説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】製造工程数を大幅に増加させることなく、P型MOSFETとN型MOSFETとで異なる仕事関数を有する金属ゲート電極を形成する。
【解決手段】N型MOSトランジスタとP型MOSトランジスタとが形成された半導体装置であって、N型MOSトランジスタのゲート電極107nは、ゲート絶縁膜104に接するタングステン膜105nを具備し、P型MOSトランジスタのゲート電極107pは、ゲート絶縁膜104に接するタングステン膜105pを具備し、タングステン膜105nに含有される炭素の濃度が、タングステン膜105pに含有される炭素の濃度よりも低いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、導電体膜をゲート電極に用いたN型MОSトランジスタ及びP型MOSトランジスタを具備する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の高性能化を実現するために、デバイスの微細化が追求されており、デバイスの微細化と共に、消費電力を低減する必要性が生じてきた。消費電力を低減するためには、トランジスタの閾値を低い値に抑える必要がある。このため、N型MOSFET、P型MOSFETのそれぞれに対して、仕事関数が異なるゲート電極を用いることが行われている。
【0003】
一般的に、トランジスタのゲート電極には多結晶シリコンが用いられており、N型MOSFET、P型MOSFETのゲート電極である多結晶シリコンに不純物をドーピングして、それぞれn型多結晶シリコン、p型多結晶シリコンにし、それぞれの多結晶シリコンの仕事関数を伝導帯(Conduction Band)と価電子帯(Valance Band)の近傍に設定することで、低閾値を実現している。
【0004】
しかし、多結晶シリコンからなるゲート電極では、不純物濃度が導電性不純物の固溶限である1020cm−3台になるように高濃度にドーピングしても、ゲート電極側に空乏層が形成されるために、ゲート容量がその分減少してしまう。このため、ゲート絶縁膜を形成する際には、空乏層のゲート容量を見込んで0.5nm程度余分に薄くする必要があるが、ゲート絶縁膜のトンネル電流によりゲートリーク電流が増加してしまうという問題があるために、ゲート絶縁膜の薄膜化は難しい現状にある。
【0005】
これを回避する方策として、ゲート絶縁膜の高誘電率化や金属ゲート電極の活用が検討されている。ゲート絶縁膜の高誘電率化は、ゲート絶縁膜を高誘電体膜に置き換えることで、ゲート絶縁膜の物理膜厚を稼いでトンネル電流を抑えるものである。最近では特に高誘電体ゲート絶縁膜の材料開発が盛んに行われているが、従来のシリコン酸化膜のような信頼性を含めた議論には至っておらず、実デバイスへの適用にはまだ時間を要する。
【0006】
金属ゲート電極の活用は、ゲート電極を多結晶シリコンから金属に置き換えることで、ゲート電極の空乏化を防ぐものである。金属ゲート電極を採用する場合、トランジスタの閾値を低い値に抑えるために、N型MOSFETには、シリコンの伝導帯である4.0eV近傍の仕事関数を持つ金属をゲート電極材料とし、P型MOSFETには、シリコンの価電子帯である5.1eV近傍の仕事関数を持つ金属をゲート電極材料としてデバイスを形成する(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、ゲート電極として多結晶シリコンを用いる従来のデバイスでは、N型MOSFETとP型MOSFETのゲート電極の成膜を同時に行われていたが、特許文献1に記載されたデバイスを製造する場合は、それぞれのゲート電極の成膜を別々に行わなければならず、工程数が大幅に増加してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2000−31296号公報
【特許文献2】特開2000−252371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、製造工程数を大幅に増加させることなく、P型MOSFETとN型MOSFETとで異なる仕事関数を有する金属ゲート電極を形成することができる、半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る半導体装置は、ゲート絶縁膜に接する第1の導電体膜を含む第1のゲート電極を有するN型MOSトランジスタと、ゲート絶縁膜に接し前記第1の導電体膜に含有される炭素の濃度よりも高い濃度で炭素が含有された第2の導電体膜を含む第2のゲート電極を有するP型MOSトランジスタとを具備したことを特徴とする。
【0010】
本発明の一形態に係る半導体装置の製造方法は、N型MOSトランジスタとP型MOSトランジスタとが形成された半導体装置の製造方法であって、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上に、ゲート電極を構成する導電体膜を、有機材料を用いた形成法によって形成する工程と、前記N型MOSトランジスタの前記ゲート電極の少なくとも一部を覆うように、水素が含有された絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜が形成された前記半導体基板を、非酸化性雰囲気中で加熱する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の一形態に係る別の半導体装置の製造方法は、N型MOSトランジスタとP型MOSトランジスタとが形成された半導体装置の製造方法であって、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜の表面に、ゲート電極を構成する導電体膜を、有機材料を用いた形成法によって形成する工程と、前記P型MOSトランジスタの前記ゲート電極の少なくとも一部を覆うように、絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜が形成された前記半導体基板を、酸化性雰囲気と還元性雰囲気の混合雰囲気中で加熱する工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
製造工程数を大幅に増加させることなく、P型MOSFETとN型MOSFETとで異なる仕事関数を有する金属ゲート電極を形成することができる、半導体装置及びその製造方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
