説明

半導体装置の製造方法

【課題】消費エネルギーを抑制しつつ成膜性能を向上する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、ウエハ2を処理室20へ搬入する搬入工程(S1)と、処理室20を排気する排気工程と、処理室20を所定の圧力まで降下する降圧工程(S2)と、複数の処理ガスを供給してウエハ2に膜を形成する成膜工程(S4)と、処理室20を所定の圧力まで上昇する昇圧工程(S7)と、ウエハ2を処理室20から搬出する搬出工程(S8)と、成膜工程(S4)における排気量が、降圧工程(S2)及び昇圧工程(S7)における排気量よりも大きくなるように調整する調整工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置の製造において、基板上に膜を形成する成膜処理を行う工程がある。成膜処理では、一定の排気量により処理室の排気が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、消費エネルギーを抑制しつつ成膜性能を向上する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の特徴とするところは、基板を処理室へ搬入する搬入工程と、前記処理室を排気する排気工程と、前記処理室を所定の圧力まで降下する降圧工程と、複数の処理ガスを供給して基板に膜を形成する膜形成工程と、前記処理室を所定の圧力まで上昇する昇圧工程と、基板を前記処理室から搬出する搬出工程と、前記膜形成工程における排気量が、前記降圧工程及び前記昇圧工程における排気量よりも大きくなるように調整する調整工程と、を有する半導体装置の製造方法にある。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、消費エネルギーを抑制しつつ成膜性能を向上する半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置を構成する処理炉の概略図である。
【図2】図2のA−A線断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる成膜処理のフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態にかかる成膜処理における成膜工程のシーケンスである。
【図5】パージ工程の時間と、ウエハに形成される膜の面内均一性との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態において、基板処理装置は、半導体装置(IC:Integrated Circuit)の製造方法に用いられる半導体装置の一例として構成されるものである。
以下の説明では、基板処理装置の一例として、基板に対し成膜処理等を行う縦型の装置に適用した場合について述べるが、本発明は縦型装置に限らず、枚葉装置等に適用するようにしてもよい。
図1は、基板処理装置に適用される処理炉10を示す。
図2は、図1のA−A線断面図を示す。
【0008】
基板処理装置を構成する処理炉10には、シリコン(Si)等からなる基板(以下、「ウエハ2」と称す)を加熱する加熱装置(加熱手段)であるヒータ12が設けられている。
ヒータ12は、上方が閉塞された円筒形状の断熱部材と複数本のヒータ素線とを備えており、断熱部材に対しヒータ素線が設けられたユニット構成を有している。
ヒータ12の内側には、ウエハ2を処理するための石英製の反応管14が設けられている。
【0009】
反応管14の下方には、この反応管14の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ16が設けられている。シールキャップ16は、反応管14の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ16は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。
シールキャップ16の上面には、反応管14の下端と当接するシール部材としてのOリング18が設けられている。
【0010】
処理炉10においては、少なくとも、反応管14及びシールキャップ16によりウエハ2を成膜処理する処理室20が形成されている。
【0011】
シールキャップ16の下方には、ボート22を回転させるボート回転機構32が設けられている。
ボート22は複数の保持部材を備えており、複数枚(例えば50 〜 150枚程度)のウエハ2をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、互いに一定の間隔をあけながら水平に保持するように構成されている。
