ましい。
【0044】
次に、マスクステージの静電チャック部に通電し、マスク10を静電吸着する(工程S7)。図6(a)は、浮遊状態でハンドラー30に保持されたマスク10をマスクステージに吸着させた状態を示している。
【0045】
露光装置のマスクステージ40は、その裏面(図6では下面)が静電チャック部となっており、マスク10は、その裏面(図6では上面)に形成されたメタル膜16によって、この静電チャック部に静電吸着される。
【0046】
一部繰り返しになるが、より詳しく説明すると、マスク10をマスクステージ40に吸着・保持させる際は、まず、ハンドラー30のアーム部32、33に取り付けられた電磁石34、35に電流を供給して起動させ、マスク10を上下(Z)方向および左右(X)方向から挟むように保持する。このとき、マスク10の永久磁石20、21とハンドラー30の電磁石34、35との間に斥力が働くため、マスク10は、アーム部32、33と接触することなく、浮遊状態でハンドラー30に保持される。そして、この状態でマスク10をマスクステージ40に搬送し、マスクステージ40の裏面(静電チャック部)にマスク10の裏面(メタル膜16)を接触させた後、静電チャック部に通電することにより、マスク10をマスクステージ40に吸着させる。
【0047】
次に、ハンドラー30の電磁石34、35への通電をシャットオフし(工程S8)、ハンドラー30を元の待機場所に移動させる((工程S9)。なお、前述した二重構造のマスクケースを使用した場合は、マスク10をマスクステージ40に吸着させてから、次の露光工程までの間、インナーケースをマスク10から外しておく。
【0048】
次に、この状態で露光を行い(工程S10)、露光終了後、ハンドラー30を待機場所からマスク10の近傍に移動させ((工程S11)、アーム部32、33に取り付けられた電磁石34、35を起動させる(工程S12)。
【0049】
次に、図4(a)に示した応力検知器36を使ってハンドラー30に掛かる上下(Z)方向、左右(X)方向の力のバランスをモニターし(工程S13)、予め定めた所定値と比較する(工程S14)。そして、ハンドラー30に掛かる力のバランスが所定値以上である場合、すなわち力のバランスが崩れている場合は、ハンドラー30の位置を微調整するか、あるいは、さらにアーム部32、33に取り付けられた電磁石34、35に供給する電流も微調整し(工程S15)、再度ハンドラー30に掛かる力のバランスをモニターする(工程S13)。そして、ハンドラー30に掛かる力のバランスが所定値を下回った場合、すなわち力のバランスが取れた場合は、マスクステージ40の静電チャック部への通電をシャットオフする(工程S16)。
【0050】
ここで、上記したハンドラー30に掛かる力のバランスのモニター(工程S13)、このモニター値と所定値との比較(工程S14)、および微調整工程(工程S15)は、マスク10をマスクステージ40から取り外す際に、マスク10がマスクステージ40上で滑ったり、横ずれを起こしたりする不具合を防止できるので、異物の発生を回避する上で好ましい作業であるが、必須の工程ではなく、オプション工程としてもよい。
【0051】
次に、ハンドラー30を下降させる(工程S17)。このとき、浮遊状態でハンドラー30に保持されているマスク10には、下方に向かう力が作用するので、図6(b)に示すように、マスク10をマスクステージ40から脱離させることができる。ここで、マスク10がマスクステージ40から剥がれ難い場合は、ハンドラー30のアーム部32、33にねじり回転を付与する。このようにすると、てこの原理が働き、マスク10をマスクステージ40から容易に脱離させることができる。
【0052】
次に、ハンドラー30に保持されたマスク10をマスクケースに移動し、接地させる(工程S18)。続いて、ハンドラー30の電磁石34、35に供給する電流をシャットオフし(工程S19)、ハンドラー30を元の待機場所に移動させ(工程S20)、マスクケースの蓋を閉じる(工程S21)。前述した二重構造のマスクケースを使用した場合は、露光工程(工程S10)が終了した後、マスクケースの蓋を閉じる工程(工程S21)までの間に、マスク10をインナーケースに収納しておく。
【0053】
その後、マスク10をマスクケースごと搬送し(工程S2)、マスクストッカーに保管する(工程S1)。
【0054】
次に、マスクストッカーから別のマスクを取り出し、前述したフローに従って露光を行った後、マスクストッカーに保管する。
【0055】
このように、本実施の形態によれば、マスク10をハンドラー30で保持する際、磁石の斥力を利用することにより、マスク10とハンドラー30を非接触状態に保つことができる。これにより、マスク10の搬送時やマスクステージ40への装着・脱離時に異物がマスク10の表面に付着することを抑制できるので、異物に起因する転写欠陥を抑制し、半導体装置の製造歩留まりを向上させることができる。