始めに、本発明の第1の実施の形態に係わる半導体装置の構造について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる半導体装置の構造を説明する概略断面図である。図1に示すように、単結晶の結晶構造を有するシリコン基板100上には、素子領域を画定する素子分離絶縁膜101a〜101cが形成されている。MOSFETは、素子分離絶縁膜101によって分離区画された領域に形成される。図1においては、図面左側に配置された素子分離絶縁膜101aと、図面中央に配置された素子分離絶縁膜101bとによって区画された領域がN型MOSFET形成領域であり、図面中央に配置された素子分離絶縁膜101bと、図面右側に配置された素子分離絶縁膜101cとによって区画された領域がP型MOSFET形成領域である。
【0015】
N型MOSFET形成領域のシリコン基板100内には、p−ウェル102が形成されている。また、N型MOSFET形成領域のシリコン基板100上には、ゲート絶縁膜104を介して、第1の導電膜としてのタングステン(W)よりなるゲート電極107nが形成されている。一方、P型MOSFET形成領域のシリコン基板100内には、n−ウェル103が形成されている。また、P型MOSFET形成領域のシリコン基板100上には、ゲート絶縁膜104を介して、第2の導電膜としてのタングステンよりなるゲート電極107pが形成されている。
【0016】
ゲート電極107nのタングステンに含有される炭素の濃度は、ゲート電極107pのタングステンに含有される炭素の濃度よりも低くなされており、これによって、ゲート電極107nの仕事関数は、ゲート電極107pの仕事関数よりも低くなされている。例えば、本実施の形態においては、ゲート電極107nの仕事関数を、ゲート電極107pの仕事関数よりも0.8eV程度低くすることができる。例えば、ゲート電極107nの仕事関数を4.1eV、ゲート電極107pの仕事関数を4.9eVに設定することができる。この場合には、N型MOSFETは、シリコンの伝導帯である4.0eV近傍の仕事関数を持つタングステンから成るゲート電極107nを有し、P型MOSFETは、シリコンの価電子帯である5.1eV近傍の仕事関数を持つタングステンから成るゲート電極107pを有するため、トランジスタの閾値を低い値に抑えることができ、消費電力を低減することができる。また、ゲート電極107n,107pの材料としてタングステンを用いているため、ゲート電極の空乏化を防ぐことができる。
【0017】
ゲート電極107n,107pの側壁には、シリコン窒化膜110及びシリコン酸化膜111からなるゲート側壁絶縁膜112が形成されている。また、ゲート電極107n,107pの両側のシリコン基板100内には、ソース/ドレイン拡散層115,116が形成されている。ソース/ドレイン拡散層115,116は、LDD(lightly doped drain)構造を有しており、不純物濃度が低くなされた浅い拡散層108,109と、不純物濃度が高くなされた深い拡散層113,114とから形成されている。LDD構造を有することで、ホットエレクトロンの発生を抑制するようになっている。ソース/ドレイン拡散層115,116の表面には、Niシリサイド層117が形成されている。
【0018】
N型MOSFET形成領域のシリコン基板100、及びゲート側壁絶縁膜112の表面には、ゲート電極107nを覆うようにパッシベーション膜118が形成されている。パッシベーション膜118は、例えば水素を含有するシリコン窒化膜であり、膜中の水素濃度は1E+21cm−3程度である。パッシベーション膜118は、水素を1E+21cm−3程度、もしくはこれ以上含有する絶縁膜であれば、シリコン窒化膜に限定されるものではなく、例えば水素を含有するシリコン酸化膜でもよい。
【0019】
P型MOSFET形成領域のシリコン基板100、ゲート電極107n、ゲート側壁絶縁膜112、及び、N型MOSFET形成領域に形成されたパッシベーション膜118の表面には、第一の層間絶縁膜119が形成されている。第一の層間絶縁膜119には、ソース/ドレイン拡散層115,116、及びゲート電極107n,107pに電気的に接続されたコンタクトプラグ120が埋め込まれている。コンタクトプラグ120は、例えば、チタン(Ti)と窒化チタン(TiN)から成るバリアメタルと、タングステン膜とを積層して構成したタングステンプラグを用いている。
【0020】
コンタクトプラグ120が埋め込まれた第一の層間絶縁膜119上には、コンタクトプラグ120を介してソース/ドレイン拡散層115,116、及びゲート電極107n,107pに電気的に接続された配線層121が形成されている。配線層121は、例えばアルミニウム(Al)を材料として用いている。配線層121を覆うように、第一の層間絶縁膜119上には更に第二の層間絶縁膜122が形成されている。
【0021】
次に、上述した半導体装置の製造工程について、図2(a)〜(e)を用いて説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態に係わる半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【0022】
まず、図2(a)に示すように、単結晶の結晶構造を有するシリコン基板100上に、素子形成領域以外の領域に、STI技術などを用いて素子分離絶縁膜101a〜101cを形成する。続いて、シリコン基板100上の、N型MOSFETを形成する領域以外の領域に、図示しないレジストを選択的に形成する。このレジストをマスクとして、シリコン基板100のN型MOSFETを形成する領域に、例えばBイオンをイオン注入した後、アッシング処理を施してレジストを除去する。続いて、シリコン基板100上の、P型MOSFETを形成する領域以外の領域に、図示しないレジストを選択的に形成する。このレジストをマスクとして、シリコン基板100のP型MOSFETを形成する領域に、例えばAsイオンをイオン注入した後、アッシング処理を施してレジストを除去する。続いて、不純物がイオン注入されたシリコン基板100を、高温で加熱処理することによって、深い拡散層であるp−ウェル102及びn−ウェル103を形成する。
【0023】
次に、シリコン基板100表面に、例えば熱酸化によって、シリコン酸化膜などの薄いゲート絶縁膜104を形成する。続いて、ゲート絶縁膜104上に、ソースとして有機材料を用いた化学的気相成長法(以下、CVD法と示す)により仕事関数4.9eVを有するタングステン膜105を50nmの膜厚で堆積させる。更に、タングステン膜105上に、例えばCVD法によりシリコン窒化膜106を50nmの膜厚で堆積させる。
【0024】
