説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】インナーリードの沈み量のばらつきに伴う接続不良を防止し得る半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】フィルムキャリアテープ3のインナーリード6aにバンプ1を介して半導体チップ2を接続する。バンプ1に向けて先細りの断面凸形状に形成されているインナーリード6aを用いる。インナーリード6aをバンプ1に接続するときに、バンプ1がフィルムキャリアテープ3に接触するまでインナーリード6aをバンプ1に埋没させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアテープのインナーリードにバンプを介して半導体素子を接続した半導体装置及びその製造方法に関するものであり、特に、半導体素子のバンプとキャリアテープのインナーリードとの接合に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インナーリードを有するフィルムキャリアテープ上にバンプを介して半導体素子を接続した半導体装置であるTCP(Tape Carrier Package)が知られている。
【0003】
このTCPでは、フィルムキャリアテープに半導体素子を接合する方法として、半導体素子側に上記バンプと呼ばれる電極を形成するか又は搭載し、超音波や熱を使用しながら荷重を加えてバンプとフィルムキャリアテープのインナーリードとを接合することが多い。
【0004】
フィルムキャリアテープ101のインナーリード102に半導体素子103を接合するときには、図7(a)(b)に示すように、半導体素子103側又はインナーリード102側からの荷重を制御して、バンプ104内にインナーリード102を5μm程度沈み込ませる方式を採用している。この方式は、荷重がばらつくとインナーリード102の沈み量も変動するため、ばらつきを抑えることが最優先の課題となっている。
【0005】
したがって、高度に集積化された半導体素子では600個を超えるバンプを搭載するものがあるので、その場合には、高度な荷重均一性も要求される。
【0006】
このようなフィルムキャリアテープのインナーリードを、バンプを介して半導体素子に接続する従来の技術としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
【0007】
この特許文献1に記載された半導体装置では、図9(a)(b)に示すように、バンプ201に凹部又は切欠き201aを設けている。これにより、インナーリード202にバンプ201を介して半導体素子203の電極204を接合するときに、過剰な金すず合金、又は過剰な溶融半田205は、バンプ201の凹部又は切欠き201aに流れ出してこの部分に溜まるので、インナーリード202に沿ってキャリアテープ206側へ流れ難くなり、また、半導体素子203のスクライブライン又は側面と接触することがない。その結果、リーク不良及びショート不良を低減することができるものとなっている。
【0008】
また、他の従来技術としては、例えば、特許文献2に開示された半導体装置及び半導体チップの位置決め方法がある。
【0009】
この特許文献2では、図10(a)(b)(c)(d)に示すように、フィルムキャリアテープ301のインナーリード302を、バンプ303を介して半導体素子304に接続するときに、フィルムキャリアテープ301の断面にテーパ301aを設けて、半導体素子304のバンプ303を誘い込ませている。これによって、フィルムキャリアテープ301における半導体素子304の位置決めが容易にできるようになっている。
【特許文献1】特開平5−335309号公報(1993年12月17日公開)
【特許文献2】特開平9−213736号公報(1997年8月15日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来公報の半導体装置及びその製造方法では、バンプ内にインナーリードを沈み込ませる状態を開示しておらず、インナーリードの沈み量のばらつきの抑制については依然として解決できていない。したがって、インナーリードの沈み量のばらつき解決できないと、接続不良が発生するという問題点を有している。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、インナーリードの沈み量のばらつきに伴う接続不良を防止し得る半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の半導体装置は、上記課題を解決するために、フィルムキャリアテープのインナーリードにバンプを介して半導体素子を接続した半導体装置において、上記インナーリードは、バンプに向けて先細りの断面凸形状に形成されていることを特徴としている。
【0013】
上記発明によれば、インナーリードは、バンプに向けて先細りの断面凸形状に形成されているので、インナーリードがバンプに進入し易くなる。したがって、インナーリードの沈み量のばらつきに伴う接続不良を防止し得る半導体装置を提供することができる。
【0014】
