説明

半導体装置の製造方法

【課題】中央部と周縁部とでエッチング形状を均一化することのできる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】チャンバと、該チャンバ内に配設され被処理ウエハが載置されるチャックと、前記チャックの周縁部に前記ウエハの載置位置を囲うように配設されたフォーカスリングと、前記ウエハの径方向の位置に応じて異なる種類のガスを供給可能なガス供給機構とを備えたプラズマエッチング装置を用いて前記ウエハからなる半導体装置を製造する製造方法であって、有機膜が形成されたウエハを前記チャック上に載置し、前記処理ガス供給機構から、前記ウエハの有機膜をエッチングするエッチングガスを前記ウエハの中央部に導入し、前記処理ガス供給機構から、前記エッチングガスと反応する性質を有するエッチング阻害因子ガスを前記ウエハの周縁部に導入し、前記エッチングガスを用いて前記ウエハをプラズマエッチングすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対するプラズマエッチング工程を含む半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において半導体ウエハ等の基板(以下「ウエハ」という。)を加工する装置として、プラズマをウエハに照射することによって、ウエハにエッチングを行うプラズマエッチング装置がある。
【0003】
プラズマエッチングでは、フッ素、塩素、酸素等を含むエッチングガスが高周波電界により活性化されプラズマが生成される。プラズマには、荷電粒子(以下「イオン」という。)及び中性粒子(以下「ラジカル」という。)等の活性種が含まれている。イオンやラジカルなどの活性種とウエハ表面が反応して反応生成物が生じ、生じた反応生成物が揮発することによってエッチングが進行する。
【0004】
近年、半導体デバイスの製造工程においてウエハが大口径化しているため、ウエハ面内においてエッチング速度を均一化することが難しくなっている。そこで、面内均一性の改善のため、ウエハ面内の中心部領域及び周辺部領域における活性種の密度を、上部電極からのエッチングガス供給量を調整することにより均一化することが試みられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4701776号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の半導体デバイスの製造工程においては、下層有機系レジスト膜(例えば、アモルファスカーボン)を、その上層に形成された無機材料からなる中間層と上層感光性レジスト膜とをマスクとしてプラズマエッチングする場合、OガスおよびCHガスの混合ガスが処理ガスとして用いられている。このような場合、側壁の部分にサイドエッチングが起きやすく、ボーイングが発生することが知られている。特に、一枚の半導体ウエハ内において、中央部と周縁部とでそのエッチング形状に形状差が生じてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、ウエハの中央部と周縁部とでエッチング形状を均一化することのできる半導体装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、実施形態に係る半導体装置の製造方法は、チャンバと、該チャンバ内に配設され被処理ウエハが載置されるチャックと、前記チャックの周縁部に前記ウエハの載置位置を囲うように配設されたフォーカスリングと、前記ウエハの径方向の位置に応じて異なる種類のガスを供給可能なガス供給機構とを備えたプラズマエッチング装置を用いて前記ウエハからなる半導体装置を製造する製造方法であって、有機膜が形成されたウエハを前記チャック上に載置し、前記処理ガス供給機構から、前記ウエハの有機膜をエッチングするエッチングガスを前記ウエハの中央部に導入し、前記処理ガス供給機構から、前記エッチングガスと反応する性質を有するエッチング阻害因子ガスを前記ウエハの周縁部に導入し、前記エッチングガスを用いて前記ウエハをプラズマエッチングすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
ウエハの中央部と周縁部におけるエッチング形状を均一化することのできる半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】ウエハ周縁部におけるプラズマエッチングの様子を示す図である。
【図1B】ウエハ周縁部におけるプラズマエッチングの様子を示す図である。
【図1C】プラズマエッチングにおけるエッチングエッチレートの面内均一性を示す図である。
【図2A】従来のプラズマエッチングにおける処理ガスの流量例を示す図である。
【図2B】図2Aに示すプラズマエッチングにおいて、ウエハ中央部と周縁部における流量比を変更した例を示す図である。
【図2C】図2Aおよび図2Bに示す流量を用いたプラズマエッチングにおけるエッチングエッチレートの面内均一性を示す図である。
【図3A】ウエハ周縁部の処理ガスを変更した例を示す図である。
【図3B】ウエハ周縁部での処理ガスの働きを示す図である。
【図3C】ウエハ周縁部での処理ガスの働きを示す図である。
【図4】実施形態のプラズマエッチング装置の構成を示す図である。
【図5A】実施形態のプラズマエッチング装置におけるシャワーヘッドの構成を示す図である。
【図5B】実施形態のプラズマエッチング装置におけるシャワーヘッドの構成を示す図である。
【図6】実施形態のプラズマエッチング装置におけるガス供給装置の構成を示す図である。
【図7】実施形態のプラズマエッチング装置によるプラズマエッチング方法の一例を示すフローチャートである。
【図8A】図7に示すプラズマエッチングを実行した場合のウエハW表面近傍の様子を示す図である。
【図8B】図7に示すプラズマエッチングを実行した場合のウエハW表面近傍の様子を示す図である。
【図8C】図7に示すプラズマエッチングを実行した場合のウエハW表面近傍の様子を示す図である。
【図8D】図7に示すプラズマエッチングを実行した場合のウエハW表面近傍の様子を示す図である。