次いで、シリコン窒化膜106上に、N型MOSFET及びP型MOSFETのゲート電極が形成される領域にのみ、図示しないレジストを選択的に形成する。続いて、レジストをマスクとしてシリコン窒化膜106を異方性エッチングした後、アッシング処理を施してレジストを除去する。更に、ゲート電極が形成される領域にのみ選択的に残されたシリコン窒化膜106をマスクとして、タングステン膜105を異方性エッチングし、図2(b)に示すように、例えば30nmのゲート幅のゲート電極107n,107pを形成する。続いて、P型MOSFET領域のゲート絶縁膜104上に図示しないレジストを選択的に形成し、このレジストとゲート電極107n上のシリコン窒化膜106とをマスクとして、N型MOSFET領域のシリコン基板100中に、例えばAsイオンをイオン注入する。アッシング処理を施してレジストを除去した後、N型MOSFET領域のゲート絶縁膜104上に図示しないレジストを選択的に形成し、このレジストとゲート電極107p上のシリコン窒化膜106とをマスクとして、P型MOSFET領域のシリコン基板100中に、例えばBイオンをイオン注入する。更に、アッシング処理を施してゲート電極107n,107pの領域以外のゲート絶縁膜104及びレジストを除去した後、例えば800℃の温度で5秒間加熱処理を施すことによって、シリコン基板100中に浅い拡散層108,109を形成する。
【0025】
次いで、図2(c)に示すように、シリコン基板100の表面全面に、例えばCVD法により、シリコン窒化膜110とシリコン酸化膜111とを順に堆積させた後、シリコン基板100表面が露出するまでシリコン窒化膜110とシリコン酸化膜111とを全面エッチバックし、ゲート電極107n,107pの側壁に、シリコン窒化膜110及びシリコン酸化膜111からなるゲート側壁絶縁膜112を形成する。続いて、P型MOSFET領域のシリコン基板100上に図示しないレジストを選択的に形成し、レジスト、ゲート電極107n上のシリコン窒化膜106、及びゲート側壁絶縁膜112をマスクとして、N型MOSFET領域のシリコン基板100中に、例えばBイオンをイオン注入する。アッシング処理を施してレジストを除去した後、N型MOSFET領域のシリコン基板100上に図示しないレジストを選択的に形成し、レジスト、ゲート電極107p上のシリコン窒化膜106、及びゲート側壁絶縁膜112をマスクとして、P型MOSFET領域のシリコン基板100中に、例えばPイオンをイオン注入する。更に、アッシング処理を施してレジストを除去した後、例えば1030℃の温度で加熱処理を施すことによって、シリコン基板100中に深い拡散層113,114を形成する。
【0026】
以上のようにして、ゲート電極107n,107pの両側のシリコン基板100中には、浅い拡散層108,109と、深い拡散層113,114とから成る、ソース/ドレイン拡散層115,116が形成される。
【0027】
続いて、例えば、図示しないニッケル(Ni)膜をシリコン基板100表面全面に10nm程度堆積した後、350℃の温度で30秒間程度加熱処理を施して、ニッケル膜とシリコン基板100とを化学反応させる。引き続き、シリコン基板100と未反応のニッケル膜を、例えば硫酸と過酸化水素水の混合液を用いたウェットエッチングにより選択的に除去した後、500℃の温度で30秒間程度加熱処理を行う。これにより、ソース/ドレイン拡散層115,116表面に、ニッケルシリサイド層117を形成する。
【0028】
次いで、図2(d)に示すように、例えば、プラズマCVD法を用い、シランとアンモニアとの混合ガス雰囲気中で、水素を1E21cm−3〜1E22cm−3程度含むシリコン窒化膜を、シリコン基板100表面全面に200nm程度の厚さで堆積させる。続いて、N型MOSFET領域のシリコン窒化膜上に図示しないレジストを選択的に形成し、レジストをマスクとしてシリコン窒化膜を異方性エッチングする。引き続き、アッシング処理を施してレジストを除去することで、N型MOSFET形成領域のシリコン基板100、ゲート電極107n上のシリコン窒化膜106、及びゲート電極107nを覆っているゲート側壁絶縁膜112の表面に、パッシベーション膜118を形成する。更に、例えば350℃〜500℃程度の温度で30分〜1時間程度、窒素雰囲気などの非酸化性雰囲気中で加熱処理を行う。
【0029】
ここで、加熱処理後における、N型MOSFETのゲート電極107nの仕事関数と、P型MOSFETのゲート電極107pの仕事関数について、図3を用いて説明する。図3は、ゲート電極にタングステンを用いたトランジスタの電気容量の電圧依存性を測定した結果を示すC−V特性図である。図3において、水素を含有するシリコン窒化膜でゲート電極の周囲を覆わずに加熱処理を施したトランジスタのC−V曲線を201で示し、水素を1E21cm−3程度含有するシリコン窒化膜でゲート電極の周囲を覆い加熱処理を施したトランジスタのC−V曲線を202で示している。C−V曲線201は、本実施の形態におけるP型MOSFETのC−V特性に相当し、C−V曲線を202は、本実施の形態におけるN型MOSFETのC−V特性に相当する。図3において、それぞれのC−V曲線201,202からフラットバンド時の電圧Vfbを求めるとそれぞれ+0.04V、−0.76Vである。
【0030】
すなわち、水素を含有するシリコン窒化膜でゲート電極の周囲を覆って加熱処理を施すことで、Vfbの値がおよそ−0.80Vシフトする。このVfbのシフトは、加熱処理によって、ゲート電極のタングステン膜中に含有される炭素がシリコン窒化膜中に含まれる大量の水素と結合し、CHもしくはCなどの化合物となって脱離することに起因すると考えられる。つまり、水素を含有するシリコン窒化膜で周囲を覆われた電極において、加熱処理によってゲート絶縁膜との界面における炭素濃度が減少することで、Vfbがおよそ−0.80Vシフトしたと言える。なお、シリコン窒化膜中の水素濃度は1E21cm−3以上あれば、同様な効果が得られる。
【0031】
フラットバンド電圧Vfbの値はゲート電極の仕事関数に対応する値であり、C−V曲線201のVfbの値から求めたゲート電極の仕事関数は4.9eVであり、C−V曲線202のVfbの値から求めたゲート電極の仕事関数は4.1eVである。これより、本実施の形態におけるP型MOSFETのゲート電極107pの仕事関数は4.9eVであり、N型MOSFETのゲート電極107nの仕事関数は4.1eVであるといえる。つまり、本発明によれば、ゲート電極107n,107pのそれぞれに異なる電極材料を用いることなく、異なった仕事関数を持たせることが可能となる。
【0032】
以上のように、加熱処理によってゲート電極107n,107pの仕事関数を異ならせた後、図2(e)に示すように、P型MOSFET形成領域のシリコン基板100、ゲート電極107p、ゲート電極107pを覆っているゲート側壁絶縁膜112、及び、N型MOSFET形成領域に形成されたパッシベーション膜118の表面に、例えばCVD法によって第一の層間絶縁膜119を堆積させ、化学的機械的研磨法(以下、CMP法と示す)によって表面を平坦化する。続いて、ソース/ドレイン拡散層115,116上のニッケルシリサイド層117の上面を覆う第一の層間絶縁膜119、及び、ゲート電極107n,107p上のシリコン窒化膜106の上面を覆う第一の層間絶縁膜119とシリコン窒化膜106とを異方性エッチングによって除去し、コンタクトパターンを形成する。すなわち、コンタクトパターンの底部からソース/ドレイン拡散層115,116上のニッケルシリサイド層117、及びタングステン材料によるゲート電極107n,107pが露出するように、第一の層間絶縁膜119とシリコン窒化膜106とを異方性エッチングする。