また、本発明の半導体装置では、前記インナーリードは、断面台形に形成されていることが好ましい。
【0015】
これにより、容易に、インナーリードを、バンプに向けて先細りの断面凸形状にすることができる。
【0016】
また、本発明の半導体装置では、前記インナーリードの高さは、バンプの高さと同じかそれよりも小さいことが好ましい。
【0017】
これにより、沈み量のばらつきがあったとしても、インナーリードはバンプに確実に接続され、より強固な接続強度を持ち、接続不良を防止することができる。また、より薄い半導体装置を提供することができる。
【0018】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、上記課題を解決するために、フィルムキャリアテープのインナーリードにバンプを介して半導体素子を接続する半導体装置の製造方法において、上記バンプに向けて先細りの断面凸形状に形成されているインナーリードを用いると共に、上記インナーリードをバンプに接続するときに、上記バンプがフィルムキャリアテープに接触するまでインナーリードをバンプに埋没させることを特徴としている。
【0019】
上記発明によれば、半導体装置を製造するときには、インナーリードをバンプに接続するときに、バンプがフィルムキャリアテープに接触するまでインナーリードをバンプに埋没させる。また、このときフィルムキャリアテープのインナーリードは、バンプに向けて先細りの断面凸形状に形成されているものを用いる。
【0020】
この結果、インナーリードがバンプに進入し易くなる。また、沈み量のばらつきがあったとしても、インナーリードはバンプに確実に接続され、より強固な接続強度を持ち、接続不良を防止することができる。
【0021】
したがって、インナーリードの沈み量のばらつきに伴う接続不良を防止し得る半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の半導体装置は、以上のように、インナーリードは、バンプに向けて先細りの断面凸形状に形成されているものである。
【0023】
それゆえ、インナーリードがバンプに進入し易くなる。したがって、インナーリードの沈み量のばらつきに伴う接続不良を防止し得る半導体装置を提供することができるという効果を奏する。
【0024】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、以上のように、バンプに向けて先細りの断面凸形状に形成されているインナーリードを用いると共に、上記インナーリードをバンプに接続するときに、上記バンプがフィルムキャリアテープに接触するまでインナーリードをバンプに埋没させる方法である。
【0025】
それゆえ、インナーリードがバンプに進入し易くなる。また、沈み量のばらつきがあったとしても、インナーリードはバンプに確実に接続され、より強固な接続強度を持ち、接続不良を防止することができる。
【0026】
したがって、インナーリードの沈み量のばらつきに伴う接続不良を防止し得る半導体装置の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の一実施形態について図1ないし図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0028】
本実施の形態の半導体装置10は、図2に示すように、複数のバンプ1を有する半導体素子としての半導体チップ2が搭載されるTCP(Tape Carrier Package)型の半導体装置である。図3に示すように、ベースとなる例えば有機絶縁性のフィルムキャリアテープ3の両側には、回転する図示しないスプロケットローラの爪でこのフィルムキャリアテープ3を搬送するスプロケットホール4が長さ方向に沿って一定間隔で開設されている。フィルムキャリアテープ3の中央部には半導体チップ2が位置する開口部5が形成されており、配線であるリード6の内端部として半導体チップ2の上記バンプ1とそれぞれ電気的に接続される複数のインナーリード6aが該開口部5に取り込まれるようにして設けられている。
【0029】
また、リード6の外端部は、例えばこの半導体装置10が実装されるプリント基板に同じように実装された例えば液晶駆動回路等の外部回路と接続されるアウターリード6bと、このアウターリード6bよりも狭ピッチで例えば液晶ディスプレイの走査線駆動側と接続されるアウターリード6cとが形成されている。ただし、アウターリード6b・6cは同一ピッチであってもよい。なお、フィルムキャリアテープ3のリード6を含む領域が最終的な製品としての半導体装置を形成する領域である。また、上記インナーリード6a及びアウターリード6b・6cを含むリード6は、例えば銅(Cu)を主成分とした材料からなっている。
【0030】
上記構成の半導体装置10の製造方法として、フィルムキャリアテープ3のインナーリード6aにバンプ1を介して半導体チップ2を接続する方法について説明する。最初に、従来方法の欠陥について述べる。
【0031】