【図8E】図7に示すプラズマエッチングを実行した場合のウエハW表面近傍の様子を示す図である。
【図8F】図7に示すプラズマエッチングを実行した場合のウエハW表面近傍の様子を示す図である。
【図9A】実施形態のプラズマエッチング方法においてウエハ中央部と周縁部におけるOの流量を変更した場合のエッチングレートの面内均一性を示す図である。
【図9B】実施形態のプラズマエッチング方法においてウエハ周縁部に処理ガスとしてCHFを供給した場合のエッチングレートの面内均一性を示す図である。
【図9C】実施形態のプラズマエッチング方法においてウエハ周縁部にCを供給した場合のエッチングレートの面内均一性を示す図である。
【図10A】実施形態のプラズマエッチング装置の変形例を示す図である。
【図10B】実施形態のプラズマエッチング装置の変形例を示す図である。
【図11】実施形態の半導体装置の製造方法の変形例を示すフローチャートである。
【図12A】実施形態のプラズマエッチング装置の変形例を示す図である。
【図12B】図12Aに示すプラズマエッチング装置による半導体装置の製造方法の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(E/Rのウエハ面内偏差)
有機膜をエッチングするプラズマエッチングにおいては、ウエハ周縁部のエッチングレートが同中央部よりも大きくなることが知られている。これは、フォーカスリング上のOラジカルがウエハ周縁部のエッチングに寄与してしまうためと考えられ、ウエハとフォーカスリングの材質の違いに起因している。ウエハ面内でのエッチングレートの不均一は、多層レジストマスクの最下層にある有機膜の側壁部に生ずるボーイングやアンダーカットを生む原因となってしまう。
【0012】
図1Aおよび図1Bは、ウエハ周縁部におけるプラズマエッチングの様子を示している。図1Aに示すように、静電チャック111上に配置されたウエハWをプラズマエッチングする場合を考える。フォーカスリング119は、セラミックス又は石英等の誘電材料、単結晶シリコンなどの導電性材料などからなるが、ウエハWに有機膜を形成した場合、有機膜上とフォーカスリング上とで反応機構が異なってしまう。例えば、ウエハWの有機膜上ではOラジカルが有機膜と反応してCOとなって離脱する場合でも、フォーカスリング119上ではOラジカルは反応によって消費されないため、フォーカスリング119上のOラジカルが余剰になりウエハW周縁部のエッチングに寄与してしまう。すなわち、ウエハ周縁部のエッチングレートが高くなることになる。
【0013】
ここで、図1Bに示すように、フォーカスリング119上にポリイミドシート膜を貼り付けてOラジカルとの反応性をもたせた場合についてエッチングレートの変化を調べた。図1Cは、フォーカスリング119上にポリイミドシート膜を貼り付けた場合と貼り付けない場合(Base)のエッチングレートの比較結果を示している。図1Cに示すように、フォーカスリングがむき出しの場合は、ウエハ周縁部においてエッチングレートが跳ね上がる結果が得られた。一方、フォーカスリング119上にポリイミドシート膜を貼り付けてOラジカルとの反応性をもたせた場合は、ウエハの中央部から周縁部にかけてほぼ均一なエッチングレートが得られた。このことから、フォーカスリング上の余剰なOラジカルを抑えることで、有機膜が形成されたウエハ面内のエッチングレートを均一化することができることがわかる。
【0014】
(ウエハエッジ領域のE/R改善)
ところで、有機膜エッチングにおいては、処理ガスに酸素や希ガスを添加することで形状制御が可能となる。また、フッ化性ガス濃度を高くすると、側壁部のエッチング形状が良好になることが知られている。そこで、ウエハ周縁部においてOガスの流量を抑え、ウエハ中央部においてOガス流量を増やす方法が考えられる。
【0015】
図2Aは、従来のプラズマエッチングにおける処理ガスの流量例を示し、図2Bは、図2Aに示すプラズマエッチングにおいて、ウエハ中央部と周縁部とで処理ガスの流量比を変更した例を示している。図2Aに示す従来の処理ガス流量と比較して、図2Bに示す例では、ウエハ中央部(Center)、中域(Middle)および縁部(Edge)ではOガス流量を増やし、ウエハ周縁部(Very Edge)ではOガス流量をゼロとしている。
【0016】
図2Cは、図2Aおよび図2Bの条件によるプラズマエッチングのウエハ面内のエッチングレートを示している。図2Cに示すように、Oガス流量を制御するのみでは、依然としてウエハ周縁部近傍におけるエッチングレートの跳ね上がりが解消しきれていないことがわかる。このように、処理ガス供給量のウエハ面内分布を制御するだけでは、ウエハ周縁部、周縁部の外側で生ずるOラジカルの量を制御することに限界があることがわかる。
【0017】
(スカベンジ効果の利用)
実施形態のプラズマエッチングでは、ウエハ周縁部において余剰のOラジカルを取り除く効果(スカベンジ効果)をもつ処理ガスを、ウエハ周縁部に供給している。すなわち、ウエハ周縁部に、例えばCHFやCなどのガスを導入する。例えば図3Aに示すように、ウエハ周縁部(Very Edge)ではOガスに代えてCガスをウエハに供給する。
【0018】
図3Bおよび図3Cに示すように、スカベンジ効果をもつガス(エッチング阻害因子ガス)は、フォーカスリング119上において、余剰のOラジカルと反応する作用をする。例えば、図3Bに示すようにウエハWの周縁部にCガスを導入すると、不飽和種はOラジカルと選択的に反応するから、数式(1)に示すような反応を示す。
(O,O)+C−>(COF,CO,CO)+(F,F)…(1)
すなわち、余剰のOラジカルを取り除くことができる。
【0019】
このように、実施形態のプラズマエッチングでは、ウエハ周縁部にエッチング阻害因子ガスを導入して、余剰のOラジカルを除去している。そのため、実施形態のプラズマエッチングを実現するプラズマエッチング装置(および当該プラズマエッチングを含む半導体装置の製造方法を実現する製造装置)では、ウエハの径方向で導入ガス流量を制御可能とすることに加えて、ウエハの径方向で導入ガス種を選択制御可能とすることが必要である。
【0020】
(実施形態に係る製造装置の構成)
図4を参照し、本実施形態に係る半導体装置の製造方法に好適なプラズマエッチング装置の一例について説明する。
