説明

半導体装置の製造方法

【課題】高温化下でも安定な高信頼性を有する配線を容易に精度良く形成する方法を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態にかかる半導体装置の製造方法は、半導体基板上方に窒化チタンからなる第1の絶縁層を形成し、第1の絶縁層に複数の溝を形成し、溝の底面及び側壁下部を覆う部分が溝の側壁上部を覆う部分よりも厚くなるように、溝の底面及び側壁を覆うバリアメタルを形成し、溝のバリアメタル上に金属膜を埋め込み、複数の配線を形成し、第1の絶縁層を除去して、隣り合う複数の配線の間に配線に接するような空隙を形成し、複数の配線の上面に、金属又は酸化物からなるキャップ膜を形成し、複数の配線の上面及び側壁を覆うようにシリコンナイトライドカーバイド膜又は窒化ボロン膜からなる拡散防止膜を形成し、複数の配線の上面を覆い、且つ、複数の配線間に空隙が形成されるように、第2の絶縁層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最先端の半導体装置で用いられる微細化された多層配線において、配線のついてのRC時定数を低減する施策、すなわち配線間の容量を低減する施策として配線間にエアギャップを形成する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−165864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高温化下でも安定な高信頼性を有する配線を容易に精度良く形成する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、半導体装置の製造方法は、半導体基板上方に窒化チタンからなる第1の絶縁層を形成し、前記第1の絶縁層に複数の溝を形成し、前記複数の溝の底面及び側壁下部を覆う部分が前記複数の溝の側壁上部を覆う部分よりも厚くなるように、前記複数の溝の底面及び側壁を覆うバリアメタルを形成し、前記複数の溝であって、前記バリアメタル上に金属膜を埋め込み、複数の配線を形成し、前記第1の絶縁層を除去して、隣り合う前記複数の配線の間に前記配線に接するような空隙を形成し、前記複数の配線の上面に、金属又は酸化物からなるキャップ膜を形成し、前記キャップ膜を形成した後、前記複数の配線の上面及び側壁を覆うようにシリコンナイトライドカーバイド膜、又は、窒化ボロン膜からなる拡散防止膜を形成し、前記複数の配線の上面を覆い、且つ、前記複数の配線間に前記空隙が形成されるように、前記複数の配線の上に第2の絶縁層を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造工程を説明するための断面図(その1)である。
【図2】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造工程を説明するための断面図(その2)である。
【図3】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造工程を説明するための断面図(その3)である。
【図4】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造工程を説明するための断面図(その4)である。
【図5】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造工程を説明するための断面図(その5)である。
【図6】第1の実施形態にかかる半導体装置の断面図である。
【図7】第2の実施形態にかかる半導体装置の断面図である。
【図8】第3の実施形態にかかる半導体装置の製造工程を説明するための断面図(その1)である。
【図9】第3の実施形態にかかる半導体装置の製造工程を説明するための断面図(その2)である。
【図10】第3の実施形態にかかる半導体装置の製造工程を説明するための断面図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。ただし、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。なお、全図面にわたり共通する部分には、共通する符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、図面は発明の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置とは異なる個所もあるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0008】
エアギャップ(空隙)の形成方法としては主に2つ挙げられる。一つは、犠牲膜として誘電率の比較的低い酸化膜を用い、酸化膜に形成した溝に金属膜を埋め込むことにより配線を形成し、さらにリソグラフィプロセスにより酸化膜をエッチングして、配線間にエアギャップを形成する方法である。もう一つは、熱、紫外線(Ultra Violet)、又は、電子線(Electron Beam)により気化する材料を犠牲膜として用いることにより、配線間にエアギャップを形成する方法である。