【0012】
ボート回転機構32の回転軸34は、シールキャップ16を貫通してボート22に接続されており、ボート回転機構32は、ボート22を回転させることでウエハ2を回転させるように構成されている。
【0013】
反応管14の外部には、昇降機構としてのボートエレベータ36が設けられており、このボートエレベータ36は、シールキャップ16を垂直方向に昇降するように構成されている。これにより、ボート22は処理室20内に対し搬入搬出されるようになっている。
【0014】
シールキャップ16には、ボート22を支持するボート支持台38が設けられている。ボート22は、ボート支持台38に固定された底板とその上方に配置された天板とを有しており、底板と天板との間に複数本の支柱が架設されている。
【0015】
このように処理炉10は、バッチ処理される複数枚のウエハ2がボート22に対し多段に積層された状態において、このボート22がボート支持台38で支持されながら処理室20に挿入され、処理室20に挿入されたウエハ2をヒータ12によって所定の温度に加熱するようになっている。
【0016】
処理室20には、原料ガスを供給する二本のガス供給管(第一のガス供給管50及び第二のガス供給管80)が接続されている。
【0017】
第一のガス供給管50には上流側から順に、流量制御装置(流量制御手段)であるマスフローコントローラ(MFC)52、気化ユニット(気化手段)である気化器54、及び開閉弁であるバルブ56が設けられている。
第一のガス供給管50の先端部には、第一のノズル58が連結されている。
【0018】
第一のノズル58は、反応管14の内壁とウエハ2との間における円弧状の空間で、この反応管14の内壁に沿った上下方向(ウエハ2の積載方向)に延在している。
第一のノズル58の側面には、原料ガスを供給する多数のガス供給孔58aが設けられている。ガス供給孔58aは、下部から上部にわたってそれぞれ同一又は大きさに傾斜をつけた開口面積を有し、さらに同じ開口ピッチで設けられている。
【0019】
第一のガス供給管50の気化器54とバルブ56との間には、後述する排気管100に接続されたベントライン60及びバルブ62が設けられており、原料ガスを処理室20に供給しない場合は、バルブ62を介して原料ガスをベントライン60へ供給する。
【0020】
主に、第一のガス供給管50、MFC52、気化器54、バルブ56、第一のノズル58、ベントライン60、及びバルブ62により第一のガス供給系(第一のガス供給手段)が構成される。
【0021】
また、第一のガス供給管50には、キャリアガスを供給するための第一のキャリアガス供給管70が接続されている。第一のキャリアガス供給管70には、MFC72及びバルブ74が設けられている。
キャリアガスとしては、例えばヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、窒素(N2)等の不活性ガスが用いられる。
【0022】
主に、第一のキャリアガス供給管70、MFC72、及びバルブ74により第一のキャリアガス供給系(不活性ガス供給系、不活性ガス供給手段)が構成される。
【0023】
例えば、第一のガス供給管50から供給される原料が液体の場合、第一のガス供給管50からは、MFC52、気化器54,及びバルブ56を介して第一のキャリアガス供給管70と合流し、第一のノズル58を介して処理室20内に反応ガスが供給される。
一方、第一のガス供給管50から供給される原料が気体の場合には、MFC52を気体用のMFCに交換し、気化器54は不要となる。
【0024】
第二のガス供給管80には、上流側から順に流量制御装置(流量制御手段)であるMFC82及びバルブ86が設けられている。
第二のガス供給管80には、第二のノズル88が連結されている。
【0025】
第二のノズル88は、第一のノズル58と同様に、反応管14の内壁とウエハ2との間における円弧状の空間で、この反応管14の内壁に沿って上下方向に延在している。
第二のノズル88の側面には、原料ガスを供給する多数のガス供給孔88aが設けられている。ガス供給孔88aは、ガス供給孔58aと同様に、下部から上部にわたってそれぞれ同一又は大きさに傾斜をつけた開口面積を有し、さらに同じ開口ピッチで設けられている。
【0026】
主に、第二のガス供給管80、MFC82、バルブ86、第二のノズル88により第二のガス供給系(第二のガス供給手段)が構成される。
【0027】
第二のガス供給管80には、キャリアガスを供給するための第二のキャリアガス供給管90が連結されている。第二のキャリアガス供給管90には、MFC92及びバルブ94が設けられている。