【0021】
図4に示すように、プラズマエッチング装置100は、例えば表面が陽極酸化処理(アルマイト処理)されたアルミニウムから成る円筒形状に成形されたチャンバ(処理容器)102を有している。チャンバ102は接地されている。チャンバ102内の底部には、セラミック等の絶縁板103を介して略円柱状のサセプタ支持台104が設けられている。サセプタ支持台104の上には、下部電極を構成するサセプタ105が設けられている。サセプタ105は、ハイパスフィルタ(HPF)105aを介して接地されている。
【0022】
サセプタ105は、その上側中央部が凸状の円板状に成形されている。サセプタ105の上には、被処理体の一例であるウエハWの直径と略同一の直径を有する静電チャック111が設けられている。静電チャック111は、円板状のセラミックス部材で構成される絶縁材と、これらの間に介在される静電電極112とを有している。また、静電チャック111の静電電極112には、直流電源113が接続されている。例えば、1.5kVの直流電圧が直流電源113から静電電極112に印加されると、ウエハWが静電チャック111に吸着保持される。
【0023】
また、サセプタ105には、第1の整合器115を介して第1の高周波電源114が接続され、第2の整合器117を介して第2の高周波電源116が接続されている。第1の高周波電源114は、第一の周波数、例えば、13.6MHzの周波数を有するバイアス電力をサセプタ105に印加する。第2の高周波電源116は、第二の周波数、例えば、40MHzの周波数を有するプラズマ生成電力をサセプタ105に印加する。このプラズマ生成電力により、チャンバ102の内部にプラズマが生成される。
【0024】
絶縁板103、サセプタ支持台104、サセプタ105、および静電チャック111には、ウエハWの裏面に伝熱媒体(例えばHeガスなどのバックサイドガス)を供給するためのガス通路118が形成されている。この伝熱媒体を介して、サセプタ105とウエハWとの間の熱伝達がなされ、ウエハWが所定の温度に維持される。
【0025】
サセプタ105の上端周縁部には、静電チャック111上に支持されたウエハWを囲むように、環状のフォーカスリング119(F/R)が配置されている。フォーカスリング119は、セラミックス又は石英等の誘電材料、若しくは、導電体、例えばウエハWを構成する材料と同じ単結晶シリコンなどの導電性材料によって構成されている。
【0026】
プラズマの分布域をフォーカスリング119上まで拡大することで、ウエハWの周縁部の外側におけるプラズマの密度を、ウエハWの中心側におけるプラズマの密度と同程度に維持することができる。これにより、ウエハWの面内におけるプラズマエッチングの均一性を向上することができる。
【0027】
サセプタ105の上方には、サセプタ105と平行に対向して設けられ、サセプタ105に支持されるウエハWに向けてエッチングガスを供給するシャワーヘッド140(後述)を兼ねる上部電極120が設けられている。上部電極120には直流電源123が接続されている。また、上部電極120は、ローパスフィルタ(LPF)124を介して接地されている。
【0028】
上部電極120は、上部電極駆動部200によって、例えば鉛直方向に駆動可能に構成されている。上部電極120を鉛直方向に駆動可能に構成することにより、上部電極120とサセプタ105との間の空間の距離(以下、「ギャップ」という。)Gを調整することができる。ギャップGは、エッチングガスの拡散および流れに大きく影響を与えるパラメータであるから、ギャップGを調整可能な構造とすることにより、チャンバ102の内部の上部電極120とサセプタ105との間のプラズマ分布を制御することができる。
【0029】
上部電極駆動部200により駆動される上部電極120の鉛直方向に沿った移動量は、特に制限はない。一例として、上部電極120の鉛直方向に沿った移動量を70mmとし、ギャップGを20mm以上90mm以下に調整可能な構造とすることができる。なお、プラズマエッチング装置100は、図1に示す構成を90°回転して横に倒した構成にしてもよく、上下反転した構成にしてもよい。
【0030】
上部電極120は、チャンバ102の上部内壁にベローズ122を介して支持されている。ベローズ122はチャンバ102の上部内壁に環状の上部フランジ122aを介してボルトなどの固定手段により取付けられるとともに、上部電極120の上面に環状の上部フランジ122bを介してボルトなどの固定手段により取付けられる。
【0031】
ギャップGを調節可能とする上部電極駆動部200の構成について詳細に説明する。上部電極駆動部200は、上部電極120を支持する略円筒状の支持部材204を有する。支持部材204は上部電極120の上部略中央にボルトなどで取付けられている。支持部材204は、チャンバ102の上壁の略中央に形成された孔102aを出入自在に配設される。具体的には、支持部材204の外周面は、スライド機構210を介してチャンバ102の孔102aの内側に支持されている。スライド機構210は、例えばチャンバ102の上部に断面L字状の固定部材214を介して固定部材214の鉛直部に固定された案内部材216と、この案内部材216に摺動自在に支持され、支持部材204の外周面に一方向(本実施形態では鉛直方向)に形成されたレール部212とを有する。
【0032】
スライド機構210の案内部材216を固定する固定部材214は、その水平部が環状の水平調整板218を介してチャンバ102の上部に固定される。この水平調整板218により、上部電極120の水平位置が調整される。水平調整板218は、例えば、水平調整板218の周方向に等間隔で配置した複数のボルト等によりチャンバ102に固定される。また、水平調整板218の水平方向に対する傾き量を、これらのボルトの突出量により、調整することも可能である。水平調整板218が水平方向に対する傾きを調整し、上記スライド機構210の案内部材216が鉛直方向に対する傾きが調整することで、上部電極120の水平方向の傾きを調整することができる。即ち、上部電極120を常に水平位置に保つことができる。
【0033】