【0033】
続いて、コンタクトパターンの内部に、例えばスパッタ法によって、チタンと、窒化チタンと、タングステン膜とを順に堆積させる。次に、CMP法によって、第一の層間絶縁膜119の表面を平坦化して、内部にコンタクトプラグ120が埋め込まれたコンタクトパターンが形成される。次いで、第一の層間絶縁膜119上に、例えばスパッタ法によってアルミニウムを堆積させ、フォトリソグラフィーとドライエッチングによって所望の形状にパターニングし、配線層121を形成する。配線層121は、コンタクトプラグ120を介してソース/ドレイン拡散層115,116もしくはゲート電極107n,107pに電気的に接続されるように形成される。最後に、配線層120,121を覆うように、第一の層間絶縁膜119上に、例えばCVD法によって第二の層間絶縁膜122を堆積させ、CMP法によって表面を平坦化する。このようにして、仕事関数が4.1eVのタングステン電極からなるN型MOSFETと、仕事関数が4.9eVのタングステン電極からなるP型MOSFETとを具備した、図1に示す半導体装置を完成させる。
【0034】
このように、本実施の形態においては、P型MOSFETのゲート電極107pと、N型MOSFETのゲート電極107nとに同じ金属材料を用い、ゲート電極107p,107n中に含有される炭素濃度を変化させることで互いの仕事関数を異ならせているため、製造工程数を大幅に増加させることなく、P型MOSFETとN型MOSFETとで異なる仕事関数を有する金属ゲート電極を形成することができる。
【0035】
尚、本実施の形態においては、ゲート電極107n,107pの材料として、タングステンを用いたが、仕事関数が4.8eV以上の金属材料であればよく、例えば、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、モリブデン(Mo)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)またはこれらの合金を用いても良い。
【0036】
また、ゲート絶縁膜104は、熱酸化によるシリコン酸化膜でなくてもよく、シリコン酸化膜よりも高い誘電率を有する絶縁膜、例えば、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ランタン(La)等の酸化物、もしくはZrSixOyなどそれら元素とシリコンの酸化物でも良い。さらには、それら酸化物の積層膜でも良い。
【0037】
更に、ゲート側壁絶縁膜112及びニッケルシリサイド層117を形成後にパッシベーション膜118を成膜しているが、ゲート側壁絶縁膜112の形成前、すなわち、図2(b)に示す状態において成膜してもよい。ニッケルシリサイド層117を形成後にパッシベーション膜118を成膜する場合、ニッケルシリサイド層117の凝集を防ぐために、ゲート電極107nから炭素を脱離させるための加熱処理は、500℃未満の温度で行っているが、ゲート側壁絶縁膜112の形成前にパッシベーション膜118を成膜する場合は、500℃以上の温度で行ってもよい。また、ゲート側壁絶縁膜112の形成前にパッシベーション膜118を成膜する場合、後工程でニッケルシリサイド層117を形成するために、加熱処理後にパッシベーション膜118を除去する必要がある。
【0038】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態における半導体装置の構造について、図4を用いて説明する。図4は、本発明の第2の実施の形態に係わる半導体装置の構造を説明する概略断面図である。ゲート電極304n,304p以外の構成要素は、上述した第1の実施の形態と同様であるため、図4において図1と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
上述した第1の実施の形態においては、タングステン膜のみでゲート電極107が形成されていたが、本実施の形態では、タングステン膜301と、表面にニッケルシリサイド層303を有する多結晶シリコン膜302とを積層して、ゲート電極304が形成されている。更に詳しくは、N型MOSFETのゲート電極304nは、炭素含有量が少ないタングステン膜301nと、表面にニッケルシリサイド膜303を有し、例えばリン(P)がドープされたn型多結晶シリコン膜302nとを積層して形成されており、P型MOSFETのゲート電極304pは、炭素含有量が多いタングステン膜301pと、表面にニッケルシリサイド膜303を有し、例えばボロン(B)がドープされたp型多結晶シリコン膜302pとを積層して形成されている。
【0040】
ゲート電極304n,304pをこのような積層構造にすることで、第1の実施の形態と同様に、タングステン膜301n,301pの含有炭素量を調整することで互いの仕事関数を異ならせることができ、かつ、表面にニッケルシリサイド層303を有する多結晶シリコン膜302n,302pによってゲート電極304n,304pの抵抗を低くすることができる。
【0041】
次に、上述した半導体装置の製造工程について、図5(a)〜(e)を用いて説明する。図5は、本発明の第2の実施の形態に係わる半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【0042】
まず、図5(a)に示すように、シリコン基板100上の素子形成領域以外の領域に、STI技術などを用いて素子分離絶縁膜101a〜101cを形成する。続いて、シリコン基板100のN型MOSFET及びP型MOSFETを形成する領域に、p−ウェル102及びn−ウェル103を形成する。更に、シリコン基板100表面にゲート絶縁膜104を形成する。
【0043】
続いて、ゲート絶縁膜104上に、ソースとして有機材料を用いたCVD法により、仕事関数4.9eVを有するタングステン膜301を10nmの膜厚で堆積させる。タングステン膜301上に、例えばCVD法により、多結晶シリコン膜302を90nmの膜厚で堆積させる。続いて、P型MOSFET領域の多結晶シリコン膜302上に図示しないレジストを選択的に形成し、このレジストをマスクとして、N型MOSFET領域の多結晶シリコン膜302中に、例えばPイオンをイオン注入する。アッシング処理を施してレジストを除去した後、N型MOSFET領域の多結晶シリコン膜302上に図示しないレジストを選択的に形成し、このレジストをマスクとして、P型MOSFET領域の多結晶シリコン膜302中に、例えばBイオンをイオン注入する。更に、アッシング処理を施してレジストを除去した後、例えばCVD法により、シリコン窒化膜305を50nmの膜厚で堆積させる。