【0028】
主に、第二のキャリアガス供給管90、MFC92、及びバルブ94により第二のキャリアガス供給系(不活性ガス供給系、不活性ガス供給手段)が構成される。
【0029】
第二のガス供給管80からはMFC82、バルブ86を介して、第二のキャリアガス供給管90と合流し、第二のノズル88を介して処理室20に反応ガスが供給される。
【0030】
一例として、第一のガス供給管50にはSi含有原料としてTDMAS(トリスジメチルアミノシラン:SiH(N(CH3)2)3)等が導入され、第一のキャリアガス供給管70からはN2ガスが、MFC72、バルブ74、及び第一のノズル58を介して処理室20内に供給される。
第二のガス供給管80には、改質原料として酸化原料であるオゾン(O3)等が導入され、第二のキャリアガス供給管90からはN2ガスが、MFC92、バルブ94、及び第二のノズル88を介して処理室20内に供給される。
【0031】
それぞれのガス供給管から上述のようなガスを流す場合、第一のガス供給系により原料ガス供給系、すなわちSi含有ガス供給系が構成され、第二のガス供給系により反応性ガス(改質ガス)供給系が構成される。
【0032】
反応管14には、処理室20内の雰囲気を排気する排気管100が設けられている。
排気管100には、処理室20内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ102及び圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ104を介して、真空排気装置としての真空ポンプ106が接続されている。
【0033】
APCバルブ104は、弁を開閉して処理室20内の真空排気動作を起動及び停止することができるとともに、弁の開度を調節することで圧力を調整することができる開閉弁である。
真空ポンプ106は、ポンプの回転数が調節自在な構成となっている。
【0034】
このように処理室20内は、真空排気され所定の圧力(真空度)となるように構成されている。処理室20内から真空ポンプ106を介して排気される排気量は、APCバルブ104の弁の開度や真空ポンプ106の回転数等を調節することによって調整されるようになっている。
【0035】
主に、排気管100、APCバルブ104、真空ポンプ106、圧力センサ102により排気系が構成される。
【0036】
反応管14内には、温度検出器としての温度センサ110が設置されている。温度センサ110は、第一のノズル58及び第二のノズル88と同様にL字型に構成されており、反応管14の内壁に沿って設けられている。
温度センサ110により検出された温度情報に基づいて、ヒータ12への通電具合が調整され、処理室20内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。
【0037】
処理炉10には、この処理炉10の各構成部の動作を制御するコントローラ120が設けられている。
具体的には、コントローラ120には、ヒータ12、ボート回転機構32、ボートエレベータ36、MFC52、72、82、92、バルブ56、74、86、94、圧力センサ102、APCバルブ104、真空ポンプ106、及び温度センサ110等の処理炉10を構成する各部が接続されている。
【0038】
コントローラ120は、温度センサ110に基づくヒータ12の温度調整動作、ボート回転機構32の回転速度調節、ボートエレベータ36の昇降動作、MFC52、72、82、92の流量調節、バルブ56、74、86、94の開閉動作、圧力センサ102に基づくAPCバルブ104の開閉、圧力調整動作、真空ポンプ106の回転数調節等を、それぞれ制御するようになっている。
【0039】
次に、処理炉10によるウエハ2上に悪を形成する成膜処理について説明する。
【0040】
以下、シリコン(Si)含有原料としてTDMASを、酸素含有ガスとしてO3を用いて、ウエハ2上にシリコン酸化膜を形成する場合を例に説明する。この場合、第一のガス供給系によりSi含有ガス供給系が構成され、第二のガス供給系により酸素含有ガス供給系が構成される。
なお、以下の説明において、処理炉10を構成する各部の動作は、コントローラ120によって制御される。
図3は、成膜処理のフローチャートを示す。
図4は、成膜工程(ステップ4(S4))におけるシーケンスを示す。
【0041】
ステップ1(S1)において、基板搬入工程が行われる。
【0042】