チャンバ102の上側には、上部電極120を駆動するための空気圧シリンダ220が、筒体201を介して取付けられている。即ち、筒体201の下端は、チャンバ102の孔102aを覆うようにボルト等で気密に取付けられており、筒体201の上端は、空気圧シリンダ220の下端に気密に取付けられている。
【0034】
空気圧シリンダ220は、一方向に駆動可能なロッド202を有している。ロッド202の下端は、支持部材204の上部略中央にボルト等で連設されている。ロッド202が駆動されることにより、上部電極120は、支持部材204によりスライド機構210に沿って移動することができる。ロッド202は、例えば円筒状に構成され、ロッド202の内部空間が支持部材204の略中央に形成された中央孔と連通して大気開放される。これにより、上部電極120とローパスフィルタ(LPF)124を介して接地する配線、および上部電極120に直流電源123から直流電圧を印加するための給電線は、ロッド202の内部空間から支持部材204の中央孔を介して上部電極120に接続するように配線することができる。
【0035】
また、空気圧シリンダ220の側部には、例えばリニアエンコーダ205等の、上部電極120の位置を検出する位置検出手段が設けられている。一方、ロッド202の上端には、ロッド202から側方に延出する延出部207aを有する上端部材207が設けられている。上端部材207の延出部207aとリニアエンコーダ205の検出部205aとが当接している。上端部材207は上部電極120の動きに連動するため、リニアエンコーダ205により上部電極120の位置を検出することができる。
【0036】
空気圧シリンダ220は、筒状のシリンダ本体222、上部支持板224および下部支持板226を含む。筒状のシリンダ本体222は、上部支持板224と下部支持板226とにより挟まれる構成となっている。ロッド202の外周面には、空気圧シリンダ220内を上部空間232と下部空間234に区画する環状の区画部材208が設けられている。
【0037】
空気圧シリンダ220の上部空間232には、上部支持板224の上部ポート(図示せず)から圧縮空気が導入されるようになっている。また、空気圧シリンダ220の下部空間234には、下部支持板226の下部ポート(図示せず)から圧縮空気が導入されるようになっている。上部ポートおよび下部ポートから上部空間232および下部空間234へと導入する空気量を制御することにより、ロッド202を一方向(例えば鉛直方向)へと駆動制御することができる。この空気圧シリンダ220へ導入する空気量は、空気圧シリンダ220の近傍に設けられた空気圧回路300により制御される。
【0038】
上部電極駆動部200は、制御部290を有しており、制御部290は、装置制御部190と接続されている。装置制御部190からの制御信号は制御部290に伝えられ、制御部290により、上部電極駆動部200の各部が駆動制御される。
【0039】
サセプタ支持台104の内部には、ウエハWの面内における温度分布を調節可能とする、温度分布調製部106が配置されている。温度分布調整部106は、ヒータ106a、106b、ヒータ用電源106c、106d、温度計106e、106f、冷媒流路107a、107bを有する。
【0040】
サセプタ支持台104の内部には、中心側から外周側に向かって、中心側ヒータ106aと外周側ヒータ106bとが設けられている。中心側ヒータ106aには、中心側ヒータ用電源106cが接続され、外周側ヒータ106bには、外周側ヒータ用電源106dが接続されている。中心側ヒータ用電源106c、外周側ヒータ用電源106dは、各々、中心側ヒータ106a、外周側ヒータ106bに投入する電力を独立に調節することができる。これにより、サセプタ支持台104およびサセプタ105に、ウエハWの径方向に沿った温度分布を発生させることができる。即ち、ウエハWの径方向に沿った温度分布を調節することができる。
【0041】
また、サセプタ支持台104の内部には、中心側から外周側に向かって、中心側温度計106eおよび外周側温度計106fが設けられている。中心側温度計106eおよび外周側温度計106fは、各々、サセプタ支持台104の中心側および外周側の温度を計測し、これによりウエハWの中心側および外周側の温度を導出できる。中心側温度計106eおよび外周側温度計106fで計測された温度は、装置制御部190に送られる。装置制御部190は、計測された温度から導出されたウエハWの温度が目標温度となるように、中心側ヒータ用電源106cおよび外周側ヒータ用電源106dの出力を調整する。
【0042】
さらに、サセプタ支持台104の内部には、中心側から外周側に向かって、中心側冷媒流路107aおよび外周側冷媒流路107bを設けても良い。そして、各々に異なる温度の、例えば冷却水、フルオロカーボン系の冷媒を循環させても良い。冷媒を循環させる場合、冷媒は、中心側導入管108aを介して中心側冷媒流路107aに導入され、中心側排出管109aから排出される。一方、外周側冷媒流路107bには、外周側導入管108bを介して冷媒が導入され、外周側排出管109bから排出される。
【0043】
サセプタ105は、ヒータ106a、106bによる加熱と、冷媒からの冷却とにより温度が調整される。したがって、ウエハWは、プラズマからの輻射やプラズマに含まれるイオンの照射などによる加熱分と、前述のサセプタ105との熱量の授受とにより、所定の温度になるように調整される。また、サセプタ支持台104は、中心側ヒータ106a(および中心側冷媒流路107a)および外周側ヒータ106b(および外周側冷媒流路107b)を有する。そのため、ウエハWは、中心側と外周側とで独立して温度を調整することができる。
【0044】
なお、中心側ヒータ106aと外周側ヒータ106bとの間、又は、中心側冷媒流路107aと外周側冷媒流路107bとの間に、断熱層として断熱材又は空間を設けても良い。断熱層を設けることにより、中心側ヒータ106aと外周側ヒータ106bとの間、又は中心側冷媒流路107aと外周側冷媒流路107bとの間が熱的に遮断される。すなわち、ウエハWの中心側と外周側との間に、より大きな温度分布を生じさせることができる。
【0045】