【0009】
いずれの方法においても、金属配線の両隣にエアギャップが接する構造が形成される。このような構造においては、金属配線の熱膨張を抑制する膜が無いがために、例えばエレクトロマイグレーションやストレスマイグレーションといった不良が起きやすくなることが懸念される。
【0010】
さらに、犠牲膜として酸化膜を用いたエアギャップの形成方法によれば、配線に隣接する酸化膜から配線に水分が吸収され、配線を劣化させる恐れがある。よって、このような配線の劣化を防止するために、厚い金属膜で配線を覆う必要がある。また、この酸化膜を用いた形成方法においては、配線を形成する際に酸化膜中にダメージが生じ、この酸化膜のうちのダメージを受けた部分を選択的にエッチングすることによりエアギャップを形成している。従って、自由にエアギャップの大きさを制御して、配線間容量を所望のものとして形成することは難しい。さらに、この形成方法においては、酸化膜に形成された溝に金属膜を埋め込み、CMP(Chemical Mechanical Planarization)を行うことにより形成する、すなわち、ダマシンプロセスにより配線を形成しているが、酸化膜はCMPを行う際の削りしろを有する必要であり、言い換えると、酸化膜を所望の厚さよりも削りしろの分だけ厚く形成する必要がある。よって、厚く形成された酸化膜の溝は高アスペクト比を有し、このような高いアスペクト比を持つ溝に金属膜を埋め込むことは難しい。
【0011】
また、もう一つのエアギャップ形成方法である、気化する材料を犠牲膜として用いる方法によれば、気化する材料は高価なものであるため、半導体装置の製造コストを上昇させることとなる。
【0012】
(第1の実施形態)
本実施形態の半導体装置の製造方法を図1から図5に示す。ここでは、例として銅を用いた配線の間にエアギャップを形成する場合を説明するが、本発明においては、配線の材料は銅に限られるものではなく、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、ニッケルシリサイド、コバルトシリサイド等、配線に使用することができる各種の材料を用いることができる。
【0013】
まず、下層配線層(不図示)と接続するコンタクト層10を形成する。詳細には、例えば酸化シリコン膜からなる絶縁層20に、導電材料としてタングステンや銅を用いたコンタクト21を形成する。その上に、シリコンナイトライドカーバイド(Si(C)N)、窒化ボロン(BN)等からなる拡散防止層11と、窒化チタン(TiN)層(第1の絶縁層)12とを順次形成し、その上に例えば光リソグラフィやEUV(Extreme Ultra Violet)のようなパターニング形成を行うための積層構造30を堆積する。なお、拡散防止層11は、窒化チタン層12をエッチングする際にエッチングストッパとしての役割を持ち、さらに、後の工程で形成される拡散防止膜と一体となって配線を均一に覆い、配線の膨張・拡散を防ぐための膜としての役割を有する。また、この積層構造30は、下地膜31とレジスト膜32とからなるものとすることができ、例えば下地膜31としてはカーボンを含むCVD(chemical vapor deposition)膜や塗布による有機膜を用いることができる。また、下地膜31とレジスト膜32との間にシリコンを含有する有機膜(不図示)を形成しても良い。
【0014】
そして、図1(a)に示されるように、レジスト膜32にパターニングを行う。
【0015】
図1(b)に示されるように、パターニングされたレジスト膜32に従って、下地膜31と窒化チタン層12と拡散防止層11とを、RIE(Reactive Ion Etching)等を用いてパターニングを行い、溝40を形成する。窒化チタン層12をRIEでエッチングする場合は、ClとAlを含むガスを用いることが好ましく、Si(C)Nからなる拡散防止層11をエッチングする場合はフッ素を含む例えばフッ化炭素(CF)のようなガスを用いることが好ましい。さらに、下地膜31を除去し、溝40の側壁に堆積した残渣を除去するために例えば希フッ酸のような薬液にて洗浄を行うことが好ましい。
【0016】
次に、窒化チタン層12と拡散防止層11とに対するパターニングにより形成された溝40に、銅膜14を埋め込むことにより配線を形成する。先に述べたように、配線の材料は銅に限られるものではなく、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、ニッケルシリサイド、コバルトシリサイド等を用いることができる。
【0017】