複数枚のウエハ2がウエハ搬送装置(非図示)によりボート22に装填(ウエハチャージ)されると、これらのウエハ2を支持したボート22は、ボートエレベータ36により上昇されて処理室20内に搬入(ボートロード)される。反応管14の下端は、Oリング18を介してシールキャップ16により密閉された状態となる。
この際、処理室20内の温度は、例えば300 ℃ 〜 600 ℃の範囲であって、好適には、550 ℃とする。
そして、ボート22をボート回転機構32により回転させてウエハ2を回転させる。
【0043】
ステップ2(S2)において、降圧工程が行われる。
【0044】
真空ポンプ106を作動させるとともにAPCバルブ104を開き、処理室20内を真空排気し所定の圧力に降圧する。
この際、APCバルブ104及び真空ポンプ106を調節し、処理室20内から排気される排気量を「E1」とする。このときの真空ポンプ106の回転数を「R1」とする。
ウエハ2の温度が、550 ℃となり安定したら、処理室20内の温度を550 ℃に保持した状態で、ステップ3(S3)の工程に進む。
【0045】
ステップ3(S3)において、排気量調整工程が行われる。
【0046】
APCバルブ104及び真空ポンプ106を調節し、処理室20内から排気される排気量を「E2」とする。ここで、排気量「E2」は、排気量「E1」よりも大きい値である。
本実施形態においては、真空ポンプ106の回転数を「R1」よりも大きい「R2」に変更するようにして、排気量を変更する。
【0047】
ステップ4(S4)において、成膜工程が行われる。
【0048】
ステップ4−1(S4−1)において、第一のガス(TDMAS)供給工程が行われる。
TDMASは、常温で液体の物質である。このため、本実施形態においては、気化器54を用いて気化したTDMASを、キャリアガスとともに処理室20へ供給するようになっている。
なお、気化器54を用いる方法に代えて、TDMASを加熱して気化させて供給するようにしてもよい。
【0049】
第一のガス供給管50に第一のガスとしてTDMASを流し、バルブ56を開く。また、第一のキャリアガス供給管70にキャリアガスとしてN2を流し、バルブ74を開く。
TDMASは、第一のガス供給管50を流れMFC52により流量調整され、気化器54により気化される。そして、MFC72により流量調整されたN2と混合し、第一のノズル58のガス供給孔58aから処理室20内に供給され、排気管100から排気される。
【0050】
この際、APCバルブ104を適正に調整して、処理室20内の圧力を133 Pa 〜 1330 Paの範囲であって、例えば30 Paとする。
TDMASの供給量は、MFC52を調整し0.3 〜 3 g/min.となるようにする。
ウエハ2をTDMASに晒す時間は、3 秒間 〜 30 秒間とする。
ヒータ12の温度は、ウエハ2の温度が300 ℃ 〜 600 ℃の範囲であって、例えば、550 ℃となるようにする。
【0051】
ステップ4−1(S4−1)において、処理室20内に供給されるガスは、TDMASとN2のみであり、O3は存在していない。このため、TDMASは、気相反応を起こすことなくウエハ2の表面や下地膜と表面反応(化学吸着)して、TDMASの吸着層を形成する。
TDMASの吸着層とは、原料分子及び原料分子のフラグメントの連続的な吸着層の他、不連続な吸着層も含むものである。
【0052】
TDMASを処理室20に供給する際、第二のガス供給管80に連結されている第二のキャリアガス供給管90のバルブ94を開いた状態とし、この第二のキャリアガス供給管90からキャリアガス(不活性ガス)を流すようにすることで、第二のガス供給管80側にTDMASが流れ込むことが防止される。
【0053】
本実施形態においては、成膜工程(S4)中、第一のキャリアガス供給管70及び第二のキャリアガス供給管90から処理室20へのキャリアガス(不活性ガス)の供給を継続するようにしている(図4参照)。
【0054】
ステップ4−2(S4−2)において、パージ工程が行われる。
第一のガス供給管50のバルブ56を閉め処理室20へのTDMASの供給を停止する。
【0055】
APCバルブ104は開いたままとし、処理室20内を30 Pa以下となるまで排気し、残留するTDMASを処理室20内から除去する。
このとき、第一のキャリアガス供給管70及び/又は第二のキャリアガス供給管90から処理室20へ不活性ガスが供給されることで、残留するTDMASが処理室20内からより効果的に除去される。
【0056】
ステップ4−3(S4−3)において、第二のガス(O3)供給工程が行われる。
第二のガス供給管80に第二のガスとしてO3を流し、バルブ86を開く。第二のキャリアガス供給管90は、キャリアガスとしてN2が流れるようにバルブ94が開かれた状態となっている。