【0044】
次に、図5(b)に示すように、シリコン窒化膜305上に、N型MOSFET及びP型MOSFETのゲート電極が形成される領域にのみ、図示しないレジストを選択的に形成する。続いて、レジストをマスクとしてシリコン窒化膜305を異方性エッチングした後、アッシング処理を施してレジストを除去する。更に、ゲート電極が形成される領域にのみ選択的に残されたシリコン窒化膜305をマスクとして、多結晶シリコン膜302とタングステン膜301とを異方性エッチングした後、シリコン窒化膜305を除去して、ゲート電極304n,304pを形成する。
【0045】
続いて、P型MOSFET領域のゲート絶縁膜104上に図示しないレジストを選択的に形成し、このレジストとゲート電極304nとをマスクとして、N型MOSFET領域のシリコン基板100中に、例えばAsイオンをイオン注入する。アッシング処理を施してレジストを除去した後、N型MOSFET領域のゲート絶縁膜104上に図示しないレジストを選択的に形成し、このレジストとゲート電極304pとをマスクとして、P型MOSFET領域のシリコン基板100中に、例えばBイオンをイオン注入する。更に、アッシング処理を施してレジストを除去した後、例えば800℃の温度で5秒間加熱処理を施すことによって、シリコン基板100中に浅い拡散層108,109を形成する。
【0046】
次いで、図5(c)に示すように、ゲート電極304n,304pの側壁に、シリコン窒化膜110及びシリコン酸化膜111からなるゲート側壁絶縁膜112を形成する。また、シリコン基板100中に深い拡散層113,114を形成し、ゲート電極304n,304pの両側のシリコン基板100中に、浅い拡散層108,109と、深い拡散層113,114とから成る、ソース/ドレイン拡散層115,116を形成する。ゲート側壁絶縁膜112と深い拡散層113,114との具体的な形成方法は、図2(c)を用いて説明した、第1の実施の形態と同様である。
【0047】
続いて、例えば、図示しないニッケル膜をシリコン基板100と多結晶シリコン膜302n,302pとの表面全面に10nm程度堆積した後、350℃の温度で30秒間程度加熱処理を施して、ニッケル膜とシリコン基板100とを化学反応させる。引き続き、シリコン基板100と未反応のニッケル膜を、例えば硫酸と過酸化水素水の混合液を用いたウェットエッチングにより選択的に除去した後、500℃の温度で30秒間程度加熱処理を行う。これにより、ソース/ドレイン拡散層115,116表面と、多結晶シリコン膜302n,302pの表面とに、自己整合的にニッケルシリサイド層117,303を形成する。
【0048】
次いで、図5(d)に示すように、N型MOSFET形成領域のシリコン基板100、ゲート電極304n、及びゲート電極304nを覆っているゲート側壁絶縁膜112の表面に、水素を含有するパッシベーション膜118を形成し、例えば350℃〜500℃程度の温度で30分〜1時間程度、窒素雰囲気などの非酸化性雰囲気中で加熱処理を行って、ゲート電極304nを構成するタングステン膜301nから炭素を脱離させる。これによって、ゲート電極304nの仕事関数を4.9eVから4.1eVへ低下させる。パッシベーション膜118の具体的な形成方法は、図2(d)を用いて説明した、第1の実施の形態と同様である。
【0049】
最後に、図5(e)に示すように、図2(e)を用いて説明した第1の実施の形態と同様に、第一の層間絶縁膜119、コンタクトプラグ120、配線層121、及び第二の層間絶縁膜122を形成し、図4に示す半導体装置を完成させる。
【0050】
このように、本実施の形態においては、P型MOSFETのゲート電極304pと、N型MOSFETのゲート電極304nとに同じ金属材料、例えばタングステンを用いており、かつ、ゲート電極304n,304pを、タングステン膜301と、表面にニッケルシリサイド層303を有する多結晶シリコン膜302との積層構造にしている。これにより、第1の実施の形態と同様に、製造工程数を大幅に増加させることなく、タングステン膜301n,301pの含有炭素量を調整することで互いの仕事関数を異ならせることができ、更に、表面にニッケルシリサイド層303を有する多結晶シリコン膜302n,302pによってゲート電極304n,304pの抵抗を低くすることができる。
【0051】
尚、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、ゲート電極304n,304pの材料として、仕事関数が4.8eV以上の金属材料であれば、タングステン以外の金属、または合金を用いても良い。また、ゲート絶縁膜104も、シリコン酸化膜よりも高い誘電率を有する絶縁膜を用いてもよい。更に、パッシベーション膜118も、ゲート側壁絶縁膜112の形成前、すなわち、図5(b)に示す状態において成膜してもよく、この場合は、炭素脱離のための加熱処理を500℃以上の温度で行ってもよい。
【0052】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態における半導体装置の構造について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の第3の実施の形態に係わる半導体装置の構造を説明する概略断面図である。ゲート電極401n,401p、及び、N型MOSFET,P型MOSFETと配線配線層121とを絶縁する層間絶縁膜402,403,404以外の構成要素は、上述した第1の実施の形態と同様であるため、図6において図1と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
上述した第1の実施の形態においては、ゲート電極107とゲート側壁絶縁膜112の表面を覆うようにしてパッシベーション膜118が形成されていたが、本実施の形態では、シリコン基板100上に、ゲート電極401n,401pと同じ高さまで形成された第一の層間絶縁膜402の上に、パッシベーション膜118が形成されており、ゲート電極401nの上面とパッシベーション膜118とが直接的に接触する構造になされている。また、パッシベーション膜118を覆うように第二の層間絶縁膜403が形成されており、更に、第二の層間絶縁膜403の表面に形成された配線層121を覆うように、第三の層間絶縁膜404が形成されている。すなわち、本実施の形態における第一及び第二の層間絶縁膜402,403は、第1の実施の形態における第一の層間絶縁膜119に相当し、本実施の形態における第三の層間絶縁膜404は、第1の実施の形態における第二の層間絶縁膜122に相当する。