詳細には、図2(c)に示されるように、拡散防止層11及び窒化チタン層12に設けられた溝40の底面及び側壁を覆うように、例えばタンタル、マンガン、ルテニウムやそれら窒化物、またはそれらの組み合わせからなる金属をバリアメタル13として成膜する。この際、PVD(Physical Vapor Deposition)、CVD、ALD(Atomic Layer Deposition)等の方法を用いて成膜することが好ましい。なお、バリアメタル13は、溝40の底面及び側壁下部を覆う部分、詳細には、拡散防止層11と接する部分と、コンタクト層10の絶縁層20と接する部分とにおいては、これらの層からの水分が配線15に吸収されることを防ぐために、2nm以上の膜厚が確保できるように成膜することが好ましい。また、窒化チタン層12は水分を含まないことから、配線が窒化チタン層12からの水分を吸収し配線が劣化する恐れがないため、バリアメタル13を用いて配線の窒化チタン層12からの水分の吸収を防止する必要はない。従って、バリアメタル13の溝40の側壁上部を覆う部分の膜厚は、言い換えると、バリアメタル13の窒化チタン層12と配線との間に位置する部分の膜厚は、限定されず、例えば、この箇所においてはバリアメタル13が不均一であったり、不連続なものであったり、膜厚が2nm以下のものであってもかまわない。
【0018】
次いで、図2(d)に示されるように、例えばPVD、CVD、ECD(Electro Chemical Deposition)等により銅膜14を成膜し、アニールにより粒成長を促して、拡散防止層11及び窒化チタン層12に設けられた溝40に銅膜14を埋め込む。なお、バリアメタル13を成膜せずに、銅膜14を埋め込んでも良い。バリアメタル13を成膜せずに、溝40にマンガンを含む銅膜14をPVDにより成膜した場合には、その後に行われるアニールなどの熱履歴により、MnSixOy(0<X, y<1)のような材料が配線の表面に析出されることとなる。この表面に析出した材料は、この後に行われる窒化チタン層12の除去時の配線の保護膜として機能することができる。
【0019】
この後、図3(e)に示されるように、CMPを用いて余剰な銅膜14を除去し、配線15を形成する。この際、例えば渦電流を測定するような制御機器をCMPプロセス装置に組み込む事により、銅膜14と窒化チタン層12との界面を検知させCMPの制御精度を向上させることができる。なお、窒化チタン層12と銅膜14とはCMPの選択比が高いため、窒化チタン層12の界面の検出は容易であることから、CMPによる削りしろを考慮して窒化チタン層12を厚く形成する必要はない。従って、溝40のアスペクト比は小さくなることから、銅膜14の埋め込み性が向上することとなる。さらに、CMPの選択性が高いことから、タッチアップCMP等の工程は不要となり、工程を削減することができる。
【0020】
続いて、図3(f)に示されるように、窒化チタン層12をエッチングにより除去して、隣り合う配線15の間に、配線15に接するようなエアギャップ19を形成する。この際、窒化チタン層12をエッチングする薬液としては、配線15及びバリアメタル13を溶解しないような薬液を選択することが好ましく、例えば過酸化水素水を主体する薬液を用いて、窒化チタン層12を酸化除去する。
【0021】
次に、図4(g)に示されるように、配線15の上面に、銅シリコンナイトライド(CuSiN)、コバルトタングステンリン(CoWP)、コバルトタングステンホウ素(CoWB)、コバルト、ルテニウムといった、この後に形成するSi(C)N等からなる拡散防止膜と反応しない金属からなるキャップ膜16をCVD、ALD又は無電界めっき等により成膜する。このキャップ膜16により、この後に配線15を覆うように形成される拡散防止膜17と配線15との密着性を高めることができる。このキャップ膜16は、配線15を構成する銅となじみが良い材料からなるものであるため、配線15の側壁において、バリアメタル13が不連続であるため配線15の表面が露出している箇所に、キャップ膜16の材料が付着し、配線15の露出箇所を覆うことができる。
【0022】
詳細には、CuSiNからなるキャップ膜16を形成する場合は、例えば、配線15の上面を前処理した後、シリコン膜を形成し、アンモニア(NH)を用いてシリコン膜に対してプラズマ処理をすることにより形成する。CoWP又はCoWBからなるキャップ膜16を形成する場合は、無電解めっきにより行うことが好ましい。さらに、コバルトからなるキャップ膜16を形成する場合は、CVDにより行うことが好ましく、ルテニウムからなるキャップ膜16を形成する場合には、CVD又はALDにより行うことが好ましい。なお、無電解めっきを用いる場合には、先に説明したように、図3(f)で示される窒化チタン層12の除去の後に、図4(g)に示される無電解めっきによるキャップ膜16の形成を行っても良いし、順番を入れ替えて、無電解めっきによるキャップ膜16の形成の後に、窒化チタン層12の除去を行っても良い。後者の場合、キャップ膜16は、窒化チタン層12の除去時の配線15の保護膜として機能することができる。
【0023】