従来では、図8(a)に示すように、フィルムキャリアテープ101に形成されているインナーリード102の断面形状は、長方形となっていた。つまり、インナーリード102のボトム幅とトップ幅とが同じ寸法になっていた。このため、図8(b)に示すように、インナーリード102と半導体素子103のバンプ1とを接合するときに、インナーリード102がバンプ104に進入にし難く、その結果、インナーリード102のバンプ104への沈み量Dについて、各バンプ104においてばらつきが生じていた。また、荷重均一性の制御に問題を抱えていた。
【0032】
そこで、本実施の形態では、図4(a)に示すように、インナーリード6aの断面形状を、バンプ1に向けて先細りの断面凸形状に形成している。すなわち、インナーリード6aのトップ幅がボトム幅よりも小さくなった断面台形となっている。上記トップ幅は、例えば4〜15μmであり、それに対応するボトム幅は例えば8〜30μmである。
【0033】
なお、本実施の形態では、インナーリード6aは断面台形としているが、必ずしもこれに限らず、三角形でもよく、また、曲線的に先細りの断面凸形状になるものであってもよい。
【0034】
また、本実施の形態では、フィルムキャリアテープ3のインナーリード6aにバンプ1を介して半導体チップ2を接続するときには、図1(a)(b)に示すように、バンプ1がフィルムキャリアテープ3に接触するまでインナーリード6aをバンプ1に埋没させている。
【0035】
なお、フィルムキャリアテープ3は、例えばポリイミドフィルムやポリエステルフィルムからなっており、バンプ1がフィルムキャリアテープ3に接触することによって、フィルムキャリアテープ3が溶融することはない。バンプ1は、例えば、金(Au)、銅(Cu)又ははんだからなっており、金(Au)、銅(Cu)の場合は電解メッキ法にて形成されている。また、はんだの場合は電解メッキ法、又ははんだ槽への浸漬法や蒸着法を用いて生成される。したがって、バンプ1は接合時に加熱されることにより軟化し、インナーリード6aをバンプ1に埋没することができる。
【0036】
また、上記の接合方法を採用するので、本実施の形態では、図4(b)に示すように、インナーリード6aの高さは、バンプ1の高さよりも小さいものとなっている。これにより、従来よりも一定で安定したインナーリード6aの沈み量Dを得ることができ、より強固な接合強度を得ることができる。また、本実施の形態では、従来よりも沈み量Dが大きいので、これによって、より薄い半導体チップ2を得ることが可能となる。なお、上記の説明では、インナーリード6aの高さはバンプ1の高さよりも小さいとしているが、必ずしもこれに限らず、例えば、図5に示すように、インナーリード6aの高さを、バンプ1の高さと同じにすることも可能である。
【0037】
また、本実施の形態では、バンプ1は、インナーリード6aが沈み込み易い柔らかさを持ち、形が崩れないことが望ましい。また、インナーリード6aは、バンプ1内に沈み込む段階で切れ・捩れ・大きな変形を起こさない硬さをもつことが望ましい。
【0038】
上記構成を有する半導体装置10の製造方法について、以下に説明する。
【0039】
まず、本実施の形態では、フィルムキャリアテープ3のインナーリード6aにバンプ1を介して半導体チップ2を接続するときには、図6(a)(b)(c)に示すように、加熱・加圧装置20を用いている。すなわち、加熱・加圧装置20には、例えば、図6(a)(b)(c)に示すタイプのものがある。
【0040】
この加熱・加圧装置20は、素子加熱ヒータ21を備えた載置台22と、図示しないヒータを内蔵した加圧部23とを有している。
【0041】
そして、接合に際しては、例えば、載置台22にバンプ1を形成又は搭載した半導体チップ2を載置し、半導体チップ2のバンプ1の上側に、図示しない冶具にて搬送されるフィルムキャリアテープ3をセットし、バンプ1とフィルムキャリアテープ3のインナーリード6aとを位置合わせする。
【0042】
次いで、その上側から、常時加熱されている加圧部23を押し下げる。このとき、素子加熱ヒータ21をオンする。そして、位置合わせしたフィルムキャリアテープ3のインナーリード6aをバンプ1に当接させる。これにより、バンプ1が一部溶融し、インナーリード6aがバンプ1の内部に進入する。本実施の形態では、バンプ1がフィルムキャリアテープ3に接触するまでインナーリード6aをバンプ1に埋没させる。これにより、インナーリード6aはバンプ1に完全に埋没する。これにより、いずれのインナーリード6aにおいても確実にバンプ1に進入し、その電気的接続が確実なものとなる。
【0043】
ここで、加圧部23には、例えば、図示しない押し下げ速度検出器が設けられている。したがって、バンプ1がフィルムキャリアテープ3に接触すると、その接触抵抗力により、加圧部23の押し下げ速度が急に低下する。したがって、その変化点を、加圧部23を押し下げの停止とすることにより、バンプ1がフィルムキャリアテープ3に接触したと判断することができる。なお、上記の説明では、押し下げ速度の検出を行ったが、必ずしもこれに限らず、例えば、バンプ1がフィルムキャリアテープ3に接触すると、その接触抵抗力により、加圧部23を押し下げ荷重が急激に増加するので、その時点を、バンプ1がフィルムキャリアテープ3に接触したと判断することも可能である。その他、検出方法は問わない。また、本実施の形態では、例示しなかったが、フィルムキャリアテープ3のインナーリード6aとバンプ1との接合に際して、超音波を利用して接合することも可能である。