【0054】
次に、上述した半導体装置の製造工程について、図7(a)〜(g)を用いて説明する。図7は、本発明の第3の実施の形態に係わる半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【0055】
まず、図7(a)に示すように、シリコン基板100上の素子形成領域以外の領域に、STI技術などを用いて素子分離絶縁膜101a〜101cを形成する。続いて、シリコン基板100のN型MOSFET及びP型MOSFETを形成する領域に、p−ウェル102及びn−ウェル103を形成する。
【0056】
続いて、シリコン基板100表面に、例えば熱酸化によってシリコン酸化膜405を形成する。更に、シリコン酸化膜405上に、例えばCVD法により、多結晶シリコン膜406を100nmの膜厚で堆積させ、その上に、例えばCVD法により、シリコン窒化膜407を100nmの膜厚で堆積させる。
【0057】
次に、図7(b)に示すように、シリコン窒化膜407上に、N型MOSFET及びP型MOSFETのゲート電極が形成される領域にのみ、図示しないレジストを選択的に形成する。続いて、レジストをマスクとしてシリコン窒化膜407を異方性エッチングした後、アッシング処理を施してレジストを除去する。更に、ゲート電極が形成される領域にのみ選択的に残されたシリコン窒化膜407をマスクとして、多結晶シリコン膜406を異方性エッチングし、ダミーゲート電極401n’,401p’を形成する。
【0058】
続いて、P型MOSFET領域のシリコン酸化膜405上に図示しないレジストを選択的に形成し、このレジストとダミーゲート電極401n’とをマスクとして、N型MOSFET領域のシリコン基板100中に、例えばAsイオンをイオン注入する。アッシング処理を施してレジストを除去した後、N型MOSFET領域のシリコン酸化膜405上に図示しないレジストを選択的に形成し、このレジストとダミーゲート電極401p’とをマスクとして、P型MOSFET領域のシリコン基板100中に、例えばBイオンをイオン注入する。更に、アッシング処理を施してレジストを除去した後、例えば800℃の温度で5秒間加熱処理を施すことによって、シリコン基板100中に浅い拡散層108,109を形成する。
【0059】
次いで、図7(c)に示すように、ダミーゲート電極401n’,401p’の側壁に、シリコン窒化膜110及びシリコン酸化膜111からなるゲート側壁絶縁膜112を形成する。また、シリコン基板100中に深い拡散層113,114を形成し、ダミーゲート電極401n’,401p’の両側のシリコン基板100中に、浅い拡散層108,109と、深い拡散層113,114とから成る、ソース/ドレイン拡散層115,116を形成する。更に、ソース/ドレイン拡散層115,116表面に、ニッケルシリサイド層117を形成する。ゲート側壁絶縁膜112、深い拡散層113,114、及び、ニッケルシリサイド層117の具体的な形成方法は、図2(c)を用いて説明した、第1の実施の形態と同様である。
【0060】
次いで、図7(d)に示すように、シリコン基板100全面に、例えばCVD法によって第一の層間絶縁膜402を堆積させる。続いて、例えばCMP法によって、多結晶シリコン膜406の表面が露出するまで第一の層間絶縁膜402を研磨し、第一の層間絶縁膜402の表面を平坦化する。
【0061】
続いて、多結晶シリコン膜406を剥離し、ダミーゲート電極401n’,401p’が形成されていた部分に空隙部408を形成する。更に、ダミーゲート電極401n’,401p’の底部に形成されたシリコン酸化膜405も剥離する。次に、P型MOSFET領域のシリコン基板100、及び第一の層間絶縁膜402上に図示しないレジストを選択的に形成し、このレジストと第一の層間絶縁膜402をマスクとして、N型MOSFET領域の空隙部408底部のシリコン基板100中に、例えばInイオンをイオン注入する。続いて、アッシング処理を施してレジストを除去した後、例えば1000℃の温度で短時間の加熱処理を施すことによって、N型MOSFETのチャネル領域の不純物濃度を調整し、N型MOSFETの閾値電圧を調整する。更に、空隙部408の底部のシリコン基板100上に、例えばプラズマ酸窒化によって、極薄膜のゲート絶縁膜409を形成する。
【0062】
次いで、図7(e)に示すように、ゲート絶縁膜409上に、ソースとして有機材料を用いたCVD法により、仕事関数4.9eVを有するタングステン膜410を150nmの膜厚で堆積させる。続いて、例えばCMP法によって、第一の層間絶縁膜402の表面が露出するまでタングステン膜410を研磨し、ゲート電極401n,401pを形成する。
【0063】
続いて、図7(f)に示すように、N型MOSFET形成領域の第一の層間絶縁膜402、及びゲート電極401nの表面に、水素を含有するパッシベーション膜118を形成し、例えば350℃〜500℃程度の温度で30分〜1時間程度、窒素雰囲気などの非酸化性雰囲気中で加熱処理を行って、ゲート電極401nを構成するタングステン膜410nから炭素を脱離させる。これによって、ゲート電極401nの仕事関数を4.9eVから4.1eVへ低下させる。パッシベーション膜118の具体的な形成方法は、図2(d)を用いて説明した、第1の実施の形態と同様である。
【0064】
次いで、図7(g)に示すように、パッシベーション膜118及びP型MOSFET形成領域の第一の層間絶縁膜402の表面に、例えばCVD法によって第二の層間絶縁膜403を堆積させ、CMP法によって平坦化する。次に、図2(d)を用いて説明した第1の実施の形態と同様に、コンタクトプラグ120と配線層121とを形成する。最後に、配線層121を覆うように、例えばCVD法によって第二の層間絶縁膜403上に第三の層間絶縁膜404を形成し、CMP法により平坦化することで、図6に示す半導体装置を完成させる。
【0065】
このように、本実施の形態においては、P型MOSFETのゲート電極401pと、N型MOSFETのゲート電極401nとに同じ金属材料、例えばタングステンを用い、ゲート電極401p,401n中に含有される炭素濃度を変化させることで互いの仕事関数を異ならせているため、第1の実施の形態と同様に、製造工程数を大幅に増加させることなく、P型MOSFETとN型MOSFETとで異なる仕事関数を有する金属ゲート電極を形成することができる。
【0066】
尚、本実施の形態においても、他の実施の形態と同様に、ゲート電極401n,401pの材料として、仕事関数が4.8eV以上の金属材料であれば、タングステン以外の金属、または合金を用いても良い。また、ゲート絶縁膜409も、シリコン酸化膜よりも高い誘電率を有する絶縁膜を用いてもよい。
