説明

半導体装置の製造方法

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
【0001】この発明は半導体装置の製造方法に関し、特にダイシング時の加工精度並びに作業効率の向上を図ったものに関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4は従来の製造方法を用いて製造された半導体装置の構造の一例を示す斜視図であり、この図の装置では、半導体基板1上に集積回路パターン6を形成し、半導体基板1の裏に半導体基板1よりバイアホール5を介した接地電極兼ヒートシンク用の金属層13を形成して構成されている。
【0003】また図5は上記従来の半導体装置となる半導体ウェハをチップ状態に分離する方法を説明するための図であり、本方法では分離後に後工程の容易さを考慮し、伸縮性のあるダイシングテープ7に半導体基板1及び金属層13とで構成されるウェハを貼りつけた後、半導体基板1が化学薬品によりエッチングされて取り除かれてできたダイシングライン8上に沿ってダイシングブレード9により金属層13をダイシング分離して作製される。従ってダイシング工程により作製されるチップの金属層13の側面の形状は平坦なものとなっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の半導体装置の製造方法は以上のように構成されているので、ダイシング時に金属の延性のため図5に示すように、ダイシングブレード9に沿うようにバリ10が金属層13下面のダイシングテープ7に向けて発生し、その後のチップダイボンド時にこのバリ10により十分な接合を得ることが困難であった。
【0005】例えば半導体基板に厚さ30μmのGaAsを用い、50μmのAuからなる金属層を用いて半導体ウェハを構成し、これをダイシングする場合、金属層下面に約20〜30μmのバリが生じることとなる。
【0006】また、マスクを用いてエッチングしてチップを分割する方法もあり、この方法を用いれば上述のようなチップ下面のバリは生じないが、チップ側面の寸法制御が難しく、また分割後のチップがバラバラになり後工程であるダイボンド工程への移行が迅速に行なえず、製造歩留が悪いという問題点があった。
【0007】この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、製造歩留が良く、ダイボンド時に十分な接合が得られる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明に係る半導体装置の製造方法は、チップ領域を分割するダイシングラインに沿って金属層をダイシングする際に、金属層裏面側に粘着剤を用いて金属層よりも硬度の大きい物質からなる層を装着してダイシングブレードを用いてダイシングを行なうようにしたものである。
【0009】また、金属層よりも硬度の大きい物質として光透過性のものを用い、光に感応して粘着力が低下する粘着剤を用いたものである。
【0010】
【作用】この発明においては、ダイシング時に金属層裏面側に、金属層よりも硬度の大きい物質からなる層が存在するため、ダイシング時に金属層下面の金属の延性によるバリを低減することができ、またダイシングテープを用いているため後工程への移行が迅速に行える。
【0011】さらに、金属層よりも硬度の大きい物質は光透過性であるため、光に感応して粘着力が低下する粘着剤を用いることで、チップをこれら部材から容易に剥離することができる。
【0012】
【実施例】図1及び図2はこの発明の一実施例による半導体装置の製造方法により製造された半導体チップを裏面側からみた斜視図及び断面図であり、図において、1はその表面に集積回路パターンが形成された半導体基板、2は接地電極とヒートシンクを兼ねるよう設けられた金メッキ層(接地電極兼ヒートシンク)であり、上記基板表面の集積回路パターンとバイアホールを介して接続されている。
【0013】またこの実施例により製造されたチップ裏面側の金メッキ層側面4の、金属層2の表面3に対するバリによる凹凸は5μm以内となっており、また金メッキ層側面4はダイシングにより平坦な構造を有するものとなっている。
【0014】図3はこの発明の一実施例による半導体装置の製造方法によるダイシング工程時の断面図であり、図において、図1及び図2と同一符号は同一または相当部分を示し、7はダイシングテープ、9はダイシングブレード、12はダイシング時に金メッキ層2の金が延びてバリができるのを抑制するためにウェハ裏面側の金メッキ層2の表面に厚み5μm以内の粘着剤11を介して接着された厚さ150〜200μm程度のサファイヤウェハである。また上記粘着剤11としては光に感応して粘着力が低下するようなものを用いる。
【0015】次に動作について説明する。従来例と同様にして半導体基板1が化学薬品によってエッチングして取り除かれてできたダイシングライン8上に沿ってダイシングブレード9により金属層2を切断するが、切断時の金属層2の延性によるバリ10は図3(b)に示されるように、その下方に金属層2よりも硬度の大きなサファイヤウェハ12があるため粘着剤11の厚さ以下(5μm以下)に抑えられることとなる。