【0044】
このように、本実施の形態の半導体装置10では、インナーリード6aは、バンプ1に向けて先細りの断面凸形状に形成されているので、インナーリード6aがバンプ1に進入し易くなる。したがって、インナーリード6aの沈み量のばらつきに伴う接続不良を防止し得る半導体装置10を提供することができる。
【0045】
また、本実施の形態の半導体装置10では、インナーリード6aは、断面台形に形成されている。これにより、容易に、インナーリード6aを、バンプ1に向けて先細りの断面凸形状にすることができる。
【0046】
また、本実施の形態の半導体装置10では、インナーリード6aの高さは、バンプ1の高さと同じかそれよりも小さい。これにより、沈み量のばらつきがあったとしても、インナーリード6aはバンプ1に確実に接続され、より強固な接続強度を持ち、接続不良を防止することができる。また、より薄い半導体装置10を提供することができる。
【0047】
また、本実施の形態の半導体装置10の製造方法では、インナーリード6aをバンプ1に接続するときに、バンプ1がフィルムキャリアテープ3に接触するまでインナーリード6aをバンプ1に埋没させる。また、このときフィルムキャリアテープ3のインナーリード6aは、バンプ1に向けて先細りの断面凸形状に形成されているものを用いる。
【0048】
この結果、インナーリード6aがバンプ1に進入し易くなる。また、沈み量のばらつきがあったとしても、インナーリード6aはバンプ1に確実に接続され、より強固な接続強度を持ち、接続不良を防止することができる。
【0049】
したがって、インナーリード6aの沈み量のばらつきの抑制し、ひいては、接続不良を防止し得る半導体装置の製造方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、インナーリードを有するフィルムキャリアテープ上にバンプを介して半導体素子を接続したTCPの半導体装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】(a)は本発明における半導体装置の実施の一形態を示すものであり、インナーリードと半導体素子とを接合する前の状態を示す断面図であり、(b)はインナーリードと半導体装置とを接合した後の状態を示す断面図である。
【図2】上記半導体装置の全体構成を示す断面図である。
【図3】フィルムキャリアテープ上に形成された半導体装置の構成を示す平面図である。
【図4】(a)はフィルムキャリアテープ上のインナーリードを示す要部断面図であり、(b)はインナーリードと半導体素子とを接合した後の状態を示す要部断面図である。
【図5】変形例を示すものであり、インナーリードと半導体素子とを接合した後の状態を示す要部断面図である。
【図6】(a)(b)(c)は、上記半導体装置の加熱・加圧装置を示す断面図である。
【図7】(a)は従来の半導体装置における、インナーリードと半導体素子とを接合する前の状態を示す断面図であり、(b)はインナーリードと半導体素子とを接合した後の状態を示す断面図である。
【図8】(a)は従来のフィルムキャリアテープ上のインナーリードを示す要部断面図であり、(b)は従来のインナーリードと半導体素子とを接合した後の状態を示す要部断面図である。
【図9】(a)は従来の他の半導体装置を示す平面図であり、(b)は上記半導体装置を示す断面図である。
【図10】(a)〜(d)は従来のさらに他の半導体装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 バンプ
2 半導体チップ(半導体素子)
3 フィルムキャリアテープ
6 リード
6a インナーリード
10 半導体装置
20 加熱・加圧装置
21 素子加熱ヒータ
22 載置台
23 加圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムキャリアテープのインナーリードにバンプを介して半導体素子を接続した半導体装置において、
上記インナーリードは、バンプに向けて先細りの断面凸形状に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記インナーリードは、断面台形に形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記インナーリードの高さは、バンプの高さと同じかそれよりも小さいことを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項4】
フィルムキャリアテープのインナーリードにバンプを介して半導体素子を接続する半導体装置の製造方法において、
上記バンプに向けて先細りの断面凸形状に形成されているインナーリードを用いると共に、
上記インナーリードをバンプに接続するときに、上記バンプがフィルムキャリアテープに接触するまでインナーリードをバンプに埋没させることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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