【0067】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態における半導体装置の構造について、図8を用いて説明する。図8は、本発明の第4の実施の形態に係わる半導体装置の構造を説明する概略断面図である。ゲート電極501n,501p以外の構成要素は、上述した第2の実施の形態と同様であるため、図8において図4と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
上述した第2の実施の形態においては、タングステン膜301と、表面にニッケルシリサイド層303を有する多結晶シリコン膜302とを積層して、ゲート電極304が形成されているが、本実施の形態においては、モリブデン(Mo)膜502と、表面にニッケルシリサイド層303を有する多結晶シリコン膜302とを積層して、ゲート電極501が形成されている。また、本実施の形態においては、パッシベーション膜503が製造工程中で剥離されるために、N型MOSFET/P型MOSFET共に、ゲート電極501とゲート側壁絶縁膜112とは第一の層間絶縁膜119で直接的に覆われている。
【0069】
次に、上述した半導体装置の製造工程について、図9(a)〜(e)を用いて説明する。図9は、本発明の第4の実施の形態に係わる半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【0070】
まず、図9(a)に示すように、シリコン基板100上の素子形成領域以外の領域に、STI技術などを用いて素子分離絶縁膜101a〜101cを形成する。続いて、シリコン基板100のN型MOSFET及びP型MOSFETを形成する領域に、p−ウェル102及びn−ウェル103を形成する。更に、シリコン基板100表面にゲート絶縁膜104を形成する。
【0071】
続いて、ゲート絶縁膜104上に、例えば有機ソースを用いたCVD法により、仕事関数4.9eVを有するモリブデン膜502を10nmの膜厚で堆積させる。タングステン膜301上に、例えばCVD法により、多結晶シリコン膜302を90nmの膜厚で堆積させる。続いて、P型MOSFET領域の多結晶シリコン膜302中に、例えばPイオンをイオン注入し、N型MOSFET領域の多結晶シリコン膜302中に、例えばBイオンをイオン注入した後、例えばCVD法により、シリコン窒化膜305を50nmの膜厚で堆積させる。
【0072】
次に、図9(b)に示すように、シリコン窒化膜305、多結晶シリコン膜302、及びモリブデン膜502とを異方性エッチングし、N型MOSFET及びP型MOSFETのゲート電極501n,501pを形成する。
【0073】
続いて、例えばCVD法により、シリコン基板100表面全面に、シリコン窒化膜を堆積させる。続いて、P型MOSFET領域のシリコン窒化膜上に図示しないレジストを選択的に形成し、レジストをマスクとしてシリコン窒化膜を異方性エッチングする。引き続き、アッシング処理を施してレジストを除去することで、P型MOSFET形成領域のシリコン基板100、ゲート電極501p、及びゲート電極501pを覆うゲート側壁絶縁膜112の表面に、パッシベーション膜503を形成する。更に、例えば600℃〜900℃程度の温度で30分間程度、例えば水素などの還元性雰囲気と、例えば水蒸気などの酸化性雰囲気との混合雰囲気中で加熱処理を行う。このとき、水素と水蒸気との分圧比は、例えば窒素:水素:水蒸気=0.9951:0.040:0.009に設定されている。すなわち、加熱処理における還元性雰囲気と酸化性雰囲気との分圧比は、ゲート電極501nのモリブデン膜502nは酸化されず、モリブデン膜502n中に含有される炭素は酸化されるように設定される。尚、加熱処理を行うときの温度、及び還元性雰囲気と酸化性雰囲気との分圧比は、ゲート電極501n,501pを構成する金属の種類に応じて変更される。
【0074】
尚、本実施の形態においては、還元性雰囲気と酸化性雰囲気の組み合わせとして水素と水蒸気とを選んだが、還元性雰囲気としてCO、酸化性雰囲気としてCO2としてもよい。
【0075】
シリコン窒化膜から成るパッシベーション膜503は、上記加熱処理中に、水素と水蒸気とがモリブデン膜502pに進入するのを防ぐ役割を果たしている。よって、上記加熱処理を施しても、パッシベーション膜503に覆われているP型MOSFETのモリブデン膜502pの炭素濃度は変化せず、ゲート電極501pの仕事関数は4.9eVのままである。一方、パッシベーション膜503に覆われていないN型MOSFETのモリブデン膜502nには、上記加熱処理中に水素と水蒸気とが進入し、モリブデン膜502n中に含有される炭素と水蒸気とが結合して二酸化炭素となり脱離する。このため、モリブデン膜502n中に含有される炭素濃度が減少し、ゲート電極501nの仕事関数は4.9eVから4.1eVへ低下する。
【0076】
次いで、図9(c)に示すように、N型MOSFET領域に選択的に形成されたパッシベーション膜503を剥離する。このとき、パッシベーション膜503と同じ材料である、ゲート電極501n,501pのシリコン窒化膜305も剥離される可能性があるが、パッシベーション膜503と共に剥離されても構わない。続いて、N型MOSFET領域のシリコン基板100中に、例えばAsイオンをイオン注入し、P型MOSFET領域のシリコン基板100中に、例えばBイオンをイオン注入し、例えば800℃の温度で5秒間加熱処理を施すことによって、シリコン基板100中に浅い拡散層108,109を形成する。
【0077】
次いで、図9(d)に示すように、ゲート電極501n,501pの側壁に、シリコン窒化膜110及びシリコン酸化膜111からなるゲート側壁絶縁膜112を形成する。また、シリコン基板100中に深い拡散層113,114を形成し、ゲート電極501n,501pの両側のシリコン基板100中に、浅い拡散層108,109と、深い拡散層113,114とから成る、ソース/ドレイン拡散層115,116を形成する。更に、ソース/ドレイン拡散層115,116表面と、多結晶シリコン膜302n,302pの表面とに、自己整合的にニッケルシリサイド層117,303を形成する。ゲート側壁絶縁膜112と、深い拡散層113,114と、ニッケルシリサイド層117,303との具体的な形成方法は、図5(c)を用いて説明した、第2の実施の形態と同様である。
【0078】
最後に、図9(e)に示すように、図5(e)を用いて説明した第2の実施の形態と同様に、第一の層間絶縁膜119、コンタクトプラグ120、配線層121、及び第二の層間絶縁膜122を形成し、図8に示す半導体装置を完成させる。
【0079】
このように、本実施の形態においては、P型MOSFETのゲート電極501pと、N型MOSFETのゲート電極501nとに同じ金属材料、例えばモリブデンを用いており、かつ、ゲート電極501n,501pを、モリブデン膜502と、表面にニッケルシリサイド層303を有する多結晶シリコン膜302との積層構造にしている。これにより、第1の実施の形態と同様に、製造工程数を大幅に増加させることなく、モリブデン膜502n,502pの含有炭素量を調整することで互いの仕事関数を異ならせることができ、更に、第2の実施の形態と同様に、表面にニッケルシリサイド層303を有する多結晶シリコン膜302n,302pによってゲート電極501n,501pの抵抗を低くすることができる。