なお、マンガンを含むバリアメタル13を形成した場合には、図3(f)で示される窒化チタン層12を除去した際、キャップ膜16として、マンガンを含む絶縁膜が配線15の上面に形成されることとなる。また、図3(f)で示される窒化チタン層12の除去の際にバリアメタル13が溶解した場合は、バリアメタル13を構成する金属を含む酸化膜が、キャップ膜16として配線15の上面に形成されることとなる。
【0024】
次に、図4(h)に示されるように、圧縮応力を持ち、且つ、銅の拡散防止として働く、例えば、Si(C)NやBNのような拡散防止膜17を、配線15の上面及び側壁を覆うように、さらに、配線15の間にある拡散防止層11の上面を覆うように、CVD、ALD、又は、塗布により形成する。この拡散防止膜17は、拡散防止層11と一体の膜となり、配線15を支えつつ、配線15からの銅の拡散を防止し、圧縮応力を有することから配線15の熱膨張を抑える働きを有する。
【0025】
そして、図5(i)に示されるように、配線15の上面を覆い、且つ、所望の位置にエアギャップ19が残存するように、配線15の上方に、例えばシランガス(p−SiH)を主原料として用いたCVDにより酸化シリコン膜を成膜することにより、絶縁層(第2の絶縁層)18を形成する。または、高粘性の塗布膜を用いて酸化シリコン膜又はシリコンオキシカーバイド膜(SiCOH膜)を成膜することにより、絶縁層18を形成する。
【0026】
このようにして、図6(a)に示されるような断面を有する半導体装置を形成することができる。この半導体装置は、配線15の間のうち所望の位置に、配線15と接するようなエアギャップ19を有する。
【0027】
さらに、図6(b)に示される配線15の断面の拡大図からわかるように、配線15はバリアメタル13に覆われている。配線15を覆うバリアメタル13は、詳細には、拡散防止膜11と接する面と、絶縁層20と接する面とにおいては、これらの層からの水分が配線15に吸収されることを防ぐために、2nm以上の膜厚を有していることが好ましい。それ以外の配線15の側壁を覆う部分については、先に述べたようにバリアメタル13の膜厚は限定されない。また、配線15の上面には、CuSiN、CoWP、CoWB、コバルト、ルテニウム、酸化マンガン等からなるキャップ膜16を有し、配線15を覆うように形成される拡散防止膜17と配線15との密着性を高める。さらに、バリアメタル13及びキャップ膜16を介して配線15の上面及び側壁を覆うように、Si(C)N、BN等からなる拡散防止膜17が形成されている。この拡散防止膜17は、配線15を支えつつ、配線15からの銅の拡散を防止し、配線15の熱膨張を抑える働きを有する。
【0028】
本実施形態によれば、配線15がエアギャップ19に接していても、配線15は拡散防止膜17に覆われているため、配線15からの銅の拡散と配線15の熱膨張とを抑制し、エレクトロマイグレーションやストレスマイグレーションといった不良が生じることを避けることができる。すなわち、高温化下でも安定な高信頼性を有する配線を形成することができる。
【0029】
さらに、本実施形態においては、配線15を形成するための犠牲層として窒化チタンからなる層を用いている。窒化チタン層12は水分を含まないことから、配線15が窒化チタン層12からの水分を吸収し配線15が劣化する恐れがない。また、窒化チタン層12と配線15の材料とはCMPの選択比が高いため窒化チタン層12の界面の検出は容易であることから、CMPによる削りしろを考慮して窒化チタン層12を厚く形成する必要はない。従って、窒化チタン層12中に形成される配線15を埋め込むための溝40のアスペクト比は小さくなり、埋め込み性は向上することとなる。さらに、CMPの選択性が高いことから、タッチアップCMP等の工程は不要となり、工程を削減することができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、犠牲膜として気化するような材料を用いていないことから、半導体装置の製造コストの上昇を避けることができる。
【0031】
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、拡散防止層11をコンタクト層10の上に形成していたが、本実施形態においては、コンタクト層10を絶縁層20と拡散防止層11とで形成し、コンタクト21を絶縁層20及び拡散防止層11を貫くように形成する。このようにすることにより、隣り合う配線15間に拡散防止層11を有することなくエアギャップ19を配置することができ、配線15間を所望の容量を持つものとして制御することができる。本実施形態による半導体装置の断面図を図7(a)に示す。
【0032】
また、本実施形態の変形例として、拡散防止層11の上に、酸化シリコン膜又はSiCOH膜からなる絶縁層22を形成した後、拡散膜17を形成しても良い。このようにすることで、図7(b)の断面図に示されるような半導体装置を得ることができる。このように、隣り合う配線15間に存在する絶縁層22と拡散防止膜17とエアギャップ19との分量を制御することにより、配線15間を所望の容量を持つものとして制御することができる。