【0056】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0057】
前記実施の形態では、半導体装置の製造に使用するEUVリソグラフィ用マスクに適用した例を説明したが、EUV以外の露光光を利用するマスクに適用することもできる。
【0058】
また、本発明は、一般に、ワークをハンドラーで保持した状態で搬送する場合に適用することができる。すなわち、ワークに第1の磁石を設けると共に、ハンドラーのワークと対向する領域に、第1の磁石に対して斥力を及ぼすように配置された第2の磁石を設けるようにすれば、第1の磁石と第2の磁石との間に働く斥力により、ワークをハンドラーに対して非接触状態で保持することが可能となる。これにより、ハンドラーとの接触によってワークに異物が付着したり、ワークの表面が損傷したりする不具合を確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、露光光源としてEUVを用いるリソグラフィ技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 EUVリソグラフィ用マスク
11 デバイスパターンエリア
12a、12b、12c、12d アライメントマークエリア
13 基板
14 多層膜
15 キャッピング層
16 メタル膜
17 バッファ層
18 吸収体パターン
20、21 永久磁石
30 ハンドラー
31 駆動装置
32、33 アーム部
34、35 電磁石
36 応力検知器
40 マスクステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)マスクをハンドラーで保持した状態で露光装置に搬送する工程と、
(b)前記ハンドラーに保持された前記マスクを前記露光装置のマスクステージに装着する工程と、
(c)前記マスクステージに装着された前記マスクに露光光を照射することにより、前記マスクに形成されたパターンを半導体ウエハに転写する工程と、
(d)前記工程(c)の後、前記マスクを前記ハンドラーで保持することにより、前記マスクを前記マスクステージから脱離させる工程と、
を含む半導体装置の製造方法であって、
前記マスクの側面には、第1の磁石が設けられており、
前記ハンドラーの前記マスクの側面と対向する領域には、前記第1の磁石に対して斥力を及ぼすように配置された第2の磁石が設けられており、
前記マスクを前記ハンドラーで保持する際には、前記第1の磁石と前記第2の磁石との間に働く斥力により、前記マスクが前記ハンドラーに対して非接触状態で保持されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記マスクは、少なくとも基板と多層膜と吸収体パターンとを有するEUVリソグラフィ用マスクであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記マスクは、静電チャック吸着方式によって前記マスクステージに装着されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記マスクを前記ハンドラーで保持する際、前記ハンドラーに及ぼす前記斥力の大きさをモニターすることによって、前記第2の磁石の電磁力を制御することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2の磁石の電磁力の制御は、前記ハンドラーの前記マスクに対する位置の制御によって行われることを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記マスクを前記ハンドラーで保持することにより、前記マスクを前記マスクステージから脱離させる際、前記ハンドラーにねじり回転を付与することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
ワークをハンドラーで保持して搬送する際、前記ワークに第1の磁石を設けると共に、前記ハンドラーの前記ワークと対向する領域に、前記第1の磁石に対して斥力を及ぼすように配置された第2の磁石を設け、前記第1の磁石と前記第2の磁石との間に働く斥力により、前記ワークを前記ハンドラーに対して非接触状態で保持することを特徴とする搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−46017(P2013−46017A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184821(P2011−184821)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】