O3は、第二のガス供給管80を流れMFC82により流量調整される。そして、MFC92により流量調整されたN2と混合し、第二のノズル88のガス供給孔88aから処理室20内に供給され、排気管100から排気される。
【0057】
この際、APCバルブ104を適正に調整して、処理室20内の圧力を50 Pa 〜 100 Paの範囲であって、例えば80 Paとする。
O3の供給量は、MFC82を調整し4.0 slm 〜 10 slmとなるようにする。
ウエハ2をO3に晒す時間は、5 秒間 〜 30 秒間とする。
ヒータ12の温度は、ウエハ2の温度が300 ℃ 〜 600 ℃の範囲であって、例えば、550 ℃となるようにする。
【0058】
O3を処理室20に供給する際、第一のガス供給管50に連結されている第一のキャリアガス供給管70のバルブ74を開いた状態とし、この第一のキャリアガス供給管70からキャリアガス(不活性ガス)を流すようにすることで、第一のガス供給管50側にO3が流れ込むことが防止される。
【0059】
O3の供給により、ウエハ2上に化学吸着したTDMASの吸着層とO3とが反応して、このウエハ2上にシリコン酸化膜が形成される。
【0060】
ステップ4−4(S4−4)において、パージ工程が行われる。
第二のガス供給管80のバルブ86を閉め、処理室20へのO3の供給を停止する。
APCバルブ104は開いたままとし、処理室20内を30 Pa以下となるまで排気し、残留するO3を処理室20内から除去する。
このとき、第一のキャリアガス供給管70及び/又は第二のキャリアガス供給管90から処理室20へ不活性ガスが供給されることで、残留するO3が処理室20内からより効果的に除去される
また、バルブ62を開きTDMASをベントライン60へ流す。このようにすることで、TDMASは、気化器54への供給を維持しながら処理室20への供給が停止される。このため、再度、TDMASを処理室20に供給する際、本構成を有さない場合と比較して、安定して供給することができるようになる
【0061】
このように、ステップ4−2(S4−2)及びステップ4−4(S4−4)においてパージ工程を行うことで、ステップ4−1(S4−1)において供給されるTDMASと、ステップ4−3(S4−3)において供給されるO3との、処理室20内等の気相中での混合が防止されるようになっている。
【0062】
ステップ5(S5)において、成膜工程(S4)が所定回数繰り返されたか否かが判断される。
所定回数繰り返されていれば、ステップ6(S6)の工程に進み、所定回数繰り返されていなければ、再度、ステップ4(S4)の工程を行う。
ステップ4−1(S4−1)〜ステップ4−4(S4−4)を1サイクルとして、ウエハ2上に所定の膜厚が形成されるように、このサイクルを所定回数繰り返す。
【0063】
ステップ6(S6)において、排気量調整工程が行われる。
APCバルブ104及び真空ポンプ106を調整し、処理室20内から排気される排気量を「E3」とする。ここで、排気量「E3」は、排気量「E2」よりも小さい値である。
本実施形態においては、真空ポンプ106の回転数を「R2」よりも小さい「R3」に変更するようにして、排気量を変更する。
【0064】
ステップ7(S7)において、昇圧工程が行われる。
【0065】
第一のキャリアガス供給管70及び/又は第二のキャリアガス供給管90から処理室20へ不活性ガスを供給するとともに、真空ポンプ106から不活性ガスを排気し、処理室20内を不活性ガスでパージする。
そして、処理室20内の圧力が、所定の圧力(例えば常圧)となるように昇圧する。
【0066】
ステップ8(S8)において、基板搬出工程が行われる。
【0067】
ボートエレベータ36によりシールキャップ16が下降されて、反応管14の下端が開口される。そして、処理済みのウエハ2がボート22に支持された状態で反応管14の下端からこの反応管14の外部に搬出(ボートアンロード)される。
続いて、処理済みのウエハ2は、ウエハ搬送装置(非図示)によりボート22から取り出される(ウエハディスチャージ)。
このようにして、成膜処理が完了する。
【0068】
このように、成膜工程(S4)における排気量「E2」は、降圧工程(S2)における排気量「E1」及び昇圧工程(S7)における排気量「E3」よりも大きくなるようになっている。
例えば、排気量「E2」は、排気量「E1」、「E3」の2.5倍程度の値とする。
【0069】
また、成膜工程(S4)における真空ポンプ106の回転数「R2」は、降圧工程(S2)における及び回転数「R1」及び昇圧工程(S7)における回転数「R3」よりも大きくなるようになっている。