【0033】
なお、本実施形態及び本実施形態の変形例においては、第1の実施形態と同様に、溝40の底面及び側壁下部を覆う部分、詳細には、絶縁層22と接する部分と、拡散防止層11と接する部分と、コンタクト層10の絶縁層20と接する部分とにおいては、これらの層からの水分が配線15に吸収されることを防ぐために、2nm以上の膜厚が確保できるように成膜することが好ましい。
【0034】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、配線15は拡散防止膜17に覆われているため、配線15からの銅の拡散と配線15の熱膨張とを抑制することができる。さらに、配線15を形成するための犠牲層として窒化チタンからなる層を用いていることから、配線15が窒化チタン層12からの水分を吸収し配線15が劣化する恐れがなく、加えて、窒化チタン層12と配線15の材料とはCMPの選択比が高いことから、CMPによる削りしろを考慮して窒化チタン層12を厚く形成する必要はない。さらに、本実施形態によれば、隣り合う配線15間に位置する各層の分量を制御することにより、配線15間を所望の容量を持つものとして制御することができる。
【0035】
(第3の実施形態)
本実施形態においては、拡散防止層11の上に酸化シリコン膜又はSiCOH膜からなる酸化膜23を形成し、その上から窒化チタン層12を形成する点が、第1の実施形態と異なる点である。このようにすることにより、酸化膜23は容易に薬液に溶解するため、より確実にその上に形成された窒化チタン層12を除去、すなわち、より確実にリフトオフすることができる。従って、配線15間に窒化チタン層12が残存することがないことから、隣り合う配線15間の容量を所望のものとすることができる。
【0036】
本実施形態にかかる半導体装置の製造方法を図8から図10を用いて説明する。ここでは、第1の実施形態と共通する部分については、説明を省略する。
【0037】
まず、第1の実施形態と同様に、下層配線層(不図示)と接続するコンタクト層10を形成し、その上に拡散防止層11を形成する。さらに、その上に、酸化シリコン膜又はSiCOH膜からなる酸化膜23を形成し、窒化チタン層12を順次形成する。そして、窒化チタン層12の上に、下地膜31とレジスト膜32からなる積層構造30を堆積し、図8(a)に示されるように、レジスト膜32にパターニングを行う。
【0038】
図8(b)に示されるように、第1の実施形態と同様に、パターニングされたレジスト膜32に従って、下地膜31と酸化膜23と窒化チタン層12と拡散防止層11とに対してパターニングを行い、溝40を形成する。さらに、下地膜31を除去する。
【0039】
図9(c)に示されるように、第1の実施形態と同様に、溝40の底面及び側壁を覆うように、バリアメタル13を成膜する。なお、バリアメタル13は、溝40の底面及び側壁下部を覆う部分、詳細には、酸化膜23と接する部分と、拡散防止層11と接する部分と、コンタクト層10の絶縁層20と接する部分とにおいては、これらの層からの水分が配線15に吸収されることを防ぐために、2nm以上の膜厚が確保できるように成膜することが好ましい。また、窒化チタン層12は水分を含まないことから、配線が窒化チタン層12からの水分を吸収し、配線が劣化する恐れがないため、バリアメタル13を用いて、配線の窒化チタン層12からの水分の吸収を防止する必要はない。従って、窒化チタン層12と配線15との間に位置するバリアメタル13の膜厚は限定されず、例えば、この箇所においてはバリアメタル13が不均一であったり、不連続なものであったり、膜厚が2nm以下のものであってもかまわない。
【0040】
次に、図9(d)にしめされるように、第1の実施形態と同様に、絶縁膜23と窒化チタン層12と拡散防止層11とに対するパターニングにより形成された溝40に、バリアメタル13を介して銅膜14を埋め込む。先に述べたように、配線15の材料は銅に限られるものではなく、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、ニッケルシリサイド、コバルトシリサイド等を用いることができる。
【0041】
この後、図10(e)に示されるように、第1の実施形態と同様に、CMPを用いて余剰な銅膜14を除去し、配線15を形成する。なお、窒化チタン層12と銅膜14とはCMPの選択比が高いため、窒化チタン層12の界面の検出は容易であることから、CMPによる削りしろを考慮して窒化チタン層12を厚く形成する必要はない。従って、銅膜14を埋め込む溝40のアスペクト比は小さくなり、銅膜14の埋め込み性は向上することとなる。さらに、CMPの選択性が高いことから、タッチアップCMP等の工程は不要となり、工程を削減することができる。
【0042】