【0080】
尚、本実施の形態においても、他の実施の形態と同様に、ゲート電極501n,501pの材料として、仕事関数が4.8eV以上の金属材料であれば、モリブデン以外の金属、または合金を用いても良い。また、ゲート絶縁膜104も、シリコン酸化膜よりも高い誘電率を有する絶縁膜を用いてもよい。
【0081】
また、本実施の形態においては、ゲート側壁絶縁膜112の形成前にパッシベーション膜503を成膜して加熱処理を施し、N型MOSFETのモリブデン膜502nから炭素を脱離させて仕事関数を低下させたが、ゲート側壁絶縁膜112の形成後、すなわち、図9(d)に示す状態においてパッシベーション膜503を成膜して加熱処理を施してもよい。この場合、ニッケルシリサイド層117,303の凝集を防ぐために、炭素脱離のための加熱処理を500℃未満の温度で行うことが好ましい。また、この場合、シリコン窒化膜は水素や水蒸気を通さない性質があるために、ゲート側壁絶縁膜112としてシリコン窒化膜以外の膜を用いることが好ましい。
【0082】
更に、本実施の形態においては、金属材料膜であるモリブデン膜502と、表面にニッケルシリサイド層303を有する多結晶シリコン膜302とを積層し、ゲート電極501n,501pを構成したが、第1の実施の形態と同様に、金属材料のみでゲート電極を構成してもよい。
【0083】
また、第3の実施の形態と同様に、多結晶シリコン膜でダミーゲート電極を形成し、ゲート側壁絶縁膜112、ソース/ドレイン拡散層115,116表面のニッケルシリサイド層117を形成した後、ダミーゲート電極の表面が露出するように第一の層間絶縁膜を形成し、ダミーゲート電極を例えばモリブデン膜などの金属材料膜に置換した後に、N型MOSFET形成領域表面に選択的にパッシベーション膜503を形成して炭素脱離のための加熱処理を行ってもよい。この場合、加熱処理後にパッシベーション膜503を剥離する必要がなく、パッシベーション膜503上に第二の層間絶縁膜を堆積させた後に、上層の配線層121などを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる半導体装置の構造を説明する概略断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わる半導体装置の製造工程を説明する断面図。
【図3】ゲート電極にタングステンを用いたトランジスタの電気容量の電圧依存性を測定した結果を示すC−V特性図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係わる半導体装置の構造を説明する概略断面図。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係わる半導体装置の製造工程を説明する断面図。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係わる半導体装置の構造を説明する概略断面図。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係わる半導体装置の製造工程を説明する断面図。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係わる半導体装置の構造を説明する概略断面図。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係わる半導体装置の製造工程を説明する断面図。
【符号の説明】
【0085】
100…シリコン基板、104…ゲート絶縁膜、105n,105p…タングステン膜、107n,107p…ゲート電極、118…パッシベーション膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート絶縁膜に接する第1の導電体膜を含む第1のゲート電極を有するN型MOSトランジスタと、
ゲート絶縁膜に接し前記第1の導電体膜に含有される炭素の濃度よりも高い濃度で炭素が含有された第2の導電体膜を含む第2のゲート電極を有するP型MOSトランジスタとを具備したことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記N型MOSトランジスタの前記ゲート電極の少なくとも一部が、1E21cm−3以上の水素を含有する絶縁膜で覆われていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
N型MOSトランジスタとP型MOSトランジスタとが形成された半導体装置の製造方法であって、
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、ゲート電極を構成する導電体膜を、有機材料を用いた形成法によって形成する工程と、
前記N型MOSトランジスタの前記ゲート電極の少なくとも一部を覆うように、水素が含有された絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜が形成された前記半導体基板を、非酸化性雰囲気中で加熱する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁膜が含有する水素の量が、1E21cm−3以上であることを特徴とする、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
N型MOSトランジスタとP型MOSトランジスタとが形成された半導体装置の製造方法であって、
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜の表面に、ゲート電極を構成する導電体膜を、有機材料を用いた形成法によって形成する工程と、
前記P型MOSトランジスタの前記ゲート電極の少なくとも一部を覆うように、絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜が形成された前記半導体基板を、酸化性雰囲気と還元性雰囲気の混合雰囲気中で加熱する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−287134(P2006−287134A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107937(P2005−107937)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】