チャンバ102の底部には排気管131が接続されており、排気管131には排気装置135が接続されている。排気装置135は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、チャンバ102内を所定の減圧雰囲気(例えば0.67Pa以下)に調整する。また、チャンバ102の側壁にはゲートバルブ132が設けられている。ゲートバルブ132を開くことによって、チャンバ102内へのウエハWの搬入、および、チャンバ102内からのウエハWの搬出が可能となる。なお、ウエハWの搬送には例えば搬送アームが用いられる。
【0046】
続いて、図5Aおよび図5Bを参照してシャワーヘッド140について説明する。図5Aに示すように、シャワーヘッド140は、エッチングガス等のガスをウエハWに供給する多数のガス噴出孔h(ha〜hd)を有する円形状の電極板141(上部電極120)と、電極板141の上面側を着脱自在に支持する電極支持体142を備えている。電極支持体142は、電極板141の外径と等しい外径を有する円盤形状を有し、電極支持体142の内側に円形状のバッファ室143が形成されている。
【0047】
バッファ室143内では、電極板141上に、図5Aに示すように、たとえばOリングから成る1つ以上の環状隔壁部材145が配置されている。具体的には、本実施形態においては、異なる直径を有する3つの環状隔壁部材145a、145b、145cが同心円状に配置されている。これにより、バッファ室143は、電極板141の径方向に沿って、センタ領域143a(Center)、中間領域143b(Middle)、周縁領域143c(Edge)、および最外縁領域143d(Very Edge)に分割される。
【0048】
また、図4および図5Bに示すように、領域143a〜143dは、それぞれガス供給装置150と接続され、これによりガス供給装置150から各領域143a〜143dに対してエッチングガスが供給される。各領域143a〜143dに供給されたエッチングガスは、対応するガス噴出孔hから、サセプタ105に支持されるウエハWに向かって噴出される。
【0049】
なお、ガス噴出孔hの数と配置については、ウエハWに対してエッチングガスが均一に噴出されるように決定して良い。例えば、ガス噴出孔hは、シャワーヘッド140(電極板121)の中心を中心とし、同心円状に位置する複数の同心円の各円周上に配置することができる。具体的には、300mmの直径を有するウエハWを使用する場合、センタ領域143aにおいて、半径11mmの円の円周上に4つのガス噴出孔haが(例えば等間隔で)配置され、半径33mmの円の円周上に12個のガス噴出孔hbが(例えば等間隔で)配置されている。中間領域143bにおいては、半径55mmの円の円周上に24個のガス噴出孔hcが(例えば等間隔で)配置され、半径77mmの円の円周上に36個のガス噴出孔hdが(例えば等間隔で)配置されている。周縁領域143cにおいては、図示を省略するが、半径99mmの円の円周上に48個のガス噴出孔が(例えば等間隔で)配置され、半径121mmの円の円周上に60個のガス噴出孔が(例えば等間隔で)配置されている。最外縁領域143dにおいては、図示を省略するが、半径143mmの円の円周上に80個のガス噴出孔が(例えば等間隔で)配置され、半径165mmの円の円周上に100個のガス噴出孔が(例えば等間隔で)配置されている。
【0050】
次に、図6を参照して、バッファ室143の各領域143a〜143dに個別にエッチングガスを供給するガス供給装置150およびガス供給系について説明する。ガス供給装置150は、第1のガスボックス161と、第2のガスボックス160とを備えている。第1のガスボックス161には、複数のガス供給源(図示せず)と接続される第1の集合バルブ303が収容されており、第2のガスボックス160には、第2の集合バルブ302と、第2の集合バルブ302の各バルブに対応して設けられる、例えばマスフローコントローラ等の流量制御器301と、第3の集合バルブ300とが収容されている。
【0051】
本実施形態では、ガス供給源には、例えば、フロロカーボン系のフッ素化合物(CF系)として、CF、C、C、CH、CHFなどのガスが封入されている。同様に、例えばCF系の反応生成物の付着を制御するガスとして、例えば酸素(O)ガスが封入されている。さらに、キャリアガスとして、例えばAr、He等の希ガスや、Nガスなどが封入されている。
【0052】
各ガス供給源からの配管は、第1のガスボックス161内の第1の集合バルブ303における対応するバルブに接続されている。また、本実施形態では、第1の集合バルブ303の下流側において、CHFガス配管とOガス配管とが合流し、更に4本の分岐管170a、171a、172a、173aに分岐している。分岐管170a〜173aには、第1の集合バルブ303を制御することにより、CHFガスおよびOガスのいずれかが流れる。
【0053】
同様に、第1の集合バルブ303の下流側において、CFガス配管とNガス配管とが合流し、更に4本の分岐管170b、171b、172b、173bに分岐している。分岐管170b〜173bには、第1の集合バルブ303を制御することにより、CFガスおよびNガスのいずれかが流れる。
【0054】
同様に、第1の集合バルブ303の下流側において、Oガス配管とArガス配管とが合流し、更に4本の分岐管170c、171c、172c、173cに分岐している。分岐管170c〜173cには、第1の集合バルブ303を制御することにより、OガスおよびArガスのいずれかが流れる。
【0055】
さらに第1の集合バルブ303の下流側において、Cガス配管とCガス配管とが合流し、更に4本の分岐管170d、171d、172d、173dに分岐している。分岐管170d〜173dには、第1の集合バルブ303を制御することにより、CガスおよびCガスのいずれかが流れる。
【0056】
分岐管170a〜173a、170b〜173b、170c〜170c、および170d〜170dは、第2のバルブボックス160内の第2の集合バルブ302における対応するバルブに接続され、さらに、対応する流量制御器301を介して、第1の集合バルブ300の対応するバルブに接続されている。
【0057】