【0016】次に半導体基板1と分離された金メッキ層2とからなる半導体チップをダイシングテープ7から剥離した後、金属メッキ層2下方の切断されたサファイヤウェハ12を取り除く時には、半導体チップ裏面の半透明なサファイヤウェハ12に光を照射して粘着剤11の粘着力を低下させることで容易に剥離することができる。
【0017】このように本実施例によれば、延性の大きい金メッキ層2の下方に粘着剤11を用いて、金メッキ層2よりも硬度の大きなサファイヤウェハ12を装着し、ダイシングテープ7を用いて金メッキ層2をダイシング加工するようにしたから、金メッキ層2下方に生じるバリは粘着剤11の厚さ(5μm)程度に抑えられ、バリによる影響は次のダイボンド工程で実用上問題のない程度となり、ダイボンド時に十分な接合を得ることができる。
【0018】また、ダイシングテープ7を用いてダイシングを行なうようにしているため、チップ分割後のダイボンド工程へ迅速に移行させることができ、製造歩留が低下することがない。
【0019】さらに、サファイヤウェハ12は半透明な光透過性物質であり、粘着剤11として光に感応して粘着力が低下するものを用いることで、後にチップから切断されたサファイヤウェハ12を取り除く作業が容易に行える。
【0020】さらに、ダイシングによりチップ分割加工を行なうようにしているため切断面(チップ側面の金属層)が平坦となり、溶液を用いて行なうときのように寸法制御が困難となることがない。
【0021】なお、上記実施例では金属層2よりも硬度の大きい物質としてサファイヤウェハを用いたが、サファイヤウェハ以外にガラス板等の金属層2よりも硬度の大きい物質であれば他の物質を用いても上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0022】また、上記実施例では半導体基板1の裏面に設ける金属層2として金メッキ層を用いたが、金属層2として銀あるいは銅等の延性の大きい金属が用いられる場合には上記実施例と同様の効果を期待することができる。
【0023】また、上記実施例では光に感応して粘着力が低下する性質を有する粘着剤を用いたが、容易に半導体チップを分離できるような他の粘着剤を用いてもかまわない。
【0024】さらに、上記実施例では粘着層11の厚さを5μm以内としたが、粘着層の厚さはこれに限られるものでなく、金属層2のバリがダイボンド時に実用上問題のない厚さとなるような厚さであればよい。
【0025】
【発明の効果】以上のように、この発明に係る半導体装置の製造方法によれば、チップ領域を分割するダイシングラインに沿って金属層をダイシングする際に、チップ裏面側の金属層表面に粘着剤を用いて金属層よりも硬度の大きい物質からなる層を装着してダイシングテープを用いてダイシングを行なうようにしたので、製造歩留を低下させることなく、ダイシング時の金属層のバリを抑制することができ、後工程であるダイボンド時に充分な接合を得ることができるという効果がある。
【0026】さらに、金属層よりも硬度の大きい物質は光透過性であるため、光に感応して粘着力が低下する粘着剤を用いることで、チップを金属層よりも硬度の大きい物質から容易に剥離することができ、作業性に優れているという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例による半導体装置の製造方法により製造された半導体装置の斜視図である。
【図2】この発明の一実施例による半導体装置の製造方法により製造された半導体装置の断面図である。
【図3】この発明の一実施例による半導体装置の製造方法におけるダイシング工程時の断面図である。
【図4】従来の半導体装置の製造方法により製造された半導体装置の斜視図である。
【図5】従来の半導体装置の製造方法におけるダイシング工程時の断面図である。
【符号の説明】
1 半導体基板
2 金メッキ層(金属層)
3 金メッキ層(金属層)表面
4 金メッキ層(金属層)側面
5 バイアホール
6 集積回路パターン
7 ダイシングテープ
8 ダイシングライン
9 ダイシングブレード
10 バリ
11 粘着剤
12 サファイヤウェハ
13 金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体ウェハ裏面全面にヒートシンク用の金属層が形成され、上記ウェハをエッチングしてダイシングラインを設けてチップ領域に分割する工程と、上記金属層の裏面側にダイシングテープを装着して、上記ダイシングラインに沿って上記金属層をダイシングしてダイボンド用の半導体チップを形成する工程とを備えた半導体装置の製造方法において、上記ダイボンド用の半導体チップを形成する工程は、上記金属層とダイシングテープとの間の金属層裏面側に該金属層よりも硬度の大きい物質からなる層を粘着剤を介して設けてダイシングを行なうものであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】 上記金属層裏面側に設けられた金属層よりも硬度の大きい物質として光透過性のものを用いるとともに、粘着剤として光に感応して粘着力が低下するものを用いたことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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