続いて、図10(f)に示されるように、第1の実施形態と同様に、窒化チタン層12を除去する。窒化チタン層12が残存した場合であっても、フッ酸系薬液(DHF)による処理を追加することにより、酸化膜23にまで液が到達し溶解することから、その上に形成された窒化チタン層12をより確実にリフトオフすることができる。この後の工程については、第1の実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する(図4及び図5参照)。
【0043】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、配線15は拡散防止膜17に覆われているため、配線15からの銅の拡散と配線15の熱膨張とを抑制することができる。さらに、配線15を形成するための犠牲層として窒化チタンからなる層を用いていることから、配線15が窒化チタン層12からの水分を吸収し配線15が劣化する恐れがなく、加えて、窒化チタン層12と配線15の材料とはCMPの選択比が高いことから、CMPによる削りしろを考慮して窒化チタン層12を厚く形成する必要はない。さらに、本実施形態によれば、より確実に窒化チタン層12を除去することができることから、隣り合う配線15間の容量を所望のものとすることができる。
【0044】
本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
10 コンタクト層
11 拡散防止層
12 窒化チタン層(第1の絶縁層)
13 バリアメタル
14 銅膜
15 配線
16 キャップ膜
17 拡散防止膜
18 絶縁層(第2の絶縁層)
20、22 絶縁層
19 エアギャップ(空隙)
21 コンタクト
23 酸化膜
30 積層構造
31 下地膜
32 レジスト膜
40 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上方に窒化チタンからなる第1の絶縁層を形成し、
前記第1の絶縁層に複数の溝を形成し、
前記複数の溝の底面及び側壁下部を覆う部分が前記複数の溝の側壁上部を覆う部分よりも厚くなるように、前記複数の溝の底面及び側壁を覆うバリアメタルを形成し、
前記複数の溝であって、前記バリアメタル上に金属膜を埋め込み、複数の配線を形成し、
前記第1の絶縁層を除去して、隣り合う前記複数の配線の間に前記配線に接するような空隙を形成し、
前記複数の配線の上面に、金属又は酸化物からなるキャップ膜を形成し、
前記キャップ膜を形成した後、前記複数の配線の上面及び側壁を覆うようにシリコンナイトライドカーバイド膜、又は、窒化ボロン膜からなる拡散防止膜を形成し、
前記複数の配線の上面を覆い、且つ、前記複数の配線間に前記空隙が形成されるように、前記複数の配線の上に第2の絶縁層を形成する、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
半導体基板上方に窒化チタンからなる第1の絶縁層を形成し、
前記第1の絶縁層に複数の溝を形成し、
前記複数の溝に金属膜を埋め込み、複数の配線を形成し、
前記第1の絶縁層を除去して、隣り合う前記複数の配線の間に前記配線に接するような空隙を形成し、
前記複数の配線の上面及び側壁を覆うように拡散防止膜を形成し、
前記複数の配線の上面を覆い、且つ、前記複数の配線間に前記空隙が形成されるように、前記複数の配線の上に第2の絶縁層を形成する、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記拡散防止膜として、シリコンナイトライドカーバイド膜、又は、窒化ボロン膜を用いることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記拡散防止層を形成する前に、前記複数の配線の上面に、金属又は酸化物からなるキャップ膜を形成することを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記金属膜を埋め込む前に、前記複数の溝の底面及び側壁下部を覆う部分が前記複数の溝の側壁上部を覆う部分よりも厚くなるように、前記複数の溝の底面及び側壁を覆うバリアメタルを形成することを特徴とする請求項2から4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の絶縁層を形成した後、前記第1の絶縁層の上に酸化膜を形成し、前記第1の絶縁層と前記酸化膜とに複数の溝を形成することを特徴とする請求項2から5のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−4716(P2013−4716A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134043(P2011−134043)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】