第1の集合バルブ300の下流側において、分岐管170a、170b、170c、および170dに対応した配管が配管170に合流し、配管170は、シャワーヘッド104のセンタ領域143aに連通している(図5B参照)。また、第1の集合バルブ300の下流側において、分岐管171a、171b、171c、および171dに対応した配管が配管171に合流し、配管171は、シャワーヘッド104の中間領域143bに連通している(図5B参照)。同様に、第1の集合バルブ300の下流側において、分岐管172a、172b、172c、および172dに対応した配管が配管172に合流し、配管172は、シャワーヘッド104の周縁領域143cに連通している(図5B参照)。さらに、第1の集合バルブ300の下流側において、分岐管173a、173b、173c、および173dに対応した配管が配管173に合流し、配管173は、シャワーヘッド104の最外縁領域143dに連通している(図5B参照)。
【0058】
以上の構成により、第1の集合バルブ300、第2の集合バルブ302、および第3の集合バルブ303を適宜開閉することにより、シャワーヘッド140の各領域143a〜143dに対して、各エッチングガスを選択的に供給することができる。即ち、図6の例では、各ガス供給源に接続される配管は、配管170〜173のように4つに分岐されている。また、配管は第1の集合バルブ303が接続されており、所望するプロセスに応じて、ガス種を切り替えることが可能な構造となっている。このような構造にすることにより、新たなガス供給源を追加する場合や、プロセスにより不要なエッチングガスのガス供給を停止する場合も、簡易な操作で実行することができる。
【0059】
前述の通り、プラズマエッチング装置100は装置制御部190を有している。装置制御部190は、例えばCPUよりなる図示しない演算処理装置と、例えばハードディスクよりなる図示しない記録媒体を備えている。装置制御部190は、前述した、第1の高周波電源114、第2の高周波電源116、温度分布調整部106、上部電極駆動部200、ガス供給条件調整部130の各部の動作を制御する。そして、装置制御部190は、上記各部を動作させる際は、例えば装置制御部190のCPUが、例えば装置制御部190のハードディスクに記録されている、それぞれのエッチング処理に対応するプログラムに応じて、各部を制御する。
【0060】
(実施形態に係る製造装置の動作)
次に、図4から図8A〜8Dを参照して、プラズマエッチング装置100を用いて行われる、実施形態の製造装置の動作を説明する。図7は、実施形態の半導体装置の製造方法の工程を示すフローチャート、図8A〜8Dは、当該各工程におけるウエハWの様子を示す図である。図8A〜8Dにおいては、便宜上、ウエハ上に形成される多数のトレンチ・ビア構造のうちの一つを示している。また、図8A〜8Dに示す工程は、プラズマエッチング装置100において連続的に行われる。
【0061】
まず、図8Aに示すように、ウエハに形成された配線層10の上に、多層膜としてブロック層11、低誘電率体(low-k)層12、酸化シリコン層13、窒化チタン(TiN)層14、有機平坦化層15および反射防止膜16を形成し、さらに第1のマスク層17をこの順に形成する(図7のステップS11。以下「S11」のように称する。)。
【0062】
ブロック層11は、例えばプラズマCVD法を用いて例えば酸化シリコンなどの材料により形成される。ブロック層11は、low-k層12による配線層10の劣化を低減して配線層10を保護するため、これらの層の間に形成されている。
【0063】
low-k層12は、例えば3.5程度以下の低い誘電率を有する低誘電体材料により形成される。low-k層12は、例えばBlack Diamond(登録商標)、SiOFやSiOCなどの不純物が添加された酸化シリコン、および多孔質材料などにより形成することができる。また、水素メチルシルセスキオキサン(HSQ)およびメチルシルセスキオキサン(MSQ)などを主成分とするスピン−オン材料により形成してもよい。本実施形態においては、Black Diamondによりlow-k層12を形成している。
【0064】
酸化シリコン層13は、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)を原料とした酸素プラズマCVD法により形成することができる。有機平坦化層15は、有機材料を主成分とするスピン−オン材料により好適に形成される。これによれば、スピン−オン材料の流動性により下地層の凹凸が緩和され、平坦な上面を有する有機平坦化層15が得られる。
【0065】
有機平坦化層15の上面には、反射防止膜16とフォトレジスト膜(図示せず)とを順次形成し、フォトレジスト膜がフォトリソグラフィ技術によりパターン化されることにより、第1のマスク層17が得られる。第1のマスク層17は、例えば一の方向に延びるライン状のパターンを有している。第1のマスク層17のパターンは、後述するトレンチ(すなわち、後に形成される上層配線)のパターンに合わせて決定される。
【0066】
続いて、図8Aに示す構造を有するウエハWをプラズマエッチング装置100のチャンバ102内に搬入する。そして、第1のマスク層17を用いて反射防止膜16および有機平坦化層15を除去する。この除去は、例えば酸素プラズマにウエハを曝すことにより行われる。その後、プラズマエッチングによりTiN層14をエッチングすると、第1のマスク層17のパターンがTiN層14へ転写される。この後、エッチングに用いた第1のマスク層17と、これの下方に残る反射防止膜16および有機平坦化層15とを例えば酸素プラズマにより除去すると、メタルハードマスク(MHM)14aが得られる(図7:S12)。
【0067】
次に、MHM14aと、その下地層である酸化シリコン層13とを覆うように有機平坦化層25を形成する。有機平坦化層25は、例えば有機平坦化層15と同じ材料および同じ方法により形成することができる。次いで、有機平坦化層25上に反射防止膜26とフォトレジスト膜とが形成され、このフォトレジスト膜をパターン化することによりフォトレジストマスク27が形成される(図7:S13)。フォトレジストマスク27は、上面形状がほぼ四角形の開口27hを有しており、開口27hの幅は、第1のマスク層17の間隔(=MHM14aの間隔)よりも狭い。また、開口27hは、配線層10と電気的に接続するビアが形成されるべき位置に形成され、開口27hの幅は、ビアの寸法に対応している。