例えば、回転数「R2」は、回転数「R1」、「R3」の1.4倍程度の値とする。
【0070】
次に、排気量と面内均一性との関係について説明する。
【0071】
【表1】

【0072】
表1は、成膜工程(S4)における排気量と、ウエハ2に成膜される膜厚の面内均一性(±%)との関係について、ボート22の上部、中央部、下部それぞれに配置されたウエハ2の評価結果を示す。
表1に示すように、成膜工程(S4)における排気量が大きくなるほど、面内均一性が向上する傾向がある。
【0073】
次に、パージ時間と面内均一性との関係について説明する。
図5は、パージ工程(S4−2)の時間と、ウエハ2に成膜される膜厚の面内均一性(±%)との関係について、ボート22の上部、中央部、下部それぞれに配置されたウエハ2の評価結果を示す。
【0074】
図5に示すように、第一のガスとしてのTDMAS供給後のパージ時間を長くするほど、面内均一性が向上する傾向がある。
これは、パージ工程(S4−2)が長くなるほど、第一のガス(TDMAS)供給工程(S4−1)において供給されるTDMASの処理室20からの排出が十分となり、この処理室20内に残留するTDMASと第二のガス(O3)供給工程(S4−3)において供給されるO3との気相中での反応が抑制されるためであると考えられる。
【0075】
表1、図5に示す結果から、成膜工程(S4)における排気量と成膜性能とには相関関係があるといえる。反対に、成膜工程(S4)を除く工程にあっては、この成膜工程(S4)と比較して排気量を低減させても(排気量を増加させなくても)、成膜性能に与える影響は少ない。
したがって、排気量を、成膜工程(S4)においてのみ、この成膜工程(S4)以外の工程におけるものよりも増加させるようにすることで、本構成を有さない場合と比較して、消費エネルギー(例えば、消費電力)を抑制しつつ成膜性能が向上される。
【0076】
上記実施形態においては、成膜工程(S4)における排気量が、降圧工程(S2)及び昇圧工程(S6)における排気量よりも大きくなるように調整する、すなわち、降圧工程(S2)及び昇圧工程(S6)における排気量が、成膜工程(S4)における排気量よりも小さくなるように調整する場合について説明したが、これに限らず、降圧工程(S2)及び昇圧工程(S6)少なくともいずれかにおける排気量が、成膜工程(S4)における排気量よりも小さくなるように調整するようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態においては、シリコン酸化膜を形成する場合を例に説明したが、これに限らず、シリコン窒化膜等、他の膜種についても適用することができる。
【0078】
[本発明の好ましい態様]
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0079】
本発明の一態様によれば、生成温度300 ℃ 〜 600 ℃におけるシリコン酸化膜生成プロセスにおいて成膜過程中にポンプ回転数を制御する半導体装置の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0080】
2 ウエハ
10 処理炉
14 反応管
16 シールキャップ
20 処理室
22 ボート
36 ボートエレベータ
50 第一のガス供給管
54 気化器
58 第一のノズル
70 第一のキャリアガス供給管
80 第二のガス供給管
88 第二のノズル
90 第二のキャリアガス供給管
100 排気管
102 圧力センサ
104 APCバルブ
106 真空ポンプ
120 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理室へ搬入する搬入工程と、
前記処理室を排気する排気工程と、
前記処理室を所定の圧力まで降下する降圧工程と、
複数の処理ガスを供給して基板に膜を形成する膜形成工程と、
前記処理室を所定の圧力まで上昇する昇圧工程と、
基板を前記処理室から搬出する搬出工程と、
前記膜形成工程における排気量が、前記降圧工程及び前記昇圧工程における排気量よりも大きくなるように調整する調整工程と、
を有する半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−89833(P2013−89833A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230437(P2011−230437)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】