【0068】
続けて、フォトレジストマスク27をマスクとして、反射防止膜26および有機平坦化層25をエッチングし、図8Dに示すように、有機平坦化層25から第2のマスク層25aが形成される(図7:S14)。第2のマスク層25aは、フォトレジストマスク27の開口27と同じ寸法を有する開口25hを有している。
【0069】
次に、第2のマスク層25aを用いて、C/Ar/N/O混合ガスにより酸化シリコン膜13とlow-k膜12とをプラズマエッチングし、このプラズマエッチングに用いた第2のマスク層25aを除去すると、図8Eに示す構造が得られる(図7:S15)。この構造においては、酸化シリコン層13を貫通し、酸化シリコン層12およびlow-k膜12の合計厚さよりも浅い深さを有するホールtが形成されている。また、ホールtの深さはエッチング時間により決定される。
【0070】
次いで、MHM14aをマスクとして、CHF/Ar/N混合ガスにより酸化シリコン膜13とlow-k膜12とを更にプラズマエッチングすると、図8Fに示す構造が得られる(図7:S16)。具体的には、酸化シリコン膜13のMHM14aに覆われていない部分(図8E参照)からプラズマエッチングが進行していき、酸化シリコン膜13を貫通し、low-k膜12の所定の深さ位置にまで達するトレンチTが形成される。一方、図8Eに示したホールtの底部もまたプラズマエッチングされていき、配線層10の上面を底面とするビアVが形成される。これにより、トレンチ・ビアTVが形成される。図示の例では、トレンチTは、第1のマスク層17の幅を有し、この幅と直交する方向に延びており、ビアVは、トレンチTの底部の所定の位置に略円柱形状を有する開口として形成されている。
【0071】
この後、ダマシンプロセスによりビアVおよびトレンチTに金属を充填することで、配線層10と電気的に接続するビアプラグと、ビアと一体に接続する金属配線とを形成する。
【0072】
(具体例)
図4に示すプラズマエッチング装置を用いて、ウエハ周縁部の酸素流量を変化させた場合、ウエハ周縁部にCHFガスを導入した場合、およびウエハ周縁部にCガスを導入した場合について、ウエハ面内のエッチングレートについて調べた。図9Aは、ウエハ周縁部の酸素流量を変化させた場合のエッチングレート、図9Bは、ウエハ周縁部にCHFガスを導入した場合のエッチングレート、図9Cは、ウエハ周縁部にCガスを導入した場合のエッチングレートを示している。
【0073】
図9Aに示すように、ウエハ周縁部のOガス導入をゼロとした場合は、依然としてウエハ周縁部のエッチングレートの跳ね上がりが残ってしまっている。また、図9Bに示すように、ウエハ周縁部にCHFガスを導入した場合、流量が40[sccm]のときに比較的良好な面内均一性が得られたが、ウエハ全域でエッチングレートが低下し、またウエハ周縁部でのエッチングレートの跳ね上がりが若干残ってしまっている。さらに、図9Cに示すように、ウエハ周縁部にCガスを導入した場合、流量が5[sccm]の時に良好な面内均一性が得られた。
【0074】
CHFガスとCガスの結果の違いは、化学結合の違いに起因すると考えられる。すなわち、Cは不飽和(C=Cの二重結合をもつ)なので、より酸素ラジカルをスカベンジしやすい構造をもっていることが挙げられる。すなわち、CやC、C(ただし、x,y,zは自然数。以下同様。)などの不飽和構造のカーボンを含むガスが適していると考えられる。
【0075】
また、CHFガスとCガスとでは、前者の方が分子量が小さく、導入する流量も多くなることから、Cよりもウエハ全域に容易に行き渡ってしまったことが考えられる。すなわち、分子量が大きく拡散し難い処理ガスを選択する方が好ましい。
【0076】
(プラズマエッチング装置の変形例1)
続いて、実施形態のプラズマエッチング装置の変形例を説明する。この変形例は、図4に示すプラズマエッチング装置のシャワーヘッド周辺の構成を変更したものである。以下の説明では、図4に示すプラズマエッチング装置と共通する構成に共通の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0077】
図10Aに示すように、この変形例に係るプラズマエッチング装置では、図4に示すプラズマエッチング装置のシャワーヘッド140(上部電極120)を、フォーカスリング119の外周より外側まで延設させ、バッファ室143a〜143dに加えて、バッファ室143e〜143gを設けたものである。バッファ室143e〜143gには、それぞれ配管174〜176が接続されている。配管174〜176は、図示しないガス供給装置に接続されており、配管170〜173と同様に様々な流量・ガス種のガスを供給可能としている。
【0078】
すなわち、図10Bに示すように、ウエハWの周縁部領域に、バッファ室143e〜143gを経由した処理ガスが、それぞれ領域(e)〜(g)にも届くような構成とすることで、ウエハ周縁部のエッチングレートを制御可能とするものである。この変形例に係るプラズマエッチング装置によれば、ウエハ中心部から周縁部にかけてエッチングレートの均一化を図ることができ、エッチング形状の均一化も図ることができる。ここで形状とは、エッチングレート、面内均一性、ボーイングといったデバイス加工の良否を判断するいかなるものであってもよい。
【0079】
(エッチング方法の変形例)
続いて、実施形態のプラズマエッチング方法の変形例を説明する。この変形例は、プラズマエッチングに先立ってダミーウエハを搬入し、予めフォーカスリングに堆積処理を施すものである。
【0080】
まず、装置制御部190は、ゲートバルブ132を開放し、ダミーウエハをチャンバ102内に搬入して静電チャック111上に載置する(S21)。ダミーウエハの搬入後、ゲートバルブ132を閉じ排気装置135により減圧する。
【0081】
次いで、ガス供給装置150は、例えばCやC、Cなどのデポ性ガス(堆積性ガス)をチャンバ102内に導入する(S22)。装置制御部190は、第1の高周波電源114や第2の高周波電源116などを制御してチャンバ102内にプラズマを発生させ堆積処理を実行する(S23)。このとき、ガス供給装置150は、デポ性ガスをバッファ室143dのみに供給し、ウエハWの周縁部に集中的に堆積工程を施してもよい。この堆積処理により、フォーカスリング119上にデポ物質が堆積される。
【0082】
続いて、ゲートバルブ132を介してダミーウエハを搬出させ(S24)、被処理ウエハWを静電チャック111上に載置する(S25)。被処理ウエハWの搬入後、ゲートバルブ132を閉じ、排気装置135により減圧する。その後、所定のプラズマエッチング処理を実行する(S26)。
【0083】
この変形例によれば、プラズマエッチング処理に先立ってフォーカスリング119上にCやC、Cなどのデポ性ガスを用いて堆積処理を施すので、プラズマエッチング処理においてフォーカスリング上での余剰のOラジカルを除去することができる。
【0084】
(プラズマエッチング装置の変形例2)
続いて、実施形態のプラズマエッチング装置の変形例を説明する。この変形例は、図4に示すプラズマエッチング装置のシャワーヘッド周辺の構成とフォーカスリング周辺の構成を変更したものである。以下の説明では、図4に示すプラズマエッチング装置と共通する構成に共通の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0085】
図12Aに示すように、この変形例に係るプラズマエッチング装置では、図4に示すプラズマエッチング装置のフォーカスリング119を調温可能な支持台104aと、フォーカスリング119上方にプラズマを発生させる静電電極119a・高周波電源114aおよび整合器115aと、シャワーヘッド140の外周部に配設された誘導結合プラズマ装置(ICP装置)140aとを備えている。すなわち、この変形例は、図4に示すプラズマエッチング装置に、フォーカスリング119上方にプラズマを発生させるための機構をさらに追加したものである。
【0086】
続いて、図12Bを参照して、この変形例に係るプラズマエッチング装置の動作を説明する。被処理ウエハを静電チャック111上に搬入した後、ガス供給装置150は、ウエハ周縁部(またはフォーカスリング上)に、例えばCやC、Cなどのデポ性ガスを導入する(S31)。併せて、支持台104aは、フォーカスリング119の温度を低下させて、フォーカスリング119上のラジカル吸着率を増加させる(S32)。
【0087】
その後、装置制御部190は、静電電極119aに高周波電源114aを接続して高周波電圧を印加し、プラズマを発生させる(S33)。フォーカスリング119上のプラズマは、高周波電源114aによる高周波電圧により発生させてもよいし、ICP装置140aにより発生させてもよいし、両者を用いても構わない。また、フォーカスリング119上にプラズマを発生させるのではなく、通常のプラズマエッチングにおいて、フォーカスリングを冷却することによっても、同様の効果を得ることができる。
【0088】
この変形例によれば、フォーカスリング上にデポ性ガスを用いたプラズマを発生させて堆積処理を施すので、プラズマエッチング処理においてフォーカスリング上での余剰のOラジカルを除去することができる。
【0089】
以上、本発明の好ましい実施形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本発明の実施形態によるプラズマエッチング装置100でエッチング可能な被処理体は、特に限定されない。例えば、シリコン基板よりなるウエハであって、その上に二酸化ケイ素(SiO)膜、ポリシリコン膜よりなる被エッチング膜、1層又は複数層よりなるマスク層、反射防止膜(Bottom Anti-Reflective Coating: BARC)及びフォトレジスト膜等が形成されているもの等を使用することができる。
【符号の説明】
【0090】
W…ウエハ、105…サセプタ(支持部)、106…温度分布調整部、120…上部電極(電極)、122…ベローズ、130…調節部、140…シャワーヘッド、143…バッファ室、145…環状隔壁部材、150…ガス供給装置、190…装置制御部、200…上部電極駆動部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、該チャンバ内に配設され被処理ウエハが載置されるチャックと、前記チャックの周縁部に前記ウエハの載置位置を囲うように配設されたフォーカスリングと、前記ウエハの径方向の位置に応じて異なる種類のガスを供給可能なガス供給機構とを備えたプラズマエッチング装置を用いて前記ウエハからなる半導体装置を製造する製造方法であって、
有機膜が形成されたウエハを前記チャック上に載置し、
前記処理ガス供給機構から、前記ウエハの有機膜をエッチングするエッチングガスを前記ウエハの中央部に導入し、
前記処理ガス供給機構から、前記エッチングガスと反応する性質を有するエッチング阻害因子ガスを前記ウエハの周縁部に導入し、
前記エッチングガスを用いて前記ウエハをプラズマエッチングすること
を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記エッチングガスは、少なくともOガスを含むガスからなり、
前記エッチング阻害因子ガスは、Cガス、CガスおよびCガス(ただしx,y,zは自然数)の少なくともいずれかを含むガスからなること
を特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記エッチングガスは、少なくともOガスを含むガスからなり、
前記エッチング阻害因子ガスは、CHFガスまたはCガスの少なくともいずれかを含むガスであること
を特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
前記エッチング阻害因子ガスは、不飽和ガスを含む混合ガスからなることを特徴とする請求項1記載の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【公開番号】特開2013−98193(P2013−98193A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236694(P2011−236694)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】